特許第6675250号(P6675250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トッパン・フォームズ株式会社の特許一覧

特許6675250インクジェット用記録シート及び粘着シートラベル
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6675250
(24)【登録日】2020年3月12日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】インクジェット用記録シート及び粘着シートラベル
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/52 20060101AFI20200323BHJP
【FI】
   B41M5/52 110
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-73643(P2016-73643)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-177795(P2017-177795A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】トッパン・フォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 悟史
(72)【発明者】
【氏名】木村 徹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−193250(JP,A)
【文献】 特開2000−153667(JP,A)
【文献】 特開2006−306108(JP,A)
【文献】 特開2008−246756(JP,A)
【文献】 特開2006−103197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00 − 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に形成されたインク受容層と、を備えるインクジェット用記録シートであって、
前記受容層は、顔料及びバインダーを含み、
前記顔料は、平均2次粒子径が異なる第1の凝集軽質炭酸カルシウム及び第2の凝集軽質炭酸カルシウムを含み、
前記第1の凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒子径が1μm未満であり、
前記第2の凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒子径が2μm以上5μm以下であり、
前記第1の凝集軽質炭酸カルシウムと前記第2の凝集軽質炭酸カルシウムの含有量の比率が、10:90〜40:60であり、
前記バインダーはカチオン性ポリウレタンを含み、前記カチオン性ポリウレタンの含有量は、前記バインダーの総量に対して80質量%以上であり、
前記カチオン性ポリウレタンの含有量は、前記顔料の総量100質量部に対して、7.5質量部以上、25質量部未満であり、
前記インク受容層の質量が、5g/m以上、20g/m以下であることを特徴とする、インクジェット用記録シート。
【請求項2】
前記カチオン性ポリウレタンの平均粒径が、0.005μm以上、1.0μm以下である請求項1に記載のインクジェット用記録シート。
【請求項3】
前記基材が耐水性紙である請求項1又は2に記載のインクジェット用記録シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット用記録シートが、前記基材の一方の面上に前記インク受容層を備えるものであり、前記インクジェット用記録シートの前記基材の他方の面の上に粘着層を備え、前記粘着層の上に剥離紙を備える、粘着シートラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用記録シート及び粘着シートラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットインクによる情報記録方式は、フルカラーの高画質な画像を容易に得られ、近年の技術進歩により、銀塩写真に迫る高画質も実現できることから、急速に広まってきている。
インクとしては、水や、水及び親水性有機溶媒の混合溶媒等の溶媒中に、各種色材を含有させた水系インクと、疎水性有機溶媒中に油溶性の色材を含有させた油系インクとが挙げられ、目的に応じて使い分けられる。
一方、インクジェット用の記録シートは、インクを吸収させて画像を形成するためのインク受容層が、紙等の基材上に形成されてなる。そして、インク受容層は、例えば、シリカを主成分とし、さらにこれを分散させるための分散媒を含む組成物を塗布及び乾燥することで形成できる。
【0003】
このような記録シートとしては、これまでに種々のものが提案されており、例えば、支持体の少なくとも一方の面に、平均二次粒子径が0.1〜5.0μmの凝集軽質炭酸カルシウムを20〜100重量部含む顔料100重量部に対して、結着剤5〜25重量部、カチオン性高分子5〜30重量部を含む塗工液を、1〜25g/m塗工してなることを特徴とする多目的記録用紙が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−8992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らは、特許文献1の多目的記録用紙を高速プリンターでのインクジェット印刷に用いると、ドット滲みや乾燥不良が生じる場合があることを見出した。ここで、高速プリンターとは、例えば、500f(152.4m)/分以上の速度で印刷するプリンターを意味する。
さらに、インクジェット用紙はラベルをはじめ様々な場面で使用されるため、耐水性が求められていた。
【0006】
そこで、本発明は、高速プリンターでインクジェット印刷した場合であっても、ドット滲がなく、乾燥性も良好であり、さらに耐水性にも優れたインクジェット用記録シート及び前記インクジェット用記録シートを用いた粘着ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に形成されたインク受容層と、を備えるインクジェット用記録シートであって、前記受容層は、顔料及びバインダーを含み、前記顔料は、平均2次粒子径が異なる第1の凝集軽質炭酸カルシウム及び第2の凝集軽質炭酸カルシウムを含み、前記第1の凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒子径が1μm未満であり、前記第2の凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒子径が2μm以上5μm以下であり、前記第1の凝集軽質炭酸カルシウムと前記第2の凝集軽質炭酸カルシウムの含有量の比率が、10:90〜40:60であり、前記バインダーはカチオン性ポリウレタンを含み、前記カチオン性ポリウレタンの含有量は、前記バインダーの総量に対して80質量%以上であり、前記カチオン性ポリウレタンの含有量は、前記顔料の総量100質量部に対して、7.5質量部以上、25質量部未満であり、前記インク受容層の質量が、5g/m以上、20g/m以下であることを特徴とする、インクジェット用記録シートである。
【0008】
本発明の第1の態様において、前記カチオン性ポリウレタンの平均粒径は、0.005μm以上、1.0μm以下であるであることが好ましい。
【0009】
本発明の第1の態様において、前記基材は耐水性紙であることが好ましい。
【0010】
本発明の第2の態様は、前記本発明の第1の態様のインクジェット用記録シートが、前記基材の一方の面上に前記インク受容層を備えるものであり、前記インクジェット用記録シートの前記基材の他方の面の上に粘着層を備え、前記粘着層の上に剥離紙を備える、粘着シートラベルである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高速プリンターでインクジェット印刷した場合であっても、ドット滲みが少なく、乾燥性も良好であり、耐水性にも優れたインクジェット用記録シート、及び前記インクジェット用記録シートを用いた粘着シートラベルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面上に形成されたインク受容層と、を備えるインクジェット用記録シートであって、前記受容層は、顔料及びバインダーを含み、前記顔料は、平均2次粒子径が異なる第1の凝集軽質炭酸カルシウム及び第2の凝集軽質炭酸カルシウムを含み、前記第1の凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒子径が1μm未満であり、前記第2の凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒子径が2μm以上5μm以下であり、前記第1の凝集軽質炭酸カルシウムと前記第2の凝集軽質炭酸カルシウムの含有量の比率が、10:90〜40:60であり、前記バインダーはカチオン性ポリウレタンを含み、前記カチオン性ポリウレタンの含有量は、前記バインダーの総量に対して80質量%以上であり、前記カチオン性ポリウレタンの含有量は、前記顔料の総量100質量部に対して、0質量部を超え、25質量部未満であり、前記インク受容層の質量が、5g/m以上であることを特徴とする、インクジェット用記録シートを提供する。前記インク受容層は、基材にインク受容層用組成物を塗工して形成される。
【0013】
本発明のインクジェット用記録シートは、インクジェット適正と耐水性を両立できるという極めて優れた効果を奏する。
従来のインクジェット用紙はインクジェット適正があるものの、例えばラベル等に用いた場合に耐水性が無いという問題があった。また、従来の耐水性紙は、ラベル等に用いた場合に耐水性はあるものの、長時間浸水した場合にはインク定着性が悪くインクが水に流れ、インクジェット適正が無いという問題があった。
本発明者らが鋭意検討した結果、バインダーとしてカチオン性ポリウレタンを用いると、バインダーの含有量を少量にすることができ、インク乾燥性が速くなることが見出された。さらに、バインダーとしてカチオン性ポリウレタンを用いると、受容層の耐水性も向上させることができ、インクも定着しやすくなり、乾燥性が良好になることが見出された。
【0014】
<インク受容層用組成物>
インク受容層を形成するために用いるインク受容層用組成物について説明する。
インク受容層用組成物(以下、単に「組成物」と略記することがある)は、顔料、バインダー及び必要に応じてその他の成分を含む。
【0015】
(顔料)
前記顔料は、インク中の顔料を保持し、水分の吸収及び透過に影響を与える成分である。
顔料としては、炭酸カルシウムを使用する。炭酸カルシウムには、重質炭酸カルシウムと軽質炭酸カルシウムが存在する。重質炭酸カルシウムは、天然の石灰石を粉砕分級したものであり、軽質炭酸カルシウムは、化学的に合成したものである。軽質炭酸カルシウムの粒子の形や大きさは化学的に制御することができる。軽質炭酸カルシウムの粒子の形には、立方形、紡錘形、柱形等が存在する。また、軽質炭酸カルシウムには、1次粒子が単体粒子として存在するものと、1次粒子が凝集して2次粒子を形成したものが存在する。
1次粒子が凝集して2次粒子を形成した軽質炭酸カルシウムを凝集軽質炭酸カルシウムという。1次粒子の平均粒子径(平均1次粒子径)は、例えば、走査型電子顕微鏡で観察した結果から求めることができる。2次粒子の平均粒子径は、例えば、レーザー回折法で測定することにより求めることができる。
【0016】
インク受容層用組成物は、平均2次粒子径が異なる第1及び第2の凝集軽質炭酸カルシウムを含む。前記第1の凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒子径は1μm未満であり、且つ前記第2の凝集軽質炭酸カルシウムの平均2次粒子径は2μm以上5μ以下である。
平均2次粒子径が1μm未満の凝集軽質炭酸カルシウムを含むことにより、インクジェット印刷した場合のドット滲みを減少させることができる傾向にある。また、平均2次粒子径が2〜5μmの凝集軽質炭酸カルシウムを含むことにより、インクジェット印刷した場合のインクの乾燥性を高めることができる傾向にある。ここで、インクの乾燥性が高いとは、インクの乾燥に要する時間が短いことを意味する。
【0017】
前記第1の凝集軽質炭酸カルシウム(例えば、平均2次粒子径が1μm未満のもの)と前記第2の凝集軽質炭酸カルシウム(例えば、平均2次粒子径が2〜5μmのもの)の配合量の比率は、10:90〜40:60である。ドット滲みを減少させる観点からは、平均2次粒子径が1μm未満の凝集軽質炭酸カルシウムの配合量が高いことが好ましく、インクの乾燥性を高める観点からは、平均2次粒子径が2〜5μmの凝集軽質炭酸カルシウムの配合量が高いことが好ましい。前記第1の凝集軽質炭酸カルシウムと前記第2の凝集軽質炭酸カルシウムの配合量の比率が、10:90〜40:60であることにより、ドット滲みの抑制と乾燥性の向上の双方をバランスよく達成することができる。
インク受容層における、常温で揮発性及び昇華性のいずれも有しない成分同士の含有量の比率は、通常、インク受容層用組成物におけるこれら成分同士の含有量の比率と同じとなる。したがって、インク受容層は、前記第1の凝集軽質炭酸カルシウムと前記第2の凝集軽質炭酸カルシウムの含有量の比率は、10:90〜40:60である。ここで、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜25℃の温度が好適である。
【0018】
本発明において、顔料は前記第1の凝集軽質炭酸カルシウム及び前記第2の凝集軽質炭酸カルシウム以外の炭酸カルシウムを含んでいてもよい。
この場合、前記第1の凝集軽質炭酸カルシウム及び前記第2の凝集軽質炭酸カルシウムの合計含有量は、前記顔料の総量100質量部に対して、70質量部以上が好ましく、80質量部以上がより好ましく、90質量部以上が特に好ましい。
【0019】
(バインダー)
前記バインダーは、インク受容層において顔料(前記第1及び第2の凝集軽質炭酸カルシウム)を保持する成分である。
前記バインダーは、カチオン性ポリウレタンを含む。バインダーとしてカチオン性ポリウレタンを用いると、バインダーの含有量を少量にすることができ、インク乾燥性が向上する。さらに、バインダーとしてカチオン性ポリウレタンを用いると、受容層の耐水性も向上させることができ、インクも定着しやすくなり、乾燥性が良好になる。
また、バインダーとしてカチオン性ポリウレタンを含むことにより、インク受容層用組成物の安定性を向上させることができる。
前記カチオン性ポリウレタンの平均粒径は、0.005μm以上、1.0μm以下であることが好ましく、0.005μm以上、0.5μm以下がより好ましく、0.005μm以上0.1μm以下が特に好ましい。
カチオン性ポリウレタンの平均粒径が上記の範囲であることにより、インクの乾燥性をより向上させることができる。
【0020】
カチオン性ポリウレタン以外のバインダーとしては、水溶性高分子が例示でき、より具体的には、完全ケン化型ポリビニルアルコール、部分ケン化型ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール;カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール;酸化デンプン;リン酸エステル化デンプン;ローコンス;カゼイン;カルボキシメチルセルロース(CMC);エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等のポリウレタン等が例示できる。
前記バインダーは、カチオン性ポリウレタン一種を単独で用いてもよいし、カチオン性ポリウレタンとそれ以外のバインダーを二種以上併用してもよく、二種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0021】
前記バインダーのうち、例えば、ポリビニルアルコールは、インク受容層の安定した維持、インクの乾燥性、ドット滲み、インク受容層の耐水性にも影響を与える成分である。
【0022】
ポリビニルアルコールは、ケン化度が85モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、93モル%以上であることがさらに好ましく、96モル%以上であることが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度が前記下限値以上であることで、ドット滲みがより抑制され、インク受容層の耐水性が向上する。ポリビニルアルコールのケン化度の上限値は特に限定されず、例えば、99モル%であってもよいし、100モル%であってもよい。
【0023】
ポリビニルアルコールは、重合度が250以上であることが好ましく、350以上であることがより好ましく、400以上であることが特に好ましい。ポリビニルアルコールの重合度が前記下限値以上であることで、インク受容層の耐水性が向上する。一方、ポリビニルアルコールは、重合度が1800以下であることが好ましく、1750以下であることがより好ましく、1700以下であることがさらに好ましく、例えば、800以下であってもよい。ポリビニルアルコールの重合度が前記上限値以下であることで、インクの乾燥性がより向上する。
【0024】
また、ポリビニルアルコールのケン化度が85モル%以上であり、かつポリビニルアルコールの重合度が1800以下であるものがより好ましい。
【0025】
ポリウレタンは、カチオン性ポリウレタン以外に、非イオン性のポリウレタンを含んでいてもよい。
【0026】
前記バインダーとしては、カチオン性ポリウレタンのみ、又はポリビニルアルコール及びカチオン性ポリウレタンのみを用いることが好ましい。
【0027】
前記バインダーとして、ポリビニルアルコール及びカチオン性ポリウレタンを併用することで、インク受容層の特性を調節できる。例えば、ポリビニルアルコール及びカチオン性ポリウレタンを併用することで、インク受容層は耐水性がより向上し、水分共存下での基材からのインク受容層の剥離が高度に抑制され、バインダーの使用量を低減できる。
【0028】
インク受容層用組成物におけるバインダーの配合量(含有量)は、顔料の配合量(含有量)を基準として、好ましくは3〜50質量%であり、より好ましくは5〜30質量%であり、さらに好ましくは5〜25質量%であり、特に好ましくは5〜15質量%である。下限値以上とすることで、インク受容層を一層安定して形成でき、上限値以下とすることで、インクの乾燥性を良好な範囲に調節できる。
すなわち、インク受容層は、バインダーの含有量が、顔料の含有量100質量部に対して、好ましくは3〜50質量部であり、より好ましくは5〜30質量部であり、さらに好ましくは5〜25質量部であり、特に好ましくは5〜15質量部である。
【0029】
本発明においては、バインダーとしてカチオン性ポリウレタンを用いたことにより、バインダーの含有量を少量にすることができる。このため、インク乾燥性が向上したインク受容層を形成することができる。
【0030】
本発明は、インク受容層の耐水性が顕著に向上する点から、インク受容層は、前記バインダーとして、カチオン性ポリウレタンを含み、前記カチオン性ポリウレタンの含有量は、前記バインダーの総量に対して80質量%以上である。
さらに、前記カチオン性ポリウレタンの含有量は、前記顔料の総量100質量部に対して、0質量部を超え、25質量部未満であり、1質量部以上20質量部以下が好ましく、5質量部以上15質量部以下がより好ましい。
【0031】
(その他の成分)
インク受容層用組成物は、本発明の効果を妨げない範囲内において、前記顔料及びバインダー以外に、その他の成分が配合されていてもよい。
その他の成分としては、溶媒、カチオン樹脂、多価金属塩、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、酸化防止剤、防腐剤、耐水化剤、紙力増強剤、着色染料、着色顔料、色素定着剤、顔料分散剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等、インクジェット用記録シートの受容層において通常使用される成分が例示できる。
その他の成分は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0032】
ここで、「溶媒」とは、顔料又はバインダーを分散物として配合し、前記分散媒として使用したもの以外に溶媒を使用しなかった場合には、前記分散媒を指す。また、前記分散媒として使用したもの以外に、別途溶媒を配合した場合には、前記分散媒とこの別途配合した溶媒の双方を指す。そして、顔料及びバインダーを共に固形物として配合した場合には、これらとは別に添加される溶媒を指す。溶媒としては、水、アルコール等が挙げられる。
【0033】
カチオン樹脂は、インクジェットインクの定着剤として好適なものであり、水に溶解したときに解離してカチオン性を呈するものが好ましい。
なかでも、前記カチオン樹脂は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン若しくは第4級アンモニウム塩のモノマー、オリゴマー又はポリマーであることが好ましく、前記オリゴマー又はポリマーであることがより好ましい。
前記カチオン樹脂でさらに好ましいものとしては、アルキルアミン−エピクロルヒドリン共重合物;第2級アミノ基、第3級アミノ基又は第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体;ポリビニルアミン;ポリビニルアミジン;5員環アミジン類;ジシアンジアミド−ホルマリン共重合体等のジシアン系カチオン樹脂;ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合物等のポリアミン系カチオン樹脂;ポリエチレンポリアミン、ポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類及びその誘導体;ジアリルジメチルアンモニウム−SO共重合物;ジアリルアミン塩−SO共重合物;ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物;アリルアミン塩の重合物;ビニルベンジルトリアリルアンモニウム塩の単独重合体又は共重合体;ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合物;アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合物;ポリ塩化アルミニウム、ポリ酢酸アルミニウム等のアルミニウム塩が例示でき、アルキルアミン−エピクロルヒドリン重縮合物であることが特に好ましく、ジメチルアミン−エピクロルヒドリン重縮合物であることが最も好ましい。
なお、本明細書において「誘導体」、「類」との記載は、特に断りのない限り、元の化合物の1個以上の水素原子が水素原子以外の基(原子)で置換されているものを意味する。
【0034】
カチオン樹脂は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0035】
インク受容層用組成物中のカチオン樹脂の配合量(含有量、固形分)は、顔料の配合量(含有量)を基準として、好ましくは1〜40質量%であり、例えば、5〜40質量%であってもよいし、5〜25重量%であってもよい。
すなわち、インク受容層は、カチオン樹脂の含有量が、顔料の含有量100質量部に対して、好ましくは1〜40質量部であり、例えば、5〜40質量部であってもよいし、5〜25重量部であってもよい。
【0036】
多価金属塩は、インクの乾燥性を向上させる成分である。
多価金属塩としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化バリウム、塩化亜鉛、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等が挙げられる。なかでも、インク乾燥性、発色濃度、耐水性、耐擦過性等のインクジェット印刷適性をバランスよく向上させることができ、安全性も高い点で、塩化カルシウム又は塩化マグネシウムが好ましい。
【0037】
多価金属塩は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0038】
インク受容層用組成物中の多価金属塩の配合量(含有量、固形分)は、顔料の配合量(含有量)を基準として、好ましくは3〜55質量%であり、例えば、5〜55質量%であってもよいし、5〜25重量%であってもよい。
すなわち、インク受容層は、多価金属塩の含有量が、顔料の含有量100質量部に対して、好ましくは3〜55質量部であり、例えば、5〜55質量部であってもよいし、5〜25重量部であってもよい。
【0039】
インク受容層用組成物における、前記その他の成分の総配合量は、目的に応じて適宜調節すればよい。
【0040】
(インク受容層用組成物の製造方法)
インク受容層用組成物は、前記顔料、バインダー、及び必要に応じてその他の成分を配合して、これら配合成分を十分に撹拌することで製造できる。本発明の組成物において、顔料及びバインダーは、共に分散されていることが好ましい。
【0041】
各成分は、一度にまとめて配合してもよいし、成分ごとに順次配合してもよく、一部の成分のみをまとめて配合してもよい。各成分の配合順序は特に限定されない。
【0042】
配合時の温度は特に限定されず、配合成分の種類等に応じて適宜調整すればよいが、15〜30℃であることが好ましい。
撹拌は、ミキサーを使用する方法等、分散物を調製する公知の方法で行えばよい。撹拌時間は、製造する組成物の総量や撹拌方法等に応じて、適宜調整すればよい。
【0043】
<インクジェット用記録シート>
本発明のインクジェット用記録シート(以下、単に「記録シート」と略記することがある)は、上記のインク受容層用組成物が基材上に塗布及び乾燥されてなるインク受容層を備え、前記インク受容層の質量が、5g/m以上であることを特徴とする。
【0044】
基材の材質は特に限定されず、インク受容層を形成可能なものであれば目的に応じて選択すればよい。具体的には、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、レジンコート紙、合成紙等の紙類;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリスルホン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等の合成樹脂等が例示できる。また、二種以上の材質のものが積層されたものでもよい。
【0045】
本発明においては、記録シートの基材は、耐水性紙であることが好ましい。耐水性紙は、例えば、パルプに変成ロジン系エマルジョン等の耐水剤を適量内部添加して製造した耐水原紙や、前記耐水原紙に合成ゴムやアクリル系樹脂等の耐水性樹脂を表面塗工した印刷用耐水紙を用いることができる。
また、本発明において、記録シートの基材としては、JIS P8135(紙及び板紙−湿潤引張強さ試験方法)に準拠し、湿潤時の用紙の引張強さを測定した場合の引張強さが、JIS P8113(紙及び板紙−引張特性の試験方法)に準拠し測定した通常の用紙の引張強さよりも、10%以上高いものを使用することが好ましい。
【0046】
基材の厚さは、基材の形状がシート状又はフィルム状である限り、特に限定されないが、20〜1000μmであることが好ましく、50〜200μmであることがより好ましい。下限値以上とすることで、インク受容層の構造を一層安定して保持でき、上限値以下とすることで、記録シートとしての取り扱い性が一層良好となる。
【0047】
組成物の塗布方法は特に限定されず、液状物を塗布できる方法であれば、いずれでもよい。具体的には、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター、グラビアオフセットコーター等の各種コーター;ワイヤーバーコーター等の装置を使用する公知の方法が例示できる。
【0048】
組成物の塗布は、一回で行ってもよいし、複数回に分けて行ってもよい。複数回に分けて行う場合には、乾燥させた塗布層上にさらに塗布する方法、乾燥していない塗布層上にさらに塗布する方法のいずれでもよい。
組成物の塗布量は、組成物の固形分濃度、インク受容層の所望の厚み等を考慮して、適宜調節すればよい。
【0049】
塗布した組成物は、送風乾燥、加熱送風乾燥等、公知の方法で乾燥させればよい。乾燥温度、乾燥時間等の条件は、乾燥方法に応じて適宜設定すればよい。
【0050】
インク受容層は、厚さが1〜30μmであることが好ましく、2〜20μmであることがより好ましい。このような範囲とすることで、インク受容層の構造を一層安定して保持できると共に、本発明の効果に一層優れた記録シートとなる。
【0051】
インク受容層の質量は、5g/m以上であり、5g/m以上40g/m以下が好ましく、6g/m以上20g/m以下がより好ましく、6g/m以上15g/m以下が特に好ましい。
【0052】
本発明の記録シートは、インク受容層形成後に、マシンカレンダー、TGカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー、コンパクトカレンダー、マットスーパーカレンダー、マットカレンダー等の装置を使用して、表面が平滑化処理されていてもよい。
【0053】
カレンダー装置は、コーターと分離されたオフタイプ、及びコーターと一体となったオンタイプのいずれでもよい。
カレンダー装置のうちロールには、例えば、剛性ロール及び弾性ロールがある。
前記剛性ロールとしては、金属製ロール、金属の表面が硬質クロムメッキ等で鏡面処理されたロール等が例示できる。
前記弾性ロールとしては、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂又はポリアクリレート等の樹脂製ロール;コットン、ナイロン、アスベスト又はアラミド繊維等を成型したロール等が例示できる。
【0054】
カレンダー仕上げの条件は、剛性ロールの温度、カレンダー圧力、ニップ数、ロール速度、カレンダー前の紙水分等により、要求される品質に応じて適宜選択される。
【0055】
基材上にインク受容層が形成された後に表面が平滑化処理された記録シートは、その厚さ方向に圧縮されているため、基材やインク受容層がより目詰まりして通気性が低下し(例えば、JIS P 8117:2009に従って測定される透気度の値が大きくなり)、通常であれば、インクの通りが悪くなって乾燥性が低下する傾向にある。しかし、本発明においては、例えば、前記バインダーとして、ポリビニルアルコール及びポリウレタンを併用し、バインダーの使用量を低減するなど、インク受容層の含有成分を調節することで、インクの乾燥性の低下を抑制できる。
【0056】
平滑化処理された記録シートは、表面の光沢度が高くなる。例えば、本発明の記録シートは、JIS−P8142:2005に従って測定された光沢度75°が、好ましくは7〜50%のものとすることができる。
【0057】
<粘着シートラベル>
本発明は、前記本発明の第1の態様のインクジェット用記録シートが、前記基材の一方の面上に前記インク受容層を備えるものであり、前記インクジェット用記録シートの前記基材の他方の面の上に粘着層を備え、前記粘着層の上に剥離紙を備える、粘着シートラベルを提供する。
【0058】
前記粘着層は、粘着ラベルの分野で公知のものから適宜選択すればよく、特に限定されない。
粘着層の厚さは、特に限定されないが、5〜50μmであることが好ましく、10〜25μmであることがより好ましい。
【0059】
粘着層は、粘着剤又は粘着剤を含有する粘着層形成用組成物を目的とする箇所に塗工し、必要に応じて乾燥させることで形成できる。
【0060】
剥離紙としては、剥離フィルムまたは剥離紙が用いられる。
剥離フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのプラスチックからなる厚さ30μm〜160μmの基材フィルムの片面または両面に、シリコンからなる厚さ1μm〜50μmの剥離層が設けられたものが用いられる。
剥離紙としては、グラシン紙や上質紙からなる厚さ30μm〜160μmの基材の片面または両面に、目止め剤が塗布され、その目止め剤からなる層の上に、シリコンからなる厚さ1μm〜50μmの剥離層が設けられたものが用いられる。
【0061】
本発明の粘着シートラベルは、前記本発明の第1の態様のインクジェット用記録シートを用いているため、インクジェット適正と耐水性とを両立した優れた粘着シートラベルである。
【実施例】
【0062】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
なお、以下に示す表において、配合成分の欄が「−」であるのは、その成分が配合されていないことを意味する。また、評価結果の欄が「−」であるのは、その項目が未評価であることを意味する。
【0063】
<使用原料>
以下に示す実施例及び比較例では、基材にインク受容層用組成物を塗工して、インクジェット用記録シートを製造した。インク受容層用組成物の調製では、顔料として、表1に示す物性の凝集軽質炭酸カルシウム(凝集粒子である合成炭酸カルシウム)を使用した。
表1において、平均1次粒子径は、顔料を走査型電子顕微鏡を用いて倍率30000倍で観察し、1次粒子20個の粒子径を測定してその平均値として算出した。
表1において、平均2次粒子径は、MICROTRAC MT3000(商品名、日機装社製)を用いたレーザー回折法により測定した。測定結果は個数基準に換算した。
【0064】
また、バインダーとしては、表2に示す特性のポリビニルアルコール又はポリウレタンを使用した。
また、添加剤としては、表3に示す材料を用いた。
また、使用した紙基材の詳細を表4に記載した。
【0065】
表5〜6に、原紙の種類、インク受容層用組成物の塗工量、インク受容層用組成物の材料の配合量を示す。
表5〜6中の(A)〜(B)は、表1に物性を示した顔料(A)〜(B)にそれぞれ対応する。
表5〜6中の(1)〜(6)は、表2に物性を示したバインダー(1)〜(6)にそれぞれ対応する。
表5〜6中の(a)〜(d)は、表3に物性を示した添加剤(a)〜(d)にそれぞれ対応する。
表5〜6中の数字の単位は質量部であり、全て固形分換算した量である。
【0066】
[実施例1]
顔料(A)(平均2次粒子径0.49μmの凝集軽質炭酸カルシウム)25質量部と顔料(B)(平均2次粒子径3.39μmの凝集軽質炭酸カルシウム)75質量部に、カチオン性ポリウレタン10質量部(固形分)を加え、固形分濃度が40%となるように水を加え、攪拌機を使用して、撹拌することで十分に分散を行い、インク受容層用組成物を製造した。
製造したインク受容層用組成物を、ワイヤーバーコーターを使用して、耐水紙の片面上に20g/m塗布し、オーブンを使用して105℃で60秒間加熱送風乾燥を行い、厚さが10μmのインク受容層を形成して、実施例1のインクジェット用記録シートを製造した。
【0067】
[実施例2〜15、比較例1〜14]
インク受容層用組成物の材料を、表5〜6に示す配合量に変更し、紙基材を表5〜6に示す紙基材とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜15及び比較例1〜14のインクジェット用記録シートを製造した。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
[乾燥性の評価]
卓上インクジェットプリンターを用いて、実施例1〜15及び比較例1〜14の各インクジェット用記録シートのインク受容層上に、水性黒色顔料インクを2cm×2cmのサイズでベタ印刷(単色印刷)した。続いて、排紙直後からインクが乾燥するまでの時間(秒)を目視で判定し、下記評価基準でインクの乾き具合を評価した。なお、インクの乾燥に要する時間が3.6秒以下であれば、高速インクジェットプリンター(印刷速度500f(152.4m)/分)で印刷した場合であっても、良好な乾燥性を示すことを事前に確認した。また、インクの乾燥に要する時間が3.6秒超4.4秒以下の場合においても、高速インクジェットプリンター(印刷速度500f(152.4m)/分)での印刷が可能な場合がある。結果を表7〜8に示す。かっこ内に乾燥に要した時間(秒)を示す。
【0075】
・評価基準
インクの乾燥に要する時間が3.6:○
インクの乾燥に要する時間が3.6秒超4.4秒以下:△
インクの乾燥に要する時間が4.4秒超:×
【0076】
[ドット滲みの評価]
ドット滲みをドット形状係数により評価した。評価サンプルは、卓上インクジェットプリンターを用いて、実施例1〜15及び比較例1〜14の各インクジェット用記録シートのインク受容層上に、水性黒色顔料インクを2cm×2cmのサイズでドットが重ならないように濃度10%で印刷(単色印刷)して作成した。続いて、インクジェット用記録シートの表面の顕微鏡画像を撮影し、ドットアナライザー(DA6000、王子計測機器社製)で解析した。具体的には、ドットの周囲長及び面積を測定し、次の計算式によりドット形状係数を算出した。
ドット形状係数=(周囲長)/(4π×面積)
【0077】
ドット形状係数は、ドットが真円であるときには1となり、ドットの形状が真円から離れるほど、すなわち、ドットが滲んでいるほど大きな値となる。なお、卓上インクジェットプリンター(印刷速度0.43f(0.13m)/分)で測定したドット形状係数が、高速インクジェットプリンター(印刷速度500f(152.4m)/分)で測定したドット形状係数と十分な相関があることを事前に確認した。
【0078】
実施例1〜15及び比較例1〜14の各インクジェット用記録シートについて、それぞれ約30個ずつのドットのドット形状係数を算出して平均値を求め、下記評価基準でドット滲みを評価した。結果を表7〜8に示す。
【0079】
・評価基準
○:ドット形状係数の平均値が1.8以下である。
△:ドット形状係数の平均値が1.8を超え2.0以下である。
×:ドット形状係数の平均値が2.0を超えている。
【0080】
[バーコード]
バーコード評価は、印字された読み取りバーコード(EAN−13)を、検証器(QUICK CHECK PC VERIFIER)を用いて読み取り、バーコード品質グレードを以下のA〜Dの4段階で評価した。以下のグレードにおいて、グレードAが最高品質であることを示す。その結果を表7〜8に示す。
【0081】
・評価基準
グレードA(4):4.0(1回のスキャンだけで読み取れる品質)
グレードB(3):3.0以上4.0未満(同一場所を複数回スキャンして読み取れる品質)
グレードC(2):2.0以上3.0未満(異なる場所をスキャンすることにより読み取れる品質)
グレードD(1):2.0未満(異なる場所を複数回スキャンして読取れる品質:リーダーによっては読み取れない場合がある)
グレードF(0):欠陥バーコードシンボルを表し、通常は使用してはならない
尚、バーコードの品質として、グレードA、Bは、実用上問題はなく、優れている。
【0082】
[インク受容層の強度(耐剥離性)]
基材上に形成したインク受容層に対して、貼付部分の長さが約50mmとなるようにセロハンテープ(登録商標)を貼り付け、このテープ上で重量2kgの錘を1往復させ、基材の表面にテープを完全に貼付した。このようにテープを完全に貼付してから30秒後に、テープの一方の端を指で持って、基材の表面に対して水平な方向へテープを引張ることで、0.5〜1.0秒の時間(引き剥がし時間)で基材の表面からテープを確実に引き剥がした。次いで、テープを引き剥がした後の基材上のインク受容層の状態について、その剥がれの程度に基づいて、目視により下記基準でインク受容層の耐剥離性を評価した。結果を表9〜10に示す。
【0083】
・評価基準
A:インク受容層の剥がれが認められず、耐剥離性が高い。
B:インク受容層の若干の剥がれが認められるが、実用上問題ない。
C:インク受容層の明らかな剥がれが認められ、実用上問題がある。
D:インク受容層が根こそぎ剥がれ、実用上問題がある。
【0084】
<粘着ラベルの製造>
フレキソコーターを用いて、上記で得られた実施例1〜15及び比較例1〜14の各インクジェット用記録シートの裏面に120℃でホットメルト接着剤(合成ゴム系、軟化点91℃)を塗工し、冷却して、インクジェット用記録シートの表面上に厚さ20μmの粘着層を形成した。
次いで、この粘着層の表面上に剥離紙を貼り合わせて、粘着ラベルを得た。
得られた粘着ラベルの表面にバーコードを印字し、印字擦り耐性試験と、ラベルはがし試験を行った。
【0085】
[印字擦り耐水]
得られた粘着ラベルを浸水させ、その後、濡れたまま印字部を擦った。擦った後のインクの滲みを、以下の基準で評価した。結果を表9〜10に記載する。
【0086】
・評価基準
A:滲みがなく、優れている。
A’: 1mm未満の滲みがあるが、バーコードの読み取りが可能であり、実使用上問題なく優れている。
B:2mm未満の滲みがあるが、バーコードの読み取りは可能である。
C:2mm以上の滲みがあるが、バーコードの読み取りは可能である。
D:線の判別が不能であり、バーコードの読み取りが不可であった。実使用上の問題がある。
【0087】
[ラベル浸水はがし評価]
得られた粘着ラベルを浸水し、その後、はがし試験を行い、以下の基準で評価した。結果を表9〜10に記載する。
【0088】
・評価基準
A:浸水しない場合と同様にはがすことが可能であり、優れている。
B:はがすことが可能であり、実使用上問題なく優れている。
C:紙破れはみられるが、はがすことが可能であり、実使用上問題ない。
D:紙がぼろぼろではがすことができず、実使用上問題がある。
【0089】
【表7】
【0090】
【表8】
【0091】
【表9】
【0092】
【表10】
【0093】
実施例1〜15のインクジェット用記録シートは、ドット滲みが少なく、乾燥性が良好であり、かつ耐水性に優れていた。これは、バインダーとしてカチオン性ポリウレタンを用いたことで、バインダーの使用量を低減できたためであると推測される。このように、バインダーとしてカチオン性ポリウレタンを用いた本発明のインクジェット用記録シートは、インクジェット適正と耐水性を両立できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、高速プリンターでインクジェット印刷した場合であっても、ドット滲みが少なく、乾燥性も良好であり、さらに耐水性にも優れたインクジェット用記録シートを提供することができる。