特許第6675863号(P6675863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6675863
(24)【登録日】2020年3月13日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】液圧バルブ、液圧装置及び成形機
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20200330BHJP
   B22D 17/26 20060101ALI20200330BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20200330BHJP
   B29C 45/70 20060101ALI20200330BHJP
   F16K 27/04 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   F16K31/06 305K
   F16K31/06 305A
   B22D17/26 A
   B22D17/32 B
   B29C45/70
   F16K27/04
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-230380(P2015-230380)
(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公開番号】特開2017-96438(P2017-96438A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】豊島 俊昭
【審査官】 角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−028308(JP,U)
【文献】 実開平05−062704(JP,U)
【文献】 実開昭57−026813(JP,U)
【文献】 実開昭62−170464(JP,U)
【文献】 特開2010−120021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00−27/12
31/00−31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液圧用ポートを有するハウジングと、
前記複数の液圧用ポートを接続する弁室と、
前記弁室を移動し、前記複数の液圧用ポートの接続状態を切替える弁体と、
前記弁体を駆動する磁石及びコイルを収容する駆動室と、
を備え、
前記複数の液圧用ポートは、前記弁室と前記ハウジングの外部とを連通し、
前記駆動室は、前記弁室の内面と前記弁体とが互いに摺動する部分によって前記複数の液圧用ポートと隔てられており、
前記ハウジングは、前記駆動室とハウジングの外部とを連通する気体導入口及び排気口を有しており、
前記弁室の内面と前記弁体との摺動によって前記複数の液圧用ポートのいずれかから前記駆動室に侵入した作動液は、前記ハウジングの外部から前記気体導入口を介して前記駆動室に導入された気体により蒸発が促され、蒸発した作動液は前記排口を介して前記ハウジングの外部へ排出されることを特徴とする液圧バルブ。
【請求項2】
前記駆動室の内面に位置し、前記気体導入口に通じる開口と、前記駆動室の内面に位置し、前記排気口に通じる開口とは、前記コイルの軸方向に見て前記コイルの軸に対して互いに反対側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の液圧バルブ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液圧バルブと、
前記複数の液圧用ポートのうち、流入ポートに接続された作動液供給源と、
前記複数の液圧用ポートのうち、タンクポートに接続されたタンクと、
前記気体導入口に接続され、前記気体導入口側へ流れる気体の圧力を調整するレギュレータと、
を有することを特徴とする液圧装置。
【請求項4】
液圧バルブと、
作動液供給源と、
タンクと、
レギュレータと、を有しており、
前記液圧バルブは、
複数の液圧用ポートを有するハウジングと、
前記複数の液圧用ポートを接続する弁室と、
前記弁室を移動し、前記複数の液圧用ポートの接続状態を切替える弁体と、
前記弁体を駆動する磁石及びコイルを収容する駆動室と、を備え、
前記複数の液圧用ポートは、前記弁室と前記ハウジングの外部とを連通し、
前記駆動室は、前記弁室の内面と前記弁体とが互いに摺動する部分によって前記複数の液圧用ポートと隔てられており、
前記ハウジングは、前記駆動室とハウジングの外部とを連通する気体導入口及び排気口を有しており、
前記作動液供給源は、前記複数の液圧用ポートのうち、流入ポートに接続されており、
前記タンクは、前記複数の液圧用ポートのうち、タンクポートに接続されており、
前記レギュレータは、前記気体導入口に接続され、前記気体導入口側へ流れる気体の圧力を調整し、
前記排気口は、前記タンクに接続されていることを特徴とする液圧装置。
【請求項5】
金型を型締めする型締装置と、
型締めされた金型内に成形材料を射出する射出装置と、
請求項3又は4に記載の液圧装置と、
を有することを特徴とする成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧バルブ、液圧装置及び成形機に関する。成形機は、例えば、ダイカストマシンや射出成形機である。
【背景技術】
【0002】
作動液(例えば油)の流れ(例えば流量、圧力及び/又は方向)を制御する液圧バルブとして、コイル及びマグネット(すなわちモータ乃至はソレノイド)によって弁体(例えばスプール)を直接的に駆動するものが知られている(例えば特許文献1及び2)。このような液圧バルブにおいては、スプールが収容されているスプール室と、コイル及びマグネットが収容されているコイル室とをダイヤフラムによって隔離し、スプール室からコイル室への作動液の浸入を禁止したドライ式のものと、スプール室からコイル室への作動液の浸入を許容し、マグネット及びコイルを作動液に浸した状態としたウェット式のもの(例えば特許文献1及び2)とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−28308号公報
【特許文献2】特開平6−300007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ウェット式のものでは、マグネット及びコイルが作動液に浸かっていることに起因して、モータの破損が生じるおそれがある。具体的には、例えば、作動液としての油の温度が上昇すると、油が変質し、マグネット表面のコーティングの剥離を促す。コーティングが剥離すると、マグネットが腐食し、微小な塊がマグネットから分離する。この微小な塊は、マグネットとコイルとの間に噛み込まれ、モータの動作不良を招く。一方、ドライ式のものは、このような不都合が解消される一方で、ダイヤフラムを設ける必要があるなど、構成が複雑である。
【0005】
従って、簡素な構成で、作動液がコイル及び/又はマグネットに接触するおそれを低減できる、液圧バルブ、液圧装置及び成形機が提供されることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る液圧バルブは、複数の液圧用ポートを有するハウジングと、
前記複数の液圧用ポートを接続する弁室と、前記弁室を移動し、前記複数の液圧用ポートの接続状態を切替える弁体と、前記弁体を駆動する磁石及びコイルを収容する駆動室と、を備え、前記複数の液圧用ポートは、前記弁室と前記ハウジングの外部とを連通し、前記駆動室は、前記弁室の内面と前記弁体とが互いに摺動する部分によって前記複数の液圧用ポートと隔てられており、前記ハウジングは、前記駆動室とハウジングの外部とを連通する気体導入口及び排気口を有している。
【0007】
好適には、前記駆動室の内面に位置し、前記気体導入口に通じる開口と、前記駆動室の内面に位置し、前記排気口に通じる開口とは、前記コイルの軸方向に見て前記コイルの軸に対して互いに反対側に位置している。
【0008】
本発明の一態様に係る液圧装置は、上記の液圧バルブと、前記複数の液圧用ポートのうち、流入ポートに接続された作動液供給源と、前記複数の液圧用ポートのうち、タンクポートに接続されたタンクと、前記気体導入口に接続され、前記気体導入口側へ流れる気体の圧力を調整するレギュレータと、を有する。
【0009】
好適には、前記排気口は、前記タンクに接続されている。
【0010】
本発明の一態様に係る成形機は、金型を型締めする型締装置と、型締めされた金型内に成形材料を射出する射出装置と、上記の液圧装置と、を有する。
【0011】
本発明の一態様に係る成形装置は、上記の射出装置を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、射出のためのアキュムレータの圧力を簡便に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る液圧バルブを示す断面図。
図2図1のII−II線矢視方向の断面図。
図3図1の液圧バルブの利用例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<液圧バルブ>
図1は、本発明の実施形態に係る液圧バルブ1を含む液圧装置101の要部構成を示す断面図である。なお、図1は模式図であり、細部については省略されている。
【0015】
液圧バルブ1は、作動液が流入可能及び/又は流出可能な複数の液圧用ポート(P、T1、T2、A及びB)を有し、その複数の液圧用ポート間の接続状態を変更する。具体的には、例えば、液圧バルブ1は、作動液の流れ方向を制御可能な方向制御弁として構成されており、複数の液圧用ポート間の接続関係を切り替える。また、例えば、液圧バルブ1は、作動液(例えば油)の流量(又は圧力)を無段階に調整可能なサーボバルブとしても構成されており、複数の液圧ポート間のバルブ開度を無段階で変更する。
【0016】
液圧バルブ1の基本的な構成は、例えば、特許文献1及び2に開示されているウェット式のバルブに類似した構成とされている。すなわち、液圧バルブ1は、図1の紙面右側の部分が複数の液圧用ポート間の流れを制御する制御部1aとなっており、図1の紙面左側の部分が制御部1aに駆動力を付与する駆動部1b(マグネット(磁石)及びコイルを含む)となっており、制御部1a内から駆動部1b内へ作動液が漏れ得る構造となっている。
【0017】
ただし、液圧バルブ1は、駆動部1b内へ気体(例えば空気(エア))を導入するとともに、導入した気体を排気する。従って、例えば、駆動部1b内においては、導入された比較的乾燥した気体による作動液の蒸発の促進と、作動液が蒸発して湿った気体の排気とが継続的に行われる。その結果、マグネット及びコイルが作動液に浸されるおそれが低減される。
【0018】
このような機能を実現するための、液圧バルブ1の具体的構成は、例えば、以下のとおりである。
【0019】
(基本的な構成(ウェット式のバルブに類似する構成))
液圧バルブ1は、ハウジング3と、ハウジング3内に移動可能に収容されたスプール5と、スプール5を駆動する電磁部7(マグネット(磁石)23及びコイル25)とを有している。ハウジング3は、複数の液圧用ポート(P、T1、T2、A及びB)を有しており、電磁部7によってハウジング3内をスプール5が移動することによって、複数の液圧用ポート間の接続状態が変更される。スプール5及び電磁部7は同軸的に連結されており、図1では両者の中心線と一致する軸線Lを1点鎖線で示している。
【0020】
複数の液圧用ポートは、例えば、液圧バルブ1へ作動液が流れ込む流入ポートPと、液圧バルブ1からタンクへ作動液を排出する第1タンクポートT1及び第2タンクポートT2(以下、両者を区別せずに、単に「タンクポートT」ということがある)と、不図示の液圧機器(例えば液圧シリンダ)と接続されたAポート及びBポート(A、Bを図に付す)と、を含んでいる。
【0021】
ハウジング3は、例えば、外形が図1の紙面左右方向(軸線Lが延びる方向)を長手方向とする概略直方体状とされ、内部が中空とされた部材である。ハウジング3は、適宜な形状の部材が組み合わされて構成されてよい。例えば、ハウジング3は、複数の液圧用ポートが形成されたケース9と、ケース9に収容され、スプール5を収容するスリーブ11と、ケース9の電磁部7側を塞ぐ駆動側キャップ13と、ケース9の電磁部7とは反対側を塞ぐスプール側キャップ15とを有している。
【0022】
ケース9は、例えば、概略、スリーブ11が勘合される空洞(符号省略)と、この空洞よりも径が大きく、電磁部7側の部材を収容するための空洞(符号省略)とが形成された中空状部材である。なお、これらの空洞の横断面(軸線Lに直交する断面)の形状は、例えば、軸線Lを中心とする概略円形である。
【0023】
ケース9の、スリーブ11が勘合される空洞の内周面には、軸回り(軸線L回り)に延び、且つ、軸方向(軸線Lが延びる方向)に配列された複数の溝(符号省略)が形成されている。その溝からは、複数の流路(符号省略)がケース9の外周面に向かって延び、さらには、ケース9の外周面にて開口している。このケース9の外周面に開口する部分により、複数の液圧用ポートが構成されている。なお、図1では、複数の液圧用ポートが1列に配列されているかのように示されているが、実際には、流路は、適宜な経路で延びてよく、複数の液圧用ポートは1列に配列されている必要はない。また、2つのタンクポートTを構成する流路はケース9に形成された不図示の流路によって互いに接続されていてもよい。
【0024】
スリーブ11は、ケース9の空洞に収容されて固定されている。スリーブ11の内部は、スプール5を収容するための弁室11aとなっている。スリーブ11は、弁室11aとケース9の内面の複数の溝とを連通する複数の流路(符号省略)を有している。従って、ケース9に設けられた複数の液圧用ポート(P、T、A及びB)は、弁室11aを介して互いに接続可能になっている。スリーブ11の複数の流路は、例えば、軸方向に配列され、径方向に延びている。なお、スリーブ11は、その電磁部7側に位置し、ケース9に固定されたプレート21によって軸方向の位置決めがなされている。
【0025】
スプール5は、スリーブ11内を摺動する複数の大径部5aと、大径部5a間に位置し、スリーブ11の内径よりも径が小さい複数の小径部5bとを有している。大径部5aによって、スリーブ11の複数の流路同士が遮断され、ひいては、ケース9の複数の液圧用ポート同士が遮断される。また、小径部5bによって、スリーブ11の複数の流路同士が接続され、ひいては、ケース9の複数の液圧用ポート同士が接続される。そして、スプール5が弁室11a内で移動することによって、大径部5a及び小径部5bと、複数の液圧用ポートとの位置関係が変更され、ひいては、複数の液圧用ポートの接続状態が変更される。
【0026】
具体的には、図1に示す中立位置では、Aポート及びBポートはそれぞれ中央側の2つの大径部5aによって塞がれている。また、流入ポートPと2つのタンクポートTとは中央側の2つの大径部5aによって隔てられている。この中立位置から、例えば、スプール5が紙面右側へ移動すると、中央の小径部5bによって流入ポートPとAポートとが接続され、その一つ左側の小径部5bによってBポートと第2タンクポートT2とが接続される。同様に、中立位置から、スプール5が紙面左側へ移動すると、中央の小径部5bによって流入ポートPとBポートとが接続され、その一つ右側の小径部5bによってAポートと第1タンクポートT1とが接続される。このようにして、作動液の方向が制御される。また、スプール5の移動量によって大径部5aによるAポート及びBポートの開度が調整され、ひいては、流量が制御される。
【0027】
駆動側キャップ13は、例えば、その外形を構成する外側円筒部13aと、その内側に同心状に設けられた内側円筒部13bとを有する構成である。外側円筒部13aと、内側円筒部13bとの間は、電磁部7の配置スペースとなっており、この配置スペースのスプール5とは反対側は塞がれている。内側円筒部13bの内側は、スプール5の位置(液圧バルブ1の開度)を検出するためのセンサ27の配置スペースとなっている。なお、駆動側キャップ13には、センサ27の位置を調整するための不図示の調整機構等が設けられていてもよい。
【0028】
駆動側キャップ13は、外側円筒部13aの内側のスペースがケース9の空洞と繋がるようにケース9に気密に連結されている。これにより、ハウジング3内には、電磁部7等が収容される駆動室29が構成される。駆動室29は、スプール5とハウジング3との摺動部によって複数の液圧用ポートと隔てられている。当該摺動部は、より具体的には、スプール5のうち最も紙面左側に位置する大径部5a、及び、当該大径部5aと摺動する、スリーブ11のうち最も左側に位置部分である。
【0029】
換言すれば、駆動室29は、スプール5とハウジング3との摺動面間の微小な隙間によって複数の液圧用ポートと連通されており、複数の液圧用ポートの作動液は、駆動室29へ微小量で漏れ得る。すなわち、液圧バルブ1は、作動液の駆動室29への漏れを防止するダイヤフラム等を有しておらず、いわゆるウェット式のバルブと同様の構成とされている。なお、摺動面間の隙間の大きさは、液圧バルブ1に要求される仕様(液圧バルブ1の用途乃至は液圧バルブ1が利用される技術分野)によって異なるが、一例として、数μm〜数十μmである。
【0030】
スプール側キャップ15は、ケース9のスプール5側の開口を塞いでおり、これにより、例えば、作動液が液圧バルブ1の外部へ漏れることが抑制されている。
【0031】
電磁部7は、例えば、いわゆるボイスコイル型のモータのような構成とされており、円筒状に設けられ、半径方向を磁化方向としたマグネット23と、マグネット23と同心状に巻かれたコイル25とを有している。マグネット23及びコイル25は、いずれが外側又は内側とされてもよいが、本実施形態では、マグネット23が外側とされている。コイル25に電流が流されることにより、マグネット23とコイル25とは軸方向に相対移動し、また、電流の向きが逆向きにされると、その相対移動の方向も逆向きとされる。
【0032】
マグネット23及びコイル25の一方(本実施形態ではマグネット23)は、ハウジング3に固定され、他方(本実施形態ではコイル25)は、スプール5に固定されている。また、電磁部7とスプール5とは同軸的に配置されている。従って、マグネット23及びコイル25の軸方向の相対移動により、スプール5はハウジング3に対して軸方向に相対移動する。なお、駆動側キャップ13は、マグネット23の磁気経路を構成するヨークとしても機能している。
【0033】
具体的には、マグネット23は、駆動側キャップ13の外側円筒部13aの内側面に固定されている。コイル25は、連結部材31によってスプール5に固定されている。連結部材31は、例えば、特に符号を付さないが、スプール5の端部に嵌合する筒状部と、その筒状部から傘状に傾斜して広がる部分と、当該部分に固定され、コイル25が巻かれるボビンとなる円筒状部分(図1では図示省略)とを有している。なお、傘状部分は、適宜に開口が形成されていてよい。
【0034】
センサ27は、例えば、差動変圧器(LVDT)によって構成されており、スプール5に固定されたセンサ用コア33と、センサ用コア33が挿入され、ハウジング3に固定されたセンサ用コイル35とを有している。センサ用コア33は、例えば、スプール5に同軸的に固定されており、センサ用コイル35は、例えば、駆動側キャップ13の内側円筒部13bの内側面に固定されている。
【0035】
スプール5は、例えば、ばねの力によって中立位置に復帰するように構成されている。例えば、スプール5とスプール側キャップ15との間には圧縮された第1コイルばね37が介在しており、連結部材31と駆動側キャップ13との間には圧縮された第2コイルばね39が介在している。なお、スプール側キャップ15には、第1コイルばね37をスプール5側へ押してスプール5の位置を調整する調整機構が設けられていてよい。
【0036】
コイル25に電圧を印加するための不図示の配線は、例えは、ハウジング3(ケース9)の外周面に形成された駆動配線用孔9hへ向かって延び、駆動配線用孔9hを介してハウジング3の外周面に設けられた駆動用コネクタ17と接続される。これにより、コイル25は、ハウジング3の外部と電気的に接続可能となる。なお、駆動配線用孔9hは、駆動用コネクタ17によって塞がれている。なお、駆動用コネクタ17は、ハウジング3の一部と捉えられてもよい。
【0037】
センサ27に信号を入力及び出力するための不図示の配線は、例えば、ハウジング3(駆動側キャップ13)の中心線に沿って形成されたセンサ配線用孔13hを介してハウジング3の端面に設けられたセンサ用コネクタ19と接続される。これにより、センサ27は、ハウジング3の外部と電気的に接続可能となる。なお、センサ配線用孔13hは、センサ用コネクタ19によって塞がれている。なお、センサ用コネクタ19は、ハウジング3の一部と捉えられてもよい。
【0038】
駆動室29と、第1コイルばね37が収容されるばね室41とは、駆動室29からばね室41まで延びる連通流路43によって連通されている。連通流路43は、ハウジング3に形成されており、より具体的には、例えば、プレート21に形成された孔43aと、ケース9をその軸方向に貫通する孔43bと、当該孔43bから分岐してばね室41に延びる孔43cとによって構成されている。
【0039】
(駆動室29の乾燥に係る構成)
ハウジング3(上述のように、ハウジング3は、ケース9、スリーブ11、駆動側キャップ13、スプール側キャップ15及びプレート21を有している。)には、気体を駆動室29に導入するための気体導入口45と、その導入した気体を駆動室29の外(ハウジング3の外)へ排出するための排気口47とが設けられている。外気が駆動室29内へ導入されることによって、駆動室29に浸入した作動液は蒸発が促される。そして、蒸発した作動液は、排気口47から排出される。これにより、電磁部7が作動液に浸されることが抑制される。
【0040】
気体導入口45は、例えば、ケース9の駆動側キャップ13側の端部付近にて、ケース9を径方向に貫通する孔によって構成されている。従って、気体導入口45は、ハウジング3の外周面に開口するとともに、電磁部7とスプール5との間の位置において駆動室29に通じている。また、気体導入口45は、例えば、複数の液圧用ポートが開口する側と同一側に開口している。気体導入口45の開口形状及び寸法等は適宜に設定されてよい。
【0041】
排気口47は、例えば、駆動室29のスプール5側の面(プレート21)から、ハウジング3のスプール側キャップ15側の端面まで貫通する排気流路49が設けられることによって、排気流路49の端部により構成されている。具体的には、例えば、排気流路49は、上述の連通流路43と駆動室29側の一部を共用しており、プレート21に形成された孔43aと、ケース9をその軸方向に貫通する孔43bと、スプール側キャップ15に形成された孔49aとによって構成されている。なお、図1では、排気口47は、ハウジング3のスプール側キャップ15側の端面に開口しているが、ハウジング3の外周面に開口してもよいし、さらに、複数の液圧用ポートが開口する側と同一側に開口してもよい。排気口47の開口形状及び寸法等は適宜に設定されてよい。
【0042】
図2は、図1のII−II線矢視方向の断面図である。なお、プレート21の孔43aの位置を示すために、連結部材31の紙面上方側の一部は破断して図示されている。
【0043】
図1及び図2に示すように、駆動室29をコイル25の軸方向(軸線Lが延びる方向)に見て、駆動室29の内面に位置し、気体導入口45に通じる開口29aと、駆動室29の内面に位置し、排気口47に通じる開口29bとは、コイル25の軸(軸線L。図2ではセンサ用コア33を参照)に対して互いに反対側に位置している。なお、ここでいう反対側は、一方の位置を軸回りの0°の位置としたときに、他方の位置が180°の位置になる場合に限定されず、例えば、他方の位置が90°超270°未満の範囲内にある場合、乃至は、他方の位置が180°±30°の範囲内にある場合を含むものとする。もちろん、好ましくは、他方の位置は180°の位置である。なお、このような位置関係が満たされている否かは、例えば、開口29a及び29bの開口面の中心点を基準に判定してよい。また、コイル25の軸方向に見たときに互いに反対側であるから、図示の例のように、開口29a及び29bの、コイルの軸方向における位置は、互いにずれていてもよい。
【0044】
<液圧装置>
(基本的な構成)
図1に戻って、上記のような液圧バルブ1を含む液圧装置101は、例えば、流入ポートPに接続された作動液供給源103と、タンクポートTに接続されたタンク105と、を有している。Aポート及びBポートには、液圧装置101によって作動液が供給されて駆動される液圧機器(例えば液圧シリンダ。図1では不図示。後述する図3に図示。)が接続される。なお、図1では、便宜上、タンク105を複数個所に図示しているが、実際には、1つのタンクにまとめられていてよい。作動液供給源103は、例えば、液圧ポンプ、アキュムレータ、又は、電動機によって駆動されるシリンダである。タンク105は、例えば、開放タンクである。これらの構成は公知の種々のものと同様とされてよい。
【0045】
また、液圧装置101は、コイル25に電圧を印加するドライバ107を有している。ドライバ107は、不図示の制御装置等から位置指令を受け付け、センサ27からの検出位置がその位置指令に応じた位置になるように、コイル25に印加する電圧をフィードバック制御する。
【0046】
(駆動室29の乾燥に係る構成)
気体導入口45には、例えば、工場設備の気体供給源109からエアが供給される。気体供給源109は、特に図示しないが、例えば、エアコンプレッサー、エアコンプレッサーからのエアを貯留するタンク、タンクの圧力を所定の圧力に保持するための圧力制御弁等を含んで構成されている。なお、気体供給源109を含んで液圧装置101が定義されてもよい。
【0047】
液圧装置101は、気体供給源109と気体導入口45との間に介在する空圧回路111を有していてもよい。空圧回路111は、例えば、気体供給源109からの気体をフィルタリングするフィルタ113と、フィルタ113からの気体の圧力を所定の圧力に調整するためのレギュレータ115とを有している。なお、空圧回路111は、いわゆるFRユニットとしてユニット化されて構成されていてもよい。
【0048】
レギュレータ115は、例えば、圧力計付きの減圧弁である。レギュレータ115によって、気体供給源109からの圧力は比較的低い圧力に調整される。気体導入口45へ供給される気体は、液圧バルブ1内の気体を置換できればよいのであり、空圧機器を駆動するような圧力は不要だからである。例えば、レギュレータ115は、気体供給源109からの気体の圧力を0.02MPa以下(例えば0.01MPa程度)に調整して、気体導入口45へ供給する。
【0049】
排気口47は、例えば、開放式のタンク105の気体室と連通される。例えば、排気口47は、ホース等の適宜な流路部材を介して、タンク105の上面に設けられたポートと接続される。従って、蒸発した作動液を含む気体は、タンク105の気中へ排出される。
【0050】
<液圧バルブの利用例>
図3は、液圧バルブ1の利用例を示す模式図である。具体的には、図3は、液圧バルブ1(液圧装置101)を含むダイカストマシン151を示す側面図(一部に断面図を含む)である。
【0051】
ダイカストマシン151は、金型153内に溶湯(溶融状態の金属材料、成形材料の一例)を射出し、その溶湯を金型153内で凝固させることにより、ダイカスト品(成形品)を製造するものである。金型153は、例えば、固定金型155及び移動金型157を含んでいる。
【0052】
ダイカストマシン151は、例えば、金型153の開閉及び型締めを行う型締装置159と、型締めされた金型153の内部に溶湯を射出する射出装置161と、ダイカスト品を固定金型155又は移動金型157(図3では移動金型157)から押し出す押出装置163とを有している。
【0053】
型締装置159は、例えば、固定金型155を保持する固定プラテン165と、移動金型157を保持し、固定プラテン165に対して型開閉方向に移動する移動プラテン167と、移動プラテン167をトグル機構169を介して駆動する型締シリンダ171とを有している。型締シリンダ171によって移動プラテン167が固定プラテン165に対して型開閉方向に駆動されることによって、金型153は型閉じされ、さらには型締めされ、その内部に溶湯を受け入れ可能な状態となる。
【0054】
射出装置161は、例えば、金型153内に通じる射出スリーブ173と、射出スリーブ173内を摺動可能な射出プランジャ175と、射出プランジャ175を駆動する射出シリンダ179とを有している。金型153が型締めされ、且つ、射出スリーブ173に溶湯が供給された状態で、射出シリンダ179によって射出プランジャ175が金型153側へ駆動されることにより、溶湯が金型153内に射出される。
【0055】
液圧バルブ1(液圧装置101)は、例えば、型締シリンダ171への作動液の供給に利用されている。具体的には、型締シリンダ171は、特に図示しないが、その内部にピストンによって区画された2つのシリンダ室を有しており、当該2つのシリンダ室は、Aポート及びBポートと接続されている。従って、液圧バルブ1において、Aポート及びBポートの一方が流入ポートPと接続され、他方がタンクポートTと接続されることによって、型締シリンダ171は伸長又は収縮され、ひいては、移動プラテン167が駆動される。また、その速度は、液圧バルブ1の開度によって調整される。
【0056】
また、液圧バルブ1(液圧装置101)は、例えば、射出シリンダ179への作動液の供給に利用されている。具体的には、射出シリンダ179は、特に図示しないが、その内部にピストンによって区画された2つのシリンダ室を有しており、当該2つのシリンダ室は、Aポート及びBポートと接続されている。従って、液圧バルブ1において、Aポート及びBポートの一方が流入ポートPと接続され、他方がタンクポートTと接続されることによって、射出シリンダ179は伸長又は収縮され、ひいては、射出プランジャ175が駆動される。また、その速度は、液圧バルブ1の開度によって調整される。
【0057】
このように、液圧バルブ1(液圧装置101)は、流入ポートP及び/又はタンクポートTとの接続状態が切り換えられるAポート及び/又はBポートが、成形機の駆動力を生じる液圧機器(例えば液圧シリンダ)に対して接続される。
【0058】
以上のとおり、本実施形態では、液圧バルブ1は、ハウジング3と、ハウジング3の弁室11a内の移動により、弁室11aを介したハウジング3の複数の液圧用ポート(P、T1、T2、A及びB)同士の接続状態を変更するスプール5と、ハウジング3の駆動室29に収容されており、スプール5を駆動するマグネット23及びコイル25と、を有している。駆動室29は、弁室11aの内面とスプール5とが互いに摺動する部分によって複数の液圧用ポートと隔てられ、その摺動面間は駆動室29へ開放されている(ダイヤフラム等によって隔てられていない。)。ハウジング3は、駆動室29と当該ハウジング3の外部とを連通する、気体導入口45及び排気口47を有している。
【0059】
従って、液圧バルブ1は、スプール5とハウジング3との摺動面間と、駆動室29とを隔てるダイヤフラム等を有しておらず、ウェット式のバルブと同様に構造が簡素である。その一方で、気体導入口45から排気口47へ気体を流れさせ、駆動室29に漏れた作動液を蒸発させて排出することによって、電磁部7が作動液に浸されるおそれを低減することができる。また、液圧バルブ1を有する機器が配備されているような工場は、エアを供給する設備を有していることが多く、そのエア供給設備を利用できることから、そのような設備を含めたコスト低減も期待される。
【0060】
また、本実施形態では、駆動室29の気体導入口45との接続位置(気体導入口45が駆動室29に開口する位置)と、駆動室29の排気口47との接続位置(排気流路49が駆動室29に開口する位置)とは、コイル25の軸に対して互いに反対側である。従って、例えば、コイル25の軸回りの広い範囲に亘って気体の流れを形成することができ、効率的に作動液を蒸発させることができる。
【0061】
また、本実施形態では、排気口47は、タンク105に接続されている。従って、蒸発した作動液を含む気体は、一旦、タンク105に排出されることになり、排出された作動液が液圧バルブ1の周囲の環境に及ぼす影響が低減される。
【0062】
なお、以上の実施形態において、スプール5は弁体の一例であり、ダイカストマシン151は成形機の一例であり、型締シリンダ171及び射出シリンダ179はそれぞれ液圧シリンダの一例である。
【0063】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0064】
液圧バルブが利用される機器は、成形機に限定されない。例えば、工作機械、産業用ロボット、建設機械(重機)、又は、移動手段(飛行機、船舶又は車など)であってもよい。また、成形機は、ダイカストマシンに限定されず、例えば、樹脂を成形材料とする射出成形機であってもよい。
【0065】
液圧バルブは、作動液の方向及び流量の双方を制御可能なものに限定されず、例えば、方向のみ、流量のみ、または、圧力のみを制御可能なものであってもよい。また、液圧バルブは、サーボバルブに限定されず、例えば、開状態と閉状態との2状態のみが実現されるものであってもよい。サーボバルブは、弁体の位置によって流量等を制御するものに限定されず、開状態の時間と閉状態の時間との比によって流量等を制御するものであってもよい。液圧用ポートは、流入側と流出側との2つのみであってもよい。
【0066】
また、液圧バルブは、スプール形のバルブに限定されない。換言すれば、弁体は、スプールに限定されない。例えば、弁体は、ポペットであってもよい。ポペットであっても、ハウジングは、ポペットが軸方向に摺動する部分を有しており、ポートに対してその摺動部とは反対側に電磁部を設けることができる。
【0067】
気体導入口及び排気口の位置及び形状は、適宜に設定されてよい。例えば、排気口は、図1の連通流路43から分岐した流路によって構成されるのではなく、ばね室41から延びる流路によって構成されてもよい。すなわち、駆動室29から排気口までの間にばね室41が位置していてもよい。
【0068】
液圧バルブの複数の部位は、相対的に移動する部分でない限り、適宜に一体的に形成されてよいし、逆に、種々の都合に応じて複数の部材から構成されてよい。
【符号の説明】
【0069】
1…液圧バルブ、3…ハウジング、5…スプール(弁体)、23…マグネット、25…コイル、45…気体導入口、47…排気口。
図1
図2
図3