特許第6675441号(P6675441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6675441
(24)【登録日】2020年3月12日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】酸素供給器
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20200323BHJP
   A62B 7/02 20060101ALI20200323BHJP
   A61M 16/06 20060101ALI20200323BHJP
   A61M 16/20 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
   A61M16/00 305B
   A62B7/02
   A61M16/00 355
   A61M16/06 A
   A61M16/20 D
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-119706(P2018-119706)
(22)【出願日】2018年6月25日
(65)【公開番号】特開2020-278(P2020-278A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2018年6月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 晋士
(72)【発明者】
【氏名】山本 文彦
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−154961(JP,U)
【文献】 中国実用新案第201283150(CN,Y)
【文献】 米国特許第09988259(US,B2)
【文献】 特開2012−161570(JP,A)
【文献】 特開2005−278973(JP,A)
【文献】 特開2009−012713(JP,A)
【文献】 実公昭48−024131(JP,Y1)
【文献】 特開2016−002180(JP,A)
【文献】 特表2011−504773(JP,A)
【文献】 特開平11−235997(JP,A)
【文献】 実開平06−023541(JP,U)
【文献】 実開平04−022966(JP,U)
【文献】 特開平08−066485(JP,A)
【文献】 特開2009−233110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
B62B 1/00−5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素ガスを高圧状態で収容する酸素ボンベと、
前記酸素ボンベから吐出された酸素ガスを減圧させる減圧弁と、
前記減圧弁から流出した酸素ガスを複数の流路に分岐させる分岐具と、
前記酸素ボンベおよび前記分岐具を搭載可能で、かつ、前記酸素ボンベおよび前記分岐具を搭載した状態で移動可能な移動部と、を備え、
前記移動部は、台車であり、
前記台車は、前記酸素ボンベを下方から支持する台板と、
前記台板から上方に延びる形状を有する取っ手と、を有し、
前記酸素ボンベは、一方向に長い形状を有し、前記酸素ボンベの長手方向の一端に、前記酸素ガスを吐出するための吐出口が設けられており、
前記減圧弁は、前記吐出口に接続されており、
前記台板は、前記吐出口が上部に位置する姿勢で前記酸素ボンベを支持しており、
前記分岐具は、前記台板のうち前記取っ手を基準として前記酸素ボンベが設置されている部位と反対側の部位に設置されており、
前記分岐具は、筒状に形成されており前記複数の流路を有する分器具本体を有し、
前記分器具本体は、当該分器具本体の軸方向が前記台板と平行となる姿勢で前記台板に直接的に設置されている、酸素供給器。
【請求項2】
それぞれが鼻および口を覆う形状を有する複数のマスクと、
各前記マスクと前記分岐具とを接続する複数のチューブとをさらに備え、
前記分岐具は、前記減圧弁に接続される上流側ポートと、前記上流側ポートから流入した酸素ガスを吐出するための複数の下流側ポートとを含み、
各前記チューブは、各前記下流側ポートに対して着脱可能に接続される、請求項に記載の酸素供給器。
【請求項3】
各前記マスクは、前記マスクが使用者の顔面に宛がわれた状態において、前記使用者の呼吸量に応じた分だけ前記酸素ボンベ内の酸素ガスが前記マスク内に供給されるように構成されている、請求項に記載の酸素供給器。
【請求項4】
各前記マスクは、押圧可能な押しボタンを有し、前記押しボタンが押圧されている間に前記酸素ボンベ内の酸素ガスが前記マスク内に供給され、前記押しボタンの押圧が解除されたときに前記酸素ボンベ内の酸素ガスの前記マスク内への供給が遮断されるように構成されている、請求項またはに記載の酸素供給器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、酸素供給器に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2007−236814号公報(以下、「特許文献1」という。)には、ボンベと、減圧弁と、面体と、流路形成管とを備える呼吸器が開示されている。ボンベは、酸素を含む気体を大気圧よりも高い圧力で収容する。減圧弁は、ボンベから吐出された気体を減圧する。面体は、使用者の鼻および口を覆うマスクからなる。流路形成管は、減圧弁と面体とを接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−236814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
激しい運動の後など、疲労回復を目的に高濃度の酸素を吸入することがある。たとえば、複数人で行われるスポーツの後、複数人で同時に酸素を吸入したいというニーズがある。しかしながら、特許文献1に記載される呼吸器では、複数人で同時に酸素を吸入することができない。
【0005】
本発明の目的は、複数人が同時に酸素を吸入することが可能な酸素供給器および酸素供給用ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った酸素供給器は、酸素ガスを高圧状態で収容する酸素ボンベと、酸素ボンベから吐出された酸素ガスを減圧させる減圧弁と、減圧弁から流出した酸素ガスを複数の流路に分岐させる分岐具とを備える。なお、高圧状態とは、1MPa以上の圧力状態をいう。
【0007】
本酸素供給器では、酸素ボンベから吐出され、減圧弁により減圧された酸素ガスが、分岐具によって複数の流路に分岐されて供給されるため、複数人が同時に酸素を吸入することが可能となる。
【0008】
また好ましくは、上述の酸素供給器は、酸素ボンベおよび分岐具を搭載可能で、かつ、酸素ボンベおよび分岐具を搭載した状態で移動可能な移動部をさらに備える。
【0009】
このようにすれば、酸素ボンベを容易に移動させることが可能となるため、酸素供給器の利便性を向上させることができる。
【0010】
また好ましくは、移動部は、台車である。台車は、酸素ボンベを下方から支持する台板を有する。酸素ボンベは、一方向に長い形状を有し、酸素ボンベの長手方向の一端に、酸素ガスを吐出するための吐出口が設けられている。減圧弁は、吐出口に接続されている。台板は、吐出口が上部に位置する姿勢で酸素ボンベを支持している。分岐具は、台板に設置されている。
【0011】
この態様では、酸素ボンベの吐出口が当該酸素ボンベの上部に位置するため、減圧弁の操作等が容易となり、かつ、分岐具が台板に設置されることによって酸素供給器の重心の位置が高くなることが抑制されるため、台車の転倒が抑制される。
【0012】
また好ましくは、上述の酸素供給器は、それぞれが鼻および口を覆う形状を有する複数のマスクと、各マスクと分岐具とを接続する複数のチューブとをさらに備える。分岐具は、減圧弁に接続される上流側ポートと、上流側ポートから流入した酸素ガスを吐出するための複数の下流側ポートとを含む。各チューブは、各下流側ポートに対して着脱可能に接続される。
【0013】
このようにすれば、マスクおよびチューブを必要に応じて下流側ポートに接続することができるため、酸素ガスを同時に吸入する人数を容易に変更することが可能となる。
【0014】
また好ましくは、各マスクは、マスクが使用者の顔面に宛がわれた状態において、使用者の呼吸量に応じた分だけ酸素ボンベ内の酸素ガスがマスク内に供給されるように構成されている。
【0015】
このようにすれば、使用者の呼吸量に応じた分(使用者が吸入した分)だけマスク内に酸素ガスが供給されるため、酸素ボンベ内の酸素ガスを余分に消費することを抑制できる。
【0016】
また好ましくは、各マスクは、押圧可能な押しボタンを有し、押しボタンが押圧されている間に酸素ボンベ内の酸素ガスがマスク内に供給され、押しボタンの押圧が解除されたときに酸素ボンベ内の酸素ガスのマスク内への供給が遮断されるように構成されている。
【0017】
このようにすれば、従来の小型のスプレータイプ(プッシュ部を押圧している間だけスプレー容器から酸素ガスが噴出されるタイプ)の酸素吸引器の使用法とほぼ同じ操作でマスク内に酸素ガスを供給することができる。このため、使用者がほとんど違和感を感じることなく使用することができる。
【0018】
この発明に従った酸素供給用ユニットは、酸素ガスを高圧状態で収容する酸素ボンベを搭載可能で、かつ、酸素ボンベを搭載した状態で移動可能な台車と、台車に設置され、酸素ボンベから吐出された酸素ガスを複数の流路に分岐させる分岐具とを備える。
【0019】
この酸素供給用ユニットでは、台車に酸素ボンベを搭載するとともに、分岐具に複数のマスクを接続することにより、複数人で同時に酸素ボンベ内の酸素を吸入することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上に説明したように、この発明によれば、複数人が同時に酸素を吸入することが可能な酸素供給器および酸素供給用ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態の酸素供給器の全体構成を概略的に示す斜視図である。
図2図1に示される酸素供給器の別角度における斜視図である。
図3】分岐具の断面図である。
図4】押しボタンが押されていない状態におけるマスクの断面図である。
図5】押しボタンが押された状態におけるマスクの断面図である。
図6図5中の2点鎖線VIで囲まれた範囲の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態の酸素供給器の全体構成を概略的に示す斜視図である。図2は、図1に示される酸素供給器の別角度における斜視図である。図1および図2に示されるように、酸素供給器1は、複数人に対して同時に酸素を供給することを可能にするものである。酸素供給器1は、酸素ボンベ10と、減圧弁Vと、分岐具20と、中間チューブ30と、複数のチューブ31,32と、複数のマスク40と、移動部50とを有する。
【0024】
酸素ボンベ10は、酸素ガスを高圧状態(1MPa以上)で収容する。酸素ボンベ10は、容器本体12と、吐出口14とを有する。
【0025】
容器本体12は、一方向に長い形状を有する。容器本体12は、円筒形状の容器からなり、その軸方向に長い長尺形状を有する。容器本体12の内容積は、たとえば4L〜10Lである。容器本体12は、耐圧容器である。容器本体12に、酸素ガスが、たとえば10MPa〜30MPaの状態で充填される。容器本体12には、酸素ガスを再充填することが可能である。
【0026】
吐出口14は、容器本体12の長手方向の一端に設けられている。吐出口14は、容器本体12内の酸素ガスを吐出するための開口である。
【0027】
減圧弁Vは、酸素ボンベ10から吐出された酸素を減圧させる。減圧弁Vは、酸素ボンベ10から吐出された酸素を、たとえば1MPa未満に減圧する。減圧弁Vは、吐出口14に接続される。減圧弁Vは、第1ポート61と、第2ポート62とを有する。第1ポート61は、減圧弁Vが吐出口14に接続された状態において、容器本体12の長手方向と直交する方向に開口している。第2ポート62は、減圧弁Vが吐出口14に接続された状態において、容器本体12の長手方向と平行な方向(図1の上向き)に開口している。第1ポート61および第2ポート62から、減圧された酸素ガスが流出する。
【0028】
図3は、分岐具の断面図である。図2および図3に示されるように、分岐具20は、減圧弁Vから流出した酸素ガスを複数の流路に分岐させる。
【0029】
分岐具20は、分岐具本体22と、上流側継手24と、複数の(本実施形態では4つの)下流側継手26と、閉塞部材28とを有する。
【0030】
分岐具本体22は、筒状に形成されている。本実施形態では、分岐具本体22のその軸方向と直交する断面における外形は、六角形に形成されている。分岐具本体22は、たとえば真鍮からなる。分岐具本体22は、上流側ポート22aと、複数の(本実施形態では4つの)下流側ポート22bと、接続用ポート22cとを有している。
【0031】
上流側ポート22aは、減圧弁Vから流出した酸素ガスを分岐具本体22内に流入させるための開口である。上流側ポート22aは、分岐具本体22の軸方向の一端部に形成されている。
【0032】
各下流側ポート22bは、上流側ポート22aから分岐具本体22内に流入した酸素ガスを分岐具本体22外に吐出するための開口である。つまり、上流側ポート22aから各下流側ポート22bに至るそれぞれの流路が、上記の複数の流路に相当する。複数の下流側ポート22bは、一方向に沿って互いに所定の間隔を置いて設けられている。具体的に、複数の下流側ポート22bは、分岐具本体22の軸方向に沿って互いに所定の間隔を置いて設けられている。本実施形態では、複数の下流側ポート22bは、等間隔に並んでいる。複数の下流側ポート22bは、分岐具本体22の6つの外側面のうちの一側面に設けられている。
【0033】
接続用ポート22cは、分岐具本体22の軸方向の他端部に形成されている。接続用ポート22cは、分岐具本体22に対し、当該分岐具本体22とは異なる他の分岐具本体を接続するための開口である。
【0034】
上流側継手24は、上流側ポート22aに接続されている。具体的に、上流側継手24は、雄ねじ部を有しており、この雄ねじ部が上流側ポート22aにねじ込まれている。
【0035】
各下流側継手26は、下流側ポート22bに接続されている。具体的に、各下流側継手26は、雄ねじ部を有しており、この雄ねじ部が下流側ポート22bにねじ込まれている。各下流側継手26は、下流側継手26に対して当該下流側継手26と対応する継手が接続されていない状態では、分岐具本体22内の酸素ガスの下流側継手26を通じた流出を閉止するように構成されている。
【0036】
閉塞部材28は、接続用ポート22cに接続されている。具体的に、閉塞部材28は、雄ねじ部を有しており、この雄ねじ部が接続用ポート22cにねじ込まれている。この状態において、閉塞部材28は、接続用ポート22cを閉塞している。なお、分岐具本体22に対し、当該分岐具本体22とは異なる他の分岐具本体を接続する際は、分岐具本体22から閉塞部材28が取り外され、接続用ポート22cに対し、他の分岐具本体の上流側ポートが接続される。
【0037】
なお、分岐具20の構造は、減圧弁Vからの酸素ガスを複数の流路に分岐させることが可能なものであれば、特に限定されない。たとえば、分岐具20は、六角形以外の多角形(たとえば、四角形)断面の筒体からなる分岐具本体22を有してもよい。複数の下流側ポート22bは、一列に限られず、複数列に渡って設けられてもよいし、分岐具本体22の複数の外側面のうちの互いに異なる外側面に設けられてもよい。
【0038】
中間チューブ30は、減圧弁Vの第1ポート61および上流側継手24に接続される。中間チューブ30の一端には、第1ポート61に対して着脱自在に接続可能な継手30aが接続されている。中間チューブ30の他端には、上流側継手24に対して着脱自在に接続可能な継手30bが接続されている。
【0039】
複数のチューブ31,32は、複数の第1チューブ31と、第2チューブ32とを有する。なお、図1および図2では、第1チューブ31は、1本のみ示されている。
【0040】
各第1チューブ31は、下流側継手26およびマスク40に接続される。第1チューブ31の一端には、下流側継手26に対して着脱自在に接続可能な継手31aが接続されている。この継手31aおよび下流側継手26は、たとえばカプラからなる。第1チューブ31の他端には、マスク40に対して着脱自在に接続可能な継手31bが接続されている。
【0041】
第2チューブ32は、減圧弁Vの第2ポート62およびマスク40に接続される。第2チューブ32の一端には、第2ポート62に対して着脱自在に接続可能な継手32aが接続されている。第2チューブ32の他端には、マスク40に対して着脱自在に接続可能な継手32bが接続されている。
【0042】
各マスク40は、鼻および口を覆う形状を有する。各マスク40は、当該マスク40が使用者の顔面に宛がわれた状態において、使用者の呼吸量に応じた分だけ酸素ボンベ10内の酸素ガスがマスク40内に供給されるように構成されている。つまり、各マスク40は、いわゆるデマンド形に構成されている。
【0043】
各マスク40は、押しボタン415を有している。各マスク40は、押しボタン415が押圧されている間に、酸素ボンベ10内の酸素ガスがマスク40の主空間S1内に供給される一方、押しボタン415の押圧が解除されたときに、酸素ボンベ10内の酸素ガスのマスク40内への供給が遮断されるように構成されている。この押しボタン415を有する構成および上記のデマンド形の構成について、以下、図4図6を参照しながら説明する。図4は、押しボタンが押されていない状態におけるマスクの断面図である。図5は、押しボタンが押された状態におけるマスクの断面図である。図6は、図5中の2点鎖線VIで囲まれた範囲の拡大図である。
【0044】
図4図6に示されるように、各マスク40は、押しボタン415を含むマスク本体410と、ダイヤフラム418と、押圧部420と、継手430と、切替部材440と、付勢部材450とを有する。
【0045】
マスク本体410は、基部411と、接顔部412と、蓋部413とを有する。
基部411は、筒状に形成されている。
【0046】
接顔部412は、基部411の一端側に接続されている。接顔部412は、使用者の顔面を部分的に覆った状態(当該接顔部412の縁部が使用者の顔面の鼻および口の周りの部位に接した状態)において、顔面と接顔部412との間に空間を形成する形状を有する。接顔部412は、使用者の顔面に密着する弾性材料(ゴムなど)からなる。
【0047】
蓋部413は、基部411の他端側に接続されている。蓋部413の詳細については、後述する。
【0048】
ダイヤフラム418は、基部411および接顔部412内の空間(以下、「主空間S1」という。)を蓋体413内の空間(以下、「副空間S2」という)から遮断する。ダイヤフラム418の縁部は、基部411と蓋部413とにより挟持されている。ダイヤフラム418は、主空間S1の圧力が副空間S2の圧力よりも小さくなったときに、主空間S1側に変位する。
【0049】
押圧部420は、ダイヤフラム418に接続されている。具体的に、押圧部420は、ダイヤフラム418のうち主空間S1に接する面側に接続されている。押圧部420は、ダイヤフラム418とともに主空間S1側または副空間S2側に変位する。
【0050】
継手430は、基部411に接続されている。継手430は、基部411に接続された状態において、継手430内と主空間S1とを連通させるための開口を有している。継手430は、その開口を包囲する弁座432を有している。継手430のうち基部411に接続される側とは反対側の端部には、第1チューブ31の他端に接続された継手31bまたは第2チューブ32の他端に接続された継手32bが接続される。
【0051】
切替部材440は、酸素ボンベ10内の酸素ガスがマスク本体410の主空間S1内に供給される供給状態と、酸素ボンベ10内の酸素ガスのマスク本体410の主空間S1内への供給が遮断される遮断状態と、を切り替える部材である。切替部材440は、継手430に保持されている。切替部材440は、切替体442と、被押圧部444と、連結部446とを有する。
【0052】
切替体442は、継手430内に位置している。切替体442は、弁座432内の開口を閉塞する形状を有する。切替体442が弁座432内の開口を塞ぐ姿勢に保持されることにより、切替部材440が遮断状態となる。一方、切替体442が弁座432内の開口を解放する姿勢に保持されることにより、切替部材440が供給状態となる。
【0053】
被押圧部444は、押圧部420による押圧を受ける部位である。被押圧部444は、押圧部420に接する、あるいは、近接位置にある。
【0054】
連結部446は、切替体442と被押圧部444とを連結している。このため、被押圧部444が押圧部420に押圧されると、連結部446を介して被押圧部444に接続されている切替体442の姿勢が変化する。被押圧部444が押圧部420による押圧を受けていない状態では、切替体442は、弁座432の開口を閉塞する姿勢、つまり、遮断状態となる。一方、被押圧部444が押圧部420による押圧を受けている状態では、切替体442は、弁座432の開口を解放する姿勢、つまり、供給状態となる。
【0055】
付勢部材450は、継手430と切替部材440との間に設けられている。付勢部材450は、切替体442が弁座432内の開口を閉塞する姿勢に維持されるように、切替部材440を付勢している。本実施形態では、付勢部材450は、コイルばねからなる。付勢部材450は、圧縮された状態で継手430と連結部446との間に設けられている。
【0056】
ここで、蓋部413について説明する。蓋部413は、ボタン保持部414と、上記の押しボタン415とを有する。
【0057】
ボタン保持部414は、筒状に形成されている。このボタン保持部414と基部411とによってダイヤフラム418の縁部が挟持されている。ボタン保持部414のうち押圧部420と対向する部位には、押しボタン415の挿通を許容する開口が設けられている。ボタン保持部414のうち上記の開口から離間した部位には、副空間S2を外部に連通させるための貫通孔が設けられている。
【0058】
押しボタン415は、ボタン保持部414に保持されている。押しボタン415は、ボタン保持部414の開口を閉塞している。押しボタン415は、ボタン保持部414に対してダイヤフラム418側に変位可能である。押しボタン415は、ダイヤフラム418および押圧部420を付勢部材450の付勢力に抗して主空間S1側へ押し込むことが可能である。
【0059】
次に、このマスク40の作用について説明する。
遮断状態において押しボタン415が押し込まれると、押圧部420が被押圧部444を押圧する。そうすると、図5および図6に示されるように、切替体442の一部が弁座432から離間する。このため、図6において矢印で示されるように、酸素ガスが主空間S1に供給される。この状態が供給状態である。一方、押しボタン415の押し込みが解除されると、付勢部材450およびダイヤフラム418の弾性復帰力によって、押圧部420が被押圧部444を押圧しない位置に変位する。そうすると、切替体442が弁座432の開口を閉塞する姿勢となる。この状態が遮断状態である。このように、マスク40では、押しボタン415が押圧されている間、酸素ボンベ10内の酸素ガスがマスク40内に供給され、一方、押しボタン415の押圧が解除されたとき、酸素ボンベ10内の酸素ガスのマスク40内への供給が遮断される。
【0060】
接顔部412が使用者の顔面に接触した状態で使用者が吸入すると、主空間S1の圧力が副空間S2の圧力よりも小さくなるため、押しボタン415が押圧されたときと同様に、ダイヤフラム418が主空間S1側へ変位することによって押圧部420が被押圧部444を押圧する。このため、切替体442の一部が弁座432から離間する。よって、酸素ガスが主空間S1に供給される。一方、使用者が吸入を停止すると、主空間S1の圧力が副空間S2の圧力とほぼ等しくなるため、付勢部材450およびダイヤフラム418の弾性復帰力によって、押圧部420が被押圧部444を押圧しない位置に変位する。よって、主空間S1への酸素の供給が遮断される。
【0061】
移動部50は、酸素ボンベ10および分岐具20を搭載可能である。移動部50は、酸素ボンベ10および分岐具20を搭載した状態で移動可能である。本実施形態では、移動部50として、台車(以下、「台車50」と表記する。)が例示されている。台車50は、酸素ボンベ10の吐出口14が上部に位置する姿勢で酸素ボンベ10を支持可能である。具体的に、台車50は、台板52と、ローラー54と、取っ手56と、支持部材58とを有する。
【0062】
台板52は、酸素ボンベ10を下方から支持する。本実施形態では、台板52は、酸素ボンベ10および分岐具20を下方から支持する。台板52は、矩形状に形成されている。台板52は、酸素ボンベ10の長手方向が鉛直方向とほぼ平行となる姿勢で酸素ボンベ10の下部を支持している。台板52は、分岐具20の軸方向が台板52と平行となる姿勢で分岐具20を支持している。
【0063】
ローラー54は、台板52の下面に接続されている。
取っ手56は、台板52から上方に延びる形状を有している。取っ手56の下端部は、台板52のうち、酸素ボンベ10を支持する部位と分岐具20を支持する部位との間の部位に接続されている。
【0064】
支持部材58は、酸素ボンベ10の長手方向が鉛直方向とほぼ平行となるように、酸素ボンベ10を支持する。支持部材58は、支持板58aと、ベルト58bとを有する。
【0065】
支持板58aは、台板52から起立するとともに、容器本体12の周囲の一部を包囲する形状を有する。支持板58aは、酸素ボンベ10と取っ手56との間に設けられている。支持板58aの下端部は、台板52に固定されている。
【0066】
ベルト58bは、容器本体12を支持板58aに向けて押し付ける。ベルト58bの両端部は、支持板58aに固定されている。
【0067】
以上に説明した本実施形態の酸素供給器1では、容器本体12に収容された高圧状態の酸素ガスは、減圧弁Vで所定の圧力に減圧され、中間チューブ30を通じて分岐具20に流入する。そして、分岐具20に流入した酸素ガスは、そこで複数の流路(下流側ポート22b)に分岐される。このため、各下流側ポート22bに接続された下流側継手26に複数の第1チューブ31、第2チューブ32およびマスク40を接続することにより、複数人が同時に酸素ガスを吸入することが可能となる。よって、たとえば複数人で行われるスポーツの後、複数人で同時に酸素を吸入することができる。
【0068】
この実施形態では、4つの下流側継手26および減圧弁Vの第2ポート62を利用することができるので、5名まで同時に酸素を吸入することが可能である。ただし、閉塞部材28を外し、接続用ポート22cに対して、他の分岐具本体の上流側ポートを接続することにより、同時に使用できる人数を増やすことができる。同時に使用可能な人数は、減圧弁Vの容量や全使用者の呼吸のピーク量等を踏まえて決定される。
【0069】
たとえば、小型のスプレータイプ(プッシュ部を押圧している間だけスプレー容器から酸素ガスが噴出されるタイプ)の酸素吸入器も知られているが、複数人が同時に酸素を吸入する場合、使用する人数分だけその酸素吸入器を用意する必要がある。
【0070】
これに対し、本実施形態の酸素供給器1では、単一の酸素ボンベ10および減圧弁Vを備えるだけで複数人に同時に酸素を供給することができる。また、本酸素供給器1では、酸素ボンベ10が酸素ガスを高圧状態で収容することによって、大容量の酸素ガスをコンパクトに収容することと、その高圧状態の酸素ガスを減圧弁Vで減圧することによって、使用者が適切に酸素ガスを吸入することとを両立することができる。しかも、本実施形態の酸素供給器1は、小型のスプレータイプの酸素吸入器よりも長時間の使用が可能であり、さらに、容器本体12に酸素ガスを再充填することによって繰り返し使用することもできる。
【0071】
また、マスク40は、いわゆるデマンド形で構成されているため、すなわち、使用者の呼吸量に応じた分(使用者が吸入した分)だけマスク40内に酸素ガスが供給されるため、酸素ボンベ10内の酸素ガスを余分に消費することを抑制できる。
【0072】
また、マスク40は、押しボタン415を押している間だけマスク40内に酸素ガスが供給される構成である。このため、従来の小型のスプレータイプの酸素吸入器の使用法とほぼ同じ操作でマスク40内に酸素ガスを供給することができる。よって、使用者は、ほとんど違和感を感じることなく酸素を吸入することができる。このように、本実施形態のマスク40は、デマンド形の構成と押しボタン415を有する構成とを兼ね備えているため、ニーズに応じた使用方法が可能である。
【0073】
また、酸素供給器1は、台車50を備えているため、グランドなどの広い場所で酸素ボンベ10を容易に移動させることができる。このため、酸素供給器1の利便性が向上する。
【0074】
また、台車50は、酸素ボンベ10の吐出口14が上部に位置する姿勢で容器本体12を支持する支持部材58を有している。このため、吐出口14に接続された減圧弁Vの操作等が容易となる。
【0075】
また、分岐具20は、台車50の台板52に設置されている。このため、酸素供給器1の重心の位置が高くなることが抑制されるため、台車50の転倒が抑制される。
【0076】
なお、分岐具20は、台板52以外の箇所に設置されてもよい。たとえば、分岐具20は、高さ方向における減圧弁Vと台板52との間の位置に設置されてもよい。この場合、分岐具20は、たとえば、支持板58aに設置される。さらに、分岐具20は、支持板58aのうち、減圧弁V寄りの部位に設置されてもよいし、台板52寄りの部位に設置されてもよい。また、各下流側ポート22bが鉛直方向に沿って並ぶ姿勢で分岐具20が支持板58aに固定されてもよい。あるいは、分岐具20は、減圧弁Vよりも高い位置に設置されてもよい。この場合、分岐具20は、たとえば、取っ手56のうち減圧弁Vよりも高くに位置する部位に固定される。
【0077】
なお、分岐具20と台車50とにより、酸素供給用ユニットを構成してもよい。この場合、台車50に酸素ボンベ10を搭載するとともに、分岐具20に複数のマスク40を接続することにより、複数人が同時に酸素ボンベ10内の酸素を吸入することが可能となる。
【0078】
また、移動部50は、酸素ボンベ10および分岐具20を搭載(収容)可能で、かつ、人が背負うことのできる背負具であってもよい。あるいは、酸素ボンベ10が小型である場合、移動部50は、台車50からローラー54が省略されて手で持ち運びできるものとされてもよい。
【0079】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
この発明は、酸素供給器および酸素供給用ユニットに適用される。
【符号の説明】
【0081】
1 酸素供給器、10 酸素ボンベ、12 容器本体、14 吐出口、20 分岐具、22 分岐具本体、22a 上流側ポート、22b 下流側ポート、24 上流側継手、26 下流側継手、30 中間チューブ、31 第1チューブ、32 第2チューブ、40 マスク、50 移動部(台車)、52 台板、54 ローラー、56 取っ手、58 支持部材、410 マスク本体、411 基部、412 接顔部、413 蓋部、414 ボタン保持部、415 押しボタン、418 ダイヤフラム、420 押圧部、430 継手、432 弁座、440 切替部材、442 切替体、444 被押圧部、446 連結部、450 付勢部材、V 減圧弁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6