(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6675460
(24)【登録日】2020年3月12日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】計量器具の位置決め用装置
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20200323BHJP
【FI】
B25J19/00 D
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-176738(P2018-176738)
(22)【出願日】2018年9月21日
(65)【公開番号】特開2019-72836(P2019-72836A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2018年9月21日
(31)【優先権主張番号】10 2017 009 542.6
(32)【優先日】2017年10月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514297888
【氏名又は名称】マルコ システマナリセ ウント エントヴィックルング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ロイター
【審査官】
松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−172220(JP,A)
【文献】
特開2000−221409(JP,A)
【文献】
特開平04−132904(JP,A)
【文献】
特開2005−312208(JP,A)
【文献】
特開2001−264050(JP,A)
【文献】
特開2001−266517(JP,A)
【文献】
特開昭61−104857(JP,A)
【文献】
特開2005−014123(JP,A)
【文献】
特開2015−134434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
B23Q 1/00 − 1/76
B23Q 9/00 − 9/02
F16F 15/00 − 15/36
F16H 19/00 − 37/16
F16H 49/00
F16H 57/00 − 57/12
G01N 1/00 − 1/44
G02B 19/00 − 21/00
G02B 21/06 − 21/36
H01L 21/67
H01L 41/08
H01L 41/09
H02N 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量器具の位置決め用装置であって、ロボットへの固定のために設けられたベース要素(12)と、ベース要素(12)に移動可能に支持された基部(14)と、基部(14)をベース要素(12)に対して第1の方向(X)に移動可能とする第1のピエゾアクチュエータ(16)と、同時に第1の釣合いおもりを第1の方向とは逆の方向(−X)に移動可能とする第2のピエゾアクチュエータ(18)と、第1のピエゾアクチュエータ(16)の移動を基部(14)に伝達する第1の連結ロッド(40)と、基部(14)をベース要素(12)に対して第2の方向(Y)に移動可能とする第3のピエゾアクチュエータ(22)と、同時に第2の釣合いおもり(24)を第2の方向とは逆の方向に移動可能とする第4のピエゾアクチュエータ(26)と、第3のピエゾアクチュエータ(22)の移動を基部(14)に伝達する第2の連結ロッド(42)と、基部(14)をベース要素(12)に対して第3の方向(Z)に移動可能とする少なくとも1つの第5のピエゾアクチュエータ(28,30)と、同時に第3の釣合いおもり(36)を第3の方向(Z)とは逆の方向に移動可能とする少なくとも1つの第6のピエゾアクチュエータ(32,34)と、第5のピエゾアクチュエータ(28,30)の移動を基部(14)に伝達する少なくとも1つの第3の連結ロッド(44,46)と、を備え、第3の方向(Z)は、第1の方向(X)および第2の方向(Y)に対して直角に延在していることを特徴とする計量器具の位置決め用装置。
【請求項2】
基部(14)は、ベース要素(12)にピボット可能に設けられており、互いに垂直な2つの軸(A1,A2)を中心にピボット可能であることを特徴とする請求項1に記載の計量器具の位置決め用装置(10)。
【請求項3】
少なくとも2つのピエゾアクチュエータは、同じ構造であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の計量器具の位置決め用装置(10)。
【請求項4】
少なくとも2つのピエゾアクチュエータは、制御装置の同じ1つの制御出力に逆の極性で接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の計量器具の位置決め用装置(10)。
【請求項5】
少なくとも2つの釣合いおもり(20,24,36)は、異なる大きさの質量を有することを特徴とする請求項1に記載の計量器具の位置決め用装置(10)。
【請求項6】
基部(14)は、計量駆動装置(54)によって移動可能なプランジャ(52)によって作動する流量調整弁(50)を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の計量器具の位置決め用装置(10)。
【請求項7】
計量駆動装置(54)は、基部(14)と共に第3の方向(Z)に移動可能であることを特徴とする請求項6に記載の計量器具の位置決め用装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置決め装置に関し、特に、計量器具用でかつロボットに固定可能な位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
計量器具は一般的に知られており、例えば、半導体産業で所定量のはんだペーストを塗布し、特に、基板に滴状のはんだ付け箇所を形成するために使用されている。計量器具をロボットに取り付けることにより、所定の時間内に複数の滴状のはんだ付け箇所を全自動で実現することができ、ロボットは、1つのはんだ付け箇所から次のはんだ付け箇所まで計量器具を移動させて滴を正確に配置するために停止する。周知の計量器具では、特にロボットの加減速時に生じる慣性質量は、特定の状況でロボットの望ましくない振動につながり得るとともに、媒体の正確な計量を損なうおそれがあり、少なくともはんだ付け箇所を配置する速度を制限するために問題があることがわかっている。
【0003】
さらに、伝統的なロボットは、素早い動きが要求されたり、方向転換や急発進/急停止のときに必ず問題を有する。方向が変化する加速は、ロボットの振動を引き起こす。リニアガイドは、滑らかな走行を得るためには予荷重を大きくすることはできず、つまり、小さい動きを阻止できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、正確な位置まで高速で移動可能な位置決め装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、請求項1の特徴部を備える装置によって達成される。
【0006】
流量調整弁の位置決め装置の使用に関する本発明の概念は、一方では、ロボットのみによって滴の配置に要求される流量調整弁の動きを実現せずに、この目的のためにピエゾアクチュエータを追加で設けるということである。従って、ロボットの動きには、いわば、ロボットの動きに比べて実質的に速くかつより正確に制御可能なピエゾ式移動が重ね合わされている。これにより、計量器具は、例えば、基板上を一定速度で移動することができ、ピエゾアクチュエータによって滴の実際の配置が行われるときに少なくとも大きく加減速される必要がない。この結果、正確に計量された滴、特に100μm〜200μmの直径を有するはんだペーストの滴等をより速くかつ経済的に基板に塗布することができる。
【0007】
他方では、本発明は、計量ヘッドにおいて、同じ軸上でかつ反対方向に第2の質量が釣合いおもりとして動かされる場合に、ロボットにおいて荷重の変化は生じないという概念に基づいている。
【0008】
本発明の有利な実施例は、従属項、詳細な説明及び図面に記載されている。
【0009】
釣合いおもりの駆動装置が、上記軸上で基部の駆動装置と同じ構成要素に固定されていれば有利であり得る。釣合いおもりは、必ずしも同じ軸上で移動されなくてもよい。基部が左右に移動する際に、対応する質量の半分が逆に移動する場合でも移動は補償される。
【0010】
基部の駆動装置及び補償用質量の駆動装置を同一の設計とすることが有利であり得、これらの2つの移動は逆の極性で制御装置によって実行可能である。
【0011】
また、移動される基部ができる限り小さい質量を有していれば有利である。
【0012】
一実施例によれば、流量調整弁が移動する平面にわたる2つの異なるピエゾ動作が提供される。ピエゾアクチュエータのストロークは、100μm〜500μmの範囲とすることができる。
【0013】
ここで、第1及び第2の方向は、少なくとも互いに対してほぼ直角であることが好ましい。第1及び第2の方向の一方は、ロボットの移動方向と一致してもよく、すなわち、ピエゾ移動の1つはロボットの移動と一致する。第1の方向は、例えば、垂直方向に方向づけられ、特にZ方向を定め、第2及び第3の方向は、水平に方向付けられ、特にロボットも移動可能なX方向及びY方向を定めることができる。
【0014】
ロボットの水平移動に、同じ方向の第1のピエゾ移動とこれに垂直な方向の第2のピエゾ移動が重ね合わされている場合、流量調整弁、特に流量調整弁の計量ニードルがサイクロイドを描くことができ、このサイクロイドは基板に滴を配置するのに特に適している。
【0015】
さらに他の実施例によれば、流量調整弁のプランジャは、ピエゾアクチュエータによって駆動することができる。流量調整弁にピエゾ式駆動装置を使用することで、速くかつ正確な制御の利点が流量調整弁自体の動作、すなわち実際の計量にも有効になる。ここで、第3のピエゾアクチュエータの動作方向は、流量調整弁を移動するピエゾアクチュエータの動作方向と一致してもよく、例えば、垂直に方向付けることができる。
【0016】
少なくとも1つのセンサが、少なくとも1つのピエゾアクチュエータの振れを検出するために有利に設けられる。このようなセンサによって、ピエゾアクチュエータの所望の振れが印加された電圧により実際に達成されたかを確認することができ、任意に電圧を適切に適合させることができる。換言すると、センサはピエゾアクチュエータの調整を可能にする。対応するセンサが、それぞれのピエゾアクチュエータに関連づけられていることが好ましい。しかし、一般に、対応する1つのセンサによってピエゾアクチュエータの1つのみまたは選択されたピエゾアクチュエータを監視することもできる。
【0017】
1つまたは各々のピエゾアクチュエータは、電圧を印加したときに変形、特にひずむピエゾ要素と、ピエゾ要素に取り付けられたアーム延長部と、を含み得る。ピエゾアクチュエータのストロークは、ピエゾアクチュエータによって延長することができる。
【0018】
本発明の他の主題は、ロボットを有する計量システムとこれに固定された上述の位置決め装置である。計量システムによって、上述した利点が同様に得られる。
【0019】
本発明は、さらに、ロボットと、位置決め装置を有するロボットに移動可能に支持された流量調整弁と、を備える計量システムによって媒体を計量する方法に関し、流量調整弁は、流量調整弁の計量ニードルが第1及び第2の方向にわたる平面内でサイクロイドを描くように、ロボットによって第1の方向に移動され、同時にロボットに対して少なくとも1つのピエゾアクチュエータによって第1の方向に移動されるとともに、少なくとも1つの第2のピエゾアクチュエータによって第1の方向に実質的に垂直な第2の方向に移動される。この方法によれば、例えば、はんだペーストの正確に計量された滴、特に100μm〜200μmの直径を有する滴を特に速くかつ経済的に塗布することができる。
【0020】
本発明は、有利な実施例及び添付図面を参照して、以下で単に例示的に説明される。図面は、以下のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】
図1の計量器具の流量調整弁の詳細説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜
図4は、器具を位置決めする装置を示している。図面では器具の例として、計量すべき滴状の媒体であるはんだペーストを基板に配置する計量器具10を示している。しかし、光学式器具や電気試験用器具等の他の器具も考えられる。
【0023】
位置決め装置は、ロボット(図示省略)への固定のために設けられたベース要素12と、ベース要素12に固定された基部14と、を有する。図示の実施例では、基部14は、計量器具10として形成される。
【0024】
基部14は移動可能であり、特にベース要素12に対して第1の方向X、第2の方向Y及び第3の方向Zでピボット可能となっている。この目的で、基部14は軸A1及び軸A2(
図3参照)の両方を中心としてピボット可能となるように関節式結合点15にジンバルを備えている。
【0025】
基部14のX方向への移動のためにピエゾアクチュエータ16が設けられ、基部14にアーム延長部17を介して連結ロッド40によって連結されている。ピエゾアクチュエータ16を駆動することによって、ブーム17の下端はX方向で前後に動かされ、基部14の前端は軸A2周りで連動する。ピエゾアクチュエータ16のストロークは、約200μm程度の大きさであり、すなわち振れは非常に小さいことに留意されたい。関節式結合点15と基部14の前端の間の長いレバーアームにより、基部14の前端は実際の振れ領域においてほぼ線形に移動する。
【0026】
ピエゾアクチュエータ16による基部の移動を補償するために、追加のピエゾアクチュエータ18がベース要素12に固定され、同様にアーム延長部19を有し、アーム延長部19の下端には釣合いおもり20が固定されている。2つのピエゾアクチュエータ18は、逆の極性で制御装置(図示省略)の同じ1つの制御出力に接続されており、連結ロッド40がX方向に移動すると釣合いおもりは−X方向で同じ動きをする。これにより、計量器具を備える基部14が頻繁に交互に前後移動する場合でも、ロボットにおいて荷重の変化は生じない。
【0027】
図4に示すように、ピエゾアクチュエータ22と連結ロッド42は、基部14のY方向の移動のために設けられ、釣合いおもり24が固定されたピエゾアクチュエータ26は、移動を補償するために設けられる。この設計は、上述したものと同様である。
【0028】
基部14をZ方向に移動可能とするために、基部14は2つの連結ロッド44,46によってアーム延長部60に連結され、アーム延長部60はまた2つのピエゾアクチュエータ28,30によって両方向の矢印61(
図3参照)の方向に動かされ、これにより、基部14は軸A2周りでピボット可能となる。この動きを補償するために、第3の釣合いおもり36がベース要素12に設けられ、2つのピエゾアクチュエータ32,34によって、ピエゾアクチュエータ28,30とは逆にピボット可能となっている。基部14の動きのためのピエゾアクチュエータと、釣合いおもりの反対運動のためのピエゾアクチュエータとは、同じ構造で鏡面対称で制御されるため、動きの最良の補償が得られる。
【0029】
図2で図示するように、基部14は計量器具として形成され、プランジャ52によって開閉可能な流量調整弁(metering valve)50が基部14に配置される。ホース65が計量される媒体を供給するために設けられる。
【0030】
図5は、プランジャ52の駆動装置の別の実施例を示しており、この実施例では1つの釣合いおもりではなく、プランジャ52の両側で対称に移動可能な2つの釣合いおもり70,72が設けられている。
【0031】
基部14は、4つの連結ロッド40〜46によって動かされ、連結ロッド44〜46は、Z方向の平行移動を実現し、X及びY方向の駆動装置16,22は弁のノズル位置をその方向に押す。
【0032】
この設計は、基部14の前端のX、Y及びZ方向への移動が、遠隔の固定点15を中心とする僅かな回転によってそれぞれ生じるように構成されている。この設計によれば、基部の質量の一部のみを動かせば、弁をX、Y及びZ方向に移動することができる。固定点15によって、移動による変形が非常に小さい状態で弁50用の供給ホース65をカートリッジに導くことがさらに可能になる。
【0033】
駆動装置と器具を分離して、運動を連結ロッドによって伝達することが有利である。また、X、Y及びZ方向の移動を僅かな回転運動によって発生させることも有利である。これにより、質量中心が位置決め(流量調整ノズル)の地点から遠隔に位置するように、器具または基部14を細長く設計した場合に、移動に必要な仕事量が少なくなる。個々の軸の駆動装置及び釣合いおもりの駆動装置は、それぞれ完全に同一である。これにより、2つの駆動装置を同じ制御出力に逆の極性で接続することによって、非常に単純な制御を行うことができる。