特許第6675296号(P6675296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6675296
(24)【登録日】2020年3月12日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20200323BHJP
   H01H 13/00 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
   B25F5/00 B
   B25F5/00 C
   H01H13/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-220217(P2016-220217)
(22)【出願日】2016年11月11日
(65)【公開番号】特開2018-75687(P2018-75687A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】398052346
【氏名又は名称】アルモテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】湯川 章
(72)【発明者】
【氏名】坂口 富彦
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−245605(JP,A)
【文献】 特開2012−220481(JP,A)
【文献】 特開2013−096723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
H01H 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具本体と、前記電動工具本体に内蔵された電動モータと、前記電動モータにより回動される作業工具と、前記電動モータの回転速度を変えるためのトリガースイッチ手段と、前記トリガースイッチ手段からの検知信号に基づいて前記電動モータの回転速度を設定するための回転速度設定手段とを備えた電動工具において、
前記トリガースイッチ手段は、前記電動工具本体に摺動自在に装着された操作移動部材と、前記操作移動部材に取り付けられたマグネット取付部と、前記マグネット取付部に同極が相互に対面するように取り付けられた第1及び第2マグネットと、前記第1及び第2マグネット間であって前記電動工具本体側に配設された磁束検知手段とを含み、前記回転速度設定手段は、前記磁束検知手段からの検知信号に基づいて前記電動モータの回転速度を設定するように構成されており、
また前記トリガースイッチ手段は、前記第1及び第2マグネット並びに前記マグネット取付部材を収容するハウジング本体を備え、前記操作移動部材は、操作部と前記操作部から前記ハウジング本体内に延びる移動軸部とを有し、前記移動軸部に摺動スリーブが摺動自在に支持されているとともに、前記移動軸部の先端部に前記マグネット取付部材が取り付けられ、前記操作移動部材と前記摺動スリーブとの間に前記移動軸部を被嵌してコイルばねが介在されており、
更に前記摺動スリーブには、径方向外方に突出する突出部が設けられ、前記ハウジング本体には、前記摺動スリーブの前記突出部に作用する作用突部が設けられていることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記ハウジング本体には、前記操作移動部材の初期位置に対応して初期位置保持突部が設けられ、前記摺動スリーブ側には、前記ハウジング本体側の前記初期位置保持突部に対応して当接部が設けられており、前記操作移動部材が前記初期位置にあるときには、前記摺動スリーブ側の前記当接部が前記ハウジング本体側の前記初期位置保持突部に当接されることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記ハウジング本体の片面壁の内面には、前記操作移動部材の摺動方向に延びる一対の第1案内突条が設けられ、その他面壁の内面には、前記操作移動部材の前記摺動方向に延びる一対の第2案内突条が設けられ、前記摺動スリーブ及び前記マグネット取付部材は、前記一対の第1案内突条及び前記一対の第2案内突条に沿って摺動されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリルドライバ、インパクトドライバなどの電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
電動工具として、ドリル、ドライバなどの工具を回動させるための電動モータと、この電動モータの回転速度を変えるためのトリガースイッチ手段と、トリガースイッチ手段からの検知信号に基づいて電動モータの回転速度を設定するための回転速度設定手段とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この電動工具では、トリガースイッチ手段は、電動工具本体に摺動自在に装着された操作移動部材と、この操作移動部材に取り付けられたマグネットと、このマグネットからの磁束を検知するための第1及び第2ホールICとを備え、第1及び第2ホールICが操作移動部材の摺動方向に一部が重なるように配置されている。また、この操作移動部材の移動開始を検知するためのメインスイッチが設けられ、メインスイッチは、操作移動部材の初期位置(操作しない位置)を検知する。
【0004】
操作移動部材を操作して移動させると、メインスイッチがON状態になって電動モータの駆動回路への電流供給が開始される。そして、この操作移動部材を更に少し移動させると、第1ホールICが、操作移動部材と一体的に移動するマグネットの磁束を検知する(このとき、第2ホールICはマグネットの磁束を検知しない)。かくすると、第1ホールICからの検知信号に基づいて回転速度設定手段が低速回転信号を生成し、この低速回転信号に基づいて電動モータが低速で回転駆動される。
【0005】

この低速操作状態から更に操作移動部材を操作移動させると、第1及び第2ホールICが操作移動部材側のマグネットの磁束を検知し、第1及び第2ホールICからの検知信号に基づいて回転速度設定手段が中速回転信号を生成し、この中速回転信号に基づいて電動モータが中速で回転駆動される。更に、この中速操作状態から操作移動部材を操作移動させると、第2ホールICが操作移動部材側のマグネットの磁束を検知し(このとき、第1ホールICはマグネットの磁束を検知しなくなる)、第2ホールICからの検知信号に基づいて回転速度設定手段が高速回転信号を生成し、この高速回転信号に基づいて電動モータが高速で回転駆動される。このように、操作移動部材側の一つのマグネットと電動工具本体側の二つのホールIC(第1及び第2ホールIC)によって操作移動部材の操作状態を3段階に検知し、これにより、電動モータの回転速度を3段階に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4939673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この電動工具では、操作移動部材における3段階の操作状態を検知するために、電動工具本体側に二つのホールICを設け、また操作移動部材側に一つのマグネットを設ける必要があり、回路設計が幾分複雑となる問題がある。また、このような構成を利用して操作移動部材の操作状態を4段階以上にわたって検知しようとすると、ホールICを3つ以上必要とし、その回路設計が更に複雑になるとともに、製造コストもアップする問題がある。
【0008】
本発明の目的は、比較的簡単な構成でもって操作移動部材における3段階以上の操作状態を検知することができる電動工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載に電動工具は、電動工具本体と、前記電動工具本体に内蔵された電動モータと、前記電動モータにより回動される作業工具と、前記電動モータの回転速度を変えるためのトリガースイッチ手段と、前記トリガースイッチ手段からの検知信号に基づいて前記電動モータの回転速度を設定するための回転速度設定手段とを備えた電動工具において、
前記トリガースイッチ手段は、前記電動工具本体に摺動自在に装着された操作移動部材と、前記操作移動部材に取り付けられたマグネット取付部と、前記マグネット取付部に同極が相互に対面するように取り付けられた第1及び第2マグネットと、前記第1及び第2マグネット間であって前記電動工具本体側に配設された磁束検知手段とを含み、前記回転速度設定手段は、前記磁束検知手段からの検知信号に基づいて前記電動モータの回転速度を設定するように構成されており、
また前記トリガースイッチ手段は、前記第1及び第2マグネット並びに前記マグネット取付部材を収容するハウジング本体を備え、前記操作移動部材は、操作部と前記操作部から前記ハウジング本体内に延びる移動軸部とを有し、前記移動軸部に摺動スリーブが摺動自在に支持されているとともに、前記移動軸部の先端部に前記マグネット取付部材が取り付けられ、前記操作移動部材と前記摺動スリーブとの間に前記移動軸部を被嵌してコイルばねが介在されており、
更に前記摺動スリーブには、径方向外方に突出する突出部が設けられ、前記ハウジング本体には、前記摺動スリーブの前記突出部に作用する作用突部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項に記載の電動工具では、前記ハウジング本体には、前記操作移動部材の初期位置に対応して初期位置保持突部が設けられ、前記摺動スリーブ側には、前記ハウジング本体側の前記初期位置保持突部に対応して当接部が設けられ、前記操作移動部材が前記初期位置にあるときには、前記摺動スリーブ側の前記当接部が前記ハウジング本体側の前記初期位置保持突部に当接されることを特徴とする。
【0013】
更に、本発明の請求項に記載の電動工具では、前記ハウジング本体の片面壁の内面には、前記操作移動部材の摺動方向に延びる一対の第1案内突条が設けられ、その他面壁の内面には、前記操作移動部材の前記摺動方向に延びる一対の第2案内突条が設けられ、前記摺動スリーブ及び前記マグネット取付部材は、前記一対の第1案内突条及び前記一対の第2案内突条に沿って摺動されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載に電動工具によれば、電動工具のトリガースイッチ手段が、摺動自在に装着された操作移動部材と、相互に対面して配設された第1及び第2マグネットと、第1及び第2マグネット間に配置される磁束検知手段とを含み、第1及び第2マグネットが操作移動部材側に配設され、また磁束検知手段が電動工具本体側に配設されるので、前記操作移動部材の操作により磁束検知手段に対して相対的に第1及び第2マグネットが移動すると、磁束検知手段の検知信号が連続的なものとなり、回転速度設定手段は、この検知信号に基づいて電動モータの回転速度を設定する。従って、磁束検知手段の検知信号を三つの範囲に分けて回転速度を設定することにより、この電動モータの回転速度を三段階に切り換えることができ、また4つ以上の範囲に分けて回転速度を設定することにより、この電動モータの回転速度を4段階以上に切り換えることができ、かくして、比較的簡単な構成でもって電動モータの回転速度を所望の通りに切り換えることが可能となるとともに、このような電動工具を比較的安価に提供することができる。
また、操作移動部材には、同極が相互に対面するよう第1及び第2マグネットが取り付けられているので、操作移動部材の操作移動が磁束検知手段の連続的な検知信号に変換され、この検知信号を利用することにより、電動モータの回転速度を所望の通りに切り換えることができる。この磁束検知手段としてリニアホールICを用いることにより、操作移動部材の操作移動をホールICの略直線状の連続的な検知信号に変換することができ、操作移動部材の移動量に対応する回転速度に設定することができる。
更に、トリガースイッチ手段は、第1及び第2マグネット並びにマグネット取付部材を収容するハウジング本体を備え、操作移動部材は、操作部からハウジング本体内に延びる移動軸部とを有し、この移動軸部の先端部にマグネット取付部材が取り付けられているので、操作移動部材を操作することによりこれと一体的に第1及び第2マグネットを移動させることができる。また、移動軸部に摺動スリーブが摺動自在に支持され、操作移動部材とこの摺動スリーブとの間にコイルばねが介在され、更に摺動スリーブには突出部が設けられ、ハウジング本体には作用突部が設けられているので、操作移動部材を操作方向に操作すると、摺動スリーブの突出部がハウジング本体側の作用突部に当接して摺動スリーブの移動が拘束され、これにより、操作移動部材の操作量が多くなるに伴いコイルばねの反発力が増し、操作移動部材の操作力を大きくすることができる。
【0018】
また、本発明の請求項に記載の電動工具によれば、ハウジング本体には、操作移動部材の初期位置に対応して初期位置保持突部が設けられ、摺動スリーブ側には、ハウジング本体側の初期位置保持突部に対応して当接部が設けられているので、この当接部がハウジング本体側の初期位置保持突部に当接することにより、操作移動部材を初期位置に保持することができる。
【0019】
更に、本発明の請求項5に記載の電動工具によれば、ハウジング本体の片面壁の内面には一対の第1案内突条が設けられ、その他面壁の内面には一対の第2案内突条が設けられているので、摺動スリーブ及びマグネット取付部材をこれら一対の第1案内突条及び一対の第2案内突条に沿って摺動方向(操作方向)に確実に摺動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に従う電動工具の一実施形態を簡略的に示す正面図。
図2図1の電動工具のトリガースイッチ手段を、操作移動部材を操作していない状態で示す断面図。
図3図2におけるIII−III線による断面図。
図4図3におけるIV−IV線による断面図。
図5図2のトリガースイッチ手段を、操作移動部材を少し操作したときの状態で示す断面図。
図6図2のトリガースイッチ手段を、操作移動部材を最も大きく操作した状態で示す断面図。
図7】操作移動部材の移動量と磁束検知手段の検知出力との関係を示す図。
図8図1の電動工具の制御系を簡略的に示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う電動工具の一例としてのドリルドライバに適用して説明する。図1において、図示の電動工具(ドリルドライバ)は電動工具本体2を備え、この電動工具本体2は、筒状の本体部4と、この本体部4の後部から突出して延びる把持部6とを備えている。本体部4内には、作業工具としてのドリル8を回転駆動するための電動モータ10(例えば、DCモータから構成される)と、この電動モータ10の出力側に駆動連結されたギアボックス12とが内蔵され、このギアボックス12の出力側にチャック手段14が装着され、このチャック手段14に作業工具としてのドリル8が着脱自在に装着される。また、把持部6内には、電動工具の電源としてのバッテリ16(例えば、リチウムイオンバッテリから構成される)及び電動工具を制御するためのコントローラ18が内蔵されている。
【0022】
この電動工具では、電動モータ10の回転速度を制御するためのトリガースイッチ手段20が設けられている。トリガースイッチ手段20は、電動工具本体2の本体部4と把持部6との接続部付近に配設され、この把持部6を把持した手の人差し指で操作される操作移動部材22と、この操作移動部材22の移動を検知するための移動検知部24とを備えている。
【0023】
図2図4をも参照して、図示のトリガースイッチ手段20においては、操作移動部材22は、指で操作される操作部26と、この操作部26から延びる移動軸部28とを有し、この移動軸部28の先端部に操作部26が設けられている。操作部26は、電動工具本体2の外側に配置され、移動軸部28は、この操作部26から電動工具本体2内に延び、移動検知部24は、電動工具本体2に内蔵されている。
【0024】
移動検知部24は、一対のハウジング部材、即ち第1及び第2ハウジング部材30,32を組み合わせて構成されるハウジング本体34を備えている。このハウジング本体34の一端側には開口部36が設けられ、この開口部36に支持スリーブ38が装着され、操作移動部材22の移動軸部28はこの支持スリーブ38を通してハウジング本体34内に延びている。
【0025】
操作移動部材22の移動軸部28の先端側には、摺動スリーブ40及びマグネット取付部材42が装着されている。摺動スリーブ40はこの移動軸部28に摺動自在に装着され、マグネット取付部材42はこの移動軸部28の先端部に取り付けられている。この摺動スリーブ40及びマグネット取付部材42に関連して、ハウジング本体34側に第1及び第2案内突状44,46が設けられている。図3に示すように、ハウジング本体34の片面壁(換言すると、第1ハウジング部材30)の内面に一対の第1案内突状44が設けられ、その他面壁(換言すると、第2ハウジング部材32)の内面に一対の第2案内突状46が設けられ、これら第1及び第2案内突状44,46は、操作移動部材22の摺動方向(即ち、図2及び図4において左右方向。図3において紙面に対して垂直な方向)に延びている。
【0026】
摺動スリーブ40及びマグネット取付部材42の片面側(図3において下面側)の両側部には矩形状の第1段部48が設けられ、その他面側(図3において上面側)の両側部に矩形状の第2段部50が設けられ、これらの第1段部48がハウジング本体34側の一対の第1案内突状44間に摺動自在に案内支持され、これの第2段部50がハウジング本体34側の一対の第2案内突状46間に摺動自在に支持されており、従って、摺動スリーブ40及びマグネット取付部材42は、ハウジング本体34内に収容された状態で一対の第1案内突状44及び一対の第2案内突状46に沿って摺動自在に支持される。このように構成されているので、図2から理解される如く、操作移動部材22の一端側(移動軸部28の先端側)は、支持スリーブ38を介してハウジング本体34に支持され、その他端側(移動軸部28の後端側)は、摺動スリーブ40及びマグネット取付部材42を介してハウジング本体34に支持されている。
【0027】
この実施形態では、移動検知部24は、操作移動部材22の移動量を検知するための第1及び第2マグネット52,54と、第1及び第2マグネット52,54からの磁束の変化を検知するための磁束検知手段56とを含んでいる。図2を参照して、マグネット取付部材42は、摺動方向(図2において左右方向)に延びる取付本体部58を有し、その一端部(図2において左端部)に第1取付部60が設けられ、その他端部に第2取付部62が設けられ、第1取付部60の内側に第1マグネット52が取り付けられ、第2取付部62の内面に第2マグネット54が取り付けられている。このように構成されているので、操作移動部材22を矢印64で示す方向に操作すると、第1及び第2マグネット52,54は、マグネット取付部材42を介してこれと一体的に移動される。
【0028】
操作移動部材22に取り付けた状態では、第1マグネット52及び第2マグネット54は相互に対面し、これらマグネット52,54の同極が対向するように配置される。即ち、第1マグネット52のN極(又はS極)と第2マグネット54のN極(又はS極)とが対向するように配置される。
【0029】
第1及び第2マグネット52,44間には、これらの磁束の変化を検知するための磁束検知手段56が配設される。磁束検知手段56は、例えばリニアホールICから構成され、例えばハウジング本体34に取り付けられる回路基板(図示せず)に配設されて電気的に接続される。この磁束検知手段56の検知出力は、操作移動部材22(第1及び第2マグネット52,54)が図2に示す初期位置(磁束検知手段56が第1マグネット52に近接する位置)から図6に示す最大操作位置(磁束検知手段56が第2マグネット54に近接する位置)に移動すると、この磁束検知手段56の検知信号(検知出力)は、図7に示すように変化し、図2に示す初期位置から図7に示す最大操作位置に移動するに従い、その検知信号の大きさが略直線状に連続的に漸増するようになり、このような検知信号の変化は、磁束検知手段56として例えばリニアホールICを用いるとともに、第1及び第2マグネット52,54をそれらの同極を対面するように配置することによって得られる。
【0030】
この電動工具では、操作移動部材22の移動軸部28を被嵌してコイルばね66(弾性偏倚部材として機能する)が装着され、コイルばね66の一端側は摺動スリーブ40(具体的には、その収容凹部67の底部)に当接し、その他端側は操作移動部材22の大径軸部69に当接している。摺動スリーブ40と操作移動部材22との間に介在されるコイルばね66は、この操作移動部材22を図2において右側(即ち、矢印64で示す方向と反対方向)に弾性的に偏倚し、これにより、操作移動部材22は、図2に示す初期位置(非操作位置)に保持される。
【0031】
この電動工具では、更に、摺動スリーブ40の一端部(図2において右端部)に径方向外方に突出する突出部68が設けられているとともに、この突出部68に対応して、ハウジング本体34(第1ハウジング部材30)に作用突部70が設けられている。このように構成されているので、操作移動部材22が初期位置になるときには、図2に示すように、摺動スリーブ40の突出部68がハウジング本体34側の作用突部70に当接することはないが、この操作移動部材22を矢印64で示す操作方向に少し移動させると、図5に示すように、この突出部68がハウジング本体34側の作用突部70に当接し、この当接状態から操作移動部材22を更に操作方向に移動させると、図6に示すように、摺動スリーブ40に対して操作移動部材22及びマグネット取付部材42(第1及び第2マグネット52,54もともに)が相対的に操作方向に移動される。
【0032】
更に、摺動スリーブ40の他端部(図2において左端部)に径方向外方に突出する押圧突出部72が設けられているとともに、この押圧突出部72に対応して、ハウジング本体34側(具体的には、ハウジング本体34に取り付けられた回路基板(図示せず))にメインスイッチ74が配置される。このように構成されているので、操作移動部材22が初期位置になるときには、図2に示すように、摺動スリーブ40の押圧突出部70がハウジング本体34側のメインスイッチ74を押圧することはないが、この操作移動部材22を矢印64で示す操作方向に少し移動させると、図5に示すように、この押圧突出部70がハウジング本体34側のメインスイッチ74を押圧し、このメインスイッチ74がオン状態となって電動工具の電気系(例えば、コントローラ18など)に電流が供給される。
【0033】
この実施形態では、更に、ハウジング本体34(具体的には、第1ハウジング部材30)の所定部位に内側に突出する初期位置保持突部78(図4参照)が設けられている。コイルばね66によって摺動スリーブ40が図2において左方に弾性的に偏倚されると、この摺動スリーブ40の後端が初期位置保持突部78に当接してその移動が阻止され、この当接状態において、コイルばね66が操作移動部材22を図2において右方に弾性的に偏倚し、かくして、マグネット取付部材42が摺動スリーブ40に当接することによって、操作移動部材22は、図2に示す初期位置に保持される。このことに関連して、マグネット取付部材42の一端部には、初期位置保持突部78を受け入れる受け部79が設けられる。尚、この初期位置保持突部78は、第1ハウジング部材30に加えて第2ハウジング部材32に設けるようにしてもよい。
【0034】
この電動工具は、図8に示す制御系により作動制御される。図8において、電動工具を制御するコントローラ18は、例えば制御用回路基板に電気的に装着されたマイクロプロセッサなどから構成される制御手段82を含み、このコントローラ18に磁束検知手段56からの検知信号が送給され、またメインスイッチ74からの操作信号も送給される。
【0035】
図示の制御手段80は、回転速度設定手段82、速度信号生成手段84及びモータ駆動手段86を有し、回転速度設定手段82は、磁束検知手段56からの検知信号に基づいて後述するように電動モータ10の回転速度を設定し、速度信号生成手段84は、回転速度設定手段82により設定された回転速度に対応した速度信号を生成し、モータ駆動手段86は、速度信号生成手段84により生成された速度信号に基づいて電動モータ10を所要の通りに駆動する。
【0036】
この形態では、制御手段82は、更に、メモリ手段88を含み、このメモリ手段8には、磁束検知手段56の検知信号との関連で設定される各種電圧値、即ち電動モータ10を低速回転に設定する低速回転値V1、電動モータ10を中速回転に設定する中速回転値V2及び電動モータ10を高速回転に設定する高速回転値V3が登録されている。従って、磁束検知手段56の検知信号が低速回転値V1(又は中速回転値V2、高速回転値V3)以上になると、回転速度設定手段82は低速回転(又は中速回転、高速回転)を設定し、回転速度信号生成手段84は、回転速度設定手段82により設定された低速回転(又は中速回転、高速回転)に基づいて低速度信号(又は中速度信号、高速度信号)を生成し、モータ駆動手段86は、生成された低速度信号(又は中速度信号、高速度信号)に基づいて電動モータ10を低速度(又は中速度、高速度)で回転駆動する。
【0037】
次に、主として図1図2図5図6及び図8を参照して、この電動工具の動作について説明する。ドリル8を回転させて作業を行う場合には、操作移動部材22の操作部26を矢印64(図2)で示す操作方向に押圧操作すればよい。かくすると、操作移動部材22が矢印64で示す操作方向に摺動され、この操作移動部材22とともにマグネット取付部材42(これとともに第1及び第2マグネット52,54も)が一体的に操作方向に移動される。
【0038】
このようにしてマグネット取付部材42が操作方向に少し摺動すると、図5に示すように、このコイルばね66の作用によって摺動スリーブ40が初期位置保持突部78を乗り越えて操作方向に移動する。かくすると、摺動スリーブ40の突出部68がハウジング本体34側の作用突部70に当接してその移動が阻止され、その後はこの摺動部材40に対して操作移動部材22及びマグネット取付部材42が相対的に操作方向に移動される。また、この当接状態においては、摺動スリーブ40の押圧突出部72がメインスイッチ74を押圧してオン状態に保たれ、これによって、バッテリ16からの電流がコントローラ18などに供給される。
【0039】

この操作移動部材22を操作方向に更に移動させると、磁束検知手段56に対する第1及び第2マグネット52,54の相対的移動が大きくなり、これにより、磁束検知手段56の検知信号が変化する。そして、磁束検知手段56に対する第1及び第2マグネット52,54の相対的移動により、磁束検知手段56の検知信号が低速度値V1(又は中速度値V2、高速度値V3以上になると、回転速度設定手段82が低回転速度(又は中回転速度、高回転速度)を設定し、かかる設定に基づき速度信号生成手段84は低速度信号(又は中速度信号、高速度信号)を生成し、モータ駆動手段86は、この低速度信号(又は中速度信号、高速度信号)に基づき電動モータ10を低速度(又は中速度、高速度)で回転駆動され、このように二つのマグネット52,54と一つの磁束検知手段56とを用いて操作移動部材22の操作移動量に応じて電動モータ10(換言すると、ドリル8などの作業工具)の回転速度を所要の通り調整することができる。
【0040】
上述した実施形態では、電動モータ10の回転速度を低速度、中速度及び高速度の3段階に設定可能に構成しているが、磁束検知手段56の低速値V1と高速度値V3との間の範囲に例えば2つの速度値を設定する、例えば中低速度値V21及び中高速度値V22を設定することによって、低速度、中低速度、中高速度及び高速度の4段階に設定することができ、この間の範囲に3つ以上の値を設定することによって、電動モータ10の回毒度を5段階以上に設定することができる。
【0041】
以上、本発明に従う電動工具をドリルドライバに適用して説明したが、本発明はその他の電動工具、例えばグラインダなどにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
2 電動工具本体
4 本体部
6 把持部
10 電動モータ
18コントローラ
20 トリガースイッチ手段
22 操作移動部材
24 移動検知部
34 ハウジング本体
40 摺動スリーブ
42 マグネット取付部材
52,54 マグネット
56 磁束検知手段
66 コイルばね
80 制御手段
82 回転速度設定手段
84 速度信号生成手段














図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8