(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
米を原料の一部として用いる酒(A)を含有してなる、容器詰め柑橘類果汁含有アルコール飲料であって、飲料中の総アルコール量(ALC_B)に対する前記(A)成分に由来するアルコールの合計量(ALC_A)の割合(ALC_A/ALC_B×100)が0.01〜30v/v%である、請求項1記載の容器詰め柑橘類果汁含有アルコール飲料。
Ethyl caproate(カプロン酸エチル)を0.03〜120ppb、及び/又は、Ethyl caprylate(n-オクタン酸エチル)を0.03〜100ppb含有してなる、請求項1又は2記載の容器詰め柑橘類果汁含有アルコール飲料。
【背景技術】
【0002】
果汁含有アルコール飲料は、アルコール飲料中に果汁を含有させることによって、果実の芳香や甘酸味を楽しむことができ、その使用率を高くすると、果実由来の甘味、果汁感、味のふくらみ等を向上することが可能となる。しかしながら、果実の品種が異なると甘味や酸味の強さ等が大きく異なるため、均一な品質で飲みやすい果汁含有アルコール飲料を提供することは非常に困難である。また、容器詰めアルコール飲料は、家庭やバーなどで飲用直前にスピリッツやリキュール等のアルコール溶液と果汁等を混ぜ合わせるカクテル等のアルコール飲料とは異なり、充填工場で容器に飲料を充填後に過熱殺菌工程や、また充填工場から出荷後、流通や保管工程を経ることを想定しており、容器詰めアルコール飲料の方が、熱履歴が過酷となる。
【0003】
例えば、特許文献1では、リンゴ酸とクエン酸の配合比率が10:90〜40:60である組成物を用いることで、果汁使用率が高いものでも、果汁感はあっても香味のべたつき感のない果汁含有アルコール飲料とすることができることが開示されている。
【0004】
特許文献2では、飲料中の糖酸比及びpHを評価指標として、これらを所定範囲に調整しつつ、果汁の種類等を適宜に選択、若しくは混合することによって、所定の割合以上の果汁を含有する場合であっても、飲用時において、自然な甘味や酸味に由来する所謂果実感を十分に感じることができると共に、且つ炭酸飲料とした場合であっても、苦味と渋味が抑制され、好適な呈味性を有する容器詰果汁含有酸性飲料を提供できることが報告されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の容器詰め柑橘類果汁含有アルコール飲料は、柑橘類果汁の含有量が5〜35w/w%と高含有量であるところ、米を原料の一部として用いる酒を25v/v%の含有アルコール量換算で0.001〜10v/v%含有することに特徴を有する。ここで、「25v/v%の含有アルコール量換算」とは、実際に使用するアルコール含有液中に含まれるアルコールの容量に基づいて、25v/v%のアルコール含有液に相当する量を計算することを意味する。例えば、アルコール度数が1度のアルコール含有液A 1mLを用いる場合、Aに含まれるアルコール容量は、1mL×1/100=0.01mLとなることから、25v/v%のアルコール含有液Bに相当する量(QmL)は0.25×Q=0.01の関係を充足し、Qは0.04mLと算出され、飲料中のアルコール含有液Bの含有量(v/v%)を算出することができる。
【0012】
柑橘類果汁は、爽やかな芳香や甘酸味を有するといった特徴により飲食品の原料として人気を有する一方で、その使用比率が高まると酸味が呈味のバランスを損なうことになることから、柑橘類果汁を高含有しながらも柑橘類に特有の風味に優れる飲料を調製することは困難である。しかしながら、本願発明では、そこに、米焼酎、米スピリッツ、日本酒等の米を原料の一部として用いるお酒を1種又は2種以上を配合することで、それらに含まれる成分でもあるEthyl caproate(カプロン酸エチル)、Ethyl caprylate(n-オクタン酸エチル)が増強されて、意外にも、柑橘類果汁を高含有量で配合し高酸度のものとなったとしても柑橘類に特有の風味を良好に呈することが可能となり、本発明を完成するに至った。なお、以降、本発明の容器詰め果汁含有アルコール飲料のことを、単に、本発明のアルコール飲料と記載することもある。
【0013】
本発明における柑橘類とは、ミカン科ミカン亜科に属する植物の総称であり、例えば、レモン、グレープフルーツ(ホワイト種、ルビー種)、ライム、オレンジ類(ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ)、うんしゅうみかん、タンゴール、なつみかん、甘夏、はっさく、ひゅうがなつ、シークヮーサー、すだち、ゆず、かぼす、だいだい、いよかん、ぽんかん、きんかん、さんぼうかん、オロブランコ、ぶんたんを好適に用いることができる。これらは1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、酸含有比率の高い果実という観点から、レモン、ライム、ゆず、すだち、シークヮーサー、及びかぼすからなる群から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0014】
本発明における柑橘類果汁としては、その調製方法は特に限定なく、果実を搾汁して得られる果汁をそのまま使用するストレート果汁や公知の方法に従って得られた濃縮果汁を用いることができる。濃縮果汁としては、果汁の一部または全部が清澄化処理された果汁、すなわち透明果汁又は半透明果汁を用いてもよい。また、糖類及びはちみつ等で糖度を調整したもの、あるいは酸度が調整されたものであってもよい。また、透明果汁の他に、混濁果汁を使用することもでき、果実の外皮を含む全果を破砕し種子などの粗剛な固形物のみを除いた全果果汁、果実を裏ごしした果実ピューレ、乾燥果実の果肉を抽出した果汁、あるいは、果汁に果皮や果肉を細かく砕いたものを混合したコミュニティッド果汁を用いることもできる。
【0015】
柑橘類果汁の含有量は、本発明のアルコール飲料中、果汁率換算で、5w/w%以上35w/w%以下であり、好ましくは8w/w%以上、より好ましくは10w/w%以上であり、好ましくは30w/w%以下、より好ましくは25w/w%以下である。ここでいう「果汁率」とは、果実を搾汁して得られるストレート果汁を100%としたときの相対濃度をいい、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)に示される各果実に特有の糖用屈折指示度の基準(Bx)又は酸度の基準(%)に基づいて換算できる。なお、本願では、分析・計算によって、アルコール飲料に含まれる果汁濃度を、ストレート果汁を100%としたときの相対濃度に計算して「ストレート換算値」と呼ぶ。
【0016】
なお、本発明においては、前記柑橘類果汁に加えて、その他の種類の果汁が配合されてもよい。例えば、リンゴ果汁、ブドウ果汁、モモ果汁、熱帯果実果汁(パイナップル、グァバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、パパイヤ、パッションフルーツ及びライチ等)、その他果実の果汁(ウメ果汁、ナシ果汁、アンズ果汁、スモモ果汁、ベリー果汁、キウイフルーツ果汁、サクランボ果汁及びクリ果汁等)、スイカ果汁、トマト果汁、ニンジン果汁、イチゴ果汁、及びメロン果汁等が配合されていてもよい。
【0017】
本発明では、前記した柑橘類果汁に組み合わせる原料として、米を原料の一部として用いる酒を用いることを特徴とする。
【0018】
米を原料の一部として用いる酒としては、米焼酎、米スピリッツ、及び/又は日本酒等が挙げられるが、本発明においては、柑橘らしい爽快なキレ味の観点から、米焼酎又は米スピリッツが好ましい。また、これら米焼酎又は米スピリッツに糖や果汁、香料などを加えて作られたリキュールやスピリッツも含む。
【0019】
焼酎には連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎が含まれるが、本発明で用いられる米焼酎としては、少なくとも、米を原料とした発酵液を単式蒸留器で蒸留して得られるものが好ましい。
【0020】
本発明で用いられる米スピリッツとしては、米を原料に、連続式蒸留機で蒸留しアルコール分が36度以上の酒類及び単式蒸留機で蒸留しアルコール分が45度よりも高い酒類を指す。但し、香味の観点から、主としてインディカ米を原料として黒麹菌(アワモリコウジカビ)を用いた米麹である黒麹によって発酵させ、もろみを蒸留した琉球諸島産の蒸留酒である、泡盛は除く。また、米麹のみを原料として含むものも除く。
【0021】
米を原料の一部として用いる酒の含有量は、本発明のアルコール飲料中、25v/v%の含有アルコール量換算で、香味の観点から、0.001v/v%以上、好ましくは0.01v/v%以上、より好ましくは0.05v/v%以上、更に好ましくは0.15v/v%以上であり、10v/v%以下、好ましくは5v/v%以下、より好ましくは1.5v/v%以下である。
【0022】
また、柑橘類果汁と米を原料の一部として用いる酒の重量比〔柑橘類果汁/米を原料の一部として用いる酒〕としては、酸味と刺激を和らげる効果の観点から、好ましくは5/10〜35/0.005、より好ましくは8/10〜30/0.005、更に好ましくは10/10〜25/0.005である。なお、ここで柑橘類果汁の含有量とは果汁率換算量のことである。また、米を原料の一部として用いる酒の含有量は25v/v%の含有アルコール量換算量のことであり、密度は1g/mLとして計算する。
【0023】
本発明のアルコール飲料のアルコール濃度は、特に制限はなく、好ましくは1〜12v/v(体積/体積)%、より好ましくは1〜9v/v%である。また、飲料中の総アルコール量(ALC_B)に対する前記米を原料の一部として用いる酒〔(A)成分〕に由来するアルコールの合計量(ALC_A)の割合(ALC_A/ALC_B×100)は、Ethyl caproateやEthyl caprylateの含有量を所望の含有量にする観点から、好ましくは0.01v/v%以上、より好ましくは0.1v/v%以上、更に好ましくは0.2v/v%以上であり、好ましくは30v/v%以下、より好ましくは20v/v%以下、更に好ましくは5v/v%以下である。なお、本発明におけるアルコール濃度は、振動式密度計によって測定することができる。具体的には、アルコール含有液やアルコール飲料から濾過又は超音波によって、微量含まれている(含まれていない場合もある)炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算して求める。
【0024】
本発明のアルコール飲料の製造には、前記した原料の他に、アルコール(エタノール、エチルアルコール)そのものや、アルコールを含有する飲料をアルコール原料として用いることができる。アルコール原料とは、本発明のアルコール飲料の製造に使用される、エチルアルコールを含有する液状物をいう。
【0025】
本発明に利用できるアルコール原料としては、飲用に適したアルコール含有液状物であれば特に制限はなく、それらは例えば、酵母による糖のアルコール発酵によって得ることができる。アルコール発酵の原料も特に制限されず、ブドウ、リンゴ、サクランボ及びヤシ等の果実、米、麦及びトウモロコシ等の穀物、ジャガイモ及びサツマイモ等の根菜類、並びにサトウキビ等を挙げることができる。
【0026】
アルコール原料としては、例えば、醸造酒、蒸留酒、及び蒸留酒を混和してなる混成酒等が挙げられる。醸造酒としては、例えば、ワイン及びビール等が挙げられる。蒸留酒としては、例えば、スピリッツ類(例えば、ジン、ウォッカ、ラム、及びテキーラ等のスピリッツ;原料用アルコール、ニュートラルスピリッツ等)、リキュール類、ウイスキー類(例えば、ウイスキー及びブランデー等)、ならびに焼酎(但し、米を原料の一部として用いる焼酎を除く)等が挙げられ、これらは1種で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0027】
本発明のアルコール飲料は、前記成分を含有するのであれば、他は特に限定されない。例えば、前記アルコール原料に柑橘類果汁と米を原料の一部として用いる酒を添加し、必要により、任意のその他の成分を混合して、そして、必要に応じて、水等のアルコールを含まない飲料で希釈することによって製造することができる。その他の成分としては、例えば、糖類、酸類、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、酸味料、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤及び品質安定剤等を配合することができる。米を原料の一部として用いる酒には、Ethyl caproateやEthyl caprylateが含まれているため、本発明のアルコール飲料におけるそれらの含有量を指標としながら、また、米を原料の一部として用いる酒に由来するアルコール量を考慮しながら、その含有量を調整することができる。よって、本発明では、米を原料の一部として用いる酒を用いる代わりに、Ethyl caproateやEthyl caprylateの含有量を規定することによって、本発明のアルコール飲料とすることができる。即ち、本発明の一態様として、柑橘類果汁を果汁率換算で5〜35w/w%含有し、かつ、Ethyl caproate(カプロン酸エチル)を0.03〜120ppb、及び/又は、Ethyl caprylate(n-オクタン酸エチル)を0.03〜100ppb含有する、容器詰め柑橘類果汁含有アルコール飲料を挙げることができる。
【0028】
本発明のアルコール飲料におけるEthyl caproate(カプロン酸エチル)の含有量は、チューハイに重要なキレ味と酸味の柔らかさを両立するという観点から、好ましくは0.03ppb以上、より好ましくは0.1ppb以上、更に好ましくは1ppb以上、更に好ましくは5ppb以上、更に好ましくは10ppb以上、更に好ましくは20ppb以上であり、好ましくは120ppb以下、より好ましくは100ppb以下、更に好ましくは80ppb以下である。
【0029】
また、Ethyl caprylate(n-オクタン酸エチル)の含有量は、チューハイに重要なキレ味と酸味の柔らかさを両立するという観点から、好ましくは0.03ppb以上、より好ましくは0.1ppb以上、更に好ましくは0.5ppb以上、更に好ましくは2ppb以上、更に好ましくは5ppb以上、更に好ましくは10ppb以上であり、好ましくは100ppb以下、より好ましくは60ppb以下、更に好ましくは40ppb以下である。
【0030】
爽快な柑橘香味を出す観点から、本発明のアルコール飲料の酸度は、クエン酸換算酸度(g/100mL)で、好ましくは0.40以上、より好ましくは0.45以上、更に好ましくは0.49以上であり、好ましくは1.13以下、より好ましくは1.04以下、更に好ましくは0.90以下となることが望ましい。また、果汁に由来する酸度が、本発明のアルコール飲料全体の酸度のうち、柑橘類の自然な酸味を与える観点から、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。ここで、「酸度」とは、クエン酸の酸味を基準としたときの酸味の程度を意味している。
【0031】
アルコール飲料の爽快感を高めるため、本発明のアルコール飲料には炭酸ガスが配合され発泡性を有することが好ましい。本発明のアルコール飲料の炭酸ガスのガス圧は、好ましくは0.8kgf/cm
2以上、より好ましくは0.8〜3.1kgf/cm
2の範囲であり、適宜調整を行うことができる。炭酸ガスが配合された本発明のアルコール飲料には、いわゆるチューハイの形態が含まれる。炭酸ガス圧の測定は、当業者に公知の方法によって行うことができる。例えば、京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA−500Aを用いて測定することができる。より詳細には、試料温度を20℃とし、前記ガスボリューム測定装置において容器内空気中のガス抜き(スニフト)、振とう後、炭酸ガス圧を測定する。本明細書においては、特段の記載がない限り、当該方法によって炭酸ガス圧を測定する。本発明の柑橘類果汁含有アルコール飲料の炭酸ガス圧は、特に限定されないが、測定時の液温が20℃の際のスニフト後のガス圧を意味する。
【0032】
本発明のアルコール飲料は、通常の飲料と同様、瓶、缶、樽、またはペットボトル等の密封容器に充填して、容器入り飲料とすることができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0034】
〔Ethyl caproate及びEthyl caprylateの含有量〕
・分析装置
ガスクロマトグラフィー(Agilent社製GC−MSD)
・GCオーブン温度条件
40℃(5分)− 6℃/min − 240℃
・MS条件
四重極設定値:150 イオン源設定値:230
面積値算出条件
トータルイオンモード 質量(LOW):35 質量(HIGH):550
・カラム
DB−WAXETR 60m 内径320μm 膜厚:0.25μm
・試料前処理条件
試料80μlと内部標準物質(デカン酸メチルエステル20ppmアルコール水溶液)
20μlを20mlスクリューキャップバイアル瓶中で混合
・ダイナミックヘッドスペース条件
装置:ゲステル社MPS
吸着剤:TENAX
試料気化温度:80℃
試料気化用ガス供給量:3000ml
試料気化用ガス供給速度 100ml/min
試料気化用ガス種類 窒素
・ピーク保持時間
MSの解析によって成分および濃度の同定を行った。
【0035】
試験例1
柑橘類果汁含有アルコール飲料を下記のように調製した。具体的には、表1に示す組成に従って、果汁含有量は果汁率換算で12w/w%、飲料全体の酸度は0.54、pHは3.0となるように、各成分を混合後、1.8kgf/cm
2になるように炭酸ガスを加え、缶に充填しその後熱水にて殺菌し、容器詰め柑橘類のチューハイ(実施例及び比較例)を調製した。
【0036】
得られたチューハイの香味を、評点法による官能試験によって評価した。良く訓練された官能評価者5名が、「酸の刺激感」、「柑橘風味」、「キレ」について5点満点でそれぞれ評価した。「とても感じる」を5点、「感じる」を4点、「やや感じる」を3点、「わずかに感じる」を2点、「感じない」を1点として、評価点の平均点を算出した。なお、「酸の刺激感」は点数が少ない方がよく、「柑橘風味」及び「キレ」は点数が高い方が良い。また、コントロール(比較例1−1)に対する相対評価で、各評価項目を勘案して、総合評価も行った。「とても良い」を「◎」、「良い」を「○」、「わずかに良い」を「△」、「変わらない又は劣る」を「×」とし、「コントロール」を「---」として、評価点を付けた。「◎」〜「△」の総合評価であれば本発明の効果を有すると判断することができる。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1の結果より、米焼酎とレモン果汁を含有する柑橘類果汁含有アルコール飲料は、米焼酎の含有量によって、「酸の刺激感」が緩和され、「柑橘風味」及び「キレ」の強度は残っていることがわかる(実施例1−1〜1−7)。また、米焼酎を用いなかった比較例1−1では、「酸の刺激感」が強くあり、舌や喉で強い酸刺激を感じるため、チューハイらしいキレや果実由来の風味はしっかりと感じられるが飲みづらい。一方、実施例1−1では、その刺激感が和らぎ飲み進めやすくなるが、キレや果実由来の酸味は比較例1−1と変わらない。実施例1−2〜1−5にかけても同様で、キレや果実由来の風味は比較例1−1と変わらないが、米焼酎の量が増えるにつれて、舌や喉で感じる酸刺激は徐々に和らぎ、非常に飲みやすい。実施例1−6では、酸刺激は少ないものの、かすかに果実以外の甘い香味を感じ、後味のキレも比較例1−1に比べると僅かに減少している。実施例1−7では、甘い香味や酒臭さを感じるようになるものの、刺激感が和らぎ、まだ柑橘としての風味がまだ立っており、チューハイとしてのキレも残っている。米焼酎の量が多過ぎる比較例1−2及び1−3では、上記の酒臭さと清酒様の香りが柑橘の味わいを邪魔して味が分かりにくくなり、また後味に酒の甘味が残り、べたつきがあり、キレが悪く、好ましくない。
【0039】
試験例2
試験例1における比較例1−1に、Ethyl caproate(カプロン酸エチル)を表2に示す濃度になるように添加して、炭酸ガスを加え、缶に充填しその後熱水にて殺菌し、容器詰め柑橘類のチューハイを調製した。試験例1と同様にして官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
表2の結果より、容器詰め柑橘類のチューハイ内のEthyl caproate(カプロン酸エチル)含有量によって、「酸の刺激感」が緩和され、「柑橘風味」及び「キレ」の強度は残っていることがわかる(実施例2−1〜2−9)。より詳しくは、実施例2−1及び2−2では、酸刺激感がわずかに少なく感じられる。実施例2−3〜2−5は明確に、酸刺激が和らいだのを認識でき、柑橘風味、キレに関しても優れている。実施例2−6及び2−7では、酸刺激は少なくなっているものの、かすかに果実以外の甘い香味を感じ、後味のキレも比較例1−1に比べて僅かに減少している。実施例2−8及び2−9では米焼酎と同様に甘い香りが、柑橘の味わいに混ざってくるが、まだキレもある。また、Ethyl caproate(カプロン酸エチル)含有量が、10ppb以上100ppb以下の場合(実施例2−2〜2−8)、「酸の刺激感」、「柑橘風味」、「キレ」及び「総合評価」の評価がよく、さらに20ppb以上80ppb以下の場合(実施例2−3〜2−7)、それらの評価がさらによいことがわかる。一方、比較例2−1、2−2では、甘い香りが柑橘を邪魔しており、後味もべたつくため好ましくない。
【0042】
試験例3
試験例1における比較例1−1に、Ethyl caprylate(n-オクタン酸エチル)を表3に示す濃度になるように添加して、1.8kgf/cm
2になるように炭酸ガスを加え、缶に充填しその後熱水にて殺菌し、容器詰め柑橘類のチューハイを調製した。試験例1と同様にして官能評価を行った。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
表3の結果より、容器詰め柑橘類のチューハイ内のEthyl caprylate(n−オクタン酸エチル)含有量によって、「酸の刺激感」が緩和され、「柑橘風味」及び「キレ」の強度は残っていることがわかる(実施例3−1〜3−10)。より詳しくは、実施例3−1〜3−3では、酸刺激感がわずかに少なく感じられる。実施例3−4及び3−5は明確に、酸刺激が和らいだのを認識できるが、柑橘風味、キレに関しても優れている。実施例3−6及び3−7では、酸刺激は少なくなっているものの、果実以外の香味、苦味をかすかに感じるようになり、後味のキレも比較例1−1に比べて僅かに減少している。実施例3−8〜3−10では徐々に甘苦味が上昇するが、柑橘味やキレが減少するものの容認されるレベルである。また、Ethyl caprylate(n−オクタン酸エチル)含有量が、5ppb以上60ppb以下の場合(実施例3−2〜3−8)、「酸の刺激感」、「柑橘風味」、「キレ」及び「総合評価」の評価がよく、さらに15ppb以上40ppb以下の場合(実施例3−4〜3−7)、それらの評価がさらによいことがわかる。一方、比較例3−1、3−2では、特に苦味がキレを邪魔しており、好ましくない。