特許第6675377号(P6675377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6675377
(24)【登録日】2020年3月12日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】ロボットアームを用いた地盤の掘削方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/00 20060101AFI20200323BHJP
【FI】
   E21B7/00 Z
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-500341(P2017-500341)
(86)(22)【出願日】2015年7月8日
(65)【公表番号】特表2017-519922(P2017-519922A)
(43)【公表日】2017年7月20日
(86)【国際出願番号】FR2015051884
(87)【国際公開番号】WO2016005701
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2018年5月21日
(31)【優先権主張番号】1456602
(32)【優先日】2014年7月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】509167338
【氏名又は名称】ソレタンシュ フレシネ
【氏名又は名称原語表記】SOLETANCHE FREYSSINET
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベンチカ ラレド
(72)【発明者】
【氏名】ペルペザト ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ベジ ロトフィ
(72)【発明者】
【氏名】カスカリノ サーラ
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−139662(JP,A)
【文献】 特開2004−100260(JP,A)
【文献】 特開2014−125821(JP,A)
【文献】 特開2005−220627(JP,A)
【文献】 米国特許第04785892(US,A)
【文献】 特開昭61−172919(JP,A)
【文献】 特開2000−337079(JP,A)
【文献】 米国特許第04364540(US,A)
【文献】 特開昭55−129589(JP,A)
【文献】 国際公開第02/103162(WO,A1)
【文献】 特表2004−506825(JP,A)
【文献】 特表2003−502532(JP,A)
【文献】 特開2012−241379(JP,A)
【文献】 特開2013−151814(JP,A)
【文献】 特開2008−019661(JP,A)
【文献】 特開2000−104474(JP,A)
【文献】 特開2008−255603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00−49/10
E02F 3/28−3/413
E02D 7/00−13/10
B25J 1/00−21/02
E21D 1/00−9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削方向(D)に掘削する方法であって、
第一端(40a、42a)と前記第一端と反対側の第二端(40b、42b)とをそれぞれ有する第一、第二掘削チューブ(40、42)であって、前記第一掘削チューブ(40)の前記第一端(40a)が前記第二掘削チューブ(42)の前記第二端(42b)に固定可能である第一、第二掘削チューブ(40、42)を少なくとも準備するステップと、
関節を有するモータ駆動のアームであって、少なくとも三つの関節点を有し、スライド部を有さず、グリッパ部材(30)を有する、マニピュレータアーム(12)を設けるステップと、
前記グリッパ部材(30)を移動させることで前記第一掘削チューブ(40)を取り出し、前記グリッパ部材(30)により前記第一掘削チューブ(40)の前記第一端(40a)保持するステップと、
前記グリッパ部材(30)を移動させることで、前記第一掘削チューブを前記掘削方向(D)に合わせるステップと、
前記グリッパ部材(30)を前記掘削方向に移動させることで、前記第一掘削チューブ地盤内へと駆動させるステップと、
前記第一掘削チューブが地盤内へと駆動された後、前記グリッパ部材(30)から前記第一掘削チューブを離すステップと、
前記グリッパ部材(30)を移動させることで前記第二掘削チューブ(42)を取り出し、前記グリッパ部材(30)により前記第二掘削チューブ(42)の前記第一端(42a)保持するステップと、
前記グリッパ部材(30)を移動させて、前記第二掘削チューブの前記第二端を前記第一掘削チューブの前記第一端と対向する位置に移動させるステップと、
前記第二掘削チューブ(42)の前記第二端(42b)を前記第一掘削チューブ(40)の前記第一端(40a)に締結するステップと、
前記グリッパ部材(30)を前記掘削方向に移動させることで、前記第一掘削チューブに締結された前記第二掘削チューブを地盤内へと駆動させるステップと、を有する掘削方法。
【請求項2】
前記第一掘削チューブ(40)は、前記掘削方向に沿った方向に押し出されつつ回転させられることにより、地盤内へと駆動される、請求項1に記載の掘削方法。
【請求項3】
前記第一掘削チューブ(40)は、前記掘削方向に沿った方向に押し出されつつ振動させられることにより、地盤内へと駆動される、請求項1または2に記載の掘削方法。
【請求項4】
前記掘削方向と略平行なガイド軸(A)を有する維持部材(50)を有し、前記維持部材を掘削される地盤と面するように配置し、前記第一掘削チューブの前記第二端を前記維持部材に挿入した後に前記第一掘削チューブを地盤内へと駆動させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の掘削方法。
【請求項5】
前記維持部材(50)が事前に地盤に固定される、請求項4に記載の掘削方法。
【請求項6】
前記第一掘削チューブ(40)を地盤内へと駆動させる際に、前記維持部材(0)の位置および/または方向を調節することで、前記第一掘削チューブ(40)を前記掘削方向に合った状態に維持する、請求項4又は5に記載の掘削方法。
【請求項7】
前記グリッパ部材(30)により前記第一掘削チューブ(40)が地盤内へと駆動された後、前記第一掘削チューブ(40)の軸方向の移動を阻止するように阻止装置(56)を動作させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の掘削方法。
【請求項8】
前記請求項のいずれかに記載の掘削方法によって前記掘削方向(D)に沿って地盤(S)を掘削する装置(10)であって、
第一端(40a、42a)と前記第一端と反対側の第二端(40b、42b、44b)とをそれぞれ有する第一、第二掘削チューブ(40、42)であって前記第一掘削チューブ(40)の前記第一端(40a)が前記第二掘削チューブ(42)の前記第二端(42b)固定可能である、少なくとも第一、第二掘削チューブ(40、42)と、
少なくとも三つの関節点を有し、スライド部を有さない、関節を有するモータ駆動のマニピュレータアーム(12)であって、前記第一、第二掘削チューブの一つをその第一端で保持するように構成されたグリッパ部材(0)と、前記第一掘削チューブ(40)を前記掘削方向(D)に合わせるアラインメント手段(70)と、前記グリッパ部材を前記掘削方向(D)に移動させることで、前記第一掘削チューブ(40)地盤(S)内へと駆動されるように前記マニピュレータアームを動作させる、アクチュエータ手段(60)と、前記第二掘削チューブ(42)の前記第二端(4b)を前記第一掘削チューブ(40)の前記第一端(40a)に締結する、締結手段(80)と、前記グリッパ部材を前記掘削方向に移動させることで、前記第一掘削チューブに締結された前記第二掘削チューブを地盤内へと駆動させる掘削手段と、を備えたマニピュレータアーム(12)と、
前記掘削方向(D)と略平行な軸を有する維持部材(50)であって、前記第一、第二掘削チューブ(40、42)の一つが貫通可能に構成された維持部材(50)と、を有する掘削装置。
【請求項9】
前記維持部材(50)が、地盤に対する前記第一掘削チューブの前記掘削方向に沿った移動を阻止する、制御可能な阻止装置(56)をさらに有する、請求項8に記載の掘削装置。
【請求項10】
前記維持部材(50)は、前記第一掘削チューブ(40)が前記維持部材に貫通しているときに、少なくとも前記第一掘削チューブ(40)を回転させる回転ヘッド(55)をさらに有する、請求項8または9に記載の掘削装置。
【請求項11】
前記マニピュレータアーム(12)が、少なくとも前記第一掘削チューブ(40)を回転および/または振動させるアクチュエータヘッド(32)をさらに有する、請求項〜10のいずれか1項に記載の掘削装置。
【請求項12】
前記グリッパ部材(30)の位置と方向を三次元的に決定する測定手段(69)をさらに有し、前記アラインメント手段が前記測定手段からの測定データを利用する、請求項〜11のいずれか1項に記載の掘削装置。
【請求項13】
少なくとも一つの掘削パイプをさらに有し、地盤に挿入された前記第一掘削チューブ内に前記掘削パイプが挿入されるように前記グリッパ部材が前記掘削パイプを保持する、請求項〜12のいずれか1項に記載の掘削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地盤工学の分野に関連し、特に、いかなる地形も含む地盤の掘削方法に関連する。掘削は特に水平、垂直、あるいは斜めに行われる。
【背景技術】
【0002】
従来の地盤掘削機は、掘削チューブの移動をガイドする大きなスライド部を有している。このようなスライド部は、図12が例示するように、移動する掘削チューブの移動のガイドおよびチューブ自体の保持を行うが、これに関して、掘削部は通常、端と端とで互いに接続された複数の掘削チューブからなる。このため、スライド部は、各掘削チューブと比較して非常に長く、一般的に約5メートルの長さを有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
スライド部の使用においてはいくつかの欠点がある。
【0004】
まず、スライド部が各掘削チューブと比較して非常に長いガイドを形成することから、スライド部は非常に重い。特に、スライド部は、各掘削チューブの重量だけでなく、掘削ヘッドを含めた自重、さらには掘削に関連する力に耐えることが求められる。これにより、スライド部は非常に重く、また特に嵩高である。
【0005】
スライド部の重量と嵩を考慮して、地盤掘削機には、複雑で重く嵩高なスライド部を移動、操縦する機構を設けることが求められる。
【0006】
さらに、キャリアは、移動・操縦機構、スライド部、第一のチューブを同時に運搬可能である寸法でなければならず、よって、強力な、すなわち嵩高で高価なキャリアを使用する必要がある。
【0007】
本発明の目的は、より容易かつ省スペースな地盤掘削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これに関して、本発明は、地盤を掘削方向に掘削する方法であって、
第一端と前記第一端と反対側の第二端とをそれぞれ有する第一、第二掘削チューブであって、前記第一掘削チューブの前記第一端が前記第二掘削チューブの前記第二端に固定可能である第一、第二掘削チューブを少なくとも準備するステップと、
関節を有するモータ駆動のアームであって、少なくとも三つの関節点を有し、スライド部を有さず、グリッパ部材を有する、マニピュレータアームを設けるステップと、
前記グリッパ部材を移動させることで前記第一掘削チューブを取り出し、前記グリッパ部材により前記第一掘削チューブの前記第一端保持するステップと、
前記グリッパ部材を移動させることで前記第一掘削チューブを前記掘削方向に合わせるステップと、
前記グリッパ部材を前記掘削方向に移動させることで、前記第一掘削チューブ地盤内へと駆動させるステップと、
前記第一掘削チューブが地盤内へと駆動された後、前記グリッパ部材から前記第一掘削チューブを離すステップと、
前記グリッパ部材を移動させることで前記第二掘削チューブを取り出し、前記グリッパ部材により前記第二掘削チューブの前記第一端保持するステップと、
前記グリッパ部材を移動させて、前記第二掘削チューブの前記第二端を前記第一掘削チューブの前記第一端と対向する位置に移動させるステップと、
前記第二掘削チューブの前記第二端を前記第一掘削チューブの前記第一端に締結するステップと、
前記グリッパ部材を前記掘削方向に移動させることで、前記第一掘削チューブに締結された前記第二掘削チューブを地盤内へと駆動させるステップと、を有する掘削方法を提供する。
【0009】
本発明において、「掘削チューブ」は掘削パイプを包含する。掘削パイプの直径は掘削チューブの直径より小さくてもよい。
【0010】
マニピュレータアームを動作させることで、第一、第二掘削チューブを保持して、掘削方向に合わせ、互いに対して固定して、管状の長大な掘削機構を形成し、この機構を地盤に挿入する。
【0011】
好ましくは、関節を有するマニピュレータアームを動作させてグリッパ部材を移動させる動作は、マニピュレータアームを少なくとも一箇所で変形させることを含む。換言すると、グリッパ部材はマニピュレータアームが変形することで、掘削方向に移動する。
【0012】
さらに、アラインメントを行うステップは、掘削チューブの長軸を掘削方向に合わせることを含む。
【0013】
グリッパ部材により、例えば、挟み込むようにグリッパ部材を移動させる、またはネジ止めするようにグリッパ部材を回転させることで、第二掘削チューブを第一掘削チューブに締結する。
【0014】
好ましくは、第一掘削チューブとの締結以前に、第二掘削チューブも掘削方向に合わせられる。
【0015】
好ましくは、マニピュレータアームは、グリッパ部材を掘削方向と一致した直線経路に沿って配置し移動させるだけの自由度を持った、関節を有するロボットであり、マニピュレータアームはアームを変形、移動させるように動作する。
【0016】
本発明では、掘削チューブはスライド部を必要とすることなく地盤に挿入可能であり、マニピュレータアームが掘削チューブを掘削方向に合わせる。
【0017】
掘削方向に沿って押し出す力は、グリッパ部材を掘削方向に沿って移動させることによって得られる。より正確には、マニピュレータアームを変形により動作させ、グリッパ部材を掘削方向に移動させることで、第一掘削チューブを掘削方向に押し出す。
【0018】
第一掘削チューブを地盤内へと駆動させるために、グリッパ部材は第一掘削チューブを掘削方向に沿って押し出す。
【0019】
本発明では、地盤の掘削方向は、水平、垂直、または斜めでもよい。本発明の方法は、略垂直な壁の掘削に特に用いられる。
【0020】
好適な実施形態において、第一、第二掘削チューブは、マニピュレータアームの近辺に設けられた少なくとも一つの保管ゾーンに保管される。グリッパ部材は、保管ゾーンから第一、第二掘削チューブを連続して取り出す。本発明では、掘削チューブを整列させて保管する必要がなく、マニピュレータアームは、掘削チューブを配置する前に、向きに関係なく掘削チューブをその一端で保持するように構成されている。
【0021】
本発明の範囲内において、本発明の方法は、二つ以上の掘削チューブからなる管状掘削機構が地盤を掘削するように繰り返し実行されてもよい。
【0022】
好ましくは、掘削作業の後、グリッパ部材を管状の掘削機構を引き抜くのに用いて、掘削チューブを切り離して地盤から抜き出し、最終的には保管ゾーンに戻す。
【0023】
よって、本発明の掘削方法は、付加的かつ専用のツールが掘削チューブを取り出してスライド部に配置することを一般的に必要とする従来の方法より、早くかつ簡単に実施可能である。
【0024】
好ましくは、第一掘削チューブは、掘削方向に沿った方向に押し出されつつ回転させられることにより、地盤内へと駆動される。
【0025】
好ましくは、第一掘削チューブは、掘削方向に沿った方向に押し出されつつ振動させられることにより、地盤内へと駆動される。
【0026】
必須ではないが好ましくは、第一掘削チューブを振動させることと回転させることを組み合わせる。
【0027】
好適な実施形態において、掘削方向と略平行な軸を有する維持部材を設け、維持部材を掘削される地盤と面するように配置し、第一掘削チューブの第二端を維持部材に挿入した後に第一掘削チューブが地盤内へと駆動される。
【0028】
維持部材の機能は、例えば第一掘削チューブが第二掘削チューブに締結される際に第一掘削チューブを地盤内に保持するために、第一掘削チューブの移動を阻止することである。
【0029】
好適には、維持部材は事前に地盤に固定される。一実施形態において、維持部材は掘削される壁に固定される。
【0030】
必須ではないが好ましくは、維持部材は第一掘削チューブのガイドを容易にするガイド手段を有する。
【0031】
一変形例において、維持部材は掘削される壁に面するが固定されないように構成される。
【0032】
好ましくは、第一掘削チューブが地盤内へと駆動されるとき、必要であれば維持部材の位置および/または方向を調節することで、第一掘削チューブを掘削方向に合った状態に維持する。
【0033】
第一掘削チューブの整合状態をモニタリングすることにより、掘削経路を修正することができる。グリッパ部材の位置および/または方向を定期的に、好ましくはリアルタイムで修正することで、掘削中に掘削経路を定期的に修正する。
【0034】
本発明は、さらに、前記掘削方法によって掘削方向に沿って地盤を掘削する装置であって、
第一端と前記第一端と反対側の第二端とをそれぞれ有する第一、第二掘削チューブであって前記第一掘削チューブの前記第一端が前記第二掘削チューブの前記第二端固定可能である、少なくとも第一、第二掘削チューブと、
少なくとも三つの関節点を有し、スライド部を有さない、関節を有するマニピュレータアームであって、前記第一、第二掘削チューブの一つをその第一端で保持するように構成されたグリッパ部材と、前記第一掘削チューブを前記掘削方向に合わせるアラインメント手段と、前記グリッパ部材を前記掘削方向(D)に移動させることで、前記第一掘削チューブ地盤内へと駆動されるように前記マニピュレータアームを動作させる、アクチュエータ手段と、前記第二掘削チューブの前記第二端を前記第一掘削チューブの前記第一端に締結する、締結手段と、前記グリッパ部材を前記掘削方向に移動させることで、前記第一掘削チューブに締結された前記第二掘削チューブを地盤内へと駆動させる掘削手段と、を備えたマニピュレータアーム
前記掘削方向と略平行な軸を有する維持部材であって、前記第一、第二掘削チューブの一つが貫通可能に構成された維持部材と、を有する掘削装置を開示する。
【0035】
上記のように、マニピュレータアームは変形可能であり、グリッパ部材を特に直線方向に沿って操縦し移動させるだけの複数段階の自由度を持っている。マニピュレータアームは、よって、変形および/または移動するように動作され、この動作は回転動作であってもよい。
【0036】
第一、第二掘削チューブの一つを地盤内へと駆動するアクチュエータ手段は、掘削チューブをその第一端で保持したグリッパ部材を掘削方向に沿って移動させるように構成されている。このために、グリッパ部材は掘削方向に沿って掘削チューブを押し出す。マニピュレータアームは、好ましくは、掘削方向に沿った押し出す力をグリッパ部材に付与するアームを有する。
【0037】
本発明の好適な実施形態において、マニピュレータアームは掘削チューブをガイドする長いスライド部を有さない。換言すると、マニピュレータアームは、掘削チューブと略同じ長さか掘削チューブより長い、図12に示すようなスライド部を有さない。
【0038】
好ましくは、グリッパ部材による第一掘削チューブの押し出しは、掘削の実行中に決定、好ましくは修正される。
【0039】
さらに好ましくは、第一掘削チューブが貫入する速度は、掘削の実行中に決定、好ましくは修正される。
【0040】
このために、マニピュレータアームは、掘削チューブの貫入速度と掘削チューブに掛ける力を決定するための変位センサと力センサとを有する。これらの値は定期的に、好ましくはリアルタイムで目標値と比較される。これらの値を修正すべく、オペレータは押出力またはグリッパ部材の移動速度を変更することができる。好ましい変形例において、修正は自動的に行われる。
【0041】
アラインメント手段は、掘削チューブの長軸を掘削方向に合わせる。
【0042】
好ましくは、装置は、グリッパ部材の位置と方向を三次元的に決定する測定手段をさらに有し、前記アラインメント手段が測定手段からの測定データを利用する。
【0043】
アラインメント手段はまた、掘削中に掘削チューブの経路を修正して、掘削経路が掘削中に直線を保つようにすることができる。
【0044】
測定手段は、定期的に、好ましくはリアルタイムでグリッパ部材の位置と方向を決定して、グリッパ部材によって保持される掘削チューブの位置と方向を決定する。
【0045】
さらに、好ましくは、マニピュレータアームの経路、速度、力がサーボ制御される。
【0046】
または、アラインメント手段は、好ましくは、掘削方向を規定するレーザー光線に追従するのに適したセンサを有する。
【0048】
好ましくは、維持部材が、地盤に対する第一掘削チューブの掘削方向に沿った移動を阻止する、制御可能な阻止装置をさらに有する。
【0049】
例えば、阻止装置は、グリッパ部材が例えばクランプやネジ止めで第二掘削チューブを第一掘削チューブに固定する際に、第一掘削チューブを地盤に固定するように動作される。
【0050】
阻止装置は、さらに、掘削チューブを抜き取る段階において、グリッパ部材が第二掘削チューブを第一掘削チューブから離す際に、第一掘削チューブを固定するように動作される。
【0051】
有利な実施形態において、維持部材が、第一掘削チューブが維持部材に貫通しているときに、少なくとも第一掘削チューブを回転させる回転ヘッドをさらに有する。
【0052】
この実施形態では、グリッパ部材は掘削チューブの掘削方向にのみ押出力を掛け、また維持部材の回転ヘッドが第一掘削チューブを回転させる。
【0053】
好ましくは、マニピュレータアームが、少なくとも第一掘削チューブを回転および/または振動させるアクチュエータヘッドをさらに有する。
【0054】
一実施形態において、グリッパ部材は前記アクチュエータヘッドを有する。
【0055】
別の実施形態において、前記装置は少なくとも一つの掘削パイプをさらに有し、地盤に挿入された第一掘削チューブ内に掘削パイプが挿入されるようにグリッパ部材が掘削パイプを保持する。
【0056】
変形例において、掘削チューブを第一掘削チューブに挿入する前に、第一掘削チューブがまず地盤に挿入される。別の変形例において、機構を地盤に挿入する前に、掘削チューブが第一掘削チューブに挿入される。
【0057】
最後に、望ましい実施形態において、マニピュレータアームは、少なくとも三つの関節点を有する、関節付きのロボットである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1図1は、掘削作業の開始前の本発明の構成を示す。
図2図2は、第一掘削チューブを保持するグリッパ部材のステップを示す。
図3図3は、第一掘削チューブを掘削方向に合わせるステップを示す。
図4図4は、第一掘削チューブを地盤内へと駆動するステップを示す。
図5図5は、グリッパ部材によって保持されたあとの第二掘削チューブを移動させるステップを示す。
図6図6は、第二掘削チューブを第一掘削チューブに締結するステップを示す。
図7図7は、第一掘削チューブに締結された第二掘削チューブを地盤内へと駆動するステップを示す。
図8図8は、回転アクチュエータヘッドを有する維持部材を有する構成である変形実施形態を示す。
図9図9は、維持部材が掘削される壁の前方に配置された、別の変形例を示す。
図10図10は、掘削方向が水平方向である場合に維持部材が使用される実施形態を示す。
図11図11は、掘削方向が垂直方向である場合に維持部材が使用される実施形態を示す。
図12図12は、従来の掘削装置の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、本発明の一実施形態における、地盤Sを掘削する装置10を示す。後で詳述するように、この装置は特に、水平な掘削方向Dに沿って垂直壁Pにボーリング孔を開けることに用いられる。
【0060】
本発明の範囲内において、壁Pは異なる構成であってもよく、また掘削方向Dは水平方向に対して傾いている、例えば垂直であってもよい。
【0061】
この装置10は、本例では複数の動作軸X1、X2、X3、X4、X5を有するロボットである、関節型モータ駆動マニピュレータアーム12を有する。このマニピュレータアームには三つの関節点がある。
【0062】
より正確には、マニピュレータアームは、垂直ピボット軸X1を中心に回転可能な第一部分14と、ピボット軸X2を中心に第一部分14に対して回転可能な第二部分16と、ピボット軸X3を中心に第二部分16に対して回転可能な第三部分18と、第三部分18に対して接合された第四部分20とを有する。
【0063】
従来技術とは異なり、マニピュレータアームはスライド部を有さない。
【0064】
マニピュレータアーム12は、第四部分20に接合されたグリッパ部材30をさらに有する。図示されているように、グリッパ部材はマニピュレータアームの端部に設けられている。マニピュレータアーム12は、様々な部分を互いに関連して移動させることでマニピュレータアームを変形して、グリッパ部材30を三次元的に操縦・移動する、アクチュエータ手段(図示せず)を有する。このようなマニピュレータアームは、特にクーカやファナックのようなメーカーによって製造されている。しかし、このようなマニピュレータアームを本発明のように地盤掘削に用いることは、従来技術には開示されていない。
【0065】
本例では、関節および様々な部分が図式的に示される。マニピュレータアームは、移動可能なグリッパ部材を直線的に、特に掘削方向Dに移動させるように構成されている。
【0066】
本例において装置10は複数の掘削チューブを有する。本例における掘削チューブは、長さLを有する第一掘削チューブ40と、第二掘削チューブ42と、第三掘削チューブ44とである。第一、第二、第三掘削チューブそれぞれは、第一端40a、42a、44aと、第一端と反対側の第二端40b、42b、44bとを有する。掘削チューブそれぞれは細長形状を有する。これらのチューブは、端と端とで固定されて長大な管状掘削機構を形成するように設計されている。本発明の範囲内において、これらのチューブは掘削パイプ形状であってもよい。
【0067】
マニピュレータアームは、図12の従来技術の装置のような、掘削チューブをガイドする長いスライド部を有さない。
【0068】
図1から分かるように、第一掘削チューブ40の第二端40bは、本例ではドリルビットである掘削ツール41を担持する。
【0069】
さらに、第二掘削チューブ42の第二端42bは、第一掘削チューブ40の第一端40aに固定可能である。本例では、第一、第二掘削チューブはネジ止めにより互いに対して固定されている。
【0070】
グリッパ部材30は、第一、第二、第三掘削チューブの一つをその第一端で保持するように構成されている。
【0071】
図2の例では、グリッパ部材30は、第一掘削チューブ40をその第一端40aで保持するように構成されている。このために、グリッパ部材30は、第一掘削チューブ40の第一端40aに締結されるクランプ形成手段31を有する。第一掘削チューブ40は、これにより、グリッパ部材30の延長部を構成する。
【0072】
グリッパ部材30は、本例では第一掘削チューブ40に回転及び振動を伝える、アクチュエータヘッド32を有する。
【0073】
本例において、装置10はさらに、掘削方向Dと略平行な軸Aを有する維持部材50を有する。
【0074】
図1の例において、維持部材50は固定手段52、54によって壁Pに確実に固定される。
【0075】
維持部材50は、第一、第二、第三掘削チューブの一つが貫通可能に形成されたスリーブ形状を有する。図1の例において、維持部材50は、後で詳述する制御可能な阻止装置56をさらに有する。これにより、第一掘削チューブが、掘削方向Dに沿った方向に地盤に対して移動しないようにすることができる。
【0076】
マニピュレータアーム12は、掘削方向Dに沿って第一掘削チューブ40を地盤S内へと駆動するアクチュエータ手段60をさらに有する。本例において、この第一掘削チューブを駆動するアクチュエータ手段は、マニピュレータアームを構成する部分14、16、18、20と、これらの部分を互いに対して関連して移動させて、グリッパ部材を直線方向に押し出すアクチュエータ手段とからなる。この押し出す動作は掘削方向Dの方向に作用する。
この第一掘削チューブ40を地盤S内へと駆動するステップは、図3、4に示されている。
【0077】
マニピュレータアームは、第一掘削チューブ40を掘削方向Dに合わせるアラインメント手段70をさらに有する。本例のアラインメント手段はマニピュレータアームとアクチュエータ手段とを構成する部分からなり、第一掘削チューブの長軸を掘削方向Dに合わせることができる。
【0078】
前記装置は、グリッパ部材30の位置と方向を三次元的に決定する測定手段69(図4参照)をさらに有する。本例におけるこれらの測定手段は、位置と方向を三次元的に検知する一つ以上のジャイロやその他のセンサからなる。
【0079】
アラインメント手段は、測定手段69からの測定データを利用して、第一掘削チューブ40の長軸を掘削方向Dに合わせる。
【0080】
図3が示すように、第一掘削チューブ40を保持した後、グリッパ部材30は、掘削ツール41が維持部材50に係合するように移動する。次に、マニピュレータアームは、グリッパ部材30に対して掘削方向Dに直線的に押し出す力がかかるように動作され、これにより第一掘削チューブは地盤S内へと駆動される。
【0081】
グリッパ部材30を介して第一掘削チューブ40に直線的に押し出す力がかかる際に、アクチュエータヘッド32は、第一掘削チューブ40が回転するように動作される。
【0082】
本例では、アクチュエータヘッドは、第一掘削チューブ40を振動させる振動発生装置をさらに有する。
【0083】
換言すると、図4に示すように、第一掘削チューブは掘削方向Dに沿った方向に押し出されつつ回転及び振動させられることにより、地盤内へと駆動される。
【0084】
第一掘削チューブ40が地盤S内へと駆動された後、阻止装置56は、第一掘削チューブ40の軸方向の移動を阻止するように動作される。グリッパ部材30は第一掘削チューブ40の第一端40aを離して、第二掘削チューブと接続し、第二掘削チューブをその第一端42aで保持する。
【0085】
次に、マニピュレータアームは、第二掘削チューブ42の長軸が掘削方向Dに合うように動作される。
【0086】
次に、グリッパ部材30が移動することで、第二掘削チューブ42bの第二端42bが第一掘削チューブ40の第一端40aと対向する位置に移動する。次に、アクチュエータヘッド32が掘削チューブ42を回転させることで、第二掘削チューブの第二端と、阻止装置56によって地盤で遮断された状態の第一掘削チューブ40の端部とがネジ止めされ、これによって第二掘削チューブ42が第一掘削チューブ40にネジ止め固定される。
【0087】
マニピュレータアーム12は、よって、第二掘削チューブ42の第二端42bを第一掘削チューブ40の第一端40aに締結する締結手段80をさらに有する。本例では、この手段は、特にグリッパ部材30のアクチュエータヘッドを含む。
【0088】
第二掘削チューブ42が第一掘削チューブ40に固定された後、より正確には、第二掘削チューブの第二端が第一掘削チューブの第一端に固定された後、阻止装置56が解除されて、第一掘削チューブ40が掘削方向Dに沿って自由に移動可能となる。次に、グリッパ部材30が掘削方向Dに沿って移動して、第一掘削チューブに締結された第二掘削チューブを地盤内へと駆動する。この移動は掘削方向Dに沿った方向の移動である。
【0089】
同様に、グリッパ部材30の移動中に第二掘削チューブ42を回転させ、これによって第一掘削チューブ4が回転する。これに加えて、第二掘削チューブを振動させる。このステップを図7に示す。
【0090】
このように、本発明の掘削方法の実施は、図1〜7に示すように、以下のステップを有している。
【0091】
第一端40a、42aと、第一端と反対側の第二端40b、42bとを有する第一、第二掘削チューブ40、42を設け、第二掘削チューブの第二端は第一掘削チューブの第一端を固定するのに適切であり、
移動可能なグリッパ部材30を有するマニピュレータアーム12を設け、
グリッパ部材30を用いて、第一掘削チューブ40をその第一端40aで保持し、
マニピュレータアーム12を用いて、詳細にはグリッパ部材30の位置を調整することで、第一掘削チューブを掘削方向Dに合わせ、
グリッパ部材30を掘削方向に移動させることで第一掘削チューブ40を回転させつつ、第一掘削チューブ40を地盤内へと駆動し、
第一掘削チューブ40を地盤内へと駆動した後、グリッパ部材30から第一掘削チューブを離し、
グリッパ部材30を用いて、第二掘削チューブ42をその第一端42aで保持し、
次に、グリッパ部材30を移動させて、第二掘削チューブの第二端を第一掘削チューブの第一端と対向する位置に移動させ、
アクチュエータヘッド32を回転させることで第二掘削チューブ42の第二端42bを第一掘削チューブ40の第一端40aにネジ止め固定し、
グリッパ部材30を掘削方向Dに移動させることで、第一掘削チューブに固定された第二掘削チューブを地盤内へと駆動する。
【0092】
さらに、第一掘削チューブ40を地盤内へと駆動する際に、また同様に第二掘削チューブを地盤内へと駆動する際に、定期的に実際の掘削経路を望ましい掘削方向Dと比較することで、また必要であればグリッパ部材30の三次元的空間における位置と方向を調節して経路を修正することで、第一、第二掘削チューブが掘削方向と合った状態に保たれる。
【0093】
図8は、維持部材50が、第一掘削チューブ40が維持部材50と協働しているときに第一掘削チューブ40を回転させる、回転ヘッド55をさらに有する実施形態を示す。換言すると、図8の実施形態では、回転ヘッドはグリッパ部材30ではなく維持部材50に設けられている。
【0094】
よって、回転ヘッド55は、第一掘削チューブ40を地盤内へと駆動するようにグリッパ部材30を移動させているとき、第一掘削チューブ40を回転させるように構成されていることが分かる。
【0095】
図9の変形例において、維持部材50は掘削される壁Pに面するが、 壁Pに固定されないように構成されている。維持部材50は、スタンド57によって地盤の前に立っている。
【0096】
図10では、掘削時の維持部材50は水平になっている。本例において、維持部材50は板部57上に設けられた油圧顎部56を有している。
【0097】
図11では、変形例の維持部材50は掘削時において垂直になっている。本例において、維持部材50は、摩擦によって第一掘削チューブ40を保持する、折りたたみ可能なギロチンシステム59を有している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12