(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1つまたは複数の追加の平面状多孔質強化用コンポーネントが、前記強化型膜シールアセンブリの前記境界領域の中へと前記内側領域を横切って延伸する、請求項1に記載の強化型膜シールアセンブリ。
前記イオン導電性コンポーネントおよび/またはシールコンポーネントが、平面を通過する方向に前記第1または前記第2の平面状強化用コンポーネントを超えて延伸しない、請求項1または2に記載の強化型膜シールアセンブリ。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質によって分けられた2つの電極を備える電気化学電池である。水素または、メタノールもしくはエタノールなどのアルコールなどの燃料をアノードへ供給し、酸素または空気などの酸化剤をカソードへ供給する。電気化学反応が電極のところで生じ、燃料および酸化剤の化学エネルギーを、電気エネルギーおよび熱に変換する。アノードにおける燃料の電気化学酸化およびカソードにおける酸素の電気化学還元を増進させるために、電極触媒を使用する。
【0003】
水素燃料またはアルコール燃料のプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)では、電解質は、電気的に絶縁性でありしかもプロトン導電性である固体ポリマー膜である。アノードで生成されたプロトンを、カソードへ膜を横切って輸送し、カソードでは、プロトンが酸素と結合して水を形成する。最も広く使用されているアルコール燃料は、メタノールであり、PEMFCのこの変形例を、多くの場合に直接メタノール燃料電池(DMFC)と呼ぶ。
【0004】
PEMFCの主要部品は、膜電極アセンブリ(MEA)として知られており、基本的に5層からなる。中央の層は、ポリマーイオン導電性膜である。イオン導電性膜のいずれの側にも、特定の電極触媒反応のために設計された電極触媒を含有する電極触媒層がある。最後に、各電極触媒層に隣接して、ガス拡散層がある。ガス拡散層は、反応物質が電極触媒層に到達することを可能にしなければならず、そして電気化学反応によって発生した電流を伝導させなければならない。したがって、ガス拡散層は、多孔質であり、かつ電気的に導電性でなければならない。
【0005】
従来、MEAを、以降に概要を示す多数の方法によって構成することができる。
(i)電極触媒層をガス拡散層に付けて、ガス拡散電極を形成することができる。2つのガス拡散電極を、イオン導電性膜のいずれの側にも置き、一緒に積層して5層MEAを形成することができる。
(ii)電極触媒層を、イオン導電性膜の両面に付けて、触媒コーティング型のイオン導電性膜を形成することができる。引き続いて、ガス拡散層を、触媒コーティング型のイオン導電性膜の両面に付ける。
(iii)電極触媒層を一方の側にコーティングしたイオン導電性膜、その電極触媒層に隣接するガス拡散層、およびイオン導電性膜の他方の側のガス拡散電極から、MEAを形成することができる。
【0006】
従来は、ガス拡散層および電極触媒層が面積で膜よりも小さく、その結果MEAの外周の周りにエリアがあり、このエリアがイオン導電性膜だけを含む状態で、中央のポリマーイオン導電性膜がMEAの端部まで延伸するように、MEAを構成する。電極触媒が存在しないエリアは、電気化学的不活性領域である。典型的には非イオン導電性ポリマーから形成されるフィルム層は、電極触媒が存在しないイオン導電性膜の露出した表面上でMEAの端部領域の周りに一般に設置されて、MEAの端部をシールするおよび/または強化する。接着剤層が、シールフィルム層の片方または両方の表面上に存在することがある。
【0007】
MEA内のコンポーネント層を、典型的には積層法によって張り合わせる。典型的には、膜で使用されるポリマーイオン導電性材料の多くは、電気化学的活性領域を超えて、多くの場合に数センチメートルまで電気化学的不活性領域へと延伸する。小さい幾何学的エリアのMEAでは、この電気化学的不活性領域は、全体のMEA幾何学的エリアの50%を占めることがある。電気化学的活性エリアを超えて延伸する膜は、活量および性能には寄与しない。ポリマーイオン導電性膜は、燃料電池で最もコストがかかる部品の1つであり、したがって、その使用量を最小にすることが望ましい。さらにその上、MEAの端部領域の周りに設置されたシールフィルム層が、典型的には、フィルムのロールを採用することによって形成され、中央の領域を切り取られて窓枠を形成し、窓枠を次いでMEAの端部の周りに設置する。このようにシールフィルム材料のかなりの部分が、やはり無駄にされる。ポリマーイオン導電性膜が、膜の厚さ内に埋め込まれ、平坦な多孔質材料などの強化材料をやはり含み、膜の機械的強度を向上させ、このようにしてMEAの長い耐久性および燃料電池の長い寿命を与えることが、一般的に行われている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、強化型膜シールアセンブリを提供し、この強化型膜シールアセンブリが内側領域および境界領域を備え、内側領域がイオン導電性コンポーネントを含み、境界領域がシールコンポーネントを含み、
第1の平面状強化用コンポーネントおよび第2の平面状強化用コンポーネントが、境界領域の中へと内側領域を横切って各々延伸し、内側領域の第1の平面状強化用コンポーネントおよび第2の平面状強化用コンポーネントの各々の気孔にはイオン導電性コンポーネントを浸透させ、境界領域の第1の平面状強化用コンポーネントおよび第2の平面状強化用コンポーネントの各々の気孔にはシールコンポーネントを浸透させる。
【0015】
1つまたは複数の追加の平面状強化用コンポーネントが、強化型膜シールアセンブリの境界領域の中へと内側領域を横切って延伸することがある。
【0016】
内側領域および境界領域
内側領域は、x/y方向(面内方向)の平面エリアを呼び、平面を通過する方向(z方向)に強化型膜シールアセンブリの厚さを通過して延伸する。
【0017】
境界領域は、面内方向の平面エリアを呼び、平面を通過する方向(z方向)に強化型膜シールアセンブリの厚さを通過して延伸し、境界領域は、内側領域の外周の周りに延伸する。
【0018】
「内側領域」および「境界領域」という用語のより良い理解が、内側領域(2)および境界領域(3)を有する強化型膜シールアセンブリ(1)を示す
図1から得られる。
【0019】
従来、内側領域は、長方形または正方形などの四辺形の幾何学的形状を有し、境界領域は、内側領域の周りに外枠を作り出す。しかしながら、内側領域を任意の幾何学的形状のものにすることができ、境界領域の内側端がそのときには内側領域と同じ幾何学的形状を有するであろうことが理解されるであろう。境界領域の外側端は、必ずしも、内側端の形状に対応する幾何学的形状でなければならない必要がなく、例えば、内側端が円形であり外側端が正方形であってもよい。
【0020】
強化型膜シールアセンブリの全平面積(すなわち、内側領域および境界領域の合わせた平面(x/y)の面積)は、強化型膜シールアセンブリの最終的な使用に依存するであろう、適した全体の平面積の選択は、当業者の才覚の範囲内であろう。
【0021】
各層内の内側領域および境界領域の寸法は、全平面積により決定されるであろう、そして強化型膜シールアセンブリの最終的な使用に依存するであろう、適した寸法の選択は、当業者の才覚の範囲内であろう。
【0022】
イオン導電性コンポーネント
発明の強化型膜シールアセンブリの製造の方法に応じて、1つまたは多数の異なるイオン導電性コンポーネントが強化型膜シールアセンブリ内に存在することがある。
【0023】
イオン導電性コンポーネントを、いずれか、プロトン導電性ポリマーの群から選択する、またはヒドロキシルアニオン導電性ポリマーなどのアニオン導電性ポリマーの群から選択する。適したプロトン導電性ポリマーの例は、パーフルオロスルホン酸イオノマ(例えば、Nafion(登録商標)(E.I. DuPont de Nemours and Co.)、Aciplex(登録商標)(旭化成)、Aquivion(商標)(Solvay Speciality Polymers)、Flemion(登録商標)(旭硝子株式会社)、またはfumapem(登録商標)P、EもしくはKシリーズの製品としてFuMA−Tech GmbH、JSR株式会社、東洋紡株式会社、他、から入手可能なものなどのスルホン酸塩炭化水素系のイオノマを含む。適したアニオン導電性ポリマーの例は、株式会社トクヤマ製のA901およびFuMA−Tech GmbHからのFumasep FAAを含む。
【0024】
イオン導電性コンポーネントは、膜の化学的耐久性を助ける1つまたは複数のコンポーネント、例えば、過酸化水素分解触媒、ラジカル消去剤、等を個別に含むことができる。このようなコンポーネントの例は、当業者には知られている。
【0025】
シールコンポーネント
発明の強化型膜シールアセンブリの製造の方法に応じて、1つよりも多くのタイプのシールコンポーネントが存在することがある。
【0026】
シールコンポーネントは、イオン導電性コンポーネントおよび平面状強化用コンポーネントと親和性であることが必要である。シールコンポーネントは、非イオン導電性であるべきであり、最終製品内では、燃料電池スタックにおける動作のために必要な機械的特性、熱的特性および化学的特性を所有しなければならない。キャリア材料が処理の終了で除去されるときに、シールコンポーネントは、何らかの変形に耐えることができなければならない。
【0027】
シールコンポーネント用に使用することができる適した材料の例は、フルオロシリコーン、ポリウレタン、コポリアミド、エポキシ、およびフルオロアクリレートを含む。適したシール用コンポーネントの具体的な例は、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルサルホン(PES)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、Viton(登録商標)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(p−フェニレンサルファイド)(PPS)、ポリオレフィン、およびシリコーンを含む。
【0028】
平面状強化用コンポーネント
第1、第2およびいずれかの追加の平面状強化用コンポーネントが、強化型膜シールアセンブリに強度および強化を与えるために存在する。
【0029】
第1、第2およびいずれかの追加の平面状強化用コンポーネントを、多孔質材料から形成する。第1、第2およびいずれかの追加の平面状強化用コンポーネントを、同じ多孔質材料または異なる多孔質材料から形成することができる。多孔質材料は、下記の特性のうちの少なくともいくつかを所有するはずである:イオン導電性コンポーネントおよびシールコンポーネントと親和性があり、その結果、これらのコンポーネントは、多孔質構造を維持しながら多孔質材料の中へと容易に浸透することができる;最終的なMEAの変化する湿度下での機械的強度および寸法安定性の改善を提供する;非導電性である;および燃料電池が動作する温度で化学的に安定でありかつ熱的に安定である。
【0030】
適した平面状強化用コンポーネントは、ナノファイバ構造から形成されたもの(例えば、エレクトロスピニングまたはフォーススピニングによって形成されたもの)、エクスパンディッドポリマーネットワークから形成されたもの、および平面状非多孔質構造のエンジニアリングによって形成されたものを含むが、これらに限定されない。使用に適した材料の例は、典型的にはポリマーであり、ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン(PES)、およびポリプロピレン(PP)を含む。
【0031】
第1、第2およびいずれかの追加の平面状強化用コンポーネントを作る多孔質材料の気孔率は、好適には30%よりも大きく、好ましくは50%よりも大きく、そして最も好ましくは70%よりも大きい。好適には、気孔率は95%未満である。気孔率(n)は、式n=V
v/V
tx100にしたがって計算され、ここでは、nは気孔率であり、V
vはボイド体積であり、V
tは多孔質材料の全体積である。多孔質材料のボイド体積および全体積を、当業者には知られている方法によって決定することができる。
【0032】
第1、第2およびいずれかの追加の平面状強化用コンポーネントを作る多孔質材料は、等方性であっても異方性であってもよい。異方性である場合には、隣接する平面状強化用コンポーネント内の同位性の方向は、同じであってもよく、またはすべての方向に強化型膜シールアセンブリに対して追加の安定性を与えるために相互に90°などのある角度であってもよい。
【0033】
第1、第2およびいずれかの追加の平面状強化用コンポーネントは、すべての方向に境界領域の外側端まで延伸することができる、すなわち、平面状強化用コンポーネントは、境界領域の外側端と同じ広がりである。
【0034】
あるいは、第1、第2およびいずれかの追加の平面状強化用コンポーネントを、内側領域の平面積よりも平面積で大きくすることができるが、強化型膜シールアセンブリの全平面積よりも面積で小さい。
【0035】
あるいは、第1、第2およびいずれかの追加の平面状強化用コンポーネントのうちの少なくとも1つは、境界領域の外側端まで延伸し、第1、第2およびいずれかの追加の平面状強化用コンポーネントのうちの他の少なくとも1つは、内側領域の平面積よりも平面積で大きいが、強化型膜シールアセンブリの全平面積よりも面積で小さい。
【0036】
あるいは、第1、第2およびいずれかの追加の平面状強化用コンポーネントのうちの1つまたは複数は、1つの平面方向(例えば、x方向)に境界領域の外側端と同じ広がりであるが、第2の平面方向(例えば、y方向)に境界領域の内側端と外側端との間のある点のところで止まる。
【0037】
内側領域に存在するイオン導電性コンポーネントおよび境界領域に存在するシールコンポーネントを有するように、発明を説明したが、イオン導電性コンポーネントとシールコンポーネントとの界面のところに平面(xおよび/またはy)方向に5mmまでの混ざり合った領域があってもよく、この混ざり合った領域は、したがってイオン導電性コンポーネントおよびシールコンポーネントの両方を含むであろう。
【0038】
混ざり合った領域内では、シールコンポーネントおよびイオン導電性コンポーネントが混和性である場合には、2つのコンポーネントの完全な混合があってもよく、その結果、混ざり合った領域の全体を通してコンポーネントの分布は、均一である。
【0039】
あるいは、シールコンポーネントおよびイオン導電性コンポーネントが混和性でない場合には、混ざり合った領域内には、イオン導電性コンポーネントによって囲まれたシールコンポーネントの1つまたは複数の「アイランド」があってもよい。
【0040】
あるいは、混ざり合った領域内には、シールコンポーネントによって囲まれたイオン導電性コンポーネントの1つまたは複数の「アイランド」があってもよい。
【0041】
あるいは、混ざり合った領域は、上に記述した配置の2つ以上の混合物を含むことができる。
【0042】
あるいは、イオン導電性コンポーネントとシールコンポーネントとの界面は、完全に直線的ではなくてもよく、不規則であってもよく、例えば、「波打った」線を与える。
【0043】
あるいは、不規則な界面と混ざり合った領域との混合物があってもよい。
【0044】
x方向および/またはy方向を参照して説明するけれども、混ざり合った領域および不規則な界面は、平面を通過する(x)方向にもやはり当てはまることがある。
【0045】
あるいは、一方のコンポーネントは、2つのコンポーネントの界面のところで平面方向に5mmまで他方のコンポーネントと重なることができる。
【0046】
一実施形態では、イオン導電性コンポーネントおよび/またはシールコンポーネントは、平面を通過する(z)方向に平面状強化用コンポーネントを超えては延伸せず、その結果、第1の平面状強化用コンポーネントおよび/または第2の平面状強化用コンポーネントの一方または他方の中へと浸透していないイオン導電性コンポーネントおよび/またはシールコンポーネントはない。
【0047】
あるいは、イオン導電性コンポーネントおよび/またはシールコンポーネントは、厚さ方向に平面状強化用コンポーネントを超えて延伸し、その結果、第1の平面状強化用コンポーネントまたは第2の平面状強化用コンポーネントのいずれかの中へと浸透していないイオン導電性コンポーネントおよび/またはシールコンポーネントの層がある。イオン導電性コンポーネントおよび/もしくはシールコンポーネントのこの未強化層を、追加の工程において付けることができる、またはイオン導電性コンポーネントおよび/もしくはシールコンポーネントの未強化層を、乾燥時の平面状強化用コンポーネントの収縮によって作り出すことができる。この未強化層を追加の工程として付ける場合には、シール用コンポーネントの未強化層とイオン導電性コンポーネントの未強化層との間の界面が、平面状強化用コンポーネントを含有する層内のシール用コンポーネントとイオン導電性コンポーネントとの間の界面から、および/または平面状強化用コンポーネントの他方の面上のいずれかの未強化層内の界面からオフセットすることがある。
【0048】
シールコンポーネントのいずれかの未強化層は、イオン導電性コンポーネント(いずれか、平面状強化用コンポーネントの気孔の中へと浸透したイオン導電性コンポーネントまたは平面を通過する方向(z方向)に平面状強化用コンポーネントを超えて延伸するイオン導電性コンポーネント)と重なることができる。いずれかの重なりを、1mm以上とすることができる。重なりを、10mm以下とすることができる。あるいは、重なりである代わりに、イオン導電性コンポーネントおよびシールコンポーネントの両者を含む本明細書において前に説明したような混ざり合った領域があってもよい。
【0049】
内側領域では平面を通過する方向(z方向)の強化型膜シールアセンブリの厚さは、強化型膜シールアセンブリの最終的な用途に依存するであろう。一般に、しかしながら、厚さは、≦35μm、例えば、≦25μmなどの≦50μmであろう。好適には、厚さは、≧5μmである。一実施形態では、強化型膜シールアセンブリは、内側領域内では平面を通過する方向(z方向)に8〜25μmの厚さを有する。
【0050】
例示的であり発明を限定しない図面を参照して、発明をここでより詳細に説明するであろう。
【0051】
図2は、内側領域(2)および境界領域(3)を備える発明の強化型膜シールアセンブリ(1)の断面図を示している。各層の内側領域は、イオン導電性コンポーネント(4)を含み、各コンポーネントの境界領域は、シールコンポーネント(5)を含む。(クロスハッチングによって示した)第1の平面状強化用コンポーネント(6)および第2の平面状強化用コンポーネント(7)は、内側領域(2)を横切り、強化型膜シールアセンブリ(1)の境界領域(3)の中へと延伸する。第1および第2の強化用コンポーネント(6および7)は、イオン導電性コンポーネント(4)およびシールコンポーネント(5)内に埋め込まれ、その結果、第1および第2の強化用コンポーネント(6および7)のすべての気孔は、イオン導電性コンポーネント(4)またはシールコンポーネント(5)で基本的に埋められる。「基本的に埋められる」という句によって、強化用コンポーネントの気孔体積の少なくとも90%、好適には少なくとも95%、そして好ましくは少なくとも99%が埋められることを意味する。
【0052】
図2はイオン導電性コンポーネントおよびシールコンポーネントの未強化帯によって分離されている2つの平面状強化用コンポーネントを示しているけれども、強化型膜シールアセンブリの製造中におよび/またはさらなる処理中に、この分離を、減少させることができ、そして2つの平面状強化用コンポーネントが基本的に隣接し、相互に接触する程度に減少させることができることを、当業者なら認識するであろう。
【0053】
図3は、
図2に示したものに類似の発明の強化型膜シールアセンブリ(1)の断面図を示しており、コンポーネントのすべての参照番号は同じままである。しかしながら、
図3では、第1および第2の強化用コンポーネント(6および7)が境界領域の端部まで延伸せずに、境界領域の内側端と外側端との間の位置で止まることを、知ることができる。第1および第2の強化用コンポーネント(6および7)は、両方の平面方向に、または連続的に製造した強化型膜シールアセンブリのケースではクロスウェブ方向などの一方向だけの平面方向に、境界領域の内側端と外側端との間の位置で止まることができる。
【0054】
図4は、
図1に類似の発明の強化型膜シールアセンブリ(1)の拡張した断面図を示しているが、イオン導電性コンポーネント(4)およびシールコンポーネント(5)が平面を通過する(z)方向に第1および第2の平面状強化用コンポーネント(6および7)を超えて延伸して、未強化層(8および9)を与える。未強化層(8および9)の一方または両方においてシールコンポーネントとイオン導電性コンポーネントとの間の界面が、相互にオフセットすることがある、および/または平面状強化用コンポーネントに埋め込まれたシールコンポーネントおよびイオン導電性コンポーネントの界面の一方または両方かオフセットすることがあることを、当業者なら認識するであろう。
【0055】
図は強化型膜シールアセンブリの全体にわたって同じ寸法を有する内側領域および境界領域を示しているけれども、内側領域および境界領域の寸法が、最終的な設計必要条件および製造の方法に応じて平面を通過する方向に強化型膜シールアセンブリの全体にわたって変わることがあることを、当業者なら認識するであろう。
【0056】
発明の強化型膜シールアセンブリを、多数の異なる方法によって製造することができる。一方法では、(内側領域を形成するために)キャリア材料の上にイオン導電性コンポーネントを、そして(境界領域を形成するために)イオン導電性コンポーネントの周りにシールコンポーネントを堆積することによって、強化型膜シールアセンブリを、例えば、キャリア材料上に、層として作り上げる。あるいは、シールコンポーネントを最初に、続いてイオン導電性コンポーネントを堆積することができる。層を次いで乾燥させる。層が平面状強化用コンポーネントを含む場合には、層を、乾燥させる前にウェットシールコンポーネント/イオン導電性コンポーネントに付けて、平面状強化用コンポーネントのすべての気孔がイオン導電性コンポーネントまたはシールコンポーネントのいずれかで基本的に埋められるように平面状強化用コンポーネントがイオン導電性コンポーネント/シールコンポーネント内に埋め込まれるようになることを可能にする。追加の層を、次いで必要に応じて追加する。キャリア材料を、次いで適切な時に強化型膜シールアセンブリから除去する。
【0057】
イオン導電性コンポーネントおよびシールコンポーネントを、各々の堆積の後で個別に乾燥させる、または一旦両者を堆積して単一の工程で乾燥させることができる。基本的にイオン導電性コンポーネントまたはシールコンポーネントコーティング分散体から溶剤を除去するために乾燥させることは、当業者には知られているいずれかの適した加熱技術、例えば、空気衝突、赤外線、等によって成し遂げることができる。好適には、乾燥させることを、典型的には70〜120℃の温度で実施するが、溶剤の性質に依存するであろう、そして200℃に至るまでまたは200℃を超えてもよい。
【0058】
シールコンポーネントは、イオン導電性コンポーネントに応じて、乾燥させることに加えてやはり硬化させることができ、コンポーネントの機械的強度および化学的強度を与える。硬化させることは、架橋などの変化をもたらす化学反応であり、(例えば、熱もしくはIRによって)熱的に活性化させるまたはUVによって活性化させることができる。
【0059】
加えて、イオン導電性コンポーネントを、乾燥させること(および任意選択で硬化させること)に加えてアニールすることができ、イオノマの結晶構造を変えかつ強くすることができる。任意のアニーリング工程は、乾燥工程に比べて高い温度、例えば、200℃に至るまでの温度を利用するはずである。
【0060】
硬化工程および/またはアニーリング工程を、各々の乾燥工程の後に、またはキャリア材料の除去の前で堆積法の最後に実施することができる。シールコンポーネントおよびイオン導電性コンポーネント用に使用する材料に応じて、硬化させることおよびアニーリングを単一の方法で成し遂げることができる。
【0061】
キャリア材料は、最終的な強化型膜シールアセンブリの一部ではないが、後の工程において除去されるものであり、除去工程は、強化型膜シールアセンブリを形成した直後であってもよい、または強化型膜シールアセンブリが他のコンポーネントと組み合わせられて触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリもしくは強化型膜シール電極アセンブリを形成した後の製作方法における下流側のある点であってもよい。キャリアは、製造中に強化型膜シールアセンブリ用の支持部を提供し、直ちに除去されない場合には、支持部を提供しそして任意の後の保管および/または輸送中に強度を与えることができる。キャリアが作られる材料は、必要な支持部を提供するはずであり、平面状強化用コンポーネント、イオン導電性コンポーネントおよびシールコンポーネントと親和性であり、イオン導電性コンポーネントおよびシールコンポーネントに対して浸透性がなく、強化型膜シールアセンブリを作成する際に包含される方法条件に耐えることができ、そして強化型膜シールアセンブリに損傷を与えずに容易に除去することができる。使用に適した材料の例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、パーフルオロアルコキシポリマー(PFA)、フッ化エチレンプロピレン(FEP−ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー)などのフルオロポリマー、および二軸配向ポリプロピレン(BOPP)などのポリオレフィンを含む。他の例は、高温で、例えば、200℃に至るまでの温度で機械的強度/完全性を保持することができる積層体、多層押し出し品、およびコーティングしたフィルム/フォイルを含む。例は、ポリ(エチレン−コ−テトラフルオロエチレン)(ETFE)とポリエチレンナフタレート(PEN);ポリメチルペンタン(PMP)とPEN;ポリパーフルオロアルコキシ(PFA)とポリエチレンテレフタレート(PET)とポリイミド(PI)との積層体を含む。積層体は、2層以上の層、例えば、ETFE−PEN−ETFE、PMP−PEN−PMP、PFA−PET−PFA、PEN−PFA、FEP−PI−FEP、PFA−PI−PFA、およびPTFE−PI−PTFEを有することができる。アクリル系またはポリウレタン系などの接着剤を使用して、層を張り合わせることができる。
【0062】
発明の強化型膜シールアセンブリを、イオン導電性膜を必要とするいずれかの電気化学装置において使用することができる。したがって、発明のさらなる態様は、本明細書において前に説明したような強化型膜シールアセンブリを備える電気化学装置を提供する。あるいは、電気化学装置において本明細書において前に説明したような強化型膜シールアセンブリの使用を提供する。発明の強化型膜シールアセンブリが特に有用である電気化学装置の例は、燃料電池、例えばPEMFCである。
【0063】
発明は、本明細書において前に説明したような強化型膜シールアセンブリおよび強化型膜シールアセンブリの少なくとも片面上に存在する触媒層を備える触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリをさらに提供する。触媒層は、強化型膜シールアセンブリの両面上に存在することがある。
【0064】
触媒層は、細かく分割された非担持型の金属粉末であってもよい、または小さな金属ナノ粒子が電気的導電性の粒子状炭素担体上に分散されている担持型の触媒であってもよい1つまたは複数の電極触媒を含む。電極触媒金属を、ふさわしくは、
(i)白金族金属(白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムおよびオスミウム)、
(ii)金もしくは銀、
(iii)卑金属、
またはこれらの金属もしくはその酸化物の1つもしくは複数を含む合金もしくは混合物から選択する。好ましい電極触媒金属は、白金であり、電極触媒金属を他の貴金属または卑金属と合金にすることができる。電極触媒が担持型の触媒である場合には、炭素担体材料上への金属粒子のローディングは、得られる電極触媒の重量の、好適には10〜90wt%、好ましくは15〜75wt%の範囲内である。
【0065】
触媒層を、ふさわしくは、有機系または水溶物系のいずれかの(しかし好ましくは水溶物系の)インクとして強化型膜シールアセンブリの面に付ける。インクは、ふさわしくは、EP0731520に記載されているようなイオン導電性ポリマーなどの他のコンポーネントを含むことができ、他のコンポーネントは、層内のイオン導電性を向上させるために含まれる。あるいは、触媒を、前もって準備した触媒層のデカール転写によって強化型膜シールアセンブリの面に付ける。
【0066】
触媒層は、追加のコンポーネントをさらに含むことができる。このような追加のコンポーネントは、酸素発生を促進し、したがって電池反転および始動/終了の状況において役に立つであろう触媒、または過酸化水素分解触媒を含むが、これらに限定されない。このような触媒および触媒層内の含有のために適した任意の他の添加物の例は、当業者には知られているであろう。
【0067】
発明は、本明細書において前に説明したような強化型膜シールアセンブリおよび強化型膜シールアセンブリの少なくとも片面上に存在するガス拡散電極を備える強化型膜シール電極アセンブリをさらに提供する。ガス拡散電極は、強化型膜シールアセンブリの両面上に存在することがある。
【0068】
強化型膜シール電極アセンブリを、多数の方法で作ることができ:
(i)発明の強化型膜シールアセンブリを、2つのガス拡散電極(1つのアノードと1つのカソード)の間に設置することができる、
(ii)触媒層によって一方の側だけにコーティングした発明の触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリを、ガス拡散層とガス拡散電極との間に設置することができ、ガス拡散層が触媒層でコーティングした触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリの側に接触する、または
(iii)触媒層で両側をコーティングした発明の触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリを、2つのガス拡散層間に設置することができる、
を含むが、これらに限定されない。
【0069】
コンポーネントの張り合わせおよび統合型の膜シールアセンブリの形成を助けるために、接着剤層を、強化型膜シールアセンブリの露出した境界領域の少なくとも一部に付けることができる。
【0070】
アノードガス拡散層およびカソードガス拡散層は、ふさわしくは、従来のガス拡散基板に基づく。典型的な基板は、炭素繊維のネットワークおよび熱硬化性樹脂バインダを含む不織紙またはウェブ(例えば、日本の東レ株式会社から入手可能な炭素繊維紙のTGP−HシリーズもしくはドイツのFreudenberg FCCT KGから入手可能なH2315シリーズ、またはドイツのSGL Technologies GmbHから入手可能なSigracet(登録商標)シリーズもしくはBallard Power Systems Inc.からのAvCarb(登録商標)シリーズ)または炭素織布を含む。いずれか、濡れ性(親水性)を高めるまたは防湿性(疎水性)を高めるために、MEAへと組み込むことに先立ってさらなる処理を、炭素紙、ウェブまたは布に施すことができる。任意の処理の性質は、燃料電池のタイプおよび使用される動作条件に依存するであろう。基板を、液体の懸濁液から浸透を介して非晶質カーボンブラックなとの物質の取り込みによって濡れ性を高めることができる、またはPTFEまたはポリフルオロエチレンプロピレン(FEP)などのポリマーのコロイド状懸濁液を基板の気孔構造に浸透させることによって、続いて乾燥させそしてポリマーの融点よりも高く加熱することによって疎水性を高めることができる。PEMFCなどの用途に関して、ミクロ多孔質層を、電極触媒層に接触する面上のガス拡散基板にやはり付けることができる。ミクロ多孔質層は、典型的には、カーボンブラックとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのポリマーとの混合物を含む。
【0071】
強化型膜シールアセンブリ、触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリ、または強化型膜シール電極アセンブリは、添加剤をさらに含むことができる。添加剤は、強化型膜シールアセンブリ、触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリ、もしくは強化型膜シール電極アセンブリの個別のコンポーネント層内のいずれかの内部に存在することができる、または触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリもしくは強化型膜シール電極アセンブリのケースでは、様々な層の間の界面のうちの1つもしくは複数のところにおよび/または1つもしくは複数の層内に存在することができる。
【0072】
添加剤を、過酸化水素分解触媒、ラジカル消去剤、フリーラジカル分解触媒、自己再生酸化防止剤、水素ドナー(H−donor)一次酸化防止剤、フリーラジカル消去二次酸化防止剤、酸素吸収剤(酸素消去剤)からなる群から選択される1つまたは複数とすることができる。これらの様々な添加剤の例を、WO2009/040571およびWO2009/109780の中に見つけることができる。好ましい添加剤は、二酸化セリウム(セリア)である。
【0073】
発明のさらなる態様は、発明の触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリおよび触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリの片面または両面上のシールコンポーネントに付けられたサブガスケットを備えるサブガスケット型の触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリを提供する。触媒コーティング型の膜シールアセンブリの端部に追加の強度および堅牢性を与えるように、サブガスケットを設計する。サブガスケットは、典型的にはポリマー材料であり、シールコンポーネント材料と同じ材料から選択することができるまたはサブガスケットとしてのポリマーの用途のために特に選択した異なるタイプのポリマーとすることができる。サブガスケットを、シールコンポーネントを付けるために説明したものと類似の方法を使用して触媒コーティング型の膜シールアセンブリのシールコンポーネントの上にコーティングすることができる、またはシールコンポーネントの上方に事前に形成した額縁フィルムとして付けることができる。サブガスケットを、触媒コーティング型の膜シールアセンブリの片面または両面に付けることができるが、両面に付けるときには、キャリア材料の次に続く除去で実現できるに過ぎない。
【0074】
接着剤層を、触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリへのサブガスケットの接着を助けるために使用することができる。接着剤層を、サブガスケットの不可欠な部分とすることができ、その結果、サブガスケットおよび接着剤層を単一の工程で付ける、または接着剤層を、触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリに最初に付け、サブガスケットを接着剤層に引き続いて付けることができる。
【0075】
発明のさらなる態様は、触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリ、触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリの片面または両面上のガス拡散層、および触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリの片面または両面に付けられたサブガスケットを備えるサブガスケット型の強化型膜シール電極アセンブリを提供する。
【0076】
発明は、本明細書において前に説明したような強化型膜シールアセンブリ、触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリまたは強化型膜シール電極アセンブリを備える燃料電池をさらに提供する。一実施形態では、燃料電池は、PEMFCである。
【0077】
発明の実施形態を、ここまで単一のまたは個別の強化型膜シールアセンブリ、触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリまたは強化型膜シール電極アセンブリに関して説明してきている。しかしながら、発明の教示を、多数の強化型膜シールアセンブリ、触媒コーティング型の強化型膜シールアセンブリおよび強化型膜シール電極アセンブリの連続したロールにもやはり適用することができる。このような製品を、同時係属中の英国特許出願に記載されたものに類似の方法を使用して作ることができる。
【0078】
本明細書において上に説明した実施形態のすべては、プロトン交換膜(PEM)に基づく電気分解装置での使用に同等に当てはまる。これらのPEM電気分解装置では、電圧を膜電極アセンブリの両端に印加し、その結果、装置に供給した水を、それぞれカソードおよびアノードのところで水素および酸素へと分裂させる。MEAは、アノードのところでのIrおよびRu系の材料などのPEM燃料電池とは異なる触媒コンポーネントを必要とすることがあるが、そうでなければ、燃料電池用のMEAに構成が非常に類似している。