(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0012】
本実施形態の油脂固化剤は、ショ糖脂肪酸エステル(A)を含有する。前記ショ糖脂肪酸エステル(A)は、構成脂肪酸が炭素数12〜24である不飽和脂肪酸を含有するものである。
【0013】
前記炭素数12〜24である不飽和脂肪酸としては、例えば、ドデセン酸などの炭素数12の不飽和脂肪酸、トリデセン酸などの炭素数13の不飽和脂肪酸、テトラデセン酸などの炭素数14の不飽和脂肪酸、ペンタデセン酸などの炭素数15の不飽和脂肪酸、ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸など)などの炭素数16の不飽和脂肪酸、ヘプタデセン酸などの炭素数17の不飽和脂肪酸、オクタデセン酸(オレイン酸、バクセン酸など)、オクタデカジエン酸(リノール酸など)、オクタデカトリエン酸((9,12,15)−リノレン酸、(6,9,12)−リノレン酸、エレオステアリン酸など)などの炭素数18の不飽和脂肪酸、ノナデセン酸などの炭素数19の不飽和脂肪酸、エイコサジエン酸(8,11−エイコサジエン酸など)、エイコサトリエン酸(5,8,11−エイコサトリエン酸など)、エイコサテトラエン酸(アラキドン酸など)などの炭素数20の不飽和脂肪酸、テトラコサン酸(ネルボン酸など)などの炭素数24の不飽和脂肪酸が挙げられる。これらのうち、油脂の固化性がより優れ、食品の食感がより優れることから、炭素数16〜20である不飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16〜18である不飽和脂肪酸がより好ましく、炭素数18である不飽和脂肪酸がさらに好ましい。なお、不飽和脂肪酸における炭化水素基は、直鎖であってもよく、分岐鎖を有していてもよいが、油脂の固化性がより優れることから、直鎖であることが好ましい。
【0014】
前記炭素数12〜24である不飽和脂肪酸の含有量は、ショ糖脂肪酸エステル(A)の構成脂肪酸中に10〜60質量%であることが好ましい。上記含有量とすることにより、油脂の固化性がより優れ、食品の食感がより優れたものとなる。上記含有量は、15〜50質量%であることがより好ましく、20〜40質量%であることがさらに好ましい。
【0015】
ショ糖脂肪酸エステル(A)は、構成脂肪酸として、さらに炭素数12〜24の飽和脂肪酸を含有することができる。炭素数12〜24の飽和脂肪酸としては、例えば、ドデカン酸(ラウリン酸)などの炭素数12の飽和脂肪酸、トリデカン酸などの炭素数13の飽和脂肪酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)などの炭素数14の飽和脂肪酸、ペンタデカン酸(ペンタデシル酸)などの炭素数15の不和脂肪酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)などの炭素数16の飽和脂肪酸、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)などの炭素数17の飽和脂肪酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)などの炭素数18の飽和脂肪酸、ノナデカン酸などの炭素数19の飽和脂肪酸、エイコサン酸(アラキジン酸)などの炭素数20の飽和脂肪酸、ドコサン酸(ベヘン酸)などの炭素数22の飽和脂肪酸、テトラコサン酸(リグノセリン酸)などの炭素数24の飽和脂肪酸などが挙げられる。これらのうち、食品の食感がより優れることから、炭素数12〜20である飽和脂肪酸が好ましく、炭素数16〜18である飽和脂肪酸がより好ましい。なお、飽和脂肪酸における炭化水素基は、直鎖であってもよく、分岐鎖を有していてもよいが、油脂の固化性がより優れることから、直鎖であることが好ましい。
【0016】
ショ糖脂肪酸エステル(A)の構成脂肪酸は、前記炭素数12〜24である飽和脂肪酸を40〜90質量%含有することが好ましい。上記含有量とすることにより、油脂の固化性がより優れ、食品の食感がより優れたものとなる。上記含有量は、50〜85質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることがさらに好ましい。
【0017】
また、ショ糖脂肪酸エステル(A)の構成脂肪酸は、炭素数12〜16である飽和脂肪酸の含有量が0〜30質量%であることが好ましく、0〜20質量%であることがより好ましい。上記含有量とすることにより、油脂の固化性がより優れたものとなる。
【0018】
本発明に用いるショ糖脂肪酸エステル(A)は、平均エステル化度が4〜8であることが好ましく、4.5〜7.5であることがより好ましく、5〜7であることがさらに好ましく、5.5〜7であることが特に好ましい。平均エステル化度を上記範囲内とすることにより、油脂の固化性がより優れたものとなる。
【0019】
なお、本実施形態において、ショ糖脂肪酸エステルの平均エステル化度は、以下の方法により算出し得る。なお、ショ糖脂肪酸エステルの水酸基価は、JIS K0070に準じて測定することができる。
【0020】
<平均エステル化度の算出方法>
平均エステル化度を「X」とする次式において、下記OHV、MwSug、MwFaを代入してXを算出する。
(ショ糖1分子中のOH基の数−X)
=(サンプル1g中のOH基のモル数)/(サンプル1g中のショ糖脂肪酸エステルのモル数)
=((OHV)/(1000×56.11))/{1/(MwSug+(MwFa−18)X)}
OHV:ショ糖脂肪酸エステルの水酸基価(mgKOH/g)
MwSug:ショ糖の分子量
MwFa:構成脂肪酸の平均分子量
【0021】
本発明に用いるショ糖脂肪酸エステル(A)は、ショ糖と全ての構成脂肪酸の混合物とのエステル化物であってもよく、ショ糖と一部の構成脂肪酸とのエステル化物とショ糖と残りの構成脂肪酸とのエステル化物との混合物であってもよい。これらのうち、油脂の固化性がより優れることから、ショ糖と全ての構成脂肪酸の混合物とのエステル化物であることが好ましい。
【0022】
本発明の油脂固化剤は、さらにポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を含有することが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を含有することにより、油脂の固化性がより優れたものとなる。
【0023】
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の原料として用いられるポリグリセリンの平均重合度は、2〜20であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、油脂の固化性がより優れたものとなる。上記ポリグリセリンの平均重合度は、3〜15であることがより好ましく、4〜12であることがさらに好ましく、8〜12であることが特に好ましい。
【0024】
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の構成脂肪酸は、炭素数12〜24であることが好ましい。このような脂肪酸としては、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸が挙げられる。飽和脂肪酸としては、ドデカン酸(ラウリン酸)などの炭素数12の飽和脂肪酸、トリデカン酸などの炭素数13の飽和脂肪酸、テトラデカン酸(ミリスチン酸)などの炭素数14の飽和脂肪酸、ペンタデカン酸(ペンタデシル酸)などの炭素数15の不和脂肪酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)などの炭素数16の飽和脂肪酸、ヘプタデカン酸(マルガリン酸)などの炭素数17の飽和脂肪酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)などの炭素数18の飽和脂肪酸、ノナデカン酸などの炭素数19の飽和脂肪酸、エイコサン酸(アラキジン酸)などの炭素数20の飽和脂肪酸、ドコサン酸(ベヘン酸)などの炭素数22の飽和脂肪酸、テトラコサン酸(リグノセリン酸)などの炭素数24の飽和脂肪酸などが挙げられる。また、不飽和脂肪酸としては、例えば、ドデセン酸などの炭素数12の不飽和脂肪酸、トリデセン酸などの炭素数13の不飽和脂肪酸、テトラデセン酸などの炭素数14の不飽和脂肪酸、ペンタデセン酸などの炭素数15の不飽和脂肪酸、ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸など)などの炭素数16の不飽和脂肪酸、ヘプタデセン酸などの炭素数17の不飽和脂肪酸、オクタデセン酸(オレイン酸、バクセン酸など)、オクタデカジエン酸(リノール酸など)、オクタデカトリエン酸((9,12,15)−リノレン酸、(6,9,12)−リノレン酸、エレオステアリン酸など)などの炭素数18の不飽和脂肪酸、ノナデセン酸などの炭素数19の不飽和脂肪酸、エイコサジエン酸(8,11−エイコサジエン酸など)、エイコサトリエン酸(5,8,11−エイコサトリエン酸など)、エイコサテトラエン酸(アラキドン酸など)などの炭素数20の不飽和脂肪酸、テトラコサン酸(ネルボン酸など)などの炭素数24の不飽和脂肪酸などが挙げられる。これらのうち、油脂の固化性がより優れ、食品の食感がより優れることから、炭素数12〜20である脂肪酸がより好ましく、炭素数16〜18である脂肪酸がさらに好ましく、炭素数18である脂肪酸が特に好ましい。また、油脂の固化性がより優れることから、上記構成脂肪酸は飽和脂肪酸であることが好ましい。
【0025】
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)は、エステル化率が40〜100%であることが好ましく、50〜90%であることがより好ましく、60〜85%であることがさらに好ましい。エステル化率を上記範囲内とすることにより、油脂の固化性がより優れたものとなる。
【0026】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのエステル化率(%)は、下記式により算出し得る。なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルの水酸基価およびエステル価は、JIS K0070に準じて測定することができる。
(エステル化率(%))=(エステル価)×100/[(エステル価)+(水酸基価)]
【0027】
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)は、HLB値が13以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましく、4以下であることが特に好ましい。また、上記HLB値は、0以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましく、2以上であることが特に好ましい。HLB値を上記範囲内とすることにより、油脂の固化性がより優れたものとなる。
【0028】
本実施形態において、ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLB値は、Griffinの式に基づいて以下の方法により算出し得る。なお、ポリグリセリン脂肪酸エステルのけん化価および脂肪酸の酸価は、JIS K0070に準じて測定することができる。
【0029】
<HLB値の算出方法>
HLB=20×(1−SV/AV)
SV:ポリグリセリン脂肪酸エステルのけん化価(mgKOH/g)
AV:脂肪酸の酸価(mgKOH/g)
【0030】
ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量は、油脂固化剤中に30〜100質量%であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、油脂の固化性がより優れたものとなる。上記含有量は、40〜100質量%であることがより好ましく、50〜100質量%であることがさらに好ましい。また、油脂固化剤がショ糖脂肪酸エステル(A)およびポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を含有する場合、ショ糖脂肪酸エステル(A)の含有量は30〜97質量%であることが好ましく、35〜95質量%であることがより好ましく、40〜90質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量は、油脂固化剤中に3〜70質量%であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、油脂の固化性がより優れたものとなる。上記含有量は、10〜60質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0032】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)は、前記ショ糖脂肪酸エステル(A)100質量部に対して3〜150質量部であることが好ましい。上記範囲内とすることにより、油脂の固化性がより優れたものとなる。前記ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)の含有量は、ショ糖脂肪酸エステル(A)100質量部に対して5〜120質量部であることがより好ましく、7〜100質量部であることがさらに好ましく、10〜50質量部であることが特に好ましい。
【0033】
本発明の油脂固化剤の製造方法は特に限定されないが、例えば、粉体を混合する方法、各原料を溶融混合したものを冷却して粉砕する方法、各原料を含有するスラリーを噴霧乾燥する方法などにより得ることができる。
【0034】
本発明の油脂固化剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の成分を含有してもよい。このような成分としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸および脂肪酸以外の有機酸とグリセリンとのエステル化化合物、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチンなどが挙げられる。
【0035】
本発明の食品は、前記油脂固化剤および油脂を含有するものである。
【0036】
本発明に用いる油脂は、特に限定されず、例えば、大豆油、菜種油、菜種白絞油、コーン油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、綿実油、ぶどう種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、かぼちゃ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、オリーブ油、カラシ油、米油、米糠油、小麦麦芽油、サフラワー油、ひまわり油、魚油などが挙げられる。また、これらの油脂のエステル交換反応物、分別処理物なども使用できる。なお、これらの油脂は、単独で使用してもよく、2種以上を組合せてもよい。また、本発明に用いる油脂は、さらに、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオバター、これらの油脂のエステル交換反応物や分別処理物などを含有してもよい。
【0037】
前記油脂は、食品中に10〜90質量%含有することが好ましい。
【0038】
前記油脂固化剤は、食品中に0.5〜15質量%含有することが好ましい。上記範囲内とすることにより、油脂の固化性により優れ、食品の食感がより優れたものとなる。上記含有量は、1〜10質量%であることがより好ましく、1〜7質量%であることがさらに好ましく、1.5〜5質量%であることが特に好ましい。
【0039】
本発明の食品は、さらに、酸化防止剤、着色料、香料、乳製品、水、食塩、砂糖、酸味料、デキストリン、澱粉、加工澱粉、乳、糖類、塩類、蛋白質、pH調整剤、増粘剤などを含有してもよい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
本実施例では、ショ糖脂肪酸エステル(A)として、ショ糖と表1に記載の構成脂肪酸とのエステル化物(a−1)〜(a−6)を用いた。また、ポリグリセリン脂肪酸エステル(B)として、表1に記載の平均重合度を有するポリグリセリンと表2に記載の構成脂肪酸とのエステル化物(b−1)〜(b−5)を用いた。なお、ショ糖脂肪酸エステル(a−1)〜(a−6)のエステル化度、ポリグリセリン脂肪酸エステル(b−1)〜(b−5)のエステル化率およびHLB値は表1および表2に記載のとおりである。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
また、その他の化合物として、下記のものを使用した。
(c−1)ソルビタンモノアラキン酸エステル
(c−2)グリセリンモノベヘニン酸エステル
【0045】
(実施例1〜14、比較例1〜4)
表3に記載した割合で菜種油以外の成分を混合し、油脂固化剤を得た。
80℃に調整した菜種油と上記で得られた油脂固化剤とを表3に記載の割合となるように混合し、80℃で1時間混合した。これを、50mLスクリュー管(φ3cm)に20g投入し、スクリュー管を立てた状態で5℃環境下に2時間静置することにより試験サンプルとした。これを用いて、下記の方法で固化性および食感を評価した。結果を表3に示す。
なお、実施例1および2は参考例である。
【0046】
<固化性>
スクリュー管を20℃環境下に取り出し、立てた状態から横に90度倒して静置して流動性の有無を確認した。その後、試験サンプルの流動性を5分毎に確認し、流動性が見られた最初の時間を測定した。なお、静置直後に流動性が見られたものは「0分」とした。
【0047】
<食感>
下記の基準で試験サンプルの食感を評価した。なお、評価結果は、パネラー10人による評価の平均値とした。
4:非常になめらかである
3:ややなめらかである
2:ややざらつきがある
1:かなりざらつきがある
【0048】
【表3】
【0049】
表3から明らかな通り、本発明の油脂固化剤は、油脂の固化性が優れ、食感が優れることがわかる。特に、ショ糖脂肪酸エステル(A)とポリグリセリン脂肪酸エステル(B)を含有する油脂固化剤は、少量で優れた油脂固化性を有することがわかる。一方、ショ糖脂肪酸エステル(A)を用いない場合は、油脂固化性や食感が劣ることがわかる。