(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円周方向の前記インナーブッシュに、ブッシュが挿入され、これらブッシュ円周方向で、交互に駆動系の接続フランジと被駆動系の接続フランジにボルト・ナットで締結される請求項5記載のラバーカップリング。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0014】
先ず、本発明のラバーカップリングが適用される動力伝達系を
図12により説明する。
【0015】
図12に示すように、エンジン10の動力は、トランスミッション11に入力され、トランスミッション11からプロペラシャフト12を介して、ディファレンシャル13に伝達される。
【0016】
プロペラシャフト12は、トランスミッション11に接続される第1プロペラシャフト12aとディファレンシャル13に連結される第2プロペラシャフト12bからなり、これら第1、第2プロペラシャフト12a、12b同士がユニバーサルジョイント14にて連結されると共にセンターベアリング15にてシャシフレーム(図示せず)に支持される。
【0017】
第1、第2プロペラシャフト12a、12bには、トランスミッション11やディファレンシャル13と接続するために本発明のラバーカップリング20で接続される。
【0018】
本発明のラバーカップリング20は、エンジン10の振動やトランスミッション11、ディファレンシャル13のバックラッシュによるトルク変動による振動の減衰度を制御できると共にシャシフレームに懸架されるディファレンシャル13の上下動による偏芯荷重も受けることができ、自在継ぎ手を不要にできるものである。
【0019】
このラバーカップリング20を
図1〜
図4により説明する。
【0020】
図2(a)に示すように、ラバーカップリング20は、金属製や樹脂製で円環状に形成された可撓性のあるプレート22とそのプレート22の円周方向に沿って複数設けられた金属製の筒部23とで形成されたインナー部材21と、筒部23内に同軸上に設けられるインナーブッシュ24と、ゴム成形によりインナー部材21を囲繞すると共に筒部23とインナーブッシュ24間のクリアランスcをゴムで埋めるように形成されたラバー部材25とで構成される。
【0021】
図4に示すように、インナー部材21は、円環状のプレート22の円周方向に、例えば60度間隔で筒部23が形成され、筒部23間のプレート22の半径方向に延びたスリット26が形成されて構成される。
【0022】
このインナー部材21は、プレート22と筒部23がプレス加工又は機械加工により形成され、その後、スリット26と、中心穴27とがプレス加工又は機械加工により形成される。
【0023】
このインナー部材21の筒部23にインナーブッシュ24を挿入した状態で、金型にセットし、ラバー部材25を射出成形してラバーカップリング20とする。
【0024】
このラバーカップリング20には、
図2(a)、
図2(b)示すように、インナーブッシュ24にカップリングブッシュ28が挿入される。カップリングブッシュ28は、ラバーカップリング20の表裏から円周方向のインナーブッシュ24に対して、交互に挿入される。
【0025】
図5(a)〜
図5(e)は、ラバーカップリング20の製造工程を示したものである。
【0026】
図5(a)に示すように、先ず、インナー部材21とインナーブッシュ24を別途成形しておく。
【0027】
図5(b)に示すようにラバー部材25を成形する金型30は、下型31と上型32とからなり、下型31には、ラバー部材25を成形するための円環状のキャビティ33が形成され、そのキャビティ33にインナーブッシュ24を保持する支持突起34が形成されて構成される。
【0028】
この下型31の支持突起34にインナーブッシュ24を嵌め込み、インナー部材21の筒部23とインナーブッシュ24とが設定のクリアランスcとなるようにインナー部材21を、キャビティ33内に配置する。
【0029】
次に
図5(c)に示すように上型32を下型31にセットしてキャビティ33を閉じ、そのキャビティ33内に未加硫のゴムを加圧注入してラバー部材25を射出成形してラバーカップリング20を製造する。
【0030】
このラバー部材25を射出成形する際には、ゴムの加硫温度が100℃以下と低いため、金型30を、加硫温度以上、例えば200℃前後に加熱しておく。
【0031】
射出成型後は、
図5(d)に示すようにラバーカップリング20を金型30から取り出し、
図5(e)に示すようにインナーブッシュ24にカップリングブッシュ28を挿入する。
【0032】
このカップリングブッシュ28は、
図2(a)、
図2(b)に示すようにラバーカップリング20の表裏から円周方向のインナーブッシュ24に対して、交互に挿入しておく。
【0033】
このラバーカップリング20をエンジンの動力系に接続する例を、
図1、
図3により説明する。
【0034】
図1、
図3に示すように、カップリングブッシュ28を挿入したラバーカップリング20を、プロペラシャフトなどの軸40i、40oに設けた接続フランジ41i、41o間に位置させると共に両側の接続フランジ41i、41oのボルト穴42i、42oが、60度ずれるように配置する。この状態で、ボルト43iを、接続フランジ41iのボルト穴42iからカップリングブッシュ28に挿入し、そのカップリングブッシュ28から突出したボルト43iにナット44iをねじ込むことで、一方の接続フランジ41iがラバーカップリング20と接続される。
【0035】
また、他方の接続フランジ41oも同様にボルト43oを、ボルト穴42oからラバーカップリング20のカップリングブッシュ28に挿入してナット44oをねじ込むことで、他方の接続フランジ41oがラバーカップリング20と接続される。
【0036】
このように、軸40i、40o同士をラバーカップリング20で接続することで、回転力は、一方の接続フランジ41iのボルト43iからカップリングブッシュ28、インナーブッシュ24に伝達され、インナーブッシュ24とインナー部材21の筒部23間のクリアランスcに介在したラバー部材25のゴム層25cを介してインナー部材21に伝達され、インナー部材21と共にラバーカップリング20に伝達される。このラバーカップリング20の回転力は、インナー部材21から他方のボルト43iが挿入された側の筒部23からゴム層25cを介し、筒部23、インナーブッシュ24、カップリングブッシュ28を介して他方のボルト43oに伝達されると共に他方の接続フランジ41oを介して他方の軸40oに伝達される。
【0037】
この際、駆動側の軸40iの回転は、インナーブッシュ24間のゴム層25cを介してインナー部材21で被駆動側の軸40oに伝達され、しかもゴム層25cは、筒部23とインナーブッシュ24間で保持され、その弾性力で変形するため、回転力がスムーズに伝達される。
【0038】
エンジンからの回転で、駆動側の軸40iは回転脈動を伴うが、軸40iの回転に脈動があっても、筒部23とインナーブッシュ24間のゴム層25cが、その脈動を吸収できる。また、被駆動側の軸40o側で、ディファレンシャル側のファイナルギヤのバックラッシュによる衝撃もゴム層25cで吸収できる。
【0039】
さらに、駆動側の軸40iと被駆動側の軸40oとは、ディファレンシャルが常時上下動するため、軸心が一致せずに偏芯して、回転が伝達されるが、ラバーカップリング20内のインナー部材21がこの偏芯に応じて撓むことができるため、その偏芯を許容することができる。この際、インナー部材21には、駆動側の筒部23と被駆動側の筒部23とを連結しているプレート22にスリット26が形成されると共にインナー部材21をラバー部材25で覆っているため、駆動側の筒部23と被駆動側の筒部23の偏芯及び交角を許容ししつつ駆動側の軸40iと被駆動側の軸40oの偏芯回転をスムーズに伝達することが可能となる。
【0040】
図6、
図7は、本発明の他の実施の形態を示したものである。
【0041】
図2〜
図4に示した実施の形態では、インナー部材21のスリット26を穴27に開口する例を示したが、本実施の形態では、
図6に示すようにスリット26aを筒部23の間に位置し、かつ穴27に開放させずに形成してインナー部材21を構成し、このインナー部材21を用いて、
図7(a)、
図7(b)に示したようにラバーカップリング20を構成したものである。
【0042】
このラバーカップリング20は、インナー部材21のプレート22の撓みは、スリット26aが穴27に開放せずに閉じているため、プレート22の撓み強度が高くなるが、軸40i、40oの偏芯度や交角が小さい場合には、優位性がある。
【0043】
図8は、本発明の他の実施の形態を示したものである。
【0044】
図2〜
図4及び
図6、
図7の実施の形態では、筒部23とインナーブッシュ24間のゴム層25cで脈動を吸収できるが、偏芯度や交角が大きい場合には、ゴム層25cの厚さ(クリアランス)と硬度で決定される捩り方向バネ定数には限界がある。またプレート22は、動力系の2軸間の距離(ストローク)の変化に応じて撓むが、そのストローク変化に対するプレート22の撓みによる荷重の調整もスリット26だけでは限界がある。
【0045】
そこで、
図8(a)〜
図8(f)の実施の形態では、動力系の2軸の偏芯度や交角が大きい場合に対応したラバーカップリング20としたものである。
【0046】
図8(a)は、インナーブッシュ24とインナー部材21の筒部23間のスペースを十分に取り、その間に捩り方向バネ定数を調整するための調整用ブッシュ29aを設けたものである。
【0047】
この
図8(a)のラバーカップリング20は、偏芯度や交角が大きくても調整用ブッシュ29aが揺動し、その揺動力を筒部23を介してプレート22に伝達することができ、また捩り方向バネ定数は、調整用ブッシュ29aとインナーブッシュ24間のゴム層25cで調整できる。
【0048】
図8(b)は、調整用ブッシュ29bの中央部を外側に膨らませてバルジ部35bを形成し、そのバルジ部35bを、筒部23に接合したものである。
【0049】
この
図8(b)のラバーカップリング20においては、カップリングブッシュ28(インナーブッシュ24)の偏芯度や交角の変化が、筒部23を介して直接プレート22に撓みとして伝達され、また捩り方向バネ定数は、バルジ部35bの上下の調整用ブッシュ29bの内面とインナーブッシュ24間のゴム層25cで調整される。
【0050】
図8(c)は、調整用ブッシュ29cのバルジ部35cの上下幅を広げて、バルジ部35cの上下の調整用ブッシュ29cの内面とインナーブッシュ24間のゴム層25cの上下幅を、
図8(b)よりも小さくして捩り方向バネ定数を変えるようにしたものである。
【0051】
図8(d)は、筒部23aに、その中央部を膨らませてバルジ部36を形成すると共にそのバルジ部36をプレート22に接合し、その筒部23aを支持するプレート22の厚さを厚く形成したものである。
【0052】
図8(e)は、筒部23aを覆うように支持筒部22aを形成したプレート22bを一対向かい合わせてプレート22としたものである。
【0053】
この
図8(d)、
図8(e)においては、インナー部材21のプレート22の厚さや断面形状を変えることで、そのプレート22の撓み強度を自在に調整することができる。
【0054】
図8(f)は、金属製のプレート22cとそのプレート22cの円周方向に沿って複数設けられた金属製の筒部23cとで分割インナー部材21cを形成し、その分割インナー部材21cを背中合わせにプレート22cをプロジェクション溶接、スポット溶接にて接合、或いはインナー部材21cをFRP等の樹脂で成形した場合には、接着剤で結合してインナー部材21としたものである。このインナー部材21では、分割インナー部材21cの筒部23cを、カップリングブッシュ28側に傾斜した円錐台状に形成し、その軸方向に対する傾斜角θを変えることで、捩り方向特性を調整することができる。
【0055】
すなわち、上下の筒部23c間に位置したゴム層25rが、カップリングブッシュ28(インナーブッシュ24)の偏芯度や交角の変化で圧縮されるが、傾斜角θを調整することで、ゴム層25rの圧縮による密度が変わるため、捩り方向特性を調整することができる。
【0056】
図9は、インナー部材21のプレート22に形成するスリット27等の形状を変えてプレート22の撓み強度を調整する例を示したものである。
【0057】
図9(a)は、
図8(a)〜
図8(c)に示したラバーカップリング20の筒部23の径を大ききして、調整用ブッシュ29a〜29cを挿入するためのインナー部材21の例を示したものである。
【0058】
図9(b)は、筒部23を形成したプレート22に、スリット26a、27bを形成したスリットプレート22pとを接合してインナー部材21としたものである。
【0059】
図9(c)は、プレート22に円周方向にスリット26cを形成してインナー部材21としたものである。
【0060】
これら
図9(a)〜
図9(c)に示したようにインナー部材21は、スリット形状を変形することで、プレート22の撓み強度を自在に調整することができる。
【0061】
図10、
図11は、動力系の2軸を接続する際の、ラバーカップリング20のインナー部材の選定の方法を示したものである。
【0062】
先ず、
図10に示すように動力系の2軸間の偏芯度や交角により、2軸間の距離(ストローク)の変化に対するプレートの撓みによる荷重を、例えばストロークの要求値が3mmで、その時に撓み荷重を1000Nmmとしたときにプレートの厚さや形状による荷重変化をプレートA〜Dごとに求めておく。
【0063】
このときプレートDが要求値を満たしたとする。
【0064】
次に
図11に示すようにラバーカップリングの捩り方向ばね定数を基に捩り角とトルクの関係を求める。
【0065】
伝達トルクの応答性は、例えば、最大捩り剛性を示す点線lmaxから最小捩り剛性を示す点線lminの範囲で要求された場合、ゴムの物性、ゴム層厚さ、材質を選定していくことで、伝達トルクの応答性のヒステリシスhを設定できる。
【0066】
このように、本発明は、2動力伝達系の2軸をつなぐ軸継手として、偏芯度や交角による荷重変化をインナー部材の撓み度で受けるようになし、トルク伝達の応答性は、インナーブッシュ24とインナー部材21の筒部23間のクリアランスcを調整し、そのクリアランスc間に介在するゴム層25cの捩り方向ばね定数を、そのゴム層厚さ、材質、硬度を調整することで自在に選定でき、これにより回転脈動や振動を吸収して動力を伝達できると共に偏芯に対しても自在に弾性変形して回転をスムーズに伝達できる。
【0067】
また、2動力伝達系の2軸間の偏芯度や交角変化が大きい場合には、インナーブッシュ24とインナー部材21の筒部23間の間隔を大きくし、その間に、偏芯度と交角を伝達すると共に捩り方向ばね定数を選定する調整ブッシュ29を設けることで、偏芯度や交角変化が大きくても支障なく回転を伝達できる。