(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記シートクッション本体には、上記座面の反対側に上記三次元網状構造体を収容するための収容凹部が設けられ、上記三次元網状構造体は、上記収容凹部に収容されることにより、上記所定の圧縮率まで予圧縮が加えられる請求項1記載の車両用シート。
さらに、圧縮用部材を有し、上記三次元網状構造体は、上記圧縮用部材を取り付けることにより、上記所定の圧縮率まで予圧縮が加えられる請求項1記載の車両用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対して、車体のフロア等の構造体上に直接取り付けられるタイプの車両用シートにおいては、通常、金属製のバネを備えていないため、シートクッションの弾性変形特性を独立して調整することができない。従って、このような構造のシートクッションにおいては、クッション材の選定によりシートクッションの弾性変形特性及び振動減衰特性をチューニングすることになる。この場合には、クッション材の変更により弾性変形特性と振動減衰特性が同時に変化してしまうため、複数のクッション材を組み合わせたとしても、所望の乗り心地を有するシートクッションの設計が困難であるという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、車体のフロア等の構造体上に載置され、乗り心地の良い車両用シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、車両の構造体上に載置されるシートクッションを備えた車両用シートであって、シートクッションは、所定の弾性変形特性及び振動減衰特性を有するシートクッション本体と、圧縮率に対する初期圧縮荷重の増加率がシートクッション本体よりも小さい三次元網状構造体と、を有し、三次元網状構造体は、シートクッション本体と車両の構造体との間に、乗員が着座する座面の下方に配置されると共に、三次元網状構造体は、
その圧縮の初期における圧縮荷重−圧縮率曲線が、上記シートクッション本体の圧縮荷重−圧縮率曲線に近くなるように、5%乃至10%の圧縮率まで予圧縮が加えられた状態で配置されていることを特徴としている。
【0008】
乗り心地の良い車両用シートを得るには、乗員の体重を支持する座面に適正な弾性変形特性(バネ特性)、及び振動減衰特性(ダンパー特性)を与える必要がある。本件発明者の研究によれば、車両用シートのシートクッションを、発泡ウレタン等の粘弾性体のみで構成した場合には、乗員の体重を支持する弾性力に比して減衰力が過大なものとなり、乗り心地の悪いシートクッションとなってしまう。
【0009】
一方、近年、樹脂製の細長い線材を複雑に絡み合わせた三次元網状構造を有するクッション材が広く流通するようになっている。このような三次元網状構造体は、その圧縮率−圧縮荷重曲線が発泡ウレタン等に比してヒステリシスロスの小さいものとなっており、バネに近い特性を備えている。そこで、本件発明者は、発泡ウレタン等のクッション材と、三次元網状構造体を組み合わせて使用することにより、減衰力が過大となる問題を解決できると考えた。しかしながら、市場で入手可能な三次元網状構造体は、圧縮率に対する初期圧縮荷重の増加率(変形初期のバネ定数)が小さく、これを単純にシートクッションの材料として使用するとヘタリ感が出てしまい、乗り心地の悪いものになってしまうという課題に直面した。
【0010】
上記のように構成された本発明によれば、シートクッション本体と車両の構造体との間に、乗員が着座する座面の下方に三次元網状構造体が配置され、三次元網状構造体は、所定の圧縮率まで予圧縮が加えられた状態で配置されている。このため、三次元網状構造体は、シートクッションの変形の初期から所定のバネ力を発揮することができ、三次元網状構造体を使用してもヘタリ感が出ることがない。また、三次元網状構造体を、弾性変形特性及び振動減衰特性を有するシートクッション本体と組み合わせて使用することにより、減衰力が過大になるのを回避しながら、バネ力を増強することができる。その結果、適正な弾性変形特性及び振動減衰特性を有するシートクッションを備えた車両用シートを構成することが可能になる。
【0011】
本発明において、好ましくは、シートクッション本体には、座面の反対側に三次元網状構造体を収容するための収容凹部が設けられ、三次元網状構造体は、収容凹部に収容されることにより、所定の圧縮率まで予圧縮が加えられる。
【0012】
このように構成された本発明によれば、シートクッション本体に設けられた収容凹部に収容されることにより、所定の圧縮率まで三次元網状構造体に予圧縮が加えられるので、予圧縮を加えるための特別な部材を使用することなく三次元網状構造体に予圧縮を加えることができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、さらに、圧縮用部材を有し、三次元網状構造体は、圧縮用部材を取り付けることにより、所定の圧縮率まで予圧縮が加えられる。
このように構成された本発明によれば、圧縮用部材を取り付けることにより、三次元網状構造体に予圧縮が加えられるので、予圧縮の圧縮率を任意に設定することができ、圧縮率を容易に変更することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、シートクッション本体は、その座面の部分の厚さが、三次元網状構造体の厚さの1倍乃至5倍である。
このように構成された本発明によれば、シートクッション本体の座面の部分の厚さが、三次元網状構造体の厚さの1倍乃至5倍であるので、シートクッション本体が発生する減衰力と、三次元網状構造体が発生するバネ力が適度にバランスし、乗り心地の良い車両用シートを構成することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、三次元網状構造体は、厚さが5%乃至10%予圧縮された状態でシートクッション本体と車両の構造体との間に配置される。
このように構成された本発明によれば、厚さが5%乃至10%予圧縮された三次元網状構造体がシートクッション本体と車両の構造体との間に配置されるので、シートクッション本体が発生するバネ力と、三次元網状構造体が発生するバネ力を概ね一致させることができる。この結果、着座した乗員に、2つの異なる素材を組み合わせたことによる違和感を与えることがなく、乗り心地の良い車両用シートを構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車体のフロア等の構造体上に載置される乗り心地の良い車両用シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態による車両用シートを説明する。
図1は、本発明の実施形態による車両用シート全体を示す斜視図である。
図2は、本実施形態の車両用シートの分解斜視図である。
【0019】
本実施形態による車両用シート1は、車体のフロア等の構造体上に固定されるシートである。
図1に示すように、本発明の実施形態による車両用シート1は、シートクッション2と、シートバック4と、ヘッドレスト6と、を有する。なお、本実施形態の車両用シート1は、車両の後部座席用の二人掛けのシートであるが、後部座席以外の車両用シートにも本発明を適用することができる。
【0020】
図2に示すように、シートバック4は乗員の上半身を支持するように設けられ、構造的強度を付与するための金属製のフレーム(図示せず)と、これを覆うように配置された弾性変形特性(バネ特性)及び振動減衰特性(ダンパー特性)を有する発泡ウレタン製の部材から構成されている。
ヘッドレスト6は各乗員の頭部を支持するように設けられ、金属製のフレーム(図示せず)と、これを覆うように配置された弾性変形特性(バネ特性)及び振動減衰特性(ダンパー特性)を有する発泡ウレタン製の部材から構成されている。
シートクッション2は、
図2に示すように、ベース部材8と、シートバック4から延びるワイヤ10と、クッション性を有するシートクッション本体12及び三次元網状構造体14を有する。
【0021】
ベース部材8は、EPP(ビーズ法発泡ポリプロピレン)製の、シートクッション2の基部を形成する部材であり、シートクッション2の側縁部及び前縁部において、シートクッション本体12の下側に配置されている。このベース部材8は、軽量であると共に、実質的に変形することが想定されていない。また、このベース部材8は、車両用シート1に着座する2人の乗員の臀部を夫々支持する2つの座面2aの下方、及び各座面2aの間の部分がくり抜かれており、各座面2aの下方には配置されていないので、乗員の乗り心地には実質的に関係しない。
ワイヤ10は、シートバック4からベース部材8を取り囲むように延びる金属製のワイヤであるが、このワイヤ10も、乗員の乗り心地には実質的に関係しない。
【0022】
シートクッション本体12は、ベース部材8の上に、これを覆うように配置された発泡ウレタン製の部材であり、弾性変形特性(バネ特性)及び振動減衰特性(ダンパー特性)を備えている。シートクッション本体12の上面には、乗員が夫々着座する2つの座面2aが設けられており、シートクッション本体12は、各座面2aの部分が低く、それらの間の部分、及び側縁部及び前縁部が高くなっている。
三次元網状構造体14は、シートクッション本体12の座面2aの下側に埋め込まれたクッション性のある平板状の部材であり、弾性変形特性(バネ特性)及び振動減衰特性(ダンパー特性)を備えている。この三次元網状構造体14は、車両用シート1を設置する車両の構造体(フロア)とシートクッション本体12との間に、乗員が着座する座面2aの下方に配置されている。
【0023】
次に、
図3乃至
図5を参照して、シートクッション本体12に対する三次元網状構造体14の取り付け構造を説明する。
図3は、シートクッション本体12への、三次元網状構造体14の取り付けを示す分解斜視図である。
図4は、
図3のIV−IV断面に沿うシートクッション2の断面図であり、(a)シートクッション本体12にベース部材8及び三次元網状構造体14を取り付ける前の状態、及び(b)シートクッション本体12にベース部材8及び三次元網状構造体14を取り付けた後の状態を示す。
図5は、乗員が着座した状態を示すシートクッション2の断面図である。
【0024】
図3及び
図4に示すように、EPP製のベース部材8は、発泡ウレタン製のシートクッション本体12の下側面に形成されたベース部材凹部12aに嵌め込まれている。また、
図3に示すように、シートクッション2の座面2aの裏側の部分にはベース部材8は配置されておらず、このため、ベース部材8は車両用シート1の座り心地には実質的に影響を与えない。さらに、シートクッション2の座面2aの裏側の部分には、シートクッション本体12の下側面に、収容凹部である網状構造体凹部12bが形成されており、三次元網状構造体14は、網状構造体凹部12bに嵌め込まれることによりシートクッション本体12に取り付けられる。
【0025】
また、
図3及び
図4(a)に示すように、三次元網状構造体14は、網状構造体凹部12bに嵌め込まれる前は平板状に形成されている。三次元網状構造体14は嵌め込まれることにより、網状構造体凹部12bの形状に沿って「く」の字形に、下方に向けて凸型に折れ曲がる(
図4(b))。また、網状構造体凹部12bは嵌め込まれる三次元網状構造体14の初期の寸法(力を加えていない状態における寸法)よりも小さく形成されており、網状構造体凹部12bに嵌め込まれることにより、三次元網状構造体14は、所定の圧縮率まで予圧縮が加えられた状態で配置される。
【0026】
さらに、
図5はシートクッション2の断面図であり、乗員Dが車両用シート1に着座していない状態を実線で、着座した状態を想像線で示している。
図5に示すように、乗員Dが着座していないとき実線に示す状態にあったシートクッション2は、乗員Dが着座することにより、想像線に示す状態に変形する。これに伴い、シートクッション2の座面2aを構成する弾性変形特性を有するシートクッション本体12及び三次元網状構造体14も圧縮変形される。ここで、本実施形態においては、乗員Dが着座していない状態の、座面2aの部分におけるシートクッション本体12の厚さHは、座面2aの部分における三次元網状構造体14の厚さhの約4倍である。好ましくは、シートクッション本体12の厚さHを、三次元網状構造体14の厚さhの約1倍乃至約5倍に構成する。
【0027】
次に、
図6を参照して、発泡ウレタン製のシートクッション本体12、及び三次元網状構造体14の弾性変形特性及び振動減衰特性を説明する。
図6は、本実施形態の車両用シート1においてシートクッション本体12として使用されている発泡ウレタン、及び三次元網状構造体14として使用されている部材の圧縮荷重−圧縮率曲線のグラフであり、縦軸に圧縮荷重、横軸に圧縮率を示している。即ち、
図6の実線は、平板状に形成した発泡ウレタンに直径200mmの円盤を押し当てたときの圧縮荷重[N]と圧縮率[%]の関係を示し、破線は平板状に形成した三次元網状構造体に直径200mmの円盤を押し当てたときの圧縮荷重[N]と圧縮率[%]の関係を示している。
【0028】
まず、
図6の実線に示す発泡ウレタンにおいては、圧縮荷重を加えると共に圧縮率が増加し、圧縮率が70%程度まで増加すると、圧縮荷重−圧縮率曲線が急激に立ち上がる(圧縮荷重を増加させても圧縮率があまり増加しなくなる)。次いで、圧縮率約75%の状態から圧縮荷重を減少させると、圧縮率は緩やかに低下する(圧縮荷重を減少させても急激に膨張しない低反発特性)。このように、発泡ウレタンは、圧縮荷重の負荷時と除荷時の圧縮荷重−圧縮率曲線が閉曲線を描く、ヒステリシス特性を有しており、弾性変形特性及び振動減衰特性を備えている。なお、弾性変形特性のみを備え、振動減衰特性を備えていない弾性部材では負荷時と除荷時の圧縮荷重−圧縮率曲線が一致し、閉曲線を描かない。また、ヒステリシス特性を示す振動減衰特性を有する部材においては、圧縮荷重−圧縮率曲線が描く閉曲線によって囲まれた面積が、1回の圧縮、膨張によって消費されるエネルギーに対応する。
【0029】
次に、本実施形態の車両用シート1において三次元網状構造体14として使用されている部材は、線状に押し出し成形されたポリエステルエラストマーを三次元的に網状に絡み合わせて所定の形態に形成した構造体である。例えば、東洋紡株式会社から商品名「ブレスエア(登録商標)」として販売されている部材を三次元網状構造体14として使用することができる。
【0030】
図6の破線は、本実施形態において三次元網状構造体14として使用されている部材の圧縮荷重−圧縮率曲線を示し、この部材も発泡ウレタンと同様に、圧縮荷重の負荷時と除荷時の圧縮荷重−圧縮率曲線が閉曲線を描く、ヒステリシス特性を有している。しかしながら、三次元網状構造体は、圧縮荷重−圧縮率曲線の立ち上がりの傾斜が発泡ウレタンよりも緩やかであり、圧縮率約60%付近から傾斜が急になり(圧縮荷重を増加させても圧縮率があまり増加しなくなって)、発泡ウレタンの圧縮荷重−圧縮率曲線と交差している。また、三次元網状構造体では、圧縮荷重−圧縮率曲線が描く閉曲線によって囲まれる面積が発泡ウレタンよりも小さくなっている。
【0031】
このように、三次元網状構造体は、圧縮率に対する初期圧縮荷重の増加率が発泡ウレタンよりも小さく(圧縮率0%から圧縮荷重が増加する際の傾きが発泡ウレタンよりも緩やか)、振動減衰能(1回の圧縮、膨張で消費するエネルギー)も発泡ウレタンよりも小さくなっている。即ち、三次元網状構造体は、発泡ウレタンよりもヒステリシスロスが小さい、高反発クッション素材であるということができる。発泡ウレタンと三次元網状構造体の間の、これらの特性の相違から、発泡ウレタン製のシートクッション本体12に三次元網状構造体14を組み合わせることにより、所望の弾性変形特性と振動減衰特性を兼ね備えたシートクッション2を構成することが可能になる。
【0032】
また、上記のように、三次元網状構造体14は、シートクッション本体12に対して初期圧縮荷重の増加率が小さいため、そのままの状態で使用するとシートクッション2にヘタリ感が出てしまう。そこで、本実施形態においては、三次元網状構造体14を、シートクッション本体12の網状構造体凹部12bに嵌め込むことにより、三次元網状構造体14に予圧縮を加えて使用している。本実施形態において、三次元網状構造体14を網状構造体凹部12bに嵌め込むことにより、三次元網状構造体14は約8%予圧縮される。好ましくは、約5%乃至約10%の予圧縮を加えた状態で三次元網状構造体14を使用する。
【0033】
即ち、三次元網状構造体14に予圧縮を加えることにより、三次元網状構造体の圧縮荷重−圧縮率曲線(破線)は、
図6において圧縮率約5%〜約10%分左側に平行移動される。この結果、圧縮の初期における三次元網状構造体の圧縮荷重−圧縮率曲線が発泡ウレタン(実線)に近くなり、2種類の素材を組み合わせたことによるクッション性の違和感を抑制することができる。また、上記のように、三次元網状構造体は、発泡ウレタンよりもヒステリシスロスが小さいので、発泡ウレタン製のシートクッション本体12と組み合わせて使用することにより、減衰力が過大になるのを回避しながら、バネ力を増強することができる。
【0034】
次に、
図7を参照して、本発明の実施形態による車両用シート1の作用を説明する。
図7は、車両用シートを載置する車両のフロアと座面との間の振動伝達率を、本実施形態の車両用シートと、従来の車両用シートで比較したグラフである。
【0035】
図7に示すグラフは、車両用シートを載置したフロアに加えられた振動が、座面に伝達される度合いを各周波数に対して示したグラフであり、本実施形態の車両用シート1における振動伝達率を実線で、従来の車両用シートにおける振動伝達率を破線で示している。
図7に示すように、本実施形態の車両用シート1、従来の車両用シートとも、約5〜6Hzにおいて振動伝達率がピークをもち、この周波数において、フロアの振動が座面に強く伝達されてしまう。しかしながら、従来の車両用シートにおける振動伝達率のピーク値が15.5であるのに対し、本実施形態の車両用シート1ではピーク値は1.37であり、本実施形態の車両用シート1では振動伝達率が1/10以下に劇的に低減されている。また、ピーク値以外の周波数においても、概ね、本実施形態の車両用シート1の振動伝達率が従来の車両用シートの振動伝達率を下回っており、本実施形態の車両用シート1では大幅に乗り心地が改善されていることがわかる。
【0036】
本発明の実施形態の車両用シート1によれば、シートクッション本体12と車両の構造体との間に、乗員が着座する座面2aの下方に三次元網状構造体14が配置され(
図2)、三次元網状構造体14は、所定の圧縮率まで予圧縮が加えられた状態で配置されている。このため、三次元網状構造体14は、シートクッション2の変形の初期から所定のバネ力を発揮することができ、三次元網状構造体14を使用してもヘタリ感が出ることがない。また、三次元網状構造体14を、弾性変形特性及び振動減衰特性を有するシートクッション本体12と組み合わせて使用することにより、減衰力が過大になるのを回避しながら、バネ力を増強することができる。
【0037】
また、本実施形態の車両用シート1によれば、シートクッション本体12に設けられた収容凹部である網状構造体凹部12bに収容されることにより(
図4)、所定の圧縮率まで三次元網状構造体14に予圧縮が加えられるので、予圧縮を加えるための特別な部材を使用することなく三次元網状構造体14に予圧縮を加えることができる。
【0038】
さらに、本実施形態の車両用シート1によれば、シートクッション本体12の座面2aの部分の厚さが、三次元網状構造体14の厚さの約4倍であるので、シートクッション本体12が発生する減衰力と、三次元網状構造体14が発生するバネ力が適度にバランスし、乗り心地の良い車両用シート1を構成することができる。また、シートクッション本体の座面の部分の厚さは、三次元網状構造体の厚さの約1倍乃至約5倍であることが望ましい。
【0039】
また、本実施形態の車両用シート1によれば、厚さが約8%予圧縮された三次元網状構造体14がシートクッション本体12と車両の構造体との間に配置されるので、シートクッション本体12が発生するバネ力と、三次元網状構造体14が発生するバネ力を概ね一致させることができる。この結果、着座した乗員に、2つの異なる素材を組み合わせたことによる違和感を与えることがなく、乗り心地の良い車両用シートを構成することができる。また、三次元網状構造体は厚さが約5%乃至約10%予圧縮された状態で配置することが好ましい。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、三次元網状構造体14を網状構造体凹部12bに嵌め込むことにより予圧縮が加えられていたが、変形例として、予圧縮を加えるための別の圧縮用部材を設けることもできる。例えば、圧縮用部材として、圧縮を加えない状態での三次元網状構造体の寸法よりも小さな袋体(図示せず)を準備しておき、この袋体に三次元網状構造体を押し込むことにより予圧縮を加えることもできる。なお、圧縮用部材としては、袋状の布製部材の他、筒状又は帯状の布や、他の素材で形成された袋状、筒状又は帯状の部材を圧縮用部材として使用することができる。本変形例によれば、圧縮用部材を取り付けることにより、三次元網状構造体に予圧縮が加えられるので、予圧縮の圧縮率を任意に設定することができ、圧縮率を容易に変更することができる。