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特許6675277ジョイントコネクタ、及び、ジョイントコネクタの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6675277
(24)【登録日】2020年3月12日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】ジョイントコネクタ、及び、ジョイントコネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 31/08 20060101AFI20200323BHJP
   H01R 13/40 20060101ALI20200323BHJP
   H01R 43/20 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
   H01R31/08 N
   H01R31/08 Q
   H01R13/40 Z
   H01R43/20 Z
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-126642(P2016-126642)
(22)【出願日】2016年6月27日
(65)【公開番号】特開2018-5988(P2018-5988A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸由
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−068360(JP,U)
【文献】 特開2012−221909(JP,A)
【文献】 特開2012−221908(JP,A)
【文献】 特開2003−123918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R27/00−31/08
H01R13/40−13/533
H01R43/027−43/28
H01R11/01
H01R13/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタに属する複数の電線同士をバスバーを介して接続するジョイントコネクタであって、
前記バスバーと、前記バスバーを収容するハウジングと、前記バスバーの収容方向に沿って前記ハウジングに係止されるカバーと、を備え、
前記バスバーは、
前記収容方向の前方に延びる複数の端子部と、前記複数の端子部よりも前記収容方向の後方において前記複数の端子部を繋ぐ連結部であって前記相手側コネクタの種別ごとに異なる端面形状を前記収容方向の後方側の端面に有する連結部と、を有し、
前記カバーは、
前記相手側コネクタの種別ごとに異なり且つ前記端面形状に対応した内壁面形状を前記収容方向の前方側の内壁面に有すると共に、前記端面と前記内壁面とが合致した場合には前記ハウジングへ係止可能であり、前記端面と前記内壁面とが合致しない場合には前記ハウジングへ係止不能である、
ジョイントコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のジョイントコネクタにおいて、
複数の前記バスバーが、前記ハウジングに収容され、
前記カバーが、一の前記バスバーと他の前記バスバーとの間に挟まれる介在部を、前記内壁面に有する、
ジョイントコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のジョイントコネクタにおいて、
前記バスバーが、前記端面形状として、前記収容方向の前方に窪む凹部を有し、
前記カバーが、前記内壁面形状として、前記収容方向の前方に突出する凸部を有し、
前記凹部と前記凸部とが嵌め合うことにより、前記端面と前記内壁面とが合致する、
ジョイントコネクタ。
【請求項4】
バスバーと、前記バスバーを収容するハウジングと、前記バスバーの収容方向に沿って前記ハウジングに係止されるカバーと、を備えると共に、相手側コネクタに属する複数の電線同士を前記バスバーを介して接続するジョイントコネクタの製造方法であって、
前記バスバーは、前記収容方向の前方に延びる複数の端子部と、前記複数の端子部よりも前記収容方向の後方において前記複数の端子部を繋ぐ連結部と、を有し、
前記バスバーとして、前記連結部における前記収容方向の後方側の端面が有する端面形状が前記相手側コネクタの種別ごとに異なる複数の種類の前記バスバーを準備すると共に、前記カバーとして、前記収容方向の前方側の内壁面が有する内壁面形状が前記相手側コネクタの種別ごとに異なり且つ前記端面形状に対応した複数の種類の前記カバーを準備する、準備工程と、
前記複数の種類の前記バスバー及び前記複数の種類の前記カバーの中から、前記相手側コネクタの種別に対応する前記バスバー及び前記カバーを選択する、選択工程と、
選択された前記バスバーを前記ハウジングに収容した後、前記端面と前記内壁面とが合致するように選択された前記カバーを前記ハウジングに係止する、組付工程と、を含む、
ジョイントコネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手側コネクタに属する複数の電線同士をバスバーを介して接続するジョイントコネクタ、及び、ジョイントコネクタの製造方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等に設けられた複数の電気・電子機器から延びる複数の電線を互いに接続する等の目的のため、バスバーを備えたジョイントコネクタが提案されている。
【0003】
例えば、従来のジョイントコネクタの一つ(以下「従来コネクタ」という。)は、相手側コネクタに属する複数の電線の端末に設けられた端子に嵌合接続するための複数のピン端子を備えたバスバーと、バスバーを収容するハウジングと、を備えている。複数のピン端子は、ハウジングへの収容方向の前方へ延びると共に、収容方向の後方において連結部を介して互いに繋がっている。即ち、複数のピン端子は、連結部を介して互いに導通可能となっている。更に、従来コネクタでは、バスバーがハウジングに収容された後にバスバーの抜け等を防ぐためのカバーが、ハウジングに取り付けられるようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−123918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、実際にジョイントコネクタを使用する際、相手側コネクタでの導通パターン(相手側コネクタから延びる電線をどのように導通接続させるか)に対応した形状のバスバーが選択され、そのバスバーがハウジングに収容されることになる。この導通パターンは、一般に、相手側コネクタから延びる電線の数、電線の組み合わせ、及び、相手側コネクタ中の電線の位置などに応じて異なる。以下、便宜上、相手側コネクタでの導通パターンを「相手側コネクタの種別」とも称呼する。
【0006】
相手側コネクタの種別(導通パターン)に対応したバスバーを選択する際、誤って本来選択すべきバスバーとは異なるバスバーを選択した場合(いわゆる回路間違いが生じた場合)、設計通りの導通パターンを実現できないことになる。よって、このような回路間違いは、出来る限り避けることが望ましい。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ジョイントコネクタに収容すべきバスバーが実際に収容されているか否かを検知可能なジョイントコネクタ、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明に係る「ジョイントコネクタ」は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1)
相手側コネクタに属する複数の電線同士をバスバーを介して接続するジョイントコネクタであって、
前記バスバーと、前記バスバーを収容するハウジングと、前記バスバーの収容方向に沿って前記ハウジングに係止されるカバーと、を備え、
前記バスバーは、
前記収容方向の前方に延びる複数の端子部と、前記複数の端子部よりも前記収容方向の後方において前記複数の端子部を繋ぐ連結部であって前記相手側コネクタの種別ごとに異なる端面形状を前記収容方向の後方側の端面に有する連結部と、を有し、
前記カバーは、
前記相手側コネクタの種別ごとに異なり且つ前記端面形状に対応した内壁面形状を前記収容方向の前方側の内壁面に有すると共に、前記端面と前記内壁面とが合致した場合には前記ハウジングへ係止可能であり、前記端面と前記内壁面とが合致しない場合には前記ハウジングへ係止不能である、
ジョイントコネクタであること。
(2)
上記(1)に記載のジョイントコネクタにおいて、
複数の前記バスバーが、前記ハウジングに収容され、
前記カバーが、一の前記バスバーと他の前記バスバーとの間に挟まれる介在部を、前記内壁面に有する、
ジョイントコネクタであること。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載のジョイントコネクタにおいて、
前記バスバーが、前記端面形状として、前記収容方向の前方に窪む凹部を有し、
前記カバーが、前記内壁面形状として、前記収容方向の前方に突出する凸部を有し、
前記凹部と前記凸部とが嵌め合うことにより、前記端面と前記内壁面とが合致する、
ジョイントコネクタであること。
【0009】
上記(1)の構成のジョイントコネクタによれば、バスバーの連結部の端面が有する端面形状(相手側コネクタの種別ごとに固有の形状)と、カバーの内壁面が有する内壁面形状(相手側コネクタの種別ごとに固有の形状)と、が合致した場合に限り、ハウジングにカバーが係止されることになる。逆に、これらが合致しない場合(即ち、誤ったバスバーがハウジングに取り付けられている場合)、ハウジングにカバーを係止できない。よって、この係止の可否により、相手側コネクタの種別に対応した(正しい)バスバーがハウジングに収容されているか否かを検知できることになる。
【0010】
したがって、本構成のジョイントコネクタは、ジョイントコネクタに収容すべきバスバーが実際に収容されているか否かを検知可能である。
【0011】
なお、前記ハウジングは、前記バスバーを着脱可能に収容することが好ましい。これにより、バスバーがハウジングにインサート成形される場合等に比べ、誤ったバスバーをハウジングに収容した際、バスバーを容易に取り替えることが可能となる。更に、相手側コネクタの種別に合わせてジョイントコネクタの仕様(収容するバスバーの種別など)を自在に変更することも可能となる。
【0012】
上記(2)の構成のジョイントコネクタによれば、複数のバスバーをハウジングに収容する場合であっても、ハウジング内でのバスバー同士の接触(換言すると、回路の短絡)が介在部によって防がれることになる。よって、本構成のジョイントコネクタは、複数のバスバーをハウジングに収容する場合であっても、バスバー間の絶縁性を確実に確保できる。
【0013】
上記(3)の構成のジョイントコネクタによれば、上記(1)に記載した検知機能を実現する具体例の一つとして、バスバーの端面に設けた凹部と、カバーの内壁面に設けた凸部と、の嵌め合いを採用できる。
【0014】
更に、前述した目的を達成するために、本発明に係る「ジョイントコネクタの製造方法」は、下記(4)を特徴としている。
(4)
バスバーと、前記バスバーを収容するハウジングと、前記バスバーの収容方向に沿って前記ハウジングに係止されるカバーと、を備えると共に、相手側コネクタに属する複数の電線同士を前記バスバーを介して接続するジョイントコネクタの製造方法であって、
前記バスバーは、前記収容方向の前方に延びる複数の端子部と、前記複数の端子部よりも前記収容方向の後方において前記複数の端子部を繋ぐ連結部と、を有し、
前記バスバーとして、前記連結部における前記収容方向の後方側の端面が有する端面形状が前記相手側コネクタの種別ごとに異なる複数の種類の前記バスバーを準備すると共に、前記カバーとして、前記収容方向の前方側の内壁面が有する内壁面形状が前記相手側コネクタの種別ごとに異なり且つ前記端面形状に対応した複数の種類の前記カバーを準備する、準備工程と、
前記複数の種類の前記バスバー及び前記複数の種類の前記カバーの中から、前記相手側コネクタの種別に対応する前記バスバー及び前記カバーを選択する、選択工程と、
選択された前記バスバーを前記ハウジングに収容した後、前記端面と前記内壁面とが合致するように選択された前記カバーを前記ハウジングに係止する、組付工程と、を含む、
ジョイントコネクタの製造方法であること。
【0015】
上記(4)の構成のジョイントコネクタの製造方法によれば、上記(1)と同様、選択工程において選択したバスバー及びハウジングについて、バスバーの連結部の端面が有する端面形状(相手側コネクタの種別ごとに固有の形状)と、カバーの内壁面が有する内壁面形状(相手側コネクタの種別ごとに固有の形状)と、が合致した場合に限り、組付工程において、ハウジングにカバーが係止されることになる。逆に、これらが合致しない場合(即ち、誤ったバスバーがハウジングに取り付けられている場合)、ハウジングにカバーを係止できない。よって、組付工程における係止の可否により、相手側コネクタの種別に対応した(正しい)バスバーがハウジングに収容されているか否かを検知できることになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ジョイントコネクタに収容すべきバスバーが実際に収容されているか否かを検知可能なジョイントコネクタ、及び、ジョイントコネクタの製造方法を提供できる。
【0017】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施形態に係るジョイントコネクタの分解斜視図である。
図2図2は、組付完了状態にある図1に示すジョイントコネクタを斜め後方から視た斜視図である。
図3図3(a)は、図2に示すジョイントコネクタを前方から視た図であり、図3(b)は、図2に示すジョイントコネクタを後方から視た図である。
図4図4は、図3(a)のA−A断面図である。
図5図5(a)は、図3(a)のB−B断面図であり、図5(b)は、図5(a)の領域Pの部分拡大図である。
図6図6は、図3(b)のC−C断面図である。
図7図7は、図3(a)のD−D断面図である。
図8図8(a)は、図1に示すカバーを斜め前方から視た図であり、図8(b)は、図1に示すカバーを前方から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るジョイントコネクタ、及び、その製造方法について説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るジョイントコネクタ100は、バスバー10と、バスバー10を収容するハウジング20と、ハウジング20に収容されたバスバー10を覆うカバー30と、から構成される。
【0021】
以下、図1に示すように、「収容方向」、「幅方向」、「上下方向」、「前」、「後」、「上」及び「下」を定義する。「収容方向」、「幅方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。
【0022】
図1に示すように、ハウジング20は、その後方側からバスバー10が収容されると共に、その前方側から相手側コネクタ40が嵌合されるようになっている。ジョイントコネクタ100は、相手側コネクタ40に属する複数の電線(図示省略)同士を、バスバー10を介して、相手側コネクタ40の種別に対応する電線の導通パターン(電線の数、電線の組み合わせ、相手側コネクタ40中の電線の位置など)を実現するように導通接続する機能を果たす。
【0023】
まず、バスバー10について説明する。図1に示すように、金属製のバスバー10は、複数のピン端子11と、幅方向に延びると共に複数のピン端子11の後端部同士を繋ぐ連結部12と、を備える。複数のピン端子11は、連結部12から、幅方向に等間隔を空けて並ぶように収容方向の前方に向けて互いに平行に延びている。
【0024】
本例では、複数(具体的には、5つ)のバスバー10が、上下方向において4段に分けて使用される。上から1段目、2段目、及び4段目にはそれぞれ、7つのピン端子11を備える1つのバスバー10が使用される。上から3段目には、4つのピン端子11を備える1つのバスバー10と、3つのピン端子11を備える1つのバスバー10と、が使用される。
【0025】
各バスバー10の連結部12の後端面には、前方側に窪む1つ又は複数の凹部13が設けられている。後述するように、組付完了状態では、各凹部13に対し、カバー30に設けられた対応する凸部35がそれぞれ嵌合することになる(図5(b)及び図8(b)等を参照)。収容方向の後方から視たとき、複数の凹部13の全体の配置パターン(複数のバスバー10の配置パターン、及び、各バスバー10における凹部13の配置パターン)と、カバー30に設けられた複数の凸部35の全体の配置パターンと、は合致している。複数の凹部13の全体の配置パターン、及び、複数の凸部35の全体の配置パターンは、相手側コネクタ40の種別(実現したい導通パターン)ごとに異なっている。
【0026】
次いで、ハウジング20について説明する。図1及び図2図7に示すように、樹脂製のハウジング20は、幅方向に長い角筒状の本体周壁部21を備える。図4に示すように、本体周壁部21の内部空間には、相手側コネクタ40が収容される。図1に示すように、本体周壁部21には、カバー30を係止するための幅方向に長い矩形状の係止突部22が、その後端部から収容方向の後方に突出するように一体に設けられている。
【0027】
図1及び図3(b)に示すように、係止突部22の外周側面の所定位置には、カバー30を係止するための係止爪23が複数(本例では8つ)設けられている。後述するように、組付完了状態では、各係止爪23がカバー30の係止枠部37と係合することにより、カバー30がハウジング20に係止される(図6を参照)。
【0028】
図1及び図4に示すように、係止突部22の内部には、上述のように4段に分けて使用される複数のバスバー10(図4では、バスバー10の一部であるピン端子11を図示している。)に対応し、4つのバスバー収容孔24が、上下方向に等間隔を空けて並ぶように設けられている。各バスバー収容孔24は、幅方向に延びると共に収容方向に貫通する貫通孔である。
【0029】
図4に示すように、各バスバー収容孔24には、4段のうち対応する段に使用されるバスバー10(ピン端子11)が、着脱可能に、所定位置までそれぞれ圧入され固定されている。この状態では、上下方向に隣接するバスバー10同士が上下方向に所定の間隔を空けて配置されるため、上下方向に隣接するバスバー10同士の接触に起因する回路の短絡(ショート)の発生を防止できる。
【0030】
バスバー10がバスバー収容孔24の所定位置にて固定された状態では、バスバー10の複数のピン端子11が、本体周壁部21の内部空間に露出する。この状態にて、相手側コネクタ40を本体周壁部21の内部空間に挿入することで、各ピン端子11が、相手側コネクタ40の端子収容孔41に収容された対応するメス端子42とそれぞれ嵌合・接続される。
【0031】
図1及び図4に示すように、係止突部22の後端面には、上下方向における隣接するバスバー収容孔24の間に対応する3つの位置にて、前方側に窪む案内板収容凹部25がそれぞれ設けられている。後述するように、組付完了状態では、各案内板収容凹部25には、カバー30に設けられた対応する案内板34がそれぞれ嵌合する(図4を参照)。以上、ハウジング20について説明した。
【0032】
次いで、カバー30について説明する。図1及び図2図8に示すように、樹脂製のカバー30は、幅方向に長い角筒状の枠体部31を備える。図8(b)に示すように、枠体部31の内側に、複数(本例では、8つ)の連結部32を介して平板矩形状の蓋板部33が一体に固定されている。
【0033】
図8(a)及び図8(b)に示すように、蓋板部33の内壁面(前方側の面)には、複数(本例では3つ)の案内板34が、ハウジング20の複数の案内板収容凹部25(図4を参照。)に対応して、上下方向に等間隔を空けて並ぶように一体に設けられている。各案内板34は、幅方向に延びると共に蓋板部33の内壁面から前方側に突出する平板である。
【0034】
図8(b)に示すように、蓋板部33の内壁面には、上述のように4段に分けて使用される複数のバスバー10に対応し、相手側コネクタ40の種別に応じた所定の配置パターンにて、前方側に突出する複数(本例では、26本)の凸部35が一体に設けられている。図5(b)に示すように、凸部35の突出高さはL1である。
【0035】
図8(b)に示すように、蓋板部33の内壁面の所定位置には、前方側に突出する1つのリブ36が一体に設けられている。後述するように、組付完了状態では、リブ36は、上から3段目に配置される2つのバスバー10の間に挟まれるように介在する(図7を参照)。この結果、上から3段目に配置される2つのバスバー10同士の接触に起因する回路の短絡(ショート)の発生を防止できる。
【0036】
図8(a)(並びに、図4図6及び図7)に示すように、枠体部31の前端部には、略全周に亘って、係止枠部37が一体に設けられている。係止枠部37は、枠体部31の上下壁部から上下方向内側に突出し、枠体部31の両側壁部から幅方向内側に突出している。以上、カバー30について説明した。
【0037】
次いで、相手側コネクタ40について説明する。図1及び図3(a)に示すように、本例では、上下方向に沿って4つのメス端子42を収容する7つのコネクタハウジングが、幅方向に並んでいる。これら7つのコネクタハウジングにより、相手側コネクタ40が形成されている。図1及び図4等に示すように、7つのコネクタハウジングの各々には、複数(本例では、4つ)の端子収容孔41が収容方向に沿って形成されている。各端子収容孔41には、電線(図示省略)の端部に接続された複数のメス端子42がそれぞれ収容されている。以上、本発明の実施形態に係るジョイントコネクタ100の構成について説明した。
【0038】
次いで、本発明の実施形態に係るジョイントコネクタ100の製造方法(組付方法)について説明する。
【0039】
ハウジング20には複数種類の相手側コネクタ40が収容される可能性がある。相手側コネクタ40の種別ごとに、相手側コネクタ40に属する複数の電線の導通パターン(電線の数、電線の組み合わせ、相手側コネクタ40中の電線の位置など)が異なる。
【0040】
そこで、まず、複数の凹部13の全体の配置パターン(即ち、複数のバスバー10の配置パターン、及び、各バスバー10における凹部13の配置パターン)が相手側コネクタ40の種別ごとに異なるように形成された、複数種類のバスバー10の組み合わせを準備する。相手側コネクタ40の各種別について、その種別に対応するバスバー10の組み合わせに含まれる複数のバスバー10を、その種別に対応する複数の凹部13の全体の配置パターンが実現されるように上下方向に4段に配置することで、その種別に対応する電線の導通パターンが得られる。
【0041】
同様に、複数の凸部35の全体の配置パターンが相手側コネクタ40の種別ごとに異なる、複数種類のカバー30を準備する。相手側コネクタ40の各種別について、収容方向の後方から視たとき、複数の凹部13の全体の配置パターンと複数の凸部35の全体の配置パターンとは合致している。なお、複数種類のカバー30を製造するためには、種類ごとに金型を準備してもよいし、種類ごとに不要な凸部35を切断してもよい。また、種類ごとにカバー30の色を変えてもよい。
【0042】
次いで、複数種類のバスバー10の組み合わせ、及び、複数種類のカバー30の中から、ハウジング20に収容される相手側コネクタ40の種別に対応するバスバー10の組み合わせ、及び、カバー30をそれぞれ選択する。
【0043】
次いで、図1に示すように、ハウジング20の各バスバー収容孔24に、4段のうち対応する段に使用される(選択された)バスバー10を所定位置までそれぞれ圧入し固定する。これにより、相手側コネクタ40の種別に対応した複数の凹部13の全体の配置パターンが実現される。このように実現された複数の凹部13の全体の配置パターンは、選択されたカバー30が有する複数の凸部35の全体の配置パターンと合致している。なお、この状態では、図4等に示すように、各バスバー10の複数のピン端子11が、本体周壁部21の内部空間に露出している。
【0044】
次いで、図1に示すように、ハウジング20の係止突部22に、選択されたカバー30を組み付ける。カバー30が組付完了位置まで前方側に移動していく過程では、まず、カバー30の複数の案内板34が係止突部22の対応する案内板収容凹部25にそれぞれ嵌合開始する。この嵌合により案内されながらカバー30が更に移動していくと、カバー30の係止枠部37が係止突部22の複数の係止爪23と接触し、次いで、枠体部31の外側への弾性変形を伴いながら係止枠部37が複数の係止爪23に乗り上げる。
【0045】
その後、カバー30が組付完了位置まで達したとき、係止枠部37が複数の係止爪23を乗り越える。即ち、枠体部31が弾性回復することによって各係止爪23が係止枠部37と係合する。この結果、図6に示すように、カバー30がハウジング20に係止される。
【0046】
図6に示すように、カバー30がハウジング20に係止された状態にて、各係止爪23と係止枠部37との間には、収容方向において隙間L2が存在している。隙間L2は、カバー30の凸部35の突出高さL1(図5(b)を参照)よりも小さい。突出高さL1と隙間L2との大小関係によって実現される効果(回路間違いの検知)について、詳細は後述される。
【0047】
図4図5(a)及び図7に示すように、カバー30がハウジング20に係止された状態では、複数の凹部13の全体の配置パターンを構成する全ての凹部13に、カバー30の凸部35がそれぞれ嵌合している。なお、図3(a)のB−B断面図である図5(a)では、上から1段目のみについてのバスバー10の凹部13と凸部35との嵌合状態を示しているが、上から2段目、及び、上から4段目についても同様である。加えて、図7に示すように、カバー30のリブ36が、上から3段目に配置される2つのバスバー10の間に挟まれるように介在している。
【0048】
このようにカバー30がハウジング20に係止されることで、本発明の実施形態に係るジョイントコネクタ100が組付完了状態となる。その後、図1、及び、図4に示すように、相手側コネクタ40を本体周壁部21の内部空間の所定位置まで挿入する。なお、この状態では、本体周壁部21の上壁部の下面側に設けられたロック片26が、相手側コネクタ40の上面に設けられた突部43と係合することにより、相手側コネクタ40のハウジング20からの抜けが防止される。
【0049】
このように、相手側コネクタ40を本体周壁部21の内部空間の所定位置まで挿入することで、本体周壁部21の内部空間に露出している各ピン端子11が、相手側コネクタ40に収容された対応するメス端子42とそれぞれ嵌合・接続される。この結果、複数のバスバー10を介して、相手側コネクタ40に属する複数の電線に関して、相手側コネクタ40の種別に対応する電線の導通パターンが得られる。
【0050】
ところで、上述のように、カバー30がハウジング20に係止された状態が実現されるのは、バスバー10、及び、カバーの30の選択が正しいことによって、複数の凹部13の全体の配置パターンと複数の凸部35の全体の配置パターンとが合致している場合に限られる。即ち、双方の配置パターンが合致していない場合、凹部13に嵌合し得ない凸部35が発生する。加えて、上述したように、隙間L2(図6を参照)が、凸部35の突出高さL1(図5(b)を参照)より小さい。従って、双方の配置パターンが合致しない場合、カバー30の係止枠部37がハウジング20の係止爪23を乗り越えることができず、この結果、カバー30がハウジング20に係止不能となる。
【0051】
以上より、双方の配置パターンが合致する場合(即ち、正しいバスバー10が収容されている場合)には、カバー30がハウジング20に係止可能となり、双方の配置パターンが合致しない場合(即ち、誤ったバスバー10が収容されている場合)には、カバー30がハウジング20に係止不能となる。従って、この係止の可否により、正しいバスバー10がハウジング20に実際に収容されているか否かを検知できる。
【0052】
本発明の実施形態に係るジョイントコネクタ100、及び、その製造方法によれば、バスバー10、及び、カバー30の選択が正しいことによって、複数のバスバー10における複数の凹部13の全体の配置パターン(相手側コネクタ40の種別ごとに固有の配置パターン)と、カバー30における複数の凸部35の全体の配置パターン(相手側コネクタ40の種別ごとに固有の配置パターン)と、が合致した場合に限り、ハウジング20にカバー30が係止されることになる。逆に言えば、双方が合致しない場合(即ち、誤ったバスバー10が取り付けられている場合)、ハウジング20にカバー30を係止できない。よって、この係止の可否により、正しいバスバー10がハウジング20に実際に収容されているか否かを検知できる。
【0053】
更に、組付完了状態にて、上下方向に隣接するバスバー10同士の間にはハウジング20による壁(隣接するバスバー収容孔24の間の壁)が介在する。従って、上下方向に隣接するバスバー10同士の接触に起因する回路の短絡(ショート)の発生を防止できる。加えて、組付完了状態にて、上から3段目に配置される2つのバスバー10の間にはカバー30のリブ36が介在する(図7を参照)。この結果、上から3段目に配置される2つのバスバー10同士の接触に起因する回路の短絡(ショート)の発生を防止できる。
【0054】
更に、バスバー10はバスバー収容孔24に、着脱可能に圧入固定されている。従って、ハウジング20に収容する相手側コネクタ40の種別(導通接続される電線の導通パターン)を変更する場合、カバー30を外してバスバー10を差し替え、カバー30を交換することで、新しい種別の相手側コネクタ40に対応する電線の導通パターンを実現することができる。
【0055】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0056】
例えば、上記実施形態では、バスバー10がハウジング20に着脱可能に収容(圧入固定)されているが、バスバー10がハウジング20に着脱不能に収容(例えば、インサート成形)されていてもよい。
【0057】
更に、上記実施形態では、バスバー10が、後方側の端面の「端面形状」として、収容方向の前方に窪む凹部13を有し、カバー30が、前方側の内壁面の「内壁面形状」として、収容方向の前方に突出する凸部35を有しているが、バスバー10が「端面形状」として収容方向の後方に突出する突起を有し、カバー30が「内壁面形状」として収容方向の後方に窪む凹部を有していてもよい。
【0058】
更には、双方が合致した場合にはカバー30がハウジング20に係止可能となり且つ双方が合致しない場合にはカバー30がハウジング20に係止不能となる限りにおいて、バスバー10、及び、カバー30が、それぞれ、どのような「端面形状」、及び、「内壁面形状」を有していてもよい。
【0059】
ここで、上述した本発明に係るジョイントコネクタ、及び、その製造方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下(1)〜(4)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
相手側コネクタ(40)に属する複数の電線同士をバスバー(10)を介して接続するジョイントコネクタ(100)であって、
前記バスバー(10)と、前記バスバーを収容するハウジング(20)と、前記バスバーの収容方向に沿って前記ハウジングに係止されるカバー(30)と、を備え、
前記バスバー(10)は、
前記収容方向の前方に延びる複数の端子部(11)と、前記複数の端子部よりも前記収容方向の後方において前記複数の端子部を繋ぐ連結部(12)であって前記相手側コネクタ(40)の種別ごとに異なる端面形状(凹部13)を前記収容方向の後方側の端面に有する連結部(12)と、を有し、
前記カバー(30)は、
前記相手側コネクタ(40)の種別ごとに異なり且つ前記端面形状(凹部13)に対応した内壁面形状(凸部35)を前記収容方向の前方側の内壁面に有すると共に、前記端面と前記内壁面とが合致した場合には前記ハウジング(20)へ係止可能であり、前記端面と前記内壁面とが合致しない場合には前記ハウジング(20)へ係止不能である、
ジョイントコネクタ。
(2)
上記(1)に記載のジョイントコネクタにおいて、
複数の前記バスバー(10)が、前記ハウジング(20)に収容され、
前記カバー(30)が、一の前記バスバーと他の前記バスバーとの間に挟まれる介在部(34,36)を、前記内壁面に有する、
ジョイントコネクタ。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載のジョイントコネクタにおいて、
前記バスバー(10)が、前記端面形状として、前記収容方向の前方に窪む凹部(13)を有し、
前記カバー(30)が、前記内壁面形状として、前記収容方向の前方に突出する凸部(35)を有し、
前記凹部(13)と前記凸部(35)とが嵌め合うことにより、前記端面と前記内壁面とが合致する、
ジョイントコネクタ。
(4)
バスバー(10)と、前記バスバーを収容するハウジング(20)と、前記バスバーの収容方向に沿って前記ハウジングに係止されるカバー(30)と、を備えると共に、相手側コネクタ(40)に属する複数の電線同士を前記バスバー(10)を介して接続するジョイントコネクタの製造方法であって、
前記バスバー(10)は、前記収容方向の前方に延びる複数の端子部(11)と、前記複数の端子部よりも前記収容方向の後方において前記複数の端子部を繋ぐ連結部(12)と、を有し、
前記バスバー(10)として、前記連結部(12)における前記収容方向の後方側の端面が有する端面形状(凹部13)が前記相手側コネクタ(40)の種別ごとに異なる複数の種類の前記バスバー(10)を準備すると共に、前記カバー(30)として、前記収容方向の前方側の内壁面が有する内壁面形状(凸部35)が前記相手側コネクタ(40)の種別ごとに異なり且つ前記端面形状(凹部13)に対応した複数の種類の前記カバー(30)を準備する、準備工程と、
前記複数の種類の前記バスバー(10)及び前記複数の種類の前記カバー(30)の中から、前記相手側コネクタ(40)の種別に対応する前記バスバー及び前記カバーを選択する、選択工程と、
選択された前記バスバー(10)を前記ハウジング(20)に収容した後、前記端面と前記内壁面とが合致するように選択された前記カバー(30)を前記ハウジングに係止する、組付工程と、を含む、
ジョイントコネクタの製造方法。
【符号の説明】
【0060】
10 バスバー
11 ピン端子(端子部)
12 連結部
13 凹部(端面形状)
20 ハウジング
30 カバー
35 凸部(内壁面形状)
36 リブ(介在部)
40 相手側コネクタ
100 ジョイントコネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8