(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6675174
(24)【登録日】2020年3月12日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】廃熱回収システム及びコージェネレーションシステム
(51)【国際特許分類】
F24H 1/00 20060101AFI20200323BHJP
F24H 9/00 20060101ALI20200323BHJP
F02G 5/04 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
F24H1/00 631D
F24H9/00 A
F02G5/04 H
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-220725(P2015-220725)
(22)【出願日】2015年11月10日
(65)【公開番号】特開2017-89973(P2017-89973A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221834
【氏名又は名称】東邦瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 敏春
(72)【発明者】
【氏名】井上 未来
【審査官】
豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−009878(JP,A)
【文献】
特開2005−069536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 − 4/06
F24H 9/00
F02G 1/00 − 5/04
F22B 1/00 − 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃焼によって発電を行うエンジン発電システムから排気される第1排ガスの排熱を回収する排ガスボイラの、上記第1排ガスの流れの下流側に配設される廃熱回収システムであって、
上記排ガスボイラから排気される第2排ガスの排熱を回収する1段目温水ボイラと、
該1段目温水ボイラから排気される第3排ガスの排熱を回収する2段目温水ボイラと、を備え、
上記1段目温水ボイラは、上記第2排ガスを通過させるフィン付チューブを有し、該第2排ガスの排熱を回収して、該第2排ガスに含まれる未燃オイルの凝縮を防止可能な凝縮防止温度以上の上記第3排ガスを排気するよう構成されており、
上記2段目温水ボイラは、上記第3排ガスを通過させるフィン無チューブを有し、該第3排ガスの排熱を回収して、上記凝縮防止温度よりも低い第4排ガスを排気するよう構成されている、廃熱回収システム。
【請求項2】
エンジンの燃焼によって発電を行うエンジン発電システムから排気され、未燃オイルを分解する機能を有する触媒を通過した第1排ガスの排熱を回収する排ガスボイラの、上記第1排ガスの流れの下流側に配設される廃熱回収システムであって、
上記排ガスボイラから排気される第2排ガスの排熱を回収する1段目温水ボイラと、
該1段目温水ボイラから排気される第3排ガスの排熱を回収する2段目温水ボイラと、を備え、
上記1段目温水ボイラは、上記第2排ガスを通過させるフィン付チューブを有し、該第2排ガスの排熱を回収して、該第2排ガスに含まれる未燃オイルの凝縮を防止可能であって110〜140℃の温度の範囲内から選ばれる所定の温度である凝縮防止温度以上の上記第3排ガスを排気するよう構成されており、
上記2段目温水ボイラは、上記第3排ガスを通過させるフィン無チューブを有し、該第3排ガスの排熱を回収して、上記凝縮防止温度よりも低い第4排ガスを排気するよう構成されている、廃熱回収システム。
【請求項3】
エンジンの燃焼によって発電を行うエンジン発電システムから排気される第1排ガスの排熱を回収する排ガスボイラの、上記第1排ガスの流れの下流側に配設される廃熱回収システムであって、
上記排ガスボイラから排気される第2排ガスの排熱を回収する1段目温水ボイラと、
該1段目温水ボイラから排気される第3排ガスの排熱を回収する2段目温水ボイラと、を備え、
上記1段目温水ボイラは、上記第2排ガスを通過させるフィン付チューブを有し、該第2排ガスの排熱を回収して、該第2排ガスに含まれる未燃オイルの凝縮を防止可能な凝縮防止温度以上の上記第3排ガスを排気するよう構成されており、
上記2段目温水ボイラは、上記第3排ガスを通過させるフィン無チューブを有し、該第3排ガスの排熱を回収して、上記凝縮防止温度よりも低い第4排ガスを排気するよう構成されており、
上記1段目温水ボイラ及び上記2段目温水ボイラは、上記第2排ガス及び上記第3排ガスの排熱によって吸収式冷凍機に用いられる温水を所定の温度に加熱するものであり、
上記1段目温水ボイラと上記2段目温水ボイラとには、上記温水を上記吸収式冷凍機との間で循環させる温水配管が並列に接続されている、廃熱回収システム。
【請求項4】
エンジンの燃焼によって発電を行うエンジン発電システムから排気される第1排ガスの排熱を回収する排ガスボイラの、上記第1排ガスの流れの下流側に配設される廃熱回収システムであって、
上記排ガスボイラから排気される第2排ガスの排熱を回収する1段目温水ボイラと、
該1段目温水ボイラから排気される第3排ガスの排熱を回収する2段目温水ボイラと、を備え、
上記1段目温水ボイラは、上記第2排ガスが流通する第1容器と、該第1容器内に配置された、上記第2排ガスを通過させるフィン付チューブとを有し、該第2排ガスの排熱を回収して、該第2排ガスに含まれる未燃オイルの凝縮を防止可能な凝縮防止温度以上の上記第3排ガスを排気するよう構成されており、
上記2段目温水ボイラは、上記第3排ガスが流通する第2容器と、該第2容器内に配置された、上記第3排ガスを通過させるフィン無チューブとを有し、該第3排ガスの排熱を回収して、上記凝縮防止温度よりも低い第4排ガスを排気するよう構成されており、
上記第1容器と上記第2容器とは、別々に形成されている、廃熱回収システム。
【請求項5】
エンジンの燃焼によって発電を行うエンジン発電システムと、
該エンジン発電システムから排気される第1排ガスの排熱を回収する排ガスボイラと、
該排ガスボイラから排気される第2排ガスの排熱を回収する1段目温水ボイラと、
該1段目温水ボイラから排気される第3排ガスの排熱を回収する2段目温水ボイラと、を備え、
上記エンジン発電システムと上記排ガスボイラとの間には、上記第1排ガスに含まれる未燃オイルを分解する触媒が配置されており、
上記1段目温水ボイラは、上記第2排ガスを通過させるフィン付チューブを有し、該第2排ガスの排熱を回収して、該第2排ガスに含まれる未燃オイルの凝縮を防止可能な凝縮防止温度以上の上記第3排ガスを排気するよう構成されており、
上記2段目温水ボイラは、上記第3排ガスを通過させるフィン無チューブを有し、該第3排ガスの排熱を回収して、上記凝縮防止温度よりも低い第4排ガスを排気するよう構成されている、コージェネレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン発電システムから排気される排ガスの排熱を回収するための廃熱回収システム及びコージェネレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの燃焼によって発電を行うエンジン発電システムにおいては、エンジン発電システムから排気される排ガスの排熱を排ガスボイラによって回収して、コージェネレーションシステムを構築している。そして、排ガスボイラにおいては、排ガスから回収した排熱によって蒸気等を作り出している。また、排ガスボイラの、排ガスの流れの下流側には、排熱蒸気ボイラへの給水の予熱を行う熱交換器(エコノマイザ)を配置し、この熱交換器によって更なる排熱の回収を行う場合もある。
【0003】
このような排ガスボイラとしては、例えば、特許文献1の排熱回収ボイラの缶体構造に開示されたものがある。この排熱回収ボイラの缶体構造においては、排ガス通路内に多数の水管を挿設し、排ガス通路を画成する側壁を、水冷壁と、水冷壁の下流側に位置するケーシング壁とによって構成している。そして、水冷壁とケーシング壁とを組み合わせて用いることにより、排ガスの温度変化による側壁の熱膨張を小さく抑え、簡単な構成の缶体の形成を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2842190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジン発電システムから排気される排ガスには、水分や、燃焼されずに排出された潤滑剤等の未燃オイル等が含まれる。特に、未燃オイルは、特定の温度以上の環境下においては気体状態にある一方、特定の温度未満の環境下においては凝縮し、排ガスが通過する熱交換器の内壁面に付着して蓄積される。そのため、従来の熱交換器においては、未燃オイルが凝縮しない程度の温度、例えば120〜140℃程度の温度になるまでしか排ガスの排熱を回収していない。従って、排熱の回収量を高めるためには、未燃オイルが凝縮する温度よりも低い温度まで排熱を回収する必要が生じる。しかし、この場合、排ガスが通過する熱交換器の内壁面に蓄積した未燃オイルを除去する作業が容易ではない。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、排熱の回収量を効果的に高めるとともに、未燃オイルの除去作業を容易にすることができる廃熱回収システム及びコージェネレーションシステムを提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の
第1態様は、エンジンの燃焼によって発電を行うエンジン発電システムから排気される第1排ガスの排熱を回収する排ガスボイラの下流側に配設される廃熱回収システムであって、
上記排ガスボイラから排気される第2排ガスの排熱を回収する1段目温水ボイラと、
該1段目温水ボイラから排気される第3排ガスの排熱を回収する2段目温水ボイラと、を備え、
上記1段目温水ボイラは、上記第2排ガスを通過させるフィン付チューブを有し、該第2排ガスの排熱を回収して、該第2排ガスに含まれる未燃オイルの凝縮を防止可能な凝縮防止温度以上の上記第3排ガスを排気するよう構成されており、
上記2段目温水ボイラは、上記第3排ガスを通過させるフィン無チューブを有し、該第3排ガスの排熱を回収して、上記凝縮防止温度よりも低い第4排ガスを排気するよう構成されている、廃熱回収システムにある。
本発明の第2態様は、エンジンの燃焼によって発電を行うエンジン発電システムから排気され、未燃オイルを分解する機能を有する触媒を通過した第1排ガスの排熱を回収する排ガスボイラの、上記第1排ガスの流れの下流側に配設される廃熱回収システムであって、
上記排ガスボイラから排気される第2排ガスの排熱を回収する1段目温水ボイラと、
該1段目温水ボイラから排気される第3排ガスの排熱を回収する2段目温水ボイラと、を備え、
上記1段目温水ボイラは、上記第2排ガスを通過させるフィン付チューブを有し、該第2排ガスの排熱を回収して、該第2排ガスに含まれる未燃オイルの凝縮を防止可能であって110〜140℃の温度の範囲内から選ばれる所定の温度である凝縮防止温度以上の上記第3排ガスを排気するよう構成されており、
上記2段目温水ボイラは、上記第3排ガスを通過させるフィン無チューブを有し、該第3排ガスの排熱を回収して、上記凝縮防止温度よりも低い第4排ガスを排気するよう構成されている、廃熱回収システムにある。
本発明の第3態様は、エンジンの燃焼によって発電を行うエンジン発電システムから排気される第1排ガスの排熱を回収する排ガスボイラの、上記第1排ガスの流れの下流側に配設される廃熱回収システムであって、
上記排ガスボイラから排気される第2排ガスの排熱を回収する1段目温水ボイラと、
該1段目温水ボイラから排気される第3排ガスの排熱を回収する2段目温水ボイラと、を備え、
上記1段目温水ボイラは、上記第2排ガスを通過させるフィン付チューブを有し、該第2排ガスの排熱を回収して、該第2排ガスに含まれる未燃オイルの凝縮を防止可能な凝縮防止温度以上の上記第3排ガスを排気するよう構成されており、
上記2段目温水ボイラは、上記第3排ガスを通過させるフィン無チューブを有し、該第3排ガスの排熱を回収して、上記凝縮防止温度よりも低い第4排ガスを排気するよう構成されており、
上記1段目温水ボイラ及び上記2段目温水ボイラは、上記第2排ガス及び上記第3排ガスの排熱によって吸収式冷凍機に用いられる温水を所定の温度に加熱するものであり、
上記1段目温水ボイラと上記2段目温水ボイラとには、上記温水を上記吸収式冷凍機との間で循環させる温水配管が並列に接続されている、廃熱回収システムにある。
本発明の第4態様は、エンジンの燃焼によって発電を行うエンジン発電システムから排気される第1排ガスの排熱を回収する排ガスボイラの、上記第1排ガスの流れの下流側に配設される廃熱回収システムであって、
上記排ガスボイラから排気される第2排ガスの排熱を回収する1段目温水ボイラと、
該1段目温水ボイラから排気される第3排ガスの排熱を回収する2段目温水ボイラと、を備え、
上記1段目温水ボイラは、上記第2排ガスが流通する第1容器と、該第1容器内に配置された、上記第2排ガスを通過させるフィン付チューブとを有し、該第2排ガスの排熱を回収して、該第2排ガスに含まれる未燃オイルの凝縮を防止可能な凝縮防止温度以上の上記第3排ガスを排気するよう構成されており、
上記2段目温水ボイラは、上記第3排ガスが流通する第2容器と、該第2容器内に配置された、上記第3排ガスを通過させるフィン無チューブとを有し、該第3排ガスの排熱を回収して、上記凝縮防止温度よりも低い第4排ガスを排気するよう構成されており、
上記第1容器と上記第2容器とは、別々に形成されている、廃熱回収システムにある。
【0008】
本発明の
第5態様は、エンジンの燃焼によって発電を行うエンジン発電システムと、
該エンジン発電システムから排気される第1排ガスの排熱を回収する排ガスボイラと、
該排ガスボイラから排気される第2排ガスの排熱を回収する1段目温水ボイラと、
該1段目温水ボイラから排気される第3排ガスの排熱を回収する2段目温水ボイラと、を備え、
上記エンジン発電システムと上記排ガスボイラとの間には、上記第1排ガスに含まれる未燃オイルを分解する触媒が配置されており、
上記1段目温水ボイラは、上記第2排ガスを通過させるフィン付チューブを有し、該第2排ガスの排熱を回収して、該第2排ガスに含まれる未燃オイルの凝縮を防止可能な凝縮防止温度以上の上記第3排ガスを排気するよう構成されており、
上記2段目温水ボイラは、上記第3排ガスを通過させるフィン無チューブを有し、該第3排ガスの排熱を回収して、上記凝縮防止温度よりも低い第4排ガスを排気するよう構成されている、コージェネレーションシステムにある。
【発明の効果】
【0009】
上記廃熱回収システムは、排ガスボイラの下流側に配設して、排ガスボイラから排気される排ガスの排熱の回収を更に行うものである。廃熱回収システムは、フィン付チューブを有する1段目温水ボイラと、フィン無チューブを有する2段目温水ボイラとを適切に組み合わせることによって、排熱の回収量の向上と未燃オイルの付着によるトラブル回避とを両立させるものである。
ここで、説明を明確にする観点から、各要素から排気される排ガスは、エンジン発電システムから排気される排ガスを第1排ガス、排ガスボイラから排気される排ガスを第2排ガス、1段目温水ボイラから排気される排ガスを第3排ガス、及び2段目温水ボイラから排気される排ガスを第4排ガスとして表す。
【0010】
1段目温水ボイラによる第2排ガスの排熱の回収は、第3排ガスの温度が、第3排ガスに含まれる未燃オイルの凝縮を防止可能な凝縮防止温度以上にある範囲内で行われる。そして、1段目温水ボイラにおいては、フィン付チューブを用いて排熱を回収することにより、排ガスから熱回収媒体への伝熱効率を高めることができる。また、フィン付チューブを用いた排熱の回収は、第3排ガスの温度が凝縮防止温度以上にある範囲内までしか行われず、洗浄が困難である伝熱フィンに、未燃オイルが凝縮して付着することを防止することができる。
【0011】
また、2段目温水ボイラによる第3排ガスの排熱の回収は、第4排ガスの温度が、凝縮防止温度よりも低い温度になるまで行う。そして、2段目温水ボイラにおいては、フィン無チューブを用いて排熱を回収することにより、洗浄が困難である伝熱フィンが存在せず、チューブに付着した未燃オイルを容易に洗浄することができる。
それ故、上記廃熱回収システムによれば、排熱の回収量を効果的に高めるとともに、未燃オイルの除去作業を容易にすることができる。
【0012】
なお、未燃オイルとは、エンジン発電システムにおけるエンジンにおいて使用される潤滑油等が、エンジンにおける燃料とともに燃焼されずに、第1排ガス中に残留したもののことをいう。
【0013】
上記コージェネレーションシステムにおいては、エンジン発電システムと排ガスボイラとの間に、第1排ガスに含まれる未燃オイルを分解する触媒が配置されている。
そして、触媒によって、第1排ガスに含まれる未燃オイルの多くを除去することにより、未燃オイルが1段目温水ボイラ及び2段目温水ボイラによる廃熱回収システムに到達する量を少なくすることができる。これにより、2段目温水ボイラのフィン無チューブへの未燃オイルの付着量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1にかかる、エンジン発電システム及び排ガスボイラに対して配設した廃熱回収システムを示す説明図。
【
図2】実施形態1にかかる、廃熱回収システムを拡大して示す説明図。
【
図3】実施形態1にかかる、1段目温水ボイラの構造を概略的に示す説明図。
【
図4】実施形態1にかかる、2段目温水ボイラの構造を概略的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述した廃熱回収システム及びコージェネレーションシステムにかかる好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
廃熱回収システム1は、
図1に示すように、エンジンの燃焼によって発電を行うエンジン発電システム11から排気される第1排ガスG1の排熱を回収する排ガスボイラ12の下流側に配設される。廃熱回収システム1は、排ガスボイラ12から排気される第2排ガスG2の排熱を回収する1段目温水ボイラ2と、1段目温水ボイラ2から排気される第3排ガスG3の排熱を回収する2段目温水ボイラ3とを備える。
【0016】
図2、
図3に示すように、1段目温水ボイラ2は、第2排ガスG2を通過させるフィン付チューブ21を有しており、第2排ガスG2の排熱を回収して、第2排ガスG2に含まれる未燃オイルの凝縮を防止可能な凝縮防止温度の第3排ガスG3を排気するよう構成されている。2段目温水ボイラ3は、第3排ガスG3を通過させるフィン無チューブ31を有しており、第3排ガスG3の排熱を回収して、凝縮防止温度よりも低い第4排ガスG4を排気するよう構成されている。
なお、排ガスボイラ12、1段目温水ボイラ2及び2段目温水ボイラ3の各ボイラ12,2,3を通過する排ガスを、便宜上、第1排ガスG1、第2排ガスG2、第3排ガスG3及び第4排ガスG4として表す。
【0017】
以下、本形態の廃熱回収システム1及びコージェネレーションシステム10をさらに詳説する。
図1、
図2に示すように、廃熱回収システム1は、排ガスボイラ12の下流側に配設され、排ガスボイラ12から排気される排ガスの排熱の回収を更に行うものである。廃熱回収システム1は、フィン付チューブ21を有する1段目温水ボイラ2と、フィン無チューブ31を有する2段目温水ボイラ3とを適切に組み合わせたものである。
【0018】
エンジン発電システム11は、定置式のガスエンジン、定置式のディーゼルエンジン等のエンジンにおける燃料混合気の燃焼による回転力を利用して、発電機による発電を行うものである。エンジン発電システム11においては、エンジンの燃焼によって生じる排ガスの排熱(熱エネルギー)と、エンジンを冷却する際に昇温される冷却水の排熱(熱エネルギー)とを回収するコージェネレーションシステムが構築される。排ガスの排熱は、排ガスボイラ12による水の蒸気化及び廃熱回収システム1による温水の昇温に利用され、冷却水の排熱は、空調用の熱源等として利用される。
【0019】
図1に示すように、本形態においては排熱回収システム1を用いてコージェネレーションシステム10が形成されている。コージェネレーションシステム10は、エンジン発電システム11と、触媒13と、排ガスボイラ12と、1段目温水ボイラ2と、2段目温水ボイラ3とを備えている。
触媒13は、エンジン発電システム11におけるエンジンの排気口112と排ガスボイラ12の給気口121との間に配置されており、エンジン発電システム11から排気される第1排ガスG1に含まれる揮発している未燃オイルを分解する機能を有する。触媒13は、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属を用いて構成されている。
【0020】
そして、触媒13によって、第1排ガスG1に含まれる未燃オイルの多くを除去することにより、未燃オイルが1段目温水ボイラ2及び2段目温水ボイラ3による廃熱回収システム1に到達する量を少なくすることができる。これにより、2段目温水ボイラ3のフィン無チューブ31への未燃オイルの付着量を低減することができる。
【0021】
図1に示すように、本形態の排ガスボイラ12は、排ガスを利用して水蒸気を作り出す排ガス蒸気ボイラである。排ガスボイラ12の給気口121には、エンジン発電システム11から300℃以上の第1排ガスG1が供給され、排ガスボイラ12の排気口122からは、160℃程度(150〜170℃の範囲内)の第2排ガスG2が排気される。排ガスボイラ12によって作られる水蒸気は、工場等の種々のプロセスにおいて使用される。
なお、排ガスボイラ12は、排ガスを利用して水を昇温する排ガス温水ボイラとすることもできる。この場合にも、第2排ガスG2の温度は、150〜170℃の範囲内となる。
【0022】
1段目温水ボイラ2及び2段目温水ボイラ3は、第2排ガスG2及び第3排ガスG3の排熱によって吸収式冷凍機6に用いられる温水Wを所定の温度に加熱する熱交換器である。吸収式冷凍機6は吸収式冷温水機と呼ばれることもある。
図2、
図3に示すように、1段目温水ボイラ2は、第2排ガスG2が流通する容器(図示略)と、容器内に、互いに平行に複数本並べられたフィン付チューブ21とを有している。1段目温水ボイラ2における給気口22と排気口23とは、互いに対向する位置に設けられており、複数本のフィン付チューブ21は、給気口22と排気口23とが対向する方向に直交する方向に沿って配置されている。複数本のフィン付チューブ21には、温水入口24と温水出口25とを介して、吸収式冷凍機6において用いられる温水Wが流通する。そして、第2排ガスG2が1段目温水ボイラ2の容器内を流れ、温水Wがフィン付チューブ21内を流れる際には、フィン付チューブ21を介して第2排ガスG2の排熱が温水Wに伝達される。
【0023】
図2、
図4に示すように、2段目温水ボイラ3は、第3排ガスG3が流通する容器(図示略)と、容器内に、互いに平行に複数本並べられたフィン無チューブ31とを有している。2段目温水ボイラ3においては、給気口32と排気口33とが互いに対向する位置に設けられており、複数本のフィン無チューブ31は、給気口32と排気口33とが対向する方向に直交する方向に沿って配置されている。複数本のフィン無チューブ31には、温水入口34と温水出口35とを介して、吸収式冷凍機6において用いられる温水Wが流通する。そして、第3排ガスG3が2段目温水ボイラ3の容器内を流れ、温水Wがフィン無チューブ31内を流れる際には、フィン無チューブ31を介して第3排ガスG3の排熱が温水Wに伝達される。
【0024】
図3に示すように、1段目温水ボイラ2におけるフィン付チューブ21は、チューブ211の外周に複数の伝熱フィン212を設けて形成されている。そのため、1段目温水ボイラ2は、伝熱効率が良く、コンパクトに形成することができ、排熱の単位回収量当たりの製造コストが安価である。一方、
図4に示すように、2段目温水ボイラ3におけるフィン無チューブ31は、伝熱フィンを有しないチューブ311から形成されているために、シンプルな構造であり、高圧洗浄等が容易である。また、2段目温水ボイラ3は、フィン無チューブ31を用いていることにより、チューブ311の外周面に未燃オイルが蓄積したとしても、この未燃オイルが容器内を閉塞しにくくすることができる。ただし、フィン無チューブ31を用いる場合には、伝熱効率が悪く、装置が大型化し、排熱の単位回収量当たりの製造コストも高価である。
1段目温水ボイラ2による排熱の回収量と、2段目温水ボイラ3による排熱の回収量とは、工場等における廃熱回収システム1の配置スペースの制約、設備投資予算等に応じて適切に設定することができる。
【0025】
廃熱回収システム1は、
図1に示すように、1段目温水ボイラ2及び2段目温水ボイラ3以外に、主排気管41、主ダンパ51、バイパス排気管42、バイパスダンパ52等を備えている。主排気管41は、排ガスボイラ12の排気口122に接続されている。主排気管41には、1段目温水ボイラ2と、1段目温水ボイラ2の、第3排ガスG3の流れの下流側に位置する2段目温水ボイラ3とが直列に並ぶ状態で配置されている。
ここで、
図1、
図2においては、1段目温水ボイラ2と2段目温水ボイラ3との間に主排気管41の一部が配置された状態を示す。1段目温水ボイラ2と2段目温水ボイラ3とは、主排気管41の一部を介さずに直結されていてもよい。
【0026】
図2に示すように、主ダンパ51は、主排気管41における、排ガスボイラ12の給気口121の付近と、主排気管41における、2段目温水ボイラ3の排気口33の付近とに配置されている。主ダンパ51は、主排気管41内において回動可能である。バイパス排気管42は、排ガスボイラ12の給気口121の付近において主排気管41から分岐しており、2段目温水ボイラ3の排気口33の付近に位置する主排気管41に繋がっている。バイパス排気管42は、排ガスボイラ12に供給される第1排ガスG1を、排ガスボイラ12、1段目温水ボイラ2及び2段目温水ボイラ3を通過させずにバイパスさせるものである。バイパスダンパ52は、バイパス排気管42内に回動可能に配置されている。
図1に示すように、主排気管41は、排熱が回収された後の第4排ガスG4を大気に排気するための煙突43に繋がれている。
【0027】
そして、排ガスボイラ12、1段目温水ボイラ2及び2段目温水ボイラ3のメンテナンス等を行う際には、主ダンパ51によって主排気管41を閉じるとともにバイパスダンパ52によってバイパス排気管42を開ける。これにより、バイパス排気管42を利用して、第1排ガスG1を、排ガスボイラ12、1段目温水ボイラ2及び2段目温水ボイラ3を通過させずに煙突43等へ排気させることができる。
【0028】
1段目温水ボイラ2と2段目温水ボイラ3とには、吸収式冷凍機6に用いられる温水Wを吸収式冷凍機6との間で循環させる温水配管61が並列に接続されている。温水配管61は、1段目温水ボイラ2の温水入口24と温水出口25とを介して1段目温水ボイラ2に接続され、また、2段目温水ボイラ3の温水入口34と温水出口35とを介して2段目温水ボイラ3に接続されている。各温水ボイラ2,3の温水入口24,34に繋がる温水配管61には、吸収式冷凍機6と各温水ボイラ2,3との間において温水Wを循環させるための温水用ポンプ62が配設されている。
【0029】
排ガスに含まれる未燃オイルの凝縮温度は、エンジン発電システム11におけるエンジンに使用されるオイルの種類によって異なる。凝縮防止温度は、未燃オイルの凝縮温度よりも高い温度として設定され、110〜140℃の温度の範囲内から選ばれる所定の温度とすることができる。これにより、1段目温水ボイラ2におけるフィン付チューブ21に、種々の未燃オイルが付着することを防止することができる。本形態においては、凝縮防止温度は、120℃として設定する。
本形態の廃熱回収システム1においては、1段目温水ボイラ2から排気される第3排ガスG3の温度は、第2排ガスG2及び第3排ガスG3から温水Wへの熱回収量の設定を適切に行うことによって、凝縮防止温度以上に維持される。
【0030】
吸収式冷凍機6は、冷媒を蒸発させて気化熱によって冷水を作り出す蒸発器、冷媒を吸収溶液に吸収させる吸収器、吸収溶液を濃縮するとともに吸収溶液と蒸気冷媒とを分離する再生器、及び蒸気冷媒を凝縮する擬縮器を有するものである。温水Wは、再生器において用いることができる。
【0031】
廃熱回収システム1においては、1段目温水ボイラ2による第2排ガスG2の排熱の回収は、第3排ガスG3の温度が、第3排ガスG3に含まれる未燃オイルの凝縮を防止可能な凝縮防止温度以上にある範囲内で行われる。そして、1段目温水ボイラ2においては、フィン付チューブ21を用いて排熱を回収することにより、第2排ガスG2から、吸収式冷凍機6に用いる温水Wへの伝熱効率を高めることができる。また、フィン付チューブ21を用いた排熱の回収は、第3排ガスG3の温度が凝縮防止温度以上にある範囲内までしか行われず、洗浄が困難である伝熱フィン212に、未燃オイルが凝縮して付着することを防止することができる。
なお、第3排ガスG3の温度は、1段目温水ボイラ2の排気口23に配置した温度計を用いて監視することができる。
【0032】
また、2段目温水ボイラ3による第3排ガスG3の排熱の回収は、第4排ガスG4の温度が、凝縮防止温度よりも低い温度になるまで行う。そして、2段目温水ボイラ3においては、フィン無チューブ31を用いて排熱を回収することにより、洗浄が困難である伝熱フィンが存在せず、チューブ311の外周面に付着した未燃オイルを高圧洗浄等によって容易に洗浄することができる。
【0033】
それ故、本形態の廃熱回収システム1及びコージェネレーションシステム10によれば、排熱の回収量を効果的に高めるとともに、未燃オイルの除去作業を容易にすることができる。
【0034】
(実施形態2)
本形態においては、廃熱回収システム1を設計する方法として、1段目温水ボイラ2のフィン付チューブ21の伝熱面積を設定する方法について説明する。
フィン付チューブ21の伝熱面積を設定するに当たっては、一般的な熱交換器の伝熱面積の設計に使用される計算式を用いることができる。
【0035】
具体的には、1段目温水ボイラ2の熱交換量Qは、1段目温水ボイラ2の熱通過率K、フィン付チューブ21の伝熱面積A、対数平均温度差ΔTmを用いて、Q=K・A・ΔTmの式によって表される。ここで、熱交換量Qは、1段目温水ボイラ2の給気口22における第2排ガスG2の温度、1段目温水ボイラ2の排気口23における第3排ガスG3の温度、第2排ガスG2の流量、及び第2排ガスG2の比熱を用いて計算される。また、熱通過率Kは、フィン付チューブ21の材質、厚み、形状、第2排ガスG2の流速、及び温水Wの流速を用いて計算される。また、対数平均温度差ΔTmは、1段目温水ボイラ2の給気口22における第2排ガスG2の温度、1段目温水ボイラ2の排気口23における第3排ガスG3の温度、フィン付チューブ21の温水入口24における温水Wの温度、及びフィン付チューブ21の温水出口25における温水Wの温度を用いて計算される。
【0036】
そして、伝熱面積Aは、上記計算によって求められた熱交換量Q、熱通過率K及び対数平均温度差ΔTmをA=Q/(K・ΔTm)の式に代入して求められる。
このように、1段目温水ボイラ2の伝熱面積Aを適切に求めることにより、1段目温水ボイラ2による排熱の回収量を適切に設定することができる。そして、1段目温水ボイラ2から排気される第3排ガスG3の温度を、凝縮防止温度以上に保つことが容易になる。
また、2段目温水ボイラ3による排熱の回収量は、排熱を回収する最終温度である第4排ガスG4の温度に応じて適宜設定することができる。
なお、本形態においても、廃熱回収システム1の構成は、実施形態1と同様である。
【0037】
本発明は、実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲においてさらに異なる実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 廃熱回収システム
10 コージェネレーションシステム
11 エンジン発電システム
12 排ガスボイラ
13 触媒
2 1段目温水ボイラ
3 2段目温水ボイラ
21 フィン付チューブ
31 フィン無チューブ
6 吸収式冷凍機
61 温水配管