(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6675669
(24)【登録日】2020年3月13日
(45)【発行日】2020年4月1日
(54)【発明の名称】入浴用乳幼児チェア
(51)【国際特許分類】
A47K 3/12 20060101AFI20200323BHJP
A47D 1/10 20060101ALI20200323BHJP
【FI】
A47K3/12
A47D1/10
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-168487(P2019-168487)
(22)【出願日】2019年9月17日
【審査請求日】2019年9月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519337086
【氏名又は名称】株式会社晃誠
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼石 敦子
【審査官】
下井 功介
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−018991(JP,U)
【文献】
実開平06−057288(JP,U)
【文献】
特開2002−223903(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3141746(JP,U)
【文献】
実公昭48−028936(JP,Y1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0073995(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/12
A47D 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯が張られた浴槽内において、少なくとも顔部全体を前記湯から露出させた状態で乳幼児を入浴させるための入浴用乳幼児チェアであって、
前記浴槽の縁部に掛け止め可能なフック形状を有し、前記縁部の厚みに応じて幅を調整可能な調整機構を有する2つの掛止部と、
前記2つの掛止部から前記浴槽内の底部に向けて延伸して前記底部に当接させるための脚を有し、前記浴槽内の深さに応じて前記脚が前記底部に当接するように伸縮する調整機構を有する2つの脚部と、
前記2つの脚部に跨って伸びる帯部と、
前記帯部に装着され、前記乳幼児の足を挿入させて股間を支持する座面部と、
を備え、
前記2つの脚部は、強硬性を有する材質で構成されており、
前記帯部及び前記座面部は、折り曲げ可能な柔軟性を有する材質で構成されており、
前記2つの脚部と前記帯部とに跨って設けられ、前記2つの脚部と前記帯部とを開動可能に連結する蝶番を有することを特徴とする入浴用乳幼児チェア。
【請求項2】
請求項1に記載の入浴用乳幼児チェアであって、
前記底部に接触する前記脚の当接部は、滑り止めの凹凸部が形成されていることを特徴とする入浴用乳幼児チェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴用乳幼児チェアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、乳幼児は一人で入浴することが出来ず、保護者と一緒に風呂を利用する。保護者と一緒に浴槽に浸かっている状態であれば問題はないが、保護者が体や頭を洗っているときに、乳幼児を一人で浴槽に浸からせたまま放置することはできないため、その間、乳幼児を洗い場に座らせるなどの対応が必要である。しかし、冬場は、洗い場に座らせたままであると湯冷めする可能性があるため、乳幼児を一人で安全に入浴させることが望まれている。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、引っ掛け部(1)の軸に体支え部(2)を設け、体支え部(2)に体受け部(3)を設けたことを特徴とした浴槽用ベビーチェアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−151046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乳幼児を入浴させるために特許文献1のような構成を用いることは可能であるが、特許文献1の浴槽用ベビーチェアは、引掛け部のみで引掛けているだけで浴槽内においてチェアが浮いた状態であり、重力方向の支えがないため、乳幼児を載せた状態で安定して使用することが難しい状況にある。
【0006】
本発明の目的は、安定した状態、かつ、安全に乳幼児を入浴させることを可能とする入浴用乳幼児チェアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る入浴用乳幼児チェアは、湯が張られた浴槽内において、少なくとも顔部全体を前記湯から露出させた状態で乳幼児を入浴させるための入浴用乳幼児チェアであって、前記浴槽の縁部に掛け止め可能なフック形状を有し、前記縁部の厚みに応じて幅を調整可能な調整機構を有する2つの掛止部と、前記2つの掛止部から前記浴槽内の底部に向けて延伸して前記底部に当接させるための脚を有し、前記浴槽内の深さに応じて前記脚が前記底部に当接するように伸縮する調整機構を有する2つの脚部と、前記2つの脚部に跨って伸びる帯部と、前記帯部に装着され、前記乳幼児の足を挿入させて股間を支持する座面部と、を備え
、前記2つの脚部は、強硬性を有する材質で構成されており、前記帯部及び前記座面部は、折り曲げ可能な柔軟性を有する材質で構成されており、前記2つの脚部と前記帯部とに跨って設けられ、前記2つの脚部と前記帯部とを開動可能に連結する蝶番を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る入浴用乳幼児チェアであって、前記底部に接触する前記脚の当接部は、滑り止めの凹凸部が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安定した状態、かつ、安全に乳幼児を入浴させることができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る実施形態の入浴用乳幼児チェアを示す図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の入浴用乳幼児チェアを浴槽に装着して乳幼児を座らせている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0014】
図1は、本発明に係る実施形態の入浴用乳幼児チェア10を示す図である。
図2は、入浴用乳幼児チェア10を浴槽2に装着して乳幼児4を座らせている様子を示す図である。
【0015】
入浴用乳幼児チェア10は、湯が張られた浴槽2内において、顔部全体を湯から露出させた状態で乳幼児4を入浴させるための椅子である。入浴用乳幼児チェア10は、2つの掛止部12と、2つの脚部14と、帯部16と、座面部18とを備えている。
【0016】
浴槽2は、一戸建住宅やマンションなど様々な住宅事情がある中で、種々の規格サイズが準備されているが、例えば、横幅と奥行と高さについての一例を挙げると、横幅800mm×奥行700mm×高さ645〜660mmなどの略箱型形状を有している。
【0017】
少し大きいサイズのものとして、横幅1000mm×奥行700mm〜720mm×高さ600〜660mmのバスタブや、横幅1200mm×奥行685〜750mm×高さ550〜650mmのバスタブなどがあるが、これらは一例であり、もちろん、その他のサイズも設定することが可能である。
【0018】
浴槽2は、上記のように、様々なサイズのものが存在し、強度などの観点から厚みtについても所定の厚みが設定されており、例えば、100mm〜150mmに設定することができる。浴槽2の材質は、適度な強度を有する材質、例えば、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)、ホーロー、ステンレス、人造大理石、木製、タイルを用いることが出来る。
【0019】
2つの掛止部12は、浴槽2の縁部3に掛け止め可能なフック形状を有し、縁部3の厚みtに応じて幅を調整可能な調整機構13と突起部11を有する。各掛止部12は、略U字形状(
図1では、上下逆となるU字)の円筒部材を含んで構成される。
【0020】
各掛止部12は、適度な強硬性を有する材質、例えば、プラスチックなどの合成樹脂を用いることが可能であるが、もちろん、スチールなどの金属を用いてもよい。
【0021】
調整機構13は、略U字形状の円筒部材のうち一方端側に設けられている。調整機構13は、螺子操作部13aと、螺子本体部13bと、当接部13cとを備えている。
【0022】
螺子本体部13bは、掛止部12の円筒部材に形成された螺子孔に螺合可能な螺子溝が形成された部材である。螺子操作部13aは、螺子本体部13bを螺合させるために操作するハンドル部材である。
【0023】
当接部13cは、螺子本体部13bにおいて螺子操作部13aと反対側に設けられ浴槽2の縁部3の外側に当接可能な部材である。突起部11は、略U字形状の円筒部材のうち他方端側に設けられた突起部材であり、浴槽2の縁部3の内側に当接可能な部材である。
【0024】
ここで、螺子操作部13aを締め付けたり緩めたりすることで、浴槽2の縁部3の厚みに応じて、当接部13cと突起部11との間の距離を変えることができるが、これに加えて、当接部13cと突起部11との間の距離を大きく変えるために長さ調整部12aが形成されている。
【0025】
図1の下図に、長さ調整部12aの拡大図を示している。長さ調整部12aは、径が大きい筒部12eと、筒部12eよりも径が小さい筒部12cとを有し、筒部12eの内部に筒部12cが挿通可能になっている。
【0026】
筒部12eは、複数の貫通孔12b(
図1の例では3つ)が形成されている。筒部12cは、貫通孔12bに挿通可能な突起部12dが形成されている。突起部12dは、押圧力が加わることで、
図1の点線で示されるように収納され、押圧力がない状態では突出するように付勢力が与えられている。
【0027】
このように、突起部12dが複数の貫通孔12bのいずれに挿通されるかにより、長さ(当接部13cと突起部11との間の距離)を調整することができる。
【0028】
2つの脚部14は、2つの掛止部12から浴槽2内の底部に向けて延伸して底部に当接させるための脚を有し、浴槽2内の深さに応じて脚が底部に当接するように伸縮する調整機構14aを有する。
【0029】
各脚部14は、略I字形状の円筒部材を含んで構成される。この円筒部材の上端部は各掛止部12の他方端の径よりも小さい径を有し、掛止部12に挿通可能であり、脚部14の上端部の掛止部12への挿入量により、長さを調整することが出来るが、構造は長さ調整部12aと同じ構造である。具体的には、掛止部12の他方端側に形成された複数の貫通孔のいずれかに脚部14の上端側に設けられた突起部を差し込むことで長さを調整する。
【0030】
脚部14は、浴槽2内の底部に当接可能な脚部材15を有する。脚部材15は、滑り止めの凹凸部が形成されて滑り止め加工がなされることが好ましいが、ゴムなどを用いて摩擦力を高めることも出来る。
【0031】
脚部材15は、脚部14の円筒部材の下端部に嵌合して固定する着脱構造を有している。この着脱構造は、長さ調整部12aの同様の構造を有し、円筒部材の下端部に設けられる貫通孔と、脚部材15に設けられる突起部とを嵌合させること着脱可能にしている。
【0032】
帯部16は、脚部14の上部において、2つの脚部14に跨って伸びる帯部材である。帯部16は、所定の厚みを有する板状部材であり、適度な柔軟性を有する材質、例えば、ゴム部材を用いて構成することが出来る。
【0033】
なお、2つの脚部14と帯部16とに跨るように蝶番が設けれ、2つの脚部14と帯部16とを開動可能に連結している。
【0034】
座面部18は、帯部16に装着され、乳幼児4の足を挿入させて股間を支持する機能を有する。座面部18は、
図1に示されるように日の字状(
図1の例では、90°回転させた状態の「日」)適度な柔軟性を有する材質、例えば、ゴム部材を用いて構成することができる。なお、座面部18には、乳幼児4を座らせたときに肩にかけるための肩掛け紐を取り付けているが、バックル部を着脱することで装着するような構成にしておくことが好ましい。
【0035】
ここで、帯部16及び座面部18は、折り曲げ可能な柔軟性材質で構成されているため、例えば、脚部14の伸びる延伸方向に沿った二つ折りに曲げることが出来る。これにより、コンパクトな状態にまとめることが出来る。
【0036】
続いて、上記構成の入浴用乳幼児チェア10の作用について説明する。一般的に、乳幼児4は一人で入浴することが出来ず、保護者と一緒に風呂を利用する。
【0037】
保護者と一緒に浴槽2に浸かっている状態であれば問題はないが、保護者が体や頭を洗っているときに、乳幼児4を一人で浴槽2に浸からせたまま放置することはできないため、その間、乳幼児4を洗い場に座らせるなどの対応が必要である。
【0038】
冬場は、洗い場に座らせたままであると湯冷めする可能性があるため、乳幼児4を一人で安全に入浴させることが望まれている。
【0039】
そこで、入浴用乳幼児チェア10を準備し、浴槽2の縁部3に掛止部12を引掛け、脚部14が浴槽2内に伸びるように設置する。
【0040】
このとき、浴槽2の幅に応じて長さ調整部12aと調整機構13を用いて、当接部13cと突起部11との間の距離が縁部3の厚みに一致させて、螺子操作部13aを締め付けることで掛止部12をしっかりと固定した状態にする。
【0041】
そして、調整機構14aを用いて、浴槽2の高さに合せて、脚部材15が浴槽2内の底部に当接するように脚部14の長さを調整する。これにより、重力方向に対してもしっかりと支えることが出来る。
【0042】
このように入浴用乳幼児チェア10を設置した後、乳幼児4を
図2に示されるように、座面部18に座らせて、肩掛け紐を通した状態にして、顔から肩の上部が湯から露出させた安全な状態で入浴させることが出来る。
【0043】
帯部16及び座面部18によって乳幼児4の腰と尻がしっかりと覆って固定されているため、乳幼児4は倒れたりすることなく、安全な状態を保って入浴させることができ、これにより、乳幼児4を一人で入浴させた状態で保護者は体や頭を洗うことが出来る。
【0044】
上記のように、バスタブは様々な大きさが存在するが、入浴用乳幼児チェア10によれば、浴槽2の縁部3の厚みに合せて掛止部12の幅を一致させることができるため、乳幼児4が前後方向に揺れ動いた場合であっても、外れることなくしっかりと引掛けた状態を保持することができる。
【0045】
また、入浴用乳幼児チェア10によれば、乳幼児4が上下方向に揺れ動いた場合であっても、脚部材15が底部に当接して支えるため、安定した状態で入浴させることが出来るという顕著な効果を奏する。
【0046】
さらに、入浴用乳幼児チェア10は、乳幼児4の入浴を終えた後は、帯部16及び座面部18を折り曲げることにより、コンパクトな形にした状態で収納することができるため、省スペース化に貢献することも出来る。
【符号の説明】
【0047】
2 浴槽、3 縁部、4 乳幼児、10 入浴用乳幼児チェア、11 突起部、12 掛止部、12a 長さ調整部、12b 貫通孔、12c 筒部、12d 突起部、12e 筒部、13 調整機構、13a 螺子操作部、13b 螺子本体部、13c 当接部、14 脚部、14a 調整機構、15 脚部材、16 帯部、18 座面部。
【要約】
【課題】安定した状態、かつ、安全に乳幼児を入浴させることを可能とする入浴用乳幼児チェアを提供することである。
【解決手段】入浴用乳幼児チェア10は、湯が張られた浴槽2内において、少なくとも顔部全体を湯から露出させた状態で乳幼児4を入浴させるための入浴用乳幼児チェア10であって、浴槽2の縁部3に掛け止め可能なフック形状を有し、縁部3の厚みに応じて幅を調整可能な調整機構13を有する2つの掛止部12と、2つの掛止部12から浴槽2内の底部に向けて延伸して底部に当接させるための脚部材15を有し、浴槽2内の深さに応じて脚部材15が底部に当接するように伸縮する調整機構を有する2つの脚部14と、2つの脚部14に跨って伸びる帯部16と、帯部16に装着され、乳幼児4の足を挿入させて股間を支持する座面部18と、を備える。
【選択図】
図1