(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態である乗員保護装置としてのエアバッグシステム10を備えた車両11を示す概略図である。
【0010】
図1に示すように、エアバッグシステム10は、車室内の各部に設置される複数のエアバッグモジュールA1〜A14を有している。ドライバシート12の前方には、フロントエアバッグとして、図示しないステアリングホイールに格納されるエアバッグモジュールA1が設けられている。また、ドライバシート12の前方には、ニーエアバッグとして、図示しないインストルメントパネル下部に格納されるエアバッグモジュールA2が設けられている。さらに、ドライバシート12の側方には、サイドエアバッグとして、ドライバシート側部に格納されるエアバッグモジュールA3が設けられている。同様に、パッセンジャシート13の前方には、フロントエアバッグとして、図示しないインストルメントパネル上部に格納されるエアバッグモジュールA4が設けられている。また、パッセンジャシート13の前方には、ニーエアバッグとして、図示しないインストルメントパネル下部に格納されるエアバッグモジュールA5が設けられている。さらに、パッセンジャシート13の側方には、サイドエアバッグとして、パッセンジャシート側部に格納されるエアバッグモジュールA6が設けられている。また、ドライバシート12とパッセンジャシート13との間には、センタエアバッグとして、ドライバシート側部やパッセンジャシート側部に格納されるエアバッグモジュールA7が設けられている。
【0011】
右リヤシート14の前方には、フロントエアバッグとして、ドライバシート背部に格納されるエアバッグモジュールA8が設けられている。また、右リヤシート14の側方には、サイドエアバッグとして、右リヤシート側部に格納されるエアバッグモジュールA9が設けられている。同様に、左リヤシート15の前方には、フロントエアバッグとして、パッセンジャシート背部に格納されるエアバッグモジュールA10が設けられている。また、左リヤシート15の側方には、サイドエアバッグとして、左リヤシート側部に格納されるエアバッグモジュールA11が設けられている。また、右リヤシート14と左リヤシート15との間には、センタエアバッグとして、右リヤシート側部や左リヤシート側部に格納されるエアバッグモジュールA12が設けられている。さらに、車体側部16,17には、カーテンエアバッグとして、ルーフパネルとルーフトリムとの間に格納されるエアバッグモジュールA13,A14が設けられている。
【0012】
図2(a)および(b)は、右側の車体側部16に設けられたエアバッグモジュールA3,A9,A13の展開状態を示す説明図である。
図2(a)には展開前のエアバッグモジュールA3,A9,A13が示されており、
図2(b)には展開後のエアバッグモジュールA3,A9,A13が示されている。
図2(a)に示すように、車体側部16には、ルーフトリム内に格納されるエアバッグモジュールA13が設けられている。また、車体側部16には、ドライバシート側部に格納されるエアバッグモジュールA3が設けられており、右リヤシート側部に格納されるエアバッグモジュールA9が設けられている。
図2(b)に示すように、エアバッグモジュールA13は窓ガラスW1,W3を覆うように展開され、この下方でエアバッグモジュールA3,A9は乗員の側面を覆うように展開される。
【0013】
このように、右側の車体側部16において、エアバッグモジュールA13は、エアバッグモジュールA3,A9よりも上方に配置される。すなわち、エアバッグモジュールA3,A9は第1エアバッグモジュールとして機能し、エアバッグモジュールA13は第2エアバッグモジュールとして機能する。なお、第2エアバッグモジュールとしてのエアバッグモジュールA13は、窓ガラスW1,W3を覆うカーテンエアバッグモジュールである。同様に、右側の車体側部17において、エアバッグモジュールA14は、エアバッグモジュールA6,A11よりも上方に配置される。すなわち、エアバッグモジュールA6,A11は第1エアバッグモジュールとして機能し、エアバッグモジュールA14は第2エアバッグモジュールとして機能する。なお、第2エアバッグモジュールとしてのエアバッグモジュールA14は、窓ガラスW2,W4を覆うカーテンエアバッグモジュールである。
【0014】
図3は車両11を上方から示す図である。
図3に示すように、エアバッグシステム10には、エアバッグ制御に窓ガラスW1〜W4の開閉制御を連動させるため、ウィンドウレギュレータR1〜R4が設けられている。右フロントドアD1には、窓ガラスW1を開閉するウィンドウレギュレータR1が設けられており、左フロントドアD2には、窓ガラスW2を開閉するウィンドウレギュレータR2が設けられている。また、右リヤドアD3には、窓ガラスW3を開閉するウィンドウレギュレータR3が設けられており、左リヤドアD4には、窓ガラスW4を開閉するウィンドウレギュレータR4が設けられている。なお、各ウィンドウレギュレータR1〜R4は、窓ガラスW1〜W4にアームやケーブル等を介して連結される図示しない電動アクチュエータを有している。
【0015】
図4はエアバッグシステム10の制御系を示す概略図である。
図1および
図4に示すように、エアバッグシステム10は、CPUやメモリ等によって構成される制御ユニット20を有している。この制御ユニット20には、車両周囲を撮像するカメラユニット(センサ部)C1〜C4が接続されている。カメラユニットC1〜C4には、CCDやCMOS等のイメージセンサが内蔵されており、カメラユニットC1〜C4によって撮像された画像データは制御ユニット20に出力される。カメラユニットとして、車両前方の画像データ(以下、前方画像データと記載する。)を出力するカメラユニットC1が設けられており、車両後方の画像データ(以下、後方画像データと記載する。)を出力するカメラユニットC2が設けられている。また、カメラユニットとして、車両左方の画像データ(以下、左方画像データと記載する。)を出力するカメラユニットC3が設けられており、車両右方の画像データ(以下、右方画像データと記載する。)を出力するカメラユニットC4が設けられている。後述するように、エアバッグシステム10は、画像データに基づいて車両11の回転挙動を判定し、回転挙動に応じてエアバッグモジュールの展開モードを設定する。そして、エアバッグシステム10は、展開モードに応じて各エアバッグモジュールの展開状態を制御する。
【0016】
制御ユニット20には、衝突時の加速度を車体前部で検出する加速度センサSa1,Sa2、衝突時の加速度を車体側部16,17で検出する加速度センサSa3〜Sa6、衝突時の加速度を車体後部で検出する加速度センサSa7,Sa8が接続されている。また、制御ユニット20には、ドライバシート12における乗員の有無や体格等を検出する着座センサSb1、パッセンジャシート13における乗員の有無や体格等を検出する着座センサSb2、右リヤシート14における乗員の有無や体格等を検出する着座センサSb3、左リヤシート15における乗員の有無や体格等を検出する着座センサSb4が接続されている。さらに、制御ユニット20には、各車輪の回転速度を検出する車輪速センサ21、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサ22等が接続されている。なお、制御ユニット20には、衝突時の加速度を検出する他の加速度センサ23が組み込まれている。
【0017】
続いて、制御ユニット20の機能について詳細に説明する。
図5は制御ユニット20が有する機能の一部を示すブロック図である。
図5に示すように、制御ユニット20は、車両11の回転挙動を判定する車両挙動判定部30を有している。また、制御ユニット20は、車両11の回転挙動に基づきエアバッグモジュールA1〜A14およびウィンドウレギュレータR1〜R4を制御する乗員保護制御部31を有している。車両挙動判定部30は、画像処理部32、特徴点抽出部33、データ記憶部34、特徴点比較部35および挙動判定部36を備えている。また、乗員保護制御部31は、展開モード設定部37、エアバッグ制御部38およびウィンドウ制御部39を備えている。このような構成の制御ユニット20は、後述するように、ロール判定部、エアバッグ制御部、ウィンドウ制御部、特徴点抽出部、移動量演算部および挙動判定部として機能する。
【0018】
カメラユニットC1〜C4は、所定の撮像周期毎に画像データを制御ユニット20の画像処理部32に出力する。画像処理部32は、画像データに対して、ノイズ除去処理、エッジ抽出処理および2値化処理等を実行する。これらの補正処理が施された画像データは画像処理部32から特徴点抽出部33に送信され、特徴点抽出部33において画像データから特徴点が抽出される。例えば、特徴点抽出部33は、画像データから濃度勾配のある点を特徴点として抽出する。このような特徴点が抽出される対象物としては、車両周囲に存在するあらゆる物が対象となる。例えば、停止車両、先行車両、後続車両、併走車両、走行道路の白線、標識、信号機、電柱、ガードレール、縁石等から特徴点を抽出することが可能である。また、抽出される特徴点としては、物に限られることはなく、走行道路の白線等が交わる無限遠点つまり消失点であっても良い。
【0019】
画像データから抽出された特徴点は、特徴点抽出部33からデータ記憶部34に格納され、特徴点抽出部33から特徴点比較部35に送信される。そして、特徴点比較部(移動量演算部)35は、データ記憶部34から送信される前回の特徴点と、特徴点抽出部33から送信される今回の特徴点とを比較し、画像データ上で移動する特徴点の移動量を演算する。つまり、特徴点比較部35においては、撮像時点が異なる複数の画像データに基づき、特徴点の画素の流れに相当するオプティカルフローが検出される。続いて、特徴点比較部35は、挙動判定部36に特徴点の移動量を送信する。そして、挙動判定部36は、車両11の回転挙動がロール軸回りに回転するロールオーバー挙動であるか否かを判定する。なお、ロール軸とは、車両前部と車両後部とのロールセンタを結ぶ軸であり、車両11の前後方向に伸びる軸である。
【0020】
以下、ロールオーバー挙動の判定方法について説明する。まず、
図6および
図7を参照し、車両前後のカメラユニットC1,C2を用いたロールオーバー挙動の判定方法について説明する。その後、
図8および
図9を参照し、車両左右のカメラユニットC3,C4を用いたロールオーバー挙動の判定方法について説明する。
【0021】
[ロールオーバー挙動の判定例1]
図6(a)および(b)はロールオーバー挙動発生時の前方画像データと後方画像データとの変化を示すイメージ図である。
図6(a)にはロールオーバー挙動発生前の状況が示され、
図6(b)にはロールオーバー挙動発生時の状況が示されている。
図6(a)および(b)に示すように、車両11に右回りのロールオーバー挙動が発生した場合には、前方画像データは左側(矢印α方向)に傾動し、後方画像データは左側(矢印β方向)に傾動する。すなわち、前方画像データまたは後方画像データから特徴点を抽出し、この特徴点の移動量の垂直方向成分を演算することにより、車両11のロールオーバー挙動を検出することが可能となる。
【0022】
ここで、
図7はロールオーバー挙動発生時における前方画像データの特徴点の移動状況を示すイメージ図である。
図7には、ロールオーバー挙動発生前の走行道路上の白線が実線で示され、ロールオーバー挙動発生時の走行道路上の白線が一点鎖線で示されている。
図7に示すように、まず、前方画像データの領域を、消失点よりも左側の領域ALと、消失点よりも右側の領域ARとに区画する。次いで、撮像時点が前の前方画像データの領域ALから、特徴点として左特徴点PL1が抽出され、撮像時点が後の前方画像データの領域ALから、共通の特徴点として左特徴点PL2が抽出される。同様に、撮像時点が前の前方画像データの領域ARから、特徴点として右特徴点PR1が抽出され、撮像時点が後の前方画像データの領域ARから、共通の特徴点として右特徴点PR2が抽出される。なお、図示する場合には、標識40が左特徴点PL1として抽出され、白線が右特徴点PR1として抽出されている。
【0023】
このとき、左特徴点の移動量(PL1→PL2)の垂直方向成分が下向きのYaであるのに対し、右特徴点の移動量(PR1→PR2)の垂直方向成分が上向きのYbであった場合について考える。この場合は、左側の領域ALが下がって右側の領域ARが上がる状況であり、前方画像データが左回りに回転する状況であることから、車両11に右回りのロールオーバー挙動が発生していると判定される。一方、図示する状況とは逆に、左特徴点PL1の移動量の垂直方向成分が上向きであり、右特徴点PR1の移動量の垂直方向成分が下向きであった場合には、車両11に左回りのロールオーバー挙動が発生していると判定される。
【0024】
なお、前述の説明では、左特徴点と右特徴点との垂直方向成分の向きが逆転していることから、車両11にロールオーバー挙動が発生すると判定しているが、これに限られることはない。例えば、左特徴点と右特徴点との垂直方向成分の向きが共通であったとしても、垂直方向成分に所定の閾値を上回る差が認められる場合には、車両11にロールオーバー挙動が発生していると判定される。また、左特徴点と右特徴点との垂直方向成分の向きが逆転している場合であっても、垂直方向成分の差が所定の閾値を下回る場合には、ロールオーバー挙動が発生していないと判定される。なお、前述の説明では、前方画像データから抽出した特徴点を用いて、車両11のロールオーバー挙動を検出しているが、これに限られることはなく、後方画像データから抽出した特徴点を用いて、車両11のロールオーバー挙動を判定しても良いことはいうまでもない。
【0025】
[ロールオーバー挙動の判定例2]
図8(a)および(b)はロールオーバー挙動発生時の左方画像データと右方画像データとの変化を示すイメージ図である。
図8(a)にはロールオーバー挙動発生前の状況が示され、
図8(b)にはロールオーバー挙動発生時の状況が示されている。
図8(a)および(b)に示すように、車両11に右回りのロールオーバー挙動が発生した場合には、左方画像データは下方(矢印α方向)に移動し、右方画像データは上方(矢印β方向)に移動する。すなわち、左方画像データおよび右方画像データから特徴点を抽出し、これら特徴点の移動量の垂直方向成分を演算して比較することにより、車両11のロールオーバー挙動を判定することが可能となる。
【0026】
例えば、左方画像データから特徴点として左特徴点PLを抽出し、右方画像データから特徴点として右特徴点PRを抽出する。そして、左特徴点PLと右特徴点PRとの移動量の垂直方向成分を比較し、左特徴点PLが右特徴点PRよりも下方に大きく移動する場合には、車両11に右回りのロールオーバー挙動が発生していると判定される。一方、特徴点PLと右特徴点PRとの移動量の垂直方向成分を比較し、右特徴点PRが左特徴点PLよりも下方に大きく移動する場合には、車両11に左回りのロールオーバー挙動が発生していると判定される。なお、図示する場合には、ガードレール41の反射鏡が特徴点として抽出されている。
【0027】
ここで、
図9(a)および(b)はロールオーバー挙動発生時における左特徴点と右特徴点との移動状況を示すイメージ図である。なお、
図9(a)にはロールオーバー挙動発生前の状況が示され、
図9(b)にはロールオーバー挙動発生時の状況が示されている。
図9(a)および(b)に示すように、撮像時点が前の左方画像データから特徴点として左特徴点PL1が抽出され、撮像時点が後の左方画像データから共通の特徴点として左特徴点PL2が抽出される。同様に、
図9(a)および(b)に示すように、撮像時点が前の右方画像データから特徴点として右特徴点PR1が抽出され、撮像時点が後の右方画像データから共通の特徴点として右特徴点PR2が抽出される。
【0028】
このとき、左方画像データにおいては、左特徴点の移動量(PL1→PL2)の垂直方向成分が下向きのYaであるのに対し、右方画像データにおいては、右特徴点の移動量(PR1→PR2)の垂直方向成分が上向きのYbであった場合について考える。この場合は、左方画像データが下がって右方画像データが上がる状況であることから、車両11に右回りのロールオーバー挙動が発生していると判定される。一方、図示する状況とは逆に、左特徴点PL1の移動量の垂直方向成分が上向きであり、右特徴点PR1の移動量の垂直方向成分が下向きであった場合には、車両11に左回りのロールオーバー挙動が発生していると判定される。
【0029】
なお、前述の説明では、左特徴点と右特徴点との垂直方向成分の向きが逆転していることから、車両11にロールオーバー挙動が発生すると判定しているが、これに限られることはない。例えば、左特徴点と右特徴点との垂直方向成分の向きが共通であったとしても、垂直方向成分に所定の閾値を上回る差が認められる場合には、車両11にロールオーバー挙動が発生していると判定される。また、左特徴点と右特徴点との垂直方向成分の向きが逆転している場合であっても、垂直方向成分の差が所定の閾値を下回る場合には、ロールオーバー挙動が発生していないと判定される。
【0030】
[ロールオーバー挙動の判定フロー例]
続いて、前述したロールオーバー挙動の判定手順をフローチャートに沿って説明する。
図10はロールオーバー挙動の判定手順の一例を示すフローチャートである。
図10のフローチャートには、車両左右のカメラユニットC3,C4を用いた判定手順が示されている。
【0031】
図10に示すように、ステップS11では、カメラユニットC3,C4から制御ユニット20に左方画像データおよび右方画像データが取り込まれ、ステップS12では、制御ユニット20によって左方画像データおよび右方画像データにノイズ除去等の補正処理が施される。続くステップS13では、左方画像データから左特徴点P1が抽出され、ステップS14では、右方画像データから右特徴点P2が抽出される。次いで、ステップS15では、撮像時点の異なる新旧の左特徴点P1が比較され、新旧の左方画像データ間における左特徴点P1の移動量L1が演算される。また、ステップS15では、移動量L1の垂直方向成分Ly1が演算される。同様に、続くステップS16では、撮像時点の異なる新旧の右特徴点P2が比較され、新旧の左方画像データ間における右特徴点P2の移動量L2が演算される。また、ステップS16では、移動量L2の垂直方向成分Ly2が演算される。
【0032】
次いで、ステップS17では、移動量L1と移動量L2との差の絶対値が、所定の閾値α1以上であるか否かが判定される。ステップS17において、移動量L1,L2の差が閾値α1未満であると判定された場合には、ステップS11に戻って新たな左方画像データおよび右方画像データが取り込まれる。一方、ステップS17において、移動量L1,L2の差が閾値α1以上であると判定された場合には、ステップS18に進み、垂直方向成分Ly1と垂直方向成分Ly2との差の絶対値が、所定の閾値α2以上であるか否かが判定される。ステップS18において、垂直方向成分Ly1,Ly2の差が閾値α2以上であると判定された場合には、ステップS19に進み、車両11に所定の閾値を上回るロールオーバー挙動が発生していると判定される。一方、ステップS18において、垂直方向成分Ly1,Ly2の差が閾値α2未満であると判定された場合には、ステップS11に戻って新たな左方画像データおよび右方画像データが取り込まれる。
【0033】
なお、ロールオーバー挙動の回転方向については、垂直方向成分Ly1,Ly2の向きに基づき判定される。また、左特徴点および右特徴点を抽出する画像データとしては、左方画像データおよび右方画像データに限られることはない。例えば、前方画像データから左特徴点と右特徴点とを抽出し、これらの特徴点に基づいてロールオーバー挙動の発生を判定しても良い。また、後方画像データから左特徴点と右特徴点とを抽出し、これらの特徴点に基づいてロールオーバー挙動の発生を判定しても良い。
【0034】
[エアバッグ制御]
続いて、車両11の回転挙動に応じてエアバッグモジュールA1〜A14を展開するエアバッグ制御について説明する。前述したように、エアバッグ制御を実行する制御ユニット20は、挙動判定部36によって判定された回転挙動に応じて、エアバッグモジュールA1〜A14およびウィンドウレギュレータR1〜R4を制御する乗員保護制御部31を有している。
図5に示すように、乗員保護制御部31は、回転挙動に基づいてエアバッグモジュールA1〜A14の展開モードを設定する展開モード設定部37と、展開モードに応じてエアバッグモジュールA1〜A14を展開するエアバッグ制御部38とを備えている。また、乗員保護制御部31は、回転挙動に基づいてウィンドウレギュレータR1〜R4を制御するウィンドウ制御部39を備えている。なお、エアバッグモジュールA1〜A14は、ガスを発生させるインフレータ42と、ガスによって膨張するバッグ43とを有している。衝突発生時には、エアバッグ制御部38からインフレータ42に点火信号が出力され、インフレータ42から放出されるガスによってバッグ43が膨張状態となる。
【0035】
以下、エアバッグ制御の実行手順について説明する。
図11はエアバッグ制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図11に示すように、ステップS21では、車両11に所定の閾値を上回るロールオーバー挙動が発生しているか否かが判定される。このステップS21では、所定のロール角度やロール速度を上回るロールオーバー挙動、つまり車両11に横転の虞があるロールオーバー挙動が発生しているか否かが判定される。ステップS21において、ロールオーバー挙動が発生していると判定された場合には、ステップS22に進み、車体側部16,17のエアバッグモジュールを中心に展開するロールオーバー展開モードが設定される。このロールオーバー展開モードが設定されると、ステップS23に進み、ウィンドウレギュレータR1〜R4が制御され、車体側部16,17の窓ガラスW1〜W4が閉じられる。また、ステップS21において、ロールオーバー挙動が発生していないと判定された場合には、ステップS24に進み、通常展開モードが設定される。この通常展開モードは、衝突時に所定レベル以上の加速度を検出する加速度センサSa1〜Sa8の位置に基づいて、展開対象となるエアバッグモジュールA1〜A14を選択して展開する展開モードである。
【0036】
このように、エアバッグモジュールA1〜A14の展開モードが設定されると、ステップS25に進み、エアバッグモジュールA1〜A14に対する展開指令の有無が判定される。このステップS25においては、例えば、加速度センサSa1〜Sa8の何れかにおいて所定レベル以上の加速度が検出され、かつ制御ユニット20内の加速度センサ23によって所定レベル以上の加速度が検出された場合に、エアバッグモジュールA1〜A14に対する展開指令が有ると判定される。ここで、ロールオーバー挙動が著しく閾値を超えており、車両11の横転が避けられないと判断される場合は、乗員の車外放出を避ける観点から、加速度センサSa1〜Sa8の閾値をより高感度側に変更しても良く、もしくは加速度センサの信号によらず展開指令を出しても良い。ステップS25において、展開指令が有ると判定されると、ステップS26に進み、制御ユニット20から展開対象のエアバッグモジュールA1〜A14に点火信号が出力される。なお、各展開モードにおいて、展開対象となるエアバッグモジュールA1〜A14は、各シート12〜15における乗員の着座状況、所定レベル以上の加速度を検出した加速度センサSa1〜Sa8の位置等によって決定される。
【0037】
図12および
図13は、エアバッグモジュールの展開状況の一例を示す図である。なお、
図12および
図13には、ロールオーバー展開モードが設定され、乗員がドライバシート12に着座した状況が示されている。
【0038】
車両11に所定閾値を超えるロールオーバー挙動が発生する状況とは、例えば、車両11が斜面に沿って横転する虞のある状況や、車両11が縁石等に衝突して横転する虞のある状況である。このような車両11の横転状況から乗員を保護するためには、横転状況に応じてエアバッグモジュールを展開させることが重要である。このため、車両11に所定閾値を上回るロールオーバー挙動が発生した場合には、車体側部16のエアバッグモジュールA3,A13を中心にエアバッグモジュールを展開するロールオーバー展開モードが設定される。
【0039】
ところで、車体側部16のエアバッグモジュールA3,A13を展開する際に、ドアD1の窓ガラスW1が開かれていると、エアバッグモジュールA3,A13が車外に露出することから、エアバッグモジュールA3,A13を適切に機能させることが困難となる。そこで、
図12(a)に示すように、ロールオーバー展開モードの設定時に窓ガラスW1が開いていた場合には、
図12(b)に示すように、横転前からウィンドウレギュレータR1が制御されて窓ガラスW1が閉じられる。これにより、
図13(a)および(b)に示すように、横転時においては、車体側部16の窓ガラスW1を閉じた状態のもとで、車体側部16のエアバッグモジュールA3,A13が展開される。これにより、エアバッグモジュールA3,A13を車外に露出させることなく、エアバッグモジュールA3,A13を適切に機能させることが可能となる。
【0040】
また、車両11が横転する際には、車体の下部から上部にかけて徐々に路面等に接触することが想定される。このため、ロールオーバー展開モードにおいては、
図13(a)に示すように、エアバッグモジュールA13よりも下方のエアバッグモジュールA3を展開させ始めた後に、
図13(b)に示すように、エアバッグモジュールA3よりも上方のエアバッグモジュールA13を展開させ始めている。このように、エアバッグモジュールA3,A13の展開タイミングをずらすことにより、車両11の横転状況に合わせてエアバッグモジュールA3,A13を適切に展開することが可能となる。すなわち、車両11の横転時には、車体下部に衝撃力が入力された後に、車体上部に衝撃力が入力されるため、下側のエアバッグモジュールA3を先に展開させ、上側のエアバッグモジュールA13を後に展開させている。これにより、衝撃力の入力に合わせてエアバッグモジュールA3,A13を展開することができ、車両11の横転から乗員を適切に保護することが可能となる。
【0041】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、車両周囲の画像データから車両11のロールオーバー挙動を判定しているが、これに限られることはない。例えば、ロール軸回りの回転速度を検出する角速度センサであるロールレートセンサを車両に搭載し、ロールレートセンサの出力信号に基づいてロールオーバー挙動を判定しても良い。すなわち、前述の説明では、カメラユニットC1〜C4によってロール判定部を構成しているが、これに限られることはなく、ロールレートセンサによってロール判定部を構成しても良い。
【0042】
なお、前述の説明では、ロール判定部、エアバッグ制御部、ウィンドウ制御部、特徴点抽出部、移動量演算部および挙動判定部を、1つの制御ユニット20に組み込んでいるが、これに限られることはない。例えば、ロール判定部、エアバッグ制御部、ウィンドウ制御部、特徴点抽出部、移動量演算部および挙動判定部を、複数の制御ユニットに分けて組み込んでも良い。