(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水酸基を含むビニルエーテルを、水と、アルコール又は環状エーテルから選択される有機溶媒とを含む混合溶媒の存在下、油溶性アゾ系重合開始剤を用いてラジカル重合させることを特徴とする、側鎖に水酸基を有するビニルエーテルポリマーの製造方法。
前記水酸基を含むビニルエーテルが、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、およびジエチレングリコールビニルエーテルからなる群から選択される1種又は2種以上のビニルエーテルである、請求項1記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
前記有機溶媒が、炭素数2〜12の第一級アルコール若しくは第二級アルコール、又はテトラヒドロフランである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のビニルエーテルポリマーの製造方法。
【背景技術】
【0002】
側鎖に水酸基を有するビニルエーテルポリマーは、水溶性ポリマーとして、或いは、温度応答性ポリマーとして有用である。
【0003】
例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)やジエチレングリコールビニルエーテル(DEGV)のホモポリマーは水溶性であり、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)のホモポリマーや、HBVE/HEVEコポリマー、HBEV/DEGVコポリマーは、温度に応じて親疎水性が変化する温度応答性ポリマーとして知られている。
【0004】
一般的なビニルエーテルはカチオン重合性であり、ビニルエーテル単独でのラジカル重合は困難であるが、水酸基を有するビニルエーテルは単独でのラジカル重合が可能であり、例えば、無溶媒又はメタノール等の水可溶性有機溶剤の存在下、油溶性重合開始剤を用いてラジカル重合させることができる(特許文献1)。しかしながら、当該方法ではモノマー転化率が低く、効率的にビニルエーテルをラジカル重合させることができなかった。
なお、水溶性重合開始剤を用いた場合は、目的とするビニルエーテルポリマーよりポリアセタールが多く生成することが報告されている(同特許文献1)。
【0005】
ところで、側鎖に水酸基を有するビニルエーテルポリマーは、一般に高粘度の液状ポリマーであり、作業性および加工性が悪いという問題がある。また、これらビニルエーテルポリマーは水溶液又は水性組成物として用いられる場合が多いが、高粘度であるため高濃度での使用が困難であり、用途が限定されている。
【0006】
ポリマーの粘度を低下させる方法としては、例えば、より分子量の小さいポリマーを使用する方法が挙げられる。ラジカル重合においてポリマーの分子量を小さくする方法としては、連鎖移動剤(分子量調整剤)を使用する方法が知られている。
例えば、特許文献2には、連鎖移動剤としてプロピレングリコールや2−ヘキサノール等の第二アルコールを使用した低分子量ポリアクリル酸の製造方法が開示されている。また、特許文献3には、イソプロパノール等、特定の連鎖移動定数を有する溶媒又はこれと水との混合溶媒中でラジカル重合を行う低分子量水溶性アクリル樹脂の製造方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、水酸基を有するビニルエーテルのみをラジカル重合する場合において、連鎖移動剤の使用や溶媒の連鎖移動定数が検討された例はない。連鎖移動剤の性能はモノマーの種類によって大きく変わることから、前記特許文献2記載のアクリル系モノマーのラジカル重合法から、水酸基を有するビニルエーテルのラジカル重合において好適な連鎖移動剤や分子量制御の知見を得ることはできない。
また温度応答性ポリマーにおいては、一般に、ポリマーの分子量や組成比等の均一性が低いと鋭敏な温度応答性を示さなくなる。連鎖移動剤を使用した場合には、連鎖移動剤由来の末端構造を有するポリマーと、開始剤由来の末端構造を有するポリマーが混在することになり、連鎖移動剤由来の末端構造の混在がポリマーの温度応答性に与える影響について予測することは困難である。
【0008】
さらにまた、側鎖に水酸基を有するビニルエーテルポリマーの場合は、分子鎖の絡み合いだけではなく、側鎖水酸基による水素結合の影響が大きいため、分子量を低下させるだけでは十分な粘度低下効果は得られないと考えられる。
【0009】
側鎖に水酸基を有するビニルエーテルポリマーにおいて、側鎖水酸基による水素結合を低減させる方法として、アルキルビニルエーテル等の水酸基を有しないビニルエーテルを疎水性単位として導入する方法が考えられる。
しかしながら、水酸基を有しないビニルエーテルはラジカル重合による反応性が低いため、ラジカル重合により疎水性単位を定量的に導入することは困難である。このため、得られたポリマーの分子量や組成比が不均一となり、水への溶解性や温度応答性等の性能が低下するという問題がある。
【0010】
水酸基を有するビニルエーテルと水酸基を有しないビニルエーテルを共重合させて、分子量や組成比の揃ったポリマーを合成する方法として、水酸基を保護化試薬(キャッピング剤)により保護したモノマーを用いてリビングカチオン重合を行い、重合後に保護基を脱保護する方法が知られている。
しかしながら、リビングカチオン重合は通常0℃以下の低温下で行われ、工業的スケールでは反応熱により温度制御が容易ではなく、さらに無水状態且つ不活性ガス中で反応させる必要がある(非特許文献1)。そのため、ラジカル重合に比べ、工業的に低コスト且つ効率的に製造することが困難となっている。また、キャッピングされた水酸基を有するモノマーを用いる方法は、重合後にキャッピング剤の脱保護工程が必要となり、脱保護には一般に酸又はアルカリが使用されるため、その除去工程も必要となる。このような工程数の増加は、ポリマーの製造コスト増大に直結する。
【0011】
また、疎水性単位を導入する方法としては、上記以外にも、例えば、重合後の側鎖水酸基に部分的にキャッピング剤を反応させる方法等が考えられる。
しかしながら、当該方法では、重合工程に加え水酸基のキャッピング工程が必要となり、ポリマーの製造コストが増大するという難点がある。また、部分的なキャッピングは保護率の制御が難しく、工業的に再現性良く同じ品質のポリマーを製造することが困難であり、さらに、保管条件によってキャッピング剤の加水分解等により保護率が変化し、水への溶解性や温度応答性等の性能に影響を及ぼすことも懸念される。
また、いずれの方法においても、疎水性単位を導入する方法では、疎水性単位そのものが水への溶解性や温度応答性の阻害要因となり、特に低分子量体は疎水性単位の影響を大きく受けやすいことから、疎水性単位を導入して水素結合による粘度上昇を抑制する方法には限界がある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
<ビニルエーテルポリマーの製造方法>
本発明のビニルエーテルポリマーの製造方法に用いられる水酸基を有するビニルエーテルは、ビニルエーテルポリマーの用途に応じて、適宜選択することができるが、好ましくは、下記式(1):
【化1】
(式中、R
1は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又は炭素数3〜7の直鎖、分岐鎖状、又は環状エーテルからn+1個の水素原子を除いた基を示し、nは1〜5である。)で表されるビニルエーテルである。
【0022】
式(1)において、R
1で示される炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基は、分岐していても、環状構造を含んでいてもよく、炭素数1〜10のn+1価のアルキル基又は炭素数5〜10のn+1価の脂環式炭化水素基が挙げられる。
【0023】
炭素数1〜10のn+1価のアルキル基としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン等の直鎖又は分岐鎖状のアルカンからn+1個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0024】
炭素数5〜10のn+1価の脂環式炭化水素基としては、炭素数5〜10の単環又は多環のシクロアルカンもしくはそのアルキル置換体からn+1個の水素原子を除いた基が挙げられる。除かれる水素原子は、シクロアルカンのものであっても付加されたアルキル基のものであってもよい。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンやそのアルキル置換体からn+1個の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、デカヒドロナフタレン等のポリシクロアルカンやそのアルキル置換体からn+1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0025】
シクロアルカンに付加するアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基を挙げることができ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、イソアミル基が挙げられる。置換基の数は1に限られず、複数の置換基を有する場合はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0026】
これらの中でも、得られたポリマーの水への溶解性又は温度応答性の点で炭素数1〜6の2価(n=1)のアルキル基(アルキレン基)が好ましく、炭素数2〜4の2価(n=1)の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基(アルキレン基)が特に好ましい。具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、メチルエチレン基、エチルメチレン基、エチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、1−メチルトリメチレン基、1−メチルテトラメチレン基、1,3−ジメチルトリメチレン基等が挙げられ、特に好ましくは、エチレン基(−CH
2CH
2−)、トリメチレン基(−CH
2CH
2CH
2−)、テトラメチレン基(−CH
2CH
2CH
2CH
2−)等の直鎖アルキレン基が挙げられる。
【0027】
また、式(1)において、R
1で示される炭素数3〜7の直鎖、分岐鎖状、又は環状エーテルからn+1個の水素原子を除いた基としては、具体的には、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、エチルブチルエーテル、メチルsec−ブチルエーテル、エチルsec−ブチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテル等の直鎖又は分岐鎖状エーテルからn+1個の水素原子を除いた基;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテルからn+1個の水素原子をのぞいた基が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、得られたポリマーの水への溶解性の点で炭素数3〜7の2価(n=1)の直鎖又は分岐鎖状のアルコシアルキル基が好ましい。具体的には、エチレンオキシエチレン基、テトラメチレンオキシテトラメチレン基、メチルエチレンオキシメチルエチレン基等が挙げられ、エチレンオキシエチレン基(−CH
2CH
2OCH
2CH
2−)が特に好ましい。
【0029】
また、水酸基の数nは、低粘度性の点で好ましくは1、2又は3であり、より好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
【0030】
上記式(1)で示されるビニルエーテルのうち、1個の水酸基を有するビニルエーテルとしては、具体的には、ヒドロキシメチルビニルエーテル、1−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル等の直鎖状のヒドロキシアルキルビニルエーテル;
【0031】
1−ヒドロキシエチルビニルエーテル、1−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−1−メチルエチルビニルエーテル、1−ヒドロキシ−1−メチルエチルビニルエーテル、1−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−1−メチルプロピルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチルビニルエーテル、1−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシアミルビニルエーテル、3−ヒドロキシアミルビニルエーテル、2−ヒドロキシアミルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−3−メチルブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−3−メチルブチルエーテル等の分岐鎖状のヒドロキシアルキルビニルエーテル;
【0032】
2−ヒドロキシシクロペンチルビニルエーテル、3−ヒドロキシシクロペンチルビニルエーテル、2−ヒドロキシシクロへキシルビニルエーテル、3−ヒドロキシシクロへキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−シクロへキシルビニルエーテル、4−(ヒドロキシメチル)シクロへキシルビニルエーテル、4−(2−ヒドロキシエチル)シクロへキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシシクロへプチルビニルエーテル、2−ヒドロキシシクロオクチルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロオクチルビニルエーテル、2−ヒドロキシシクロデカニルビニルエーテル等の単環のヒドロキシシクロアルキルビニルエーテル;
3−ヒドロキシ−1−ビニルオキシアダマンタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンジオールモノビニルエーテル、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカンジオールモノビニルエーテル、デカリンジオールモノビニルエーテル等の多環のヒドロキシシクロアルキルビニルエーテル;
【0033】
2−ヒドロキシ−1−メトキシエチルビニルエーテル、1−ヒドロキシ−2−メトキシエチルビニルエーテル、2−(ヒドロキシメトキシ)エチルビニルエーテル、1−(ヒドロキシメトキシ)エチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジプロピレングリコールビニルエーテル、3−ヒドロキシ−1−メトキシプロピルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−1−エトキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−1−エトキシブチルビニルエーテル、2−(2−ヒドロキシエチル)−1−メチルエチルビニルエーテル等の直鎖又は分岐鎖状のヒドロキシアルコキシビニルエーテル;
4−ヒドロキシ−3−ビニルオキシテトラヒドロフラン、4−ヒドロキシ−2−ビニルオキシテトラヒドロフラン、4−ヒドロキシ−2−ビニルオキシテトラヒドロピラン等の水酸基及びビニロキシ基を有する環状エーテル等が挙げられる。
【0034】
2個のヒドロキシル基を有するビニルエーテルとしては、グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、2,3,4−ヘキサントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール等の3価アルコールのモノビニルエーテルが挙げられる。
【0035】
3個のヒドロキシル基を有するビニルエーテルとしては、エリスリトール、ペンタエリスリトール、1,2,3,4−ペンタテトロール、2,3,4,5−ヘキサテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン、等の4価アルコールのモノビニルエーテルが挙げられる。
【0036】
4個のヒドロキシル基を有するビニルエーテルとしては、アドニトール、アラビニトール、キシリトール、トリグリセリン、等の5価アルコールのモノビニルエーテルが挙げられる。
【0037】
5個のヒドロキシル基を有するビニルエーテルとしては、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ダルシトール、イノシトール等の6価アルコールのモノビニルエーテルが挙げられる。
【0038】
これらのビニルエーテルの中でも、得られたポリマーの低粘度性の点で1個のヒドロキシル基を有するビニルエーテルが好ましく、中でも、温度応答性又は水への溶解性の点で、直鎖又は分岐鎖状のヒドロキシアルキルビニルエーテル及びヒドロキシアルコキシアルキルビニルエーテルが好ましく、ヒドロキシメチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−1−メチルエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−2−メチル−プロピルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−3−メチルプロピルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジプロピレングリコールビニルエーテル等がより好ましく、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテルが特に好ましい。
【0039】
これらの水酸基を含むビニルエーテルは、1種単独で用いても又は2種以上を併用しても構わないが、親疎水性の異なる2種以上のビニルエーテルをランダム共重合することにより、任意の温度で温度応答性を示すビニルエーテルポリマーを得ることもできる。
【0040】
また、本発明の製造方法は、水と、アルコール及び環状エーテルから選択される有機溶媒とを含む混合溶媒の存在下でラジカル重合を行うことを特徴とする。
本発明の製造方法において、ラジカル重合を水の存在下で行うことにより、高いモノマー転化率で重合を行うことができ、ビニルエーテルポリマー中の残存モノマー量を低減することができる。モノマー転化率(2種以上のモノマーを用いる場合は転化率の平均値)は、通常95モル%以上であり、より好ましくは97モル%以上であり、さらに好ましくは99モル%以上である。
【0041】
また、アルコール及び環状エーテルから選択される有機溶媒は、後述するように、その一部が連鎖移動剤として作用するが、その大部分は水とともに希釈剤として作用する。したがって本明細書では、水と有機溶媒との混合溶媒を「重合溶媒」として定義する。
なお、混合溶媒(重合溶媒)において水と有機溶媒は必ずしも混和する必要はなく、重合に用いる他の全ての成分についても、混合溶媒(重合溶媒)に完全に溶解又は混和する必要はない。不溶成分については、攪拌等の操作により懸濁又は分散すればよい。
【0042】
アルコールとしては、炭素数2〜12の第一級アルコール又は第二級アルコールが好ましく、分岐していても、環状構造を含んでいてもよい。
具体的には、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール等の直鎖状の1価アルコール;
イソプロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチルブタノール、3−メチルブタノール、ネオペンタノール、2−ヘキサノール、2,2−ジメチルブタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール等の分岐鎖状の1価アルコール;
シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール等の環構造を含む1価アルコール;
エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、3−メチルペンタンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール等の直鎖又は分岐鎖状の2価アルコール;
1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール等の環構造を含む2価アルコール等が挙げられる。
【0043】
これらの中でも、得られたポリマーの粘度低下及び温度応答性の鋭敏化の点で、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖状の第一級又は第二級アルコールが好ましく、炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖状の第一級又は第二級アルコールがより好ましく、炭素数3〜4の第二級アルコールがさらに好ましく、得られたポリマーの水への溶解性の点では、イソプロピルアルコール(IPA)、プロピレングリコール(PG)等の水溶性のアルコールが特に好ましい。
【0044】
また、前記環状エーテルとしては、四員環、五員環、六員環の環状エーテルが挙げられる。具体的には、オキセタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等が挙げられる。これらの中でも、得られたポリマーの粘度低下、温度応答性の鋭敏化及び水への溶解性の点でテトラヒドロフラン(THF)が好ましい。
これらの有機溶媒は1種単独で用いても2種以上を併用しても構わない。
【0045】
水と有機溶媒の混合溶媒(重合溶媒)の使用量は、重合反応に用いるビニルエーテルの総量100質量部に対する水と有機溶媒の総量として、10〜1000質量部の範囲内が好ましく、20〜500質量部の範囲内がより好ましく、50〜200質量部の範囲内が特に好ましい。混合溶媒の使用量が10質量部以上であれば、重合反応を十分に進行させてモノマー転化率を高めることができ、混合溶媒の使用量が1000質量部以下であれば、溶媒コストを抑えながら重合速度を保ち、効率的且つ経済的に重合を行うことができる。
【0046】
また、混合溶媒における水と有機溶媒の割合は、水100質量部に対する有機溶媒の総量として、10〜1000質量部の範囲内が好ましく、20〜500質量部の範囲内がより好ましく、50〜200質量部の範囲内が特に好ましい。
【0047】
また、本発明の製造方法では、ラジカル重合開始剤として、油溶性アゾ系重合開始剤を用いることを特徴とする。油溶性アゾ系重合開始剤を用いることにより、溶媒として水を用いた場合であっても、ポリアセタール等の副生を抑制することができる。
また、油溶性アゾ系重合開始剤は、水に不溶性又は難溶性(23℃における水への溶解度が10質量%以下、好ましくは5質量%以下)であるため、重合溶媒として水を用いる本発明の製造方法においては、重合開始剤は重合系内において析出又は相分離した状態で存在する。本発明では、このような不均一系で重合反応が行われるにもかかわらず、驚くべきことに、例えば、重合溶媒としてアルコールのみを用いて、油溶性アゾ系重合開始剤を完全に溶解させて重合を行う場合と比較して、より高いモノマー転化率で重合を行うことができる。
【0048】
油溶性アゾ系重合開始剤としては、具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のニトリル型アゾ化合物;
ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナート)(MAIB)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルブチラート)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルペンタノアート)等のエステル型アゾ化合物;
2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミドなどの酸アミド型アゾ化合物等が挙げられる。
これらの中でも、水存在下での反応性の点でエステル型アゾ化合物が好ましく、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナート)(MAIB)が特に好ましい。
【0049】
重合開始剤は、1種単独で用いても又は2種以上を併用しても構わない。また、重合開始剤の使用量は、反応温度や開始剤の種類、ビニルエーテルの種類及び組成、得られるポリマーの分子量等によって異なるため一概に限定することはできないが、ビニルエーテルの総量100質量部に対して1〜50質量部が好ましく、10〜50質量部が特に好ましい。重合開始剤の添加量が1質量部以上であれば、重合反応を十分に進行させることができる。
【0050】
重合温度は、重合開始剤の種類に応じて適宜選択すればよく、段階的に温度を変えて反応させてもよい。一般的には50〜180℃の範囲内であることが好ましく、60〜170℃の範囲内であることが特に好ましい。反応温度が50℃以上であれば反応速度を保つことができ、反応温度が180℃以下であれば重合開始剤の分解を抑制して効率的に重合を行うことができる。
【0051】
本発明の製造方法により得られるビニルエーテルポリマーの分子量及び分子量分布は、その用途に応じて適宜設定され得るものであり特に限定されないが、低粘度性の点から数平均分子量(Mn)が500〜10000の範囲内であることが好ましく、600〜6000の範囲内であることがより好ましく、1000〜5000の範囲内であることがより好ましく、1500〜3000の範囲内であることが特に好ましい。また、重量平均分子量(Mw)は、1000〜10000の範囲内であることが好ましく、2000〜8000の範囲内であることが好ましく、3000〜6000の範囲内であることがさらに好ましい。さらに、鋭敏な温度応答性の点で、分子量分布(Mw/Mn)が2.0未満であることが好ましく、1.9以下であることがより好ましい。さらにまた、低粘度性の点で、分子量分布(Mw/Mn)が1.5以上であることが好ましく、1.6以上であることがより好ましい。
なお、本明細書中、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値であり、後述する測定条件にて測定することができる。
【0052】
また本発明の製造方法によれば、従来の製法で得られるビニルエーテルポリマーと比べて低粘度のビニルエーテルポリマーを得ることができる。
ビニルエーテルポリマーの粘度は、ビニルエーテルの種類や分子量により異なるので一概に規定できないが、80質量%ポリマー水溶液として室温(25℃)で測定した場合、好ましくは500〜10,000mPa・sの範囲内であり、より好ましくは500〜7,000mPa・sの範囲内であり、さらに好ましくは500〜5,000mPa・sの範囲内であり、さらにより好ましくは500〜3,000mPa・sの範囲内であり、特に好ましくは500〜2,000mPa・sの範囲内である。
【0053】
水酸基を有するビニルエーテルのラジカル重合では、成長ラジカルが不安定で、反応性が高いために、連鎖移動反応が重合系内の全ての化学種に対して起こりやすく、濃度が高い重合溶媒への連鎖移動反応が起こりやすいと考えられる。本発明の製造方法では、重合溶媒として水と有機溶媒との混合溶媒を用いているため、有機溶媒の一部が連鎖移動により開始末端としてポリマーに組み込まれ、これにより、ポリマー鎖末端に、アルコールの水酸基又は環状エーテルの酸素原子を有するポリマーが得られる。これらの酸素含有基はそれ自身が水素結合を形成する能力を有しながら、ビニルエーテルポリマーの側鎖水酸基間に作用する水素結合を低下させ、これによりビニルエーテルポリマーの粘度を低下させることができると考えられる。
【0054】
また本発明の製造方法により得られるビニルエーテルポリマーは、水溶性ポリマー又は温度応答性ポリマーとして利用することができる。水溶性ポリマーは全ての温度領域(0〜100℃)の水に溶解し、温度応答性ポリマーは下限臨界溶液温度(Lower Critical Solution Temperature:LCST)より低い温度では親水化して水に溶解し、これより高い温度では疎水化して凝集する。このような性質は、側鎖に水酸基を含むビニルエーテルポリマーにおいて一般的に知られているものである。
【0055】
本発明の製造方法では、有機溶媒への連鎖移動により、実質的に、有機溶媒由来の末端構造を有するポリマーと、開始剤由来の末端構造を有するポリマーとの混合物が得られる。驚くべきことに、当該ポリマー混合物は、種々の末端構造を有するポリマーが混在するにもかかわらず、末端構造の影響を受けやすい低分子量体においても、鋭敏な温度応答性を示す。さらに驚くべきことに、本発明においては、親水性の有機溶媒を用いた場合であっても、疎水性の有機溶媒を用いた場合であっても、同様に、鋭敏な温度応答性を有する温度応答性ポリマーが得られる。また、疎水性の強い有機溶媒を用いると、得られたポリマーの応答温度(LCST)を低下させることも可能である。
【0056】
本発明の効果は、特に低分子量化されたビニルエーテルポリマーの製造において顕著であり、本発明の製造方法で得られたビニルエーテルポリマーは、水溶性ポリマー又は温度応答性ポリマーの用途において、特に低分子量且つ低粘度のポリマーが求められる場合に、好適に使用することができる。このような用途としては、例えば、インク、水性塗料、分散剤等が挙げられる。
【0057】
<温度応答性ポリマー混合物>
次に、本発明の温度応答性ポリマー混合物について説明する。
本発明の温度応答性ポリマー混合物は、水酸基を含むビニルエーテルの重合体であるビニルエーテルポリマーからなり、
(1)ポリマー鎖末端にアルコール及び環状エーテルから選択される有機溶媒に由来する酸素含有基を有するビニルエーテルポリマーと、
(2)ポリマー鎖末端に油溶性アゾ系重合開始剤由来の末端構造を有するビニルエーテルポリマーと、
を含むことを特徴とする。
有機溶媒に由来する酸素含有基としては、具体的には、アルコール性水酸基又は環状エーテルが挙げられる。また、油溶性アゾ系重合開始剤由来の末端構造としては、エステルが好適にあげられる。
【0058】
水酸基を含むビニルエーテル、アルコール及び環状エーテルから選択される有機溶媒及び油溶性アゾ系重合開始剤としては、本発明の<ビニルエーテルポリマーの製造方法>に記載したものが適用できる。
前記ビニルエーテルとしては、得られたポリマーの低粘度性の点で1個のヒドロキシル基を有するビニルエーテルが好ましく、中でも、温度応答性の点で、直鎖又は分岐鎖状のヒドロキシアルキルビニルエーテル及びヒドロキシアルコキシアルキルビニルエーテルが好ましく、ヒドロキシメチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−1−メチルエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−2−メチル−プロピルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−3−メチルプロピルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジプロピレングリコールビニルエーテル等がより好ましく、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテルが特に好ましい。
これらの水酸基を含むビニルエーテルは、1種単独で用いても又は2種以上を併用しても構わないが、親疎水性の異なる2種以上のビニルエーテル(例えば、ヒドロキシアルキルビニルエーテルとヒドロキシアルコキシアルキルビニルエーテル)をランダム共重合することにより、任意の温度で温度応答性を示すビニルエーテルポリマーが得られる。
【0059】
また、前記アルコールとしては、粘度低下及び温度応答性の鋭敏化の点で、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖状の第一級又は第二級アルコールが好ましく、炭素数3〜10の直鎖又は分岐鎖状の第一級又は第二級アルコールがより好ましく、炭素数3〜4の第二級アルコールがさらに好ましく、得られたポリマーの水への溶解性の点では、イソプロピルアルコール(IPA)、プロピレングリコール(PG)等の水溶性のアルコールが特に好ましい。前記環状エーテルとしては、粘度低下、温度応答性の鋭敏化及び水への溶解性の点でテトラヒドロフラン(THF)が好ましい。前記油溶性アゾ系重合開始剤としてはエステル型アゾ化合物が好ましく、MAIBが特に好ましい。
【0060】
ポリマー鎖末端に有機溶媒由来の構造を有するビニルエーテルポリマーと、ポリマー鎖末端に開始剤由来の構造を有するポリマーとの混合比は特に限定されないが、通常、ポリマー鎖末端に有機溶媒由来の構造を有するビニルエーテルポリマー1〜99質量%に対し、ポリマー鎖末端に開始剤由来の構造を有するポリマー99〜1質量%であり、好ましくはポリマー鎖末端に有機溶媒由来の構造を有するビニルエーテルポリマー3〜97質量%に対し、ポリマー鎖末端に開始剤由来の構造を有するポリマー97〜3質量%であり、より好ましくはポリマー鎖末端に有機溶媒由来の構造を有するビニルエーテルポリマー5〜95質量%に対し、ポリマー鎖末端に開始剤由来の構造を有するポリマー95〜5質量%である。
【0061】
本発明の温度応答性ポリマー混合物の分子量及び分子量分布は、その用途に応じて適宜設定され得るものであり特に限定されないが、低粘度性の点から数平均分子量(Mn)が500〜10000の範囲内であることが好ましく、600〜6000の範囲内であることがより好ましく、1000〜5000の範囲内であることがさらに好ましく、1500〜3000の範囲内であることが特に好ましい。また、重量平均分子量(Mw)は、1000〜10000の範囲内であることが好ましく、2000〜8000の範囲内であることが好ましく、3000〜6000の範囲内であることがさらに好ましい。さらに、鋭敏な温度応答性の点で、分子量分布(Mw/Mn)が2.0未満であることが好ましく、1.9以下であることがより好ましい。さらにまた、低粘度性の点で、分子量分布(Mw/Mn)が1.5以上であることが好ましく、1.6以上であることがより好ましい。
【0062】
また本発明ビニルエーテルポリマーは、本発明特定の末端酸素含有基に起因して低粘度性を示すことを特徴とする。ビニルエーテルポリマーの粘度は、ビニルエーテルの種類や分子量により異なるので一概に規定できないが、80質量%ポリマー水溶液として室温(25℃)で測定した場合、好ましくは500〜10,000mPa・sの範囲内であり、より好ましくは500〜7,000mPa・sの範囲内であり、さらに好ましくは500〜5,000mPa・sの範囲内であり、さらにより好ましくは500〜3,000mPa・sの範囲内であり、特に好ましくは500〜2,000mPa・sの範囲内である。
【0063】
さらに、本発明の温度応答性ポリマー混合物は、低分子量体かつ末端構造の異なるポリマーの混合物でありながら、驚くべきことに鋭敏な温度応答性を示すことを特徴とする。
例えば、後述する実施例に示されるように、ビニルエーテルポリマーが前記式(1)で表される1種のビニルエーテルのホモポリマーの場合、1質量%ポリマー水溶液を加熱したとき、波長750nmの光に対する透過率が95%となる温度と、同透過率が50%となる温度との差(ΔT)は7℃未満であり、また、ビニルエーテルポリマーが、前記式(1)で表される2種以上のビニルエーテルのランダム共重合体の場合であっても、同温度差(ΔT)は12℃未満であり、いずれも、末端に本発明特定の酸素含有基を有するビニルエーテルポリマーを含まない場合と比較して、小さな温度差で親疎水性の変化を起こすことができる。
【0064】
本発明の温度応答性ポリマー混合物は、前記ビニルエーテルを前記有機溶媒及び前記油溶性アゾ系重合開始剤の存在下、ラジカル重合することにより得る。また、本発明の<ビニルエーテルポリマーの製造方法>に記載した方法を適用することにより、より簡便且つ効率的に製造することができる。
また、本発明のビニルエーテルポリマーは、温度応答性ポリマーの用途において、特に低分子量且つ低粘度のポリマーが求められる場合に、好適に使用することができる。このような用途としては、例えば、インク、水性塗料、分散剤等が挙げられる。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
なお、実施例において、モノマー転化率の分析及び得られたビニルエーテルポリマーの物性評価は以下の方法により行った。
(1)モノマー転化率の分析は、ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて行った。
(2)数平均分子量(Mn)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の分析は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて行った。分子量の測定は、ビニルエーテルポリマーの水酸基をアセチル基へと変化させて実施した。
(GPC条件)
カラム:Shodex GPC LF804×3(昭和電工(株)製)
溶媒:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流速:1.0ml/分
検量線:標準ポリスチレンスタンダード
(3)粘度は、80質量%ポリマー水溶液とし、EMS粘度計(京都電子社製、型式EMS−1000)を使用し、温度25℃にて測定した。
(4)温度応答性の評価は、1.0質量%ポリマー水溶液の波長750nmにおける透過率変化を測定することにより行った。測定は、紫外・可視分光光度計(日本分光社製、型式V−650)を用い、25℃から85℃まで昇温又は降温したとき、光線透過率の微分曲線が極大となる温度をLCSTとした。また、以下の式により応答性の鋭敏さの指標としてΔTを求めた。
ΔT(℃)=(透過率が50%となる温度)−(透過率が95%となる温度)
(5)ポリマー鎖末端構造は、イオン化法をレーザー脱離イオン化法による質量分析により確認した(装置:島津製作所社製、型式:AXIMA−TOF2、レーザー:N2レーザー、測定モード:正イオン、マトリックス試薬:DHB、カチオン化剤:トリフルオロ酢酸ナトリウム)。
【0066】
実施例1:ポリ(4−ヒドロキシブチルビニルエーテル)の製造(1)(重合溶媒:2−プロパノール/水)
還流管とメカニカルスターラーを備え付けた200mL三口フラスコに、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(丸善石油化学(株)製、以下、「HBVE」と記載する)80gと、MAIB(エステル型アゾ化合物、和光純薬工業(株)製、商品名V−601)35.5gを加え、更に重合溶媒として、HBVE濃度が50質量%となるように2−プロパノール(IPA)と水の混合溶媒(IPA/水=1/1、質量比)を加え、溶解させた。次いで、フラスコ内に窒素を吹き込み、脱酸素した。脱酸素後、窒素雰囲気下、70℃の油浴中で重合反応を開始した。10時間後、冷却及び空気への暴露により重合を停止し、GC分析及びGPC分析を行った。その結果、10時間経過後のモノマー転化率は99モル%以上であり、得られたポリマーの数平均分子量Mnは2140、分子量分布Mw/Mn=1.71であった。
エバポレーションで重合溶媒を除去し、90℃の減圧乾燥器で12時間乾燥させることにより、液状のポリマー84.4gを得た。マトリックス支援レーザー脱離イオン化法により得られたポリマーの質量分析を行ったところ、IPA由来の末端構造を有するポリマー種に相当するマススペクトルピークと、MAIB由来の末端構造を有するポリマー種に相当するマススペクトルピークとが確認された。
得られたポリマーの粘度測定及び温度応答性評価の結果を表1に示す。また、温度応答性評価における透過率の変化を
図1に示す。
【0067】
実施例2:ポリ(4−ヒドロキシブチルビニルエーテル)の製造(2)(重合溶媒:1−ヘキサノール/水)
重合溶媒を1−ヘキサノールと水の混合溶媒(1−ヘキサノール/水=1/1、質量比)に変更した以外は実施例1と同様の操作により重合を実施した。その結果、10時間経過後のモノマー転化率は99モル%以上であり、得られたポリマーの数平均分子量Mnは2200、分子量分布Mw/Mn=1.73であった。
エバポレーションで重合溶媒を除去し、90℃の減圧乾燥器で12時間乾燥させることにより、液状のポリマー93.8gを得た。マトリックス支援レーザー脱離イオン化法により得られたポリマーの質量分析を行ったところ、1−ヘキサノール由来の末端構造を有するポリマー種に相当するマススペクトルピークと、MAIB由来の末端構造を有するポリマー種に相当するマススペクトルピークとが確認された。
得られたポリマーの粘度測定及び温度応答性評価の結果を表1に示す。
【0068】
実施例3:ポリ(4−ヒドロキシブチルビニルエーテル)の製造(3)(重合溶媒1−デカノール/水)
重合溶媒を1−デカノールと水の混合溶媒(1−デカノール/水=1/1、質量比)に変更した以外は実施例1と同様の操作により重合を実施した。その結果、10時間経過後のモノマー転化率は97モル%以上であり、得られたポリマーの数平均分子量Mnは2820、分子量分布Mw/Mn=1.68であった。
エバポレーションで重合溶媒を除去し、90℃の減圧乾燥器で12時間乾燥させることにより、液状のポリマー93.4gを得た。マトリックス支援レーザー脱離イオン化法により得られたポリマーの質量分析を行ったところ、1−デカノール由来の末端構造を有するポリマー種に相当するマススペクトルピークと、MAIB由来の末端構造を有するポリマー種に相当するマススペクトルピークとが確認された。
得られたポリマーの粘度測定及び温度応答性評価の結果を表1に示す。
【0069】
実施例4:ポリ(4−ヒドロキシブチルビニルエーテル)の製造(4)(プロピレングリコール/水の混合溶媒系での重合)
重合溶媒をプロピレングリコール(PG)と水の混合溶媒(PG/水=1/1、質量比)に変更した以外は実施例1と同様の操作により重合を実施した。その結果、10時間経過後のモノマー転化率は99モル%以上であり、得られたポリマーの数平均分子量Mnは2830、分子量分布Mw/Mn=1.87であった。
エバポレーションで重合溶媒を除去し、90℃の減圧乾燥器で12時間乾燥させることにより、液状のポリマー124.5ggを得た。マトリックス支援レーザー脱離イオン化法により得られたポリマーの質量分析を行ったところ、PG由来の末端構造を有するポリマー種に相当するマススペクトルピークと、MAIB由来の末端構造を有するポリマー種に相当するマススペクトルピークとが確認された。
得られたポリマーの粘度測定及び温度応答性評価の結果を表1に示す。
【0070】
実施例5:ポリ(4−ヒドロキシブチルビニルエーテル)の製造(5)(重合溶媒:テトラヒドロフラン/水)
重合溶媒をテトラヒドロフラン(THF)と水の混合溶媒(THF/水=1/1、質量比)に変更した以外は実施例1と同様の操作により重合を実施した。その結果、10時間経過後のモノマー転化率は99モル%以上であり、得られたポリマーの数平均分子量Mnは1800、分子量分布Mw/Mn=1.80であった。
エバポレーションで重合溶媒を除去し、90℃の減圧乾燥器で12時間乾燥させることにより、液状のポリマー94.6gを得た。マトリックス支援レーザー脱離イオン化法により得られたポリマーの質量分析を行ったところ、THF由来の末端構造を有するポリマー種に相当するマススペクトルピークと、MAIB由来の末端構造を有するポリマー種に相当するマススペクトルピークとが確認された。
得られたポリマーの粘度測定及び温度応答性評価の結果を表1に示す。また、温度応答性評価における透過率の変化を
図1に示す。
【0071】
比較例1:ポリ(4−ヒドロキシブチルビニルエーテル)の製造(6)(重合溶媒:水)
重合溶媒を水のみに変更した以外は実施例1と同様の操作により重合を実施した。その結果、10時間経過後のモノマー転化率は99モル%以上であり、得られたポリマーの数平均分子量Mnは2990、分子量分布Mw/Mn=2.05であった。
エバポレーションで溶媒を除去し、90℃の減圧乾燥器で12時間乾燥させることにより、液状のポリマー90.5gを得た。
得られたポリマーの粘度測定及び温度応答性評価の結果を表1に示す。また、温度応答性評価における透過率の変化を
図1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例6:4−ヒドロキシブチルビニルエーテル−r−ジエチレングリコールビニルエーテル共重合体の製造(1)(重合溶媒:2−プロパノール/水)
ビニルエーテルとして、HBVE143.8g、ジエチレングリコールビニルエーテル(丸善石油化学(株)製、以下、「DEGV」と記載する)41.1g(HBVE/DEGV=8/2、モル比)を用いた以外は、実施例1と同様の操作により重合を実施した。その結果、10時間経過後のモノマー転化率はHBVEとDEGVの平均で99.5モル%であり、得られたポリマーの数平均分子量Mnは2090、分子量分布Mw/Mn=1.86であった。
エバポレーションで重合溶媒を除去し、90℃℃の減圧乾燥器で12時間乾燥させることにより、液状のポリマー215.2gを得た。得られたポリマーの粘度測定及び温度応答性評価の結果を表2に示す。また、温度応答性評価における透過率の変化を
図2に示す。
【0074】
実施例7:4−ヒドロキシブチルビニルエーテル−r−ジエチレングリコールビニルエーテル共重合体の製造(2)(重合溶媒:THF/水)
重合溶媒をTHFと水の混合溶媒(THF/水=1/1、質量比)に変更した以外は実施例6と同様の操作により重合を実施した。その結果、10時間経過後のモノマー転化率はHBVEとDEGVの平均で98.1モル%であり、得られたポリマーの数平均分子量Mnは1890、分子量分布Mw/Mn=1.89であった。
エバポレーションで重合溶媒を除去し、90℃の減圧乾燥器で12時間乾燥させることにより、液状のポリマー216.3gを得た。得られたポリマーの粘度測定及び温度応答性評価の結果を表2に示す。また、温度応答性評価における透過率の変化を
図2に示す。
【0075】
比較例2:4−ヒドロキシブチルビニルエーテル−r−ジエチレングリコールビニルエーテル共重合体の製造(3)(重合溶媒:水のみ)
重合溶媒を水のみに変更した以外は実施例6と同様の操作により重合を実施した。その結果、10時間経過後のモノマー転化率はHBVEとDEGVの平均で98.9モル%であり、得られたポリマーの数平均分子量Mnは2800、分子量分布Mw/Mn=1.73であった。
エバポレーションで重合溶媒を除去し、90℃の減圧乾燥器で12時間乾燥させることにより、液状のポリマー215.5gを得た。得られたポリマーの粘度測定及び温度応答性評価の結果を表2に示す。また、温度応答性評価における透過率の変化を
図2に示す。
【0076】
比較例3:4−ヒドロキシブチルビニルエーテル−r−ジエチレングリコールビニルエーテル共重合体の製造(4)(重合溶媒:IPAのみ)
重合溶媒をIPAのみに変更した以外は実施例6と同様の操作により重合を実施した。その結果、10時間経過後のモノマー転化率はHBVEとDEGVの平均で92.1モル%であり、得られたポリマーの数平均分子量Mnは1800、分子量分布Mw/Mn=1.55であった。
エバポレーションで重合溶媒を除去し、90℃の減圧乾燥器で12時間乾燥させることにより、液状のポリマー204.5gを得た。得られたポリマーの粘度測定及び温度応答性評価の結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
表1及び表2に示されるように、重合溶媒として水のみを用いた場合(比較例1、2)では、得られたポリマーの分子量が高くなり、粘度も高くなるのに対し、本発明の製造方法で合成したビニルエーテルポリマーは、各種溶媒の変更により分子量を低く制御することが可能であり、粘度も低くすることができる。また、炭素数が多く疎水性の強い有機溶媒を用いた場合には、応答温度(LCST)を低下させることも可能である(実施例3)。
【0079】
また、比較例3において示されるように、重合溶媒として有機溶媒(IPA)のみを用いて水酸基を有するビニルエーテルのラジカル重合を行った場合は、重合開始剤(MAIB)が完全に溶解した状態で重合反応を行うことができるが、モノマー転化率は非常に低く工業的な生産性が低い。これに対し、本発明の製造方法では、重合開始剤(MAIB)が析出した状態で重合を行っているにもかかわらず、低分子量、低粘度及び鋭敏な温度応答性を有するビニルエーテルポリマーを、高いモノマー転化率で効率よく製造することができる。
【0080】
また、表1及び
図1に示されるように、温度応答性を示すHBVEのホモポリマーの水溶液を加熱していくと、重合溶媒として水のみを用いて重合されたビニルエーテルポリマー(比較例1)では、光の透過率が95%から50%まで変化する際の温度差(ΔT)が通常9℃を超えるのに対し、本発明の製造方法により得られたビニルエーテルポリマー(実施例1、5)では7℃未満となり、極めて鋭敏な温度応答性を示す。
さらに、表2及び
図2に示されるように、HBVE/DEGV共重合体ではより応答温度範囲が広くなる傾向にあり、重合溶媒として水のみを用いて重合されたビニルエーテルポリマー(比較例2)ではΔTが22℃を超えてしまうが、本発明の製造方法により得られたビニルエーテルポリマー(実施例6、7)では12℃未満まで改善される。
【0081】
また、実施例1〜5においてマトリックス支援レーザー脱離イオン化法により確認されたように、本発明方法により得られたHBVEのホモポリマーは、有機溶媒由来の末端構造を有するビニルエーテルポリマーと開始剤由来の末端構造を有するビニルエーテルポリマーの混合物となる。これらのポリマー混合物は、比較例1で示される有機溶媒由来の末端構造を有するビニルエーテルポリマーを含まないものと比較して、低粘度且つ鋭敏な温度応答性を示す。
一方、実施例6及び7に示されるHBVE/DEGV共重合体では、マススペクトルが複雑となるためマトリックス支援レーザー脱離イオン化法では末端構造を確認することができないが、比較例2で示される有機溶媒由来の末端構造を有するビニルエーテルポリマーを含まないものと比較して、低粘度且つ鋭敏な温度応答性を示しており、ホモポリマー同様、ポリマー鎖末端に有機溶媒由来の構造が導入されていることが推認される。