特許第6675467号(P6675467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6675467活性化波面のバイポーラ/ユニポーラハイブリッド検出のための装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6675467
(24)【登録日】2020年3月12日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】活性化波面のバイポーラ/ユニポーラハイブリッド検出のための装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0452 20060101AFI20200323BHJP
【FI】
   A61B5/04 312A
【請求項の数】2
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-224847(P2018-224847)
(22)【出願日】2018年11月30日
(62)【分割の表示】特願2015-14124(P2015-14124)の分割
【原出願日】2015年1月28日
(65)【公開番号】特開2019-51376(P2019-51376A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2018年11月30日
(31)【優先権主張番号】14/166,982
(32)【優先日】2014年1月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ピー.エム.・ホウベン
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル−タル
(72)【発明者】
【氏名】リオール・ボッツァー
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−223730(JP,A)
【文献】 特表2008−523929(JP,A)
【文献】 特表2013−533007(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0191132(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0293771(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/04−5/053
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
プローブが生体の心臓内の場所にあるときにそのプローブの電極からバイポーラ電位図及びユニポーラ電位図を含む信号データを記録するための、電気回路と、
前記信号データを格納するための、メモリと、
ディスプレイと、
前記メモリに接続された、プロセッサと、を備え、前記プロセッサが、
前記バイポーラ電位図及び前記ユニポーラ電位図を時間に関して微分して、微分されたバイポーラ電位図及び微分されたユニポーラ電位図を画定する工程、
前記微分されたユニポーラ電位図での局所最小値に対応する時間をアノテーションポイント候補としてそれぞれ割り当てる工程において、前記局所最小値は、既定の負の閾値より小さい、工程、
前記局所最小値の周りにそれぞれの時間間隔を定める工程、
前記時間間隔のうちの少なくとも1つの間に、前記微分されたバイポーラ電位図が、前記微分されたユニポーラ電位図と相関する活動の基準を満たしていないことを決定する工程、
前記少なくとも1つの時間間隔内にあるアノテーションポイント候補を除外することにより、適格なアノテーションポイント候補を定める工程、
前記適格なアノテーションポイント候補の中から、前記ユニポーラ電位図における活性化の開始時間として1つのアノテーションを設定する工程、及び
そのアノテーションを前記ディスプレイ上で報告する工程、を実行するように動作可能であ
前記相関する活動の基準は、
アノテーションポイント候補の周囲の時間窓(±2ミリ秒)におけるバイポーラ平滑化誘導信号の振幅が−0.008mV/msを超えないこと、
アノテーションポイント候補での前記ユニポーラ電位図の勾配が−0.01mV/ms未満であること、
アノテーションポイント候補を含む前記ユニポーラ電位図及び/又は前記バイポーラ電位図における活動のピークピーク値が特定の振幅(典型的には0.003〜0.008mV)より大きいこと、および、
バイポーラ/ユニポーラ勾配比の絶対値が0.2より大きいこと、
を含む、装置。
【請求項2】
前記電気回路が中央値フィルタを備える、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は心臓生理学に関する。より具体的には、本発明は、心内の電気伝播の評価に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書内で使用する特定の頭字語及び略語の意味については、表1に示す。
【0003】
【表1】
【0004】
心房細動などの心不整脈は、罹患及び死亡の重要な原因である。参照によってその全内容が本明細書に組み込まれる、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第5,546,951号及び同第6,690,963号(いずれもBen Haimに発行済み)、並びにWO 96/05768号は、心臓組織の電気特性、例えば局所興奮到達時間を、心臓内の正確な位置の関数として感知するための方法を開示している。データは、遠位先端部に電気及び位置センサを有する、心臓の中へと前進される1つ以上のカテーテルを使用して収集される。これらのデータに基づく心臓の電気的活動のマップの作成方法は、参照により本明細書に組み込まれる、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,226,542号及び同第6,301,496号(いずれもReisfeldに発行済み)に開示されている。これらの特許に示唆されているように、位置及び電気的活動は、典型的には、心臓の内部表面上の約10点〜約20点で最初に測定される。次いで、これらのデータポイントは一般に、心臓表面の予備復元又はマップを生成するのに十分なものとなる。予備マップは多くの場合、心臓の電気的活動の更に包括的なマップを生成するために、付加的なポイントで取られたデータと組み合わされる。実際、臨床的な状況において、100以上の部位におけるデータを集積して、心腔の電気的活動の詳細な包括的マップを生成することも珍しいことではない。生成された詳細なマップは次いで、心臓の電気的活動の伝播を変化させるために、また正常な心調律を回復するために、治療上の行動指針、例えば組織焼灼を決定する基準として役立ち得る。
【0005】
心臓表面上の各ポイントの軌跡を決定するために、位置センサを収容したカテーテルが使用されてもよい。これらの軌跡は、組織の収縮力などの運動特性を推測するために用いられてもよい。参照によってその全ての内容が本明細書に組み込まれる、Ben Haimに発行済みの米国特許第5,738,096号に開示されているように、心臓内の十分な数のポイントで軌跡の情報が標本化されると、そのような運動特性を示すマップが構築され得る。
【0006】
心臓内の一ポイントでの電気的活動は、通常、心腔の複数のポイントにおける電気的活動を同時に測定するために複数電極カテーテルを前進させることにより測定される。1つ以上の電極によって測定される時間変化する電位から導出される記録は、電位図として知られている。電位図は、ユニポーラ又はバイポーラの導線により測定することができ、例えば、局所興奮到達時間として既知の、一ポイントでの電気伝播の開始を決定するために、使用される。
【0007】
しかしながら、伝導異常が存在すると、電気伝播の指標としての局所興奮到達時間の決定が困難になる。例えば、持続性心房細動中の心房電位図は、単一電位、二重電位、及び複合細分化心房電位(CFAE)という3つの明確に異なるパターンを有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
開始を検出するための現在利用可能なアルゴリズムは、局所最大又は最小振幅の検出(ピーク検出)、若しくはバイポーラ記録の勾配(勾配検出)に基づく局所興奮到達時間(LAT)を測定する。心房又は心室のいずれかのより複雑な活性化においては特に、頻脈の正しいマッピング及び診断を支援する上でのこれらの方法の価値には限りがある。(1)複数のピークを有する電位を示す複合的な記録、及び(2)2つの異なる部位で記録された2つの電位図の混合、という少なくとも2つの因子のために、検出の曖昧さが生じる。その結果、バイポーラ電位図の形態は、それらの双極での活性化の間の位相差により、概ね決定される。より複雑な活性化中は、伝播の方向が連続的に変化し、ユニポーラ電位図と比べて、より高い時空間変動をバイポーラ電位図に導入する。組織の異方性は電位図の形状に影響を与えるが、ユニポーラ電位図の全体的な形態に与える方向の変化による影響は、バイポーラ電位図の場合よりはるかに少ない。
【0009】
本発明の実施形態により方法が提供され、この方法は、生体の心臓にプローブを挿入する工程、そのプローブの電極により心臓内の場所からのバイポーラ電位図及びユニポーラ電位図を記録する工程、関心対象窓を含む時間間隔を定める工程、及びバイポーラ電位図とユニポーラ電位図とを時間に関して微分する工程、により実行される。この方法は更に、微分されたバイポーラ電位図において関心対象窓内のピークを特定する工程、及びそれぞれ対応するピークの周りのバイポーラ活動を含む活動境界を有するバイポーラ活動窓を設定する工程、により実行される。この方法は更に、活動境界内の微分されたユニポーラ電位図において極端な負の値(−dV/dt)を特定する工程、及び該値に対応する時間をユニポーラ活性化の開始として報告する工程、により実行される。
【0010】
この方法の一態様は、ユニポーラ電位図からベースラインのふらつきを取り除くためにユニポーラ電位図をフィルタリングする工程を含む。
【0011】
この方法の別の態様によると、極端な負の値を特定する工程は、ユニポーラ電位図において、右下がり区間を含む勾配窓を画定する工程、右下がり区間に、それぞれ対応する回帰線をフィットさせ工程、その勾配窓における動向を決定する工程、各勾配窓に含まれている最長の単調右下がり区間を特定する工程、最長の単調右下がり区間を含んでいる勾配窓の50%未満を最長の単調右下がり区間が占有していることを決定する工程、及び、その決定に応じて、最長の単調右下がり区間の回帰線の勾配から、その動向の勾配を減算する工程、を含む。
【0012】
新しい極端な負の値を得るために、微分されたバイポーラ電位図として、バイポーラ電位図及び微分されたユニポーラ電位図の時間反転バージョンを用いて、ピークを特定する工程、バイポーラ活動窓を設定する工程、及び極端な負の値を特定する工程、を繰り返す工程、及び、新しい極端な負の値に対応する時間をユニポーラ活性化の終わりとして報告する工程、を含む。
【0013】
この方法のまた別の態様によると、バイポーラ活動窓を設定する工程は、バイポーラ電位図のコンプレックス間のベースラインセグメントを画定する工程、状態マシンを実行することによりそれらのコンプレックスを特定する工程、及びベースラインセグメントとコンプレックスの間の遷移をバイポーラ活動窓の境界として割り当てる工程、を含む。
【0014】
この方法の追加の態様によると、バイポーラ活動窓を設定する工程は、バイポーラ電位図におけるセグメントを、既定値の上であるか又は下であるかに分類する工程、及びセグメントのうちの1つからセグメントのうちの別のセグメントへの遷移を、バイポーラ活動窓の境界として特定する工程、を含む。
【0015】
本発明の実施形態により、更に、方法が提供され、この方法は、生体の心臓にプローブを挿入する工程、それらの電極を用いて心臓内の場所からのバイポーラ電位図及びユニポーラ電位図を記録する工程、及びバイポーラ電位図及びユニポーラ電位図を時間に関して微分する工程、により実行される。この方法は更に、微分されたユニポーラ電位図での最小値に対応する時間をアノテーションポイント候補としてそれぞれ割り当てる工程において、最小値は、既定の負の閾値より小さい、工程、その最小値の周りにそれぞれの時間間隔を定める工程、それらの間間隔のうちの少なくとも1つの間に、バイポーラ電位図又は微分されたバイポーラ電位図が、微分されたユニポーラ電位図と相関する活動の基準を満たしていないことを決定する工程、及びその少なくとも1つの時間間隔内にあるアノテーションポイント候補を除外することにより、適格なアノテーションポイント候補を定める工程、により実行される。この方法は更に、適格なアノテーションポイント候補の中から、ユニポーラ電位図における活性化の開始時間として1つのアノテーションを設定する工程、及びそのアノテーションを報告する工程、により実行される。
【0016】
この方法の別の態様は、バイポーラ電位図及びユニポーラ電位図を調整して、それらのベースライン部分をゼロにする工程を含む。
【0017】
この方法の一態様によると、調整する工程は、中央値フィルタを用いてユニポーラ電位図をフィルタリングすることを含む。
【0018】
この方法の追加の態様によると、調整することは、中央値フィルタでバイポーラ電位図をフィルタリングすることを含む。
【0019】
この方法の一態様によると、相関する活動の基準は、バイポーラ電位図における振幅の変動を含む。
【0020】
この方法の更なる態様によると、振幅の変動は、少なくとも0.008mVである。
【0021】
この方法の別の態様によると、相関する活動の基準は、バイポーラ電位図の勾配が−0.008mV/msを超えていないことを含む。
【0022】
この方法の一態様によると、相関する活動の基準は、バイポーラ電位図の勾配とユニポーラ電位図の勾配との比率が0.2を超えていることを含む。
【0023】
この方法の更なる態様によると、相関する活動の基準は、バイポーラ電位図の振幅とユニポーラ電位図の振幅との比率が既定値を超えていることを含む。
【0024】
この方法の更に別の態様によると、時間間隔は、アノテーションポイント候補から±2msに位置する境界を有する。
【0025】
この方法のまた別の態様によると、アノテーションポイント候補でユニポーラ電位図の勾配は、−0.01mV/msを超えない。
【0026】
この方法の追加の態様では、アノテーションを設定する工程は、複数の適格なアノテーションポイント候補が、既定の単一の活動の基準にしたがう単一の活動を構成することを決定する工程、複数の適格なアノテーションポイント候補をマージして、マージされたアノテーション候補にする工程、及び適格なアノテーションポイント候補のマージされたアノテーション候補及び他のアノテーション候補から1つのアノテーションを選択する工程、を含む。
【0027】
この方法のまた別の態様によると、単一の活動の基準は、微分されたユニポーラ電位図のピークが2つの適格なアノテーションポイント候補の間にあること、及び(1)ピークと2つの適格なアノテーションポイント候補のうちの1つとの差と、(2)2つの適格なアノテーションポイント候補のうちのもう一方との比率が既定の比率を超えていること、を決定すること、を含む。
【0028】
本発明の実施形態により、上述の方法を実行するための装置が更に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明をより深く理解するため、発明の詳細な説明を実例として参照するが、発明の詳細な説明は、同様の要素に同様の参照番号を付した以下の図面と併せ読むべきものである。
図1】本発明の実施形態による、生体の心臓における異常な電気的活動の領域を検出するためのシステムのイラスト図である。
図2】本発明の実施形態による評価のためのバイポーラ電位図一群である。
図3】本発明の実施形態による、バイポーラ電位図における活性化の検出方法の流れ図である。
図4】本発明の実施形態による、図3に示した方法の一部分の実施形態を図示するデータ流れ図である。
図5】本発明の実施形態による、図3に示した方法の一部分を具現化する詳細なデータ流れ図である。
図6】本発明の実施形態による、図3に示した方法の一部分の実施形態を図示するデータ流れ図である。
図7】本発明の実施形態による電位図の関心対象窓の例示的な図である。
図8】本発明の実施形態による、図3に示した方法の一部分の実施形態を図示するデータ流れ図である。
図9】本発明の実施形態による、図3に示した方法の一部分の実施形態を図示するデータ流れ図である。
図10】本発明の実施形態による、図9に示した状態マシンの動作を図示する概略図である。
図11】本発明の実施形態による、図3に示した方法の一部分の実施形態を図示するデータ流れ図である。
図12】本発明の実施形態による、図3に示した方法の一部分の実施形態を図示するデータ流れ図である。
図13図27に示す方法の一部分を具現化するデータ流れ図及び本発明の実施形態によるバイポーラ電位図トレーシングを含む複合図である。
図14】本発明の実施形態による、ユニポーラ電位図における活性化の検出方法の流れ図である。
図15】本発明の実施形態による、ベースライン補正のためのフィルタリング構成のブロック図である。
図16】本発明の実施形態による検索窓を示す検索窓を示す図である。
図17】本発明の実施形態による、図3に示した方法の一部分の実施形態を図示するデータ流れ図である。
図18図17に示す状態マシンの動作を図示する概略図である。
図19図18の状態マシンの例示的な動作を図示する複合的トレーシングである。
図20】本発明の実施形態による、図14に示した方法の一部分の実施形態を図示するデータ流れ図である。
図21】本発明の実施形態による、図27のプロセスの一部分を具現化するデータ流れ図である。
図22】本発明の実施形態による、図21に示すデータの流れの動作を図示するグラフである。
図23】本発明の実施形態による、図27のプロセスの一部分を具現化するデータ流れ図である。
図24】本発明の実施形態による、図27のプロセスの一部分を具現化するデータ流れ図である。
図25】本発明の実施形態によるユニポーラ電位図における開始の検出をグラフで例示する。
図26】本発明の実施形態による、バイポーラ及びユニポーラ電位図における相関並びに非相関電気的活動に基づく、局所活動と遠距離場活動との分離を例示するグラフである。
図27】本発明の代替実施形態による、ユニポーラ及びバイポーラ電位図における活性化の検出方法の流れ図である。
図28】本発明の実施形態による、図27に示した方法の一部分の実施形態を図示するデータ流れ図である。
図29】本発明の実施形態による、アノテーション手順の一部分を例示するグラフである。
図30】本発明の実施形態による、アノテーション手順の別の部分を例示するグラフである。
図31】本発明の実施形態による、ユニポーラ電位図からの誘導信号のトレーシングであり、単一の活動の決定を図示する。
図32】本発明の実施形態による、図27の方法の一部分を具現化するデータ流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の説明では、本発明の様々な原理の深い理解を与えるため、多くの具体的な詳細について記載する。されよう。この場合、しかしながら、これらのすべての詳細が本発明の実施に必ずしも必要ではないことが、当業者には理解一般的な概念を不要に曖昧にすることのないよう、周知の回路、制御論理、並びに従来のアルゴリズム及び処理に対するコンピュータプログラム命令の詳細については詳しく示していない。
【0031】
定義
「アノテーション」又は「アノテーションポイント」は、目的のイベントを示すとみなされる電位図上のポイント又は候補を指す。本開示において、イベントは、典型的には、電極により感知される電波の伝播の開始(局所興奮到達時間)である。
【0032】
「動向」は、電位図の区間にフィットする回帰線の勾配を指す。動向は、多くの場合、トレーシングのサブ区間の値の変化を評価するときの参照として使われる。
【0033】
本明細書で使用される、電位図における「活動」は、電位図の信号における突発的又は起伏性の変化を明確に示す領域を指す。そのような領域は、ベースライン信号の領域の間の顕著な領域として認められる場合がある。本開示において、「活動」は、心臓を通る1つ以上の電気的な伝播の電位記録に現れる徴候を指すことが多い。
【0034】
システムアーキテクチャー
ここで図面を見て、図1を最初に参照すると、これは、本発明に開示する実施形態による、生体21の心臓12における電気的活動の領域を検出するためのシステム10のイラスト図である。このシステムは、典型的には医師であるオペレータ16によって経皮的に挿入される、典型的にはカテーテル14であるプローブを含み、プローブは、患者の血管系を通って、心臓の心室若しくは血管構造に入る。オペレータ16は、カテーテルの遠位端18を、診断すべき標的部位において心臓壁に接触させる。ユニポーラ及びバイポーラ電位図は、カテーテルの遠位部分のマッピング電極を用いて記録される。次いで、上記の米国特許第6,226,542号及び同第6,301,496号、並びに本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,892,091号(本開示は参照によって本明細書に組み込まれる)に開示される方法にしたがって、電位図に基づく電気的活性化マップが作成される。
【0035】
システム10は、以下に説明する機能を実行するための好適なソフトウェアでプログラムされた汎用又は組込み型コンピュータプロセッサを備えることができる。したがって、システム10の、本明細書の他の図に示されている部分は、別個の機能ブロックを複数含むものとして示されているが、これらのブロックは必ずしも別個の物体ではなく、むしろ例えば、プロセッサが利用できるメモリに格納されている異なる計算タスク又はデータオブジェクトを表し得る。これらのタスクは、単一のプロセッサ又は複数のプロセッサで動作するソフトウェアで実行することができる。ソフトウェアは、1つ又は複数のプロセッサに、CD−ROM又は不揮発性メモリのような有形の非一時的媒体で提供され得る。あるいは、又は加えて、システム10はデジタル信号プロセッサ又は実配線ロジックを含んでもよい。
【0036】
カテーテル14は通常、アブレーションを行うために操作者16が必要に応じてカテーテルの遠位端を方向転換、位置決め、及び方向決めすることを可能とする適当な制御部を有するハンドル20を備えている。操作者16を補助するため、カテーテル14の遠位部分には、コンソール24内に位置する位置決めプロセッサ22に信号を供給する位置センサ(図示せず)が収容されている。カテーテル14は、参照によりその開示が本明細書に組み込まれる、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,669,692号に記載されているアブレーションカテーテルに適宜変更を加えたものでよい。コンソール24は、通常、ECGプロセッサ26と表示装置30を含んでいる。
【0037】
位置決めプロセッサ22は、カテーテル14の位置及び配向座標を測定する。一実施形態において、システム10は、カテーテル14の位置と配向を判定する磁気式位置追跡システムを備える。システム10は通常、磁場発生コイル28などの1組の外部ラジエータを備えており、それらの外部ラジエータは、患者の体外の一定の既知の位置に配置されている。コイル28は心臓12近傍に電磁場を発生させる。これらの場は、カテーテル14内に位置する磁場センサにより感知される。
【0038】
簡略化のため図には示されていないが、通常、システム10には他の要素も含まれる。例えば、システム10は、ECG同期信号をコンソール24に供給するために、1つ以上の身体表面電極からの信号を受信するように連結された心電図(ECG)モニタを含んでもよい。システム10はまた、通常、対象の身体の外面に取り付けられた、外部から貼付された基準パッチ、又は心臓12に対して固定位置に維持された、心臓12の中に挿入され内部に配置されたカテーテル、のいずれかの上に基準ポジションセンサを含む。アブレーション部位を冷却するためにカテーテル14を通して液体を循環させるための従来のポンプ及びラインが提供されてもよい。
【0039】
システム10の上記の特徴を具現化する一つのシステムは、Biosense Webster,Inc.(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)から入手可能なCARTO(登録商標)3 Systemである。このシステムは、本明細書に記載される本発明の原理を具現化するように、当業者によって変更されることができる。ユニポーラ及びバイポーラ電位図を得るための好適な多電極バスケット並びにスプラインカテーテルは既知である。そのようなスプラインカテーテルの例は、Pentaray(登録商標)NAVカテーテルであり、Biosense Websterから入手可能である。
【0040】
当該技術分野において従来から行われているように、本開示では、電位図の負値及び右下がり部分、並びにそれらの導関数が参照される。当然、これらの参照は、正値及び右上がり部分を現す逆の極性のケースもまた企図することが理解されるであろう。
【0041】
ユニポーラアノテーションの実施形態
本発明の原理の応用により解決可能な問題をより解りやすく例示するために、ここで、シミュレートされたバイポーラ電位図が8方向に配置されている、本発明の実施形態によるバイポーラ電位図の一群を示す図2を参照する。このバイポーラ電位図は、電気解剖マップ36にハッチングパターンで明確に区分されて示されている、例えばスクエア32、34のユニポーラ電位図の差から算出されたものであり、図中、1つの極はスクエア32に固定配置されており、もう一方の極はその固定された極の位置の周囲で8段階(4つの垂直位置及び4つの斜め位置)回転される。マップ36で、活性波は右から左にわずかに斜めに伝播する。8つのバイポーラコンプレックスから観察される形態は異なっている。この群は、2つの波の融合の結果である複合的活性を示しており、それは、関心対象窓38内のバイポーラコンプレックスの形態及び振幅の大きい差につながる。図2は、活性化の検出における曖昧さを示している。以下に記述する基準を満たす電位図上のイベントを見つけて、そのイベントの時間から基準点/参照の時間を減算することによって、あるポイントを活性波が通過する局所興奮到達時間が算出される。その参照イベントの時間は、別の心内信号又は体表面心電図を用いて定義することができる。
【0042】
ユニポーラアノテーションアルゴリズムへの入力値は、単一のバイポーラ電位図と、(以下に記述する信号処理工程の後の)そのユニポーラ信号の1つである。ユニポーラ電位図は、先端電極及びリング電極から得ることができ、それぞれ、従来、正極及び負極である。あるいは、複数の先端電極及びリング電極を有するスプラインカテーテルなど、いくつかのカテーテルでは、電極のいくつかを正電極として構成し、他の電極を負電極として構成してもよく、電極のタイプにかかわらず、任意の対の電極をバイポーラ測定のために選択することができる。本明細書で言う正電極及び負電極は、それらの変異型も含むと理解されたい。以下の説明において、最初にバイポーラ電位図の処理を説明し、次いで、ユニポーラ電位図の処理を説明する。ユニポーラアノテーションアルゴリズムは2段階を含む。第1段階で、関心対象窓と呼ばれる時間間隔が定義される。第2段階で、その関心対象窓内のユニポーラ電位図の特徴に基づいて局所興奮到達時間が算出される。
【0043】
バイポーラ電位図
ここで図3を参照すると、これは、本発明の実施形態による、バイポーラ電位図における活性化検出方法の流れ図である。この図及び他の流れ図のプロセス工程は、表示を明確にするために特定の線状の順序で示されている。しかしながら、それらのプロセスステップの多くは、並列的に、非同期的に、又は異なる順序で実行し得ることが明白であろう。当業者であれば、プロセスは、別の方法としては、例えば、状態図において、相互関連状態又は事象の数として表現され得ることが理解されるであろう。更には、図示される全てのプロセス工程が、このプロセスを実行するために必要とされるとは限らない場合がある。
【0044】
最初の工程40で、データを取得する。これは、1000Hzで抽出された2500のサンプルを含む2.5秒のデータ記録を含む場合がある。あるいは、例えば8000Hzなど、異なるレートで抽出を行ってもよい。
【0045】
ここで図4を参照すると、これは、最初の工程40で得たデータを入力値として用いる方法の実施形態を例示する高レベルのデータ流れ図である。関心対象窓(WOI)はブロック42で算出され、次にブロック44で方法の第1相が完了し、第2相を表すブロック46に続く。
【0046】
図3に戻り、工程48で心周期が画定される。これは、R波を検出し、そのR波の検出時間を微分することにより行うことができる。微分を電位図に適用すると、生成されるデータシリーズは絶対電圧ではなく電圧の変化(単位時間当たり)を示す。したがって、微分された電位図は、任意の所与の時点での未処理の電位図の勾配を表す。電位図の他の特徴を使用して、当該技術分野で周知のように、心周期を画定することができる。
【0047】
ここで図5を参照すると、これは、本発明の実施形態による、工程48(図3)を具現化するデータ流れ図である。ブロック50で、工程48で得られたデータの解析を行って、R波を検出する。ブロック52で微分を行って、RR区間を算出する。次いで、ブロック54で、平均RR区間を算出する。
【0048】
図3に戻り、工程56で、関心対象窓に関する設定可能なパラメータとして、関心対象窓の中心(WOIcenter)が割り当てられ、検索窓(SEARCHWINDOW)の幅及び値ΔがRR区間に適用される。平均RR区間及び設定可能なパラメータを使用して、関心対象窓、並びに開始(SWstart)及び終了(SWend)により画定される検索窓を定める。関心対象窓は、その中心(WOIcenter)、開始(WOIstart)、及び終了(WOIend)により画定される。
【0049】
ここで図6を参照すると、これは、本発明の実施形態による、工程56(図3)を具現化するデータ流れ図である。ブロック58は、平均RR区間及び設定可能なパラメータが入力値、関心対象窓及び検索窓を定義する値が出力値である関数を具現化する。心周期の他の記述子を工程56で使用することもできる。実際のRRシリーズ、及び例えばRR区間の分散などRRシリーズに関する統計を、ブロック58で入力してもよい。
【0050】
ここで図7を参照すると、これは、平均RR区間により決定され、値ΔRR/2により短縮された、開始及び終了を有する電位図の関心対象窓の例示的な図である。関心対象窓を画定する矢印60が表す区間は、それぞれの側の固定幅の検索窓の、矢印62により示される区間によって、拡張されている。
【0051】
図3に戻り、以下の工程は、(図4に示されている)ように、バイポーラコンプレックスの開始及び終端時間の決定の記述である。信号における鋭い偏向ポイントの検出は、信号の速度に基づくものであり、導関数を使用する。しかしながら、導関数は高域フィルタ(HPF)として作用し、したがって、高周波ノイズを高める。したがって、導関数予測のノイズを減少させるために平滑化関数が使用される。平滑化関数は、σ=0.9を有する正規化されたゼロ平均のガウス関数である。この関数は、±1.5ミリ秒の時間窓のエネルギーの90%を有する。したがって、この値よりも大きい活性化又は遠距離場に近づくことは、事実上無視され、導関数値には影響しない。
【0052】
工程64で、バイポーラ電位図のベースライン調整したバージョンでのローパスフィルタ処理(平滑化)を使用して、ノイズ閾値(NOISETHR)が設定される。
【0053】
工程68で、ローパスフィルタ処理したバイポーラ電位図を使用して、(バイポーラコンプレックス間の)ベースラインセグメントを設定する。ベースラインセグメントは、ノイズレベルを計算するために、及びバイポーラコンプレックスを画定する区間を定めるために、使用される。
【0054】
ここで図8を参照すると、これは、本発明の実施形態による、工程64及び68(図3)の一部を具現化するデータ流れ図である。ローパスフィルタの典型的な設計がブロック70との関係で示されている。データのフィルタリングは、ブロック74で絶対値が取られた後にブロック72で生じる。関心対象窓及び検索窓の平滑化窓バージョンが、ブロック66で出力される。所望により、高域フィルター(図8に図示せず)が工程68に含まれてもよい。
【0055】
ここで図9を参照すると、これは、本発明の実施形態による、工程68(図3)の一部を具現化するデータ流れ図である。この図は、平滑化されたバイポーラ電位図に基づく閾値の計算(ブロック76が示す)、及びその閾値(SMOOTTHR)並びに関心対象窓及び検索窓の平滑化バージョンを受信する2状態マシンをブロック78に示す。この2状態マシンはセグメントの検出を報告し、それらのセグメントは、ブロック46(図4)でノイズ閾値の計算に使用され、後に局所興奮到達の開始を確立するために使用される。
【0056】
ここで図10を参照すると、これは、ブロック78(図9)が表している状態マシン80の動作を例示する概略図である。状態マシンのこの図及び以降の図で、矢印は状態間の遷移を示す。必要な条件及び作用を括弧内に示す。
【0057】
状態マシン80は、データX(n)の値が閾値(THR)より下に下がらない限りは、状態A 82のまま留まる。X(n)値が閾値より下になると、状態B 84への遷移が生じ、計数がゼロに設定される。X(n)値が閾値を超えると計数が増分し、マシンは状態B 84に維持される。計数が既定値(CNTMAX)を超えると、閾値より下への値X(n)の低下が、マシンを状態A 82へ遷移させる。状態マシン80の遷移との相関を実証するために、図の下の部分に平滑化コンプレックス86を示す。ベースラインの存在は、状態A 82に対応し、コンプレックス86は、状態B 84に対応する。
【0058】
代替的実装において、データのセグメントを閾値と比較し、データが閾値の上であるか又は下であるかを分類するように、セクションに区画する。閾値より下で、かつ既定の区間より短い持続時間(例えば8ミリ秒)を有するセクションは、無視される。活性境界は、活動を示すセグメントから無活動を示すセグメントへの、バイポーラ電位図における遷移に対応する。
【0059】
図3に戻り、工程88で、平滑化されたバイポーラコンプレックスはFIRフィルタ又はIIR二方向フィルタを用いてフィルタリングされ、微分され、関心対象窓が適用される。
【0060】
ここで図11を参照すると、これは、本発明の実施形態による、工程88(図3)を具現化するデータ流れ図である。データは、ブロック92でその設計が構成される二方向IRRフィルタ90、典型的にはButterworthフィルタを通過する。あるいは、二方向フィルタリングの使用を必要としないFIRフィルタを使用してもよい。ブロック94で微分が生じ、ブロック96で絶対値への変換が生じる。ブロック98で、関心対象窓(Wsignal(w))が、ブロック96からのデータ出力(dataSignal(n))に適用される。
【0061】
図3に戻り、最終工程100で、検出された開始時点の質が、予測される信号対雑音比(SNR)に基づいて算出される。
【0062】
ここで図12を参照すると、これは、本発明の実施形態による、工程100(図3)の任意の態様を具現化するデータ流れ図である。ブロック102で、バイポーラ電位図の活動境界により定められる時間窓内で受信された信号に基づき2乗平均平方根(RMS)振幅が算出される。ブロック104で、その時間窓外で受信された信号に基づき2乗平均平方根(RMS)振幅が算出され、ノイズとして処理される。その後に、ブロック106に示すように、SNRが信号電力の測定値として算出される。
【0063】
ここで図13を参照すると、これは、本発明の実施形態による勾配の検出のためのデータ流れ図及びバイポーラ電位図トレーシング108を含む複合図である。図3(BWINモジュール)を参照して上述した方法をブロック110で行う。トレーシング108において偏向コンプレックスを包含するように線112、114によって区間が画定される。ブロック116で、正勾配及び負勾配が検出される。勾配の検出は、最小値及び最大値に関して電位図の信号を解析することにより達成される。
【0064】
負の勾配を含む窓118、120、及び正の勾配を含む窓122がトレーシング108に示されている。窓122との小さい重なりが存在するように窓118、120の幅を広げることができる。
【0065】
窓118、120、122は、その後の解析のための境界区間として扱われる。トレーシング108の右下がり区間は、窓118、120内に特定される。線形回帰線を、それらの右下がり区間のそれぞれにフィットさせる。1つの窓に複数の右下がり区間が見られる場合は、それらの勾配を平均化して動向を計算し、ハイブリッドバイポーラ/ユニポーラアノテーションの実施形態の説明において以下で更に詳しく説明するように、更なる解析が実行される。
【0066】
ユニポーラ電位図
ユニポーラ電位図の解析は、以下に説明する手順を用いて、バイポーラ電位図から得た活動境界に基づいて行われる。
【0067】
ここで図14を参照すると、これは、工程68(図3)の詳細を示す流れ図である。最初の工程126で、フィルタ処理されていないユニポーラの正極及び/又は負極からデータを取得する。図14の説明を目的として、バイポーラ電位図のデータは異なる電極の組から同時に取得されたものと仮定する。ユニポーラデータは、バイポーラ導線の1つから得ることができる。
【0068】
次に、工程128で、ガウス導関数を用いて、ベースライン補正、平滑化、及び微分をユニポーラデータに適用する。
【0069】
ここで図15を参照すると、これは、本発明の実施形態による、ベースライン補正に関するフィルタリング構成のブロック図である。このフィルタリング構成は、ユニポーラ及びバイポーラの両方の電位図の信号に有効であり、以下に説明するハイブリッドバイポーラ/ユニポーラアノテーションの実施形態でのデータのフィルタリングに使用することができる。中央値フィルタ130は電位図信号から活動を除去するために設計されており、一方、ローパスフィルタ132(LPF)は中央値フィルタによりもたらされたエッジを平滑化するために設計されている。最後に、ブロック134、136で、未処理の信号からベースライン予測を減算し、ベースラインを含まない信号を得る。
【0070】
図14に戻り、工程138で、検索窓についての時間間隔が定義される。ここで図16を参照すると、これは、本発明の実施形態による、フィルタリングされ微分されたユニポーラ電位図コンプレックスのユニポーラ活動境界間の区間140に基づくユニポーラデータに関する検索窓(Wsignal)を例示する図である。
【0071】
ここで図17を参照すると、これは、本発明の実施形態による、工程138(図14)を具現化するデータ流れ図である。このデータの振幅は、ブロック142、144、146で決定され、その振幅をノイズ閾値と比較する信号が状態マシン148に提供される。関心対象窓内のピーク検出は、ブロック150で行われ、ピークの位置が状態マシン148、152に報告される。状態マシン148、152は同じ様式で動作する。状態マシン148は、局所興奮到達時間を見出すために、フィルタリングされたバイポーラ電位図によって制御される。状態マシン152は、フィルタされたバイポーラ電位図の時間逆転バージョンを用いて、局所終端時間を決定する。逆転バージョンはブロック154で準備される。
【0072】
ここで図18を参照すると、これは、本発明の実施形態による、状態マシン148、152(図17)の動作を例示する概略図である。図18でも図10の表記法を使用している。追加されている小さい円156、158は、出口状態を示す。ブロック150(図17)で決定したバイポーラコンプレックスのピークで始まり、状態マシンは、時間を逆方向に検索しながら、状態A160で開始する。フィルタ処理したバイポーラコンプレックスの振幅がノイズ閾値(NOISETHR)より上にある間は、状態A160が維持される。振幅値X(n)がノイズ閾値より下に下がると、状態マシンは状態A160から状態B162に移動し、カウンタ(cnt)は1にセットされる。
【0073】
マシンが状態B 162である間、値X(n)がノイズ閾値の下でなくなる度に、マシンは状態A 160に戻る。しかし、値X(n)がノイズ閾値より下にある限りは、状態B 162が維持され、カウンタcntは増分する。カウンタcntが既定値(CNTSTATE2)に達したときに、値X(n)がノイズ閾値を超えていなければ、状態C 164への遷移が生じる。
【0074】
状態C 164で、値X(n)がノイズ閾値より下でなくなる度に、マシンは状態D166に遷移し、別のカウンタ(gcnt)が0にセットされる。しかし、値X(n)がノイズ閾値より下にある限りは、状態C 164が維持され、カウンタcntが増分する。カウンタcntが既定値(CNTSTATE3)に達すると、円158により示される出口状態へ遷移する。
【0075】
状態D 166で、値X(n)がノイズ閾値より下に下がる度に、マシンは円156により示される出口状態へ遷移する。この出口状態は、活性化セグメントの終了を記す。しかし、値X(n)がノイズ閾値より下である限りは、カウンタgcntが増分する。カウンタgcntが既定値(CNTSTATE4)を超えると、値X(n)がなおノイズ閾値に達している又は超えていれば、状態A 160に遷移する。
【0076】
ここで図19を参照すると、これは、図18に示す状態マシンの例示的な動作を示す複合トレーシングである。本発明の実施形態によると、バイポーラ電気コンプレックスは、状態マシンの状態の遷移の下位の枠170のプロットの反対側の上位の枠168に示されている。状態マシンの状態はフィルタ処理されたバイポーラコンプレックスのピーク位置で始まり、状態A 160(図18)と状態B 162との間を移動している間は時間を逆行して移動し、やがて、状態C 164から出るときに、出口状態(検出)(矢印172が示す)に達する。図10に関する説明から思い出されるように、状態マシンを使用する代わりに、データのセグメントの分類を使用してもよい。
【0077】
図14に戻り、次に工程174で、フィルタされていないユニポーラ(正及び/又は負)電位図に基づいて、dV/dt(−dV/dt)の最大負値を見つけるために、区間140(図16)の検索が行われる。
【0078】
ここで図20を参照すると、これは、本発明の実施形態による、工程174(図14)を具現化するデータ流れ図である。心臓カテーテルの遠位セグメントに共存することができるリング電極及び先端電極(負及び正の電極)に関するそれぞれのケースがブロック176、178に示されている。ユニポーラ電位図は、例えば区間140(図16)など、特定の境界の間で検索される。
【0079】
ここで図21を参照すると、これは、本発明の実施形態による、工程174(図14)の一部を具現化するデータ流れ図である。ブロック180、182で、図13の説明で上述したように、関連するバイポーラ電位図における右下がり勾配に対応する右下がり区間が検出される。ブロック184で、それぞれ対応する線形回帰線が右下がり区間にフィットされる。ブロック186で、考慮されている窓内の全ての右下がりセグメントを包含する区間から、平均動向が決定される。これを、アノテーションの承認のための別の決定基準として用いる。ブロック188で、各ユニポーラ勾配により占有されている勾配セグメント全体の持続期間に対するユニポーラ勾配窓内の最長単調セグメントの分数が計算される。以下に説明されるように、ブロック188の出力を用いて、ブロック186で算出された動向にしたがって、ユニポーラ電位図において検出されたセグメントの勾配(−dV/dt)を調整するかどうかを決定する。
【0080】
ここで図22を参照すると、これは、本発明の実施形態による、図21に示すデータの流れの動作を例示するグラフである。線190は、バイポーラ電位図活動(図示せず)に関係する窓194内のユニポーラ電位図トレーシング192の単調右下がりセグメントにフィットされている。このセグメントは−0.29の勾配を有し、窓の30%を占有している。
【0081】
ここで図23を参照すると、これは、本発明の実施形態による、負の勾配を有するユニポーラ電位図トレーシングのセグメント化を示すデータ流れ図である。ブロック196で、負勾配を有するトレーシングの部分を特定する。バイポーラトレーシングの勾配窓内に入っている勾配が補正される。セグメントの特定はブロック198で行われる。
【0082】
右上がり勾配を有する、より幅の広い区間に、検出されたユニポーラの右下がり区間を重ね合わせると、検出された勾配を過小評価した予測につながる。あるいは、より幅の広い右下がり勾配に、検出された右下がり勾配区間が重ね合わされると、検出された勾配を過大評価した予測につながる。どちらの状況でも、検出されたユニポーラの右下がり区間がバイポーラ窓の総幅の限られた割合(≦50%)をカバーしているときは、補正を行う必要がある。この割合は、例えば電極のタイプ及び特徴などにより変化し得る。
【0083】
ここで図24を参照すると、これは、本発明の実施形態による、工程174(図14)の一部を具現化するデータ流れ図である。ブロック200で、負のユニポーラ電位図勾配の周囲の動向が、関係する関心対象窓内の全ての右下がり区間の勾配を平均化することによって算出される。次いで、ブロック200及びブロック188(図22)の出力、並びにユニポーラ勾配窓(矢印202が示す)内の動向がブロック204に渡され、ユニポーラ電位図セグメントの勾配が調整され得る。トレーシング210に、2つのバイポーラ電位図勾配窓206、208が示されている。右下がり勾配区間が、それを含むバイポーラ窓の50%未満を占有している場合は、補正が適用される。367ミリ秒から378ミリ秒まで延びている急な単調右下がり勾配212(−0.261mV/ms)を有する区間は、窓206の50%より多くをカバーしている。したがって、この勾配を補正する必要はないと結論付けられる。勾配214を有するトレーシングの、より緩やかな単調勾配セグメントは、窓208の50%未満を占有しており、窓208内の動向の勾配(破線216で示されている)をdV/dtの値から減算することによって補正される。ブロック204は、ユニポーラ電位図の調整された勾配をからなる出力値218を生成する。
【0084】
ここで図25を参照すると、これは、本発明の実施形態による、ユニポーラ電位図における活性化の開始の検出を示すグラフの例である。バイポーラ及びユニポーラ電位図信号は、それぞれ上位パネル220及び下位パネル222に示されている。実線224、226は、図7に示したバイポーラ電位図に関する関心対象窓と一般には同一でない、ユーザ設定可能な関心対象窓を画定する。バイポーラ活動の境界は点線228、230として示されている。ユニポーラ活性化検出ポイント232、234は、最大負勾配(−dV/dt)を示し、線229によって示される参照時点と比較される。この例では、ポイント232、234は、参照時点より先に生じる。
【0085】
図14に戻り、ポイント232、234(図25)に対応する時点が、最終工程236で、ユニポーラ活性化の開始として報告される。
【0086】
ハイブリッドバイポーラ/ユニポーラアノテーションの実施形態
この実施形態では、図3及び図14を参照して上述した手順が拡張される。この実施形態の手順は、平滑化され、ベースラインが取り除かれたバイポーラ電位図及びユニポーラ電位図の導関数を用いる。それらは、電極信号データで自動的かつ連続的に動作する。ユニポーラ信号の導関数の信号における偏向(最小値)に対応する時間が、一時的にアノテーションとして記される。そのような全ての偏向は、感度を最大にすると最初は考慮されるが、バイポーラ電位図において相関活動を示す偏向だけが、保持される。
【0087】
バイポーラ電位図は、2つのユニポーラ電位図(M1〜M2)の間の差の記録である。2つのユニポーラ電位図の少なくとも一方における本質的に全ての可能な有意な右下がりの偏向が検出され、特定の閾値より下の導関数(−dV/dt)を有する偏向は更に解析される。バイポーラとユニポーラの同期スコアが低い偏向、すなわち、バイポーラ電位図における活動との有意な相関に欠ける偏向は、拒否される。そのような非相関ユニポーラ活動は、例えば、蛍光透視検出器及びコリメータ、電力線の影響、及び心室の遠距離場活動によって引き起こされる場合がある磁場干渉によって生じることがある。心室の遠距離場活動は、例えば、上室性頻拍症で生じる場合がある。
【0088】
実際には、ユニポーラ及びバイポーラの両方の電位図信号は、カテーテルの動き、対象体の動き、及び組織との境界面を偏向する呼吸から生じる追加のベースラインふらつき信号を含む場合がある。これらの運動アーチファクトが含む成分は、ほとんどが低周波成分である。しかし、近距離場活動信号もまた、このスペクトル帯に有意なエネルギーを含む場合がある。高域IIR又はFIRフィルタによる従来の除去方法には問題があり、未処理信号に歪み及び形態変化を引き起こす場合がある。したがって、採用される方法は、ベースラインのふらつき及び、電位図信号からのその減算の予測に基づく。これは、図15に関して上述したフィルタリング構成を用いた近距離場活動の除去によって達成し得る。
【0089】
図26を参照すると、これは、本発明の実施形態による、バイポーラ及びユニポーラ電位図における相関並びに非相関電気的活動に基づく、局所活動と遠距離場活動との分離を例示するグラフである。ユニポーラ及びバイポーラの導関数の検討は、それぞれ、窓238、240における相関及び非相関活動を示している。
【0090】
この実施形態の利点は、鋭い偏向を生成し得る遠距離場信号を検出し、除去することができることである。もう1つの利点は、基準を満たす全ての可能な偏向(本明細書で「アノテーション」と呼ばれている)の考慮である。特に関心対象窓の縁にあるものなどこれらの偏向のいくつかは、従来の技法では捉えられない場合がある。
【0091】
ここで図27を参照すると、これは、本発明の代替実施形態による、ユニポーラ及びバイポーラ電位図における活性化検出方法の流れ図である。最初の工程242で、ユニポーラ電位図及びバイポーラ電位図を取得する。
【0092】
処理前相244で、ユニポーラ信号及びバイポーラ電位図信号がフィルタリングされ、それらのベースラインをゼロにするように調整され、平滑化導関数が計算される。工程246で、閾値より下の、ユニポーラ電位図の微分されたユニポーラ電位図におけるユニポーラ電位図データの局所最小値(−dV/dt)が検出される。
【0093】
次に、工程250、252、254、256、258を含むアノテーション相248が始まる。ユニポーラ電位図勾配及びバイポーラ電位図勾配が、それぞれ、工程254、256で算出される。工程250で、工程246で検出された局所最小値が、微分されたバイポーラ電位図と相関され、バイポーラ電位図の勾配と一致するユニポーラ及びバイポーラ誘導電位図における最小値が選択される。アノテーションポイント候補はユニポーラ局所最小値であり、少なくとも以下の基準に対して評価される。
(1)アノテーションポイント候補の周囲の時間窓(±2ミリ秒)におけるバイポーラ平滑化誘導信号の振幅が−0.008mV/msを超えてはならない。
【0094】
追加の基準の組み合わせ及び下位組み合わせは、所望によりアノテーションポイント候補に対して課せられる。
(2)アノテーションポイント候補でのユニポーラ電位図の勾配の値が−0.01mV/ms未満である。
(3)アノテーションポイント候補を含むユニポーラ及び/又はバイポーラ電位図における活動のピークピーク値が特定の振幅(典型的には0.003〜0.008mV)より上である。この目的のために、ピークピーク値は、アノテーションポイント候補を含む活動における信号の最大偏位である。
(4)バイポーラ/ユニポーラ勾配比が0.2より大きい。この目的のために、負極の値は反転される。
【0095】
基準(1)は工程258で評価される。基準(2)〜(4)は工程252で評価される。上記の基準の値は例示的であって、所与の患者又は病状によって異なる場合がある。追加の任意の基準としては、局所動向及び信号形態が含まれる。
【0096】
アノテーションポイント候補で測定されるユニポーラとバイポーラの電位図信号の勾配間の上記の比は、近距離場と遠距離場の活動を微分し得るので、分類基準として有用である。近距離場活動では、右下がり勾配の活動の少なくともいくらかは、バイポーラ信号で表されるべきであり、一方、遠距離場の場合は、バイポーラ電位図は残留活動のみを有するであろう。あるいは、当該技術分野で周知の他の方法を採用して、ユニポーラとバイポーラの電位図信号間の関連を評価してもよい。例えば、多様な相関係数を計算することができる。加えて、又は代わりに、2つの電位図の関係を評価するために、共分散行列、及び統計的有意性の試験を用いることができる。
【0097】
アノテーションポイント候補でのバイポーラ導関数の値は、正極と負極で異なるやり方で算出される。正極については、それは、時間窓(±2ミリ秒)内の最小値であり、負極については、それは、その時間窓内の最大値の負値である。時間窓を用いる理由は、特定の病理及び/又は向き(カテーテルと波の伝播の方向)において、ユニポーラ活性化間の活性化の時間遅延が相殺され得るために、所与のポイントでのバイポーラ信号が小さい又は更にはゼロである場合があるからである。先端の活動はバイポーラにおいて右下がり勾配として認められ、一方、負極での活動はバイポーラ信号において右上がり勾配として認められるので、その値は、正極と負極では異なるやり方で計算される。
【0098】
ここで図28を参照すると、これは、本発明の実施形態による、相248(図27)を具現化するデータ流れ図である。このブロックへの入力値は、試験されているユニポーラ電位図の平滑化導関数、その極性、及びそれに対応するバイポーラ電位図である。ブロック260で、ユニポーラ電位図の平滑化導関数において局所最小値が検出される。最小偏向レートより強い偏向を有する最小値は、ブロック262で特定され、ブロック264で、バイポーラ勾配に関して、更に評価される。
【0099】
最後に、決定ブロック266で、比率試験を用いて勾配の一貫性が評価され、ブロック268でそれが決定される。上記の基準を満たすアノテーションが有効なアノテーションである。
【0100】
ここで図29を参照すると、これは、本発明の実施形態による、アノテーション手順の第1相を例示するグラフである。ユニポーラ電位図トレーシング270及びその平滑化導関数272が示されている。ポイント274、276、278、280は、閾値(水平線282)より下の誘導信号における最小値であり、可能なアノテーションポイントとして更に考慮される。ポイント284、286、288、290、292は、その閾値より上の最小値を示すものであり、拒否される。
【0101】
ここで図30を参照すると、これは、本発明の実施形態による、相248(図27)をグラフで示したものである。ユニポーラ電位図298及びバイポーラ電位図300のそれぞれの導関数294、296を用いて、バイポーラ勾配の変化及びそれらの間の比を計算する。近距離場活動302がユニポーラ信号に存在するときは、偏向ポイントの周囲±2ミリ秒の時間窓304内に、バイポーラ信号(導関数296)における活動もまた存在する。しかし、遠距離場活動308の場合の時間窓306では、活動308についてはバイポーラ/ユニポーラ勾配比が閾値より下になり、アノテーションポイント候補310はブロック266(図28)で拒否されるので、このようにならない。
【0102】
ここで図31を参照すると、これは、ユニポーラ電位図からの誘導信号のトレーシング312であり、本発明の実施形態による信号活動の特定を例示する。ユニポーラ誘導信号及び2つの可能なアノテーションがA[i]及びA[i+1])と記されている。工程314(図27)の一態様は、右上がりの振幅の変化(縦の矢印316により示される)が有意か否かを決定することである。図31は、以下のときの単一活動を例示している。
(1)ピーク318(P)−活性化A[i]とA[i]との比が、既定値(典型的には0.5)よりも大きい、すなわち、
(P−A[i])/A[i]>0.5)であり、かつ
(2)信号振幅における変化(P−A[i])が少なくとも0.01mVである。両方の基準が満たされていれば、A[i]及びA[i+1]の両方のアノテーションが維持される。そうでない場合は、より弱い活性化A[i])が捨てられる。
【0103】
図27に戻ると、処理後の工程314で、単一の活動から生じるアノテーションがマージャー候補として選択される、すなわち、活性化の開始の検出という目的のための単一のイベントとして扱われる。工程320で送信される、ユーザが選択する又はシステムが定義する関心対象窓に基づいて、工程314で得られたマージされた候補からの有効なアノテーションが、工程322で選択される。
【0104】
ここで図32を参照すると、これは、本発明の実施形態による、許容されたバイポーラ検索窓内の、ユニポーラ電位図(UEGM)に基づく局所興奮到達時間の検出を例示するデータ流れ図324、326を示す。バイポーラ窓は、その窓内の勾配(dV/dt)が既定の負の閾値より下であるときに承認される。図324はユニポーラの先端電極、図326はそのリング電極に関する図である。どちらの手順も同様である。
【0105】
ブロック328、330で、それぞれ、それらの窓内の先端電極及びリング電極についての負及び正のバイポーラ勾配窓が承認される。ブロック332、334で、それぞれ、ブロック328、330で承認された窓及び、出力218(図24)からの正極及び負極についての補正されたユニポーラ電位図が適用される。出力336は最適な負補正された窓の勾配であり、出力338は、最適な正補正された窓の勾配である。周知のように、最も急な勾配が選択される。しかし、例えば、ユニポーラ電位図の他の特徴に基づいてなど、他の選択戦略が用いられてもよい。
【0106】
当業者であれば、本発明は、上記に具体的に示し、説明したものに限定されない点は認識されるところであろう。むしろ、本発明の範囲は、上記に述べた異なる特性の組み合わせ及び一部の組み合わせ、並びに上記の説明文を読むことで当業者には想到されるであろう、従来技術にはない変形及び改変をも含むものである。
【0107】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
生体の心臓にプローブを挿入する工程において、前記プローブが電極を有する、工程、
前記電極を用いて前記心臓内の場所からのバイポーラ電位図及びユニポーラ電位図を記録する工程、
関心対象窓(window-of-interest)を含む時間間隔を定める工程、
前記バイポーラ電位図と前記ユニポーラ電位図とを時間に関して微分して、それぞれ、微分されたバイポーラ電位図及び微分されたユニポーラ電位図を画定する工程、
前記微分されたバイポーラ電位図において前記関心対象窓内のピークを特定する工程、
それぞれのピークの周りにバイポーラ活動窓(bipolar activity window)を設定する工程において、前記バイポーラ活動窓が、前記バイポーラ電位図における前記ピークの周りの活動を含む活動境界を有する、工程、及び
前記微分されたユニポーラ電位図において前記活動境界内の極端な負の値(extreme negative value)(−dV/dt)を特定する工程、及び、前記値に対応する時間をユニポーラ活性化の開始として報告する工程、を含む、方法。
(2) 前記ユニポーラ電位図からベースラインのふらつき(baseline wander)を取り除くために前記ユニポーラ電位図をフィルタリングする工程を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 極端な負の値を特定する工程が、
前記ユニポーラ電位図において、右下がり区間を含む勾配窓を画定する工程、
前記右下がり区間に、それぞれ対応する回帰線をフィットさせる工程、
前記勾配窓における動向を決定する工程において、前記動向が勾配を有する、工程、
各勾配窓に含まれている最長の単調右下がり区間を特定する工程、
前記最長の単調右下がり区間を含んでいる勾配窓の50%未満を前記最長の単調右下がり区間が占有していることを決定する工程、及び
その決定に応じて、前記最長の単調右下がり区間の回帰線の勾配から、前記動向の勾配を減算する工程、を含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 新しい極端な負の値を得るために、前記微分されたバイポーラ電位図として、前記バイポーラ電位図及び前記微分されたユニポーラ電位図の時間反転バージョンを用いて、ピークを特定する工程、バイポーラ活動窓を設定する工程、及び極端な負の値を特定する工程、を繰り返す工程、及び、
前記新しい極端な負の値に対応する時間をユニポーラ活性化の終わりとして報告する工程、を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(5) バイポーラ活動窓を設定する工程が、
前記バイポーラ電位図のコンプレックス間のベースラインセグメントを画定する工程、
状態マシンを実行することにより前記コンプレックスを特定する工程、及び
前記ベースラインセグメントと前記コンプレックスとの間の遷移を前記バイポーラ活動窓の境界として割り当てる工程、を含む、実施態様1に記載の方法。
【0108】
(6) バイポーラ活動窓を設定する工程が、
前記バイポーラ電位図におけるセグメントを、既定値の上であるか又は下であるかに分類する工程、及び
前記セグメントのうちの1つから前記セグメントのうちの別のセグメントへの遷移を、前記バイポーラ活動窓の境界として特定する工程、を含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 方法であって、
生体の心臓にプローブを挿入する工程において、前記プローブが電極を有する、工程、
前記電極を用いて前記心臓内の場所からのバイポーラ電位図及びユニポーラ電位図を記録する工程、
前記バイポーラ電位図及び前記ユニポーラ電位図を時間に関して微分して、微分されたバイポーラ電位図及び微分されたユニポーラ電位図を画定する工程、
前記微分されたユニポーラ電位図での最小値に対応する時間をアノテーションポイント候補としてそれぞれ割り当てる工程において、前記最小値は、既定の負の閾値より小さい、工程、
前記最小値の周りにそれぞれの時間間隔を定める工程、
前記時間間隔のうちの少なくとも1つの間に、前記バイポーラ電位図又は前記微分されたバイポーラ電位図が、前記微分されたユニポーラ電位図と相関する活動の基準を満たしていないことを決定する工程、
前記少なくとも1つの時間間隔内にあるアノテーションポイント候補を除外することにより、適格なアノテーションポイント候補を定める工程、
前記適格なアノテーションポイント候補の中から、前記ユニポーラ電位図における活性化の開始時間として1つのアノテーションを設定する工程、及び
前記アノテーションを報告する工程、を含む、方法。
(8) 前記バイポーラ電位図及び前記ユニポーラ電位図を調整して、それらのベースライン部分をゼロにする工程を更に含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 調整する工程が、中央値フィルタを用いて前記ユニポーラ電位図をフィルタリングする工程を含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 調整する工程が、中央値フィルタを用いて前記バイポーラ電位図をフィルタリングする工程を含む、実施態様8に記載の方法。
【0109】
(11) 前記相関する活動の基準が、前記バイポーラ電位図の振幅の変動を含む、実施態様7に記載の方法。
(12) 前記振幅の変動が、少なくとも0.008mVである、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記相関する活動の基準が、前記バイポーラ電位図の勾配が−0.008mV/msを超えていないことを含む、実施態様7に記載の方法。
(14) 前記相関する活動の基準が、前記バイポーラ電位図の勾配と前記ユニポーラ電位図の勾配との比率が0.2を超えることを含む、実施態様7に記載の方法。
(15) 前記相関する活動の基準が、前記バイポーラ電位図の振幅と前記ユニポーラ電位図の振幅との比率が既定値を超えることを含む、実施態様7に記載の方法。
【0110】
(16) 前記時間間隔が、前記アノテーションポイント候補から±2ミリ秒に位置する境界を有する、実施態様7に記載の方法。
(17) 前記アノテーションポイント候補で前記ユニポーラ電位図の勾配が−0.01mV/msを超えない、実施態様7に記載の方法。
(18) アノテーションを設定する工程が、
複数の前記適格なアノテーションポイント候補が、既定の単一の活動の基準にしたがう単一の活動を構成することを決定する工程、
前記複数の前記適格なアノテーションポイント候補をマージして、マージされたアノテーション候補にする工程、及び
前記適格なアノテーションポイント候補の前記マージされたアノテーション候補及び他のアノテーション候補から1つのアノテーションを選択する工程を含む、実施態様7に記載の方法。
(19) 前記単一の活動の基準が、前記微分されたユニポーラ電位図のピークが2つの適格なアノテーションポイント候補の間にあること、及び(1)前記ピークと前記2つの適格なアノテーションポイント候補のうちの1つとの差と、(2)前記2つの適格なアノテーションポイント候補のうちのもう一方との比率が既定の比率を超えていること、を決定することを含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 装置であって、
プローブが生体の心臓内の場所にあるときにそのプローブの電極からバイポーラ電位図及びユニポーラ電位図を含む信号データを記録するための、電気回路と、
前記信号データを格納するための、メモリと、
ディスプレイと、
前記メモリに接続された、プロセッサと、を備え、前記プロセッサが、
関心対象窓を含む時間間隔を定める工程、
前記バイポーラ電位図及び前記ユニポーラ電位図を時間に関して微分して、それぞれ、微分されたバイポーラ電位図及び微分されたユニポーラ電位図を画定する工程、
前記微分されたバイポーラ電位図において前記関心対象窓内のピークを特定する工程、
それぞれのピークの周りにバイポーラ活動窓を設定する工程であって、前記バイポーラ活動窓が活動境界を有し、前記バイポーラ電位図における前記ピークの周りの活動の時間間隔を含む、工程、及び
前記活動境界内の前記微分されたユニポーラ電位図における極端な負の値(−dV/dt)を特定する工程、及びその値に対応する時間を前記ディスプレイ上でユニポーラ活性化の開始として報告する工程、を実行するように動作可能である、装置。
【0111】
(21) 前記電気回路が、前記ユニポーラ電位図からベースラインのふらつきを取り除くためにフィルタを更に含む、実施態様20に記載の装置。
(22) 極端な負の値を特定する工程が、
前記ユニポーラ電位図において、右下がり区間を含む勾配窓を画定する工程、
前記右下がり区間に、それぞれ対応する回帰線をフィットさせる工程、
前記勾配窓における動向を決定する工程において、前記動向が勾配を有する、工程、
各勾配窓に含まれている最長の単調右下がり区間を特定する工程、
前記最長の単調右下がり区間を含んでいる勾配窓の50%未満を前記最長の単調右下がり区間が占有していることを決定する工程、
その決定に応じて、前記最長の単調右下がり区間の回帰線の勾配から、前記動向の勾配を減算する工程、を更に含む、実施態様20に記載の装置。
(23) 前記回帰線の勾配を、それから前記動向の勾配を減算することによって調整する工程を更に含む、実施態様22に記載の装置。
(24) 装置であって、
プローブが生体の心臓内の場所にあるときにそのプローブの電極からバイポーラ電位図及びユニポーラ電位図を含む信号データを記録するための、電気回路と、
前記信号データを格納するための、メモリと、
ディスプレイと、
前記メモリに接続された、プロセッサと、を備え、前記プロセッサが、
前記バイポーラ電位図及び前記ユニポーラ電位図を時間に関して微分して、微分されたバイポーラ電位図及び微分されたユニポーラ電位図を画定する工程、
前記微分されたユニポーラ電位図での最小値に対応する時間をアノテーションポイント候補としてそれぞれ割り当てる工程において、前記最小値は、既定の負の閾値より小さい、工程、
前記最小値の周りにそれぞれの時間間隔を定める工程、
前記時間間隔のうちの少なくとも1つの間に、前記バイポーラ電位図又は前記微分されたバイポーラ電位図が、前記微分されたユニポーラ電位図と相関する活動の基準を満たしていないことを決定する工程、
前記少なくとも1つの時間間隔内にあるアノテーションポイント候補を除外することにより、適格なアノテーションポイント候補を定める工程、
前記適格なアノテーションポイント候補の中から、前記ユニポーラ電位図における活性化の開始時間として1つのアノテーションを設定する工程、及び
そのアノテーションを前記ディスプレイ上で報告する工程、を実行するように動作可能である、装置。
(25) 前記電気回路が中央値フィルタを備える、実施態様24に記載の装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図26
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