【実施例】
【0013】
以下本発明の一実施例による車両用監視表示装置について説明する。
図1は本実施例による車両用監視表示装置を機能実現手段で表したブロック図である。
本実施例による車両用監視表示装置は、車両周辺を撮像する撮像手段10と、機材収納状態や、キャビン扉または荷台扉の収納開閉状態を検知する収納検知手段20と、車両の走行と停止とを検知する走行停止検知手段30と、撮像手段10で撮像する映像および収納検知手段20で検知する機材収納状態または収納開閉状態を表示する表示手段40と、撮像手段10、収納検知手段20、および走行停止検知手段30からの信号を入力し、表示手段40に信号を出力する処理手段50と、処理手段50の電源をON/OFFする電源ON/OFF手段60と、表示手段40でのグラフィック表示40Aと映像表示40Bとを手動で切り替える手動切替手段70と、警告音を出力する警告音出力手段80とを備えている。
【0014】
撮像手段10は、車両の前方向、後方向、左側面方向、右側面方向を撮影する少なくとも4つのカメラを備え、全周囲を撮影できることが好ましい。
収納検知手段20は、クレーンや投光器などの機材の収納状態を検知する機材収納検知センサ21、運転席、補助席、および後部座席に対応して設けた扉の開閉を検知するキャビン扉検知センサ22、荷台のシャッターやステップの開閉を検知する荷台扉検知センサ23の少なくとも一つからなる。
走行停止検知手段30は、サイドブレーキのON/OFF検知、またはシフトレバーのシフト検知が好ましいが、加速度センサによる加速度検知や速度検知を用いることもできる。走行停止検知手段30を、サイドブレーキのON/OFF検知またはシフトレバーのシフト検知とすることで、例えば信号での一時停止でのグラフィック表示40Aと映像表示40Bとの切り替わりを無くし、停車に限って切り替えることができる。
表示手段40には、画面を非表示とする非表示選択手段41を備えていることが好ましい。非表示選択手段41は、スイッチやタッチパネルで選択操作でき、非表示を指示することで、グラフィック表示40Aおよび映像表示40Bいずれの状態でも消灯させることができる。
【0015】
処理手段50として、映像処理手段51と、グラフィック処理手段52と、収納表示処理手段53と、画面入力切替処理手段54とを備えている。
映像処理手段51は、撮像手段10で撮像された映像を映像表示40Bとして処理する。例えば映像処理手段51が4つのカメラを備えて全周囲を撮影する場合には、車両上方から見た鳥瞰図として表示処理し、または車両の走行方向に合わせて運転席から死角となる映像を選択して表示処理する。
グラフィック処理手段52は、収納検知手段20で検知された、機材収納状態や、キャビン扉または荷台扉の収納状態や開閉状態を、車両の形状とともにグラフィック表示として処理する。
収納表示処理手段53は、収納検知手段20により未収納状態または開状態を検出すると、未収納状態または開状態を未収納表示として、未収納状態または開状態を検出しないと、収納または閉状態を収納状態として処理する。
収納表示処理手段53では、グラフィック表示40Aおよび映像表示40Bいずれの場合にも、未収納表示40Cを表示手段40に出力する。未収納表示40Cを表示手段40に出力することで、表示手段40では、グラフィック表示40Aまたは映像表示40Bに重ねて未収納表示40Cが表示される。グラフィック表示40Aおよび映像表示40Bいずれの場合にも、未収納状態または開状態を検出すると未収納表示40Cが重ねて表示されるため、注意喚起を促すことができる。
【0016】
画面入力切替処理手段54は、グラフィック表示40Aと映像表示40Bとの切替処理を行う。
画面入力切替処理手段54では、手動切替手段70によって切替指示がなされた場合には、切替指示によってグラフィック表示40Aと映像表示40Bとを切替処理する。
また、画面入力切替処理手段54では、電源ON/OFF手段60による電源ONによってグラフィック表示40Aを表示手段40に出力し、電源ONによるグラフィック表示40Aがされた状態で、走行停止検知手段30によって車両の停止から走行への状態変化を検知すると、グラフィック表示40Aに代えて映像表示40Bを表示手段40に出力する。この自動切替によって、車両の走行前には、グラフィック表示40Aがされるため、機材収納状態や、キャビン扉または荷台扉の収納開閉状態を確認でき、車両が走行を始める時には車両周辺が映像表示40Bとして表示されるため、走行時の周辺の安全を確認できる。
また、画面入力切替処理手段54では、映像表示40Bがされるとともに未収納表示40Cがされた状態で、走行停止検知手段30によって車両の走行から停止への状態変化を検知すると、映像表示40Bに代えてグラフィック表示40Aを表示手段40に出力する。この自動切替によって、走行時に未収納表示40Cがされた場合に、車両を停止することでグラフィック表示40Aに切り替わるため、未収納状態または開状態の場所を特定できる。
なお、画面入力切替処理手段54では、電源ONによるグラフィック表示40Aがされるとともに未収納表示40Cがされた状態で、走行停止検知手段30によって車両の停止から走行への状態変化を検知すると、映像表示40Bに代えることなくグラフィック表示40Aを出力する。この場合には、警告音出力手段80によって警告音を出力する。このように自動切替を制限して警告音を出力することで、未収納状態または開状態を検出した状態で車両が走行を始めると、警告音で注意を促すことができるとともに、グラフィック表示により未収納状態または開状態の場所を特定できる。
【0017】
図2は、本実施例による車両用監視表示装置の処理流れを示すフローチャートである。
電源ON/OFF手段60による電源ONによって表示手段40ではグラフィック(グラフィック表示40A)が表示される(ステップ1)。ここで、電源ON/OFF手段60は、車両の駆動系統の始動と連動して電源ONする場合の他、車両の駆動系統や電気系統とは連動せずに電源ONする場合でもよい。また、ステップ1のグラフィックの表示がされる前に、アプリケーションソフトの起動画面、初期画面、または映像表示が一時的に表示され、これらの表示から所定時間経過後にグラフィックが表示されてもよい。
ステップ1における電源ONによるグラフィックの表示がされた状態で、走行停止検知手段30が車両の停止を検知している場合(ステップ2)には、収納検知手段20による検知が行われる(ステップ3)。
本実施例では、車両の走行と停止の検知として、走行停止検知手段30がサイドブレーキのON/OFFを検知する場合で説明する。すなわち、サイドブレーキのONは車両の停止として検知し、サイドブレーキのOFFは車両の走行として検知する。サイドブレーキのOFFによって車両が走行を始めるものではないが、車両が走行を始める条件であることから、本実施例ではサイドブレーキのOFFを走行検知としている。
【0018】
車両が停止状態にあり表示手段40にグラフィックの表示がされる場合に、収納検知手段20によって、収納状態にあることを検知すると、グラフィックに重ねて収納表示が表示される(ステップ4)。ここで収納表示は、収納状態にあることを実質的に判別できればよく、「収納」の文字で表示する他、アイコンなどのデザイン表示、記号、または色でもよい。
本実施例では、収納検知手段20として、機材収納検知センサ21、キャビン扉検知センサ22、および荷台扉検知センサ23を備えており、機材収納検知センサ21、キャビン扉検知センサ22、および荷台扉検知センサ23がすべて収納状態を検知した場合に収納表示を表示する。すなわち、機材収納検知センサ21でクレーンや投光器などの機材が収納された状態を検知し、キャビン扉検知センサ22で運転席、補助席、および後部座席に対応して設けた扉が閉であることを検知し、更に荷台扉検知センサ23で荷台のシャッターやステップが閉であることを検知した場合に収納表示を表示する。
一方、車両が停止状態にあり表示手段40にグラフィックの表示がされる場合に、収納検知手段20によって、未収納状態にあることを検知すると、グラフィックに重ねて未収納表示が表示される(ステップ5)。
本実施例では、機材収納検知センサ21、キャビン扉検知センサ22、および荷台扉検知センサ23のいずれか一つでも未収納状態を検知した場合には未収納表示を表示する。
【0019】
車両が停止状態にあり表示手段40にグラフィックとともに収納表示が表示される場合(ステップ4)に、サイドブレーキがONからOFFに切り替わったことを走行停止検知手段30が検知すると(ステップ6)、画面入力切替処理手段54によって画面入力切替処理が行われ(ステップ7)、表示手段40では、グラフィックからカメラ映像(映像表示40B)に切り替わる(ステップ8)。
車両が停止状態にあり表示手段40にグラフィックとともに未収納表示が表示される場合(ステップ5)に、サイドブレーキがONからOFFに切り替わったことを走行停止検知手段30が検知すると(ステップ9)、警告音出力手段80から警告音が出力される(ステップ10)。
警告音出力手段80から出力される警告音は、スイッチやタッチパネルでの手動操作によって停止できる機能を備えていることが好ましい。また、非表示選択手段41で表示手段40を消灯させている場合であっても、警告音出力手段80から警告音が出力されることが好ましい。また、非表示選択手段41で表示手段40を消灯させている場合に、警告音の出力とともに表示手段40を表示させることも有効である。
【0020】
ステップ6またはステップ9におけるサイドブレーキのONからOFFへの切り替わりがない、すなわち、車両が停止状態にありグラフィックの表示がされている場合には、手動切替手段70によって、いつでもグラフィックからカメラ映像に切り替えることができ(ステップ11)、手動切替手段70による切り替え操作が行われると、画面入力切替処理手段54では画面入力切替処理が行われ(ステップ12)、カメラ映像に切り替わる(ステップ13)。
ステップ11において、車両が停止状態にありグラフィックの表示がされている場合で、手動切替手段70による切り替え操作が行われていない場合には、ステップ6またはステップ9におけるサイドブレーキのONからOFFへの切り替わりがあるまで、グラフィックと収納表示または未収納表示との表示が継続する。
【0021】
ステップ8におけるカメラ映像は、車両が走行中であり、車両走行中においても収納検知手段20による検知は継続して行われている(ステップ14)。
ステップ14において、未収納状態が検知されると、表示手段40では、カメラ映像に重畳して未収納表示が表示され(ステップ15)、警告音出力手段80では警告音が出力される(ステップ16)。
ステップ15による未収納表示が表示され、ステップ16による警告音が出力された状態で、手動切替手段70で切り替え操作が行われると(ステップ17)、画面入力切替処理手段54で画面入力切替処理が行われ(ステップ18)、表示手段40でグラフィックを表示させることができ(ステップ1)、未収納場所を確認することができる。
【0022】
ステップ15による未収納表示が表示され、ステップ16による警告音が出力された状態で、手動切替手段70での切り替え操作が行われず(ステップ17)、車両を停止し、サイドブレーキをOFFからONに切り替えたことを検知すると(ステップ19)、画面入力切替処理手段54で画面入力切替処理が行われ(ステップ20)、表示手段40でグラフィックを表示させることができ(ステップ1)、未収納場所を確認することができる。
【0023】
ステップ8における車両走行中のカメラ映像の表示中には、ステップ14において収納状態を検知している限り、カメラ映像に収納表示を重畳させて表示しない。なお、ステップ8における車両走行中のカメラ映像の表示中においても、いつでも手動切替手段70による切り替え操作は可能であり、手動切替手段70で切り替え操作が行われると(ステップ21)、画面入力切替処理手段54で画面入力切替処理が行われ(ステップ18)、表示手段40でグラフィックを表示させることができる(ステップ1)。
ステップ21において、車両が走行状態にありカメラ表示がされている場合で、手動切替手段70による切り替え操作が行われていない場合には、ステップ19におけるサイドブレーキのOFFからONへの切り替わりがあるまで、またはステップ17における手動切り替え操作が行われるまでカメラ映像表示が継続する。
【0024】
ステップ13におけるカメラ映像は、車両が停止中であり、車両停止中においても収納検知手段20による検知は継続して行われている(ステップ22)。
ステップ22において、未収納状態が検知されると、表示手段40では、カメラ映像に重畳して未収納表示が表示される(ステップ23)。
車両が停止状態にあり表示手段40にカメラ表示とともに未収納表示がされる場合(ステップ23)に、サイドブレーキがONからOFFに切り替わったことを走行停止検知手段30が検知すると(ステップ24)、警告音出力手段80から警告音が出力される(ステップ25)。
【0025】
ステップ13における車両停止中のカメラ映像の表示中には、ステップ22において収納状態を検知している限り、カメラ映像に収納表示を重畳させて表示しない。なお、ステップ13における車両停止中のカメラ映像の表示中においても、いつでも手動切替手段70による切り替え操作は可能であり、手動切替手段70で切り替え操作が行われると(ステップ26)、画面入力切替処理手段54で画面入力切替処理が行われ(ステップ27)、表示手段40でグラフィックを表示させることができる(ステップ1)。
ステップ26において、車両が停止状態にありカメラ映像が表示されている場合で、手動切替手段70による切り替え操作が行われていない場合には、カメラ映像の表示が継続する。
【0026】
ステップ1におけるグラフィックの表示がされ、ステップ2においてサイドブレーキがOFFを検知している場合、すなわち車両走行中にグラフィックが表示されている場合においても収納検知手段20による検知は継続して行われている(ステップ28)。
ステップ28において、未収納状態が検知されると、表示手段40では、グラフィックに重畳して未収納表示が表示され(ステップ29)、警告音出力手段80では警告音が出力される(ステップ30)。
ステップ28において、収納状態が検知されると、表示手段40では、グラフィックの表示に重畳して収納表示が表示される(ステップ31)。
【0027】
ステップ29による未収納表示が表示され、ステップ30による警告音が出力された状態、またはステップ31による収納表示が表示された状態で、手動切替手段70で切り替え操作が行われると(ステップ32)、画面入力切替処理手段54で画面入力切替処理が行われ(ステップ7)、表示手段40でカメラ映像を表示させることができる(ステップ8)。
ステップ32において、手動切替手段70による切り替え操作が行われていない場合には、グラフィックと収納表示または未収納表示との表示が継続する。
【0028】
図3は、本発明の他の実施例による車両用監視表示装置の処理流れを示すフローチャートである。
本実施例において、
図2と同一処理については同一符号を付して説明を省略する。
本実施例においても、
図2に示す処理流れと同様に、車両が停止状態にあり表示手段40にグラフィックとともに収納表示が表示される場合(ステップ4)に、サイドブレーキがONからOFFに切り替わったことを走行停止検知手段30が検知すると(ステップ6)、画面入力切替処理手段54によって画面入力切替処理が行われ(ステップ7)、表示手段40では、グラフィックからカメラ映像に切り替わる(ステップ13)。
しかし、本実施例では、ステップ12(ステップ7)における画面入力切替処理が行われた後には、ステップ1におけるグラフィックの表示には戻ることがない。従って、ステップ6における走行停止検知手段30の検知による画面入力切替処理(ステップ7)は、電源ON後には1回に限られ、手動切替手段70による切り替え操作を除いて、その後にグラフィックからカメラ映像に自動で切り替わることはない。
また、本実施例では、
図2におけるステップ20のように、カメラ映像からグラフィックへの自動切り替えを行わない。
このように、本実施例では、自動での画面入力切替処理を、電源ON後におけるグラフィックからカメラ映像への1回に限ることで、運転者の意志に反して自動で切り替わってしまうことによる支障を防止している。
【0029】
なお、上記実施例では、一般車両すべてに適用できる車両用監視表示装置として説明したが、車両が消防車、救助工作車、救急車、または資機材搬送車などの特殊工作車両に限った場合には、下記の処理機能を有することが好ましい。
車両が特殊工作車両の場合には、例えば車両動態位置管理装置(AVM)を備え、この車両動態位置管理装置によって、出動(災害出動)、現着(現場到着)、完了(救出完了)、引揚(現場引揚)などのように、車両運用状況を管理するものがある。
また、放水(消火活動)や機材の作動(救助活動)のために、車両が備えたPTO(Power Take Off)を用いるものにあっては、PTOのON/OFFによって消防活動や救助活動の開始と終了を状況判断することができる。
従って、上記実施例における画面入力切替処理手段54では、消防活動の終了を想定し、PTOのONからOFFへの切替、モータやポンプのONからOFFへの切替、またはAVMにおける「完了」ONによって工作活動終了を検知し、表示手段40で表示されているカメラ映像を、グラフィックに切り替えることが有効である。
また、画面入力切替処理手段54では、消防活動の終了を想定し、PTOのONからOFFへの切り替え、モータやポンプのONからOFFへの切り替え、またはAVMにおける「完了」ON、によって工作活動終了を検知し、表示手段40で表示されているグラフィックを、カメラ映像に切り替えてもよい。
また、画面入力切替処理手段54では、消防活動終了後の走行を想定し、AVMにおける「引揚」ONによって消防活動終了後の走行を検知し、表示手段40で表示されているグラフィックを、カメラ映像に切り替えてもよい。