【実施例】
【0076】
以下、一般式(1)で表される芳香族化合物を合成した実施例等により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
以下の実施例の操作において、不活性ガス下の反応や測定には無水蒸留した溶媒を用い、その他の反応や操作においては市販の一級または特級の溶媒を用いた。また、試薬は、必要な場合には無水蒸留等で精製した上で反応に用い、その他は市販の一級または特級の試薬をそのまま反応に用いた。
【0077】
以下の実施例で合成された芳香族化合物のプロトン核磁気共鳴スペクトル(以下、「
1H−NMR」という)の測定は、核磁気共鳴装置(型式「LAMBDA 400」、日本電子株式会社製)を用いて化学シフトσの値(ppm)等を測定することにより行った。
【0078】
〔実施例1〕(下記式(11)で表される本発明の芳香族化合物の合成)
窒素雰囲気下、内容量1Lのナスフラスコに、N,N’−ジオクチル−2−[2−(トリメチルシリル)エチニル]−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(4mmol)、硫化ナトリウム9水和物(24mmol)、酢酸(8mL)、及び2−メトキシエタノール(400mL)を加え、60℃で12時間攪拌した。室温まで冷却した反応液を水(400mL)に注ぎ入れ、析出した固体を濾取した。濾取した固体を水で洗浄し、さらにメタノールで洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製することにより、下記式(11)で表される芳香族化合物を橙色固体として得た。
【0079】
【化14】
【0080】
式(11)で表される芳香族化合物は、収率65%で得られた。
式(11)で表される芳香族化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ=8.93(s,1H),8.63(s,2H),4.23−4.17(m,4H),1.80−1.72(m,4H),1.47−1.24(m,20H),0.89−0.86(m,6H),0.54(s,9H)
【0081】
〔実施例2〕(下記式(12)で表される本発明の芳香族化合物の合成)
N,N’−ジオクチル−2−[2−(トリメチルシリル)エチニル]−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(4mmol)の代わりにN,N’−ビス(2−エチルへキシル)−2−[2−(トリメチルシリル)エチニル]−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(4mmol)を用いた以外は実施例1と同様の処理を行うことにより、下記式(12)で表される芳香族化合物を得た。
【0082】
【化15】
【0083】
式(12)で表される芳香族化合物は、収率56%で得られた。
式(12)で表される芳香族化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ=8.95(s,1H),8.67(s,2H),4.22−4.10(m,4H),2.04−1.92(m,2H),1.43−1.24 (m,16H),0.96−0.86(m,12H),0.54(s,9H)
【0084】
〔実施例3〕(下記式(13)で表される本発明の芳香族化合物の合成)
窒素雰囲気下、内容量300mLのナスフラスコに、実施例1で得られた式(11)で表される芳香族化合物(1.6mmol)、酢酸(1.2mL)、及びテトラヒドロフラン(120mL)を加え、0℃に冷却した。反応液にテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド(約1.0mol/Lテトラヒドロフラン溶液、16mL)を加え、室温まで昇温し3時間撹拌した。反応液をメタノール(120mL)で希釈し、析出した固体を濾取した。濾取した固体をメタノールで洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記式(13)で表される芳香族化合物を橙色固体として得た。
【0085】
【化16】
【0086】
式(13)で表される芳香族化合物は、収率90%で得られた。
式(13)で表される芳香族化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ=8.96(d,1H),8.84(s,2H),8.16(d,1H)4.29−4.24(m,4H),1.82−1.75(m,4H),1.48−1.29(m,20H),0.89−0.86(m,6H)
【0087】
〔実施例4〕(下記式(14)で表される本発明の芳香族化合物の合成)
窒素雰囲気下、内容量100mLのナスフラスコに、実施例1で得られた式(11)で表される芳香族化合物(1.6mmol)、臭素(0.4mL)、及びジクロロメタン(40mL)を加え、40℃で15時間撹拌した。反応液に亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加え、有機層をジクロロメタンで抽出した。抽出した有機層を蒸留乾固した後、得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、下記式(14)で表される芳香族化合物を橙色固体として得た。
【0088】
【化17】
【0089】
式(14)で表される芳香族化合物は、収率76%で得られた。
式(14)で表される芳香族化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ=8.64(s,2H),8.58(s,1H),4.15−4.10(m,4H),1.77−1.69(m,4H),1.46−1.28(m,20H),0.89−0.86(m,6H)
【0090】
〔実施例5〕(下記式(15)で表される本発明の芳香族化合物の合成)
実施例1で得られた式(11)で表される芳香族化合物の代わりに実施例2で得られた式(12)で表される芳香族化合物を用いた以外は実施例4と同様の処理を行うことにより、下記式(15)で表される芳香族化合物を得た。
【0091】
【化18】
【0092】
式(15)で表される芳香族化合物は、収率64%で得られた。
式(15)で表される芳香族化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ=8.88(s,2H),8.78(s,1H),4.22−4.11(m,4H),2.02−1.90(m,2H),1.43−1.31(m,16H),0.97−0.87(m,12H)
【0093】
〔実施例6〕(下記式(16)で表される本発明の芳香族化合物の合成)
窒素雰囲気下、内容量50mLのナスフラスコに、実施例5で得られた式(15)で表される芳香族化合物(0.18mmol)、1,3,5−トリス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゼン(21mg)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(8mg)、炭酸ナトリウム水溶液(2mol/L、0.75mL)、及び1,4−ジオキサン(10mL)を加え撹拌し、36時間加熱還流させた。室温まで冷却した反応液を水(100mL)に注ぎ入れ、析出した固体を濾取した。濾取した固体を水、メタノールで洗浄し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製することにより、下記式(16)で表される芳香族化合物を橙色固体として得た。
【0094】
【化19】
【0095】
式(16)で表される芳香族化合物は、収率58%で得られた。
式(16)で表される芳香族化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ=9.22(s,3H),8.57(d,3H),8.53(d,3H),8.35(s,3H),4.34−4.17(m,12H),2.19−2.07(m,6H),1.48−1.29(m,48H),1.00−0.83(m,36H)
【0096】
〔実施例7〕(下記式(17)で表される本発明の芳香族化合物の合成)
実施例5で得られた式(15)で表される芳香族化合物の代わりに実施例4で得られた式(14)で表される芳香族化合物を用い、1,3,5−トリス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゼン(21mg)の代わりにN,N’−ビス(3−デシルペンタデシル)−2,6−ビス(トリメチルスタニル)ナフト[2,3−b:6,7−b’]ジチオフェン−4,5,9,10−ジイミド(120mg)を用いた以外は実施例6と同様の処理を行うことにより、下記式(17)で表される芳香族化合物を得た。
【0097】
【化20】
【0098】
式(17)で表される芳香族化合物は、収率76%で得られた。
式(17)で表される芳香族化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ=9.40(s,2H),9.30(s,2H),8.41(s,4H),4.64(t,J=7.2Hz,4H),4.37−4.32(m,8H),2.13(brs,4H),1.97(m,4H),1.79−1.02(m,124H),0.86(t,J=7.2Hz,12H),0.78(m,12H)
【0099】
〔実施例8〕(下記式(18)で表される本発明の芳香族化合物の合成)
実施例4で得られた式(14)で表される芳香族化合物の代わりに実施例5で得られた式(15)で表される芳香族化合物を用いた以外は実施例7と同様の処理を行うことにより、下記式(18)で表される芳香族化合物を得た。
【0100】
【化21】
【0101】
式(18)で表される芳香族化合物は、収率52%で得られた。
式(18)で表される芳香族化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ=9.39(s,2H),9.33(s,2H),8.45(s,4H),4.60(t,J=7.2Hz,4H),4.35−4.29(m,8H),2.17(brs,4H),2.09(q,J=7.2Hz,4H),1.74−0.97(m,124H),0.88(t,J=7.2Hz,12H),0.77(t,J=7.2Hz,12H)
【0102】
〔実施例9〕(下記式(19)で表される本発明の芳香族化合物の合成)
1,3,5−トリス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゼン(21mg)の代わりに2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン(58mg)を用いた以外は実施例6と同様の処理を行うことにより、下記式(19)で表される芳香族化合物を得た。
【0103】
【化22】
【0104】
式(19)で表される芳香族化合物は、収率56%で得られた。
式(19)で表される芳香族化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ=9.29(s,2H),8.82−8.77(dd,4H),8.11(d,2H),7.99(s,2H),7.91(d,2H),4.34−4.17(m,8H),2.23(m,4H),2.06(d、4H)、1.54−1.43(m、30H)、1.22−1.05(m、24H),0.97(t、12H),0.89(t、12H),0.71(m、8H)
【0105】
〔実施例10〕(下記式(20)で表される本発明の芳香族化合物の合成)
1,3,5−トリス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゼン(21mg)の代わりに9−(9−ヘプタデカニル)−2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)カルバゾール(59mg)を用いた以外は実施例6と同様の処理を行うことにより、下記式(20)で表される芳香族化合物を得た。
【0106】
【化23】
【0107】
式(20)で表される芳香族化合物は、収率42%で得られた。
式(20)で表される芳香族化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ=9.28(s,2H),8.81−8.76(m,4H),8.21−7.94(m,6H),4.81(m、1H)4.26(m,8H),2.52(m,2H),2.31−2.01(m、6H)、1.53−1.34(m,32H),1.22−1.05(m、24H),0.97−0.89(m、28H),0.89(m,6H)
【0108】
〔実施例11〕(下記式(21)で表される本発明の芳香族化合物の合成)
1,3,5−トリス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンゼン(21mg)の代わりに2,2’,7,7’−テトラキス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9’−スピロビ[9H−フルオレン](36mg)を用いた以外は実施例6と同様の処理を行うことにより、下記式(21)で表される芳香族化合物を得た。
【0109】
【化24】
【0110】
式(21)で表される芳香族化合物は、収率59%で得られた。
式(21)で表される芳香族化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ=9.15−9.10(m、4H)、8.74−8.71(m、8H)、8.30−7.98(m、12H)、7.47−7.38(m、2H)、4.16(m、16H)、1.96(m、8H)、1.53−1.25(m、64H)、0.91−0.82(m、48H)
【0111】
〔実施例12〕(下記式(22)で表される本発明の芳香族化合物の合成)
窒素雰囲気下、内容量50mLのナスフラスコに、実施例4で得られた式(14)で表される芳香族化合物(0.15mmol)、ビス(トリメチルすず)(26mg)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(18mg)、及びトルエン(20mL)を加え105℃に加熱し10時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、析出した固体を濾取した。濾取した固体をo−ジクロロベンゼンより再結晶することにより、下記式(22)で表される芳香族化合物を赤色固体として得た。
【0112】
【化25】
【0113】
式(22)で表される芳香族化合物は、収率73%で得られた。
式(22)で表される芳香族化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(400MHz,o−ジクロロベンゼン−d4)δ=9.53(s,2H),8.65(s,4H),4.34−4.17(m,8H),1.97−1.94(m,8H),1.57−1.30(m,40H),1.00−0.88(m,12H)
【0114】
〔実施例13〕(下記式(23)で表される本発明の芳香族化合物の合成)
実施例4で得られた式(14)で表される芳香族化合物の代わりに実施例5で得られた式(15)で表される芳香族化合物を用いた以外は実施例12と同様の処理を行うことにより、下記式(23)で表される芳香族化合物を得た。
【0115】
【化26】
【0116】
式(23)で表される芳香族化合物は、収率74%で得られた。
式(23)で表される芳香族化合物の核磁気共鳴スペクトルの測定結果は以下のとおりであった。
1H−NMR(400MHz,o−ジクロロベンゼン−d4)δ=9.51(s,2H),8.64(s,4H),4.35−4.25(m,8H),2.19−2.12(m,4H),1.54−1.32(m,32H),1.02−0.86(m,24H)
【0117】
〔実施例14〕(有機薄膜トランジスタの作製)
本実施例では、
図1(b)に示すトップコンタクトボトムゲート構造の有機薄膜トランジスタを作製した。まず、実施例7で得られた式(17)で表される芳香族化合物の1,2,4−トリクロロベンゼン溶液を用い、SiO
2熱酸化膜(絶縁体層4)付きnドープシリコンウェハー(ゲート電極5及び基板6)に対し、スピンコート法により有機薄膜(半導体層2)をSiO
2熱酸化膜上に作製した。
【0118】
次に、前記で得られた有機薄膜上にシャドウマスクを用いてAuを真空蒸着することにより、ソース電極1及びドレイン電極3を作製した。こうして得られた有機薄膜トランジスタのチャネルサイズは、チャネル長40μm、チャネル幅1.5mmであった。
【0119】
〔実施例15〕(有機薄膜トランジスタの作製)
式(17)で表される芳香族化合物の代わりに実施例12で得られた式(22)で表される芳香族化合物を用いた以外は実施例14と同様の処理を行うことにより、有機薄膜トランジスタを得た。
【0120】
〔実施例16〕(有機薄膜トランジスタの作製)
式(17)で表される芳香族化合物の代わりに実施例13で得られた式(23)で表される芳香族化合物を用いた以外は実施例14と同様の処理を行うことにより、有機薄膜トランジスタを得た。
【0121】
〔有機薄膜トランジスタの特性評価〕
有機薄膜トランジスタの性能は、ゲート電極5に電位をかけた状態でソース電極1とドレイン電極3との間に電位をかけた時にソース電極1とドレイン電極3との間に流れた電流値(ソース・ドレイン電流値)に依存する。この電流値を測定することでトランジスタの特性であるキャリア移動度を決めることができる。キャリア移動度は、絶縁体層4としてのSiO
2熱酸化膜にゲート電界を印加した結果、半導体層2中に生じるキャリア種の電気的特性を表現する下記式(a)から算出することができる。
Id=Z×μ×Ci(Vg−Vt)
2/2L・・・(a)
ここで、Idは飽和したソース・ドレイン電流値(A)、Zはチャネル幅(m)、Ciは絶縁体層4の電気容量(F)、Vgはゲート電位(V)、Vtはしきい電位(V)、Lはチャネル長(m)であり、μは決定するキャリア移動度(cm
2/Vs)である。Ciは用いたSiO
2熱酸化膜の誘電率、Z及びLは有機薄膜トランジスタのデバイス構造により決まり、Id及びVgは有機薄膜トランジスタの電流値の測定時に決まり、VtはId及びVgから求めることができる。式(a)に各値を代入することで、それぞれのゲート電位でのキャリア移動度を算出することができる。有機薄膜トランジスタの特性評価は、ケースレーインスツルメンツ社(Keithley Instruments, Inc.)製の4200型半導体パラメータアナライザを用いて、ソース電極1とドレイン電極3との間にドレイン電圧Vd=40Vをかけて行った。
【0122】
上記実施例14〜16で得られた有機薄膜トランジスタの特性を上記の方法で評価した。
図3は式(23)で表される芳香族化合物を用いた実施例16で得られた有機薄膜トランジスタの伝達特性を示したものであり、表1は実施例14〜16で得られた有機薄膜トランジスタの特性評価結果を示したものである。
【0123】
【表1】
【0124】
〔実施例17〕(有機薄膜太陽電池素子の作製及び特性評価)
実施例9で得られた式(19)で表される芳香族化合物を用いて、
図2に示す有機光電変換素子から絶縁部11を省いた構造の有機光電変換素子の一形態である有機薄膜太陽電池素子を作製した。具体的には、まず、負極としてのITO膜(下部電極14)がパターンニングされたガラス基板(基板15)を用意した。このガラス基板を十分に洗浄した後、ガラス基板にUVオゾン処理を施した。次に、ITO膜が設けられた側のガラス基板の表面に、0.5Mの酢酸亜鉛(II)二水和物とエタノールアミンとを2−メトキシエタノールに溶解した溶液を、3000rpmで30秒間のスピンコーティングにより塗布した。得られたガラス基板を200℃で30分間加熱することにより、電子輸送層あるいは電子取出層としてのZnO膜(光電変換部13の一部)を形成した。
【0125】
ZnO膜が成膜されたガラス基板をグローブボックス内に持ち込み、実施例9で得られた式(19)で表される芳香族化合物及び下記式(24)で表される化合物の両者を1:1の質量比で含むクロロベンゼン溶液を用いて、スピンコートによりZnO膜の表面に厚さ100nmの光電変換層(光活性層)(光電変換部13の他の一部)を形成した。その後、光電変換層の表面に、正孔輸送層あるいは正孔取出層としてのMoO
3膜(光電変換部13のさらに他の一部)を成膜した。MoO
3膜の厚さは7.5nmとした。続いて、MoO
3膜の表面にAgを抵抗加熱型真空蒸着法により成膜し、正極としてのAg膜(上部電極12)を形成した。Ag膜の厚さは100nmとした。以上の工程により、本発明の有機光電変換素子(1)が得られた。有機光電変換素子(1)の大きさは、4mm角とした。
【0126】
【化27】
【0127】
ソーラシミュレータ(型式:XES−40S1、株式会社三永電機製作所製、AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm
2)を用いて、上記で得られた有機光電変換素子(1)に一定の光を照射し、発生する電流及び電圧を測定した。測定結果を
図4に示した。
図4の結果から、短絡電流密度Jsc(mA/cm
2)、開放電圧Voc(V)、形状因子FFを得た。また、Jsc、Voc、及びFFから、下記式(b)に基づいて光電変換効率ηを算出した。得られた結果を表2に示した。
η=(Jsc×Voc×FF)/100・・・(b)
【0128】
〔実施例18〕(有機薄膜太陽電池素子の作製及び特性評価)
実施例9で得られた式(19)で表される芳香族化合物の代わりに実施例11で得られた式(21)で表される芳香族化合物を用い、光電変換層の厚さを100nmとした以外は実施例17と同様にして、本発明の有機光電変換素子(2)を作製した。得られた有機光電変換素子(2)について、実施例17と同様にして電流密度−電圧特性を測定した。測定結果を
図5に示した。
図5の結果から、Jsc、Voc、FF及びηを得た。得られた結果を表2に示した。
【0129】
〔実施例19〕(有機薄膜太陽電池素子の作製及び特性評価)
式(24)で表される化合物の代わりに下記式(25)で表される化合物を用い、クロロベンゼン溶液中の質量比を式(21)で表される芳香族化合物:式(25)で表される化合物=4:5とした以外は実施例18と同様にして、本発明の有機光電変換素子(3)を作製した。得られた有機光電変換素子(3)について、実施例18と同様にして電流密度−電圧特性を測定した。測定結果を
図6に示した。
図6の結果から、Jsc、Voc、FF及びηを得た。得られた結果を表2に示した。
【0130】
【化28】
【0131】
【表2】
【0132】
以上より、本発明の一般式(1)で表される芳香族化合物を含む有機薄膜を用いた有機半導体デバイスは、有機薄膜トランジスタ及び有機光電変換素子において優れた特性を有していることがわかった。このように本発明により高性能な有機半導体デバイスを作製することができ、これにより使用できるプロセスやアプリケーションの幅が拡がるなど工業的な価値が高いことが明らかとなった。