(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書において組成物中の各成分の量は、粘着剤組成物中に各成分に該当する物質を複数種併用する場合には、特に断らない限り、その成分に該当する複数種の物質の合計量を意味する。
さらに(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタアクリレートの少なくとも一方を意味する。
さらに(メタ)アクリル系重合体とは、(メタ)アクリル系重合体を構成する単量体のうち、少なくとも主成分である単量体が(メタ)アクリロイル基を有する単量体である重合体を意味する。ここでいう主成分である単量体とは、重合体を構成する単量体の中で最も含有率(質量%)が大きい単量体を意味する。本発明の一実施態様で用いる(メタ)アクリル系重合体では、主成分である(メタ)アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が全構成単位の50質量%以上である。
さらに粘着剤組成物とは、架橋反応が終了する前の組成物であって、例えば、液状、ペースト状又は粉末状の組成物を意味する。
さらに粘着剤層とは、架橋反応が終了した後の層であって、例えば、固形状又はゲル状の層を意味する。
【0016】
〔粘着剤組成物〕
本発明における粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%〜7質量%有する(メタ)アクリル系重合体100質量部と、イソシアネート化合物0.02質量部〜2質量部と、イミダゾール化合物0.007質量部以上と、アルカリ金属塩と、を含む。
【0017】
[(メタ)アクリル系重合体]
本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を、全構成単位に対して0.1質量%〜7質量%有している。
【0018】
水酸基を有する単量体としては、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体、不飽和アルコールが挙げられる。
【0019】
水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートに代表されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミドが挙げられる。
【0020】
中でも水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、他の単量体との相溶性及び共重合性が良好である点から、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートがより好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレートが更に好ましい。
【0021】
不飽和アルコールとしては、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコールが挙げられる。
【0022】
本発明における粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%以上有する(メタ)アクリル系重合体を含むため、粘着剤層としたときに柔らかくなりすぎず、高温環境下や高温高湿環境下にて発泡が抑制され、耐熱性及び耐湿熱性に優れる。
【0023】
本発明における粘着剤組成物は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して7質量%以下有する(メタ)アクリル系重合体を含むため、粘着剤層としたときに硬く脆くならず、高温環境下や高温高湿環境下にて剥離が抑制され、耐熱性及び耐湿熱性に優れる。
【0024】
本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を、全構成単位に対して0.1質量%〜7質量%有するが、高温環境下や高湿環境下における発泡及び剥離を抑制する観点から、0.3質量%〜6質量%有することが好ましく、0.5質量%〜5質量%有することがより好ましい。
【0025】
本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体は、水酸基を有する単量体を重合成分としているが、さらにアルキル(メタ)アクリレートを主成分とした共重合体であることが好ましい。また、本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体は、必要に応じて、その他の単量体等を共重合成分としてもよい。ここで、アルキル(メタ)アクリレートを主成分とした共重合体とは、共重合体中の構成単位100質量%に対し、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を50質量%以上有する共重合体である。
【0026】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、その種類は特に制限されないが、無置換のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、直鎖、分枝又は環状のいずれであってもよい。また、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は1〜18が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜4が更に好ましい。
【0027】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0028】
また、耐熱性及び耐湿熱性を良好に保ちつつ粘着力を調整しやすくするため、アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート及びt−ブチル(メタ)アクリレートの少なくともいずれかが好ましく、メチル(メタ)アクリレート及びt−ブチル(メタ)アクリレートの少なくとも一方のアルキル(メタ)アクリレートと、n−ブチル(メタ)アクリレートと、の組み合わせが更に好ましい。
【0029】
本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体は、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を、全構成単位に対して50質量%〜99.9質量%有することが好ましく、80質量%〜99.7質量%有することがより好ましく、93質量%〜99.5質量%有することが更に好ましい。
【0030】
本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体は、耐熱性と耐湿熱性を良好に保つため、メチルアクリレート及びt−ブチルアクリレートの少なくとも一方の単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して5質量%〜45質量%有することが好ましい。
【0031】
また、本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体は、粘着力を調整しやすくするため、n−ブチルアクリレートに由来する構成単位を全構成単位に対して55質量%〜94質量%有することが好ましい。
【0032】
本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体は、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位を有してもよい。
【0033】
カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2−ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
(メタ)アクリル系重合体における、カルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、ITO(酸化インジウムスズ)の腐食を抑制する観点から、全構成単位に対して0.2質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0質量%すなわち含まないことが更に好ましい。
【0035】
本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体は、水酸基を有する単量体に由来する構成単位、任意であるアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位、任意であるカルボキシ基を有する単量体に由来する構成単位、に加え、その他の単量体に由来する構成単位を有してもよい。その他の単量体としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートに代表される芳香族環を有する(メタ)アクリル系単量体、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートに代表される窒素原子を有する(メタ)アクリル系単量体、スチレン、α−メチルスチレンに代表される芳香族モノビニル単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルに代表されるシアン化ビニル単量体や、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルに代表されるカルボン酸ビニル単量体が挙げられる。
【0036】
本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、とくに制約はないが、粘着剤層としたとき耐熱性及び耐湿熱性をより向上させる点から、70万〜200万の範囲が好ましく、90万〜200万の範囲が好ましい。重量平均分子量は、重合反応温度、時間、有機溶媒の量などにより調整することができる。重量平均分子量が70万〜200万の範囲であれば、本発明の粘着剤組成物の粘度が低く、塗布性が良好であり好ましい。
【0037】
(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定された値である。
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
下記(1)〜(3)に従って測定する。
(1)(メタ)アクリル系重合体溶液を剥離紙に塗布し、100℃で1分間乾燥し、フィルム状の(メタ)アクリル系重合体を得る。
(2)前記(1)で得られたフィルム状の(メタ)アクリル系重合体をテトラヒドロフランにて固形分0.2%になるように溶解させる。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算値として、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を測定する。
(条件)
GPC:HLC−8220 GPC〔東ソー株式会社製〕
カラム:TSK−GEL GMHXL〔東ソー株式会社製〕4本使用
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/min
カラム温度:40℃
【0038】
本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は、粘着剤組成物に十分な凝集力を与え、十分な耐熱性及び耐湿熱性を発揮させることを目的として、−55℃以上が好ましく、−45℃以上がより好ましい。また、Tgは、ガラス基板に対する十分な密着性を粘着剤組成物に発揮させ、剥がれ等が生じない耐熱性及び耐湿熱性を発揮させることを目的として、−25℃以下が好ましい。
【0039】
Tgは、それぞれの共重合体について、下記式の計算により求められる絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算した値である。
【0040】
【数1】
式中、Tg
1、Tg
2、・・・・・及びTg
nは、単量体1、単量体2、・・・・・及び単量体nそれぞれの単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度である。m
1、m
2、・・・・・及びm
nは、それぞれの単量体のモル分率である。
【0041】
なお、「単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度」は、その単量体を単独で重合して製造した単独重合体の絶対温度(K)で表されるガラス転移温度をいう。単独重合体のガラス転移温度は、その単独重合体を、示差走査熱量測定装置(DSC)(セイコーインスツルメンツ社製、EXSTAR6000)を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られたDSCカーブの変曲点を、単独重合体のガラス転移温度としたものである。
【0042】
代表的な単量体の「単独重合体のセルシウス温度(℃)で表されるガラス転移温度」は、メチルアクリレートは5℃であり、エチルアクリレートは−27℃であり、n−ブチルアクリレートは−57℃であり、2−エチルヘキシルアクリレートは−76℃であり、2−ヒドロキシエチルアクリレートは−15℃であり、4−ヒドロキシブチルアクリレートは−39℃であり、t−ブチルアクリレートは41℃であり、アクリル酸は163℃である。例えば、これら代表的な単量体を用いることで、前述のガラス転移温度を適宜調整することが可能である。
なお、絶対温度(K)から273を引くことで絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算可能であり、セルシウス温度(℃)に273を足すことでセルシウス温度(℃)を絶対温度(K)に換算可能である。
【0043】
また、アルキル(メタ)アクリレートとしては、粘着剤層としたときの耐熱性及び耐湿熱性をより向上させる点から、単独重合体のTgがより低いアルキル(メタ)アクリレートと、単独重合体のTgがより高いアルキル(メタ)アクリレートと、を含むことが好ましい。単独重合体のTgがより低いアルキル(メタ)アクリレートとしては、単独重合体のTgが−60℃以上−40℃以下のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、具体的には、n−ブチルアクリレートが挙げられる。単独重合体のTgがより高いアルキル(メタ)アクリレートとしては、単独重合体のTgが0℃以上50℃以下のアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、具体的には、t−ブチルアクリレート、メチルアクリレートが挙げられる。
【0044】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、単独重合体のTgがより低いアルキル(メタ)アクリレートを、50質量%〜99.9質量%有することが好ましく、55質量%〜94質量%有することがより好ましい。さらに、アルキル(メタ)アクリレートとしては、粘着剤層としたときの耐熱性及び耐湿熱性をさらに向上させる点から、単独重合体のTgがより高いアルキル(メタ)アクリレートを、0質量%〜49.9質量%有することが好ましく、5質量%〜45質量%有することがより好ましい。なお、本発明において、単独重合体のTgがより低いアルキル(メタ)アクリレート及び単独重合体のTgがより高いアルキル(メタ)アクリレートのうち、単独重合体のTgがより低いアルキル(メタ)アクリレートのみをアルキル(メタ)アクリレート成分として含んでいてもよい。
【0045】
本発明で用いる(メタ)アクリル系重合体の製造方法は、特に制限されないが、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などの方法で単量体を重合して製造できる。なお、製造後に本発明における粘着剤組成物を調製するにあたり、処理工程が比較的簡単かつ短時間で行えることから、溶液重合が好ましい。
【0046】
溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、単量体、重合開始剤、及び、必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させる等の方法を使用することができる。なお、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、反応温度、時間、溶剤量、触媒の種類や量を調整することにより、所望の値にできる。
【0047】
(メタ)アクリル系重合体の重合反応時に用いられる有機溶媒としては、芳香族炭化水素化合物、脂肪系又は脂環族系炭化水素化合物、エステル化合物、ケトン化合物、グリコールエーテル化合物、アルコール化合物などが挙げられる。これらの有機溶媒はそれぞれ1種単独でも、2種以上混合して用いてもよい。
【0048】
重合反応時に用いられる有機溶媒としては、より具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、テトラリン、デカリン、及び芳香族ナフサに代表される芳香族炭化水素系有機溶媒、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、i−オクタン、n−デカン、ジペンテン、石油スピリット、石油ナフサ、及びテレピン油に代表される脂肪族炭化水素系又は脂環族炭化水素系の有機溶媒、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸2−ヒドロキシエチル、酢酸2−ブトキシエチル、酢酸3−メトキシブチル、及び安息香酸メチルに代表されるエステル系有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノンに代表されるケトン系有機溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルに代表されるグリコールエーテル系有機溶媒、並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、及びt−ブチルアルコールに代表されるアルコール系有機溶媒が挙げられる。
【0049】
また、重合開始剤としては、例えば、通常の重合方法で使用できる有機過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。
【0050】
[イソシアネート化合物]
本発明における粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して0.02質量部〜2質量部のイソシアネート化合物を含む。
イソシアネート化合物は、架橋剤として機能する。
【0051】
イソシアネート化合物としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネートに代表される芳香族ポリイソシアネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、前記した芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物に代表される鎖状又は環状の脂肪族ポリイソシアネート化合物、これらのポリイソシアネート化合物のビュレット体、2量体、3量体又は5量体、これらのポリイソシアネート化合物と、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体が挙げられる。これらのイソシアネート化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
中でも、イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートの2量体、トリレンジイソシアネートとポリオールとのアダクト体、トリレンジイソシアネートの3量体又は5量体であるイソシアヌレート体、トリレンジイソシアネートのビュレット体などの各種トリレンジイソシアネートに由来するトリレンジイソシアネート化合物が好ましい。さらに、反応性に優れ架橋密度を高めることができる点、並びに(メタ)アクリル系重合体との相溶性に優れる点から、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートの3量体若しくは5量体であるイソシアヌレート体又はトリレンジイソシアネートとポリオールとのアダクト体が好ましく、特に架橋密度が高く耐熱性及び耐湿熱性に優れる点、及び後述するイミダゾール化合物との併用により養生時間を短縮しやすい点から、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートの3量体若しくは5量体であるイソシアヌレート体又はトリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとのアダクト体が特に好ましい。
【0053】
本発明における粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、イソシアネート化合物を0.02質量部以上含む。そのため、(メタ)アクリル系重合体と、イソシアネート化合物と、の架橋反応を十分に進行させることができ、高温環境下や高温高湿環境下にて発泡が抑制され、耐熱性及び耐湿熱性に優れる。
【0054】
本発明における粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、イソシアネート化合物を2質量部以下含む。そのため、(メタ)アクリル系重合体と、イソシアネート化合物と、の架橋反応が過剰に進行せず、高温環境下や高温高湿環境下にて剥離が抑制され、耐熱性及び耐湿熱性に優れる。
【0055】
粘着剤組成物におけるイソシアネート化合物の含有量は、高温環境下や高湿環境下における発泡及び剥離を抑制する観点から、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.03質量部〜1.0質量部の範囲が好ましく、0.03質量部〜0.5質量部の範囲がより好ましく、0.05質量部〜0.3質量部の範囲が更に好ましい。
【0056】
イソシアネート化合物は、市販品を使用できる。市販品としては、例えば、東ソー株式会社製の「コロネートHX」、「コロネートHL−S」、「コロネートL」、「コロネート2031」、「コロネート2030」、「コロネート2037」、「コロネート2234」、「コロネート2785」、「アクアネート200」、及び「アクアネート210」、住化コベストロウレタン株式会社製の「スミジュールN3300」、「デスモジュールN3400」、及び「スミジュールN−75」、旭化成ケミカルズ株式会社製の「デュラネートE−405−80T」、「デュラネート24A−100」、及び「デュラネートTSE−100」、並びに、三井化学株式会社製の「タケネートD−110N」、「タケネートD−120N」、「タケネートM−631N」、及び「MT−オレスターNP1200」の商品名により市販されているものを好適に使用できる。
【0057】
[その他の架橋剤]
本発明における粘着剤組成物は、本発明の目的を損なわない範囲にて、イソシアネート化合物以外のその他の架橋剤を含んでもよい。その他の架橋剤としては、特に制限されないが、ポリエポキシ化合物、ポリアジリジン化合物、金属キレート化合物等を挙げることができる。これらその他の架橋剤は、1種単独を、又は2種以上を、イソシアネート化合物と組み合わせて使用することができる。
【0058】
[イミダゾール化合物]
本発明における粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.007質量部以上のイミダゾール化合物を含む。イミダゾール化合物は、粘着剤組成物において、例えば架橋触媒として機能する。粘着剤組成物が0.007質量部以上のイミダゾール化合物を含むことで、優れた耐熱性及び耐湿熱性を維持しつつ、養生時間を短縮することができる。
【0059】
イミダゾール化合物としては、分子中に少なくとも1つのイミダゾール環を有する化合物であれば特に制限されないが、養生時間を短縮し、かつポットライフを長くする観点から、N置換イミダゾール化合物が好ましい。N置換イミダゾール化合物は、分子中に少なくとも1つのイミダゾール環を有し、イミダゾール環の窒素原子上に水素原子を有さない化合物であれば特に制限されない。
【0060】
N置換イミダゾール化合物の具体例としては、下記化学式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0062】
化学式(II)において、式(I)中、R
1、R
2及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R
3は、置換基を表す。好ましくは、化学式(II)において、R
1、R
2、及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、R
3はアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R
1及びR
2、又はR
3及びR
4は互いに連結して環状構造を形成してもよい。
【0063】
化学式(II)におけるアルキル基(R
1〜R
4)は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。また、アルキル基の炭素数は1〜2が好ましい。化学式(II)におけるアリール基(R
1〜R
4)は、炭素数が6〜10が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましい。化学式(II)におけるアラルキル基(R
1〜R
4)は、炭素数1〜2のアルキレン基と炭素数6〜10のアリール基とからなることが好ましく、ベンジル基又はフェニルエチル基がより好ましい。
【0064】
化学式(II)で表されるN置換イミダゾール化合物は、養生時間を短縮し、かつポットライフを長くする観点から、R
3がアルキル基又はアラルキル基であって、R
1、R
2及びR
4がそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基が好ましい。中でも、化学式(II)で表されるN置換イミダゾール化合物は、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール及び1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。またR
3及びR
4が互いに連結して5〜6員の飽和脂肪族環を形成し、R
1及びR
2が互いに連結して6員の芳香族環を形成する態様も好ましく、養生時間短縮の観点から、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾールがより好ましい。
【0065】
N置換イミダゾール化合物の市販品としては、例えば、四国化成工業株式会社製の「キュアゾール 1,2DMZ」、「キュアゾール 1B2MZ」、「キュアゾール 1B2PZ」、「キュアゾール TBZ」が挙げられる。
【0066】
粘着剤組成物におけるイミダゾール化合物の含有量は、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.01質量部〜3.0質量部の範囲が好ましく、0.02質量部〜2.0質量部の範囲がより好ましく、0.02質量部〜1.0質量部の範囲が更に好ましい。なお、イミダゾール化合物の含有量が3.0質量部以下であると、ポットライフに優れる傾向がある。
【0067】
なお、反応速度を上げて養生時間を短縮するため、架橋触媒として錫化合物などのイミダゾール化合物以外の架橋触媒を併用使用してもよい。
【0068】
[アルカリ金属塩]
本発明における粘着剤組成物は、アルカリ金属塩を含む。アルカリ金属塩は、偏光子を劣化させにくく、かつ優れた導電性を粘着剤層に付与できる。これにより、本発明における粘着剤組成物は、粘着剤層としたときの帯電防止性及び光学耐久性に優れる。
【0069】
アルカリ金属塩としては、アルカリ金属からなる陽イオンと、陰イオンと、から形成された塩であれば特に制限されない。
【0070】
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが挙げられ、中でもリチウムが好ましい。
【0071】
陰イオンとしては、特に制限されないが、フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンであることが好ましく、フルオロ基としてはトリフルオロメチル基が好ましい。
【0072】
アルカリ金属塩としては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのアルカリ金属塩又はトリフルオロメタンスルホン酸イオンのアルカリ金属塩であることが好ましく、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドのリチウム塩又はトリフルオロメタンスルホン酸イオンのリチウム塩がより好ましい。
【0073】
粘着剤組成物におけるアルカリ金属塩の含有量は、帯電防止性、耐熱性及び耐湿熱性をより向上させる点から、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。
【0074】
[ポリエーテル化合物]
本発明における粘着剤組成物は、下記化学式(I)で表されるポリエーテル化合物を含むことが好ましい。粘着剤組成物が、前述のアルカリ金属塩と、化学式(I)で表されるポリエーテル化合物と、を含むことにより帯電防止性がより向上する傾向がある。これは、金属塩に由来する金属カチオンと、下記化学式(I)で表されるポリエーテル化合物とが金属錯体を形成するためと推測される。さらに、粘着剤組成物が、化学式(I)で表されるポリエーテル化合物を含むことにより、粘着剤層としたときのリワーク性が向上する。
なお、リワーク性とは、貼り直し作業時の剥がしやすさであり、リワーク性が優れるほど貼り直し作業を容易に行うことができる。
【0076】
式中、2つのRはそれぞれ独立にアルキル基を表し、mは3以上の整数である。アルキル基としては、炭素数1〜14のアルキル基が好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基などが好ましい。また、mは4以上の整数であることが好ましく、40以下の整数であることがより好ましい。
【0077】
化学式(I)で表されるポリエーテル化合物は、分子量が250〜2000であることが好ましく、より好ましくは500〜1500である。また、化学式(I)で表されるポリエーテル化合物は、25℃での粘度が、30mPa・s〜600mPa・sであることが好ましい。
【0078】
前述のアルカリ金属塩の含有量に対する化学式(I)で表されるポリエーテル化合物の含有量は、粘着剤層としたときのリワーク性をさらに向上させる点から、質量基準で0.1〜2.0であることが好ましく、0.5〜1.5であることがより好ましく、0.8〜1.5であることが更に好ましい。
【0079】
また、粘着剤組成物における化学式(I)で表されるポリエーテル化合物の含有量は、粘着剤層としたときのリワーク性をさらに向上させる点から、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、0.8質量部以上であることが更に好ましい。
【0080】
[シランカップリング剤]
本発明における粘着剤組成物は、シランカップリング剤を更に含んでいてもよい。粘着剤組成物がシランカップリング剤を含む場合、粘着剤層がガラス基板に対してより優れた接着性を示し、偏光板が組み込まれた液晶表示装置が高温環境下又は高温高湿環境下に曝されても、粘着剤層とガラス基板との間に剥がれがより発生し難くなる傾向がある。
【0081】
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプト基を有するカップリング剤、エポキシ基を有するカップリング剤、カルボキシ基を有するカップリング剤、アミノ基を有するカップリング剤、ヒドロキシル基を有するカップリング剤、アミド基を有するカップリング剤、イソシアネート基を有するカップリング剤、及びイソシアヌレート骨格を有するカップリング剤が挙げられる。これらシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
シランカップリング剤は、上市されている市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製の「KBM−803」、「KBM−403」、「KBM−303」、「KBM−402」、「KBE−402」、「KBE−403」(商品名)に代表されるエポキシ基を有するシランカップリング剤を好適に使用することができる。
【0083】
粘着剤組成物におけるシランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、0.01質量部〜3.0質量部の範囲が好ましく、0.05質量部〜1.0質量部の範囲がより好ましく、0.1質量部〜0.5質量部の範囲が更に好ましい。
【0084】
[有機溶媒]
また、本発明における粘着剤組成物は、塗布性向上のために有機溶媒が添加されていてもよい。粘着剤組成物に含まれる有機溶媒としては、例えば、前述の重合反応時に用いられる有機溶媒が挙げられる。
【0085】
[その他の成分]
本発明における粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系重合体、イソシアネート化合物、イミダゾール化合物、アルカリ金属塩の他に、必要に応じて、前述のポリエーテル化合物、シランカップリング剤、有機溶媒及びその他の架橋剤や、耐候性安定剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、剥離助剤、染料、顔料、無機充填剤、界面活性剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物などの光安定剤等を適宜含有してもよい。
【0086】
〔粘着シート〕
本発明は、上述した粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する粘着シートであってもよい。本発明における粘着シートは、基材を有しない無基材タイプの粘着シートでもよく、光学フィルムなどの基材の少なくとも片面に粘着剤層を有する有基材タイプの粘着シートでもよい。
【0087】
本発明の粘着シートにおいて、粘着剤層の厚さは、特に制限されないが、用途や要求性能により適宜選択することができる。粘着剤層の厚さとして、例えば1μm〜100μmの範囲が挙げられる。
【0088】
本発明の粘着シートを光学用途に使用する場合、粘着剤層は、透明性が高いことが好ましい。具体的には、JIS K 7361(1997年)に従って測定される可視光波長領域における粘着剤層の全光線透過率は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
また、JIS K 7136(2000年)に従って測定される粘着剤層のヘイズは、2.5%以下が好ましく、2.0%以下がより好ましく、1.5%以下が更に好ましい。
【0089】
本発明における粘着シートの露出した粘着剤層は、剥離フィルムによって保護されていてもよい。剥離フィルムとしては、粘着剤層からの剥離が容易に行なえるものであれば特に制限されないが、例えば、剥離処理剤を用いて少なくとも片面に易剥離処理が施された樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムに代表されるポリエステルフィルムが挙げられる。剥離処理剤として、例えば、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン、長鎖アルキル基化合物が挙げられる。剥離フィルムは、粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0090】
本発明における粘着シートは、例えば、本発明における粘着剤組成物を剥離フィルムや基材に塗布し、乾燥後に一定期間養生することによって粘着剤層を形成して作製できる。養生の条件は、例えば23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で1〜10日間とすることができる。粘着剤層を養生することにより、イソシアネート化合物によって(メタ)アクリル系重合体を十分に架橋された状態とすることができる。
【0091】
無基材タイプの粘着シートは、例えば、剥離フィルムの剥離処理面に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させ、粘着剤組成物の層を形成し、得られた前記層の、剥離フィルムと接しない露出した面に、別の剥離フィルムを剥離処理面が接するように重ね、養生して粘着剤層を形成する方法により作製できる。
【0092】
有基材タイプの粘着シートは、粘着剤組成物を光学フィルムなどの基材に塗布する方法により作製しても、粘着剤組成物を剥離フィルムに塗布する方法により作製してもよい。このような方法としては、例えば、剥離フィルムの剥離処理面に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させ、粘着剤組成物の層を形成し、得られた前記層の剥離フィルムと接しない露出した面に基材を貼合し、養生して粘着剤層を形成する方法が挙げられる。
【0093】
有基材タイプの粘着シートの基材は、光学フィルムを例示できる。光学フィルムとしては、具体的には、液晶表示装置に使用される光学フィルムが挙げられる。より具体的には、偏光板、位相差板、反射防止フィルム、視野角拡大フィルム、輝度向上フィルム、透明導電性フィルム(ITOフィルム)等の光学フィルムが挙げられる。
【0094】
剥離フィルムや基材に粘着剤組成物を塗布する方法としては、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等を用いた公知の方法が挙げられる。
【0095】
本発明における粘着シートは、液晶表示装置の光学フィルムなどの貼合に好適に用いることができる。すなわち、本発明における粘着シートは、偏光板、位相差板、反射防止フィルム、視野角拡大フィルム、輝度上昇フィルム、ITOフィルム等の光学フィルム同士の貼合、並びに前記光学フィルムと、液晶セル、ガラス基板、保護フィルムとの貼合に好適に用いることができる。また、本発明における粘着シートは、タッチパネルと、液晶セル、ガラス基板、保護フィルム等との貼合に好適に用いることができる。
【0096】
本発明における粘着シートの例としては、粘着剤層の両面に剥離フィルムを貼り合せた構造(剥離フィルム/粘着剤層/剥離フィルム)を備えた無基材タイプの粘着シート、粘着剤層の一方の面に光学フィルム、他方の面に剥離フィルムを貼り合せた構造(光学フィルム/粘着剤層/剥離フィルム)を備えた有基材タイプの粘着シートが挙げられる。
【0097】
〔粘着剤層付偏光板〕
上述した有基材タイプの粘着シートとしては、例えば、偏光子と、上述した粘着剤組成物から形成された粘着剤層と、を有する粘着剤層付偏光板が挙げられる。
本発明における粘着剤層付偏光板は、粘着剤層としたときの帯電防止性に優れ、養生時間が短く、かつ光学耐久性、耐熱性及び耐湿熱性に優れた粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する。
【0098】
本発明における粘着剤層付偏光板としては、例えば、偏光子の一方の面に粘着剤層が形成された偏光板、保護フィルムが両面に形成された偏光子の一方の面に粘着剤層が形成された偏光板が挙げられる。
偏光子の一方の面に粘着剤層が形成されている場合、すなわち偏光子と粘着剤層が直接接している場合であっても、上述した粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有するため、光学耐久性に優れる。
偏光子の両面に保護フィルムが形成されている場合、偏光板の薄肉化を図る点から、保護フィルムの厚みが60μm以下であることが好ましく、偏光子における保護フィルムとしての機能を好適に発揮させる点から、保護フィルムの厚みが10μm以上であることが好ましい。
本発明における粘着剤層付偏光板は、粘着剤層付偏光板の粘着剤層が上述した粘着剤組成物から形成されているため、保護フィルムの厚みが60μm以下、さらには40μm以下と薄くても光学耐久性に優れる。
【0099】
偏光子としては、例えば、ヨウ素が吸着配向されたポリビニルアルコール(PVA)フィルムが使用され、偏光子の保護フィルムとしては、例えばトリアセチルセルロース(TAC)フィルムが使用される。
【0100】
本発明における粘着剤層付偏光板は、粘着剤層の両面に偏光子及び剥離フィルムをそれぞれ貼り合わせた構造(偏光子/粘着剤層/剥離フィルム)であってもよく、他にも、粘着剤層の両面に、保護フィルムを粘着剤層と貼り合わせる面とは反対側に形成された偏光子、及び剥離フィルムをそれぞれ貼り合わせた構造(保護フィルム/偏光子/粘着剤層/剥離フィルム)であってもよく、あるいは、粘着剤層の両面に、保護フィルムが両面に形成された偏光子、及び剥離フィルムをそれぞれ貼り合わせた構造(保護フィルム/偏光子/保護フィルム/粘着剤層/剥離フィルム)であってもよい。
【実施例】
【0101】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0102】
[(メタ)アクリル系重合体の製造]
<製造例1>
温度計、撹枠機、窒素導入管、及び還流冷却管を備えた反応器内に、ブチルアクリレート(BA)86質量部、メチルアクリレート(MA)13質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)1質量部、酢酸エチル(EAc)80質量部を入れて混合した後、反応器内を窒素置換した。その後、反応器内の混合物を撹拌しながら70℃に昇温した後に、アゾビスジメチルバレロニトリル(ABVN)0.02質量部、酢酸エチル(EAc)80質量部を逐次添加し6時間保持して重合反応させた。重合反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、固形分を15.0質量%にした。このようにして、(メタ)アクリル系重合体の溶液を得た。
製造例1にて製造した(メタ)アクリル系重合体の単量体組成を表1に示す。なお、表1において、t−BAは、t−ブチルアクリレートを表す。
【0103】
<製造例2〜8>
以下の表1に示す単量体組成としたこと以外は、前述の製造例1と同様にして、(メタ)アクリル系重合体の溶液を得た。
製造例2〜8にて製造した(メタ)アクリル系重合体の単量体組成を表1に示す。
【0104】
製造例1〜8にて製造した(メタ)アクリル系重合体のTgについては、前述の式により求められる絶対温度(K)をセルシウス温度(℃)に換算した値である。
【0105】
<粘着剤組成物の調製>
(実施例1)
製造例1にて製造した(メタ)アクリル系重合体の溶液(固形分として100質量部)と、架橋剤であるイソシアネート化合物としてコロネート2037(東ソー株式会社製、イソシアヌレート体、有効成分として0.1質量部)と、架橋触媒であるイミダゾール化合物としてキュアゾール1B2PZ(四国化成工業株式会社製、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、有効成分として0.03質量部)と、帯電防止剤であるアルカリ金属塩としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(有効成分として1.0質量部)と、ポリエーテル化合物としてポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキソエート)(有効成分として1.0質量部)と、シランカップリング剤(SC剤)としてKBM−403(信越化学工業株式会社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、有効成分としては0.3質量部)を十分に撹拌混合して粘着剤組成物を得た。
【0106】
実施例1にて調製した粘着剤組成物の組成を表1に示す。なお、表1の架橋剤、架橋触媒、帯電防止剤及びポリエーテル化合物における種別A〜種別Iは、以下の通りである。
架橋剤 種別A:コロネート2037(東ソー株式会社製、イソシアヌレート体)
架橋剤 種別B:コロネートL(東ソー株式会社製、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体)
架橋触媒 種別C:キュアゾール1B2PZ(四国化成工業株式会社製、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール)
架橋触媒 種別D:キュアゾール1B2MZ(四国化成工業株式会社製、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール)
帯電防止剤 種別E:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
帯電防止剤 種別F:リチウムトリフルオロメタンスルホネート
帯電防止剤 種別G:トリ−n−ブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(有機塩)
帯電防止剤 種別H:1−オクチル−4−メチルピリジニウム・ビス(フルオロスルホニル)イミド(有機塩)
ポリエーテル化合物 種別I:ポリエチレングリコールビス(2−エチルヘキソエート)(化学式(I)で表される化合物であって、mは10であり、Rは2−エチルヘキシル基である。)
【0107】
(実施例2〜19)
実施例2〜19では、以下の表1に示す粘着剤組成物の組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製した。
【0108】
(比較例1〜8)
比較例1〜8では、以下の表1に示す粘着剤組成物の組成としたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤組成物を調製した。
詳細には、比較例1、2では、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対してそれぞれ架橋剤であるイソシアネート化合物が0.02質量部未満、2質量部超であった。
また、比較例3では、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して架橋触媒であるイミダゾール化合物が0.007質量部未満であった。
また、比較例4では、帯電防止剤が含まれていなかった。
また、比較例5、6では、製造例7、8にて製造した(メタ)アクリル系重合体を用いており、これら(メタ)アクリル系重合体では、水酸基を有する単量体に由来する構成単位が全構成単位に対してそれぞれ0.1質量%未満、7質量%超であった。
また、比較例7、8では、帯電防止剤としてアルカリ金属塩ではなく、有機塩を用いた。
【0109】
<粘着剤層付偏光板の作製>
調製した粘着剤組成物をシリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルム(藤森工業株式会社製、100E−0010NO23)の表面処理面に、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布した。次に、粘着剤組成物塗布後の剥離フィルムを100℃で60秒間の条件で熱風循環式乾燥機を用いて乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤組成物の層を形成した。続いて、偏光ベースフィルム〔トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム、厚み40μm)/ポリビニルアルコールフィルム/TACフィルム(厚み34μm)の積層構造を有する積層フィルム;厚み約100μm〕の厚み34μmのTACフィルム側の面と前記粘着剤組成物の層の表面とを重ねて貼り合せ、加圧ニップロールに通して圧着した。圧着後、23℃、50%RHの環境条件下で1日間養生させ、粘着剤層付偏光板として、剥離フィルム/粘着剤層/偏光ベースフィルムの積層構造を有する粘着剤層付偏光板を作製した。
【0110】
以下の表1に、実施例1〜19、比較例1〜8にて得られた粘着剤組成物の組成、粘着剤組成物及び粘着剤層付偏光板の測定結果、評価結果を示す。
【0111】
【表1】
【0112】
<養生期間>
調製した粘着剤組成物をシリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルム(藤森工業株式会社製、100E−0010NO23)の表面処理面に、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布した。次に、粘着剤組成物塗布後の剥離フィルムを100℃で60秒間の条件で熱風循環式乾燥機を用いて乾燥させ、剥離フィルム上に粘着剤組成物の層を形成した。シリコーン系離型剤で表面処理された剥離フィルム(藤森工業株式会社製、25E−0010BD)の表面処理面を粘着剤組成物の層に貼り合せ、粘着剤組成物のシートを作製した。次に、作製した粘着剤組成物のシートを23℃×50%RH環境下で保管し、保管開始から24時間後及び48時間後に下記の方法によりゲル分率を測定し、下記評価基準にて評価した。なお、B評価以上であれば、作業効率が向上し、実用上問題ない。
−評価基準−
A:養生24時間後と養生48時間後とのゲル分率の差が2%以内である。
B:養生24時間後と養生48時間後とのゲル分率の差が3%以内である。
C:養生24時間後と養生48時間後とのゲル分率の差が3%を超える。
【0113】
作製した粘着剤組成物のシートにおけるゲル分率は、酢酸エチルを抽出溶媒に用いて測定される、溶媒不溶分の割合である。具体的には、下記(1)〜(4)に従って測定する。
(1)精密天秤にて質量を正確に測定した250メッシュの金網(100mm×100mm)に、保管開始から24時間後又は48時間後の粘着剤組成物のシートを約0.25g貼付し、ゲル分が漏れないように包む。その後、精密天秤にて質量を正確に測定して試料を作製する。
(2)得られた試料を酢酸エチル80mlに3日間浸漬する。
(3)試料を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥させる。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
(4)下式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(質量%)=(Z−X)/(Y−X)×100
但し、Xは金網の質量(g)、Yは粘着剤組成物のシートを貼付した金網の浸漬前の質量(g)、Zは浸漬後乾燥させた、粘着剤組成物のシートを貼付した金網の質量(g)である。
【0114】
<光学耐久性>
上述のようにして得られた粘着剤層付偏光板をガラスの片面にラミネータを用いて貼付して試験片を作製した。得られた試験片をオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2(490kPa)、20分)した後、23℃、50%RHの条件で24時間放置したのち、85℃85%RHの耐湿熱条件で100時間放置した後、偏光ベースフィルムの色抜けを目視にて確認し、下記評価基準で評価した。なお、C評価以上であれば実用上問題ない。
−評価基準−
A:色抜けが見られない
B:色抜けがほとんど見られない
C:色抜けがわずかに見られるが許容範囲内
D:色抜けが見られ、許容範囲外
【0115】
<帯電防止性>
上述のようにして得られた粘着剤層付偏光板の粘着剤層の表面抵抗値を株式会社アドバンテスト製:R12704 RESISTIVITY CHAMBERを用いて、23℃、50%RH、印加電圧100Vの条件下で測定し、下記評価基準に従って評価した。表面抵抗値が小さいほど静電気の発生抑制効果に優れる。なお、C評価以上であれば帯電防止性があると評価した。
−評価基準−
A:表面抵抗値が5×10
10Ω/□以下であり、帯電防止性が非常に優れている
B:表面抵抗値が5×10
10Ω/□を超えて9×10
10Ω/□以下であり、帯電防止性が優れている
C:表面抵抗値が9×10
10Ω/□を超えて2×10
11Ω/□以下であり、帯電防止性がある
D:表面抵抗値が2×10
11Ω/□を超えており、帯電防止性がない
【0116】
<耐久性(耐熱性、耐湿熱性)>
粘着剤組成物の調製後、3時間以内に上述のようにして粘着剤層付偏光板を作製した。得られた粘着剤層付偏光板について、吸収軸に対して長辺が45°になるように140mm×260mmの長方形状にカットし、0.7mm厚みのコーニング社製無アルカリガラス板「イーグルXG」の片面にラミネータを用いて貼付して試験片を作製した。得られた試験片をオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm
2(490kPa)、20分)した後、23℃、50%RHの条件で24時間放置した。その後、80℃の耐熱条件、又は60℃、90%RHの耐湿熱条件で168時間放置した後、目視で観察し、発泡、又は剥がれの状態を確認し、下記評価基準で評価した。
またエスペック社製:冷熱衝撃装置TSA−301L−Wを用いて−30℃で0.5時間放置した後、70℃で0.5時間放置するというヒートショックサイクルを150サイクル行うというヒートショック(H/S)条件で処理した後、同様にして評価した。
なお、C評価以上であれば実用上問題ない。
−評価基準−
A:耐熱条件下及び耐湿熱条件下のいずれにおいても、発泡、剥がれ又は浮きが全く認められなかった。
B:耐熱条件下及び耐湿熱条件下のいずれにおいても、発泡はほとんど認められなかった。さらに2辺において外周部から内側に0.5mm以上の位置に剥がれが認められなかった。
C:耐熱条件下及び耐湿熱条件下のいずれにおいても、発泡はほとんど認められなかった。さらに2辺において外周部から内側に0.8mm以上の位置に剥がれが認められなかった。
D:耐熱条件下及び耐湿熱条件下の少なくとも一方にて、発泡が顕著に認められた。又は2辺において外周部から内側に1.0mm以上の位置に剥がれが認められた。
【0117】
<リワーク性の評価方法>
スーパーカッターにて粘着剤層付偏光板を25mm幅にカットし、剥離フィルムを剥離後、ラミネータを用いて無アルカリガラス(コーニング社製、商品名イーグルXG)に貼合した。貼合後、オートクレーブ処理(0.49MPa、50℃、20分)した後、23℃50%RHの条件で24時間放置した。その後、23℃の雰囲気下で、180゜剥離における粘着力(N/25mm)を、剥離速度300mm/minで測定した。下記評価基準にしたがってリワーク性を評価した。
−評価基準−
A:粘着力が5N/25mm以下であり、リワーク性が良好である。
B:粘着力が5N/25mmを超えて8N/25mm以下でありリワーク性がやや良好である。
C:粘着力が8N/25mmを超えておりリワーク性が不良である。
【0118】
[結果]
実施例1〜19では、養生期間、光学耐久性、帯電防止性及び耐久性の評価がそれぞれB以上であった。
一方、比較例1、2では、耐久性の評価がDであった。
比較例3では、養生期間の評価がCであった。
比較例4では、帯電防止性の評価がDであった。
比較例5、6では、耐久性の評価がDであった。さらに、比較例5では、養生期間の評価がCであった。
比較例7、8では、光学耐久性の評価がDであった。
以上により、実施例1〜19にて、粘着剤層としたときの帯電防止性に優れ、養生時間が短く、かつ光学耐久性、耐熱性及び耐湿熱性に優れた粘着剤組成物が得られた。