特許第6675310号(P6675310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6675310
(24)【登録日】2020年3月12日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】アラムコール塩
(51)【国際特許分類】
   C07J 9/00 20060101AFI20200323BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20200323BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20200323BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20200323BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20200323BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20200323BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20200323BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
   C07J9/00CSP
   A61K31/575
   A61P3/06
   A61P1/16
   A61P9/10 101
   A61P3/10
   A61P3/04
   A61P25/28
【請求項の数】20
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-535210(P2016-535210)
(86)(22)【出願日】2014年12月4日
(65)【公表番号】特表2016-539131(P2016-539131A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】IL2014051052
(87)【国際公開番号】WO2015083164
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年11月27日
(31)【優先権主張番号】61/911,478
(32)【優先日】2013年12月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516158046
【氏名又は名称】ガルメッド リサーチ アンド ディベロップメント リミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】バハラフ,アレン
(72)【発明者】
【氏名】エシャカー‐オーレン,イジット
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−511482(JP,A)
【文献】 特表2013−518881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸とアミノアルコール、アミノ糖およびアミノ酸からなる群から選択されるアミンとの塩。
【請求項2】
前記アミンが、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アルギニン、リシン、デアノール、2−ジエチルアミノエタノール、N−メチルグルカミン(メグルミン)またはトロメタミンである、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸リシン、トロメタミンまたはN−メチルグルカミン塩。
【請求項4】
3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸トリメチルグリシン(ベタイン)、ジエチルアミンまたはコリン塩。
【請求項5】
結晶形態または非晶質形態である、請求項1〜のいずれか1項に記載の塩。
【請求項6】
(a)3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸を溶媒の存在下でアミンと混合して混合物を調製するステップ;
(b)場合により前記混合物を前記溶媒の沸点以下の温度に加熱するステップ;
(c)場合により前記混合物を冷却するステップ;および
(d)こうして得られた3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸のアミン塩を単離するステップ、
を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の塩を調製する方法。
【請求項7】
(a)3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸を溶媒の存在下でアミンと混合して混合物を調製するステップ;
(b)場合により前記混合物を前記溶媒の沸点以下の温度に加熱するステップ;
(c)逆溶媒を添加するステップ;
(c)場合により前記混合物を冷却するステップ;および
(d)こうして得られた3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸のアミン塩を単離するステップ、
を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の塩を調製する方法。
【請求項8】
前記溶媒が水、アルコールまたは酢酸エチルである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒がアセトンまたは酢酸エチルである、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸と前記アミンとの比が約1:1である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物を加熱するステップが約50℃の温度まで実施される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物を冷却するステップが約5℃の温度まで実施される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項13】
前記こうして得られた3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸の塩を単離するステップが前記溶媒を蒸発させることを含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項14】
前記こうして得られた3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸の塩を単離するステップが前記塩の沈殿物を形成させることおよび前記混合物から前記沈殿物を分離することを含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項15】
治療有効量の請求項1〜5のいずれか1項に記載の塩と場合により少なくとも1種の医薬的に許容し得る担体、希釈剤、ビヒクルまたは賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項16】
錠剤、丸薬、カプセル、ペレット、顆粒、粉末、ロゼンジ、サシェ、カシェ、パッチ、エリキシル、懸濁剤、分散剤、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル、軟膏、軟および硬ゼラチンカプセル、坐剤、滅菌注射液、ならびに滅菌包装粉末からなる群から選択される形態である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
血中コレステロールレベルを低下させることもしくは脂肪肝を処置することにおける使用のため、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置するための、または胆汁中のコレステロール胆石を溶解するためおよびそのような胆石の形成を予防するための、または動脈硬化を処置するための、または糖代謝の変化に関連する疾患または障害を処置するための、またはアミロイド斑沈着により特徴づけられる脳疾患の進行を処置、予防、または阻止するための、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物は、経口、経皮または局所経路を介して投与される、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記糖代謝の変化に関連する疾患または障害が高血糖、糖尿病、インスリン抵抗性および肥満からなる群から選択される、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記アミロイド斑沈着により特徴づけられる脳疾患がアルツハイマー病である、請求項17に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラキジルアミドコラン酸(アラムコール)の塩、それを含む医薬組成物、その調製方法、および医療処置におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アラムコールは、肝脂肪量を減少させること、および脂肪肝に関連する代謝パラメータを改善することに効果的な、アラキジン酸と3−アミノコール酸とのアミドコンジュゲートである。それは、合成の脂肪酸/胆汁酸コンジュゲート(FABAC)の新規ファミリーに属し、脂肪肝および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のための潜在的な疾患改変処置として開発されている。
【0003】
アラムコールは、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸という化学名であり、以下の化学構造により表される:
【化1】
【0004】
アラムコール、その調製方法、およびその使用は、米国特許第6,384,024号;同第6,395,722号;同第6,589,946号;同第7,501,403号;同第8,110,564号;米国特許出願公開第2012/0214872号;およびWO 2009/060452号に開示されている。
【0005】
所望の生理化学的特性を有するアラムコールの新規形態が、依然として求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の概要
本発明は、アラムコールの新規な塩、例えばアミノアルコール、アミノ糖またはアミノ酸との塩、上記塩を含む医薬組成物、その調製方法および医療処置におけるその使用を提供する。
【0007】
本発明は、一部が、有利な生理化学的特性を有するアラムコールの新規な塩の予測されなかった知見に基づく。溶解度の高いアラムコール塩を調製するために、約30種の医薬的に許容し得る塩基をスクリーニングした。これらのうち、アミンに基づく塩が適することが見出され、特にアラムコールの3種の塩、即ちN−メチルグルカミン(メグルミン)、リシンおよびトロメタミン塩が、高い溶解度、ならびに高い生物学的利用度に相関する高い吸収および暴露をはじめとする有利な特性を有することが示された。したがって本発明のアラムコール塩は、アラムコール遊離酸と比較して、低用量での医薬的使用に適する。加えて、新規な塩が、アラムコール遊離酸と比較して改善された流動性を有し、それゆえ錠剤またはカプセルなどの固体投与剤型へとより容易に加工され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の態様によれば、本発明は、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸(アラムコール)とアミンとの塩を提供する。幾つかの実施形態において、アミンは、アンモニア、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、アミノアルコール、アミノ糖およびアミノ酸からなる群から選択される。目下好ましい塩は、アミノアルコール、アミノ糖またはアミノ酸とのアラムコール塩である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0009】
幾つかの実施形態において、本発明は、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸の、アンモニウム、ベンザチン、トリメチルグリシン(ベタイン)、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、アルギニン、リシン、コリン、デアノール、2−ジエチルアミノエタノール、N−メチルグルカミン(メグルミン)、N−エチルグルカミン(エグルミン)またはトロメタミン塩を提供する。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0010】
1つの目下好ましい実施形態において、本発明は、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸リシン塩に関する。
【0011】
別の目下好ましい実施形態において、本発明は、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸トロメタミン塩に関する。
【0012】
別の目下好ましい実施形態において、本発明は、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸N−メチルグルカミン塩に関する。
【0013】
別の実施形態において、本発明による3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸の塩は、結晶形態である。さらに別の実施形態において、本発明による3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸の塩は、非晶質形態である。
【0014】
幾つかの実施形態において、本発明は、(a)3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸を溶媒の存在下でアミンと混合するステップ;(b)場合によりこの混合物を溶媒の沸点以下の温度に加熱するステップ;(c)場合によりこの混合物を冷却するステップ;および(d)こうして得られた3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸のアミン塩を単離するステップ、を含む、本明細書に開示された3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸の塩を調製する方法を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、(a)3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸を溶媒の存在下でアミンと混合するステップ;(b)場合によりこの混合物を溶媒の沸点以下の温度に加熱するステップ;(c)逆溶媒を添加するステップ;(c)場合によりこの混合物を冷却するステップ;および(d)こうして得られた3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸のアミン塩を単離するステップ、を含む、本明細書に開示された3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸の塩を調製する方法を提供する。
【0016】
幾つかの実施形態において、本発明の工程で用いられる溶媒は、水である。別の実施形態において、溶媒は、アルコールである。特定の実施形態において、溶媒は、メタノールまたはエタノールである。別の実施形態において、溶媒は、酢酸エチルなどのアルキルエステルである。
【0017】
幾つかの実施形態において、本発明の工程で用いられる逆溶媒は、アセトンなどのケトン、または酢酸エチルなどのアルキルエステルであり、各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0018】
幾つかの実施形態において、本発明の工程で用いられるアミンは、アンモニア、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、アミノアルコール、アミノ糖およびアミノ酸からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0019】
特定の実施形態において、3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸とアミンとの比は、約1:1である。様々な実施形態において、混合物を加熱するステップは、約50℃の温度まで実施される。さらなる実施形態において、混合物を冷却するステップは、約20℃の温度まで実施される。さらなる実施形態において、混合物を冷却するステップは、約5℃の温度まで実施される。
【0020】
先に述べられた方法から得られる3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸塩は、当該技術分野で知られる任意の方法により、例えば溶媒を蒸発させて固体を得ることにより、または塩の沈殿物を形成させて(例えば、逆溶媒の添加による)、例えばろ過により、反応混合物から沈殿物を分離することにより、単離され得る。
【0021】
幾つかの態様および実施形態において、本発明は、(a)治療有効量の本明細書に開示された3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸の塩と;場合により(b)少なくとも1種の医薬的に許容し得る担体、希釈剤、ビヒクルまたは賦形剤、とを含む医薬組成物を提供する。
【0022】
複数の実施形態において、この医薬組成物は、錠剤、丸薬、カプセル、ペレット、顆粒、粉末、ロゼンジ、サシェ、カシェ、パッチ、エリキシル、懸濁剤、分散剤、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル、軟膏、軟および硬ゼラチンカプセル、坐剤、滅菌注射液、ならびに滅菌包装粉末からなる群から選択される形態である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、血中コレステロールレベルを低下させることまたは脂肪肝を処置することにおける使用のため、あるいは非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)またはその処置がコレステロールもしくは脂質バランスを調整することから利益を受け得る任意の疾患の処置のための、(a)治療有効量の本明細書に開示された3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸の塩と;(b)少なくとも1種の医薬的に許容し得る担体、希釈剤、ビヒクルまたは賦形剤、とを含む医薬組成物を提供する。
【0024】
幾つかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、胆汁中のコレステロール胆石を溶解するため、そしてそのような胆石の形成を予防するために用いられる。別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、動脈硬化を処置するために用いられる。
【0025】
特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、糖代謝の変化に関連する疾患または障害を処置するために用いられる。一実施形態において、糖代謝の変化に関連する疾患または障害は、高血糖、糖尿病、インスリン抵抗性、および肥満からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0026】
別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、アミロイド斑沈着を特徴とする脳疾患の進行を処置、予防、または阻止するために用いられる。一実施形態において、アミロイド斑沈着を特徴とする脳疾患は、アルツハイマー病である。
【0027】
本発明の医薬組成物は、経口、局所、皮下、腹腔内、経直腸、静脈内、動脈内、経皮、筋肉内、および鼻内からなる群から選択される経路を介して投与され得る。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0028】
幾つかの実施形態において、本発明は、(a)治療有効量の本明細書に開示された3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸の塩と;(b)少なくとも1種の医薬的に許容し得る担体、希釈剤、ビヒクルまたは賦形剤、とを含む医薬組成物を、必要とする対象に投与することを含む、血中コレステロールレベルを低下させる方法、または脂肪肝を処置する方法、またはNASHを処置する方法、または胆汁中のコレステロール胆石を溶解してそのような胆石の形成を予防する方法、または動脈硬化を処置する方法を提供する。
【0029】
特定の実施形態において、本発明は、(a)治療有効量の本明細書に開示された3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸の塩と;(b)少なくとも1種の医薬的に許容し得る担体、希釈剤、ビヒクルまたは賦形剤、とを含む医薬組成物を、必要とする対象に投与することを含む、糖代謝の変化に関連する疾患または障害を処置するための方法を提供する。さらなる実施形態において、本発明は、(a)治療有効量の本明細書に開示された3β−アラキジルアミド−7α,12α−ジヒドロキシ−5β−コラン−24−酸の塩と;(b)少なくとも1種の医薬的に許容し得る担体、希釈剤、ビヒクルまたは賦形剤、とを含む医薬組成物を、必要とする対象に投与することを含む、アミロイド斑沈着を特徴とする脳疾患の進行を処置、予防、または阻止する方法を提供する。
【0030】
幾つかの実施形態において、対象は、哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0031】
本発明のさらなる実施形態および適用可能性の全範囲は、本明細書の以後に示された詳細な説明から明白となろう。しかし、この詳細な説明から本発明の主旨および範囲内で様々な変更および修正が当業者に明白となるため、詳細な説明および具体的実施例が、本明細書の好ましい実施形態を示していて、例示に過ぎないことが理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明による非晶質アラムコールN−メチルグルカミン(メグルミン)塩の特徴的なX線回折パターンを示す。
図2】本発明による非晶質アラムコールリシン塩の特徴的なX線回折パターンを示す。
図3】本発明による非晶質アラムコールトロメタミン塩の特徴的なX線回折パターンを示す。
図4】本発明によるアラムコールN−メチルグルカミン塩の特徴的なH−NMRスペクトルを示す。
図5】本発明によるアラムコールリシン塩の特徴的なH−NMRスペクトルを示す。
図6】本発明によるアラムコールトロメタミン塩の特徴的なH−NMRスペクトルを示す。
図7】アラムコール遊離酸の特徴的なH−NMRスペクトルを示す。
図8】本発明によるアラムコールN−メチルグルカミン塩の特徴的な動的水蒸気吸着(DVS)スペクトルを示す。
図9】アラムコール(遊離酸)、N−メチルグルカミン、トロメタミンおよびリシン塩について計算されたAUC/用量。データは、算術平均±標準誤差である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明の詳細な記載
本発明は、アラムコール遊離酸と比較して高い生物学的利用度に相関する、高い溶解度、高い吸収量、および高い暴露量をはじめとする改善された生理化学的特性を示すアラムコールの塩に関する。
【0034】
本発明の原理によれば、本明細書において、対イオンがアミンに基づき、アンモニア、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、アミノアルコール、アミノ糖またはアミノ酸を包含する、アラムコールの医薬的に許容し得る塩が提供される。アミンは、ジアミンまたは環状アミンであってもよい。目下好ましい塩は、N−メチルグルカミン(メグルミン)、リシンまたはトロメタミンの塩である。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0035】
本明細書において用いられる用語「第一級アミン」は、式RNH(式中、Rは、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである)で示される化合物を表す。第一級アミンの例は、低級アルキルアミンである(ここで、低級アルキルは、C〜Cアルキル、またはアリールアミンを意味する)。第一級アミンは、アラムコールのカルボン酸基と反応して、塩:アラムコール−COONHを形成し得る。
【0036】
本明細書で用いられる用語「第二級アミン」は、式RNH(式中、RおよびRのそれぞれは、独立して、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである)で示される化合物を表す。第二級アミンの例は、低級ジアルキルアミン(RおよびRは、それぞれ低級アルキルである)、ジアリールアミン、またはアルキルアリールアミンである。第二級アミンは、環状アミン(例えば、モルホリン、ピロリジン、ピペリジンなど)、またはジアミン(例えば、ベンザチン(benzathaine))であってもよい。第二級アミンは、アラムコールのカルボン酸基と反応して、塩:アラムコール−COONHを形成し得る。
【0037】
本明細書で用いられる用語「第三級アミン」は、式RN(式中、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、アルキル、シクロアルキルまたはアリールである)で示される化合物を表す。第三級アミンの例は、低級トリアルキルアミン(R、RおよびRは、それぞれ低級アルキルである)、トリアリールアミン、またはアルキルアリールアミンの任意の組合わせである。第三級アミンは、環状アミン(例えば、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジンなど)、またはジアミンであってもよい。第三級アミンは、アラムコールのカルボン酸基と反応して、塩:アラムコール−COONHを形成し得る。
【0038】
本明細書で用いられる用語「第四級アンモニウム化合物」は、式R(式中、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであり、Xは、対イオンである)で示される化合物を表す。第四級アンモニウム化合物の例は、低級テトラアルキルアミン(R、R、RおよびRは、それぞれ低級アルキルである)、テトラアリールアミン、またはアルキルアリールアミンの任意の組合わせである。本発明によるアラムコールと塩を形成し得る第四級アンモニウム化合物の具体的例は、Bu、コリン(MeCHCHOH]X)またはトリメチルグリシン((CHCHCOHX;ベタインとしても公知)であり、ここでXは、対イオン、例えばOH、ハロゲン(F、Cl、Br、I)などである。第四級アンモニウム化合物は、アラムコールのカルボン酸基と反応して、塩:アラムコール−COOを形成し得る。
【0039】
本明細書で用いられる用語「アミノアルコール」または「アルカノールアミン」は、互換的に用いられ、アルカンバックボーン上にヒドロキシ(−OH)およびアミノ(−NH、−NHR、および−N(R))の両方の官能基を含む化合物を意味する。例としては、トロメタミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、2−ジエチルアミノエタノールおよび2−ジメチルアミノエタノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で用いられる用語「アミノ糖」または「アミノ糖アルコール」は、糖ヒドロキシルの1つがアミノ基により置換されている、糖または糖アルコール部分を意味する。アミノ糖の例は、N−アルキルグルカミン、例えばN−メチルグルカミン(メグルミン)、N−エチルグルカミン(エグルミン)、N−プロピルグルカミン、N−ブチルグルカミンなどである。
【0041】
したがって幾つかの例示的実施形態において、本発明は、アラムコールと適切な有機アミン、例えば非限定的に非置換または置換された低級アルキルアミン、ジアミン、飽和環状アミン、および第四級アンモニウム化合物との塩を提供する。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。特定の例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン(TRIS)、1−アミノ−2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、ヘキサメチレンテトラミン、デアノール、2−ジエチルアミノエタノール、N−メチルグルカミン(メグルミン)、N−エチルグルカミン(エグルミン)、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ベンザチン、トリメチルグリシン(ベタイン)、コリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0042】
幾つかの態様および実施形態において、本発明は、アラムコールのN−メチルグルカミン(メグルミン)塩を提供する。一実施形態において、アラムコールのN−メチルグルカミン塩は、非晶質である。
【0043】
さらなる態様および実施形態において、本発明は、アラムコールのトロメタミン(TRIS)塩を提供する。一実施形態において、アラムコールのトロメタミン塩は、非晶質である。
【0044】
さらなる態様および実施形態において、本発明は、アラムコールのアンモニウム塩を提供する。一実施形態において、アラムコールのアンモニウム塩は、結晶質である。別の実施形態において、アラムコールのアンモニウム塩は、約60℃で始まる約76℃でのピーク、および約114℃で始まる約116℃でのピークを有するDSC−TGAサーモグラムを特徴とする。具体的実施形態において、約76℃でのピークは、約2%の重量減少率を伴う。さらに別の実施形態において、アラムコールのアンモニウム塩は、約55℃で始まる約57℃でのピークを有するDSC−TGAサーモグラムを特徴とする。特定の実施形態において、約57℃でのピークは、約5%の重量減少率を伴う。
【0045】
別の態様および実施形態において、本発明は、アラムコールのベンザチン塩を提供する。一実施形態において、アラムコールのベンザチン塩は、非晶質である。
【0046】
さらなる態様および実施形態において、本発明は、アラムコールのトリメチルグリシン(ベタイン)塩を提供する。一実施形態において、アラムコールのトリメチルグリシン(ベタイン)塩は、非晶質である。
【0047】
さらに別の態様および実施形態において、本発明は、アラムコールのエタノールアミン塩を提供する。一実施形態において、アラムコールのエタノールアミン塩は、非晶質である。別の実施形態において、アラムコールのエタノールアミン塩は、結晶質である。具体的な実施形態において、アラムコールの結晶質エタノールアミン塩は、約45℃で始まる約50℃でのピーク、約63℃で始まる約72℃でのピーク、約80℃で始まる約86℃でのピーク、および約105℃で始まる約122℃でのピークを有するDSC−TGAサーモグラムを特徴とする。特定の実施形態において、それらのピークは、約25%の連続した重量減少率を特徴とする。
【0048】
特定の態様および実施形態において、本発明は、アラムコールのジエチルアミノエタノール塩を提供する。一実施形態において、アラムコールのジエチルアミノエタノール塩は、非晶質である。
【0049】
さらなる態様および実施形態において、本発明は、アラムコールのジエチルアミン塩を提供する。一実施形態において、アラムコールのジエチルアミン塩は、非晶質である。
【0050】
別の態様および実施形態において、本発明は、アラムコールのコリン塩を提供する。一実施形態において、アラムコールのコリン塩は、非晶質である。
【0051】
さらに別態様および実施形態において、本発明は、アラムコールのデアノール塩を提供する。一実施形態において、アラムコールのデアノール塩は、非晶質である。
【0052】
複数の態様および実施形態において、本発明は、アラムコールの2−ジエチルアミノエタノール塩を提供する。一実施形態において、アラムコールの2−ジエチルアミノエタノール塩は、非晶質である。
【0053】
幾つかの態様および実施形態において、本発明は、非限定的に塩基性アミノ酸、例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン、およびオルニチンなどのアラムコールのアミノ酸塩を提供する。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。本発明の原理によるアミノ酸は、D−アミノ酸、L−アミノ酸、またはアミノ酸のラセミ誘導体であり得る。一実施形態において、本発明は、アラムコールのアルギニン塩を提供する。別の実施形態において、本発明は、アラムコールのリシン塩を提供する。幾つかの実施形態において、アラムコールのアミノ酸塩は、アラムコールのグリシンおよびタウリン塩以外である。特定の実施形態において、アラムコールのアミノ酸塩は、非晶質である。アラムコールの目下好ましいアミノ酸塩は、リシン塩である。幾つかの実施形態において、リシン塩は、非晶質である。
【0054】
本発明の医薬的に許容し得る塩は、固体または結晶形態で単離される場合、水和物またはそれに封入される水分子も含むことを、理解されたい。
【0055】
本発明は、本発明のアラムコール塩の調製方法をさらに提供する。この方法は、例えば米国特許第6,384,024号;同第6,395,722号;同第6,589,946号;同第7,501,403号;同第8,110,564号;米国特許出願公開第2012/0214872号;およびWO2009/060452号に記載された方法をはじめとする、当該技術分野で知られる任意の方法により調製されるアラムコール遊離酸を使用する。前述の参考資料の内容は、参照により本明細書に取り込まれる。アラムコール中の脂肪酸ラジカルと胆汁酸とのコンジュゲーションはαまたはβ配置になり得ることが、理解されなければならない。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。一実施形態によれば、アラムコール遊離酸は、適切な溶媒の存在下で、形成される塩の対応する塩基と、典型的には1:1比で混合される。混合物は、その後、場合により、室温を超えるが溶媒の沸点未満の、または溶媒の沸点の温度(即ち、還流)に加熱される。典型的には混合物は、約50℃に加熱される。混合物は、場合により、典型的には室温未満(例えば、5℃)の温度に冷却される。こうして得られる本発明の塩は、その後、当該技術分野で知られる通り、例えば溶媒の蒸発、結晶化、逆溶媒での沈殿などにより単離される。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0056】
1つの特定の実施形態によれば、アラムコール遊離酸は、適切な溶媒の存在下で、形成される塩の対応する塩基と典型的には1:1比で混合される。その後、混合物は、場合により先に記載された通り加熱される。その後、逆溶媒が添加され、場合により混合物は先に記載された通り冷却されて、アラムコール塩の沈殿物を形成させる。
【0057】
本発明のアラムコール塩のさらなる調製方法は、例えば真空冷却、昇華、ケン化、融解物からの成長、別の相からの固相転移、超臨界液からの沈殿、およびジェット噴霧による沈殿を含む。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。溶媒または溶媒混合物からの沈殿の技術としては、例えば溶媒の蒸発、溶媒混合物の温度低下、溶媒混合物の凍結乾燥、および溶媒混合物への逆溶媒(カウンターソルベント)の添加が挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0058】
本発明のアラムコール塩は、非晶質または任意の多形の結晶質であり得る。
【0059】
本発明の塩を調製するための適切な溶媒としては、極性および非極性溶媒が挙げられる。溶媒または複数の溶媒の選択は典型的には、そのような溶媒中での化合物の溶解度および溶媒の蒸気圧を含む、1種または複数の因子に依存的である。本発明の原理により溶媒の組合わせを用いることができる。適切な溶媒としては、極性非プロトン性溶媒、極性プロトン性溶媒、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。適切な極性プロトン性溶媒の特定の例としては、水およびメタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、1−ブタノール、およびイソプロパノール(IPA)などのアルコール、ならびに酢酸エチル(EtOAc)またはアセトンなどの有機エステルおよびケトンが挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。一実施形態において、溶媒は水である。別の実施形態において、溶媒はエタノールである。別の実施形態において、溶媒は酢酸エチルである。
【0060】
逆溶媒は、先に記載された溶媒のいずれかであり得、目下好ましい逆溶媒は、アセトンまたは酢酸エチルである。
【0061】
本発明の新規な塩は、医療処置のための医薬として有用である。したがって本発明は、本明細書に開示されたアラムコール塩のいずれかと、少なくとも1種の医薬的に許容し得る担体、希釈剤、ビヒクルまたは賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。本発明の塩は、安全に経口または非経口投与され得る。投与経路としては、経口、局所、皮下、腹腔内、経直腸、静脈内、動脈内、経皮、筋肉内、局所、および鼻内が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。更なる投与経路としては、粘膜、鼻腔、非経口、胃腸、髄腔内、子宮内、眼内、皮内、頭蓋内、気管内、膣内、脳室内、脳内、眼科的、口腔、硬膜外および舌下が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。典型的には、本発明のアラムコール塩は経口投与される。
【0062】
医薬組成物は、錠剤(例えば、フィルムコート錠など)、粉末、顆粒、カプセル(軟カプセルなど)、経口崩壊錠、丸薬、ペレット、ロゼンジ、サシェ、カシェ、パッチ、エリキシル、懸濁剤、分散剤、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル、軟膏、軟および硬ゼラチンカプセル、坐剤、滅菌注射液、滅菌包装粉末、ならびに当該技術分野で周知の徐放性製剤として配合され得る。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0063】
本発明の関連で用いられ得る医薬的に許容し得る担体、希釈剤、ビヒクルまたは賦形剤としては、界面活性剤、滑沢剤、結合剤、充填剤、圧縮助剤、崩壊剤、水溶性ポリマー、無機塩、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、酸性化剤、発泡剤および香味剤が挙げられるが、これらに限定されない。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0064】
適切な担体、希釈剤、ビヒクルまたは賦形剤の具体的な非限定的例としては、例えばラクトース、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸および酸化チタンが挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。適切な界面活性剤としては、例えばレシチンおよびホスファチジルコリンが挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。適切な滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルクおよびステアリン酸が挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。適切な結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、α−デンプン、ポリビニルピロリドン、粉末アラビアゴム、ゼラチン、プルランおよび低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。適切な崩壊剤としては、例えば架橋ポビドン(ポリビニルピロリドン(PVPP)および1−ビニル−2−ピロリドンホモポリマーをはじめとする任意の架橋1−エテニル−2−ピロリジノンホモポリマー)、架橋カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、コーンスターチなどが挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。適切な水溶性ポリマーとしては、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、グアーガムなどが挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。適切な無機塩としては、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウムおよび/またはカルシウムの塩基性無機塩が挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。特定の実施形態としては、マグネシウムおよび/またはカルシウムの塩基性無機塩が挙げられる。ナトリウムの塩基性無機塩としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどが挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。カリウムの塩基性無機塩としては、例えば炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。マグネシウムの塩基性無機塩としては、例えば、重質炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルク石、水酸化アルミナマグネシウムなどが挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。カルシウムの塩基性無機塩としては、例えば、沈殿した炭酸カルシウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0065】
適切な防腐剤としては、例えば安息香酸ナトリウム、安息香酸、およびソルビン酸が挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。適切な抗酸化剤としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸およびα−トコフェロールが挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。適切な着色剤としては、例えば食用黄色5号、食用赤色2号および食用青色2号などの食用着色剤が挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。適切な甘味剤としては、例えばグリチルレチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビアおよびタウマチンが挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。適切な酸性化剤としては、例えばクエン酸(無水クエン酸)、酒石酸およびリンゴ酸が挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。適切な発泡剤としては、例えば重炭酸ナトリウムが挙げられる。適切な香味剤としては、合成物質または天然由来物質、例えばレモン、ライム、オレンジ、メントールおよびストロベリーなどが挙げられる。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。
【0066】
幾つかの実施形態において、本発明は、有効成分としての単一の本発明のアラムコール塩と、少なくとも1種の医薬的に許容し得る担体、希釈剤、ビヒクルまたは賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。他の実施形態において、本発明は、有効成分としての複数の本発明のアラムコール塩と、少なくとも1種の医薬的に許容し得る担体、希釈剤、ビヒクルまたは賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0067】
本発明のアラムコール塩は、錠剤、カプセル、丸薬、糖衣錠、粉末、顆粒などの形態での経口投与に特に適している。各可能性は、本発明の別々の実施形態を表す。錠剤は、場合により当該技術分野で知られる1種または複数の賦形剤と共に、圧縮または成形することにより作製され得る。具体的には、成形された錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤された粉末有効成分の混合物を、適切な機械で成形することにより作製され得る。
【0068】
本明細書に記載された医薬組成物の錠剤および他の固体投与剤形は、場合により、刻み目を入れるか、またはコーティングおよびシェル、例えば腸溶性コーティングおよび当該技術分野で周知の他のコーティングなどと共に調製され得る。それらはまた、例えば、所望の放出プロファイル、他のポリマーマトリックスなどを提供するために様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて、内部の有効成分の遅延または制御放出をもたらすように配合され得る。有効成分は、適切ならば、1種または複数の上記賦形剤を含む、マイクロカプセル化形態でもあり得る。
【0069】
本発明は、本発明のアラムコール塩の任意の1種を含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、血中コレステロールレベルを低下させる方法、または脂肪肝を処置する方法を提供する。本発明は、本発明のアラムコール塩の任意の1種を含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、脂肪肝および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置する方法を提供する。本発明はさらに、本発明のアラムコール塩の任意の1種を含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、胆汁中のコレステロール胆石を溶解し、そしてそのような胆石の形成を予防する方法を提供する。他の実施形態において、本発明は、本発明のアラムコール塩の任意の1種を含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、動脈硬化を処置する方法を提供する。本発明はまた、本発明のアラムコール塩の任意の1種を含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、糖代謝の変化に関連する疾患または障害、特に高血糖、糖尿病、インスリン抵抗性および肥満を処置する方法を提供する。本発明はさらに、本発明のアラムコール塩の任意の1種を含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、アミロイド斑沈着を特徴とする脳疾患、特にアルツハイマー病の進行を処置、予防、または阻止する方法を提供する。
【0070】
本明細書で用いられる「治療有効量」は、対象に治療利益を提供する上で、対象への単回または反復投与で効果的である薬剤の量を指す。さらなる実施形態において、本発明のアラムコール塩は、前述の疾患または障害を処置するための薬剤の調製に用いられる。
【0071】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態をより完全に例示するために表されている。しかしそれらを、本発明の広い範囲を限定するものと解釈してはならない。当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書に開示された多くの変異および修正を即座に案出することができる。
【0072】
実施例1 − アラムコール塩の合成:
本発明のアラムコール塩を、以下の手順に従って調製した:アラムコール遊離酸を、水またはエタノール中で、対応する塩基と1:1の比で混合した。混合物を1℃/分の割合で50℃まで加熱した。混合物を50℃で2時間保持し、0.1℃/分の割合で20℃まで冷却した。塩が冷却後に沈殿しない場合には、粗反応混合物を3日間保持し、純度をHPLCで測定した。透明溶液をもたらしたアラムコール塩は、HPLCでさらなる不純物を示さなかった。結果を、表1に要約する。
【0073】
以下のアラムコール塩は、水溶性であることが見出された(50℃で50mg/mlを超える):L−アルギニン塩、コリン塩、N−メチルグルカミン塩、ジエチルアミン塩、2−ジエチルアミノエタノール塩、デアノール塩、エタノールアミン塩、およびジエタノールアミン塩。以下のアラムコール塩は、50℃でエタノールに可溶性であることが見出された(50℃で50mg/mlを超える):L−アルギニン塩、コリン塩、トリメチルグリシン(ベタイン)塩、ジエチルアミン塩、ベンザチン塩、2−ジエチルアミノエタノール塩、デアノール塩、トロメタミン塩、およびジエタノールアミン塩。塩はいずれも、グリシンまたはタウリンを用いて得られた。
【0074】
溶媒として水を用いると、以下のアラムコール塩が、非晶質材料として沈殿した:L−アルギニン塩、L−リシン塩、コリン塩、N−メチルグルカミン塩、ジエチルアミン塩、ベンザチン塩、2−ジエチルアミノエタノール塩、デアノール塩、エタノールアミン塩、およびジエタノールアミン塩。アラムコールの結晶質アンモニウム塩が、水から得られた(形態I)。その形態を、熱分析により特徴づけた。DSCプロファイルは、60.07℃で始まる約76.32℃での第一のピーク(ΔE=−29.33J/g)および114.08℃で始まる117.12℃での第二のピーク(ΔE=−67.16J/g)を示した。第一のピーク時の重量減少率は、2.05%であった。
【表1】
【0075】
エタノールを溶媒として用いると、以下のアラムコール塩が、非晶質材料として沈殿した:L−アルギニン塩、コリン塩、トリメチルグリシン(ベタイン)塩、ジエチルアミン塩、ベンザチン塩、2−ジエチルアミノエタノール塩、デアノール塩、トロメタミン塩、およびジエタノールアミン塩。アラムコールの結晶質アンモニウム塩を、エタノールから得た。その形態を、熱分析により特徴づけた。DSCプロファイルは、55.37℃で始まる約56.57℃でのピーク(ΔE=−45.57J/g)を示した。ピーク時の重量減少率は、5.44%であった。アラムコールの結晶エタノールアミン塩を、エタノールから得た。その形態を、熱分析により特徴づけた。DSCプロファイルは、44.87℃で始まる約50.12℃での第一のピーク(ΔE=−8.45J/g);62.58℃で始まる72.27℃での第二のピーク(ΔE=−6.28J/g);80.06℃で始まる85.86℃での第三のピーク(ΔE=−6.20J/g);および104.82℃で始まる122.42℃での第四のピーク(ΔE=−45.78J/g)を示した。連続した重量減少率25.37%が、TGAを用いて観察された。
【0076】
実施例2 − アラムコール塩の溶解度
本発明のアラムコール塩を、水中の溶解度についてさらに評価した。水性溶解度を、振とうフラスコ法を利用して20℃でテストした。各塩5mgを、計量した。透明溶液が得られるまで、水を段階的に添加した(表2、水中の溶解度)。各溶液のpHを、測定した(表2、溶解度の後のpH)。結果を、表2に要約する。
【表2】
【0077】
比較すると、アラムコール(遊離酸)は、水性媒体において低い溶解度を有する(pH6.0の緩衝液中の溶解度0.001mg/mL未満、pH5.0のFeSSIF中の最大溶解度0.66mg/mL)。
【0078】
実施例3
材料および方法
粉末X線回折(XRPD)
粉末X線回折試験を、Bragg−Brentano型のBruker社AXS D2 PHASER、装置番号1549を用いて実施した。30kV、10mAのCu陽極;サンプルステージ標準回転;κβフィルター(0.5%Ni)による単色化を用いた。スリット:固定発散スリット1.0mm(=0.61°)、第一の軸のソーラースリット2.5°、第二の軸のソーラースリット2.5°。検出器:開き角5°の受光スリットを有する一次元検出器LYNXEYE。標準の試料ホルダー((510)シリコンウエア中に0.1mmの穴)は、バックグランドシグナルに対して最小限の寄与率を有した。
【0079】
測定条件:走査範囲5〜45°2、試料回転5rpm、0.5秒/ステップ、0.010°/ステップ、3.0mm検出器スリット;測定条件の全てを、装置の制御ファイルに時間を追って記録した。システムの適切さとして、コランダムの試料(NIST標準)を毎日測定した。
【0080】
データ回収に用いられたソフトウエアは、Diffrac.Commander v3.3.35である。Diffrac.Eva v 3.0を用いて、データ解析を実施した。バックグランド補正または平滑化は、パターンに適用しなかった。Diffrac.Evaソフトウエアを用いて、Cu−Kαの寄与率を取り除いた。結果を表3に要約する。
【表3】
【0081】
熱重量分析/示差走査熱量測定(TGA/DSC)
34ポジションオートサンプラーを備えたMettler Toledo TGA/DSC1 Stare System(装置番号1547)を用いて、TGA/DSCを実施した。
【0082】
試料をアルミニウム坩堝(容積40μl;穴あき)を用いて調製した。典型的には各試料5〜10mgを、予め計量されたアルミニウム坩堝に入れて、30℃で5分間保持し、その後、10℃/分で30℃から300℃へ加熱した。試料に対し1分あたり40mlの窒素パージを保持した。システムの適切さのチェックとして、インジウムおよび亜鉛を較正標準として用いた。
【0083】
データ回収および評価に用いられたソフトウエアは、STARe Software v10.00 build 2480であった。パターンに補正を適用しなかった。結果を表4に要約する。
【表4】
【0084】
動的水蒸気吸着(DVS)
DVSテストは、Surface Measurement System Ltd. DVS−1 No Video(装置番号2126)を用いて実施した。
【0085】
試料をガラス皿内で、典型的に20〜30mg計量し、相対湿度(RH)0%で平衡にした。材料が乾燥した後、RHを1時間の間に1ステップあたり10%ずつ上昇させて、最終的に95%RHとした。
【0086】
データ回収に用いられたソフトウエアは、DVSWin v3.01 No Videoであった。データ解析は、DVS Standard Analysis Suite v6.3.0 (Standard)を用いて実施した。
【0087】
結果を表5に要約する。
【表5】
【0088】
偏光顕微鏡(PLM)
AxioCamERc5Sを備えたAxioVert 35M(装置番号1612)を用いて、顕微鏡試験を実施した。顕微鏡は、4つのレンズ:Zeiss A−Plan 5×/0.12、Zeiss A−Plan 10×/0.25、LD A−Plan 20×/0.30およびAchros TIGMAT 32×/0.40を備えていた。データ回収および評価は、Carl Zeiss Zen AxioVision Blue Edition Lite 2011 v1.0.0.0ソフトウエアを用いて実施した。
【0089】
結果を表6に要約する。
【表6】
【0090】
実施例4 − アラムコールN−メチルグルカミン、トロメタミンおよびリシン塩の合成および特徴づけ
アラムコールのN−メチルグルカミン、トロメタミンおよびリシン塩の合成を、一般的方法1および2に従って遂行した。
【0091】
一般的方法1:アラムコールと約1モル当量の所望の塩基との水性またはアルコール性溶液(例えば、メタノール、エタノール)を、均質な溶液が形成するまで加熱して(例えば、還流まで)、その後逆溶媒(酢酸エチルまたはアセトンなど)を添加して懸濁液を得た。反応混合物は、場合により冷却した。形成された塩をろ過により単離し、洗浄して乾燥させた。
【0092】
アラムコールN−メチルグルカミン塩を、一般的方法1により調製した。アラムコール遊離酸(5.0g)を、水、メタノールまたはエタノール中でN−メチルグルカミン1.4g(1モル当量)と混合して加熱還流し、その後逆溶媒としてアセトンまたは酢酸エチルを添加し、冷却した。形成された沈殿物を単離し、非晶質のアラムコールN−メチルグルカミン塩として特徴づけた。同様の手順を、アラムコール1〜20gおよびN−メチルグルカミン1モル当量を使用して実施した。
【0093】
アラムコールリシン塩を、一般的方法1により調製した。アラムコール遊離酸(5.0g)を、メタノールまたはエタノール中でリシン1.0g(1モル当量)と混合して加熱還流し、その後逆溶媒としてアセトンまたは酢酸エチルを添加し、冷却した。形成された沈殿物を単離し、非晶質のアラムコールリシン塩として特徴づけた。同様の手順を、アラムコール1〜20gおよびリシン1モル当量を使用して実施した。
【0094】
アラムコールトロメタミン塩を、一般的方法1により調製した。アラムコール遊離酸(5.0g)を、メタノールまたはエタノール中でリシン0.9g(1モル当量)と混合して加熱還流し、その後逆溶媒としてアセトンまたは酢酸エチルを添加し、冷却した。形成された沈殿物を単離し、非晶質のアラムコールトロメタミン塩として特徴づけた。同様の手順を、アラムコール1〜20gおよびリシン1モル当量を使用して実施した。
【0095】
一般的方法2:アラムコールと約1モル当量の所望の塩基との水性またはアルコール性溶液を、均質な溶液が形成するまで加熱した(例えば、還流まで)。反応混合物は、場合により冷却した。その後、溶媒を除去して(例えば、減圧下でのロトバップによる)固体を得て、単離および乾燥させた。
【0096】
アラムコールN−メチルグルカミン塩を、一般的方法2により調製した。アラムコール遊離酸(150.0g)を、メタノール中でN−メチルグルカミン(41.7g)と混合し、加熱還流して均質溶液を得た。溶液を50℃にてロトバックで濃縮して固体を得て、非晶質アラムコールN−メチルグルカミン塩として特徴づけた。
【0097】
アラムコールリシン塩を、一般的方法2により調製した。アラムコール遊離酸(50.0g)を、メタノール中でリシン(10.4g)と混合し、加熱還流して均質溶液を得た。溶液を50℃にてロトバックで濃縮して固体を得て、非晶質アラムコールリシン塩として特徴づけた。
【0098】
アラムコールトロメタミン塩を、一般的方法2により調製した。アラムコール遊離酸(50.0g)を、メタノール中でトロメタミン(8.6g)と混合し、加熱還流して均質溶液を得た。溶液を50℃にてロトバックで濃縮して固体を得て、非晶質アラムコールトロメタミン塩として特徴づけた。
【0099】
特徴づけ:
XRPD分析を実施例3に記載された通り実施して、得られた塩が非晶質であることを実証した。アラムコールN−メチルグルカミン塩の代表的なXRPDスペクトルを、図1に示す。アラムコールリシン塩の代表的なXRPDスペクトルを、図2に示す。アラムコールトロメタミン塩の代表的なXRPDスペクトルを、図3に示す。
【0100】
塩のH−NMRスペクトルを測定すると、各例において、アラムコールのカルボン酸官能基のプロトン(NMRスペクトルの12ppmに位置する)が消失しており、塩の形成が示された。アラムコールN−メチルグルカミン塩の代表的なH−NMRスペクトルを、図4に示す。アラムコールリシン塩の代表的なH−NMRスペクトルを、図5に示す。アラムコールトロメタミン塩の代表的なH−NMRスペクトルを、図6に示す。比較のため図7に示すのは、アラムコール遊離酸の代表的なH−NMRスペクトルである。
【0101】
分析測定
以下のテストを、塩について実施した:LC純度、Karl Fisher(試料中の微量の水を測定)および乾燥減量(LOD)(加熱により減少した質量%を測定)。結果は、塩の間で類似のパターンの水分量および質量減少%を示している(表7)。
【表7】
【0102】
アラムコールN−メチルグルカミンのDVS測定
アラムコールN−メチルグルカミン塩の吸着および脱離挙動を測定するために、DVS測定を実施した。相対湿度(RH)を1ステップあたり10%ずつ上昇させて、最終的に95%RHにすることにより、吸着を測定した。吸着サイクルの完了後に、材料を乾燥させた。XRPDを、DVSの前後に実施した。DVSは、RH変化に応答した段階的吸着と、総質量増加率16%を示しており、材料が吸湿性であることが示唆された。吸着は、可逆的および再現的であった。アラムコールN−メチルグルカミン塩の代表的なDVSスペクトルを、図8に示す。DVS後のXRPDパターンは、異なるピーク形状および強度を有する(異なる粒子径および形状のため)、非晶質材料を示した。
【0103】
アラムコールN−メチルグルカミンのかさ密度およびタップ密度
タップ密度およびかさ密度の測定は、粉末の流動特性および圧縮性を予測するのに用いられる。これらの2つの特性は、錠剤およびカプセルなどの固体投与剤形の製造にとって重要である。低値のタップ密度およびかさ密度を有する化合物は、打錠が困難になる場合があり、それゆえ流動特性を改善するためのさらなる加工を必要とし得る。
【0104】
表8に示す通り、アラムコール(遊離酸)のかさ密度は0.15g/cmであり、タップ密度は0.17g/cmである。それゆえ、流動特性を改善するために、打錠の前に湿式造粒工程を利用する。アラムコールN−メチルグルカミンの場合、測定されたかさ密度は0.57g/cmであり、タップ密度は0.66g/cmである。N−メチルグルカミン塩の相対的に高いかさ密度およびタップ密度値から、その改善された流動特性が、さらなる湿式造粒ステップを回避させることにより、製造手順を短縮および簡便化し得ることを示唆する。
【表8】
【0105】
アラムコール(遊離酸)、およびその3種の塩を通常通り、硬質HPMC(ヒプロメロース)カプセル サイズ00(CapsCanada、カナダ、オンタリオ州所在)へとタッピングせずに充填した(充填重量を表9に表す)。
【表9】
【0106】
実施例5.アラムコールN−メチルグルカミンの安定性
アラムコールのN−メチルグルカミン塩を、以下の条件による安定性の促進に供した。
a)閉鎖されたフラスコ内で溶液として40℃/75%RHに暴露
b)閉鎖された容器内で固相形態で40℃/75%RHに暴露
c)開放された容器内で固相形態で40℃/75%RHに暴露
【0107】
以下のパラメータを、t=0、t=1週目、t=2週目に測定した:外観、LC純度、LCアッセイ(アッセイは、遊離酸である参照に対して計算され、それゆえ結果は100%未満である)、水分量。表10に、安定性テストの結果を要約する。外観および純度は、検査条件下では不変であった。不純物のプロファイリングは、存在する不純物の顕著な変化、または形成された任意の新たな顕著な不純物のいずれも示さなかった。計算されたアッセイは、検査条件下では相対的に不変であった。水分量は、検査条件下で増加しており、材料は吸湿性と思われた。固相形態への水の吸引は、開放された容器に貯蔵された材料でより際立っていた。
【表10】
【0108】
アラムコール遊離酸について、6ヶ月間の安定性データが40℃/75%相対湿度で作成されており、同時に12ヶ月間の25℃/60%相対湿度、および中間条件である30℃/65%相対湿度でも作成されている。全ての条件およびタイムポイントで、いずれのパラメータにも有意な変化がなかった。したがって、アラムコール遊離酸とN−メチルグルカミンとの安定性の比較は、両方の化合物で類似した安定性プロファイルを示している。さらに、アラムコールメグルミン塩の40℃/75%RHへの暴露は水分量を増加させたが、純度値に変化はなく、塩形成の際にアラムコールの安定性に有害な変化がないことが示された。
【0109】
実施例6.N−メチルグルカミン、トロメタミンおよびL−リシンアラムコール塩の溶解度
アラムコール(遊離酸)は、水性媒体中で低い溶解度を有する(pH6.0の緩衝液中の溶解度0.001mg/mL未満、FeSSIF中の最大溶解度0.66mg/mL)。
【0110】
N−メチルグルカミン、トロメタミンおよびL−リシンの飽和溶解度を、異なる緩衝液および生物関連媒体で測定した:HCl緩衝液pH1.2、酢酸緩衝液pH4.5、生理食塩水pH5.5、リン酸緩衝液pH6.5、リン酸緩衝液pH7.0、PBS pH7.4、FeSSIF(pH6.5)、FeSSIF(pH5.0)および脱塩水(pH7.8、溶解後に調整していない)。実験は、飽和溶液5mL(約150mg)を37℃で30分間および24時間スラリー化することにより実施した。例外は水であり:溶解度が高いため、約1,000mgを5mLに添加した。実験は全て、二重測定で実施した。表11に、選択された媒体中のアラムコール塩の溶解度を示す。
【表11】
【0111】
結果は、アラムコール塩の溶解度がpH依存性であることを示しており、酸性pH(pH1.2〜6.5)ではわずかに可溶で、pH7以上で溶解度が上昇する。pH7、7.4では、3種の塩全てで類似の溶解度を示している。しかし驚くべきことに、N−メチルグルカミン塩の場合、他の2種の塩に比較して、pH7.4(PBS)からpH7.8(脱塩水)への上昇の際に相対的に大きな溶解度上昇(5倍)が示されている。
【0112】
総括すると、アラムコール(遊離酸)と塩との溶解度比較により、生理学的に関連するpHでアラムコール塩のより高い溶解度が実証される(pH7.4で30,000倍の濃度上昇)。
【0113】
実施例7.カニューレ挿入されたラットにおけるインビボ透過性実験
アラムコール塩のインビボ透過性試験を、頸静脈および空腸にカニューレ挿入された雄Wisterラットにおいて実施した。胃の酸性pHにおけるアラムコール塩のプロトン化を回避するために、腸へのカニューレ挿入を実施した。PBS中に溶解したアラムコール塩(30mg/mL)を、空腸の近位側に挿入されたカニューレを介して、ラットの腸(空腸)へ100mg/kgの用量(遊離酸に基づく)で投与した。アラムコール遊離酸の懸濁液(PBS中に30mg/mL)を同じ経路で投与し、対照として用いた。所定のタイムポイント(投与前、投与後1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間)で、血液試料を頸静脈に挿入されたカニューレから採取した。アラムコール(遊離酸)の血漿濃度は、イスラエルのAnalyst Bioanalytical Laboratoriesにより、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析(LC−MS−MS)法を利用して測定された。PKパラメータは全て、ノンコンパートメント解析を利用して計算した。定量の下限(LOQ)(48.66ng/mL)以上の血漿濃度のみを、解析に使用した。投与前からLOQ以上になった最初の濃度までに生じた、LOQ未満の血漿濃度は、0として処理した。実際の採取時間を、全ての薬物動態分析に用いた。以下のPKパラメータを計算した:最大血漿濃度(Cmax)、Cmaxまでの時間(Tmax)、投与の時間から最後の血漿濃度までの血漿濃度−時間の曲線下面積(AUC0−t)、AUC/用量、排出半減期(t1/2)。CmaxおよびTmaxは、データから直接得た。0から濃度がLOQ以上である最後の試料までの曲線下面積。AUC0−tは、線形台形法を用いて計算した。
【0114】
表12に示される通り、アラムコール(遊離酸)のCmaxおよびAUC/用量の平均±標準誤差は、3種の塩N−メチルグルカミン、リシンおよびトロメタミンに比較して低かった。AUC/用量およびCmaxの実質的な増加が、アラムコール遊離酸に比較してN−メチルグルカミン塩で観察された(図9)。2つのパラメータで平均すると、増加は、AUC/用量およびCmaxでそれぞれ2.6倍および3.6倍であった。
【0115】
総括すると、データは、アラムコールの遊離酸形態に比較して全ての塩について全身暴露の増加を示し、アラムコールの吸収における水性溶解度の役割を裏づけている。
【表12】
【0116】
結論
アラムコール塩を調製するために、約30種の医薬的に許容し得る塩基をスクリーニングした。それらのうち、アミンを基剤とする塩が、適切であることが見出され、特に3種のアラムコール塩が好ましい塩として選択された。本明細書で実証された通り、アラムコールのN−メチルグルカミン、リシンおよびトロメタミン塩が調製され、有利な特性を有することが示された。アラムコール塩一般に関する、および特に3種の好ましい塩に関する複数の予測されなかった知見を、本明細書の以下に要約する。
【0117】
1)医薬的に適切なアラムコール塩の形成に適した塩基の選択は、自明ではない。塩基の分子量、pKa、極性基の存在、または塩形成の立体的因子の明白な相関はない。
2)狭いpH範囲(7.0〜7.8)での実質的な溶解度差もまた、予測外であった。例えば3種のテストされた塩は、pH7と7.4で類似の溶解度を示す。しかし、脱塩水(pH7.8)中のN−メチルグルカミンの溶解度はpH7.4での5倍高く、他の2種の塩ではその差は相対的に低い。
3)溶液安定性の予測は不測である。例えば、N−メチルグルカミン塩は他の2種の塩に比較して相対的に高い溶液中の安定性を示す(表11)。例えば、pH=7.8(脱塩水)では、トロメタミン塩とリシン塩の両方の溶液が、24時間後に変化した(turned into gets)が、N−メチルグルカミン塩は、溶液のままであった。
【0118】
加えて、アラムコール遊離酸と比較してテストされた塩には、複数の有利な特性が存在する:
【0119】
アラムコール塩のインビトロ溶解度は、それらのインビボ吸収に相関する:生理学的媒体(pH緩衝液7〜7.8)中のアラムコール遊離酸に比較した3種の塩の上昇した溶解度は、暴露の増加をもたらす(CmaxおよびAUCにより測定)。その上、リシンおよびトロメタミン塩に比較してN−メチルグルカミンのより高い暴露は、溶液中のその高い安定性に相関する可能性がある。
【0120】
最後に、N−メチルグルカミン塩のかさ密度およびタップ密度の相対的に高い値(アラムコール遊離酸に比較して)は、その改善された流動特性が、湿式造粒のさらなるステップまたは低密度粉末の圧縮性問題を克服するために設定される他のステップおよび硬カプセル充填を可能にするのに必要なステップを回避することにより、より簡便な錠剤製造手順を容易にし得ることを示唆している。
【0121】
本明細書に引用された参考資料は全て、その全体が参照により本明細書に明白に組み入れられる。本発明の特定の実施形態を図示および説明したが、本発明が本明細書に記載された実施形態に限定されないことは明白でなければならない。以下の特許請求の範囲により記載された本発明の範囲の主旨および範囲を逸脱することなく、数多くの修正、変更、変異、置換および均等物が当業者に明白となろう。
図1
図2
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図9