特許第6675265号(P6675265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6675265
(24)【登録日】2020年3月12日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスの製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/012 20060101AFI20200323BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20200323BHJP
   H01B 13/22 20060101ALN20200323BHJP
【FI】
   H01B13/012 D
   B23P21/00 306Z
   B23P21/00 307P
   !H01B13/22 Z
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-100761(P2016-100761)
(22)【出願日】2016年5月19日
(65)【公開番号】特開2017-208270(P2017-208270A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠山 晴美
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−344215(JP,A)
【文献】 特開2004−103493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/012
B23P 21/00
H01B 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線及び複数の付属部材を有するワイヤハーネスの製造装置であって、
前記電線に前記複数の付属部材を取り付ける作業を行う作業台と、前記作業台に前記複数の付属部材を供給する供給装置と、を備え、
前記作業台は、
前記複数の付属部材を保管する保管容器を有し、
前記供給装置は、
前記複数の付属部材を一纏めに収容する収容部と、前記収容部に向けて前記複数の付属部材の各々を搬送する搬送路と、前記搬送路に前記複数の付属部材の各々を供給する複数の供給部と、前記収容部に収容されている前記複数の付属部材を前記保管容器に一括して受け渡す受け渡し機構と、
を備えた、ワイヤハーネスの製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスの製造装置において、
前記複数の付属部材が、
帯状のベルト部と、前記ベルト部の端部に設けられ且つ前記ベルト部を挿通固定するための挿通孔を有するバックル部と、を有するバンドクランプを含み、
前記供給装置が、
前記複数の供給部のうちの一の前記供給部として、前記バンドクランプを収容する内部空間を有する回転ドラムと、前記回転ドラムの回転によって撹拌された前記バンドクランプを受け止めるガイド部と、前記ガイド部に前記バックル部が隣接した状態にて前記ベルト部を挟み込む一対の案内棒であって一方の該案内棒の外周面に螺旋状の凸条が形成された一対の案内棒と、前記一方の前記案内棒が軸線周りに回転することによって前記回転ドラムの外側に向けて案内された前記バンドクランプをその向きを維持したまま前記搬送路に向けて排出する排出部と、を有し、
前記搬送路が、
前記バンドクランプをその向きを維持したまま前記収容部に搬送する、
ワイヤハーネスの製造装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネスの製造装置において、
前記複数の付属部材が、
コルゲートチューブを含み、
前記供給装置が、
前記複数の供給部のうちの一の前記供給部として、長尺の前記コルゲートチューブが巻回されたリールと、前記リールから前記作業に必要な長さの前記コルゲートチューブを引き出す引出部と、引き出された前記コルゲートチューブを切断する切断部と、切断した前記コルゲートチューブを前記搬送路に向けて排出する排出部と、を有する、
ワイヤハーネスの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線及び複数の付属部材を有するワイヤハーネスの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両等に用いられるワイヤハーネスを製造するにあたり、電線に付属部材(例えば、コルゲートチューブ、ビニルテープ及びクランプ等)を取り付ける作業を行う作業台(いわゆる治具板)を備えた製造装置が提案されている。この種の作業台は、電線を保持するための複数の治具を有しており、電線を治具によって保持した状態にて電線に付属部材を取り付ける作業(組み付け作業)を行うことが可能となっている。
【0003】
例えば、従来のワイヤハーネスの製造装置の一つ(以下「従来装置」という。)は、組受け作業に必要な付属部材を保管(ストック)するための保管容器を作業台上に有しており、組み付け作業の際、この保管容器から作業者が必要な付属部材を取り出すことが可能となっている。これにより、従来装置は、付属部材が作業者の背面の棚などに保管されている場合に比べ、作業者の動作量を減らし、作業者の負担を軽減すると共にワイヤハーネスの製造効率を高めるようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−235228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来装置では、保管容器に保管された付属部材の残量が少なくなると、付属部材を補充する必要がある。例えば、付属部材としてコルゲートチューブが用いられる場合、組み付け作業に必要な長さにあらかじめ切り揃えられたコルゲートチューブを準備(例えば、購入)しておき、所定のタイミングにて、そのコルゲートチューブを保管容器に投入(補充)することが考えられる。
【0006】
しかし、多量の付属部材を事前に準備すると、実際の使用までに長時間を要する(過剰な在庫となる)付属部材が生じる可能性がある。更に、そのように付属部材を準備する工程(例えば、専門の事業者などに製造を依頼して購入する工程)にも、準備した付属部材を管理する工程(例えば、専門の事業者などから納入された付属部材を保管して在庫を常時確認する工程)にも、コストが生じる。
【0007】
このように、従来装置は、ワイヤハーネスの製造効率を高められるものの、付属部材の準備に要するコスト等に起因してワイヤハーネスの製造コストを低減させ難い、と考えられる。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤハーネスの製造効率を高めることと、ワイヤハーネスの製造コストを出来る限り低減することと、を両立可能なワイヤハーネスの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスの製造装置は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1)
電線及び複数の付属部材を有するワイヤハーネスの製造装置であって、
前記電線に前記複数の付属部材を取り付ける作業を行う作業台と、前記作業台に前記複数の付属部材を供給する供給装置と、を備え、
前記作業台は、
前記複数の付属部材を保管する保管容器を有し、
前記供給装置は、
前記複数の付属部材を一纏めに収容する収容部と、前記収容部に向けて前記複数の付属部材の各々を搬送する搬送路と、前記搬送路に前記複数の付属部材の各々を供給する複数の供給部と、前記収容部に収容されている前記複数の付属部材を前記保管容器に一括して受け渡す受け渡し機構と、
を備えた、ワイヤハーネスの製造装置であること。
(2)
上記(1)に記載のワイヤハーネスの製造装置において、
前記複数の付属部材が、
帯状のベルト部と、前記ベルト部の端部に設けられ且つ前記ベルト部を挿通固定するための挿通孔を有するバックル部と、を有するバンドクランプを含み、
前記供給装置が、
前記複数の供給部のうちの一の前記供給部として、前記バンドクランプを収容する内部空間を有する回転ドラムと、前記回転ドラムの回転によって撹拌された前記バンドクランプを受け止めるガイド部と、前記ガイド部に前記バックル部が隣接した状態にて前記ベルト部を挟み込む一対の案内棒であって一方の該案内棒の外周面に螺旋状の凸条が形成された一対の案内棒と、前記一方の前記案内棒が軸線周りに回転することによって前記回転ドラムの外側に向けて案内された前記バンドクランプをその向きを維持したまま前記搬送路に向けて排出する排出部と、を有し、
前記搬送路が、
前記バンドクランプをその向きを維持したまま前記収容部に搬送する、
ワイヤハーネスの製造装置であること。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載のワイヤハーネスの製造装置において、
前記複数の付属部材が、
コルゲートチューブを含み、
前記供給装置が、
前記複数の供給部のうちの一の前記供給部として、長尺の前記コルゲートチューブが巻回されたリールと、前記リールから前記作業に必要な長さの前記コルゲートチューブを引き出す引出部と、引き出された前記コルゲートチューブを切断する切断部と、切断した前記コルゲートチューブを前記搬送路に向けて排出する排出部と、を有する、
ワイヤハーネスの製造装置であること。
【0010】
上記(1)の構成のワイヤハーネスの製造装置によれば、作業台での作業に必要な複数の付属部材が、その場その場で、供給装置から作業台の保管容器に、一括して受け渡される。そのため、従来装置のように付属部材を事前に多量に準備する(例えば、専門の事業者などから購入する)必要がない。更に、従来装置とは異なり、付属部材を所定のタイミング毎に保管容器に補充する作業を不要にできる。加えて、準備した付属部材を在庫として管理する必要もない。
【0011】
したがって、上記構成のワイヤハーネスの製造装置は、ワイヤハーネスの製造効率を高めることと、ワイヤハーネスの製造コストを出来る限り低減することと、を両立できる。
【0012】
上記(2)の構成のワイヤハーネスの製造装置によれば、ワイヤハーネスの付属部材として一般に用いられるバンドクランプを、作業台上の保管容器に自動的に供給できる。更に、この供給にあたり、バンドクランプは、そのバックル部がガイド部に隣接した状態にて(例えば、バックル部を上にした状態にて)そのベルト部が一対の案内棒によって挟み込まれ、その向き(バックル部を上にした向き)を維持したまま、排出部および搬送路を経由して収容部に搬送される。そのため、バンドクランプは、向きを揃えた状態にて(例えば、バックル部を上にして揃えた状態にて)保管容器に補充されることになる。よって、バンドクランプの向きが揃っていない状態にて補充される場合に比べ、ワイヤハーネスの製造効率を更に高めることができる。
【0013】
上記(3)の構成のワイヤハーネスの製造装置よれば、ワイヤハーネスの付属部材として一般に用いられるコルゲートチューブを、作業台上の保管容器に自動的に供給できる。ワイヤハーネスには、一般に、長さが異なる複数種のコルゲートチューブが数多く用いられる。また、従来から、このように長さが異なる複数種のコルゲートチューブの準備は、専門の事業者に依頼する(例えば、購入する)傾向が強い。そのため、コルゲートチューブを付属部材として本発明の製造装置を用いれば、本発明の製造装置を作るためのコストを考慮しても、ワイヤハーネスの製造コストを確実に低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ワイヤハーネスの製造効率を高めることと、ワイヤハーネスの製造コストを出来る限り低減することと、を両立可能なワイヤハーネスの製造装置、を提供できる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係るワイヤハーネスの製造装置の全体構成を示す概略構成図である。
図2図2は、コルゲートチューブ供給機の構成を説明する概略構成図である。
図3図3は、バンドクランプ供給機に投入されるバンドクランプの全体斜視図である。
図4図4は、バンドクランプ供給機の構成を説明する概略構成図である。
図5図5は、バンドクランプ供給機によりバンドクランプが搬送路に向けて供給される際の動作を説明する図であって、図5(a)〜図5(d)は、時系列に沿った各タイミングでの動作を示す概略図である。
図6図6は、収容部に収容されている複数の付属部材が受け渡し機構により保管容器への受け渡される際の動作を説明する図であって、図6(a)〜図6(c)は、時系列に沿った各タイミングでの動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るワイヤハーネスの製造装置(以下「製造装置10」という。)について説明する。
【0018】
図1に示すように、製造装置10は、複数の作業台11を備えている。複数の作業台11は、搬送コンベア(図示省略)に支持されて製造ラインを構成している。製造ラインは、典型的には、複数の作業台11が長尺の環状に配置された環状の製造ラインである。図1に示すように、製造ラインは、複数の作業台11が所定の間隔で横一列に並ぶ直線部分を含んでいる。各作業台11は、搬送コンベア(図示省略)によって、製造ラインに沿って一方向(図1における矢印方向)へ移動する。環状の製造ラインの場合、各作業台11は、環状の製造ラインを周回する。
【0019】
製造ラインは、電線Dに組み付けられる複数の付属部材を各作業台11に供給する供給装置40を備えている。供給装置40の詳細については、後述される。
【0020】
製造装置10では、製造ラインの直線部分における手前側のスペースが作業エリアSAとされている。作業エリアSAには、複数の作業者S1〜S3が、製造ラインに沿って前記所定の間隔と同じ間隔を空けて存在している。作業者S1〜S3の各々は、作業台11が自身の前に移動してくる毎に、その作業台11上にて自身が担当するワイヤハーネスWの製造作業(具体的には、同一種の付属部材の組み付け作業)を繰り返し行う。なお、付属部材として、例えば、電線Dの保護等のために電線Dに装着される部材(例えば、コルゲートチューブ、及び、バンドクランプ(ベルトクランプ)等)が挙げられる。
【0021】
これにより、製造装置10では、各作業台11が環状の製造ラインを一回周回する毎に、同一種のワイヤハーネスWが1回、繰り返し製造されることになる。
【0022】
作業台11は、平面視矩形状の治具板20を有している。治具板20は、その表面に、クランプ等の保持具(図示省略)を備えており、この保持具によって、ワイヤハーネスWを構成する電線Dが保持される。治具板20は、搬送コンベアによって搬送される台座上に支持されており、台座とともに移動される。更に、治具板20には、移動方向前方側における上端近傍位置に、製造するワイヤハーネスWを特定するための一次元コード及び二次元コード等のコードCoが記載されたカード等が取り付けられている。
【0023】
作業台11は、治具板20の上端部の手前側に、保管容器22を備えている。保管容器22は、複数の付属部材を一纏めに保管可能であるように構成されている。本例では、一例として、保管容器22に収容される付属部材が、電線Dの周囲を覆う筒状のコルゲートチューブC(具体的には、短いコルゲートチューブC1及び長いコルゲートチューブC2)と、電線Dを結束するバンドクランプBとなっている(後述する図6(c)を参照。)。これら付属部材が保管容器22に供給される作業台11(図1の中央の作業台11)を担当する作業者S2は、供給装置40から供給されて保管容器22に入っている付属部材を取り出し、取り出した付属部材を治具板20の電線Dに組み付け、自身が担当するワイヤハーネスWの製造作業を行う。その結果、電線Dにはこれら付属部材(コルゲートチューブC1,C2、及び、バンドクランプB)が取り付けられ、次の作業者S3による作業を待つことになる(図1の左側の作業台11を参照。)。
【0024】
図1に示すように、製造装置10は、供給装置40を制御する制御部30を備えている。更に、作業台11の移動経路上にバーコードリーダ等の読取部31が設けられている。読取部31は、制御部30に接続されており、作業台11の治具板20に付されたコードCoから、その作業台11における作業に関する情報(例えば、ワイヤハーネスWの種別、及び、その種別のワイヤハーネスWに組み付けるべき付属部材についての情報)を読み取り、制御部30へ送信する。制御部30は、読取部31から送信された情報に基づいて、供給装置40を制御する。
【0025】
以下、製造ラインに設けられた供給装置40について、より詳細に説明する。図1に示すように、供給装置40は、供給部50と、搬送路80と、収容部90と、受け渡し機構110とを備える。
【0026】
供給部50は、電線Dに取り付ける複数の付属部材の各々を供給して搬送路80に供給する機能を果たす。図1に示すように、供給部50は、付属部材としてのコルゲートチューブC(C1,C2)を供給して搬送路80に供給するコルゲートチューブ供給機60a,60b(具体的には、C1用のコルゲートチューブ供給機60aと、C2用のコルゲートチューブ供給機60b)と、バンドクランプBを供給して搬送路80に供給するバンドクランプ供給機70と、を備える。
【0027】
図2に示すように、コルゲートチューブ供給機60aは、台座61と、引出部62と、切断部63と、排出部64と、搬送管65aとを備える。なお、コルゲートチューブ供給機60bも同様の構成を有している。
【0028】
台座61は、長手方向を有する平板状部材である。台座61は、長手方向が水平方向に対して傾斜するように配置されている。台座61の下端部には、その下端部から台座61の長手方向に沿って延出するように搬送管65aが接続されている。搬送管65aの下端部は、搬送路80に接続されている(図1を参照。)。
【0029】
引出部62は、台座61の上端部付近に設けられている。引出部62には、長尺のコルゲートチューブCが巻回されたリールRから引き出されたコルゲートチューブCが供給される。引出部62は、制御部30の指示によって作動するアクチュエータであり、供給されたコルゲートチューブCを必要な長さだけ台座61上に引き出す。
【0030】
切断部63は、台座61の上下方向中央部付近に設けられている。切断部63は、制御部30の指示によって作動するカッタであり、引出部62によって引き出されたコルゲートチューブCから所定の長さのコルゲートチューブ(具体的には、短いコルゲートチューブC1)を切り出す。なお、コルゲートチューブ供給機60bでは、同様の機構により、長いコルゲートチューブC2が切り出される。
【0031】
排出部64は、台座61の下端部付近に設けられている。排出部64は、制御部30の指示によって開閉作動するゲート(壁)であり、閉じた状態では、切断部63によって切り出されたコルゲートチューブC1を台座61上に保持し、開いた状態では、台座61上に保持していたコルゲートチューブC1を搬送管65aに送り込む。搬送管65aに送り込まれたコルゲートチューブC1は、重力によって搬送管65a内を移動し、搬送路80に導かれる。このように、排出部64が開いた状態に移動する毎に、コルゲートチューブC1が搬送路80に順次供給されることになる。なお、なお、コルゲートチューブ供給機60bでも、同様に、コルゲートチューブC2が搬送路80に順次供給されることになる。
【0032】
次いで、バンドクランプ供給機70について説明する前に、バンドクランプ供給機70に投入されるバンドクランプBについて、簡単に説明する。図3に示すように、バンドクランプBは、直線状に延びる帯状のベルト部B1と、ベルト部B1の一端部(根元部)B1aに設けられたバックル部B2と、を有する。バックル部B2におけるベルト部B1の長手方向に直交する方向(ベルト部B1の厚さ方向)の寸法は、ベルト部B1の厚さと比べて大きい。バックル部B2には、ベルト部B1を挿通および固定するための挿通孔B2aが設けられている。
【0033】
バンドクランプBによって電線Dを結束する際、電線Dの周囲を覆うように環状に屈曲されたベルト部B1が、その先端部B1bから挿通孔B2aに挿通される。そして、ベルト部B1の側面に形成された凹凸部B1cが、挿通孔B2aの内壁面に形成された突起(図示省略)等に係止される。これにより、ベルト部B1が挿通孔B2aに固定される。
【0034】
図4に示すように、バンドクランプ供給機70は、回転ドラム71と、一対の案内棒72,73と、ガイド部74と、排出部75と、ノズル76と、搬送管77、とを備える。
【0035】
回転ドラム71は、カップ状の形状を有し、多数本のバンドクランプB(図3を参照。)を収容する内部空間を有する。回転ドラム71は、開口部が斜め上方を向くように、その回転中心軸が水平方向から傾斜して配置されている。回転ドラム71は、制御部30の指示によって、その回転中心軸の周りに一方向(図4における矢印方向)に回転駆動される。回転ドラム71の回転により、回転ドラム71の内部空間に収容された多数本のバンドクランプBが撹拌される。
【0036】
一対の案内棒72,73は、それらの長手方向中央部から一方側(内側)が回転ドラム71の内部空間に位置し、他方側(先端側)が回転ドラム71の外側に位置するように、且つ、水平方向に延びるように配置されている。一対の案内棒72,73は、互いに平行、且つ、両者間に所定の微小隙間が形成されるように配置されている。この微小隙間は、バンドクランプBのベルト部B1が通過可能であり、且つ、バンドクランプBのバックル部B2が通過不能となる幅を有している。
【0037】
ガイド部74は、回転ドラム71の内部空間における一対の案内棒72,73の上方に配置されている。ガイド部74は、その下端縁が上述した微小隙間に沿って微小隙間の直上に位置するように、水平方向から傾斜して配置されている。これにより、ガイド部74は、回転ドラム71の回転による撹拌によって上方から落下してきたバンドクランプBを受け止めて微小隙間に向けて移動するようにガイドする機能を果たす。
【0038】
ガイド部74に沿って一対の案内棒72,73に向けて移動(落下)したバンドクランプBは、一対の案内棒72,73の間の微小隙間にそのベルト部B1が入り込むことにより、図4に示すように、ベルト部B1の先端部B1bが下方に向き且つバックル部B2が上方に向いた状態にて、一対の案内棒72,73に支持された状態となる(吊り下がった状態となる)。以下、このようにバンドクランプBが一対の案内棒72,73に支持される状態を、便宜上、「セット状態」と呼ぶ。
【0039】
一対の案内棒72,73のうち、案内棒72の側面には、螺旋状の凸条72aが形成されている。案内棒72は、制御部30の指示により、凸条72aが案内棒72の先端側へ見かけ上移動する向き(図4における矢印の向き)に、その軸線周りに回転駆動される。そのため、セット状態にあるバンドクランプBが存在する状態にて案内棒72が回転駆動されると、バンドクランプBは、凸条72aに押圧され、案内棒72の先端部(図4の左方向)へ向けて案内棒72の長手方向に沿って案内される。
【0040】
排出部75は、一対の案内棒72,73の先端部から案内棒72の長手方向に沿って所定距離だけ離れた位置に設けられている。排出部75は、制御部30の指示によって作動するアームであり、案内棒72の先端部まで到達した「セット状態」にあるバンドクランプBを摘み、上方に向けて開口するノズル76内に送り込む機能を果たす。ノズル76の下端部は搬送管77に接続され、搬送管77の下端部は、搬送路80に接続されている(図1を参照。)。
【0041】
排出部75の先端には、一対の案内棒72,73の先端部に向けて案内棒72の長手方向に沿って突出する一対の爪部75aが設けられている。排出部75は、その全体が案内棒72の長手方向に沿って移動可能に、且つ、一対の爪部75aの間隔が調整可能に構成されている。以下、排出部75の動作について、図5を参照しながら説明する。
【0042】
図5(a)に示すように、通常、回転ドラム71及び案内棒72は共に回転している。排出部75は、図示される原位置にある。排出部75が原位置にある状態では、一対の爪部75aは、ノズル76の直上に位置している。この状態にて、回転ドラム71の回転、及び、ガイド部74によるガイド機能によって「セット状態」となったバンドクランプBは、案内棒72の回転(凸条72aの押圧)によって案内棒72の先端部に向けて移動する。
【0043】
図5(b)に示すように、「セット状態」にあるバンドクランプBが案内棒72の先端部に到達すると、その到達をセンサ(図示省略)が検知することにより、回転ドラム71の回転が停止し、案内棒72の回転も停止する。次いで、排出部75の全体が、原位置から一対の案内棒72,73に近づく方向に向けて、図示される第1位置まで移動する。第1位置では、一対の爪部75a間の空間に、「セット状態」にあるバンドクランプBのベルト部B1が位置するようになっている。排出部75の全体が第1位置まで移動すると、一対の爪部75aの間隔を狭めることにより、一対の爪部75aがバンドクランプBのベルト部B1を摘んで保持する。
【0044】
次いで、図5(c)に示すように、一対の爪部75aがバンドクランプBのベルト部B1を保持した状態を維持したまま、排出部75の全体が、第1位置から原位置に戻る。このとき、回転ドラム71の回転が再開され、案内棒72の回転が再開される。これにより、「セット状態」にある次のバンドクランプBが案内棒72の先端部に向けて移動を再開する。
【0045】
そして、図5(d)に示すように、一対の爪部75aの間隔を広めることにより、一対の爪部75aが保持していたバンドクランプBを解放する。その結果、バンドクランプBは、ベルト部B1の先端部B1bが下方を向いた状態を維持しながら、一対の爪部75aの直下に位置するノズル76内に送り込まれる。ノズル76内に送り込まれたバンドクランプBは、重力によってノズル76及び搬送管77内を順に移動し、搬送路80に供給される。
【0046】
バンドクランプBがノズル76及び搬送管77を移動する際、ベルト部B1の先端部B1bが移動方向前方側を向いた状態が維持される。よって、搬送路80に供給された後も、バンドクランプBは、ベルト部B1の先端部B1bが移動方向前方側を向いた状態を維持しながら搬送される。
【0047】
以上、図5(a)〜図5(d)を参照しながら説明した動作は、「セット状態」にあるバンドクランプBが案内棒72の先端部に到達する毎に実行される。これにより、搬送路80には、ベルト部B1の先端部B1bが移動方向前方側を常に向いた状態のバンドクランプBが順次供給される。
【0048】
再び図1を参照すると、搬送路80は、供給部50から供給された複数の付属部材(具体的には、コルゲートチューブC1,C2、及び、バンドクランプB)を、搬送路80の一端部に接続された収容部90に向けて搬送する機能を果たす。本例では、搬送路80は、空気圧によって付属部材を搬送する機構を有するエア搬送チューブである。具体的には、搬送路80の他端部にはエアコンプレッサ81が接続され、搬送路80の他端部近傍には、バルブ82(開閉弁)が設けられている。
【0049】
エアコンプレッサ81及びバルブ82は制御部30の指示により作動する。例えば、バルブ82が閉じた状態にてエアコンプレッサ81を作動させて加圧空気を蓄えておき、所定のタイミングにてバルブ82が解放される。これにより、加圧空気が開放されて、搬送路80内にて収容部90側に向けて高速に移動する空気流が発生する。供給部50から搬送路80に供給された複数の付属部材は、この空気流に乗って収容部90まで搬送されることになる。
【0050】
収容部90は、搬送路80により搬送されてきた複数の付属部材を一纏めに収容する機能を果たす。受け渡し機構110は、収容部90に収容されている複数の付属部材を保管容器22に一括して受け渡す機能を果たす。
【0051】
図1に示すように、収容部90、及び、受け渡し機構110は、製造ライン上を移動する作業台11が所定位置(図中の中央の位置)に到達したとき、その作業台11の上に配置されている保管容器22の直上に位置するように、配置されている。
【0052】
図6(a)に示すように、収容部90は、下方に向けて延びる搬送路80の一端部に接続されており、搬送路80より拡径された容器状の形状を有する。受け渡し機構110は、収容部90の底面を開閉するためのゲート111(壁)と、ゲート111を開閉駆動するエアシリンダ112と、保管容器22の接近を検知する近接センサ113とを備える。
【0053】
図6(a)に示すように、ゲート111が閉じた状態では、収容部90が、搬送路80により搬送されてきた複数の付属部材を一纏めに収容する。このとき、上述したように、バンドクランプBは、ベルト部B1の先端部B1bが移動方向前方側(収容部90内では下側)を常に向いた状態で、収容部90内に収容される。
【0054】
図6(b)に示すように、移動中の作業台11の上に配置された保管容器22が収容部90の直下位置に接近したことを近接センサ113が検知すると、エアシリンダ112の駆動によってゲート111が開いた状態となる。これにより、収容部90内に一纏めに収容されていた複数の付属部材(具体的には、コルゲートチューブC1,C2、及び、バンドクランプB)が、重力により落下し、保管容器22に一括して受け渡される。
【0055】
これにより、製造ライン上を移動する作業台11が所定位置(図1の中央の位置)に到達したとき、保管容器22に複数の付属部材が補充されることになる。このとき、バンドクランプBは、ベルト部B1の先端部B1bが下側を常に向いた状態にて保管容器22に補充されることになる。
【0056】
図6(c)に示すように、付属部材の受け渡しが完了すると、エアシリンダ112の駆動によってゲート111が再び閉じた状態となる。これにより、収容部90が、搬送路80により次に搬送されてくる複数の付属部材を一纏めに収容し得る状態となる。
【0057】
以上、図6(a)〜図6(c)を参照しながら説明した動作は、移動中の各作業台11の上に配置された保管容器22が収容部90の直下位置に接近する毎に実行される。即ち、製造ライン上を移動する作業台11が所定位置に到達する毎に、その作業台11に配置されている保管容器22に複数の付属部材が一括して受け渡されることになる。
【0058】
以上に説明したように、本実施形態に係るワイヤハーネスの製造装置10によれば、作業台11での作業に必要な複数の付属部材C1,C2,Bが、その場その場で、供給装置40から作業台11の保管容器22に、一括して受け渡される。そのため、従来装置のように付属部材を事前に多量に準備する(例えば、専門の事業者などから購入する)必要がない。更に、従来装置とは異なり、付属部材C1,C2,Bを所定のタイミング毎に保管容器22に補充する作業を不要にできる。加えて、準備した付属部材を在庫として管理する必要もない。
【0059】
したがって、製造装置10によれば、ワイヤハーネスWの製造効率を高めることと、ワイヤハーネスWの製造コストを出来る限り低減することと、を両立できる。
【0060】
更に、製造装置10においては、ワイヤハーネスWの付属部材として一般に用いられるバンドクランプBを、作業台11上の保管容器22に自動的に供給できる。更に、この供給にあたり、バンドクランプBは、そのバックル部B2がガイド部74に隣接した状態にて(例えば、バックル部B2を上にした状態にて)そのベルト部B1が一対の案内棒72,73によって挟み込まれ、その向き(バックル部B2を上にした向き)を維持したまま、搬送路80を経由して収容部に搬送される。そのため、バンドクランプBは、向きを揃えた状態にて(例えば、バックル部B2を上にして揃えた状態にて)保管容器22に補充されることになる。よって、バンドクランプBの向きが揃っていない状態にて補充される場合に比べ、ワイヤハーネスWの製造効率を更に高めることができる。
【0061】
更に、製造装置10によれば、ワイヤハーネスWの付属部材として一般に用いられるコルゲートチューブC1,C2を、作業台11上の保管容器22に自動的に供給できる。ワイヤハーネスWには、一般に、長さが異なる複数種のコルゲートチューブC1,C2が数多く用いられる。また、従来から、このように長さが異なる複数種のコルゲートチューブC1,C2の準備は、専門の事業者に依頼する(例えば、購入する)傾向が強い。そのため、コルゲートチューブC1,C2を付属部材として製造装置10を用いれば、製造装置10を作るためのコストを考慮しても、ワイヤハーネスWの製造コストを確実に低減できる。
【0062】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0063】
例えば、上記実施形態では、電線Dに組み付ける付属部品として、コルゲートチューブC1,C2、及び、バンドクランプBが採用されているが、電線Dに組み付ける付属部品として、他の部品(例えば、両持ちクランプ及びビニルテープ等)が採用されてもよい。
【0064】
更に、上記実施形態では、搬送路80として、空気圧を利用するエア搬送チューブが採用されているが、搬送路80として、空気圧を利用しない形態(例えば、重力による単なる落下のみを利用する形態)が採用されてもよい。
【0065】
更に、上記実施形態では、一対の案内棒72,73の一方に螺旋状の凸条72aが設けられているが、一対の案内棒72,73の双方に螺旋状の凸条が設けられてもよい。一対の案内棒72,73の双方に螺旋状の凸条が設けられる場合、セット状態にあるバンドクランプBを案内する際には一対の案内棒72,73の双方が回転すればよい。
【0066】
ここで、上述した本発明に係るワイヤハーネスの製造装置の実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)〜(3)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
電線及び複数の付属部材を有するワイヤハーネスの製造装置(10)であって、
前記電線に前記複数の付属部材(C1,C2,B)を取り付ける作業を行う作業台(11)と、前記作業台(11)に前記複数の付属部材を供給する供給装置(40)と、を備え、
前記作業台(11)は、
前記複数の付属部材(C1,C2,B)を保管する保管容器(22)を有し、
前記供給装置(40)は、
前記複数の付属部材(C1,C2,B)を一纏めに収容する収容部(90)と、前記収容部に向けて前記複数の付属部材の各々を搬送する搬送路(80)と、前記搬送路(80)に前記複数の付属部材の各々を供給する複数の供給部(60a,60b,70)と、前記収容部に収容されている前記複数の付属部材を前記保管容器(22)に一括して受け渡す受け渡し機構(110)と、
を備えた、ワイヤハーネスの製造装置(10)。
(2)
上記(1)に記載のワイヤハーネスの製造装置において、
前記複数の付属部材(C1,C2,B)が、
帯状のベルト部(B1)と、前記ベルト部の端部に設けられ且つ前記ベルト部を挿通固定するための挿通孔を有するバックル部(B2)と、を有するバンドクランプ(B)を含み、
前記供給装置(40)が、
前記複数の供給部のうちの一の前記供給部(70)として、前記バンドクランプ(B)を収容する内部空間を有する回転ドラム(71)と、前記回転ドラムの回転によって撹拌された前記バンドクランプを受け止めるガイド部(74)と、前記ガイド部に前記バックル部(B2)が隣接した状態にて前記ベルト部(B1)を挟み込む一対の案内棒(72,73)であって一方の該案内棒(72)の外周面に螺旋状の凸条(72a)が形成された一対の案内棒(72,73)と、前記一方の前記案内棒(72)が軸線周りに回転することによって前記回転ドラムの外側に向けて案内された前記バンドクランプをその向きを維持したまま前記搬送路(80)に向けて排出する排出部(75)と、を有し、
前記搬送路(80)が、
前記バンドクランプをその向きを維持したまま前記収容部(90)に搬送する、
ワイヤハーネスの製造装置。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載のワイヤハーネスの製造装置において、
前記複数の付属部材が、
コルゲートチューブ(C1,C2)を含み、
前記供給装置(40)が、
前記複数の供給部のうちの一の前記供給部(60a)として、長尺の前記コルゲートチューブ(C1)が巻回されたリール(R)と、前記リールから前記作業に必要な長さの前記コルゲートチューブを引き出す引出部(62)と、引き出された前記コルゲートチューブを切断する切断部(63)と、切断した前記コルゲートチューブを前記搬送路(80)に向けて排出する排出部(75)と、を有する、
ワイヤハーネスの製造装置。
【符号の説明】
【0067】
10 製造装置
11 作業台
22 保管容器
40 供給装置
50 供給部
60a,60b コルゲートチューブ供給機(供給部)
62 引出部
63 切断部
64 排出部
70 バンドクランプ供給機(供給部)
71 回転ドラム
72,73 一対の案内棒
75 排出部
80 搬送路
90 収容部
110 受け渡し機構
B バンドクランプ(付属部材)
C(C1,C2) コルゲートチューブ(付属部材)
D 電線
R リール
W ワイヤハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6