(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
市町村向け防災放送システムの多くに採用されている同報無線システムでは、例えば、
図10に示すように、下記のような情報(以下、「緊急情報」という。)が親局30から子局40-1〜40-nに適宜無線伝送され、子局40-1〜40-nは、このようにして無線伝送された項目を音声信号に変換してスピーカ41-1〜41-nから所望の地域に放送する。
【0003】
(1) 避難指示、災害情報
(2) 地震、津波、高潮、洪水、暴風、豪雨、豪雪等の気象に伴う情報(予測を含む。)
(3) 噴火、土砂災害その他の異常な自然現象にかかわる情報(予測を含む。)
(4) 爆発、放射性物質の大量の放出等のように大規模な事故にかかわる情報(予測を含む。)
【0004】
また、このような同報伝送は、地形や地物の分布等に起因して上記音声信号を聴取できない地域の住民には、個々の住民の住居等に設置された専用の受信機に無線伝送され、その受信機によって上記音声信号が復元されることによって実現される。
なお、本発明に関連する先行技術としては、以下に列記する特許文献1ないし特許文献5があった。
【0005】
(1) 「データの記録再生を行う記録再生手段と、その記録再生手段による再生時のノイズ成分を抑圧又は除去するためのノイズパターンを記憶するノイズメモリと、その記憶されたノイズパターンに基づき、前記記録再生手段の再生信号に含まれるノイズ成分を抑圧又は除去するノイズキャンセル手段とを備える」ことにより、「雑音抑圧後の高域特性の劣化が少なく、明瞭度が改善でき、雑音抑圧の際に生じる雑音を小さくすることができる」点に特徴がある雑音抑圧装置…特許文献1
【0006】
(2) 「送風ダクトの振動を検出し、電気信号に変換する振動検出手段と、前記電気信号を使用して前記振動を相殺する電気信号へ変換する周波数変換制御手段と、前記周波数変換制御手段かた出力された電気信号から送風ダクトの振動を打ち消す振動を発生させる振動
発生手段とを有する」ことにより、「あらゆる周波数帯の振動を抑制することができる」点に特徴があるテレビジョン送信機の消音装置…特許文献2
【0007】
(3) 「光源部とライトバルブを含む光学手段と、前記光学手段に冷却風を送風し、少なくとも前記光源部を冷却する冷却手段とを有する投写型プロジェクタ装置に取り付けられる消音装置であって、消音装置本体を前記投写型プロジェクタの冷却手段の近傍に着脱可能に取り付ける取付手段と、前記取付手段により取り付けられ、前記冷却手段の冷却風を一度、前記消音装置本体に取り込んでこれを流出することで、前記冷却手段の吸気音若しくは排気音を減衰させる消音装置本体とを具備する」ことにより、「投写型プロジェクタ装置の消音装置を着脱可能としたことで、消音が必要なときだけ消音装置を取り付けることにより、投写型プロジェクタ装置の本体の小型化を図ること」点に特徴があるプロジェクタ装置…特許文献3
【0008】
(4) 「熱負荷に基づいて車室内への送風量を自動制御する車両用空調装置において、
前記熱負荷以外の所定条件に基づいて前記送風量を低下させる時、低下後の前記送風量を前記熱負荷に応じて補正する」ことにより、「通話時や音声認識操作時の静寂を確保しつつ、温感低下による乗員の不快感を軽減する」点に特徴がある車両用空調装置…特許文献4
【0009】
(5) 「クーリングユニット,冷却ファン及びエンジンを収容するエンジンルームからの騒音を低減する建設機械の騒音低減システムであって、該冷却ファンの外周において該エンジンルームに配置された冷却風の排出口と、該排出口を覆うようにして、該エンジンルームが内部に形成される機体壁の機外側に設置されたダクトと、該冷却ファンの回転速度を検出するファン回転速度検出手段と、該ファン回転速度検出手段により検出された該ファン回転速度に基づき、該冷却ファンから生じる騒音を推測するファン騒音推定手段と、該ファン騒音推定手段により推定された騒音の相殺音を設定する騒音相殺音設定手段と、該ダクト内に設置され該相殺音を発生する騒音相殺音発生手段とをそなえる」ことにより、「簡素な構成で騒音を低減できる」点に特徴がある建設機械の騒音低減システム…特許文献5
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
〔第一の実施形態〕
図1は、本発明の第一の実施形態の構成を示す図である。
図において、
図10に示すものと同じものについては、同じ符号を付与し、ここでは、その説明を省略する。
【0029】
本実施形態は、
図1に示す通りに、
図10に示す子局40-1〜40-nに代わって子局10-1〜10-nが備えられることによって構成される。
なお、以下では、子局10-1〜10-nの何れにも当てはまることについては、符号「10」に付加される添え文字「1」〜「n」に代えて、これらの何れにも該当し得ることを意味する記号「c」を用いて記述する。
子局10-cは、以下の通りに構成される。
【0030】
親局対応部11-cのアンテナ端子には、親局30との間における無線伝送路の形成に供されるアンテナの給電点が接続される。親局対応部11-cの第一のポートは、信号処理部12-cおよび増幅器13-cを介してスピーカ41-cに接続される。親局対応部11-cの第二のポートは放送インタフェース部14-cの対応するポートに接続され、その放送インタフェース部14-cのアンテナ端子には既述の受信機に対する無線伝送に供されるアンテナの給電点が接続される。子局10-cが設置された地点には、既述のスピーカ41-cに併せて、モータサイレン15-cおよび閃光器16-cが配置される。これらのモータサイレン15-c、、閃光器16-c、ならびに親局対応部11-c、信号処理部12-cおよび増幅器13-cの制御端子には、制御部17-cの対応する入出力ポートが接続される。スピーカ14-cから出力された音声信号の聴取が可能な地域(以下、「覆域」という。)の所定の箇所には、マイク(図示されない。)を含んで構成される風音モニタ18-cが配置される。このような風音モニタ18-cは、伝送路19-cを介して信号処理部12-cの対応するポートに接続される。
【0031】
図2は、本発明の第一および第三の実施形態の動作フローチャートである。
以下、
図1および
図2を参照して、本実施形態の動作を説明する。
子局10-cでは、各部は、以下の通りに連係する。
【0032】
親局対応部11-cは、親局30から到来する無線信号を制御部17-cの配下で受信する。
放送インタフェース部14-cは、このようにして受信された無線信号を制御部17-cの配下で所定の形式の放送波に変換し、既述の受信機が位置する無線ゾーンにその放送波を送信する。
【0033】
信号処理部12-cは、上記無線信号を復調することによって、音声信号(避難指示等の緊急情報に相当する。)を生成する。
増幅器13-cは、この音声信号を増幅し、スピーカ41-cを介して覆域に放射する。
本発明の特徴は、本実施形態では、制御部17-cの配下で各部が以下の通りに連係する点にある。
【0034】
制御部17-cの主記憶には、
図3(a) に示すように、風音モニタ18-cによって計測された風の音(以下、「風音」という。)のレベルWLに応じて増幅器13-cに設定されるべき利得Gが予め格納された利得テーブル17GT-cが配置される。なお、利得テーブル17GT-cに格納された利得Gは、その値がヌルである場合には、増幅器13-cに並行して(あるいは代えて)モータサイレン15-cが駆動されるべきことを意味する。
【0035】
信号処理部12-cは、風音モニタ18-cによって観測され、かつ伝送路19-cを介して引き渡された風音のレベルWLを所定の頻度で計測し、制御部17-cに逐次引き渡す。
制御部17-cは、何らかの緊急情報が音声として覆域に放射され(得)る期間には、以下の処理を行う。
【0036】
(1) このようにして引き渡されたレベルWLを利得テーブル17GT-cに示される4通りのクラスの何れかとして識別する(
図2ステップS1)。
(2) 識別されたレベルWLのクラスに基づいて利得テーブルを参照し、そのクラスに対応した利得Gを取得する(
図2ステップS2)。
【0037】
(3) 取得された利得GがGL、GM、GHの何れかである場合には、増幅器13-cの利得をその利得Gに設定する(
図2ステップS3)。
(4) 取得された利得Gがヌルである場合には、緊急情報が覆域に放射されるべき期間を識別し、その期間に限って、モータサイレンを所定のパターン(緊急情報の形態や内容を意味する。)により断続して駆動する(
図2ステップS4)。
【0038】
すなわち、
図3(b) に示すように、覆域における風音が大きいほど、スピーカ41-cを介して放射される音声のレベルが高く設定され、かつその風音のレベルWLが上限値WL3を超える場合には、該当する緊急情報は、所定のパターン(符号や断続周期により緊急情報の内容を示す。)で断続して駆動されるモータサイレン15-cによって生成されるサイレンとして覆域に通知される。
【0039】
したがって、本実施形態によれば、従来例より、緊急情報の確実かつ円滑な伝達と災害弱者の救済とが強力に図られ、かつ二次災害の発生による被害の拡大の防止だけではなく、防災活動の早期開始や災害復旧および救急医療の促進が図られる。
【0040】
なお、本実施形態では、風音のレベルは、風音モニタ18-cによって観測され風音の電力として求められている。
しかし、このような風音のレベルは、以下の値に基づく推定値や換算値として求められてもよい。
【0041】
(1) 覆域およびその近傍に吹く風の風力と風向との双方または何れか一方に対する該当する覆域(地形や地物の分布を含む。)の音響学的応答
(2) 覆域およびその近傍について気象センサーや遠隔監視系によって行われた計測や観測の結果
【0042】
また、本実施形態では、サイレンのレベル、周波数、音色は1通りでなくてもよく、例えば、これらのレベル、周波数および音色の全てまたは一部が多様な形態に設定され、あるいは更新されてもよい。
【0043】
〔第二の実施形態〕
図4は、本発明の第二の実施形態の動作フローチャートである。
以下、
図1および
図4を参照して、本実施形態の動作を説明する。
【0044】
本実施形態では、制御部17-cの主記憶の所定の領域には、
図5に示すように、以下の通りに構成された音源テーブル17VT-cが(既述の利得テーブル17GT-cに代えて)予め配置される。
【0045】
(1) 音声による緊急情報の報知に供される可聴周波数帯が予め区分されてなる帯域B1〜Bp(p≧2)毎に対応するレコードを有する。
(2) これらのレコードは、以下のフィールドから構成される。
【0046】
(2-1) 対応する帯域Bx(1≦x≦p)の周波数の下限値fLx
(2-2) 対応する帯域Bx(1≦x≦p)の周波数の上限値fHx
(2-3) 上記緊急情報を示し、かつ主要な周波数成分が帯域Bcに分布する音声を時系列の順に与える音声符号列Vx
【0047】
本実施形態の特徴は、既述の第一の実施形態との対比においては、信号処理部12-cおよび制御部17-cが下記の通りに連係する点にある。
信号処理部12-cは、風音モニタ18-cによって観測され、かつ伝送路19-cを介して引き渡される風音の主要な成分が分布する帯域Bvを所定の頻度で監視し、その帯域Bvを制御部17-cに逐次引き渡す。
【0048】
制御部17-cは、何らかの緊急情報が音声として覆域に報知され(得)る期間には、以下の処理を行う。
(1) このような帯域Bvの周波数軸上における下端の周波数FL と上端の周波数FH とを求める(
図4ステップS1)。
【0049】
(2) 音源テーブル17VT-cの各レコードを参照することにより、既述の帯域B1〜Bpの内、これらの周波数FL と上端の周波数FH とで挟まれた帯域Bvとの重なりがなく、あるいは最小である特定の帯域Bout を特定する(
図4ステップS2)。
【0050】
(3) 音源テーブル17VT-cのレコードの内、上記特定の帯域Bout に対応するレコードに含まれる音声符号列Vcを求める(
図4ステップS3)。
(4) 信号処理部12-cに、その音声符号列Vcを引き渡す(
図4ステップS4)。
【0051】
信号処理部12-cは、このようにして引き渡された音声符号列Vcを復号することにより、該当する緊急情報を示す音声信号を生成する。
増幅器13-cは、制御部17-cの配下でその音声信号を増幅し、スピーカ41-cを介して該当する覆域に放射する。
【0052】
すなわち、緊急情報は、周波数軸上で風音の成分がなるべく少なく分布する帯域の音声信号として報知される。
したがって、本実施形態によれば、従来例より、緊急情報の確実かつ円滑な伝達と災害弱者の救済とが強力に図られ、かつ二次災害の発生による被害の拡大の防止だけではなく、防災活動の早期開始や災害復旧および救急医療の促進が図られる。
【0053】
なお、本実施形態では、緊急情報を示す音声信号の主要な成分が分布する帯域の設定や変更は、予め音声符号列として格納された基本の音声信号が適宜周波数変換されることによって行われてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、増幅器13-cの利得は、例えば、制御部17-cの配下で既述の第一の実施形態と同様に設定され、あるいは如何なる形態で設定されてもよい。
【0055】
さらに、本実施形態では、風音の主要な成分が分布する帯域と、このような帯域外に設定されるべき音声信号の帯域とは、如何なる数の帯域に区分されて評価されあるいは設定されてもよい。
【0056】
〔第三の実施形態〕
図6は、本発明の第三の実施形態の動作フローチャートである。
図7は、本発明の第三の実施形態の動作を説明する図である。
以下、
図1、
図2、
図6および
図7を参照して、本実施形態の動作を説明する。
【0057】
本実施形態では、制御部17-cの主記憶には、既述の第一の実施形態と同様に、
図3(a)に示す利得テーブル17GT-cが配置される。
本発明の特徴は、既述の第一の実施形態との対比においては、制御部17-cおよび信号処理部12-cが第一の実施形態と同様に連係しつつ、下記の通りに連係する点にある。
【0058】
制御部17-cは、緊急情報が覆域に音声として放射されることが許容されるべき風音の上限値WLuを適宜決定し、信号処理部12-cに与える(
図2ステップS10)。
信号処理部12-cは、以下の処理を行う。
【0059】
(1) 風音モニタ18-cによって観測され、かつ伝送路19-cを介して引き渡される風音のレベルWLを所定の頻度で計測する(
図6ステップS1)。
(2) そのレベルWLを上記上限値WLuとの大小関係と共に、制御部17-cに逐次引き渡す(
図6ステップS2)。
【0060】
(3) 風音のレベルWLが上限値WLuを下回る期間には、既述の無線信号を復調することによって得られた音声信号(避難指示等の緊急情報に相当する。)を生成して増幅器13-cに引き渡す(
図6ステップS3)。
【0061】
(4) 反対に風音のレベルWLが上限値WLuを上回る期間(
図7(1))には、生成された音声信号の増幅器13-cに対する引き渡しを保留して順次蓄積する(
図6ステップS4)。
(5) 風音のレベルWLが上限値WLuを下回る状態に復旧したとき(
図7(2))には、先行して蓄積されている音声信号(
図7(3))を優先しつつ、後続して生成される音声信号(
図7(4))を増幅器13-cに引き渡す(
図6ステップS5)。
【0062】
一方、制御部17-cは、上記大小関係に基づいて緊急情報が音声として覆域に放射されることの許否を判別し(
図2ステップS11)、かつ該当する緊急情報が覆域に放射されるべき期間には、既述の第一の実施形態と同様の手順(
図2ステップS1〜S4)に基づいて、覆域における風音が大きいほど、スピーカ41-cを介して放射される音声のレベルを高く設定し、その風音のレベルWLが上限値WL3を超える場合には、該当する緊急情報が、所定のパターンでモータサイレン15-cが断続して駆動されることによって生成されるサイレンとして覆域に通知される。
【0063】
すなわち、本実施形態によれば、風音のレベルが過大である期間に音声信号やサイレンが無用に放射されることに起因する緊急情報の円滑な伝達の遅れが回避される。
【0064】
したがって、従来例より、緊急情報の確実かつ円滑な伝達と災害弱者の救済とが強力に図られ、かつ二次災害の発生による被害の拡大の防止だけではなく、防災活動の早期開始や災害復旧および救急医療の促進が図られる。
【0065】
なお、本実施形態では、音声信号として報知され得る緊急情報が複数通りある場合には、上限値WLuがこれらの緊急情報毎に個別に設定されてもよい。
【0066】
〔第四の実施形態〕
図8は、本発明の第四の実施形態の動作フローチャートである。
以下、
図1および
図8を参照して、本実施形態の動作を説明する。
本発明の特徴は、本実施形態では、制御部17-cの配下で各部が以下の通りに連係する点にある。
【0067】
制御部17-cの主記憶には、
図9に示すように、覆域に音声信号として報知されるべき緊急情報の形態に個別に対応したレコードを有し、これらのレコードの何れにも、レベルと周波数帯域との双方もしくは何れか一方が異なる音声として共通の緊急情報を示す音声信号がフィールド単位に区分されて含まれる音声配列テーブル17VAT-cが配置される。
【0068】
制御部17-cは、何らかの緊急情報が音声として覆域に放射されるべき期間には、以下の処理を行う。
【0069】
(1) 音声配列テーブル17VAT-cのレコードの内、覆域に報知されるべき緊急情報に対応する特定のレコードを特定する(
図8ステップS1)。
【0070】
(2) 特定のレコードに含まれる音声信号を順次読み出し、信号処理部12-cに順次与える(
図8ステップS2)。
(3) 必要に応じて、増幅器13-cの利得を好適な値に設定する(
図8ステップS3)。
【0071】
このように覆域には、所望の緊急情報が多様なレベルや周波数の音声情報として順次報知される。
すなわち、覆域における風音のレベルや周波数が広範に変化しても、上記の多様なレベルおよび周波数の音声信号として緊急情報の伝達が図られる。
【0072】
したがって、本実施形態によれば、従来例より、緊急情報の確実かつ円滑な伝達と災害弱者の救済とが強力に図られ、かつ二次災害の発生による被害の拡大の防止だけではなく、防災活動の早期開始や災害復旧および救急医療の促進が図られる。
【0073】
なお、本実施形態では、音声配列テーブル17VAT-cのレコードに登録され、かつレベルや周波数が異なる音声信号の全てが順次所定の頻度で覆域に放射されている。
しかし、このように覆域に放射される音声信号は、音声配列テーブル17VAT-cの所望のレコードに含まれるフィールドの内、下記の構成により特定されるフィールドに含まれる音声信号の列で代替されてもよい。
【0074】
(1) 音声配列テーブル17VAT-cの全てのレコードの各フィールドに、例えば、
図9に点線で示すように、該当する音声信号のレベルLや帯域Bが予め格納される。
(2) これらのフィールドの内、覆域における風音のレベルと周波数成分との双方または何れか一方に基づいて風音に起因するマスキングの程度が軽度と推定されるフィールドに含まれる音声信号が優先的に信号処理部12-cに引き渡される。
【0075】
また、既述の第一ないし第四の実施形態は、どのように組み合わせられてもよい。
さらに、上述した各実施形態では、覆域には、予め収録された情報から復元された音声信号が復元され、スピーカ41-cを介して放射されている。
【0076】
しかし、このような音声信号は、例えば、風音モニタ18-cとスピーカ41-cの近傍とにおける風音の相関性が高い場合には、その風音を相殺するアクティブ消音処理が施された後に、覆域に放射されてもよい。
【0077】
また、既述の受信機を介する緊急情報の視聴が強烈な暴風音等の雑音によって著しく妨げられ(得)る状況には、受信機の内部で行われるディジタル信号処理として上記アクティブ消音処理が施されてもよい。
【0078】
さらに、このようなアクティブ消音を実現する手段は、上記受信機に限定されず、例えば、災害用伝言ダイヤルや災害用伝言板等に対するアクセスに供される通信端末に備えられてもよい。
【0079】
また、上述した各実施形態では、受信機には、聴覚に障害がある方が利用し得る場合には、緊急情報の報知に並行して駆動され、かつ触覚、視覚、臭覚をそれぞれ介する緊急情報の伝達を可能とする以下の全てまたは一部が備えられてもよい。
(1) バイブレータ
(2) 閃光器
(3) 臭い発生器
【0080】
さらに、このような閃光器は、上記受信機を有さず、かつ聴覚に障害がある人に対する緊急情報の円滑な伝達が要求される場合には、スピーカ41-cやモータサイレン15-cと共に子局10-cに備えられ、これらのスピーカ41-cやモータサイレン15-cと並行して駆動されてもよい。
【0081】
また、上述した各実施形態では、風音のレベルは、如何なる数にクラス分けられて評価されてもよい。
さらに、上述した各実施形態では、覆域に音声信号として伝達されるべき緊急情報は、以下の何れであってもよく、これらの如何なる組み合わせであってもよい。
【0082】
(1) 避難指示
(2) 災害情報
(3) 以下に列記する事項の報知情報
【0083】
・ 異常な自然現象(暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火、土砂災害、)
・ 大規模な火事
・ 放射性物質の大量の放出
・ 多数の者の被災や遭難を伴う事故
【0084】
また、上述した各実施形態では、子局10-cは、覆域に対する見通しがよいサイトに限定されず、市町村、集落、海沿い、山沿い、ビル、地下街、駅、スタジアム等だけではなく、例えば、以下の何れに設置されてもよい。
【0085】
(1) 道路、鉄道、橋梁、港湾、ダム、河川、流域、堤防、空港、地下街、スタジアム
(2) 広報車
【0086】
さらに、このような子局10-cは、例えば、電話機や通信端末(携帯電話機、PHSを含む。)に組み込まれてもよい。
また、上述した各実施形態では、子局10-cの配下に形成される覆域の数が「1」となっている。
【0087】
しかし、このような覆域は、信号処理部12-cおよび制御部17-cの連係の下で音響工学的に形成が可能であるならば、複数あってもよく、風音モニタ18-cもこれらの覆域毎に適宜設けられてもよい。
【0088】
さらに、上述した各実施形態では、信号処理部12-cと制御部17-cとの機能や負荷にかかわる分散処理の形態は、如何なるものであってもよい。
また、信号処理部12-cと制御部17-cは併合されてもよく、これらの如何なる部位がPGA(Programmable Gate Array)等のハードウェアとして構成されてもよい。
【0089】
さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0090】
以下、本願に開示された発明の内、「特許請求の範囲」に記載しなかった発明の構成、作用および効果を「特許請求の範囲」、「課題を解決するための手段」、「発明の効果」の各欄の記載に準じた様式で列記する。
【0091】
〔1〕 請求項1
、2のいずれか1項に記載の報知支援装置において、
前記雑音のレベルは、
前記地域もしくは空間に吹く風の風力と風向との双方または何れか一方に対する前記地域もしくは空間の音響学的応答として与えられる
ことを特徴とする報知支援装置。
【0092】
上記地域や空間に報知されるべき緊急情報を示す音の好適なレベルは、これらの地域や空間における風の音のレベルが実測されることなく設定される。
【0093】
したがって、ハードウェアの構成の複雑化を伴うことなく、所望の地域や空間に対する緊急情報の報知が確度高く達成される。
【0094】
〔2〕 請求項1
、2および上記〔1〕の何れか1項に記載の報知支援装置において、
前記雑音のレベルは、
前記地域もしくは空間について、気象センサーと遠隔監視系との双方または何れか一方によって行われた計測と、前記計測の結果に基づく推測との何れかによって与えられる
ことを特徴とする報知支援装置。
【0095】
上記地域や空間に報知されるべき緊急情報を示す音の好適なレベルは、これらの地域や空間における風の音のレベルが実測されることなく設定される。
【0096】
したがって、ハードウェアの構成の複雑化を伴うことなく、所望の地域や空間に対する緊急情報の報知が確度高く達成される。
【0097】
〔3〕 請求項1
、2および上記〔1〕、〔2〕の何れか1項に記載の報知支援装置において、
前記制御手段は、
前記音による前記緊急情報の報知に並行して、もしくは同時に、閃光と臭いとの双方もしくは何れか一方を発する装置を駆動する
ことを特徴とする報知支援装置。
【0098】
すなわち、緊急情報の報知は、聴覚に障害がある方に対しても、聴覚以外の感覚器官を介して確度高く実現される。
【0099】
したがって、緊急情報の報知の対象が拡大され、その緊急情報に対する速やかな対応が可能となる。
【0100】
〔4〕 伝送路を介して通知される緊急情報を可聴域の音として出力する端末装置であって、
前記端末装置に到来し、前記音の聴取を妨げ得る帯域の雑音を観測する雑音監視手段と、
前記雑音を軽減または相殺する消音処理の下で前記音を生成する消音手段と
を備えたことを特徴とする端末装置。
【0101】
すなわち、緊急情報は、本発明に係る端末装置の周囲の騒音が過大であっても、その騒音によるマスキングが大幅に軽減されつつ確度高く音として伝達される。
【0102】
したがって、緊急情報の報知の確度が高められ、その緊急情報に対する速やかな対応が可能となる。