【文献】
TANG, Shi, PAN, Junyou, BUCHHOLZ, Herwig, and EDMAN, Ludvig,White Light-Emitting Electrochemical Cell,ACS Applied Materials & Interfaces,米国,American Chemical Society,2011年 7月27日,3,3384-3388
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電圧が印加されることにより、前記第1導電性ポリマー及び/又は前記第2導電性ポリマーにより励起錯体が形成され、前記励起錯体から蛍光が発光されることを特徴とする請求項1に記載の発光組成物。
前記励起錯体は、前記第1導電性ポリマー同士若しくは前記第2導電性ポリマー同士により形成されたエキサイマー、又は前記第1導電性ポリマーと前記第2導電性ポリマーとの間に形成されたエキサイプレックス若しくはエレクトロプレックスであり、それぞれエキサイマー蛍光、エキサイプレックス蛍光又はエレクトロプレックス蛍光を発光することを特徴とする請求項2に記載の発光組成物。
前記第2導電性ポリマーは、フェニレンビニレン骨格を有する導電性ポリマー及びチオフェン骨格を有する導電性ポリマーから選択される少なくとも一種の導電性ポリマーであることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の発光組成物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳述する。
本発明の発光組成物は、第1導電性ポリマー、第2導電性ポリマー、ポリマー電解質、及び電解塩を含有し、このうち第1導電性ポリマー及び第2導電性ポリマーは発光化合物である。この発光組成物は、例えば、第1電極、発光層、第2電極がこの順番に積層された発光電気化学素子の発光層を形成するのに好ましく使用することができる。
【0021】
本発明の発光組成物において、第1導電性ポリマー及び前記第2導電性ポリマーの最高被占軌道(HOMO)間、又は最低空軌道(LUMO)間のエネルギー差の絶対値は0.5eV以下、好ましくは0.3eV以下である。このようなエネルギー差は、HOMO間又はLUMO間のいずれかで有していればよく、両者がこのようなエネルギー差であってもよい。このように最高被占軌道(HOMO)間、又は最低空軌道(LUMO)間のエネルギー差の絶対値を小さくすることにより、この組成物で発光電気化
学素子の発光層を形成した場合に両導電性ポリマーに電荷が注入されやすくなり、発光が得られやすい。
【0022】
このような導電性ポリマーからの発光は、電圧が印加されることにより得られ、第1導電性ポリマーが青色発光し、第2導電性ポリマーが赤橙色発光することで、全体が白色発光する。あるいは第1導電性ポリマーが青色発光し、第2導電性ポリマーが赤橙色発光し、第1導電性ポリマー及び/又は第2導電性ポリマーにより形成される励起錯体が蛍光を発光することで、全体が白色発光する。この励起錯体は、第1導電性ポリマー又は第2導電性ポリマーにより形成されるエキサイマー、第1導電性ポリマーと第2導電性ポリマーとの間に形成されるエキサイプレックス若しくはエレクトロプレックスであり、それぞれエキサイマー蛍光、エキサイプレックス蛍光若しくはエレクトロプレックス蛍光を発光する。
【0023】
ここで、エキサイマー、エキサイプレックス又はエレクトロプレックスとは、同一若しくは種類の異なる原子又は分子からなる励起二量体であり、励起状態の原子又は分子が、基底状態の同一又は他の種類の原子又は分子と結合することにより形成される。また、エキサイマー蛍光、エキサイプレックス蛍光又はエレクトロプレックス蛍光とは、励起状態のエキサイマー、エキサイプレックス又はエレクトロプレックスが失活するときに発光される蛍光のことである。
【0024】
このエキサイプレックスは、正孔がHOMOに注入されたドナー分子と、電子がLUMOに注入されたアクセプター分子とから形成される励起二量体であり、ドナー分子とアクセプター分子との波動関数が重なっており、電子及び正孔は非局在化している。励起二量体中の電子と正孔が再結合することにより発光する。また、エレクトロプレックスでは、正孔がHOMOに注入されたドナー分子と、電子がLUMOに注入されたアクセプター分子との波動関数の重なりが小さく、電荷の非局在化はほとんど起こっていない。そのため、発光は、アクセプター分子のLUMOからドナー分子のHOMOへ電子が直接遷移することによって起こる。
【0025】
前述した第1導電性ポリマー及び第2導電性ポリマーの最高被占軌道(HOMO)間、又は最低空軌道(LUMO)間のエネルギー差の絶対値が0.5eVを超える場合、第1導電性ポリマー又は第2導電性ポリマーの何れか一方のみの発光、あるいは第1導電性ポリマーと第2導電性ポリマーの間に形成されるエキサイプレックスのみ、若しくはエレクトロプレックスのみ、又はエキサイプレックス及びエレクトロプレックスのみの発光となり、白色発光からほど遠い発光となってしまうことがある。
【0026】
白色発光を得るためには、第1導電性ポリマーの発光と第2導電性ポリマーの発光とが補色関係を満たすことが好ましいが、補色関係となる化合物を見つけることは極めて困難であり、補色関係からずれて、良好な白色発光を得られないことがある。
【0027】
このため、本発明においては、第1導電性ポリマーと第2導電性ポリマーが自ら発光すると共に、上述のように第1導電性ポリマー及び/又は第2導電性ポリマーにより形成される励起錯体が、第1及び第2導電性ポリマーの発光を補完する蛍光色で発光するように設計することで、良好な白色発光を得ることができる。
【0028】
本発明の発光組成物に含有される第1導電性ポリマーは、電子及び/又は正孔輸送機能を有するものであり、電子及び/又は正孔を効率よく輸送できる導電性ポリマーである。なかでも、第1導電性ポリマー同士で、又は第2導電性ポリマーとの組み合わせにおいて良好なエキサイマー蛍光又はエキサイプレックス蛍光を発光する点で、フルオレン骨格を有する導電性ポリマーが好ましい。フルオレン骨格を有すポリマーは、自ら青色発光すると共に、第1導電性ポリマー同士でエキサイマーを形成してエキサイマー蛍光を発光したり、第2導電性ポリマーとエキサイプレックスを形成してエキサイプレックス蛍光を発光したりすることができる。
上記フルオレン骨格を有する第1導電性ポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。コポリマーにおいては、フルオレン骨格を有する構造式の異なる複数のフルオレン系モノマーとのコポリマー、及びフルオレン骨格を有するモノマーとフルオレン骨格を有さない他のモノマーとのコポリマーであってもよい。
【0029】
上記フルオレン骨格を有する第1導電性ポリマーとしては、少なくとも下記式(1)に示される構造単位を有する導電性ポリマーが好ましい。高白色度の白色光が得られるからである。
【化1】
式(1)中、Rは炭素数1〜20のアルキル基である。
具体的ポリマーとしては、下記式(1−1)のポリマーを例示できる。
【化2】
式(1−1)中、Rは炭素数1〜20のアルキル基であり、mは重合度を示し、5以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上の整数を表す。
【0030】
上記式(1)のフルオレン骨格を有する導電性ポリマーとしては、以下の化合物を例として挙げることができる。
【0031】
下記式(1a)のポリ(9,9−ジ−n−ヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル)。
【化3】
式(1a)中、nは重合度を示し、5以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上の整数を表す。
また、コポリマーとしては、ポリ[9,9−ジ−n−ヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル−co−アントラセン−9,10−ジイル]を例示できる。
【0032】
下記式(1b)のポリ[9,9−ビス−(2−エチルヘキシル)−9H−フルオレン−2,7−ジイル]。
【化4】
式(1b)中、nは重合度を示し、5以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上の整数を表す。
【0033】
下記式(1c)のポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレニル−2,7−ジイル)。
【化5】
式(1c)中、nは重合度を示し、5以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上の整数を表す。
【0034】
下記式(1d)のポリ(9,9−ジ−n−ドデシルフルオレニル−2,7−ジイル)。
【化6】
式(1d)中、nは重合度を示し、5以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上の整数を表す。
【0035】
第1導電性ポリマーの重合度は、特に上限はなく、発光組成物を溶融又は溶媒に溶解して、電極に塗付する等の方法によって発光層を形成できる重合度範囲であればよい。
【0036】
上記フルオレン骨格を有する第1導電性ポリマーとしては、特に、式(1d)に示すポリ(9,9−ジ−n−ドデシルフルオレニル−2,7−ジイル)がより好ましい。より一層高白色度の白色光が得られるからである。
【0037】
本発明の発光組成物に含有される第2導電性ポリマーとしては、第1導電性ポリマーとのHOMO又はLUMOのエネルギー差が上述の範囲内であって、第1導電性ポリマーとの間でエキサイプレックス又はエレクトロプレックスを形成するものであれば特に制限はなく、電圧を印加した際に、正孔を効率よく輸送する役割を果たすものである。
【0038】
フェニレンビニレン骨格を有する第2導電性ポリマーとしては、少なくとも下記式(2)若しくは(3)で表わされる構造単位を有する導電性ポリマーであることが好ましく、チオフェン骨格を有する第2導電性ポリマーとしては、少なくとも下記式(4)で表わされる構造単位を有する導電性ポリマーであることが好ましい。これらの導電性ポリマーは、正孔移動度が高く、効率良くエキシトンを形成でき、高白色度の白色光が得られる点で好ましい。
【0039】
【化7】
具体的ポリマーとしては、下記式(2−1)のポリマーを例示できる。
【化8】
式(2−1)中、Wは重合度を示し、5以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上の整数を表す。
【0040】
【化9】
具体的ポリマーとしては、下記式(3−1)のポリマーを例示できる。
【化10】
式(3−1)中、Xは重合度を示し、5以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上の整数を表す。
【0041】
【化11】
具体的ポリマーとしては、下記式(4−1)のポリマーを例示できる。
【化12】
式(4−1)中、Y及びZは重合度を示し、それぞれ独立に5以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上の整数を表し、同じであっても異なっていてもよい。
上記フェニレンビニレン骨格又はチオフェン骨格を有する第2導電性ポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。コポリマーにおいては、フェニレンビニレン骨格又はチオフェン骨格を有する構造式の異なる複数のフェニレンビニレン系又はチオフェン系モノマーとのコポリマー、及びフェニレンビニレン骨格又はチオフェン骨格を有するモノマーとフェニレンビニレン骨格又はチオフェン骨格を有さない他のモノマーとのコポリマーであってもよい。
【0042】
第2導電性ポリマーの重合度は、特に上限はなく、発光組成物を溶融又は溶媒に溶解して、電極に塗付する等の方法によって発光層を形成できる重合度範囲であればよい。
【0043】
具体的な第2導電性ポリマーとしては、ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ[2−メトキシ−5−(3’,7’−ジメチルオクチルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ[3−オクチルチオフェン−2,5−ジイル−co−3―デシロキシチオフェン―2,5−ジイル](POT−co−DOT)等を用いることができる。
【0044】
第1導電性ポリマーと第2導電性ポリマーとの含有比は、第1導電性ポリマー100重量部に対して第2導電性ポリマーが1〜200重量部であることが好ましく、10〜120重量部であることがより好ましい。当該範囲内であれば、より良好な蛍光発光が得られると共に発光効率をより良好にでき、高白色度の白色光となる。更に、第1導電性ポリマー及び/又は第2導電性ポリマーによる励起錯体を形成し易くなることから、この励起錯体の蛍光により、第1導電性ポリマー及び第2導電性ポリマーによる発光を補完して良好な白色発光を得ることができる。第1導電性ポリマーと第2導電性ポリマーとの含有比が前記範囲外となる場合、良好な蛍光発光が得られなくなる場合がある。
【0045】
本発明の発光組成物に含有されるポリマー電解質は、エチレンオキサイド骨格を有するポリマーであることが好ましい。例えば、下記式(5)で表されるエチレンオキサイド骨格を有するポリマーであり、このエチレンオキサイド骨格を主鎖又は側鎖に有する構造として分岐構造を有している樹脂を挙げることができる。
−(CH
2−CH
2−O)
n− ・・・・(5)
【0046】
また、エチレンオキサイド骨格は、例えば、水素原子が、メチル、エチル等のアルキル基、また、フェニル基等の芳香環を有するアリール基で置換されていてもよい。
【0047】
これらの中でも、ポリアルキレンオキサイドが好ましく、更にポリエチレンオキサイドがより好ましい。加工性、イオン伝導度、機械特性、透明性の点で優れているからである。
【0048】
ポリエチレンオキサイドは、粘度平均分子量(Mv)が100,000〜2,000,000であることが好ましく、より好ましくは300,000〜900,000である。加工性、及びイオン伝導度がより良好となる。
【0049】
発光組成物中のポリマー電解質の含有量は、第1及び第2導電性ポリマーの合計量100重量部に対して10〜400重量部が好まく、より好ましくは40〜160重量部である。ポリマー電解質含有量が10重量部未満である場合、発光層が薄く、短絡しやすくなるおそれがあり、400重量部を超える場合、きれいな面発光が得られない可能性がある。
【0050】
本発明の発光組成物には、さらに電解塩が含有され、その電解塩としては、LiCl、LiBr、LiI、LiBF
4、LiClO
4、LiPF
6、LiCF
3SO
3などのリチウム塩、KCl、KI、KBr、KCF
3SO
3などのカリウム塩、NaCl、NaI、NaBrなどのナトリウム塩、ほうフッ化テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、ほうフッ化テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライドなどのテトラアルキルアンモニウム塩を挙げることができる。上述の4級アンモニウム塩のアルキル鎖長は同じであっても異なっていても良く、必要に応じて1種のみでも良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。これらの中でも、イオン伝導度、相溶性、安定性の点からKCF
3SO
3が好ましい。
【0051】
また、発光組成物に含有される電解塩として、イオン液体を用いることもできる。本明細書においてイオン液体とは、室温(25℃)で液体として存在する塩を意味する。イオン液体のカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、又はテトラアルキルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0052】
上記イミダゾリウムカチオンとしては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−アリル−3−メチルイミダゾリウム、1−アリル−3−エチルイミダゾリウム、1−アリル−3−ブチルイミダゾリウム、1,3−ジアリルイミダゾリウム等が挙げられる。
【0053】
上記ピリジニウムカチオンとしては、例えば、1−プロピルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−エチル−3−(ヒドロキシメチル)ピリジニウム、1−エチル−3−メチルピリジニウム等が挙げられる。
【0054】
上記ピロリジニウムカチオンとしては、例えば、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム、N−メチル−N−ブチルピロリジニウム、N−メチル−N−メトキシメチルピロリジニウム等が挙げられる。
【0055】
上記ピペリジニウムカチオンとしては、例えば、N−メチル−N−プロピルピペリジニウム等が挙げられる。
【0056】
上記テトラアルキルアンモニウムカチオンとしては、例えば、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム等が挙げられる。
【0057】
上記ピラゾリウムカチオンとしては、例えば、1−エチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム、1−プロピル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム、1−ブチル−2,3,5−トリメチルピラゾリウム等が挙げられる。
【0058】
上記テトラアルキルホスホニウムカチオンとしては、例えば、テトラメチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム等が挙げられる。
【0059】
また、上記カチオンと組み合わされてイオン液体を構成するアニオンとしては、例えば、BF
4−、NO
3−、PF
6−、SbF
6−、CH
3CH
2OSO
3−、CH
3CO
2−、又はCF
3CO
2−、CF
3SO
3−、(CF
3SO
2)
2N
−[ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド]、(CF
3SO
2)
3C
−などのフルオロアルキル基含有アニオンが挙げられる。
【0060】
発光組成物中の電解塩の含有量は、第1及び第2導電性ポリマーの合計量100重量部に対して0.01〜40重量部が好まく、より好ましくは0.1〜20重量部である。電解塩含有量が0.01重量部未満である場合、発光組成物を発光層とした際に電流が流れず、発光しない可能性があり、40重量部を超える場合、ドーピングが進みすぎて短絡を起こしやすくなるおそれがある。
【0061】
本発明の発光電気化学素子は、第1電極、発光層、及び第2電極がこの順番に積層されてなり、発光層が本発明の発光組成物からなる。
【0062】
本発明の発光電気化学素子の発光層の層厚は、原理的には発光性能は膜厚に依存することはないことから、任意の層厚とすることができるが、通常、実用性の点で、1nm〜1000nmの範囲であり、より好ましくは10〜500nm、さらに好ましくは50nm〜250nmの範囲で所望の層厚を適用する。層厚が1nmより薄い場合、短絡することがあり、1000nmを超える場合は、第1導電性ポリマー及び/又は第2導電性ポリマーによる励起錯体形成の効率が低くなる場合がある。
【0063】
本発明の発光電気化学素子を構成する第1電極及び第2電極の少なくとも一方は透光性電極、すなわち透明電極であり、発光層が発光した光を取り出すことができる。透明電極の材料としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、インジウムスズオキサイド、酸化インジウム・酸化亜鉛化合物、酸化錫・アンチモン化合物、酸化ガリウム・酸化亜鉛化合物、白金などの金属などを挙げることができる。
【0064】
他方の電極は透明電極である必要はなく、例えば、アルミニウム、インジウム、マグネシウム、タングステン、チタン、モリブデン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、イットリウム、リチウム、マンガン、金、銀、銅、パラジウム、白金、錫、鉛、ニッケル等の金属、これらの金属の合金などを使用できる。もちろん透明電極であってもよい。
【0065】
第1電極及び/又は第2電極としては、透明性を有するITO(酸化インジウムスズ)が好ましく、これ以外に、導電性、経済性の点でアルミニウムが好ましい。
【0066】
ガラス等の透明基板上に、第1電極又は第2電極を形成する方法としては、スパッタリング法、真空蒸着法等を例示できる。
【0067】
次に、本発明の発光電気化学素子の製造方法例について、
図1を参照しながら説明する。
【0068】
図1に示す発光電気化学素子10を作製するには、ガラス等の透明基板上に第1電極1として設けられたITO電極等の表面に、本発明の発光組成物を溶媒に溶解・分散した分散溶液を、例えばスピンコート成膜法により塗付し、溶媒を乾燥除去して発光層2を積層する。ここで、分散溶液のための溶媒は、各構成成分を溶解するものであれば特に限定されないが、例えば、クロロホルム、シクロヘキサノン、トルエン、若しくはこれらの混合溶媒等の溶媒を使用することができる。
【0069】
続いて、発光層2上に第2電極3としてのアルミニウムを、例えば、真空蒸着法により蒸着、製膜させることにより積層して発光電気化学素子10を作製することができる。
【0070】
本発明の発光電気化学素子10の素子特性は、輝度−電圧(L−V)特性、ELスペクトル図、及び色度図(色度座標)で評価できる。
【0071】
L−V特性評価では、駆動電圧と発光光の輝度との関係を評価できる。ELスペクトル図では、電圧を印加した場合の波長ごとの発光強度により発光色の詳細を把握できる。さらに、色度図を用いてxy座標の数値によって発光色を表すことができ、本発明の一目的である白色光の白色の度合いをxy座標の数値で評価することができる。
【0072】
本発明の発光装置は、上記本発明の発光電気化学素子と、該発光電気化学素子に電圧を印加するための電圧部とを有する構成である。当該電圧部としては、直流電圧又は交流電圧の何れを印加するものであってもよい。
【実施例】
【0073】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
[発光層2を構成する各化合物]
(A1)第1導電性ポリマー;上記式(1d)のポリ(9,9−ジ−n−ドデシルフルオレニル−2,7−ジイル)(PFD)(Aldrich社製)。LUMO:−3.2eV、HOMO:−6.1eV
(A2−1)第2導電性ポリマー;上記式(2−1)のポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレンビニレン](MEH−PPV)(Aldrich社製)。LUMO:−3.4eV、HOMO:−5.5eV
(A2−2)第2導電性ポリマー;上記式(3−1)のポリ[2−メトキシ−5−(3’,7’−ジメチルオクチルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン](MDMO−PPV)(Aldrich社製)。LUMO:−3.2eV、HOMO:−5.4eV
(A2−3)第2導電性ポリマー;上記式(4−1)のポリ[3−オクチルチオフェン−2,5−ジイル−co−3−デシロキシチオフェン−2,5−ジイル](POT−co−DOT)(Aldrich社製)。LUMO:−3.3eV、HOMO:−5.0eV
(A3)ポリマー電解質;ポリエチレンオキサイド(Mv600,000、Aldrich社製)
(A4)電解塩;KCF
3SO
3(Aldrich社製)
【0075】
なお、上記した各エネルギー準位については、以下の方法により決定した。導電性ポリマーのHOMO準位は、サイクリックボイルタモグラム(CV)の酸化波の立ち上がりから酸化電位E(フェロセン基準)を決定した後、フェロセン基準の仕事関数を5.23eVとし、式:HOMO=−(eE+5.23)を用いて決定した。ここで「e」は単位電荷である。また、バンドギャップエネルギー(Eg)は、紫外可視スペクトルの吸収ピークの立ち上がりから決定した。LUMO準位は、LUMO=HOMO+Egの式から算出したものである。
【0076】
実施例1
<発光層:発光組成物1>
発光組成物1として、上記成分A1、A2−1、A3、及びA4を表1に示す配合比で混合した。第1導電性ポリマーA1と第2導電性ポリマーA2−1間のLUMOの差(絶対値)を表1に示す。
【0077】
<発光電気化学素子:素子Aの作製>
ガラス基板上に第1電極1として、ITO電極を設けてUVオゾン洗浄した。その後、当該第1電極1上に、発光組成物1をクロロホルム/シクロヘキサノン(1.62:1.0)混合溶媒に溶解した溶液濃度9.5mg/mL溶媒の溶液150μLをスピンコート成膜法により塗付し、続いて当該混合溶媒を乾燥除去して150nmの発光層2を積層した。更に、この発光層2上にアルミニウムを真空蒸着して100nmの第2電極3を積層し、素子Aを作製した。
【0078】
得られた素子AについてL−V特性、ELスペクトル、並びに色度図での発光色評価を実施した。L−V特性を
図2(a)に、ELスペクトルを
図3(a)に、色度図を
図4(a)に、及び色度図上の色度座標のxy座標を表2に示す。L−V特性及びELスペクトルは瞬間マルチ測光システム(広ダイナミックレンジタイプ)MCPD9800(大塚電子株式会社製)を用いて測定した。測定条件としては、検出器から素子発光面までの距離は0.028m、発光面積は9×10
−6m
2(3mm×3mm)、印加電圧は0Vから15Vである。また、全ての測定は暗室下で行った。
【0079】
実施例2〜5
<発光層:発光組成物2〜5>
発光組成物2〜5として、上記成分A1、A2−1、A3、及びA4を表1に示す配合比で混合した。各組成物における第1導電性ポリマーと及び第2導電性ポリマーとのLUMOの差(絶対値)を表1に示す。
【0080】
<発光電気化学素子:素子B、C、D及びEの作製>
実施例1の発光組成物1を発光組成物2〜5にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして素子B、C、D及びEを作製し、同様に評価した。結果を
図2〜
図4及び表2に示す。
【0081】
実施例6
<発光層:発光組成物6>
発光組成物6として、上記成分A1、A2−2、A3、及びA4を表1に示す配合比で混合した。第1導電性ポリマーと第2導電性ポリマーとのLUMOの差(絶対値)を表1に示す。
【0082】
<発光電気化学素子:素子Fの作製>
実施例1の発光組成物1を発光組成物6に変更し、混合溶媒をクロロホルム/シクロヘキサノン(1.67/1.0)混合溶媒とした以外は実施例1と同様にして素子Fを作製し、同様に評価した。結果を
図5〜
図7及び表2に示す。
【0083】
実施例7
<発光層:発光組成物7>
発光組成物7として、上記成分A1、A2−3、A3、及びA4を表1に示す配合比で混合した。第1導電性ポリマーと第2導電性ポリマーとのLUMOの差(絶対値)を表1に示す。
【0084】
<発光電気化学素子:素子Gの作製>
実施例1の発光組成物1を発光組成物7に変更し、混合溶媒をクロロホルム/シクロヘキサノン(1.97/1.0)混合溶媒とした以外は実施例1と同様にして素子Gを作製し、同様に評価した。結果を
図8〜
図10及び表2に示す。
【0085】
比較例1
<発光層:発光組成物8>
発光組成物8として、上記成分A1、A3、及びA4を表1の配合比で混合した。
【0086】
<発光電気化学素子:素子Hの作製>
実施例1の発光組成物1を発光組成物8に変更した以外は実施例1と同様にして素子Hを作製し、同様に評価した。結果を
図11、
図12及び表2に示す。
【0087】
比較例2
<発光層:発光組成物9>
発光組成物9として、上記成分A2−1、A3、及びA4を表1の配合比で混合した。
【0088】
<発光電気化学素子:素子Iの作製>
実施例1の発光組成物1を発光組成物9に変更した以外は実施例1と同様にして素子Iを作製し、同様に評価した。結果を
図11、
図12及び表2に示す。
【0089】
比較例3
<発光層:発光組成物10>
発光組成物10として、上記成分A2−2、A3、及びA4を表1の配合比で混合した。
【0090】
<発光電気化学素子:素子Jの作製>
実施例1の発光組成物1を発光組成物10に変更した以外は実施例1と同様にして素子Jを作製し、同様に評価した。結果を
図11、
図12及び表2に示す。
【0091】
比較例4
<発光層:発光組成物11>
発光組成物11として、上記成分A2−3、A3、及びA4を表1の配合比で混合した。
【0092】
<発光電気化学素子:素子Kの作製>
実施例1の発光組成物1を発光組成物11に変更した以外は実施例1と同様にして素子Kを作製し、同様に評価した。結果を
図11、
図12及び表2に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
図2、
図5及び
図8のL−V特性に示すように、素子A〜Gは、いずれも、駆動電圧4V〜15Vで白色発光することが分かる。
【0096】
図11の素子Hは第1導電性ポリマーA1単独での発光挙動を示しており、A1は、450nm付近に極大値を有して400〜500nmで発光する。この発光は、第1導電性ポリマーA1単独での発光である。
図11の素子Iは第2導電性ポリマーA2−1単独での発光挙動を示しており、A2−1単独では、600nm付近に極大値を有して発光する。
【0097】
これに対して
図3に示すように、素子A〜素子Eの発光スペクトルは、450nm、500nm、600nm付近に極大値を有する発光スペクトルを重ね合わせたものとなっている。この500nm付近の発光は、A1のエキサイマー蛍光である。
図4の色度図より、素子A〜素子Eは、A1の青色発光、A2−1の赤橙色発光及びA1のエキサイマーによる500nm付近の発光により、限りなく白色に近い白色発光が得られていることが分かる。
【0098】
また、
図6に示すように、素子Fの発光スペクトルは、500nm付近に極大値を有する発光を示しており、A1とA2−2の発光に500nm付近のA1のエキサイマーに起因する発光が重ね合わさった発光となっている。
図7の色度図より、素子Fは、A1の青色発光、A2−2の赤橙色発光及びA1のエキサイマーによる500nm付近の発光により、限りなく白色に近い白色発光が得られていることが分かる。
【0099】
更に、
図11の素子Kは第2導電性ポリマーA2−3単独での発光挙動を示しており、A2−3単独では、600nm以上の領域にて発光する。
【0100】
これに対して
図9に示すように、素子Gの発光スペクトルは、400nm〜500nm付近に極大値を有する発光と、600nm付近以降のショルダーの発光を合わせたものとなっており、500nm付近にA1のエキサイマーに起因する発光が観測される。また、
図10の色度図より、素子Gは、A1の青色発光、A2−3の赤橙色発光及びA1のエキサイマーによる500nm付近の発光により、限りなく白色に近い白色発光が得られていることが分かる。