(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記板状部材は、前記トンネル緩衝工の近傍の居住区域側から、前記開口部を通して前記トンネル緩衝工の中が見えない配置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のトンネル緩衝工用防音装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなトンネル緩衝工1によってトンネル微気圧波による衝撃音を低減するものの、近時の列車の更なる高速化などに起因し、トンネル緩衝工1の開口部2から放出される列車の走行音が騒音となってしまうことがあった。
【0005】
本発明の目的は、トンネル微気圧波の低減効果を損なうことなく、トンネル緩衝工の開口部から放出される列車の走行音を低減することができるトンネル緩衝工用防音装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、
トンネル微気圧波を低減するためのトンネル緩衝工の壁面に形成されている開口部から放出される列車の走行音を低減するトンネル緩衝工用防音装置であって、
前記開口部の縁に沿って設けられている枠体と、
前記開口部の一部を遮るように前記枠体の内面に配設されている板状部材と、
を備え
、
前記枠体は、前記トンネル緩衝工の内側から前記開口部を通じて外側に突き出して設けられているようにした。
【0007】
かかる構成のトンネル緩衝工用防音装置は、開口部の縁に沿う枠体の内面に配設されている板状部材が、開口部の一部を仕切るように遮っているので、トンネル緩衝工の内側から開口部を通じて外側に伝わる空気の振動、つまりは音の一部を遮断することができ、開口部から放出される列車の走行音を低減することができる。
特に、このトンネル緩衝工用防音装置がトンネル緩衝工の開口部に設けられていても、開口部は完全に塞がれておらず、通気性が確保されているので、トンネル微気圧波の低減効果は損なわれていない。
つまり、このトンネル緩衝工用防音装置であれば、トンネル微気圧波の低減効果を損なうことなく、トンネル緩衝工の開口部から放出される走行音などの騒音を低減することができる。
【0008】
また、望ましくは、
前記板状部材の少なくとも一部は、多孔質材料で構成されているようにする。
無数の隙間や連続気泡を有する多孔質材料は、空気の振動を吸収するなどして音の伝達を低減する吸音材として機能するので、板状部材の少なくとも一部が多孔質材料で構成されていれば、開口部を通過する空気の振動を板状部材が吸収するようにして、開口部から放出される列車の走行音を好適に低減することができる。
なお、多孔質材料ではない板状部材には、吸音材(多孔質材料)を貼付するなどして配設すればよい。
【0009】
また、望ましくは、
前記板状部材は、前記トンネル緩衝工の近傍の居住区域側から、前記開口部を通して前記トンネル緩衝工の中が見えない配置に設けられているようにする。
トンネル緩衝工の中が見えないように、目隠しするような配置で板状部材が枠体に固定されているトンネル緩衝工用防音装置であれば、トンネル緩衝工の開口部から放出される列車の走行音が直接居住区域の方向に出ないようになっている。
このようなトンネル緩衝工用防音装置であれば、居住区域のある方向に向かって開口部を通過しようとする空気の振動を板状部材の板面で受けて、その振動を良好に吸収することができるので、トンネル緩衝工の開口部から居住区域の方向に放出される走行音などの騒音を好適に低減することができる。
例えば、トンネル緩衝工用防音装置に複数枚の板状部材が羽板状(ルーバー状)に配設されており、居住区域側からトンネル緩衝工用防音装置を視認した際に、トンネル緩衝工の内側が見えないように、その内側を隠すような向きになっていれば、居住区域側で観測される走行音などの騒音をより良好に低減することができる。
【0010】
また、望ましくは、
前記枠体は、前記開口部の縁に内接して設けられているようにする。
このように、枠体を開口部の縁に内接させる構造にすることで、トンネル緩衝工の内側から開口部を挿通させた枠体を外側に突き出すように開口部に取り付けることができるので、トンネル緩衝工用防音装置をトンネル緩衝工の内側から開口部に設置することが可能になる。
例えば、トンネル緩衝工の外側の土地が狭隘で作業者の立ち入りが困難であったり、トンネル緩衝工が高架上に設けられていたりする場合でも、トンネル緩衝工の内側からの作業で、トンネル緩衝工用防音装置をトンネル緩衝工の開口部に好適に設置することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トンネル微気圧波の低減効果を損なうことなく、トンネル緩衝工の開口部から放出される列車の走行音を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係るトンネル緩衝工用防音装置の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
例えば、
図1に示すように、トンネルTの出入口には、トンネルTの断面積よりも広い内部空間を有するトンネル緩衝工1が設けられている。トンネル緩衝工1はトンネル微気圧波を低減するために設けられている。
このトンネル緩衝工1の壁面には、内部の空間と連通する開口部2が形成されており、この開口部2にトンネル緩衝工用防音装置100が設けられている。
【0015】
本実施形態のトンネル緩衝工用防音装置100(以下、防音装置100という)は、
図2に示すように、開口部2の縁に沿って設けられている枠体10と、枠体10の内面に配設されている板状部材20とを備えている。
【0016】
枠体10は、略矩形状を呈する開口部2の縁に配設された4枚の板材を略角筒状に組み立ててなる部材である。
この枠体10は、例えば、金属製の板材や樹脂製の板材からなり、図示しないL型板金物やネジなどを用いて剛性を有する略角筒形状に組み立てられている。
なお、枠体10は、図示しないL型板金物やアンカーボルト、充填接着剤などによってトンネル緩衝工1に固設されている。
【0017】
本実施形態の防音装置100の枠体10は、開口部2の縁に内接するサイズに形成されている。
枠体10を開口部2の縁に内接させる構造にすることで、トンネル緩衝工1の内側から開口部2を挿通させた枠体10を外側に突き出すようにして開口部2に取り付けることができるので、防音装置100をトンネル緩衝工1の内側から開口部2に設置することが可能になる。
こうすることで、トンネル緩衝工1の外側の土地が狭隘で作業者の立ち入りが困難であったり、トンネル緩衝工1が高架上に設けられていたりする場合でも、トンネル緩衝工1の内側からの作業で、防音装置100をトンネル緩衝工1の開口部2に好適に設置することができる。
なお、枠体10が開口部2の縁に内接するサイズでなくても、トンネル緩衝工1の内側から足場を施工することで、防音装置100をトンネル緩衝工1の外側に設置することは可能である。
【0018】
板状部材20は、開口部2の一部を遮るように枠体10の内面に配設されている。
図2に示した防音装置100では、枠体10の上下に架け渡された板状部材20と、枠体10の左右に架け渡された板状部材20とが枠体10の内面に配設されており、2枚の板状部材20が十字状に組み付けられたものが枠体10に固定されている。
板状部材20は、例えば、図示しないL型板金物やネジなどを用いて枠体10の内面に固定されている。
【0019】
この板状部材20の少なくとも一部は、多孔質材料で構成されている。
無数の隙間や連続気泡を有する多孔質材料は、空気の振動を吸収するなどして音の伝達を低減する吸音材として機能する。
例えば、金属製やセラミック製などの高強度を有する多孔質材料であれば、多孔質材料単体からなる板状部材20を枠体10の内面に配設することができる。
また、モルトプレンなどのウレタンフォーム(発泡ウレタン)のような柔軟性を有する多孔質材料の場合、その多孔質材料を金属板や樹脂板などの芯材に貼付するなどして一体化した板状部材20を枠体10の内面に配設するようにすればよい。
なお、板状部材20の厚み、特に板状部材20を構成する多孔質材料の厚みは任意であり、開口部2で発生する騒音の大きさや音域などに応じ、その騒音を規制値以下に抑えるのに適したサイズにすればよい。
【0020】
このような防音装置100がトンネル緩衝工1の開口部2に設けられていれば、開口部2を通過する空気の振動を板状部材20が吸収することで、開口部2から放出される列車の走行音などの騒音を低減することができる。
特に、この防音装置100がトンネル緩衝工1の開口部2に設けられていても、開口部2は塞がれておらず、通気性が確保されているので、トンネル微気圧波の低減効果は損なわれていない。
つまり、本実施形態の防音装置100であれば、トンネル微気圧波の低減効果を損なうことなく、トンネル緩衝工1の開口部2から放出される列車の走行音を低減することができる。
【0021】
なお、
図2に示した防音装置100では、2枚の板状部材20を十字状に組み付けた場合を例に説明したが、枠体10の上下に架け渡す板状部材20の数や、枠体10の左右に架け渡す板状部材20の数は任意であり、複数の板状部材20を格子状に組み付けたものを枠体10に配設してもよい。
【0022】
また、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、
図3、
図4に示すように、枠体10の左右に架け渡された2枚の板状部材20が枠体10の内面に固定されている防音装置100であってもよい。
図3、
図4に示した防音装置100の板状部材20は、トンネル緩衝工1の近傍の居住区域側から開口部2を通してトンネル緩衝工1の中が見えない配置に設けられている。
トンネル緩衝工1の中が見えないように、目隠しするような配置で板状部材20が枠体10に固定されていれば、トンネル緩衝工1の開口部2から放出される列車の走行音が直接居住区域の方向に放出され難い。
【0023】
図3に示した防音装置100では、トンネル緩衝工1の内側から外側に向けて上がる傾斜面を有する姿勢で板状部材20が枠体10に固定されている。
換言すれば、この防音装置100では、トンネル緩衝工1の内側から外側に向けて下がる仮想線Lに対し、板状部材20の板面を、例えば略垂直に配した姿勢で板状部材20が枠体10に固定されている。
このような向きで板状部材20が枠体10に固定されている防音装置100であれば、開口部2から斜め下向きに通過しようとする空気の振動を板状部材20の板面で受けて、その振動を良好に吸収することができるので、トンネル緩衝工1の開口部2から斜め下向きに放出される列車の走行音を好適に低減することができる。
例えば、トンネル緩衝工1の近傍にある居住区域が、トンネル緩衝工1が設けられている地点より低い方向にある場合、その居住区域と開口部2とを結ぶ仮想線Lに対し、その板面を略垂直に配した姿勢の板状部材20を備えた防音装置100を開口部2に設置することで、居住区域側で観測される走行音などの騒音を好適に低減することができる。
【0024】
図4に示した防音装置100では、トンネル緩衝工1の内側から外側に向けて下がる傾斜面を有する姿勢で板状部材20が枠体10に固定されている。
換言すれば、この防音装置100では、トンネル緩衝工1の内側から外側に向けて上がる仮想線Lに対し、板状部材20の板面を、例えば略垂直に配した姿勢で板状部材20が枠体10に固定されている。
このような向きで板状部材20が枠体10に固定されている防音装置100であれば、開口部2から斜め上向きに通過しようとする空気の振動を板状部材20の板面で受けて、その振動を良好に吸収することができるので、トンネル緩衝工1の開口部2から斜め上向きに放出される列車の走行音を好適に低減することができる。
例えば、トンネル緩衝工1の近傍にある居住区域が、トンネル緩衝工1が設けられている地点より高い方向にある場合、その居住区域と開口部2とを結ぶ仮想線Lに対し、その板面を略垂直に配した姿勢の板状部材20を備えた防音装置100を開口部2に設置することで、居住区域側で観測される走行音などの騒音を好適に低減することができる。
【0025】
特に、
図3、
図4に示した防音装置100のように、複数(ここでは2枚)の板状部材20が羽板状(ルーバー状)に配設されていることで、居住区域側から防音装置100を視認した際に、トンネル緩衝工1の内側が見えないようになっていれば、居住区域側で観測される走行音などの騒音をより良好に低減することができる。
なお、枠体10の左右に架け渡した板状部材20は2枚であることに限らず、1枚であっても、3枚以上であってもよく、開口部2や枠体10のサイズに応じて適切な数の板状部材20を配設すればよい。
【0026】
また、
図3、
図4に示した防音装置100のように、平板状の板状部材20を枠体10の内側に架け渡すことに限らず、例えば、
図5(a)(b)に示すように、折曲した形状の板状部材20を枠体10の内側に架け渡すようにしても、トンネル緩衝工1の開口部2から放出される列車の走行音を好適に低減することができる。
折曲した形状の板状部材20を用いた場合でも、居住区域側から防音装置100を視認した際に、トンネル緩衝工1の内側が見えない配置や角度に板状部材20が配設されていれば、開口部2から放出される列車の走行音をより良好に低減することができる。
【0027】
また、
図6に示すように、枠体10の上下に架け渡された3枚の板状部材20が枠体10の内面に固定されている防音装置100であってもよい。
図6に示した防音装置100では、トンネル緩衝工1の内側から外側に向けて板面を左方に傾けた姿勢をなす羽板状の板状部材20が枠体10に固定されている。
例えば、トンネル緩衝工1の近傍の居住区域と開口部2とを結ぶ仮想線Lに対し、その板面を略垂直に配した姿勢で板状部材20が枠体10に配設されている防音装置100であれば、居住区域側で観測される走行音などの騒音を好適に低減することができる。
【0028】
なお、
図6に示した防音装置100でも、複数(ここでは3枚)の板状部材20が羽板状(ルーバー状)に配設されていることで、居住区域側から防音装置100を視認した際に、トンネル緩衝工1の内側が見えない配置や角度に板状部材20が配設されていれば、居住区域側で観測される走行音などの騒音をより良好に低減することができる。
なお、枠体10の上下に架け渡した板状部材20は3枚であることに限らず、1枚や2枚であっても、4枚以上であってもよく、開口部2や枠体10のサイズに応じて適切な数の板状部材20を配設すればよい。
【0029】
同様に、トンネル緩衝工1の内側から外側に向けて板面を右方に傾けた姿勢をなす羽板状の板状部材20が枠体10に固定されている防音装置100であっても、トンネル緩衝工1の近傍の居住区域側から開口部2を通してトンネル緩衝工1の中が見えないように、板状部材20で目隠しするようにすれば、居住区域側で観測される走行音などの騒音を好適に低減することができる。
【0030】
また、
図7に示すように、防音装置100の板状部材20は、その両端が枠体10の内面に固定されていることに限らず、一方の端部が枠体10に固定され、他端が自由端部になっている板状部材20であってもよい。
図7に示した防音装置100では、両側2枚の板状部材20の下端部が枠体10に固定され、その上端が自由端部になっている。またそれらの間に配されている板状部材20の上端部が枠体10に固定され、その下端が自由端部になっている。
【0031】
なお、以上の実施の形態においては、防音装置100の枠体10は開口部2の縁に内接するサイズに形成されており、防音装置100をトンネル緩衝工1の内側から開口部2に設置することができる構造であるとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、防音装置100の枠体10は開口部2よりも大きなサイズを有しており、開口部2を囲うようにトンネル緩衝工1の外壁面に枠体10を取り付け、トンネル緩衝工1の開口部2に防音装置100を設置するようにしてもよい。
【0032】
なお、将来的に列車の更なる高速化を図るのに、当初の設計でトンネル緩衝工1に形成した開口部2のサイズ(開口率)を小さくすることがトンネル微気圧波の低減のためなどに好ましいことがある。
このような場合、単に開口部2の一部を塞ぐのでなく、本実施形態の防音装置100を開口部2に設置するようにすれば、開口部2の開口率を小さくすることに加え、その開口部2からの列車の走行音などの騒音を抑えることができるので、この防音装置100を有効活用することができる。
【0033】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。