(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6675498
(24)【登録日】2020年3月12日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】モバイル決済方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/32 20120101AFI20200323BHJP
G06Q 20/40 20120101ALI20200323BHJP
G07G 1/12 20060101ALI20200323BHJP
G06F 21/32 20130101ALI20200323BHJP
【FI】
G06Q20/32 330
G06Q20/40
G07G1/12 321L
G06F21/32
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-555629(P2018-555629)
(86)(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公表番号】特表2019-521407(P2019-521407A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(86)【国際出願番号】CN2017077989
(87)【国際公開番号】WO2017185926
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2018年11月7日
(31)【優先権主張番号】201610270230.9
(32)【優先日】2016年4月27日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513278998
【氏名又は名称】中国▲銀▼▲聯▼股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 成▲銭▼
(72)【発明者】
【氏名】周 ▲ユ▼
(72)【発明者】
【氏名】郭 ▲偉▼
【審査官】
田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−163960(JP,A)
【文献】
特開2013−054536(JP,A)
【文献】
特開2015−212864(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0225057(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
G06F 21/32
G07G 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル決済端末が外部設備との非接触プロトコル初期化過程を実施するステップと、
前記モバイル決済端末が前記外部設備から非接触アプリケーションを指定するための選択指令を受信するステップと、
前記モバイル決済端末が指定された非接触アプリケーションが指紋認証モードを支持するか否かを確定するステップと、
指紋認証モードを支持する場合、前記モバイル決済端末は指定された非接触アプリケーションが指紋認証を通したか否かを確定するステップと、
指定された非接触アプリケーションが指紋認証を通した場合又は指紋認証モードを支持しない場合、前記モバイル決済端末は、指定された非接触アプリケーションを実行することによって決済操作を実施するステップと、を含み、
前記非接触プロトコル初期化過程の実施は、指紋認証過程の実施から独立し、
前記モバイル決済端末は、アプリケーションのレジスト情報リストをアクセスすることによって、指定された非接触アプリケーションが指紋認証モードを支持するか否かを確定し、前記アプリケーションのレジスト情報リストは、前記モバイル決済端末に常駐している非接触アプリケーションに関連する指紋識別情報を記憶し、前記指紋識別情報は、非接触アプリケーションが指紋認証モードを支持するか否かと示す識別子と、指紋認証モードを支持する場合、指紋認証が通ったか否かと示す状態マークとを含むことを特徴とするモバイル決済方法。
【請求項2】
指紋認証過程は、指定された非接触アプリケーションが指紋認証モードを支持するということを確定する前に、実施される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
指紋認証過程は、指定された非接触アプリケーションが指紋認証モードを支持するということを確定した後に、実施される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記モバイル決済端末が指紋認証が通ったか否かを確定するステップは、
a)前記状態マークを読み取り、
b)前記状態マークが第1設定値であれば、指定された非接触アプリケーションが指紋認証を通したと確定し、前記状態マークが第2設定値であれば、指定された非接触アプリケーションが指紋認証を通していないと確定し、
c)前記状態マークが第3設定値であれば、指紋認証過程を実施し、かつステップa)及びb)を繰り返して実施するが、指紋認証過程において、指紋認証が通ったら、前記状態マークを第1設定値に設定し、さもなければ第2設定値に設定し、
d)前記状態マークを第1設定値又は第2設定値に設定した後、予定時間が経って、前記状態マークを第3設定値にリセットすることを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
モバイル決済端末と外部設備との非接触プロトコル初期化過程を実施し、またモバイル決済端末内に実行される非接触アプリケーションを指定するための選択指令を外部設備から受信するように配置される近距離無線通信ユニットと、
指紋認証過程を実施するように配置される指紋認証ユニットと、
指定された非接触アプリケーションが指紋認証モードを支持するか否かを確定し、
指紋認証モードを支持する場合、指定された非接触アプリケーションが指紋認証を通したか否かを確定し、指定された非接触アプリケーションが指紋認証を通した場合又は指紋認証モードを支持しない場合、決済操作を実行するために、指定された非接触アプリケーションを前記モバイル決済端末内で実行すると指示するように配置される指紋触発モジュールを含む埋め込み型セキュアエレメントとを含み、
前記非接触プロトコル初期化過程の実施は、指紋認証過程の実施から独立し、
前記埋め込み型セキュアエレメントは、前記指紋触発モジュールによってアクセスできるアプリケーションのレジスト情報リストをさらに含み、前記アプリケーションのレジスト情報リストは、前記モバイル決済端末に常駐している非接触アプリケーションに関連する指紋識別情報を記憶し、前記指紋識別情報は、非接触アプリケーションが指紋認証モードを支持するか否かと示す識別子と、指紋認証モードを支持する場合、指紋認証が通ったか否かと示す状態マークとを含むことを特徴とするモバイル決済端末。
【請求項6】
前記モバイル決済端末は携帯電話である請求項5に記載のモバイル決済端末。
【請求項7】
前記埋め込み型セキュアエレメントは、前記指紋認証ユニットの指紋認証結果によって前記アプリケーションのレジスト情報リスト内の状態マークを更新するように配置される指紋識別処理モジュールをさらに含む請求項5に記載のモバイル決済端末。
【請求項8】
前記指紋触発モジュールは、
a)前記状態マークを読み取り、
b)前記状態マークが第1設定値であれば、指定された非接触アプリケーションが指紋認証を通したと確定し、前記状態マークが第2設定値であれば、指定された非接触アプリケーションが指紋認証を通していないと確定し、
c)前記状態マークが第3設定値であれば、指紋認証過程を実施し、かつステップa)及びb)を繰り返して実施するが、指紋認証過程において、指紋認証が通ったら、前記状態マークは前記指紋識別処理モジュールによって第1設定値に設定され、さもなければ前記指紋識別処理モジュールによって第2設定値に設定され、
d)前記状態マークが第1設定値又は第2設定値に設定された後、予定時間が経って、前記状態マークは前記指紋識別処理モジュールによって第3設定値にリセットされるという方法によって指紋認証を通したかと確定するように配置される請求項7に記載のモバイル決済端末。
【請求項9】
指定された非接触アプリケーションは、前記埋め込み型セキュアエレメントにおいて実行される請求項5に記載のモバイル決済端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイル決済技術に関し、具体的には指紋認証モードと非指紋認証モードとの間でシームレスハンドオーバーを行うことができる近距離無線通信機能に基づくモバイル決済方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近距離無線通信機能(NFC)、指紋認証及び埋め込み型セキュアエレメント(eSE)を携帯電話に応用することに伴い、三者を取り入れた携帯電話決済方式は市場で流行しつつある。その典型的な代表とは、アメリカアップル社のApple Pay(登録商標)である。このような指紋決済方式では、指紋認証によって当面のカード所有者が合法的なカード所有者であると確保できるため、カード所有者のカード取引の安全性を確保できる。
【0003】
前記携帯電話決済方式は、指紋認証の使用を必要とする非接触アプリケーションからすれば良好な体験だと言える。一方、セキュリティ認証と非セキュリティ認証を同時に支持する必要のある非接触型応用シチュエーションにとっては、欠陥がある。例えば、携帯電話では、銀行カードの非接触決済を支持する以外、往々にして公共交通カードの非接触決済にも適用される。銀行カード決済の場合、セキュリティを考慮した上、指紋認証のようなセキュリティ保護メカニズムを採用する必要があるので、一定の処理速度を犠牲してもユーザからすれば納得できることである。しかし、公共交通カードの非接触決済の場合、使用の頻繁性、通過時の快速性及び金額の少額化などの特徴があるので、セキュリティ保護メカニズムの提供によってカード取引速度が下げられ、ユーザの体験に大きな影響を及ぼしてしまう。
【0004】
このように、前記二通りの応用シチュエーションの特徴を同時に満たせるモバイル決済技術を携帯電話に提供することが差し迫った要望となっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、セキュリティ保護メカニズムと非セキュリティ保護メカニズムでのモバイル決済シチュエーションに同時に適用でき、かつ両者の間でシームレスハンドオーバーを実現することによって良いユーザ体験を提供できる近距離無線通信機能に基づくモバイル決済方法及び装置を提供するものである。
【0006】
本発明の一つの形態では、以下のステップを含むモバイル決済方法を提供する。
【0007】
モバイル決済端末がそれと外部設備との非接触プロトコル初期化過程を実施するステップと、
前記モバイル決済端末が前記外部設備から非接触アプリケーションを指定するための選択指令を受信するステップと、
前記モバイル決済端末が指定された非接触アプリケーションが指紋認証モードを支持するか否かを確定するステップと、
指紋認証モードを支持する場合、前記モバイル決済端末は指定された非接触アプリケーションが指紋認証を通したか否かを確定するステップと、
指定された非接触アプリケーションが指紋認証を通した場合又は指紋認証モードを支持しない場合、前記モバイル決済端末は指定された非接触アプリケーションを実行することによって決済操作を実施するステップと、を含み、
前記非接触プロトコル初期化過程の実施は、指紋認証過程の実施から独立している。
【0008】
好ましくは、前記方法では、指紋認証過程は指定された非接触アプリケーションが指紋認証モードを支持するということを確定する前に、実施される。
【0009】
好ましくは、前記方法では、指紋認証過程は指定された非接触アプリケーションが指紋認証モードを支持するということを確定した後、に実施される。
【0010】
好ましくは、前記方法では、前記モバイル決済端末はアプリケーションのレジスト情報リストをアクセスすることによって、指定された非接触アプリケーションが指紋認証モードを支持するかを確定し、前記アプリケーションのレジスト情報リストは、前記モバイル決済端末に常駐している非接触アプリケーションに関連する指紋識別情報を記憶し、前記指紋識別情報は、非接触アプリケーションが指紋認証モードを支持するか否かと示す識別子と、指紋認証モードを支持する場合、指紋認証が通ったか否かと示す状態マークとを含む。
【0011】
好ましくは、前記方法では、前記モバイル決済端末が、指紋認証が通ったか否かを確定するステップは、
a)前記状態マークを読み取り、
b)前記状態マークが第1設定値であれば、指定された非接触アプリケーションが指紋認証を通したと確定し、前記状態マークが第2設定値であれば、指定された非接触アプリケーションが指紋認証を通していないと確定し、
c)前記状態マークが第3設定値であれば、指紋認証過程を実施し、かつステップa)及びb)を繰り返して実施するが、指紋認証過程において、指紋認証が通ったら、前記状態マークを第1設定値に設定し、さもなければ第2設定値に設定し、
d)前記状態マークを第1設定値又は第2設定値に設定した後、予定時間を経って、前記状態マークを第3設定値にリセットすることを含む。
【0012】
本発明の一つの形態では、モバイル決済端末と外部設備との非接触プロトコル初期化過程を実施し、モバイル決済端末内に実行される非接触アプリケーションを指定するための選択指令を外部設備から受信するように配置される近距離無線通信ユニットと、
指紋認証過程を実施するように配置される指紋認証ユニットと、
指定された非接触アプリケーションが指紋認証モードを支持するか否かを確定し、
指紋認証モードを支持する場合、指定された非接触アプリケーションが指紋認証を通したか否かを確定し、
指定された非接触アプリケーションが指紋認証を通した場合又は指紋認証モードを支持しない場合、決済操作を行うように、指定された非接触アプリケーションを前記モバイル決済端末内で実行すると指示するように配置される指紋触発モジュールを含む埋め込みセキュアエレメントとを含み、
前記非接触プロトコル初期化過程の実施が指紋認証過程の実施から独立しているモバイル決済端末をさらに提供する。
【0013】
好ましくは、前記モバイル決済端末は携帯電話である。
【0014】
好ましくは、前記モバイル決済端末では、前記埋め込みセキュアエレメントは、前記指紋触発モジュールによってアクセスできるアプリケーションのレジスト情報リストをさらに含み、前記アプリケーションレジスト情報リストは、前記モバイル決済端末に常駐している非接触アプリケーションに関連する指紋識別情報を記憶し、前記指紋識別情報は、非接触アプリケーションが指紋認証モードを支持するかと示す識別子と、指紋認証モードを支持する場合、指紋認証が通ったかと示す状態マークとを含む。
【0015】
好ましくは、前記モバイル決済端末では、前記埋め込みセキュアエレメントは、前記指紋認証ユニットの指紋認証結果によって前記アプリケーションのレジスト情報リスト内の状態マークを更新するように配置される指紋識別処理モジュールをさらに含む。
【0016】
好ましくは、前記モバイル決済端末では、前記指紋触発モジュールが以下の方法によって指紋認証を通したかと確定するように配置される。
【0017】
a)前記状態マークを読み取り、
b)前記状態マークが第1設定値であれば、指定された非接触アプリケーションが指紋認証を通したと確定し、前記状態マークが第2設定値であれば、指定された非接触アプリケーションが指紋認証を通していないと確定し、
c)前記状態マークが第3設定値であれば、指紋認証過程を実施し、かつステップa)及びb)を繰り返して実施するが、指紋認証過程において、指紋認証が通ったら、前記状態マークは前記指紋識別処理モジュールによって第1設定値に設定され、さもなければ前記指紋識別処理モジュールによって第2設定値に設定され、及び
d)前記状態マークが第1設定値又は第2設定値に設定された後、予定時間を経って、前記状態マークは前記指紋識別処理モジュールによって第3設定値にリセットされる。
好ましくは、前記モバイル決済端末では、指定された非接触アプリケーションは前記埋め込みセキュアエレメントにおいて実行される。
【0018】
本発明の上述及び/又は他の方面ならびに利点について、図面を参照した上の各方面に亘る以下の説明によって一層明確かつ理解しやすくなる。図面における同一又は類似するユニットは同じ符号表示を採用する。図面は以下のようなものを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は本発明の一つの実施例に基づくモバイル決済端末の構成概念図である。
【
図2】
図2は本発明の一つの実施例に基づくモバイル決済方法のフローチャートである。
【
図3】
図3は本発明の別の実施例に基づくモバイル決済方法のフローチャートである。
【
図4】
図4は本発明の更なる実施例に基づくモバイル決済方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の代表実施例を図示する図面を参照しながら、本発明をさらに全面的に説明する。なお、本発明は、異なる形で実現できるものであり、本文に挙げられた各実施例に限っていると理解してはならない。挙げられた前記各実施例は、本文の説明を完全化し、本発明の保護範囲をより全面的に当業者に伝えるためである。
【0021】
「含む」や「包括する」などのような用語は、明細書及び特許請求の範囲に直接かつ明確に記載されたユニット及びステップ以外に、本発明が直接又は明確に記載されていない他のユニット及びステップを有するという場合を排除したわけではないことを表している。
本発明の一つの形態によると、近距離無線通信(NFC)の非接触プロトコルの初期化過程は、指紋認証のようなセキュリティアプリケーションメカニズムから独立して別途で実施される。一つの実施例では、例えば携帯電話などのモバイル決済端末が外部設備(例えばPOS端末、地下鉄の改札口、バスカードリーダーなど)に近づくと、指紋認証などの身分認証過程を通したか否かと関係なく、非接触プロトコルの初期化過程を完成させるためにNFC機能は起動される。外部設備によってモバイル決済端末が識別されると、モバイル決済端末が対応する非接触アプリケーションを実行するように、外部設備が非接触指令をモバイル決済端末に送信することによって、決済操作が完成させる。
【0022】
本発明のもう一つの形態によると、セキュリティ保護メカニズムに基づく非接触アプリケーションと非セキュリティ保護メカニズムに基づく非接触アプリケーションを区別するために、指紋識別情報を利用して、ある非接触アプリケーションが指紋認証モードを支持するか否か、また指紋認証モードを支持する場合、指紋認証が通ったか否かと示す。好ましくは、一つの指紋識別情報は、非接触アプリケーションが指紋認証モードを支持するか否かと示す識別子と、指紋認証モードを支持する場合、指紋認証が通ったか否かと示す状態マークと、を含む。さらに好ましくは、一つのパラメータの異なるアサインメントによって識別子及び状態マークの状態を表示することができる。例えば、一つの情報バイトによって各種の状態を表示できる。アサインメント「0」は非接触アプリケーションが指紋識別を支持しない状態を表示し、アサインメント「1」は該非接触アプリケーションが指紋識別を支持する一方、指紋認証過程を実施していない状態を表示し、アサインメント「2」は該非接触アプリケーションが指紋識別を支持しかつ指紋認証過程を通した状態を表示し、アサインメント「3」は該非接触アプリケーションが指紋認証を支持しかつ指紋認証過程を通していない状態を表示する。指紋識別情報は、レジスト情報リストに記憶され、後者は非接触アプリケーションとともに埋め込み型セキュアエレメント(eSE)に保持されることができる。
【0023】
指紋認証を支持しない非接触アプリケーションについて、eSEが外部設備の非接触アプリケーション選択指令を受信した場合、外部設備に非接触アプリケーションの実施結果を直接返信することによって、外部設備とのその後のアプリケーションインタラクション過程を完成させる。
【0024】
指紋認証を支持する非接触アプリケーションについて、eSEが外部設備の非接触アプリケーション選択指令を受信した場合、指紋識別情報によって指紋認証が通っていないと示されたら、eSEは外部設備に非接触アプリケーションが存在しないというエラーメッセージを返信するが、外部設備は非接触アプリケーションを選択することができないので、その後のアプリケーションインタラクション過程を完成できない。指紋識別情報によって指紋認証が通ったと示されたら、eSEは外部設備に非接触アプリケーションの実施結果を返信し、外部設備とその後のアプリケーションインタラクション過程を完成させ、かつアプリケーションインタラクション過程が完成した後に該非接触アプリケーションの指紋識別情報を指紋認証未通過の状態にリセットする。具体的な応用シチュエーションでは、指紋認証を支持する非接触アプリケーションについて、ユーザはカード決済の前に主動的に指紋を入力して指紋認証を行うことによって、非接触アプリケーションの指紋識別情報を更新する、又は外部設備に近づいてカード取引を行う際に、eSEによってモバイル決済端末における指紋クライアントを触発して起動させ、指紋の入力をユーザに提示することによって、該非接触アプリケーションの指紋認証を完成させることができる。
【0025】
以下、図面を通して本発明を実現する実施例を説明する。
【0026】
図1は本発明の一つの実施例に基づくモバイル決済端末の構成概念図である。例示的には、ここでは携帯電話とPOS端末をそれぞれモバイル決済端末と外部設備の実例として挙げる。
【0027】
図1に示すように、モバイル決済端末としての携帯電話10は近距離無線通信(NFC)ユニット110と、指紋認証ユニット120と、埋め込み型セキュアエレメント130と、を含む。
【0028】
近距離無線通信ユニット110は、モバイル決済端末と外部設備としてのPOS端末20との間における非接触プロトコル初期化過程を実施し、モバイル決済端末で実行される非接触アプリケーションを指定するための選択指令をPOS端末から受信し、またPOS端末に非接触アプリケーションの実行結果を返信するように配置される。また、近距離無線通信ユニット110は、さらに、指紋認証ユニット120とカップリングすることで後者の実行を触発し、また埋め込み型セキュアエレメント130とカップリングすることで非接触アプリケーションとPOS端末とのインタラクション過程における通信インターフェースとなるように配置される。
【0029】
図1を参照すると、指紋認証ユニット120は、指紋クライアント121と、指紋認証処理モジュール122と、指紋触発モニタリングモジュール123とを含む。
【0030】
指紋クライアント121は、指紋入力アプリケーションを実行し、指紋触発モニタリングモジュール123の指令に応答し、指紋認証処理モジュール122の指紋認証処理過程を起動させて指紋入力の提示画面を表示するように配置される。指紋認証処理モジュール122は、指紋クライアント121からの起動指令に応答し、ユーザにより入力された指紋と参考対象がマッチングするか否かを検証し、かつ検証結果に基づいて現在選択された非接触アプリケーションの指紋識別情報を更新するように配置される。例えば、上述のように、指紋認証が通ったら、状態マークを「1」から「2」へと更新し、指紋認証が通っていない場合、状態マークを「1」から「3」へと更新する。指紋認証処理モジュール122は、更新後の指紋識別情報を埋め込み型セキュアエレメント(eSE)130に送信する。通常、指紋認証処理モジュール122はセキュリティ保護が必要であるので、一般的には携帯電話が提供する安全環境(例えばTEE)内に実行される。指紋触発モニタリングモジュール123は、近距離無線通信ユニット110からモニタリングされた埋め込み型セキュアエレメント130の指紋呼出指令に応答し、指紋クライアント121を起動して前記操作を実施するように配置される。
【0031】
図1を続けて参照すると、埋め込み型セキュアエレメント130は、指紋触発モジュール131と、指紋識別処理モジュール132と、アプリケーション配布モジュール133と、非接触アプリケーション及びアプリケーションのレジスト情報リストを保存する記憶領域134と、を含む。
【0032】
指紋触発モジュール131は近距離無線通信ユニット110を通してPOS端末20から受信した非接触アプリケーション選択指令に応答し、選択された非接触アプリケーションが指紋認証を支持するか否か及び指紋認証が通ったか否かを判断するように配置される。指紋認証を支持しかつ指紋認証が通っていない場合、指紋触発モジュール131は近距離無線通信ユニット110を通して指紋触発モニタリングモジュール123に指紋呼出指令を送信し、後者によって指紋クライアント121を触発してユーザに指紋入力の提示を呈し、また指紋認証処理モジュール122を触発することで、ユーザ入力指紋と参考対象がマッチングするか否かを検証し、そして現在選択された非接触アプリケーションの指紋識別情報を更新する。指紋識別処理モジュール132は、指紋認証処理モジュール122から返信された指紋情報更新指令に応答し、記憶領域134にアクセスすることによって、アプリケーションのレジスト情報リストにおいて現在の非接触アプリケーションの指紋識別情報を検索して更新する。アプリケーション配布モジュール133は、選択された非接触アプリケーションが指紋認証を支持しない場合、対応する非接触アプリケーションを直接起動して埋め込み型セキュアエレメントにおいて実行を行い、また選択された非接触アプリケーションが指紋認証を支持する場合、指紋識別情報に基づいて指紋認証が通ったと判断する場合、対応する非接触アプリケーションを起動して埋め込み型セキュアエレメントにおいて実行を行うように配置される。
【0033】
図2は本発明の一つの実施例に基づくモバイル決済方法のフローチャートである。例示的には、本実施例は、ユーザが指紋認証を支持する携帯電話決済アプリケーションを利用してPOS端末でカード決済を行う応用シチュエーションであり、ユーザが非接触プロトコル初期化過程を実施する前に主動的に指紋を入力することに関するものである。説明の便宜を図るため、本実施例のモバイル決済方法は
図1に示されるモバイル決済端末によって実現する。ただし、該方法は特定構造を有する装置に限るわけではない。
【0034】
図2に示す流れは、以下のステップを含む。
【0035】
ステップ201:カード決済を行う前に、カード決済に係る非接触アプリケーションに指紋認証が必要であると分かるので、ユーザは主動的に携帯電話における指紋クライアント121を開き、指定された非接触アプリケーションを選択して指示に従って指紋を入力する。
【0036】
ステップ202:指紋認証処理モジュール122は指紋クライアント121の指令に応答し、ユーザにより入力された指紋と参考指紋とを比較する。
【0037】
ステップ203:指紋認証処理モジュール122は比較結果に基づいて該アプリケーションの指紋識別情報を更新しかつ指紋識別処理モジュール132にアプリケーション指紋識別を更新するための指令を送信する。
【0038】
ステップ204:指紋識別処理モジュール132は、受信した指紋識別更新指令に基づき、アプリケーションのレジスト情報リストにおける当該選択された非接触アプリケーションの指紋識別情報について更新する。
【0039】
ステップ205:指紋識別処理モジュール132は、指紋認証処理モジュール122に更新成功というメッセージを返信する。
【0040】
ステップ206:指紋認証が通ったら、指紋認証処理モジュール122は指紋クライアント121に指紋認証通過のメッセージを返信する。
【0041】
ステップ207:指紋クライアント121は、ユーザに対して携帯電話を持ってPOS端末でカード決済することを提示する。
【0042】
ステップ208:指紋識別処理モジュール132は、近距離無線通信ユニットを通してPOS端末から送信された非接触アプリケーション選択指令を受信する。
【0043】
ステップ209:指紋識別処理モジュール132はアプリケーションのレジスト情報リストから該アプリケーションの指紋識別情報を取得する。
【0044】
ステップ210:指紋識別処理モジュール132は、指紋識別情報に基づいて次の処理方式を確定する。具体的には、選択された非接触アプリケーションが指紋認証を通した場合及び選択された非接触アプリケーションが指紋認証を支持しない場合、指紋識別処理モジュール132は、非接触アプリケーション選択指令をアプリケーション配布モジュール133に転送するが、選択された非接触アプリケーションが指紋認証を実行していない場合、指紋識別処理モジュール132は指紋認証過程を行うように指紋触発モジュール131に指示する。該方式は、次に
図3を参照しながら詳しく説明する。一方、選択された非接触アプリケーションが指紋認証を通していない場合、指紋識別処理モジュール132は、非接触アプリケーション選択指令のアプリケーション配布モジュール133への転送を阻止する。本実施例では、指紋認証がすでに通ったので、指紋識別処理モジュール132は、非接触アプリケーション選択指令をアプリケーション配布モジュール133に転送する。
【0045】
ステップ211:アプリケーション配布モジュール133は非接触アプリケーション選択指令に基づき、指定されたアプリケーションを選択して埋め込み型セキュアエレメント130内で実行させ、またアプリケーション選択成功というメッセージを指紋識別処理モジュール132に返信する。
【0046】
ステップ212:指紋識別処理モジュール132は、アプリケーション選択成功メッセージをPOS端末に転送することによって、POS端末と埋め込み型セキュアエレメント130における非接触アプリケーションにその後のアプリケーションインタラクション指令を実行させた結果、ユーザのカード決済過程を完成させる。
【0047】
図3は本発明のもう一つの実施例に基づくモバイル決済方法のフローチャートである。例示的には、本実施例は、ユーザが指紋認証を支持する携帯電話決済アプリケーションを利用してPOS端末でカード決済を行う応用シチュエーションであり、またユーザが非接触プロトコル初期化過程を実施した後に指紋を入力することに関するものである。説明の便宜を図るため、本実施例のモバイル決済方法は
図1に示されるモバイル決済端末によって実現する。ただし、該方法は特定構造を有する装置に限るわけではない。
【0048】
図3に示す流れは、以下のステップを含む。
【0049】
ステップ301:指紋識別処理モジュール132は近距離無線通信ユニットを通してPOS端末から送信される非接触アプリケーション選択指令を受信する。
【0050】
ステップ302:指紋識別処理モジュール132は、アプリケーションのレジスト情報リストから該アプリケーションの指紋識別情報を取得する。
【0051】
ステップ303:指紋識別処理モジュール132は、指紋識別情報に基づいて次の処理方式を確定する。本実施例では、選択された非接触アプリケーションが指紋認証を支持するが、指紋認証をまだ実施していないので、指紋識別処理モジュール132は指紋触発モジュール131に指紋認証過程を起動する指令を送信する。
【0052】
ステップ304:指紋触発モジュール131は、指紋認証過程を起動する指令を近距離無線通信ユニット110を通して指紋触発モニタリングモジュール123に送信する。
【0053】
ステップ305:指紋触発モニタリングモジュール123は、指紋クライアント121を喚起して指紋クライアント121に指紋認証過程を起動させるように指示する。
【0054】
ステップ306:指紋クライアント121は、指紋入力を提示しかつ指紋認証処理モジュール122を起動する。
【0055】
ステップ307:指紋認証処理モジュール122は、指紋クライアント121の指令に応答し、ユーザにより入力された指紋と参考指紋とを比較し、比較結果に基づいて該アプリケーションの指紋識別情報を更新し、かつアプリケーション指紋識別を更新する指令を指紋識別処理モジュール132に送信する。
【0056】
ステップ308:指紋識別処理モジュール132は、受信した指紋識別更新指令に基づき、選択された非接触アプリケーションがアプリケーションのレジスト情報リストにおける指紋識別情報を更新する。
【0057】
ステップ309:指紋認証が通ったら、指紋識別処理モジュール132は、非接触アプリケーション選択指令をアプリケーション配布モジュール133に転送し、さもなければ非接触アプリケーション選択指令がアプリケーション配布モジュール133への転送を阻止する。
【0058】
ステップ310:アプリケーション配布モジュール133は、非接触アプリケーション選択指令に基づき、指定されたアプリケーションを選択して埋め込み型セキュアエレメント130内で実行させ、またアプリケーション選択成功というメッセージを指紋識別処理モジュール132に返信する。
【0059】
ステップ311:指紋識別処理モジュール132は、アプリケーション選択成功というメッセージをPOS端末に転送することによって、POS端末と埋め込み型セキュアエレメント130における非接触アプリケーションにその後のアプリケーションインタラクション指令を実行させ、ユーザカード決済過程を完成させる。
【0060】
前記指紋認証を支持する実施例では、非接触アプリケーションインタラクションが完成した後、該非接触アプリケーションの指紋識別情報は、指紋認証未実施の状態にリセットされる必要がある。これは、以下の方式によって完成できる。指紋識別処理モジュール132が指紋認証処理モジュール122から指紋識別情報更新指令を受信した後にすぐタイマーを起動し、所定時間になると、指紋識別処理モジュール132は該非接触アプリケーションの指紋識別情報を指紋認証未実施の状態にリセットする。
【0061】
図4は本発明の更なる実施例に基づくモバイル決済方法のフローチャートである。例示的には、本実施例は、ユーザが指紋認証を支持しない携帯電話決済アプリケーションを利用してバス端末でカード取引を行う応用シチュエーションに関するものである。説明の便宜を図るため、本実施例のモバイル決済方法は
図1に示されるモバイル決済端末によって実現する。ただし、該方法は特定構造を有する装置に限るわけではない。
【0062】
図4に示す流れは、以下のステップを含む。
【0063】
ステップ401:指紋識別処理モジュール132は、近距離無線通信ユニットを通してPOS端末から送信される非接触アプリケーション選択指令を受信する。
【0064】
ステップ402:指紋識別処理モジュール132は、アプリケーションのレジスト情報リストから該アプリケーションの指紋識別情報を取得する。
【0065】
ステップ403:指紋識別処理モジュール132は、指紋識別情報に基づいて次の処理方式を確定する。本実施例では、選択された非接触アプリケーションが指紋認証を支持しないので、指紋識別処理モジュール132は、非接触アプリケーション選択指令をアプリケーション配布モジュール133に転送する。
【0066】
ステップ404:アプリケーション配布モジュール133は、非接触アプリケーション選択指令に基づき、指定されたアプリケーションを選択して埋め込み型セキュアエレメント130内において実行させ、またアプリケーション選択成功というメッセージを指紋識別処理モジュール132に返信する。
【0067】
ステップ405:指紋識別処理モジュール132は、アプリケーション選択成功というメッセージをPOS端末に転送することによって、POS端末と埋め込み型セキュアエレメント130における非接触アプリケーションにその後のアプリケーションインタラクション指令を実行させ、ユーザカード決済過程を完成させる。
【0068】
前記実施例はいずれもeSE実体である携帯電話に基づいて説明したが、eSEに類似する機能を有するモバイル決済端末(例えば、HCE機能を支持する携帯電話)からすれば、これらの実施例も適用できる。
【0069】
本発明が有する技術上の利点とは、指紋認証モードと非指紋認証モードとのシームレスハンドオーバーを実現することによって、指紋決済が有する便利さと優れたなユーザ体験を保証すると同時に、非指紋認証モードに良いユーザ体験を提供することである。
【0070】
それぞれの代表実施例を示して説明してきたが、当業者なら、特許請求の範囲によって限定された本発明発想の精神及び範囲から逸らすことなく、これらの代表実施例の形式及び細部に対して各種の変更を行うことができると理解できる。
【符号の説明】
【0071】
10 携帯電話
20 端末
110 近距離無線通信(NFC)ユニット
120 指紋認証ユニット
121 指紋クライアント
122 指紋認証処理モジュール
123 指紋触発モニタリングモジュール
130 埋め込み型セキュアエレメント
131 指紋触発モジュール
132 指紋識別処理モジュール
133 アプリケーション配布モジュール
134 記憶領域
201−212 ステップ
301−311 ステップ
401−405 ステップ