(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0010】
ここで述べられている一つまたはそれ以上の生分解性眼内インプラントの眼内投与により長期にわたり目の眼内圧降下をもたらすことができる。本開示による生分解性眼内インプラントは生分解性ポリマー材料と該生分解性ポリマー材料と組み合わされたた治療薬を含んでいるあるいはからなる。インプラントは単剤治療として目に投与され、例えば、1〜6か月間あるいはそれ以上の長い期間目の上昇した眼内圧(高眼圧)を下げるために効果的な量の治療薬を直接目の眼球範囲に与えることができる。インプラントはまた緑内障や上昇した眼内圧に関連したそのほかの目の医学的状態の治療や防止に用いることができる。
【0011】
本開示の眼内インプラントにふくまれている治療薬は高圧症の眼の眼内圧降下に効果的な化合物を含む、又は基本的に該化合物からなる、又は該化合物からなる。幾つかの実施形態において、該治療薬は式Iの化合物又はその医薬的に許容された塩又はエステルプロドラッグを含む又はからなる:
【化1】
ここで波線部分はα又はβ結合を表し、点線は二重結合または単結合を表し、Rは置換されたヘテロアリールラジカルである、ここで、個々のR
1は独立して水素および6以下の炭素原子を含む低級アルキルからなる群から選ばれ、Xは−OR
1、−N(R
1)
2、または−N(R
5)SO
2R
6であり、ここでR
5は水素またはCH
2OR
6を表し、R
6は水素、6以下の炭素原子を含む低級アルキル、前述低級アルキルラジカル、前述低級アルキルラジカルのハロゲン置換誘導体、又は前述低級アルキルラジカルのフッ素置換誘導体を表し、R
15は水素または6以下の炭素原子を含む低級アルキルであり、Yは=O又は2個の水素ラジカルを表す。
【0012】
式Iの置換されたヘテロアリールラジカルの置換基はC
1〜C
6アルキル、ハロゲン(フルオロ,クロロ、及びブロモなど)、トリフルオロメチル(CF
3)、COR
1(COCH
3など)、COCF
3、SO
2N(R
1)
2(SO
2NH
2など)、NO
2、とCNからなる群から選ばれる。
【0013】
更に具体的な実施形態において、治療薬式は、公式IIの化合物又はその医薬的に許容された塩又はエステルプロドラッグを持つ化合物を含む又はからなる:
【化2】
【0014】
いくつかの実施形態において、本開示のインプラントにふくまれている治療薬は式IIを持つ化合物を含むか又はからなるが、ここでR
2、R
3とR
4の少なくとも一つは独立してクロロ,ブロモ,及びC
1〜C
6アルキルからなる群から選ばれる。更に具体的な実施形態において、R
2、R
3とR
4の少なくとも一つはクロロまたはブロモである。更に具体的な実施形態において、R
2、R
3とR
4の少なくとも一つはブロモである。更に具体的な実施形態において、R
2、R
3とR
4の少なくとも二つはクロロである。いくつかの実施形態において、該治療薬は式IIを持つ化合物を含むか又はからなるが、ここでR
2、R
3とR
4の少なくとも一つはエチル、プロピル、またはブチルである。いくつかの実施形態において、R
6はメチル、エチル、またはトリフルオロメチルである。ある実施形態において、該治療薬は式IIを持つ化合物を含むか又はからなり、ここでR
15はハロゲン又はメチルである。
【0015】
ある実施形態において、該治療薬は式IIを持つ化合物を含むか又はからなり、ここでXは−N(R
1)
2でありYは=Oである。
【0016】
ある実施形態において、本開示のインプラントにふくまれている治療薬は式IIIを持つ化合物又はその医薬的に許容された塩又はエステルプロドラッグを含むか又はからなる。
【化3】
ここでXは−OHまたは−N(R
1)
2であり、ここでR
1は独立して水素とC
1〜C
6アルキルからなる群からえらばれる。
【0017】
更なる実施形態において、該治療薬は式IVを持つ化合物又はその医薬的に許容された塩又はエステルプロドラッグを含むか又はからなる。
【化4】
ここでXは−OHまたは−N(R
1)であり、ここでR
1は独立して水素とC
1〜C
6アルキルからなる群からえらばれる。
【0018】
具体的な実施形態において、該治療薬は式IVを持つ化合物を含み、ここでXは−NH
2である。この化合物は、ここで化合物1と呼ばれ、次のような構造を持っている。
【化5】
【0019】
他の実施形態において、該治療薬は式IVを持つ化合物又はその医薬的に許容された塩を含むか又はからなるが、ここでXは−OHである。この化合物は、ここで化合物2と呼ばれ、次のような構造を持っている。
【化6】
【0020】
式I〜IVが一つまたはそれ以上の立体中心を持つことは当業者にとって明らかとなろう。特に具体的に言及していなければ、式I〜IVを持つの全てのエナンチオマー及びジアステレオマーおよびそれらのラセミ混合物は発明の範囲内にふくまれる。式I〜IVのいずれかひとつの式をもつ幾つかの化合物は医薬的に許容された酸又は塩基の塩を形成してもよくまた、その化合物の塩もまた本発明の範囲内にふくまれる。
【0021】
このように、本発明は、患者の目の眼内圧を下げるのに効果的な生分解性眼内インプラントを提供し、ここで該インプラントは生分解性ポリマー材料と上記定義された式I、II、III、またはIVまたはその医薬的に許容された塩を含むか又はからなる。具体的な実施形態は、生分解性ポリマー材料とその生分解性ポリマー材料と組み合わせられた化合物1又は化合物2又はそれらの混合物を含むか又はからなる生分解性眼内インプラントを提供する。
【0022】
他の実施形態は生分解性ポリマー材料と化合物1を医薬的に活性薬剤として含む生分解性眼内インプラントであり、ここで該眼内インプラントは化合物1以外に医薬的に活性薬剤またはIOP−降下剤を含んでいない。
【0023】
式I〜IVのいずれかを持つ化合物は当分野で知られている方法により調製することができる。例えば、U.S.Patents6,602,900、6,124,344、5,741,810、および5,834,498参照。
【0024】
式I、II、III、またはIVを持つ化合物は生分解性ポリマー材料と組み合わせることができる。このように、この化合物は生分解性ポリマー材料と混合され、生分解性ポリマー材料中に溶解および/または分散され、又は生分解性ポリマー材料によってカプセル化される。式I、II、III、またはIVを持つ化合物は均一に又は不均一に生分解性ポリマー材料内に分散される又は生分解性ポリマー材料のいたるところに分配される。インプラントからの該化合物の放出は目への配置に続いて、化合物の拡散、ポリマー材料の侵食や分解、溶解、浸透、やこれらの組み合わせによっておこる。
【0025】
ここで述べられている生分解性眼内インプラントは、例えば、目において上昇した眼内圧(または高眼圧)を含む眼内圧力を下げ緑内障を治療するため、目のガラス体や前眼房といった目の眼球範囲内への配置用に特定の大きさにされ製剤化される。
【0026】
特定の実施形態は、患者の目に配置後、生体内および/または生体外で目に1〜3カ月、3カ月以上、3〜6カ月、あるいは6カ月以上の間、式I〜IVのいずれかの化合物(例えば化合物1など)を連続的に放出する眼内生分解性インプラントを供する。
【0027】
本開示による眼内インプラントは一日あたり5〜200ナノグラム(ng)の該化合物、一日あたり10〜200ナノグラムの該化合物、一日あたり5〜100ナノグラムの該化合物、一日あたり10〜100ナノグラムの該化合物、一日あたり10〜50ナノグラムの該化合物、一日あたり少なくとも10ngしかし50ngを超えない該化合物、一日あたり10〜35ナノグラムの該化合物、あるいは一日あたり20〜35ナノグラムの該化合物を1カ月以上、2カ月以上、1〜3カ月、3から6カ月、あるいは6か月間放出する。
【0028】
本発明のインプラントは、例えば化合物1といった式IVの化合物を、制御する仕方で放出するように設計されている。幾つかの形状において、該インプラントは直線的にあるいはほぼ一定の割合で化合物1を1カ月以上、例えば1カ月、3カ月、あるいは6カ月間供給する。
【0029】
前眼房に直接配送又は放出される場合、5〜200、10〜100ナノグラム、あるいはさらに5〜50ナノグラムの範囲の化合物1の1日の投与量は目における眼内圧を下げるのに治療的に効果のある量である。用語「治療的に効果のある量」あるいは「効果のある量」とは、活性薬剤(例えば化合物1や化合物2)が投与された目や目の領域に著しいマイナスあるいは逆の副作用を起こさずに、眼内圧を下げるのに必要な程度あるいは量を言う。
【0030】
本発明のインプラントは患者の目の眼内圧を、インプラントを目に設置後1カ月(30日)以上、1〜3カ月、3カ月、3〜6カ月、あるいは6カ月以上も降下させる。患者は典型的には、片方又は両目において眼内圧の上昇あるいは高眼圧症を経験しているあるいは診断されたヒトあるいは非ヒト哺乳動物である。患者は更に緑内障を患っている者と定義できる、というのも緑内障はしばしば眼内圧の上昇を含んでいるからである。このように、ここで述べられているインプラントは、一般的に目において眼内圧の上昇を下げ、患者の緑内障を治療するために用いることができる。この点で、一つの実施形態はそれを必要とする患者の高眼圧あるいは眼内圧の上昇を下げる方法であり、この方法は、本開示による生分解性眼内インプラントを患者の目に設置することを含んでいる。
【0031】
治療方法の特定の形において、一つ又なそれ以上の式I〜IVのいずれかの化合物を含む眼内インプラントを設置、より具体的には、目の前眼房に挿入しそれによって目の眼内圧や高眼圧を下げる。それにより、眼内インプラントは、例えば、目の前眼房に配置できるような大きさにして、製剤化される。このようなインプラントは「前房内」インプラントと呼ばれる。
【0032】
本開示のインプラントは、医薬的に効果的な量の化合物1(あるいはより一般的には式I、II、III,又はIVの化合物)又はその医薬的に許容されたいずれかの塩を、持続的、継続的に前眼房などの目の感染した領域に直接放出して、眼内圧亢進(又は高眼圧症)からの長時間持続する軽減を提供するように設計してある。この文脈で、医薬的に効果的な量の化合物1は5〜200ng/日の、10〜200ng/日、5〜50ng/日、あるいはさらに特定的に10〜40ng/日、その上更に特定的に約15ng/日、20ng/日、あるいは30ng/日の投与量である。患者は高眼圧症(上昇した内眼圧)や緑内障の治療を必要としているヒトまたは非ヒト哺乳動物である。インプラントは押し出されたフィラメントか圧縮錠剤の形をしている。ほかの形としては、ウエファース、フィルム、あるいはシートの形が含まれる。押し出されたフィラメントは円柱状あるいは非―円柱状の直径をもったロッド形で目の前眼房やガラス体などの目の中に配置するのに適した長さにカットされる。
【0033】
実施形態の一つは、8重量%の化合物1と0.001から10重量%のヘキサデカン1−オール(ヘキサデカノール)を含む押し出し成形の、前房内、生分解性インプラントであり、このインプラントは30〜100μgの総重量を持ち、37度、リン酸塩緩衝食塩水の条件下で化合物1を日に10〜50ngの間で3〜5カ月間生体内で放出する。このインプラントのいくつかの形状において、生分解性ポリマー材料は酸端末基と0.16〜024dl/gの固有粘度を持つポリ(D,L−ラクチド)、エステル端末基と0.25〜0.35dl/gの固有粘度を持つポリ(D,L−ラクチド)、エステル端末基をもちD,L−ラクチドのグリコライドに対するモル比が75:25(例えば73:27〜77:23)であり、固有粘度が0.16〜0.24dl/gであるポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)共重合体を含んでいる。ここで、各ポリマーおよびコポリマーの固有粘度は25℃でクロロフォルム中の0.1%のポリマーあるいはコポリマー溶液として測定した。
【0034】
式I、II、III、またはIV(例えば化合物1)の化合物を含む、生分解性、前房内インプラントによって効果的に治療できると見込まれる患者は、緑内障、閉塞隅角緑内障、開放隅角緑内障、慢性的開放隅角緑内障、開存性の虹彩切開術、高眼圧、上昇した眼内圧、偽落屑緑内障、あるいは色素性緑内障を患っているか診断された患者である。本開示によるインプラントは、低い、正常、あるいは上昇した眼内圧を持つ目の眼内圧を下げるのに効果的である。それ故、本開示によるインプラントは、上昇した眼内圧で特徴づけられる緑内障や、同様に低い張力あるいは正常な張力緑内障を含むあらゆる型の緑内障の治療に効果的である、なぜならこれらの患者は更に眼内圧を下げることによって良い効果を得られる可能性があるからである。治療的に効果的な量の化合物1などの眼内圧降下剤としての可能性を持つ化合物を持続的な期間放出することができることから、本発明のインプラントは、頻繁に眼内に挿入することや局所治療で必要とされるように目薬を眼球表面に定期的に点眼する必要なく、長期にわたりこれらの患者の眼内圧を下げる能力が期待されている。更に、ほかのプロスタミドや抗緑内障剤に対してより優れた化合物1のIOPを降下させる能力によって、目に、それ故、患者に、より安全でより良い、さらに小型化されより投与が長期化されたインプラントの製造が可能となった。
【0035】
このように、本発明の一つの実施形態は目の眼内圧(IOP)を下げる方法であり、この方法は生分解性眼内インプラントを目に配置することを含み、このインプラントは生分解性ポリマー材料と該ポリマー材料と組み合わせられた式I〜IVのいずれかの化合物またはその医薬的に許容された塩含むか又はからなるが、ここで該インプラントは、目に配置後1カ月、3カ月、あるいは6カ月以上の間目の眼内圧を下げる。幾つかの例において、インプラントは、インプラントなしのあるいはインプラントを受ける前のIOP(IOP基準)に対して目のIOPを1カ月、3カ月、あるいは6カ月以上の間少なくとも30%降下させる。インプラントは目の眼領域に配置される、それ故、目の眼領域用の大きさに合わせて作られる。患者は低いあるいは正常の眼内圧を持っているか、時に高眼圧と言われる、上昇した眼内圧を患っているか、又は緑内障患者である。より具体的な形において、患者は緑内障や上昇した眼内圧を患っているか又はそれと診断されており、インプラントは患っている目の前眼房かガラス体に配置される。具体的な実施形態において、インプラントは患っている目の前眼房隅角(または虹彩角膜角)に配置され、更により具体的には虹彩角膜角下位に配置される。これらの方法のいずれかにおいて、インプラント(すなわち、治療薬)中の化合物は化合物1あるいは化合物2、医薬的に許容された化合物1あるいは2の塩、又はそれらの混合物を含むかあるいはからなり、そのインプラントは前房内又は硝子体内注射により目の前眼房又はガラス体に配置される。具体的実施形態において、インプラントは目の前眼房隅角(虹彩角膜角)に配置される。インプラントは目の結膜下領域にも配置することができる。
【0036】
このように、本開示は患者の緑内障を治療する方法を提供し、この方法はここで述べられたように患者の目に生分解性眼内インプラントを配置する工程を含んでいる。該インプラントは目の前眼房あるいは目の眼領域に配置しそれによって緑内障を治療する。
【0037】
幾つかの実施形態は、点眼薬なしで、化合物1又は化合物2などの式IIIまたはIVを持つ化合物を投与する方法をふくんでいるが、この方法は、ここで述べられたインプラントをそれを必要としている患者の目に挿入することを含んでいる。該インプラントは好ましくは目の前眼房に配置される。
【0038】
一つの実施形態は、医薬的組成物をそれを必要としている患者の目に投与することを含む、眼内圧を下げる方法を提供するが、この組成物は治療に効果的な量の式I、II、III、またはIVを持つ化合物を含んでいる。幾つかの実施形態は、治療に効果的な量の化合物1または2を含む医薬的組成物をそれを必要としている患者の目に投与することを含む、必要としている患者の眼内圧を下げる方法を提供する。眼内圧を下げるための医薬的組成物は一般的に目と生体適合性があり治療的に効果的な量の該化合物と医薬的に許容された賦形剤を含んでいる。生体適合性インプラントおよびポリマーはほとんどあるいは全く毒性効果を引き起こさず、また有害でなく又は生理学的に活性でなく、更に免疫的反応を引き起こさない。具体的な実施形態において、該医薬的組成物は水溶性溶液、油、または乳状液などの液状である。一つの実施形態において、該医薬的組成物は局所的に患者の目に投与される。例えば、該医薬的組成物は点眼によって投与してもよい。他の実施形態において、該医薬的組成物は点眼薬を用いずに、目の前眼房に投与される。
【0039】
医薬的組成物は、治療に効果的な量の本発明による少なくとも一つの化合物あるいは医薬的に許容されているその塩を、医薬的に許容されている賦形剤を活性剤として、組み合わせ、また眼局所用途に適した単位投与形状の準備によって調製する基ことができる。治療に効果的な量は、液状製剤中0.0001と5%の間、あるいは10%(w/v)である。点眼用には、生理食塩水は使用可能なビヒクルの一つである。そのような組成物のpHは適切な緩衝剤あるいは系を用いて6.5から7.2の間に保つのが好ましい、実質的に中性pHが好ましい。製剤は更に従来の医薬的に許容された防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、キレート剤、等張化剤(たとえば、アルカリ金属やアルカリ土類塩)、界面活性剤も含んでいてもよい。特定の組成物は、緩衝成分と等張化成分の両方を含んでもよい。
【0040】
他の実施形態は、患者の眼内圧を下げるために効果的な生分解性眼内インプラントを製造する方法を提供するが、該インプラントは治療薬、生分解性ポリマー材料、および一つまたはそれ以上の賦形剤を含むか又はからなり、該方法は、a)治療薬を一つの生分解性ポリマー又は2つ以上の生分解性ポリマーと必要ならば一つ以上の賦形剤とブレンドし混合物を作り、b)混合物を押し出しフィラメントを作り、c)上昇した眼内圧に病んでいる患者の目に配置するのに適した長さに該フィラメントを切断することをこの順で含み、それによって眼内インプラントを形成する。特定の実施形態において、該フィラメントは目の前眼房内の設置に適した長さに切られる。該治療薬は、ここで定義された、式I〜IVのいずれかの化合物化あるいは化合物1か2を含んでいる化合物から成りうる。幾つかの例において、ポリマーとブレンドされる治療薬(工程a)は固形であってもよい。混合物は60℃から150℃の温度範囲で押し出される。
【0041】
更に他の実施形態は、ここで述べたいずれかの実施形態による生分解性眼内インプラントを、緑内障や高眼圧(すなわち、上昇した眼内圧)を病んでいる患者の目の眼領域内に埋め込むあるいは挿入する装置を提供するが、この装置は、長手軸を持つ細長い収納と長手方向に該収納から伸びたカニューレを含んでおり、このカニューレは全体に伸びている管腔を持っており、この管腔は眼内インプラントを受け取るように構成されており、この装置は更にここ述べられている実施形態のいずれかの眼内インプラントを含んでいる。該インプラントはカニューレ管腔内またはカニューレ管腔基部に近い位置付けられている。具体的な装置の形状において、カニューレの大きさは、21、22,25,27,28または30ゲージ針と同じかそれより小さく、該カニューレは眼球組織を容易に突き刺すことができるように斜めに切られたまたは鋭利な先端を持っている。幾つかの形体において、カニューレの外径及び内径は25または27ゲージ針の外径及び内径より小さい。
【0042】
本発明の範囲内には、また、上記装置を用いて緑内障あるいは上昇した眼内圧に病んでいる患者の目の中に眼内インプラントを送り込む方法も含まれているが、ここで該装置は、基部端と末端の鋭端と全体に伸びる管腔を持っているカニューレと、ここで述べられている眼内インプラントから選ばれるいずれかの眼内インプラントと、その動きによって該インプラントを装置からはじき出すアクチュエータを含んでいる、また該カニューレ管腔は眼内インプラントを受け取り該インプラントの並進移動を可能にするような大きさに調整されており、また該方法はカニューレを患者の目の眼領域内に差し込み、アクチュエータを押すか作動させ、それによってインプラントをカニューレから患者の目の中に押し出すことを含んでいる。いくつかの実施形態において、インプラントを挿入できる目の眼領域は、目の前眼房又はガラス体である。
なお、本発明としては、以下の態様も好ましい。
〔1〕 生分解性ポリマー材料と該生分解性ポリマー材料と組み合わされた治療薬を含む生分解性眼内インプラントであって、該治療薬は式(III)を持つ化合物
またはその医薬的に許容された塩又はエステルプロドラッグを含み、Xは−OHまたは−N(R1)2、R1は独立して水素及びC1〜C6アルキルからなる群から選ばれ、該インプラントは哺乳動物の目の眼内圧(IOP)を下げるために効果的である前記生分解性眼内インプラント。
〔2〕 〔1〕に記載の生分解性眼内インプラントであって、該治療薬は式(IV)を持つ化合物
またはその医薬的に許容された塩又はエステルプロドラッグを含み、Xは−OHまたは−N(R1)2、R1は独立して水素及びC1〜C6アルキルからなる群から選ばれる前記生分解性眼内インプラント。
〔3〕 〔2〕に記載の生分解性眼内インプラントであって、該治療薬は式(化合物1)を持つ化合物であり、
該インプラントは目に配置後5が月以上の間、哺乳動物の目のIOPを降下させるのに効果的である前記生分解性眼内インプラント。
〔4〕 〔3〕に記載の生分解性眼内インプラントであって、該生分解性ポリマー材料はポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)、またはそれらの組み合わせである前記生分解性眼内インプラント。
〔5〕 〔4〕に記載の生分解性眼内インプラントであって、該インプラントが該インプラントを受ける前の目のIOPと比べて、5カ月以上の間IOPを20〜30%降下させるのに効果的である前記生分解性眼内インプラント。
〔6〕 〔5〕に記載のインプラントであって、該治療薬はインプラントの重量の少なくともおよそ1%でかつおよそ8%を超えない、前記インプラント。
〔7〕 〔6〕に記載の生分解性眼内インプラントであって、該インプラントは押し出し工程で製造され、該インプラントは0.5〜2mmの長さ、100〜300μmの直径、総重量10〜200μgを持つ、前記生分解性眼内インプラント。
〔8〕 生分解性ポリマー材料、ヘキサデカン−1−オール、と8重量%の次の式を持つ化合物を含む生分解性眼内インプラントであって、
該化合物とヘキサデカン−1−オールは生分解性ポリマー材料と組み合わされ、該生分解性ポリマー材料はi)エステル端末基と0.25〜0.35dl/gの固有粘度を持つポリ(D,L−ラクチド)、ii)酸端末基と0.16〜0.24dl/gの固有粘度を持つポリ(D,L−ラクチド)、とiii)エステル端末基をもち、固有粘度が0.16〜0.24dl/g、D,L−ラクチドのグリコライドに対するモル比が75:25であるポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)を含んでおり、上記の各ポリ(D,L−ラクチド)およびポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)の固有粘度は25℃でクロロフォルム中の0.1%のポリマー溶液として測定した、上記生分解性眼内インプラント。
〔9〕 抗酸化剤又はキレート剤又は抗酸化剤とキレート剤の両方を更に含んでいる〔8〕に記載のインプラント。
〔10〕 患者の目の前眼房に治療的に効果的な量の治療薬を直接投与し、それによって目の眼内圧を下げることを含む患者の眼内圧を下げるための方法で、該治療薬は次の式を持っている、前記方法。
〔11〕 患者の目に、〔3〕又は〔8〕に記載の生分解性眼内インプラントを配置し、それによって目の眼内圧を5カ月以上の間下げることを含む患者の眼内圧を下げるための方法。
〔12〕 該患者は上昇した眼内圧、高眼圧、または緑内症を持っている〔11〕に記載の方法。
〔13〕 該眼内インプラントは患者の目の前眼房に配置される〔12〕に記載の方法。
〔14〕 該眼内インプラントは、該インプラントを受ける前の目の眼内圧と比べて、目に設置後3〜5カ月またはそれ以上の間目の眼内圧を少なくとも30%降下させる〔13〕に記載の方法。
〔15〕 生分解性ポリマー材料と該生分解性ポリマー材料と組み合わされた治療薬を含むか又はからなるインプラントである、患者の眼内圧を下げるために効果的な生分解性眼内インプラントを作製する方法であって、ここで治療薬は次の式(化合物1)を持ち、
該方法は、順に
I)化合物1を固体の形で得て、
II)該化合物1の固体を一つの生分解性ポリマーあるいは2つ以上の生分解性ポリマーとブレンドして混合物を作り、
III)該混合物を押し出してフィラメントを作り、
IV)該フィラメントを目の眼領域に配置するために適した長さに切断し、それによって眼内インプラント形成することを含む方法であり、
ここで固体の形で化合物1を得るのは、
a)化合物1の油形を酢酸エチル(EtOAc)におよそ50℃で加え混合物を形成し、b)工程a)の混合物を50℃で攪拌して澄んだ溶液を形成し、
c)工程b)の澄んだ溶液を1〜3時間でおよそ30℃に冷却し、
d)化合物1の種結晶を工程c)の冷却された溶液に加え、
e)工程d)の種付された溶液を約30℃で1〜3時間保ち
f)工程e)からの種付された溶液を約0から5℃の温度で約1〜5時間の間冷却し、
g)工程f)からの溶液を約0から5℃の温度で約1〜3時間攪拌して懸濁液を作成し、h)およそ20℃から25℃の間の温度で工程g)から、懸濁液を濾過しそれによって化合物1の固体形を製造する工程を含み、
ここで化合物1の種結晶は、
i)化合物1の油形をEtOAcにおよそ35から40℃の温度で溶解して混合物を形成し、
ii)工程i)の混合物をおよそ35から40℃の温度で攪拌して澄んだ溶液を形成し、iii)工程ii)の澄んだ溶液をおよそ1〜5時間の間0から5℃の温度で冷却し、
iv)工程iii)からの冷却された溶液を1〜3時間およそ0から5℃の温度で攪拌して白色の懸濁液を形成し、
v)工程iv)からの白色の懸濁液をおよそ20℃と25℃の間の温度で濾過してそれによって化合物1の種結晶を製造する工程を含む方法で得ることを特徴とする生分解性眼内インプラントを作成する方法。
【発明を実施するための形態】
【0045】
「C
1〜C
6アルキル」は1〜6個の炭素原子を持つアルキルを意味する。
【0046】
ここで用いられている式における、符号「H」は水素原子を表す。
【0047】
ここで用いられている式における、符号「O」は酸素原子を表す。
【0048】
ここで用いられている式における、符号「N」は窒素原子を表す。
【0049】
ここで用いられている式における、符号「S」は硫黄原子を表す。
【0050】
ここで用いられている式における、符号「C」は炭素原子を表す。
【0051】
ここで用いられている式における、符号「Cl」は塩素原子を表す。
【0052】
ここで用いられている式における、符号「Br」は臭素原子を表す。
【0053】
「累積放出プロファイル」は、インプラントから放出された活性剤(例えば、化合物1など)の生体内における眼領域へのあるいは生体外内における特定の放出媒体(例えば、PBS)への経時的累積放出百分率を表す。
【0054】
「プロドラッグ」は、化合物の活性形を生体内で転換される化合物(例えば、薬剤前駆体)を意味する。転換は種々のメカニズム、例えば、加水分解といった(例えば、代謝や化学過程)により起こる。
【0055】
用語「医薬的に許容された塩」は、化合物あるいは治療薬の望まれている生物学的活性を保っていて、かつ服用された哺乳動物や細胞系に、望まない毒性の効果が最小限あるいは全く示さない塩や複合体を意味する。
【0056】
「眼内インプラント」は目に配置するように構成されている装置あるいは要素と呼ばれる。例としては、生分解性ポリマー材料と式I、II、III、またはIVを持つ化合物で該ポリマー材料と組み合わされた化合物などの医薬的に活性な薬剤を含み、押し出し成形され、目に配置するために適した長さに切断されたフィラメントが含まれる。眼内圧インプラントは一般的に目の生理学的状況で生分解性であり、目の中で逆の悪い反応を起こさない。本発明のある形において、眼内インプラントは、目の前眼房又はガラス体内設置ように大きさを調節され、調剤されている。眼内インプラントは目の視力を大きく障害せずに配置することができる。本発明の範囲内にふくまれる眼内インプラント(薬剤配送系)の例としては、一つあるいはそれ以上の生分解性ポリマー材料と式I、II、III、またはIVを持つ化合物またはその医薬的に許容された塩を含む眼内インプラントがある。
【0057】
「前房内の」インプラントは、目の前官房に配置するために大きさを調整され調剤されている眼内インプラントである。制限はないが、例としては表2のインプラント1〜4及び9から11がある。
【0058】
「ガラス体内の」インプラントは、目のガラス体に配置するために大きさを調整され調剤されている眼内インプラントである。
【0059】
インプラントについて「眼領域または場に挿入、埋め込みまたは配置するために適した、構成した、大きさにしたまたは構造した」は、過剰な組織の損傷をおこさずまたインプラントを埋め込こまれたあるいは挿入された患者の持っている視力をあまり減じることなく、インプラントが目の前眼房あるいはガラス体といった眼領域に挿入できる、埋め込まれる、あるいは配置できる様な大きさ(例えば寸法や重さ)を持っていることを意味する。
【0060】
ここで用いられている「治療する」「治療」は本方法により患者の目に有益な効果を含んでいる。高眼圧あるいは上昇した眼内圧あるいは緑内障などの眼状態の治療は眼状態を下げるかまたは解決することができ、また眼状態のあるいは眼状態に関連した一つ以上の兆候、症状、あるいは危険因子の進行を抑えたり遅らせたりできる。治療で積極的に影響を受ける兆候あるいは症状は特定の条件によっている。例えば、本発明によって作り出される有益な(それ故、積極的な)効果は、高眼圧、眼痛(すなわち、目の痛み)、眼肥大および/または眼炎症を抑えることを含んでいる。ここで述べられている一つ以上の眼内インプラント用いる上述のいずれかの方法による治療は、例えば、通常の状態、快適さ、および/または目の視力をも改善する。
【0061】
「活性薬剤」「薬剤」「治療薬」「治療的に活性な薬剤」及び「医薬的に活性な薬剤」は、それが投与された患者(ヒトまたは非ヒト哺乳動物)の眼に望んだ治療効果を生じさせ、患者がかかっている上昇した眼内圧(高眼圧)あるいは緑内障といった眼状態(医学的な目の状態)を治療する化学的化合物あるいは薬剤物質のことである。制限はないが、化合物1は本発明にふくまれる治療的(あるいは医薬的)活性薬剤または治療剤の例の一つである。
【0062】
「患者」は治療を必要とするヒトまたは非ヒト哺乳動物である。
【0063】
「目」は視覚器官であり、眼球と光を受信し視覚情報を中枢神経系に発信する眼窩感覚器官を含んでいる。大まかに言えば、目は、眼球と眼領域、組織、眼球を構成する流体、眼窩周囲の筋肉(斜筋、直筋など)と、眼球内と眼球に隣接する視神経の部分を含んでいる。
【0064】
「治療的に効果的な量」あるいは「効果的量」は薬剤を投与された目あるいは目の領域に重大なマイナスあるいは悪い副作用を起こさずに眼状態を治療するために必要な活性薬剤の程度あるいは量のことである。
【0065】
用語「生分解性ポリマー(ポリマー)」は生体内で分解するポリマーを意味するが、ここでポリマーの分解は治療薬の放出と同時にあるいは放出に伴って起こる。生分解性ポリマーはホモポリマー、コポリマーまたは2つ以上の異なる繰り返し構造単位を含むポリマーである。
【0066】
用語「眼領域」または「眼場」は一般的に眼球のいずれかの範囲のことであり、目の前眼及び後眼部を含み、特に制限はないが、眼球に見られる機能的(例えば、視力)、あるいは眼球の内外を部分的あるいは完全に覆う構造的組織や細胞層を含んでいる。目の眼領域の具体的な例としては、前眼房、後眼房、ガラス体眼房(ガラス体またはガラス質)、脈絡膜、上脈絡膜腔、結膜、結膜下腔、テノンのう下腔、強膜上の空間、角膜内腔、エピコーネアル(epicorneal)スペース、強膜、毛様扁平部、外科的に留初された無血管領域、黄斑、網膜がある。
【0067】
ここで用いられている「眼状態」は、目や、目の部分や領域の一つに影響するあるいはそれらを巻き込む疾患や病気または状態のことである。大まかに言えば、目は眼球、組織、眼球を構成する流体、眼窩周囲の筋肉(斜筋、直筋など)と、眼球内と眼球に隣接する視神経の部分を含んでいる。
【0068】
前眼状態は、眼窩周囲の筋肉、まぶた、あるいは水晶体被膜や毛様筋の前眼から後眼壁にある眼球組織や流体といった前眼(すなわち、目の前部)領域や場に影響するあるいはそれらを巻き込む疾患や病気または状態のことである。それ故、前眼状態は結膜、角膜、前眼房、虹彩、後眼房(網膜の後であるが水晶体被膜の後眼房壁の前)、水晶体あるいは水晶体被膜、前眼領域の血管を新生化し作動するように支配する血管及び神経に主に影響しあるいはそれらを巻き込む。緑内障治療の臨床の目的は、目の前眼房において水溶性流体の高圧を下げること(すなわち、眼内圧を下げること)であるので、緑内障は前眼状態とみなすことができる。
【0069】
後眼状態は、(水晶体被膜の後眼壁を通じて平面の後ろの位置にある)脈絡膜や強膜、ガラス体、ガラス体房、網膜、視神経(すなわち、視神経円板)後眼領域あるいは位置の血管を新生化し作動するように支配する血管及び神経に主に影響しあるいはそれらを巻き込む。治療の臨床の目的は、網膜細胞または視神経細胞の傷または喪失により視力を失うことを防ぐあるいは視力喪失が起こるのを減らすことである(すなわち、神経保護)であるので、緑内障はまた後眼状態とみなすことができる。
【0070】
目への局所的適用のための医薬的組成物
局所的適用(例えば、点眼薬の形状)として、医薬的組成物は、活性薬剤として、治療的に効果的な量の本発明による少なくとも一つの化合物あるいは医薬的に許容されたその塩を一つあるいはそれ以上の医薬的に許容された賦形剤と組み合わせ、局所的眼用途に適した単位投与形状で調製することで調製できる。治療的に効率的な量は液体調剤において、0.0001〜10%(W/V)の間又は0.001〜5.0%(W/V)である。
【0071】
好ましくは、溶液は、生理食塩溶液を主要なビヒクルとして用いて調製する。そのような眼科溶液のpHは適切な緩衝剤あるいは系を用いて6.5から7.2の間に保つのが好ましい、実質的に中性pHが好ましい。製剤は更に従来の医薬的に許容された防腐剤、緩衝剤、等張化剤、抗酸化剤、安定化剤、及び界面活性剤も含んでいてもよい。
【0072】
本発明の医薬的組成物に用いられる好ましい防腐剤は、特にそれらに限らないが、塩化ベンズアルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、及び硝酸フェニル水銀である。好ましい界面察製剤は、例えば、ツイーン80である。このように、本発明の眼科調剤には種々の好ましいビヒクルが用いられる。これらのビヒクルは、特にそれらに限らないが、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロクサマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及び浄化水である。
【0073】
必要ならばあるいは便宜上、等張化剤を加えてもよい。それらは、特にそれらに限らないが、塩である、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、グリセリン、あるいはその他の適した、眼科的に許容されたすべての張度調整剤。
【0074】
種々の緩衝剤とpHを調節する手段は、得られる調剤が眼科的に許容できる限り、用いてもよい。したがって、緩衝剤は酢酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤などである。酸や塩基も必要に応じてこれらの製剤のpHを調節するために用いてもよい。
【0075】
許容できる抗酸化剤は亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチルヒドロキシアニソール、及びブチルヒドロキシトルエンである。
【0076】
他の賦形剤は一つあるいはそれ以上のキレート剤を含む。
【0077】
局所的使用のための医薬的組成物は従来、目への塗布を易しくするための点眼器を備えた容器のような、計量塗布に適した形状に包装されている。
【0078】
生分解性眼内インプラントの大きさと構成
患者の目に配置(眼内インプラント)用の大きさにされ調剤化され、及び、生分解性ポリマー材料(あるいは、マトリックス)中に分散された式I〜IVのいずれかの化合物を含む生分解性インプラントは眼内圧を降下させまた緑内障を治療するために有用である。我々は化合物1が、目の前眼房に直接投与された場合、目の眼内圧を下げるために特に効果的であることを発見した。生分解性インプラントは、それによりこの化合物を前眼房に投与することができる安全で、非毒性、かつ効果的手段である。
【0079】
好ましい配送先に合わせ、本発明のインプラントは、目、特に角膜内皮に、少しもあるいは全く悪影響を与えず、かつ患者の視力を障害せずあるいは大きく減じることなく目(例えば、ヒトの眼)の前眼房、好ましくは目の前房隅角内で受け取られるように大きさにされ調剤化される。インプラントを受けた患者は、目にインプラントの配置後に治療学的に効果的な量の化合物(いくつかの実施形態においては、化合物1)を受領し好ましくは、ほとんどあるいは全く目の充血や炎症を経験しない。この点で、本発明は、目の前眼房への配置のための大きさにされ調剤化されていて、目との生物的適合性があり、目にほとんどあるいは全く免疫学的反応や炎症を起こさず、目の眼内圧を下げるために少なくとも1カ月、例えば、1〜6カ月間、あるいはそれ以上の期間効果的である眼内インプラントを開示する。IOPを降下させる化合物1の特別な有効性は、例えば、治療的に効果的な量のIOP−降下剤を前眼房などの目の標的の組織や位置に届けるために必要とされる眼内インプラントの大きさを小さくすることができ、目の細胞への痛みや傷をおそらく最小化でき、それ以上に一般的に、患者により良い安全性、より多くの総合的恩恵を提供ことである。更に、より小さなインプラントの使用は、薬剤放出後、目の中で該インプラントを完全に分解するのにかかる時間を減らすことができる。
【0080】
インプラントは、目の前眼房、後眼房、あるいはガラス体などの眼領域または場に挿入、配置または埋め込みに適した大きさを持っている。インプラントの大きさは、治療組織における式I〜IVのうちの一つを持つ化合物の放出割合、治療期間及び濃度に影響する。等しい活性薬剤負荷の場合、より大きいインプラントは比例して高い投与量を運ぶ。
【0081】
前眼房への配置用に大きさを決められたインプラント(前房内インプラント)は一般的に100〜400μmの直径(または、非円筒形フィラメント用には適当な寸法)を持ち0.5〜6mmの長さを持つ。該インプラントは一般的に一軸または二軸押し出し工程で形成され、円筒形または非円筒形であり、10〜500μgの総重量を持っている。重量は、ある程度、望みの投与量に依る。いくつかの実施形態において、目の前眼房への配置に適していて本発明による使用に適しているインプラントは100μm〜300μmの直径、0.5mm〜2mmの長さと10μg〜200μgまたは10μg〜100μgグラムの総重量をもっている。幾つかの例において、IOPを降下させるための前房内インプラントは10μg〜100μg、より具体的には30〜100μg、の総重量を持っている。一つの実施形態は、目の前眼房への配置に適し、かつおよそ200μmの直径と1.5mmの長さを持つ押し出し形成された生分解性前眼インプラントである。
【0082】
緑内障やより一般的に高眼圧を病んでいる患者の眼は目のガラス体への生分解性インプラントの配置に対してより受容性がある。ガラス体は同じ一般的な製剤より大きなインプラントを受け入れられる。例えば、ガラス体内インプラントは、1〜10mmの長さ、0.5〜1.5mmの直径、と50μgから5000μgの総重量を持っている。該インプラントは投与される目の場所、患者の大きさやガラス体の体積などによって大きくしたり小さくすることができる。ほとんどの場合、一つのインプラントが持続的期間(例えば、少なくとも3カ月)目の前房内圧力下げ得ることが分かっているが、幾つかの例において、臨床医は2つ以上の、上記述べられたインプラントを目の眼領域に設置することが治療的効果を改善するのに役立つことを見出している。
【0083】
構成に関して、眼内インプラントは押し出されたロッド形状、あるいは非円筒形フィラメント形状であり寸法は上記のとおりである。ウエファース、シート、フィルム、あるいはいくつかの場合圧縮錠剤シートの形が本発明によって用いることもできる。
【0085】
一般的に、本発明によるインプラントは生分解性ポリマー材料と生分解性ポリマー材料と組み合わされた式I〜IVのいずれかの物質を含むか又はからなる。ポリマー材料は一つ、二つ、三つ、またはそれ以上の生分解性ポリマーと、任意に、安定性を改善および/またはインプラントはの特徴を開放する一つあるいはそれ以上の賦形剤を含むか又はからなる。
【0086】
有用な生分解性ポリマーの例としては、ポリラクチドポリマー、ポリ(ラクチド−コ−グリコライド)共重合体を含む。ある実施態様では、生分解性ポリマー材料はポリラクチドポリマー、ポリ(ラクチド−コ−グリコライド)、二つあるいはそれ以上のポリラクチドポリマーの混合物(例えば第一及び第二ポリラクチドポリマー)、二つあるいはそれ以上のポリ(ラクチド−コ−グリコライド)共重合の混合物、やポリラクチドポリマーとポリ(ラクチド−コ−グリコライド)ポリマーの混合物がある。これらのインプランのいずれかの特定の形状において、ポリラクチドポリマーはポリ(D,L−ラクチド)であり、ポリ(ラクチド―コ―グリコライド)ポリマーはポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)である。上記の組み合わせのいずれにおいても、二つあるいはそれ以上のポリマーは、末端基、繰り返し単位、固有粘度、やこれらの全ての組み合わせに基づいて、互いに異なる。本インプラントに用いられるポリラクチドとポリ(ラクチド−コ−グリコライド)ポリマーはカルボキシル(−COOH)かエステル末端基のいずれかを持っている。加えて、二つあるいはそれ以上のポリ(ラクチド−コ−グリコライド)ポリマーは、各ポリマーの(ラクチド:グリコライド)比、この比はポリマーごとにおよそ(85:15)からおよそ(50:50)まであるいはおよそ(75:25)までの間で変化するが、ポリマーによって互いに異なる。
【0087】
ポリ(D,L−ラクチド)またはPLAはCAS番号26680−10−4で同定でき以下の式で表される。
【化7】
【0088】
ポリ(D, Lラクチド−コ−グリコライド)またはPLGAはCAS番号26780−50−7で同定でき以下の式で表される。
【化8】
ここで、xはD,L−ラクチド繰り返し単位の数、yはグリコライド繰り返し単位の数、nはD,L−ラクチド−コ−グリコライド繰り返し単位の数である。このように、ポリ(D-Lラクチド−コ−グリコライド)(あるいはPLGA)は一つあるいはそれ以上のD,L−ラクチド繰り返し単位のブロックと一つあるいはそれ以上のD,L−ラクチド繰り返し単位のブロックを含み、ここで、各ブロックの大きさと数は多様に変化しうる。
【0089】
PLGAコポリマーの各モノマーまたは繰り返し単のモル百分率は、0〜100%、およそ15〜85%、およそ25〜75%、あるいは35〜65%である。いくつかの実施形態において、D,Lラクチドは、モル基準でPLGAポリマーのおよそ50%〜およそ75%、およそ48%〜およそ52%またはおよそ50%、およそ73%〜およそ77%またはおよそ75%である。ポリマーの残余は主にグリコライド繰り返し単位である。例えば、モル基準でPLGAポリマーのグリコライドはおよそ25%〜およそ50%、およそ23%〜およそ27%または25%、およそ48%〜およそ52%または50%である。末端あるいはキャッピング基(末端基)といった他の基は少量存在する。上に述べられているように、いくつかの実施形態において、PLGAコポリマーはPLAポリマーと共に用いられる。いくつかのインプラントにおいて、エステル末端基を持つ75/25PLGAポリマーが用いられる。
【0090】
末端基の親水あるいは疎水の性質はポリマー材料の分解を多様化させるのに有益である。親水性の末端基を持つポリマーは疎水性の末端基を持つポリマーより早く分解する、なぜなら親水基は水を取り込むからである。適している親水性末端基の例としては、特に制限はないが、カルボキシル(酸末端基)、ヒドロキシル、やポリエチレングリコールがある。これらの基は、適当な開始剤を用いることによって導入される。末端基はまた、重合が完了した後で、末端のヒドロキシ基を他の末端基に変換することでも導入できる。例えば、エチレンオキサイドはヒドロキシ基をポリエチレングリコールに変換する。疎水性末端(キャッピングされた、あるいは末端―キャッピングされたということもある)のポリマーはポリマー末端に当然疎水性のエステル結合を持つ。
【0091】
他の興味のあるポリマーはヒドロキシ脂肪族カルボン酸、ホモポリマーあるいはコポリマー、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリカプロラクトン、多糖類、ポリエーテル、アルギン酸カルシウム、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエステル、とこれらの組み合わせを含むかその中から選ばれる。
【0092】
有用な多糖類は、制限はないが、アルギン酸カルシウムとカルボキシメチルセルロース、水溶性であることが特徴のエステルなどの機能化セルロースを含み、例えば、およそ5kD〜500kDの分子量を持っている。
【0093】
生分解性ポリマー材料からの薬剤の放出は幾つかのメカニズムあるいはメカニズムの組み合わせの結果起こる。これらのメカニズムの幾つかはインプラント表面からの脱着、溶解、水和化ポリマーの多孔性経路を通して拡散、マトリックスを形成しているポリマーの浸食などが含まれる。浸食はかたまりであるいは表面であるいはその両方でおこる。薬剤(例えば、化合物1)を、目に埋め込んだ後で一カ月以上、1〜3カ月管、3〜6カ月間、または6カ月間放出するためにポリマーマトリックスは治療薬を効果的割合で放出する。例えば、インプラントは化合物1を含んでおり、インプラントのポリマーマトリックス(あるいは、マトリックス)は、生体外であるいは目に配置後、あるいはより具体的には目の前眼房へ配置後、治療的に効果的な量の化合物1を1、2、3、あるいは6カ月間持続的に放出するために効果的な割合で分解する。
【0094】
マトリックス(インプラントのポリマー材料)を形成するのに用いられた一つあるいはそれ以上の生分解性ポリマー望ましくは酵素あるいは加水分解に対して不安定化処理される。該ポリマーの更に好ましい特徴は生体的適合性、治療的成分との適合性、本発明のインプラントを作成する際の扱いやすさ、生理学的環境における少なくともおよそ6時間、好ましくはおよそ1日以上、の半減期、水不溶性、などである。
【0095】
生分解性ポリマー材料は、点眼調剤として投与された時の薬剤の生体内寿命より有意に長い間治療に効果的な量の治療薬を放出するように、生体内で好ましく分解する。上記検討しているように、ポリマー材料は単一のポリマーないしコポリマーである、あるいは、幾つかの例において、生分解性ポリマーおよび/またはコポリマーブレンドである。
【0096】
生分解性ポリマーと式I、II、III、またはIVを持つ化合物に加え、本発明による眼内インプラントは一つあるいはそれ以上の賦形剤を最終的なインプラントにおける治療薬の安定性(たとえば、貯蔵寿命)、インプラントの製造取り扱いの容易性、および/またはインプラントの放出特性を改善するために含んでいてもよい。化合物1は、例えば、種々の製造、製剤、及び貯蔵条件下で酸化分解を受けやすい。主な分解品はC−15ケトンであると思われる。
【0097】
上記目的のいずれかのための賦形剤の例としては、防腐剤、抗酸化剤、緩衝剤、キレート剤、電解質、やその他の賦形剤が含まれる。存在する場合、賦形剤は一般に、インプラントの重量の0.001〜10%または15%までであり、以下に名づけられたものから選ばれる。
【0098】
有用な水溶性の防腐剤は、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、メチルパラベン、ベンジルアルコール、ポリビニルアルコール、及びフェニルエチルアルコールである。
【0099】
有用な水溶性の緩衝剤は、ナトリウムリン酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酢酸重炭酸塩、及び炭酸塩など、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の炭酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、コハク酸塩などである。これらの緩衝剤は、水和化されたインプランのpHを2〜9の間、好ましくは4〜8の間に保つために十分な量で存在する。従って、このような緩衝剤は組成物の総重量に対してせいぜい5%である。
【0100】
有用な電解質は塩化ナトリウム、塩化カリウムなどと、MgCl
2も含んでいる。亜鉛塩もまた有用である。
【0101】
抗酸化剤の例としてはアスコルビン酸塩、アスコルビン酸、L−アスコルビン酸、メラトニン、ブチルヒドロキシアニソール、チオール、ポリフェノール、α−トコフェロールなどのトコフェロール、マンニトール、還元グルタチオン、種々のカロテノイド、システイン、尿酸、タウリン、チロシン、スーパーオキシドジスムターゼ、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、アスタキサンチン、リコペン、N−アセチル−システイン、カルノシン、ガンマーグルタミルシステイン、ケルシチン、ラクトフェリン、ジハイドロリポ酸、クエン酸塩、イチョウ抽出物、茶カテキン、ビルベリーエキス、ビタミンEとビタミンEのエステル、パルミチン酸レチニル、及びそれらの誘導体がある。
【0102】
有用なキレート剤は、例えば、エチレンジアミンテトラアセテート(EDTA),エチレンジアミン、ポルフィン、とビタミンB−12から選ばれる。
【0103】
その他の賦形剤としては、例えば、ヘキサデカノール(セチルアルコール、ヘキサデカン−1−オールともよばれ、しばしばC16−OHと表される)などのアルコールが含まれる。いくつかの実施形態において、インプラントは10個以上の炭素長を持つ直鎖または分岐アルコールを含んでいる。
【0104】
一つの実施形態において、インプラントは、例えば、エチレングリコール3350(PEG3350)などのポリエチレングリコールを更に含んでいる。他の実施形態において、インプラントはPEG3350は含んでいない。
【0105】
インプラントは上記の二つまたはそれ以上の賦形剤の組み合わせを含んでいる。
【0106】
酸素は、化合物1などの治療薬の分解経路において重要な元素である。一旦製造されたインプラントの貯蔵寿命を延ばし効能を保存するための他の又は付加的手段は、インプラントを酸素吸収パックを含む封印されたポーチ(例えば、アルミポーチ)の中のような酸素を消費したあるいは貧酸素雰囲気内に保存する工程を含んでいる。追加の工程は、封印の前に、窒素あるいはアルゴンを該ポーチに充てんしポーチから酸素を更に除去することを含んでいる。
【0107】
一つの実施形態は、押し出し成形されたインプラントを酸素吸収剤を含んでいる封印されたポーチの中で25℃でい1カ月間あるいは3カ月間保存した後で、初期の効能の少なくとも90%、あるいは95%以上、あるいは少なくとも98%保っている(又は初期の効能の5%未満又は2%抗酸化剤未満を失っている)を含む本開示による眼内インプラントである。初期の効能は、インプラント製造直後のインプラントに存在する活性薬剤(例えば、化合物1)の実際のあるいは理論上の重量対重量)(w/w)を基準にした量に基づいている。いくつかの実施形態において、インプラントはポーチの中で更に針を先端に持つ眼インプラント配送装置内にふくまれており、ポーチは乾燥剤を更に含んでいる。
【0108】
生分解性ポリマー材料の量とそれ故インプラントに使われている特定の生分解性ポリマーの比および/または量は、使われた化合物と望まれる放出特性によって種々に変わる。直線的または一定の、あるいはほとんど一定の割合での持続的期間の放出は安定的な、長期の(1カ月を超える、例えば3〜6カ月)眼内圧降下に役立つ。一般的に、本発明のインプラントの生分解性ポリマー材料は重量(%w/w)でインプラントの1〜99%である。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマー材料はインプラントの重量(%w/w)を基におよそ80%〜およそ99%を占める。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマー材料はインプラントの重量を基におよそ92%〜およそ99%を占める。
【0109】
ある実施形態において、生分解性ポリマー材料は第一、第二と第三の生分解性ポリマーを含む、又はからなる。第一と第二のポリマーは末端基(エステルまたは酸)あるいは/また固有粘度(25℃で0.1%クロロフォルム溶液で測定された)によって互いに異なるポリ(D,L−ラクチド)ポリマーであり、第三のポリマーはポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)である。該インプラントは任意に更にヘキサデカノールを含んでいてもよい。
【0110】
一つの実施形態において、第一のポリマーはエステル末端基と0.25〜0.35dl/g(0.1%w/vクロロフォルム溶液で、25℃で測定)の固有粘度をもつポリ(D,L−ラクチド)(例えばR203S)、第二のポリマーは酸末端基と0.25〜0.35dl/g(0.1%w/vクロロフォルム溶液で、25℃で測定)の固有粘度をもつポリ(D,L−ラクチド)(たとえば、R203H)、及び第三のポリマーはエステル末端基と固有粘度が0.16〜0.24dl/g(0.1%w/vクロロフォルム溶液で、25℃で測定)、D,L−ラクチド:グリコライド比が75:25であるポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)(たとえば、RG752S)である。
【0111】
いくつかの実施形態において、第一、第二、第三の生分解性ポリマーは独立して以下ポリマーからなる群から選ばれる:すなわち、
R202H、酸末端基と0.1%クロロフォルム溶液で、25℃で測定した場合0.16〜0.24dl/gの固有粘度をもつポリ(D,L−ラクチド);
R203H、酸末端基と0.1%クロロフォルム溶液で、25℃で測定した場合0.25〜0.35dl/gの固有粘度をもつポリ(D,L−ラクチド);
R202S、エステル末端基と0.1%クロロフォルム溶液で、25℃で測定した場合0.16〜0.24dl/gの固有粘度をもつポリ(D,L−ラクチド);
R203S、エステル末端基と0.1%クロロフォルム溶液で、25℃で測定した場合0.25〜0.35dl/gの固有粘度をもつポリ(D,L−ラクチド);と
RG752S,エステル末端基と固有粘度が0.16〜0.24dl/g(0.1%クロロフォルム溶液で、25℃で測定)、ポリ(D,L−ラクチド):グリコライド比がおよそ75:25であるポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)。
【0112】
一つの実施形態において、第一のポリマーはエステル末端基と0.25〜0.35dl/gの固有粘度をもつポリ(D,L−ラクチド)、第二のポリマーは酸末端基と0.16〜0.24dl/gの固有粘度をもつポリ(D,L−ラクチド)、及び第三のポリマーはエステル末端基と固有粘度が0.16〜0.24dl/g、D,L−ラクチド:グリコライド比が75:25であるポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)であり、ここで、各ポリマーとコポリマーの固有粘度はクロロフォルム中のポリマーあるいはコポリマー0.1%溶液で25℃で測定されている。
【0113】
一つの特殊な実施形態において、第一のポリマーはR203Sであり、第二のポリマーはR202Hであり、第三のポリマーはRG752Sであり、インプラントは更に賦形剤、ヘキサデカン−1−オールを含んでいる。特定の形状において、該インプラントはヘキサデカン−1−オールを0.001重量%〜10重量%含んでいる。
【0114】
他の実施形態において、生分解性ポリマー材料は第一と第二の生分解性ポリマーを含ぶまたはからなり、ここで第一のポリマーはエステル末端基と0.25〜0.35dl/g(0.1%w/vクロロフォルム溶液で、25℃で測定)の固有粘度をもつポリ(D,L−ラクチド)(例えばR203S)であり、第二のポリマーは酸末端基(例えば、カーボキシル)と0.25〜0.35dl/g(0.1%w/vクロロフォルム溶液で、25℃で測定)の固有粘度をもつポリ(D,L−ラクチド)(たとえば、R203H)である。
【0115】
他の実施形態において、生分解性ポリマー材料は、エステル末端基(すなわち、カルボキシル末端基)と0.16〜0.24dl/gの固有粘度(0.1%w/vクロロフォルム溶液で、25℃で測定)をもつポリ(D,L−ラクチド)(例えばR202H)を含むかまたはからなる。
【0116】
他の実施形態において、生分解性ポリマー材料は、酸末端基(すなわち、カルボキシル末端基)と0.25〜0.35dl/gの固有粘度(0.1%w/vクロロフォルム溶液で、25℃で測定)をもつポリ(D,L−ラクチド)(例えばR203H)を含むかまたはからなる。
【0117】
一つの実施形態は、化合物1、ヘキサデカン−1−オール(ヘキサデカノール)と生分解性ポリマー材料を含む押し出し成形された生分解性前房内インプラントであり、ここで、生分解性ポリマー材料は第一、第二及び第三のポリマーを含む又は、から成り、ここで、第一のポリマーはR203Sであり、第二のポリマーはR202Hであり、第三のポリマーはRG752Sである。インプラントは更に抗酸化剤を含んでいてもよい。制限はないが、例としてはインプラント3、10、及び11があり、その製剤は以下の表2に示されている。
【0118】
一つの実施形態は、生分解性ポリマー材料、ヘキサデカン−1−オール、とおよそ8重量%の下記の式を持つ化合物を含む生分解性眼内インプラントである。
【化9】
ここで、該化合物とヘキサデカン−1−オールは、生分解性ポリマー材料と組み合わされており、該生分解性ポリマー材料は、i)エステル末端基とおよそ0.25〜0.35dl/gの固有粘度をもつポリ(D,L−ラクチド)ii)酸末端基とおよそ0.16〜0.24dl/gの固有粘度をもつポリ(D,L−ラクチド)、及びiii)エステル末端基と固有粘度が0.16〜0.24dl/g、D,L−ラクチド:グリコライド比が75:25であるポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)を含んでおり、ここで、上述のポリ(D,L−ラクチド)とポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)の固有粘度はクロロフォルム中のポリマー0.1%溶液で25℃で測定されている。
いくつかの実施形態において、該インプラントは押し出し成形されたインプラントである。一つの実施形態において、該インプラントは更に抗酸化剤、キレート剤、又は抗酸化剤とキレート剤の両方を含んでいてもよい。特定の形状において、該抗酸化剤はブチルヒドロキシアニソールまたはアスコルビン酸であり、該キレート剤はEDTAである。眼内インプラントは目の前眼房に配置するための大きさにしてされている。
【0119】
一つの特定の実施形態は、8重量%の次の式を持つ化合物と、
【化10】
およそ5.6重量%のヘキサデカン−1−オール、およそ50.3重量%のエステル末端基とおよそ0.25〜0.35dl/gの固有粘度をもつポリ(D,L−ラクチド)であるR203S、22.4重量%のエステル末端基と固有粘度が0.16〜0.24dl/g、D,L−ラクチド:グリコライド比が75:25であるポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)であるRG752S、およそ11.2重量%の酸末端基とおよそ0.16〜0.24dl/gの固有粘度をもつポリ(D,L−ラクチド)であるR202H,およそ2.0重量%のブチルハイドロキシアニソール、及び0.5重量%のEDTAを含む眼内インプラントであり、ここでR203S、R202H、RG752Sの固有粘度は、クロロフォルム中のそれぞれの0.1%溶液を用いて25℃で測定した。
【0120】
以上列記の実施形態のいずれかによるインプラントは、好ましくは、少なくともおよそ1%かつ8重量%未満の化合物1を含んでいる。化合物1はインプラントの7〜9重量%の量でインプラント中に存在する。インプラントは8.0重量%の化合物1を含んでいる。
【0121】
上述のタイプの生分解性ポリマー材料を含むインプラントは、3カ月、4〜5カ月、6カ月などの長期間、化合物1を一定して安定した量で放出する。
【0122】
RESOMER(登録商標)ポリマー製造元からのPLAとPLGAポリマーはエボニックインダストリーズAG,ドイツから手に入れることができる。
【0123】
特定の実施形態は、特に制限されないが、目の前眼房への配置用に大きさを整え、表2に示されているインプラント用製剤1〜4,10、または11のいずれかを含む押し出し成形された眼内インプラントである。
【0124】
治療薬
本発明は、少なくとも1カ月、1〜3カ月間、少なくとも3カ月、3〜6カ月、あるいは6カ月以上、患者の眼の眼内圧を下げるために効果的である押し出し成形された生分解性眼内インプラントを含んでいる。一般的に、インプラントは生分解性ポリマー材料と該生分解性ポリマー材料と組み合わされた治療薬を含んでいか、からなる。該治療薬は式I、II、III、またはIVを持つ化合物である。好ましい実施形態において、該治療薬は化合物1を含んでおり、該眼内インプラントは目の前眼房への配置に適している。該眼内インプラントは1日におよそ10〜50ngの治療薬を少なくとも1カ月間生体外で放出する。
【0125】
式中、R
1が−NH
2または−OHの式IVを持つ化合物の例としては上記示した化合物1と2が含まれる。化合物1と2は、また式IIIにも包含される。化合物1と2の製造方法はU.S. Patent 5,834,498にのべられている。
【0126】
一般的に、インプラントの治療薬はインプラントの総重量のおよそ1%〜90%を構成している。いくつかの実施形態において、該治療薬はインプラントの総重量の1%〜20%をである。好ましくはインプラント中の化合物1は、重量(w/w)を基に、インプラントの総重量の8%を超えない。このように、化合物1を含むインプラント中で、化合物1はインプラントの1%〜8重量%を構成し、特定の形状において、インプラントの8重量%を形成する。インプラント中で化合物の重量百分率を上に述べたレベルに制限するのは、目のような液体環境にインプラントを設置する際に、望まない早急な又はほとばしるような放出を避けるためである。
【0127】
USPの承認を得た溶解または放出試験方法が(USP 23; NF 18 (1995) pp. 1790−1798)インプラントからの化合物1などの治療的活性薬剤の放出速度を測るのに用いることができる。例えば、無限固体法を用い、重量をはかったインプラントサンプルを量を測った0.9%NaClを含む溶液(水性)(放出媒体)またはリン酸緩衝生理食塩水中に加える、ここで、該溶液の量は、治療的活性薬剤の放出後の濃度が飽和に対して20%以下、好ましくは5%以下になるような量である。得られた混合物は37℃に保たれ、ゆっくり攪拌振とうされてインプラントから治療的活性薬剤を確実に放出する。時間関数としての、溶液中あるいは放出媒体中の治療的活性薬剤の状況は、吸光度測定法、HPLC、質量分光測定法など、当分野で知られている様々な方法で追跡できる。
【0128】
上述のように、本発明によるインプラントは式I、II、III、またはIVを持つ化合物を医薬的に許容された塩の形状で含んでいる。「医薬的に許容された塩」は化合物の望まれる生物学的活性を保ちながらかつ、それを投与された患者や細胞組織に望まない毒物学的効果を最小にするあるいは全く起こさない塩又は複合物である。
【0129】
酸として遊離形で存在する化合物の塩基付加塩形は、酸を適当な、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、等の無機塩基あるいは、例えば、L−アルギニン、エタノールアミン、ベンザチン、モルフォリン、等の有機塩基、で処理することで得られる(Handbook of Pharmaceutical Salts, P. Heinrich Stahl & Camille G. Wermuth (Eds), Verlag Helvetica Chemica Acta− Zuerich, 2002, 329−345)。亜鉛で形成された塩もまた可能であると思われる。
【0130】
塩基として遊離形で存在する化合物の酸付加塩形は、遊離塩基を適当な、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、等の無機酸や、例えば、酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロピオン酸、乳酸、ピルビック酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、蓚酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パモ酸、クエン酸、メチルスルフォン酸、エタンスルフォン酸、ベンゼンスルフォン酸、蟻酸、等の無機酸で処理することで得られる。(Handbook of Pharmaceutical Salts, P.Heinrich Stahl & Camille G. Wermuth (Eds), Verlag Helvetica Chemica Acta− Zuerich, 2002, 329−345)。
【0131】
本開示によるインプラントにおいて、化合物1や化合物2といった式I〜IVを持つ化合物は生分解性ポリマー材料中に分散あるいは分配、および/または生分解性ポリマー材料をカバーし、および/または生分解性ポリマー材料に囲まれる。該インプラントが眼の流体(例えば、房水)などの生理学的流体と生体内で接する時、生理学的流体は、該インプラントの表面にある該化合物の部分に接するが、ポリマー材料の内に分散されている化合物の部分とは接触しない。一旦埋め込まれると、生分解性ポリマーは水和化され始める。インプラントの水和化は化合物の拡散及び放出を改善する。加えて、インプラントは経時的に分解、浸食し始める。分解は水和化を増大させ、ポリマー鎖の動きを増加させ、より速い拡散のための孔を作る。このように、インプラントはポリマー材料が生体内で水和化されおよび/または分解する時に、化合物がポリマー材料から放出されるように構成されている。インプラントの水和化解体および/または分解は相当な時間、通常の点眼調剤で投与された場合の該化合物の通常の減衰期間より相当に長い時間、がかかるので、インプラントは持続的な放出を提供することができる。持続的放出は、少なくとも式I〜IVの一つを持つ化合物の一部を含んでいる生分解性ポリマー材料がそのままで残っている限り、長く続く。
【0132】
式I、II、III、又はIVを持つ化合物がインプラントから放出される速度やインプラントが該化合物を放出する期間は、特に制限はないが、インプラントの大きさと形、化合物の粒度、化合物の溶解度、化合物のポリマー材料に対する比、用いられているポリマー(用いられているポリマーのモノマー比、ポリマー末端基、ポリマーの分子量を含む)、ポリマー結晶性、製造方法、露出面積、ポリマー材料の浸食速度、投与後のインプラントが在るところの生物学的環境、等、種々の要素に依存している。
【0133】
製造方法
ここで述べられている眼内インプラントを作成するために種々の技術が採用される。有用な技術は、ロッド形のインプラント(あるいは、繊維)を製造するための押し出し方法(たとえば、加熱溶融押し出し法)、錠剤、ウエファー、またはペレットを製造するための圧縮方法、や生分解性シート、フィルムや、乾燥粉末を製造するための溶液成膜方法が含まれる。複数のマイクロ球体を製造するための乳化方法もまた、患者の目の中に式I〜IVのいずれかを持つ化合物を持続的に放出するための生分解性眼内薬剤配送システムの調製において役立つ。このように、一つの実施形態は、目の眼領域に配置するのに適している化合物1をカプセル化する複数の生分解性ミクロ球体を含んでいる医薬的組成物を提供することである。
【0134】
押し出し成形されたインプラントは一軸又は二軸押し出し方法によって製造される、また、例えばピストンかに仁押し出し機を使って製造される。インプラントを製造するための技術の選択と技術パラメタ―の操作は薬剤の放出速度に影響する。押し出し方法はインプラントの大規模を可能にし、製造温度が上がるにしたがって、連続するポリマーマトリックス中への薬剤の漸進的により均一な分散につながる。押し出し方法では、およそ60℃〜150℃、あるいはおよそ70℃からおよそ100℃、必要に応じて、より低い温度を採用する。
【0135】
一つの実施形態において、本発明による眼内インプラントは押し出し方法によって製造される。ポリマーと、もしあれば、賦形剤は、通常、治療薬とブレンドされ、それから、選択された温度で共押し出しされて、生分解性ポリマーマトリックス(または材料)と該マトリックス(または材料)内に分散および/または該マトリックス(または材料)全体に分配される治療薬を含むフィラメントを形成する。もし望むなら、フィラメントは粉砕され、再度押し出し成形されて二軸押し出し成形インプラントを形成する。
【0136】
押し出し工程によるインプラント製造の一つの変化形において、治療薬、生分解性ポリマー、と任意に、一つあるいはそれ以上の賦形剤を最初に室温で混合(容器中でブレンド)し、その後60℃から150℃の温度範囲で1〜60分、例えば、1〜30分、5〜15分、または10分、間加熱する。混合物は更に60℃〜130℃または75℃でノズルを通して押し出される。押し出されたフィラメントは次に、望みの長さにカットされ特定の重量を持つ眼内インプラントが作られる。それを通して混合物が押し出されるそのノズルのオリフィスは、一般的に、インプラントの望みの直径にちょうど良い直径を持っているが、もし必要ならば、押し出されたフィラメントはノズルから引き出して、インプラントの直径を更に減少させる。押し出されたインプラントは一般的に円筒形または非円筒形であり、前眼房あるいはガラス体などの目の眼領域に設置するのに都合の良い長さと直径(または、非円筒形繊維に対して適切な他の寸法)を持つ。
【0137】
本開示の眼内インプラントを作成する可能は方法の一つは、溶液成膜と加熱溶融の組み合わせを採用することである。例えば、US 2010/0278897を参照。この方法において、乾燥粉末あるいはフィルムが最初に調製される、すなわち全ての材料(活性薬剤、ポリマー、および必要なら賦形剤)を酢酸エチルなどの適当な溶媒に溶解して溶液を形成する。その溶液は続いて適当な容器(例えば、TEFLON(登録商標)皿)に鋳造され真空オーブンの中で一晩乾燥され乾燥フィルムを形成する。そのフィルムはその後、粒子に粉砕され、粒子は回収され加熱溶融押し出しにより(例えば、ピストン押し出し機を用いて)押し出し成形されて活性薬剤と一つあるいはそれ以上の生分解性ポリマーを含むフィラメントを調製する。フィラメントは目の中の配置に適した長さ及び重さにカットされ得る。この工程のための押し出し温度は45℃〜85℃の範囲である。
【0138】
押し出し成形されたフィラメントまたは押し出し成形されたフィラメントから切り取られたインプラントは最終的に電子ビーム(ebeam)照射により殺菌される。効果的な電子ビーム照射量は20〜30kGy、より具体的には25kGyである。
【0139】
このように、本発明は、目の上昇した眼内圧を含む、眼内圧を下げるために患者の目の中に配置するために適した押し出し成形された生分解性インプラントを作り及びつかう方法(これは、通常押し出し成形されたロッドまたは繊維と呼ばれる)を包含している。
【0140】
投与形態と場所
緑内障を患っている者も含んでいる患者、における意図している治療効果(例えば、長期の眼内圧の減少)を提供するために、本発明によるインプラントは好ましくは目の前眼房に配置される。前眼房は虹彩と最も内側の角膜表面(内皮)の空間内を言う。しかし、幾人かの患者では、インプラントを目のガラス体に配置する必要がある。後眼房は虹彩の後ろとガラス体の表側の間の目の内側空間を言う。後眼房は、レンズと毛様体突起の間の空間、ここは角膜、虹彩およびレンズに栄養を与える房水を作り眼内圧を保つところであるが、を含む。
図1に、これらとその他の目(100)の眼領域はその断面が示されている。目(100)の特定の領域は角膜(102)と虹彩(104)を含んでいるが、これらは前眼房(106)を取り囲んでいる。虹彩(104)の後ろは後眼房(108)とレンズ(110)である。前眼房の中に、前眼房隅角(112)と線維柱帯網(114)がある。更に示されているのは、角膜上皮(118)、強膜(116)、ガラス体(119)、毛様小体(120)と毛様体突起(121)である。目の後眼房部分は眼球(レンズの後ろ)の後ろ3分の2の部分であり、ガラス体、網膜と視神経を含んでいる。
【0141】
患者の眼内圧を下げ緑内障を治療するため、ここで述べられているインプラントは、単剤治療として哺乳動物の目の前眼房(または、他の眼領域)に埋め込まれ、点眼を必要とせず治療薬(化合物1など)を目の前眼房中に届ける。あるいは、インプラントは付加的治療としての点眼薬と共に用いることもできる。いくつかの実施形態において、ここで述べられているインプラントを目の前眼房に挿入することで、患者の目に配置後1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、あるいは6カ月以上基準IOPと比べて少なくともおよそ20%あるいは30%目の眼内圧を下げることができる。患者は上昇した眼内圧または緑内障を患いそれ故治療を必要とするヒトまたは非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態において、インプラントは、インプラントを目に設置後少なくとも1カ月間、化合物1を直線的あるいは疑似零次反応速度論に従って放出する。
【0142】
生分解性インプラントは、ピンセット、とうかん針、手持ち式針を備えた(先端が針)デリバリー装置(付与装置)を用いて配置するなどの種々の方法により目に挿入できる。手持ち式付与装置は目にひとつまたはそれ以上の生分解性インプラントを挿入するために用いることができる。手持ち式付与装置は18〜30GA(ゲージ)のステンレス針、レバー、作動装置、とインプラントの飛び出しを容易にするプランジャーあるいは押し棒を含んでいる。インプラントは、強膜、角膜縁、または角膜経路を通って前眼房接近し挿入される。または、インプラントは目標の位置に接近しインプラントを送り込むのに適した長さの針またはカニューレを持つ付与装置を使ってガラス体に挿入できる。インプラントを挿入する方法のいくつかは針、とうかん針、または埋め込み装置で眼領域内の目標域に接近することを含んでいる。一旦、例えば、前眼房やガラス体の目標位置内に在れば、手持式装置のレバーを押し、作動装置がプランジャーあるいは押し棒を前進させる。プランジャーが前方へ動くにつれ、装置あるいはインプラントを目標域(ガラス体や前眼房等)に押し出す。眼インプラントデリバリー装置はU.S.Patent Application Publication2004/0054374に開示されている。
【0143】
このように、ここで検討してきた緑内障を治療し患者の目の眼内圧を下げる方法は、現に開示する型の生分解性眼内インプラントを前眼房(前房内挿入)または目のガラス体(ガラス体内挿入)目に投与することを含んでいる。適した大きさにされた針(たとえば、22、25、27,28と30ゲージ針)を含む注射装置は目のこれらの領域に一つあるいはそれ以上のインプラントを挿入するのに役立つ。このように、インプラントの幅と直径は選択された針ゲージの管腔を通してインプラントを受け取り移行できるように選択される。
【0144】
被験者に用いるに先立ち、インプラントは適した照射量のβ−線によって殺菌される。殺菌方法はインプラント中の治療薬の治療活性をそれほど下げず、初期の活性の50または80%を保持することが好ましい。
【0145】
このように、本発明は、制限はないが、以下の実施形態(1〜16)を含んでいる。
【0146】
1. 生分解性ポリマー材料と該生分解性ポリマー材料と組み合わされた治療薬を含む生分解性眼内インプラントであり、ここで治療薬は式(I)を持つ化合物
【化11】
またはその医薬的に許容された塩又はエステルプロドラッグを含み、ここで波線部分はα又はβ結合を表し、点線は二重結合または単結合を表し、Rは置換されたヘテロアリールラジカルである、ここで、個々のR
1は独立して水素および6以下の炭素原子を含む低級アルキルからなる群から選ばれ、Xは−OR
1、−N(R
1)
2、または−N(R
5)SO
2R
6であり、ここでR
5は水素またはCH
2OR
6を表し、R
6は水素、6以下の炭素原子を含む低級アルキルラジカル、前述低級アルキルラジカルのハロゲン置換誘導体、又は前述低級アルキルラジカルのフッ素置換誘導体を表し、R
15は水素または6以下の炭素原子を含む低級アルキルラジカルであり、Yは=O又は2個の水素ラジカルを表す、ここで式Iの置換されたヘテロアリールラジカルの置換基はC
1〜C
6アルキル、ハロゲン、トリフルオロメチル、COR
1、COCF
3、SO
2N(R
1)
2、NO
2、とCNからなる群から選ばれる。
【0147】
2.生分解性ポリマー材料と該生分解性ポリマー材料と組み合わされた治療薬を含む生分解性眼内インプラントであり、ここで治療薬は式(III)を持つ化合物
【化12】
またはその医薬的に許容された塩又はエステルプロドラッグを含み、ここでXは−OHまたは−N(R
1)
2、ここでR
1は独立して水素及びC
1〜C
6アルキルからなる群からえらばれ、ここで該インプラントは哺乳動物の目の眼内圧(IOP)を下げるために効果的である。
【0148】
3.実施形態2による眼内インプラントであり、ここで該治療薬は式(IV)を持つ化合物
【化13】
またはその医薬的に許容された塩又はエステルプロドラッグを含み、ここでXは−OHまたは−N(R
1)
2、ここでR
1は独立して水素及びC
1〜C
6アルキルからなる群からえらばれる。
【0149】
4.実施形態3による眼内インプラントであり、ここで該治療薬は以下の式を持つ(化合物1)を持つ化合物を含み、
【化14】
ここで該インプラントは、目に設置後5カ月間以上哺乳動物の目の眼内圧(IOP)を下げるために効果的である。
【0150】
5.実施形態1〜4のいずれかによる眼内インプラントであり、ここで該インプラントは目の前眼房への配置用の大きさされている。
【0151】
6.実施形態1〜5のいずれかによる眼内インプラントであり、ここで生分解性ポリマー材料はポリ(D,L−ラクチド)、(D,L−ラクチド−コ−グリコライド)、又はそれらの組み合わせである。
【0152】
7.実施形態4による眼内インプラントであり、ここでインプラントは、目に設置後5カ月間以上哺乳動物の目の眼内圧(IOP)を、インプラントを受ける前の目のIOPに比較して20〜30%下げるために効果的である。
【0153】
8.実施形態4によるインプラントであり、ここで該治療薬はインプラントの重量の少なくともおよそ1%でかつおよそ8%を超えない。
【0154】
9.実施形態1〜8のいずれかによるインプラントであり、ここで該インプラントは押し出し工程で製造され、ここで該インプラントはおよそ0.5〜およそ2mmの長さ、およそ100〜およそ500μmの直径、およびおよそ総重量10〜200μgを持つ。
【0155】
10.患者の目の前眼房に治療的に効果的な量の治療薬を投与し、それによって目の眼内圧を下げることを含む患者の眼内圧を下げるための方法で、ここで該治療薬は次の式を持っている。
【化15】
【0156】
11.実施形態の1〜9のいずれかによる眼内インプラントを患者の目に設置し、それによって目の眼内圧を5カ月以上下げることを含む患者の眼内圧を下げるための方法。
【0157】
12.該患者が上昇した眼内圧または緑内障を患っているか、診断されたか、あるいは起こす危険がある患者である、実施形態10または11の方法。
【0158】
13.該眼内インプラントを患者の目に設置する実施形態の11と12のいずれかによる方法。
【0159】
14.該眼内インプラントは目の眼内圧を、目への設置に続いて3〜5カ月またはそれ以上の間、インプラントを受ける前の目の眼内圧に対して少なくとも30%下げるインプランである実施形態の11〜13のいずれかによる方法。
【0160】
15.生分解性ポリマー材料と該生分解性ポリマー材料と組み合わされた治療薬を含むか又はからなるインプラントである、患者の眼内圧を下げるために効果的な生分解性眼内インプラントを作成する方法であって、ここで治療薬は次の式(化合物1)を持ち、
【化16】
該方法は、順にI)化合物1を固体の形で得、II)該化合物1の固体を一つの生分解性ポリマーあるいは2つ以上の生分解性ポリマーとブレンドして混合物を作り、III)該混合物を押し出してフィラメントを作り、IV)該フィラメントを目の眼領域に配置するために適した長さに切断し、それによって眼内インプラント形成する方法であり、ここで固体の形で化合物1を得るのは、
a)化合物1の油形を酢酸エチル(EtOAc)におよそ50℃で加え混合物を形成し、
b)工程a)の混合物を50℃で攪拌して澄んだ溶液を形成し、
c)工程b)の澄んだ溶液を1〜3時間でおよそ30℃に冷却し、
d)化合物1の種結晶を工程c)の冷却された溶液にくわえ、
e)工程d)の種付された溶液を約30℃で1〜3時間保ち
f)工程e)の種付された溶液を約0から5℃の温度で約1〜5時間の間じゅう冷却し、
g)工程f)の溶液を約0から5℃の温度で約1〜3時間攪拌して懸濁液を作成し、
h)およそ20℃から25℃の間の温度で懸濁液を濾過しそれによって化合物1の固体形を製造する工程を含み、
ここで化合物1の種結晶は、
i)化合物1の油形をEtOAcにおよそ35から40℃の温度で溶解して混合物を形成し、
ii)工程i)の混合物をおよそ35から40℃の温度で攪拌して澄んだ溶液を形成し、
iii)工程ii)の澄んだ溶液をおよそ1〜5時間の間じゅう0から5℃の温度で冷却し、
iv)工程iii)の冷却された溶液を1〜3時間およそ0から5℃の温度で攪拌して白色の懸濁液を形成し、
v)工程iv)の白色の懸濁液をおよそ20℃と25℃の間の温度で濾過してそれによって化合物1の種結晶を製造する工程を含む方法で得る。
16.他の実施形態は、上記工程i〜vによって化合物1の結晶形を調製する方法である。
【実施例】
【0161】
実施例1
生体内におけるプロスタミドのIOP引下げ活性の比較
化合物1は集合的にプロスタミドとして知られている化合物クラス内に属する。(Woodward et al. (2007) British Journal of Pharmacology 150:342−352)
一連のプロスタミドは前房内生分解性薬剤配送システム(例えばインプラント)用に可能性のある候補として選び、房水への直接投与(それ故、前房内投与)によってIOPを降下させる能力を試験した。表1は猫(cat)虹彩分析から得られたE
C50値(nM)、計算されたlogP値(clogP)、及び異なるプロスタミドを局所的または前房内に投与した後で得られたIOP降下値を載せている。前房内薬剤投与は、犬の首にある皮下ポケットに薬物注入ポンプを配置し、カニューレが目の前眼房に走りこんで、に実施した。試験は、投与レベルを確かめるために存在する溶液中の化合物濃度を測定し初期にポンプに加えられたポンプ中のそれと比較するために行われた。表1に示されているように、正常血圧の犬の目の前房内的に(直接前眼房に)投与した場合、化合物1は効果的にかつビマトプロストよりかなりより効率的にIOPを降下させる。
化合物3〜5の分子構造は以下に示されている。U.S. Patents 6,602,900, 6,124,344, 5,834,498,および/または5,688,819に、場合によって合成方法を含む化合物3〜5に関する開示がある。WO95/18102、WO96/36599、WO99/25358、US2007/0099984、US Patent5,741,810、およびSchuster et al. (2000) Mol. Pharmacol. 58:1511−1516も参照されたい。
【化17】
【0162】
表1:プロスタミド/FP受容体と選んだプロスタミドのIOP引下げ活性
符号「〜」は「およそ」を意味する。
符号「<」は未満を意味する。
cLogP(計算されたlogP)は化合物の親油性の度量法。各化合物の分配係数(P)はn−オクタノールと水からなる2相系のそれぞれの相中の非イオン化された化合物の平衡濃度の比を計算して測定される。
*試験化合物は、動物の皮下に埋め込まれた薬物注入ポンプを用いて前眼房(前房内的に)へ直接15ng/日〜108ng/日の投与量で投与した。左目は処置せず対照とする一方、右目だけを手術し投与した。処置した動物の数は3〜5の範囲であった。試験化合物の右目への注入は2〜3週間継続され、一方IOPはTonoVetのトノメータを用いて、両目を週3回測定した。IOP引下げ百分率は、注入開始に先立つ基準と比べて、注入の開始後、測定時に観測されたIOPの違いを百分率として計算した。15ng/日の投与レベルは、IC DDSにおける薬剤負荷を仮定し意図する投与の場所による大きさの制限に基づいて、興味対象の化合物に向け選択された。
**局所的に目へ投与された場合の、犬の眼内圧への化合物の効果が測定された。化合物は、0.1%ポリソルベート80と10mMトリス塩基を含むビヒクル中に示されている濃度に調製された。正常血圧の犬が、一つの目の眼表面に25μL投与することで処理され、対側の目は対照としてビヒクルを受けた。眼内圧は圧平空気眼圧測定法により測定した。犬の眼内圧は薬剤投与直後と6時間後に測定された。
***各化合物のプロスタミド/FP受容体活性は分離された猫虹彩括約筋の収縮として測定された。
【0163】
実施例2
生体内での化合物1の持続的配送のための生分解性前房内インプラント
目の前眼房への配置に適する押し出し成形されたインプラントの形で製造でき、かつ目の前眼房に配置後少なくとも3カ月、好ましくは少なくとも6カ月間、化合物1のほぼゼロ次放出を提供することが可能な生分解性調剤を見極めるため追加的な研究がなされた。インプラントが目にとって耐えうることや、もしあるとすれば、例えば痛み、赤目、炎症などの悪い反応をほとんど引き起こさないことが更に求められている。これらの目標を考慮し、一連の押し出し成形されたインプラント(例えば、インプラント1〜9を含む)が調製され、以下に述べるように生体外、生体内で試験された。インプラント1〜9の組成物、寸法、および重量は表2に示されている。インプラントを調製するために用いられた生分解性ポリマーはエボニックインダストリーズ、AGから手に入れられるRESOMER(登録商標)ポリマーの中から選ばれ、表2にそれらのポリマー識別番号で表されている。
【0164】
二軸押し出し機を用いたインプラントの製造
【0165】
表2のインプラント1〜4、10、と11は二軸押し出し機)(DSM Xplore5Micro Extruder)を用いて加熱溶融押し出しによって次のようにして製造された。
押し出しに先立って、化合物1の純粋固体形が、粗製化合物1を酢酸エチル(EtOAc)におよそ50℃で溶解し、その温度で澄んだ溶液が得られるまで攪拌することで調製された。この澄んだ溶液は、その後およそ30℃になるまで化合物1の種結晶を種つける前に一定時間ゆっくり冷却された。この溶液は、数時間以上、0〜5℃にまで冷却される前に一定の間およそ30℃に保たれ、その間連続してその温度で攪拌された。懸濁液は続いて周囲温度で濾過され純粋な化合物1を得た。
化合物1の種結晶形は、純粋な化合物1(クロマトグラフィーによる精製後の油)をEtOAcにおよそ35〜40℃で溶解し、澄んだ溶液になるまでその温度で攪拌して得た。この澄んだ溶液はその後、およそ0〜5℃の温度まで数時間ゆっくり冷却され、続いてその温度で一定時間攪拌された。白色の懸濁液が形成され、周囲温度で濾過されて化合物1の種結晶を得た。
【0166】
押し出し成形を始める前に、ポリマー、化合物1(上記の用に調製)の純粋固体形、と、もしあれば、賦形剤をブレンドして均一にした。押し出し成形の前にインプラント成分を均一にブレンドするため、化合物1とポリマー(s)と賦形剤(もしあれば)は正確に秤量し、2つのステンレス球を用いて小さなステンレス容器に移された。この材料は、ターブラミキサーを用いて20〜45分間ブレンドされた。粉末ブレンドは、ブレンド後、へらを用いて手動で更に混合された。DSM二軸押し出し機が組み立てられ、希望の押し出し温度にまで予備加熱された(通常、60℃と100℃の間)。ブレンドされた物質は、続いて手動で、二つの回転するスクリューの間の円筒の上面にある開口へと供給された。溶融した材料はスクリューの回転で円筒の下部へ運ばれ、500μmのノズルから押し出された。押し出し成形されたフィラメントの直径は、装置に付属しているベータレーザマイクプーラー(Beta LaserMike puller)により制御される。フィラメントの直径は、引き出すスピードを変化させることで調整された。フィラメントの最終半径は一般的に0.006インチから0.025インチの範囲であった。押し出し成形されたフィラメントは続いて5〜10インチの長さに切られ、保存チューブに回収された。保存チューブは、乾燥剤と酸素吸収コンボパックと共にアルミ箔ポーチの中に入れられ、熱でシールされ、−20℃の冷凍庫に保存された。
【0167】
ピストン押し出し機を用いたインプラントの製造
【0168】
表2のインプラント5〜9は、溶媒鋳造/加熱溶融押し出し法を用いて、機械的に操作されるラムマイクロ押し出し機(ピストン押し出し機)で製造された。薬剤物質(化合物1、油の形)、ポリマーと、もしあれば賦形剤をともに酢酸エチル中に溶解し単一の溶液を作った。該溶液はTEFLON(登録商標)皿に鋳造され、真空オーブンの中で35℃で乾燥され、フィルムを形成した。フィルムは粒子に粉砕され、この粒子は続いてピストン押し出し機の加熱された竪穴の中へ入れられ、ピストン押し出し機を用いて200μmノズルを通して、45〜85℃の温度範囲、スピードセッティングナンバー0.0025で、200〜250μmの直径のフィラメントに押し出し成形された。より小さなフィラメントはより小さなノズルを用い引っ張りスピードをより速くすることで製造した。押し出し成形されたフィラメントを5インチの長さに切って、保存チューブに回収した。保存チューブは、乾燥剤と酸素吸収コンボパックと共にアルミ箔ポーチの中に入れられ、熱でシールされ、−20℃の冷凍庫に保存された。
【0169】
生体外放出速度分析
【0170】
液体環境中で各インプラント製剤の生体外放出速度を測定し、生体外累積放出プロファイルを決定するために、各製剤用の各フィラメントロットから無作為に選んだ3つのフィラメントから3つの1.5mmインプラントを切り出した。各インプラントは3mLの0.01Mリン酸塩緩衝生理食塩水(pH7.4)(放出媒体)を含んでいる8mLのガラス瓶にいれた。ビンは続いて37℃、50rpmにセットしてある振とう水槽に置かれた。種々の時間に、ビンは槽から取り除かれ、放出媒体全体量(3mL)が取り除かれ、放出されたプロスタミドの総量を測るためHPLCで分析された。ビンから放出媒体を取り除いた直後、3mLの新たなリン酸塩緩衝生理食塩水をビンに加え、次のサンプリング時まで更なるインキュベーションのためビンは水槽に戻された。生体外累積放出曲線(またはプルファイル)は、HPLC分析で得られたプロスタミド含有値から構成された。
【0171】
放出された化合物の累積量は、最初にインプラントに在った化合物の総量の百分率はとして表す。最初にインプラントに在った化合物の総量を測定するため、各試験フィラメントのおよそ4mgを秤り、5mLのメスフラスコに移した。次に、アセトニトリル2.5mLを各フラスコに加えた。フラスコはボルテックスされ渦巻くように振とうされてフィラメントを完全に溶解した。続いて水がフラスコにくわえられ5mLにした。フラスコがよく攪拌された後で、およそ1.5mLの溶液がマイクロ遠心管に移され、10分間12000rpmの速度で遠心分離された。クリアーな上澄み液の一部を、プロスタミド(例えば、化合物1)含有量を分析するためHPLCビンに移した。
【0172】
生体内眼内圧(IOP)引下げ調査
【0173】
インプラント1〜4のIOPを下げる効果を、正常血圧犬で試験した。各インプラントを用い、8頭の正常血圧犬を処理した。生体内IOP引下げ調査のための調製において、各インプラント(表2に示されている寸法、重量、と組成を持っている)は針を先端に持つ配送装置(一つのインプラントにひとつの装置)に負荷された。組み立て全体(装置とインプラント)が20〜25kGyの電子ビーム照射により殺菌された。各犬右目の前眼房に一つのインプラントを受け、左目は処置せず対照とした。IOP測定は、投与前と後に週3回の頻度で投与後5カ月まで両目で測定した。IOP引下げ百分率は、基準と比べて、注入の開始後、測定時に観測されたIOPの違いを百分率として計算した。各8頭の犬のグループの観察された処理と非処理の目のIOPの平均百分率降下が
図5〜8に示されている。インプラント1〜4の生体内の効能の継続期間を生体外の放出プロファイルと比べると、驚くことに好ましい発見であったが、正常血圧犬におけるIOP引下げ効果は、生体外放出調査の結果に基づいて期待されるよりかなり長期にわたり継続することが明らかとなった。
【0174】
図2〜4と9は表2に載っている各インプラントからの化合物1の累積放出プロファイルを示す。生体外の経時的な各インプラントから放出された化合物1の平均日量(ng/日)は表2に載っている。
図2と9によって示されているように、インプラント1〜4と9は、ほとんどあるいは全く遅延期間なく化合物1を一定又はゼロ次に近い速度で継続的に持続的な期間放出した。インプラント5は、放出媒体中で最初の2カ月間、生体外でほとんど薬剤を(化合物1)を放出しなかった、その後、初期の付加の約80%に等しい薬剤を急激な流れで放出した(
図5)。インプラント6も、同様に、丸二か月の放出媒体中のインキュベーションの後でさえ薬剤の十分な放出に失敗した(
図3)。
【0175】
加えて、インプラント中の化合物1が8重量%を超える場合、インプラントは、驚くことに、意図する治療的応用には適さないと一般に考えられるほどの著しく突発的な薬剤放出をつくりだすか/または非常に早い放出速度を提供することが分かった。例えばインプラント7は日1に薬剤負荷の約55%を放出し、その後、薬剤を控えめな量しか放出しなかった(
図4)。インプラント8は放出媒体中で薬剤負荷の70%を超える量を最初の2週間で放出した(
図4)。
【0176】
犬で試験した場合、4つのインプラント(インプラント1〜4:表2参照)の各々は製剤によって(
図5〜8)、目の眼内圧を、基準IOPから平均20%〜30%降下させた。プロスタミド(化合物1)を含むインプラントそれぞれによる目におけるIOP降下効果の継続期間は、目の前眼房へインプラントを配置後、少なくとも120日間である。
【0177】
インプラント番号3の化合物1の安定性は(25℃または30℃で1.5カ月および3カ月保存後の不純物の生成で測定した場合)はインプラント番号3(インプラント10と11)の製剤への抗酸化剤を組み込むことによって改善された。例えば、3つのポリマー(インプラント番号11中の場合)の重量%に対応する調節をし、2.0%のアスコルビン酸を包含することによって、25℃あるいは30℃で1.5及び3.0カ月保存後のインプラントに形成された全不純百分率を製剤番号3を持つインプラントのこれらの期間中に形成された全不純百分率と比べると減少した(表3)。同様に、3つのポリマー(インプラント番号10中の場合)の重量%に対応する調節をし、2.0%ブチルヒドロキシアニソール(BHA)と0.5%のEDTAを包含することによって、1.5及び3.0カ月保存後のインプラントに形成された全不純百分率を製剤番号3を持つインプラントのこれらの期間中に形成された全不純百分率と比べると減少した(表3)。このように、抗酸化剤を含むことは化合物1の安定性を増強し、それによって保存寿命を延ばし、製造されたインプラントの効能を保存する。EDTA、金属キレート剤の含有は安定性を増すであろう。インプラント10と11の各々からの化合物の生体外での放出の累積百分率はインプラント3のそれと比べられ
図10に示されている。
【0178】
表2:実施例2に従って押し出し成型され試験されたインプラント
RESOMER(登録商標)RG755Sはエステル末端基とおよそ0.50〜0.70dl/gの固有粘度(0.1%w/vクロロフォルム溶液で、25℃で測定)とおよそ75:25のDL−ラクチド:グリコライド比をもつポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコライド。
PEG3350=平均分子量3,350のポリエチレングリコール
ヘキサデカノール=ヘキサデカン−1−オール(セチルアルコール)
BHA=ブチルヒドロキシアニソール
EDTA=エチレンジアミン四酢酸
化合物1は次の構造を持つプロスタミド:
【化18】
【0179】
表3:抗酸化剤
1を持つあるいは持たない押し出し成型インプラントの安定性調査
1製造、窒素でパージ後、インプラントは封印された乾燥剤と酸素吸収剤を含んだアルミポーチに保存された。