(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6675416
(24)【登録日】2020年3月12日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】切削インサート及びフライス工具
(51)【国際特許分類】
B23C 5/20 20060101AFI20200323BHJP
B23C 5/06 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
B23C5/20
B23C5/06 A
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-549660(P2017-549660)
(86)(22)【出願日】2016年3月3日
(65)【公表番号】特表2018-509306(P2018-509306A)
(43)【公表日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】EP2016054550
(87)【国際公開番号】WO2016150672
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2019年1月16日
(31)【優先権主張番号】15160853.6
(32)【優先日】2015年3月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】オプラシク, アミル
(72)【発明者】
【氏名】ビディン, レイフ
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−091153(JP,A)
【文献】
特開2014−083667(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/046121(WO,A1)
【文献】
特開2016−163911(JP,A)
【文献】
特開2015−226960(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/065393(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/00 − 5/28
B23P 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライス工具のための切削インサート(2)であって、前記切削インサート(2)が、インサート本体(4)の長手方向に沿って延在する中央長手方向軸(6)と前記中央長手方向軸(6)を含む仮想中央平面(8)とを有する前記インサート本体(4)を備え、前記インサート本体(4)が、概して、上面(10)、底面(12)、及び前記上面(10)と前記底面(12)との間で延在する周面(14)によって画定され、前記上面(10)と前記底面(12)が、実質的に前記中央平面(8)の両側で前記長手方向において延在し、
前記インサート本体(4)が、前記上面(10)において第1のすくい面(16a)を備え、前記底面(12)が第2のすくい面(16b)を備え、
前記インサート本体(4)が、前記周面(14)において、前記インサート本体(4)の両側で前記長手方向において延在する第1のラジアル側面(18a)と第2のラジアル側面(18b)を備え、且つ、前記インサート本体(4)の両側で前記長手方向を横断して延在する第1のアキシャル側面(20a)と第2のアキシャル側面(20b)を備え、
前記第1のアキシャル側面(20a)が、第1のリリーフ面(22a)、第2のリリーフ面(22b)、及び第1の凹部(24a)を備え、前記第1のリリーフ面(22a)が、前記第1のすくい面(16a)に沿って延在し、前記第2のリリーフ面(22b)が、前記第2のすくい面(16b)に沿って延在し、
前記第1の凹部(24a)が、前記第1と第2のリリーフ面(22a、22b)の間で延在し、第1の底面(26a)を備え、
前記インサート本体(4)が、少なくとも第1の切れ刃(30a)を更に備え、前記第1の切れ刃(30a)が、前記第1のすくい面(16a)と前記第1のラジアル側面(18a)及び前記第1のアキシャル側面(20a)の両方との間の交差部分において縁部分に沿って延在し、
前記第1のリリーフ面(22a)、前記第2のリリーフ面(22b)、及び前記第1の凹部(24a)の各ポイントが、前記第1のラジアル側面(18a)を向く第1のサイドビュー又は前記第2のラジアル側面(18b)を向く第2のサイドビューの何れかから視認できるように、且つ、前記インサート本体(4)が、前記第1又は第2のラジアル側面(18a、18b)のうちの何れかの近くの外側部分においてよりも、前記中央長手方向軸(6)の近くの中央部分において、前記長手方向に沿って長くなるように、前記第1のリリーフ面(22a)、前記第2のリリーフ面(22b)、及び前記第1の凹部(24a)が配置されていることを特徴とする、切削インサート(2)。
【請求項2】
前記第1のリリーフ面(22a)、前記第2のリリーフ面(22b)、及び前記第1の底面(26a)の各々が、2つの主表面(28a〜28f)を備える、請求項1に記載の切削インサート(2)。
【請求項3】
前記インサート本体(4)が、前記第1又は第2のラジアル側面(18a、18b)のうちの何れかの近くの前記主表面(28a〜28f)のうちの何れかの外側部分におけるよりも、前記中央長手方向軸(6)の近くの前記主表面(28a〜28f)のうちの前記何れかの中央部分において、前記長手方向に沿って長くなるように、前記第1のリリーフ面(22a)、前記第2のリリーフ面(22b)、及び前記第1の底面(26a)の前記2つの主表面(28a〜28f)の各々の間の角度(η)が、鈍角である、請求項2に記載の切削インサート(2)。
【請求項4】
前記第1の底面(26a)の前記2つの主表面(28e、28f)が、平坦な表面である、請求項2又は3に記載の切削インサート(2)。
【請求項5】
前記第1と第2のリリーフ面(22a、22b)の各々の前記主表面(28a〜28d)のうちの少なくとも1つが、凸形状である、請求項2から4のいずれか一項に記載の切削インサート(2)。
【請求項6】
前記インサート本体(4)が、前記第1の凹部(24a)の近隣よりも、前記第1の切れ刃(30a)において、前記長手方向に沿って長くなるように、前記第1のリリーフ面(22a)が前記中央平面(8)と鈍角(ε)を形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の切削インサート(2)。
【請求項7】
前記第1の切れ刃(30a)が、前記第1のリリーフ面(22a)に沿って延在する第1の端部(32a)と第2の端部(32b)、前記第1のラジアル側面(18a)に沿って延在する第3の端部(32d)、及び角端部(32c)を備え、前記第1の端部(32a)が前記第2の端部(32b)に隣接し、前記第2の端部(32b)が前記角端部(32c)に隣接し、前記角端部(32c)が前記第3の端部(32d)に隣接し、前記第1の端部(32a)が、前記第2の端部(32b)から前記中央平面(8)に向けて前記第2の端部(32b)に対して角度(Φ)において延在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の切削インサート(2)。
【請求項8】
前記第1の端部(32a)が、前記第1のすくい面(16a)内に形成された窪み(34)の端部を形成する、請求項7に記載の切削インサート(2)。
【請求項9】
前記第2のアキシャル側面(20b)が、第3のリリーフ面(22c)、第4のリリーフ面(22d)、及び第2の凹部(24b)を備え、前記第3のリリーフ面(22c)が前記第1のすくい面(16a)に沿って延在し、前記第4のリリーフ面(22d)が前記第2のすくい面(16b)沿って延在し、前記第2の凹部(24b)が、前記第3と第4のリリーフ面(22c、22d)の間で延在し、第2の底面(26b)を備え、前記第3のリリーフ面(22c)、前記第4のリリーフ面(22d)、及び前記第2の凹部(24b)の各ポイントが、前記第1のラジアル側面(18a)を向く前記第1のサイドビュー又は前記第2のラジアル側面(18b)を向く前記第2のサイドビューの何れかから視認できるように、且つ、前記インサート本体が、前記第1又は第2のラジアル側面(18a、18b)のうちの何れかの近くの外側部分においてよりも、前記中央長手方向軸(6)の近くの中央部分において、前記長手方向に沿って長くなるように、前記第3のリリーフ面(22c)、前記第4のリリーフ面(22d)、及び前記第2の凹部(24b)が配置されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の切削インサート(2)。
【請求項10】
前記切削インサート(2)を形成するための多軸圧縮工具の分割ラインが、前記中央長手方向軸(6)に隣接する中央部分において配置可能なように、前記インサート本体(4)が、前記中央部分において前記長手方向に沿って最も長く、前記第1と第2のラジアル側面(18a、18b)に近付くに従って長さが徐々に減少する、請求項9に記載の切削インサート(2)。
【請求項11】
前記切削インサート(2)が、フライス工具内で4回割り出し可能なように、
前記インサート本体(4)が、
前記第1のすくい面(16a)と前記第2のラジアル側面(18b)及び前記第2のアキシャル側面(20b)の両方との間の交差部分における縁部分に沿って延在する第2の切れ刃(30b)、
前記第2のすくい面(16b)と前記第1のラジアル側面(18a)及び前記第2のアキシャル側面(20b)の両方との間の交差部分における縁部分に沿って延在する第3の切れ刃(30c)、及び
前記第2のすくい面(16b)と前記第2のラジアル側面(18b)及び前記第1のアキシャル側面(20a)の両方との間の交差部分における縁部分に沿って延在する第4の切れ刃(30d)を備える、請求項9又は10に記載の切削インサート(2)。
【請求項12】
回転軸(42)の周りで回転するように構成され、工具本体(44)を備える、フライス工具(40)であって、
前記工具本体(44)には、前記工具本体(44)の軸方向端部において、切削インサート(2)を受容するためのインサート座(46)が設けられ、
前記フライス工具(40)が、前記インサート座(46)内に、請求項1から11のいずれか一項に記載の切削インサート(2)を備えることを特徴とする、フライス工具(40)。
【請求項13】
前記インサート座(46)には、接線方向支持表面(52)、半径方向支持表面(54)、及び軸方向支持表面(56)が設けられ、
前記第2のすくい面(16b)の一部分が、前記接線方向支持表面(52)に隣接し、前記第2のラジアル側面(18b)の一部分が、前記半径方向支持表面(54)に隣接し、及び、第2の凹部(24b)の第2の底面(26b)の一部分が、前記軸方向支持表面(56)に隣接した状態で、前記切削インサート(2)が配置されている、請求項12に記載のフライス工具(40)。
【請求項14】
前記第2の底面(26b)が、2つの主表面部分を備え、前記軸方向支持表面(56)に隣接した前記第2の底面(26b)の前記一部分が、前記第1のラジアル側面(18a)に最も近い前記第2の底面(26b)の前記主表面(28f’)である、請求項13に記載のフライス工具(40)。
【請求項15】
前記接線方向支持表面(52)が、前記工具本体(44)の軸方向端における第1の端部(58)から、前記インサート座(46)の前記軸方向支持表面(56)における第2の端部(60)へ延在し、前記フライス工具(40)の回転方向(43)について前記第2の端部(60)が前記第1の端部(58)より前方に出ている、請求項13又は14に記載のフライス工具(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライス工具のための切削インサート、及び、そのような切削インサートを備えたフライス工具に関する。
【背景技術】
【0002】
フライス工具は、1以上の切削インサートが設けられ得る回転切削工具である。正面フライス工具は、「正面」すなわちフライス平面のために構成された特定の種類のフライス工具である。
【0003】
米国特許出願第2013/0045061号は、回転切削工具のための切削インサートを開示している。切削インサートは、上面、下面、及び上面と下面の各々に連結された側面を含む。切削インサートは、切削工具内で4回割り出し可能である。切れ刃は、上面と側面との交差部分において延在し、第1の切れ刃、角切れ刃、及び第2の切れ刃を含む。側面に沿って、平坦な表面形状の部分を含む拘束部分が、切削インサートの周りに延在する。切削インサートは、回転切削ツール内に負の軸方向すくい角がある状態で使用されるように形成されている。
【0004】
その形状のために、米国特許出願第2013/0045061号は、製造するのが面倒である。例えば、拘束部分は、切削インサートの圧縮及び焼結に続いて、分離した研磨ステップによって製造されなければならない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、容易に製造される切削インサートを提供することである。
【0006】
本発明の一態様によれば、その目的は、フライス工具のための切削インサートであって、インサート本体の長手方向に沿って延在する中央長手方向軸、及び中央長手方向軸を含む仮想中央平面を有する、インサート本体を備えた、切削インサートによって実現される。インサート本体は、概して、上面、底面、及び上面と底面との間に延在する周面によって画定され、上面と底面は、実質的に中央平面の両側の長手方向において延在する。インサート本体は、上面において第1のすくい面を備え、底面が第2のすくい面を備える。インサート本体は、周面において、インサート本体の両側で長手方向において延在する第1のラジアル側面と第2のラジアル側面、及び、インサート本体の両側で長手方向を横断して延在する第1のアキシャル側面と第2のアキシャル側面を備える。第1のアキシャル側面は、第1のリリーフ面、第2のリリーフ面、及び第1の凹部を備え、第1のリリーフ面は第1のすくい面に沿って延在し、第2のリリーフ面は第2のすくい面に沿って延在する。第1の凹部は、第1と第2のリリーフ面の間で延在し、第1の底面を備える。インサート本体は、少なくとも第1の切れ刃を更に備え、第1の切れ刃は、第1のすくい面と第1のラジアル側面及び第1のアキシャル側面の両方との間の交差部分における縁部分に沿って延在する。第1のリリーフ面、第2のリリーフ面、及び第1の凹部の各ポイントが、第1のラジアル側面を向く第1のサイドビュー又は第2のラジアル側面を向く第2のサイドビューの何れかから視認できるように、且つ、インサート本体が、第1又は第2のラジアル側面のうちの何れかの近くの外側部分においてよりも、中央長手方向軸の近くの中央部分において、長手方向に沿って長くなるように、第1のリリーフ面、第2のリリーフ面、及び第1の凹部が配置されている。
【0007】
第1のリリーフ面、第2のリリーフ面、及び第1の凹部の各ポイントが、第1と第2のサイドビューのうちの何れかから視認でき、インサート本体が、第1又は第2のラジアル側面のうちの何れかの近くの外側面分においてよりも、中央長手方向軸の近くの中央部分において長いので、切削インサートは、中央長手方向軸において関連する圧縮工具の分割があり、第1及び第2のリリーフ面と第1の凹部とが多軸圧縮(MAP)動作において形成可能な状態で、MAPによって形成可能である。その結果として、上述の目的が達成される。
【0008】
第1と第2のサイドビューは、長手方向軸に対して垂直に、中央平面に沿って見られる。切削インサートは、フライス工具の工具本体に取り付けられるように構成され得る。切削インサートは、「正面」すなわちフライス平面のために構成され得る。切削インサートは、フライス工具のインサート座を形成する凹部内に保持されるように適合され得る。切削インサートは、割り出し可能であり、すなわち、切削インサートは、フライス工具のインサート座内の種々の位置に配置され得る。第1の切れ刃は、インサート座から延在し、フライス内の加工対象物と係合し得る。
【0009】
切削インサートは、例えば、超硬合金、セラミック、立方晶窒化ホウ素、多結晶ダイヤモンド、及び/又はサーメットのうちの1以上を含む材料から製造され得る。切削インサートは、例えば、窒化チタン、炭窒化チタン、及び/又は酸化アルミニウムなどの表面コーティングで被覆され得る。
【0010】
実施形態によれば、第1のリリーフ面、第2のリリーフ面、及び第1の底面の各々は、2つの主表面を備え得る。主表面は、関連する第1のリリーフ面、第2のリリーフ面、又は第1の底面のうちの少なくとも5分の1を形成し得る。主表面は、表面に沿った何らかの大きな又は唐突な方向変化なしに、連続的な表面を形成する。大きな方向変化又は唐突な方向変化において、主表面は終端する。
【0011】
実施形態によれば、第1又は第2のラジアル側面のうちの何れかの近くの前記主表面のうちの何れかの外側部分におけるよりも、中央長手方向軸の近くの前記主表面のうちの前記何れかの中央部分において、長手方向軸に沿ってインサート本体が長くなるように、第1のリリーフ面、第2のリリーフ面、及び第1の底面の2つの主表面の各々の間の角度は、鈍角であり得る。第1のリリーフ面、第2のリリーフ面、及び第1の底面の2つの主表面の各々の間の鈍角は、切削インサートに、第1のアキシャル側面におけるわずかに尖った形状を与え得る。
【0012】
実施形態によれば、第1のリリーフ面、第2のリリーフ面、及び第1の底面の各々の2つの主表面は、平坦な表面であり得る。代替的な実施形態によれば、第1と第2のリリーフ面の各々の主表面のうちの少なくとも一方は、凸形状であり得る。実施形態によれば、第1の底面は、中央平面に対して垂直であり得る。
【0013】
実施形態によれば、インサート本体が、第1の凹部の近隣よりも、第1の切れ刃において、長手方向に沿って長くなるように、第1のリリーフ面が中央平面と鈍角を形成し得る。このやり方では、切削インサートの中央平面が、関連するフライス工具内で中立な又はわずかに負の軸方向角度において配置された状態で、リリーフが、第1の切れ刃において設けられ得る。更に、鋭角の楔角が、第1のアキシャル側面における第1の切れ刃において設けられ得る。したがって、切削インサートの中央平面が、関連するフライス工具内で中立な又はほんのわずかに負の軸方向角度において延在した状態で、正の軸方向すくい角が、第1のアキシャル側面において設けられ得る。したがって、切削インサートは、フライス工具のインサート座内に正確に配置され得る。
【0014】
実施形態によれば、第1の切れ刃は、第1のリリーフ面に沿って延在する第1の端部と第2の端部、第1のラジアル側面に沿って延在する第3の端部、及び角端部を備え、第1の端部は第2の端部に隣接し、第2の端部は角端部に隣接し、及び角端部は第3の端部に隣接し得る。第1の端部は、第2の端部から中央平面へ向けて、第2の端部に対してある角度において延在し得る。このやり方では、切削インサートが、加工対象物へ傾斜を付けられ、すなわち関連するフライス工具が、フライス工具の軸方向、通常は関連するフライス工具のZ方向において、加工対象物へ供給され得る。そのような場合、第2の端部は、Z方向において加工対象物の中へ切削をもたらし、一方、第1の切れ刃は、その角度と方向のためにZ方向における切削と干渉しない。
【0015】
実施形態によれば、第1の端部は、第1のすくい面内に形成された窪みの端部を形成し得る。
【0016】
実施形態によれば、第2のアキシャル側面は、第3のリリーフ面、第4のリリーフ面、及び第2の凹部を備え、第3のリリーフ面は、第1のすくい面に沿って延在し、第4のリリーフ面は、第2のすくい面に沿って延在する。第2の凹部は、第3と第4のリリーフ面の間で延在し、第2の底面を備え得る。第3のリリーフ面、第4のリリーフ面、及び第2の凹部の各ポイントが、第1のラジアル側面を向く第1のサイドビュー又は第2のラジアル側面を向く第2のサイドビューの何れかから視認できるように、且つ、インサート本体が、第1又は第2のラジアル側面のうちの何れかの近くの外側部分においてよりも、中央長手方向軸の近くの中央部分において、長手方向に沿って長くなるように、第3のリリーフ面、第4のリリーフ面、及び第2の凹部が配置され得る。したがって、インサート本体が、第1又は第2のラジアル側面のうちの何れかの近くの外側部分においてよりも、中央長手方向軸の近くの中央部分において、長手方向に沿って長くなり得る。このやり方では、更に、第2のアキシャル側面において、切削インサートが、中央長手方向軸において関連する圧縮工具の分割があり、第3及び第4のリリーフ面と第2の凹部とが多軸圧縮(MAP)動作において形成可能な状態で、MAPによって形成可能なように構成され得る。
【0017】
第1のアキシャル側面に類似して、第3のリリーフ面、第4のリリーフ面、及び第2の底面の各々は、2つの主表面を備え得る。更に、第3のリリーフ面、第4のリリーフ面、及び第2の底面の2つの主表面の各々の間の角度は、鈍角であり得る。再び、鈍角は、切削インサートに、この場合には第2のアキシャル側面において、わずかに尖った形状を与え得る。
【0018】
実施形態によれば、切削インサートを形成するための多軸圧縮工具の分割ラインが、中央部分において配置可能なように、インサート本体は、中央長手方向軸に隣接する中央部分において長手方向軸に沿って最も長く、第1と第2のラジアル側面に近付くに従って長さが徐々に減少し得る。
【0019】
実施形態によれば、切削インサートが、フライス工具内で4回割り出し可能なように、インサート本体は、第1のすくい面と第2のラジアル側面及び第2のアキシャル側面の両方との間の交差部分における縁部分に沿って延在する第2の切れ刃、第2のすくい面と第1のラジアル側面及び第2のアキシャル側面との間の交差部分における縁部分に沿って延在する第3の切れ刃、及び第2のすくい面と第2のラジアル及び第1のアキシャル側面の両方との間の交差部分における縁部分に沿って延在する第4の切れ刃を備え得る。言い換えると、切削インサートは、中央長手方向軸の周りで、及び、長手方向軸と垂直な中央横手方向軸の周りで、回転対称であり得る。
【0020】
本発明の更なる一態様によれば、工具本体を備えた回転軸の周りで回転するように構成された、フライス工具が提供され、工具本体には、工具本体の軸方向端部において切削インサートを受容するためのインサート座が設けられている。フライス工具は、インサート座内に配置された、本明細書で説明される何れかの態様及び/又は実施形態による切削インサートを備える。
【0021】
フライス工具には、本明細書で説明される態様及び/又は実施形態による2以上の切削インサートが設けられ得る。フライス工具は、正面フライス工具、すなわち、フライス平面のためのフライス工具であり得る。
【0022】
実施形態によれば、インサート座には、接線方向支持表面、半径方向支持表面、及び軸方向支持表面が設けられ得る。第2のすくい面の一部分が接線方向支持表面に隣接し、第2のラジアル側面の一部分が半径方向支持表面に隣接し、及び第2の凹部の第2の底面の一部分が軸方向支持表面に隣接した状態で、切削インサートが配置され得る。このやり方では、加工対象物に切削係合するためのインサート座を超えて延在する第1の切れ刃を有する切削インサートが、インサート座内に正確に支持され得る。
【0023】
実施形態によれば、軸方向支持表面に隣接した第2の底面の一部分は、第1のラジアル側面に最も近い第2の底面の、その主表面であり得る。この主表面は、中央長手方向軸に向けて角度が付けられているので、切削インサートは、切削インサートが晒される軸方向の切削力によって、半径方向に向けられる。このやり方では、切削インサートが、半径方向支持表面に向けて付勢され、したがって、インサート座内に正確にロックされ得る。
【0024】
実施形態によれば、接線方向支持表面は、工具本体の軸方向端における第1の端部から、インサート座の軸方向支持表面における第2の端部へ延在し、フライス工具の回転方向で見て、第2の端部が第1の端部の先へ延在し得る。このやり方では、中央平面がインサート座内で負の軸方向角度にある状態で、切削インサートが配置され得る。中央平面との鈍角を形成する第1のリリーフ面のために、中央平面がほんのわずかに負の軸方向角度において延在した状態で、リリーフが第1の切れ刃において設けられ得る。
【0025】
本発明の更なる特徴及び利点は、付随する特許請求の範囲及び以下の詳細説明を検討する際に明確になるだろう。
【0026】
本発明の特定の特徴及び利点を含む本発明の様々な態様は、以下の詳細説明及び添付図面に記載される実施例から、容易に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1a】実施形態による、フライス工具のための切削インサートの種々の図のうちの1つを示す。
【
図1b】実施形態による、フライス工具のための切削インサートの種々の図のうちの1つを示す。
【
図1c】実施形態による、フライス工具のための切削インサートの種々の図のうちの1つを示す。
【
図1d】実施形態による、フライス工具のための切削インサートの種々の図のうちの1つを示す。
【
図1e】実施形態による、フライス工具のための切削インサートの種々の図のうちの1つを示す。
【
図2】本発明による、切削インサートを形成するための多軸圧縮(MAP)工具の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の態様が、以下で一層詳細に説明される。類似の番号は、全体を通じて類似の要素を表す。簡潔性及び/又は明確性のために、既に良く知られた機能及び構造は必ずしも詳細に説明されない。
【0029】
図1a〜
図1eは、実施形態による、フライス工具のための切削インサート2の種々の図を示している。切削インサート2は、インサート本体4の長手方向に沿って延在する中央長手方向軸6を有するインサート本体4を備える。中央長手方向軸6を含む仮想中央平面8が、インサート本体4の中央を通って延在する(
図1c及び
図1d参照)。インサート本体4は、概して、上面10、底面12、及びインサート本体4の周りを上面10と底面12との間で延在する周面14によって画定されている。上面10と底面12は、実質的に、中央平面8の両側で長手方向において延在する。インサート本体4は、上面10において第1のすくい面16a、及び底面12において第2のすくい面16bを備える。
【0030】
インサート本体4は、周面14において、インサート本体4の両側で長手方向に延在する、第1のラジアル側面18aと第2のラジアル側面18bを備える。周面14は、インサート本体4の両側で長手方向及び長手方向軸6を横断して延在する、第1のアキシャル側面20aと第2のアキシャル側面20bを更に備える。
【0031】
第1のアキシャル側面20aは、第1のリリーフ面22a、第2のリリーフ面22b、及び第1の凹部24aを備える。第1のリリーフ面22aは、第1のすくい面16aに沿って延在し、第2のリリーフ面22bは、第2のすくい面16bに沿って延在する。第1の凹部24aは、実質的に中央平面8に沿って、第1と第2のリリーフ面22a、22bの間で延在する。第1の凹部24aは、第1の底面26aを備える。第2のアキシャル側面20bは、第3のリリーフ面22c、第4のリリーフ面22d、及び第2の凹部24bを備える。第3のリリーフ面22cは、第1のすくい面16aに沿って延在し、第4のリリーフ面22dは、第2のすくい面16bに沿って延在する。第2の凹部24bは、実質的に中央平面8に沿って、第3と第4のリリーフ面22c、22dの間で延在する。第2の凹部24bは、第1の底面26bを備える。
【0032】
第1のリリーフ面22a、第2のリリーフ面22b、及び第1の凹部24aの各ポイントが、第1のラジアル側面18aを向く第1のサイドビュー又は第2のラジアル側面18bを向く第2のサイドビューの何れかから視認できるように、第1のリリーフ面22a、第2のリリーフ面22b、及び第1の凹部24aが配置されている。したがって、インサート本体4が、第1又は第2のラジアル側面18a、18bのうちの何れかの近くの外側部分においてよりも、中央長手方向軸6の近くの中央部分において、長手方向に沿って長くなる。すなわち、
図1cで示される図、及び、インサート本体4の反対側からの対応する図で示されるように、第1と第2のサイドビューが、長手方向軸6に垂直に、中央平面8に沿って見られる。第1のリリーフ面22a、第2のリリーフ面22b、及び第1の底面26aの各々は、2つの主表面28a〜28fを備える。主表面28a〜28fは、
図1dで直線的なハッチングを用いて示されている。第1又は第2のラジアル側面18a、18bのうちの何れかの近くの主表面28a〜28fのうちの何れかの外側部分におけるよりも、中央長手方向軸6の近くの前記主表面の前記何れかの中央部分において、長手方向軸に沿ってインサート本体4が長くなるように、第1のリリーフ面22a、第2のリリーフ面22b、及び第1の底面24aの各々の間の角度ηは、鈍角である(
図1e参照)。2つの主表面28a〜28fの各々の間の角度ηは、160〜179.5度の範囲内にあり得る。第1と第2のリリーフ面22a、22cの2つの主表面28a〜28dの間の角度ηは、第1の底面26aの2つの主表面28e、28fの間の角度ηとは異なり得る。第1と第2のリリーフ面22a、22cの2つの主表面28a〜28dの間の角度ηは、好ましくは、176〜179度の範囲内にあり得る。第1の底面26aの2つの主表面28e、28fの間の角度ηは、好ましくは、160〜179度の範囲内にあり得る。
【0033】
同様に、第1のアキシャル側面20aとの関連で上述したように、第3のリリーフ面22c、第4のリリーフ面22d、及び第2の凹部24bの各ポイントが、第1のサイドビュー又は第2のサイドビューの何れかから視認できるように、第3のリリーフ面22c、第4のリリーフ面22d、及び第2の凹部24bが配置されている。再び、インサート本体4が、第1又は第2のラジアル側面18a、18bのうちの何れかの近くの外側部分においてよりも、中央長手方向軸6の近くの中央部分において、長手方向に沿って長くなる。同様に、第3のリリーフ面22c、第4のリリーフ面22d、及び第2の底面26bの各々は、
図1dで示された第1のリリーフ面、第2のリリーフ面、及び第1の底面の主表面28a〜28fに対応する、2つの主表面を備える。第3のリリーフ面22c、第4のリリーフ面22d、及び第2の底面26bの2つの主表面の各々の間の角度ζは、鈍角である(
図1e参照)。したがって、更に、第3のリリーフ面22c、第4のリリーフ面22d、及び第2の底面24bにおける鈍角ζのために、インサート本体4が、第1又は第2のラジアル側面18a、18bのうちの何れかにおけるよりも、中央長手方向軸6の近くの中央部分において、長手方向に沿って長くなる。第3のリリーフ面22c、第4のリリーフ面22d、及び第2の底面24bの2つの主表面の各々の間の角度ζは、第1のリリーフ面22a、第2のリリーフ面22b、及び第1の底面24aの2つの主表面28a〜28fの各々の間の対応する角度ηと同じであり得る。
【0034】
言い換えると、インサート本体4は、中央長手方向軸6に隣接した中央部分における長手方向に沿って最も長く、第1と第2のラジアル側面18a、18bに近付くに従って長さが徐々に減少する。したがって、切削インサート2を形成するための多軸圧縮(MAP)工具の分割ラインは、中央部分において配置可能である(以下の
図2参照)。
【0035】
したがって、中央長手方向軸6において関連した圧縮工具の分割がある状態で、切削インサート2が、MAPによって形成可能である。第1、第2、第3、及び第4のリリーフ面、並びに第1と第2の底面26a、26bの主表面の全ては、MAP動作において形成され得る。中央長手方向軸6において圧縮工具の分割を配置できることは、MAP動作からのインサート本体4内の任意のギザギザが、何らかの実質的な程度において切削インサート2の使用に影響を与えない領域において、分割ラインが配置されることをもたらす。
【0036】
図2は、本発明による、切削インサートを形成するための多軸圧縮(MAP)工具100の実施形態を示している。MAP動作では、切削インサートの生素地(green ware)が形成される。その生素地は、焼結後にフライス工具における使用のために準備される切削インサートを形成する。
【0037】
従来の圧縮では、粉体化合物が、2つの垂直スタンプの間でダイの凹部の中へ圧縮され、焼結後に切削インサートを形成する生素地を形成する。MAPでは、製造のために問題の粉体化合物が、生素地の上面と底面に対して2つのスタンプ102、104の間で圧縮されるだけでなく、2つの更なるスタンプ106、108の間においても圧縮される。それらは、インサート本体の側面及び第二逃げ面に対して圧縮される。
【0038】
第1、第2、第3、及び第4のリリーフ面22a〜22d、並びに第1及び第2の底面24a、24bの主表面が、2つが正反対の鈍角η、ζにある状態で、上述したやり方で本発明による切削インサートを形作ることによって、水平方向にスタンプ106、108を操作することは、スタンプ面の各ポイントが、生素地の任意の表面を削り取ることなしに、生素地から直ちに離れるようなやり方で、最終的に圧縮された生素地からの運動の直線的な経路で後退され得る。言い換えると、切削インサートの設計は、優れた表面の品質を保証し、それは、同様に、優れた寸法精度を有する直接的に圧縮された研磨されていない切削インサートの製造を可能にするものである。したがって、切削インサートは、圧縮及び焼結の後で、研磨などの後処理を必要とすることなしに、その最終的な形状を直接的に取得できる。
【0039】
したがって、切削インサートが、表面の荒仕上げ、又はより低い最終要件の表面を企図するのみであるならば、切削インサート2は、圧縮及び焼結された際に使用され得る。これは、近似的に+/−0.03mmの許容誤差を有する切削インサートを提供する。
【0040】
より優れた許容誤差が必要とされるならば、切削インサートは焼結後の研磨を必要とする。本発明による切削インサートは、2、3mmの千分の一内の許容誤差へ研磨される精度に対しても役立つ。第1の底面がMAP動作において形成されるので、第1のアキシャル側面20aの第1と第2のリリーフ面22a、22b(
図1b及び
図1c参照)の研磨の場合に、第2の底面26bは、研磨の間に参照支持表面として役立ち得る。したがって、第1と第2のリリーフ面22a、22bは、第3又は第4のリリーフ面22c、22dのうちの一方を第1の参照面として使用することなしに研磨され得る。したがって、リリーフ面22a〜22dの間の内的関係は維持され得る。一方で、それらは、第2の底面26bに対してインサート本体4に配置される。したがって、第1と第2のリリーフ面22a、22bの研磨は、第3と第4のリリーフ面22c、22dから独立している。
【0041】
図1a〜
図1eを参照すると、インサート本体4は、第1の切れ刃30aを備える。第1の切れ刃30aは、第1のすくい面16aと第1のラジアル側面18a及び第1のアキシャル側面20aの両方との間の交差部分における縁部分に沿って延在する。第1の切れ刃30aは、第1のリリーフ面22aに沿って延在する第1の端部32aと第2の端部32b、角端部32c、及び第1のラジアル側面18aに沿って延在する第3の端部32dを備える。第1の端部32aは第2の端部32bに隣接し、第2の端部32bは角端部32cに隣接し、及び角端部32cは第3の端部32dに隣接する。
【0042】
第1の端部32aは、第2の端部32bから中央平面8に向けて見られる際に、第2の端部32bに対して少なくとも150度且つ多くとも185度の角度Φにおいて延在する(
図1d参照)。示されている実施例では、角度Φが158度である。第1の端部32aが、中央平面8に向けて第2の端部32bに対して角度Φで延在するので、第2の端部32bは、長手方向において最も遠くに離れて延在するように、関連するフライス工具内に配置され得る。そのような配置を伴って、フライス工具と切削インサート2は、加工対象物に対して傾斜を付けられ得る。すなわち、第2の端部32bは、第1の端部32aが下向きの切削を妨げることなしに、加工対象物の中へ緩やかな下向きの切削をもたらし得る。
【0043】
これらの実施形態では、第1の端部32aが、第1のすくい面16a内に形成された窪み34の端部を形成する。
【0044】
これらの実施形態では、第1〜第4のリリーフ面22a〜22dの各々の主表面のうちの少なくとも1つが凸形状である。より具体的には、第1のリリーフ面22aの、第2の端部32bに隣接する主表面28aが凸形状であり、第2〜第4のリリーフ面の対応する主表面が凸形状である。
【0045】
したがって、これらの実施形態では、第2の端部32bが湾曲している。更に、第1の端部32aは、これらの実施形態において湾曲している。そのような場合では、第1と第2の端部32a、32bのうちの少なくとも一方が湾曲しており、角度Φが、それぞれ、第1と第2の端部32a、32bの間の交差部分において、第1の端部32aの接線と第2の端部32bの接線との間で測定される。
【0046】
代替的な実施形態によれば、第1〜第4のリリーフ面22a〜22d、及び第1と第2の底面26a、26bの各々の2つの主表面は、平坦な表面であり得る。そのような実施形態では、第2の端部32bが線形、すなわち、直線的である。
【0047】
インサート本体4は、第1のすくい面16aと第2のラジアル側面18b及び第2のアキシャル側面20bの両方との間の交差部分における縁部分に沿って延在する第2の切れ刃30b、第2のすくい面16bと第1のラジアル側面18a及び第2のアキシャル側面20bの両方との間の交差部分における縁部分に沿って延在する第3の切れ刃30c、及び第2のすくい面16bと第2のラジアル側面18b及び第1のアキシャル側面20aの両方との間の交差部分における縁部分に沿って延在する第4の切れ刃30dを備える。したがって、切削インサート2は、関連するフライス工具内で4回割り出し可能である。したがって、第1、第2、第3、及び第4の切れ刃30a〜30dの各々は、一度に一つが、フライス工具内に配置されて、加工対象物と係合し得る。第2、第3、及び第4の切れ刃30b〜30dの各々は、第1の切れ刃30aと同じやり方で、第1の、第2の、第3の、及び角端部を備える。
【0048】
第1のリリーフ面22aは、中央平面8と鈍角εを形成する(
図1c参照)。鈍角εは、92度〜105度の範囲内にあり、好ましくは、94〜100度の範囲内にあり得る。したがって、インサート本体4は、第1の凹部24aの近隣よりも、第1の切れ刃30aにおいて長手方向へ長くなる。したがって、例えば、51〜84度、好ましくは、60〜76度の鋭角の楔角βは、第1のアキシャル側面20aにおける第1の切れ刃30aにおいて容易に設けられ得る。同様に、鋭角の楔角が、それぞれのアキシャル側面20a、20bにおける第2、第3、及び第4の切れ刃30b〜30dの各々においても設けられ得るように、第2、第3、及び第4のリリーフ面22b〜22dの各々は、中央平面8と鈍角を形成する。第1の切れ刃30aにおける仮想接平面37は、中央平面8と平行に延在する。接平面37と第1のすくい面16aとの間の角度γは、4〜24度の範囲内、好ましくは、10〜20度の範囲内にあり得る。切削インサート2の効果的なすくい角は、それがフライス工具内に取り付けられたときに、インサート座46内の中央平面8の鈍角ε、楔角β、及び軸方向角度γによって与えられる(以下の
図3a参照)。第1の底面26aと第2の底面26bの主表面28e、28fは、それぞれ、各々が中央平面8と90度の角度を形成する。
【0049】
インサート本体4には、貫通孔38が設けられている。解放可能に切削インサート2を関連するフライス工具に固定するために、締め部材が、貫通孔38を通って延在し得る。
【0050】
図3a〜
図3bは、フライス工具40の実施形態を示している。フライス工具40は、正面フライス工具である。フライス工具40は、回転軸42の周りで回転方向43へ回転するように構成されており、工具本体44を備える。軸方向端部において、工具本体44には、本明細書で説明される何れかの態様及び/又は実施形態による、切削インサート2を受容するためのインサート座46が設けられている。
図3bの分解図において示されているように、切削インサート2は、切削インサート2の貫通孔38を通って延在し、インサート座46において工具本体44内のネジ孔50の中へねじ込まれる、ねじ48によって、工具本体44に取り付けられる。
【0051】
これらの実施形態では、フライス工具40には、5つのインサート座が設けられている。各インサート座2内に、切削インサート2が配置される。代替的な実施形態では、フライス工具に、示されている5つよりも少ない又は多い数の切削インサート2が設けられ得る。やはり、大きな直径のフライス工具には、小さい直径のフライス工具よりも多くの切削インサートが設けられる。
【0052】
全ての切削インサート2は、同じ種類のものである。フライス工具の代替的な実施形態では、切削インサートが、2以上の異なる種類のものであり得る。
【0053】
インサート座46には、接線方向支持表面52、半径方向支持表面54、及び軸方向支持表面56が設けられている。第2のすくい面16bの一部分が接線方向支持表面52に隣接し、第2のラジアル側面18bの一部分が半径方向支持表面54に隣接し、及び、第2の凹部24bの第2の底面26bの主表面のうちの1つが軸方向支持表面56に隣接した状態で、切削インサート2が配置されている(
図1cも参照)。したがって、加工対象物に切削係合するためのインサート座46を超えて延在する第1の切れ刃30aを有する切削インサート2が、インサート座46内に支持されている。
【0054】
軸方向支持表面56に隣接する切削インサート2の前記主表面のうちの1つは、第1のラジアル側面18aに最も近い第2の底面26bの主表面28f’である。(第1のラジアル側面18aに最も近い第2の底面26bの主表面28f’は、
図1dで示された第2のラジアル側面18bにおける第1の底面24aの主表面28fに対応する。)
【0055】
接線方向支持表面52は、工具本体44の軸方向端における第1の端部58から、インサート座46の軸方向支持表面56における第2の端部60へ延在する。フライス工具40の回転方向43において見られるように、第2の端部60は、第1の端部58の先へ延在する。したがって、切削インサート2は、中央平面8に対してインサート座内の負の軸方向角度γにおいて配置されている。上述され
図1cで示されたように実現された鋭角の楔角βのために、切れ刃32dに隣接する第1のすくい面16aは、正の軸方向すくい角において配置されている。
【0056】
この発明は、本明細書に明記された実施形態に限定されると解釈すべきではない。本明細書で開示されている実施形態の種々の特徴は、付随する特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を逸脱することなく、本書で説明されている実施形態以外の実施形態を創出するために組み合わされ得ることを、当業者は認識するであろう。本発明は例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、当業者にとっては、多数の異なる代替例、修正例等が自明となろう。そのため、上記は様々な例示的な実施形態を例示するものであり、本発明は付随する特許請求の範囲によってのみ規定されることを、理解されたい。
【0057】
本書で使用する場合、「を備える」又は「を含む」という用語は開放型であり、1以上の既述の特徴、要素、ステップ、構成要素又は機能を含むが、1以上の他の特徴、要素、ステップ、構成要素、機能又はそれらの群の存在又は追加を除外する訳ではない。