(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6675903
(24)【登録日】2020年3月13日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】放電灯点灯装置
(51)【国際特許分類】
H05B 41/288 20060101AFI20200330BHJP
【FI】
H05B41/288
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-61457(P2016-61457)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-174709(P2017-174709A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090310
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 正俊
(72)【発明者】
【氏名】西川 和弘
(72)【発明者】
【氏名】森本 裕貴
【審査官】
田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−73991(JP,A)
【文献】
特開平8−80058(JP,A)
【文献】
特開平8−203687(JP,A)
【文献】
特開2001−313194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 41/288
H05B 41/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器の1次側にスイッチング手段が設けられ、始動時に前記スイッチング手段のオン、オフに応じて、前記変圧器の2次側に設けられイグナイタによって高電圧を印加されている放電灯に、電流を供給する直流−直流変換手段と、
前記放電灯の放電開始時から、前記直流−直流変換手段から前記放電灯に供給される電流を増加させるように、前記スイッチング手段のオン、オフを制御する制御手段と、
前記変圧器の1次側に設けられた1次側電流検出手段と、
前記1次側電流検出手段の検出値が、前記放電灯に供給される電流の予め定めた値に対応する値以上になったとき、前記制御手段による前記スイッチング手段への制御を停止させる停止手段とを、
有する放電灯点灯装置。
【請求項2】
請求項1記載の放電灯点灯装置において、前記制御手段は、前記スイッチング手段を所定タイミングごとにPWM制御し、前記放電灯に供給される電流の予め定めた値に対応する値になるまで、前記PWM制御をフルデューティーで行う放電灯点灯装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の放電灯点灯装置において、前記変圧器の2次側に前記放電灯へ供給される電流を検出する放電灯電流検出手段が設けられ、前記予め定めた値に対応する値が前記放電灯に供給する目標電流値に対応する値であって、前記制御手段は、前記放電灯電流検出手段の検出値が前記目標電流値以下になったとき、前記放電灯への電流が前記目標電流値を維持するように前記スイッチング手段の制御を再開する放電灯点灯装置。
【請求項4】
請求項1または2記載の放電灯点灯装置において、前記変圧器の2次側に前記放電灯へ供給される電流を検出する放電灯電流検出手段が設けられ、前記予め定めた値に対応する値が前記放電灯に供給する目標電流値に対応する値よりも小さい値であって、前記制御手段は、前記放電灯電流検出手段の検出値が前記放電灯に供給する目標電流値以下になったとき、前記放電灯への電流が前記目標電流値を維持するように前記スイッチング手段の制御を再開する放電灯点灯装置。
【請求項5】
請求項1または2記載の放電灯点灯装置において、前記変圧器の2次側に前記放電灯へ供給される電流を検出する放電灯電流検出手段が設けられ、前記予め定めた値に対応する値が前記放電灯に供給する目標電流値よりも小さく定めた値に対応する値であって前記制御手段は、前記放電灯電流検出手段の検出値が、前記予め定めた値に対応する値以上になって前記スイッチング手段への制御を停止させた後、前記予め定めた値以上の値から前記予め定めた値以下に低下したとき、前記放電灯への電流の供給を再開し、前記放電灯電流検出手段の検出値が前記放電灯に供給する目標電流値以下になったとき、前記放電灯への電流が前記目標電流値を維持するように前記スイッチング手段の制御を再開する放電灯点灯装置。
【請求項6】
請求項1または2記載の放電灯点灯装置において、前記変圧器の2次側に前記放電灯へ供給される電流を検出する放電灯電流検出手段が設けられ、前記予め定めた値に対応する値が前記放電灯に供給する目標電流値よりも小さく定めた値に対応する値であって、前記制御手段は、前記1次側電流検出手段の検出値が、前記予め定めた値に対応する値以上になって前記スイッチング手段への制御を停止させた後、前記予め定めた値に対応する値以下に低下したとき、前記放電灯への電流の供給を再開し、前記放電灯電流検出手段の検出値が前記放電灯に供給する目標電流値以下になったとき、前記放電灯への電流が前記目標電流値を維持するように前記スイッチング手段の制御を再開する放電灯点灯装置。
【請求項7】
請求項4乃至6いずれか記載の放電灯点灯装置において、前記予め定めた値が、放電灯の放電を維持するための放電維持電流値である放電灯点灯装置。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか記載の放電灯点灯装置において、前記直流−直流変換手段は、前記変圧器の2次側にインダクタとコンデンサとを有する放電灯点灯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばキセノンランプや水銀ランプのような放電灯の点灯装置に関し、特に放電開始時に放電灯を流れる電流の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放電灯点灯装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。特許文献1には、イグナイタによって放電灯の絶縁破壊を行った時に、絶縁型のフォワード方式の直流−直流変換器によって、放電灯に出力電流を供給することが、開示されている。この直流−直流変換器では、インバータによって直流電圧を高周波電圧に変換して変圧器の1次側に供給する。変圧器の2次側に誘起された高周波電圧を基に、変圧器の2次側の回路を介して放電灯に出力電流を供給する。この電流の制御は、インバータを制御することによって行われている。そのため、変圧器の2次側には、放電灯の出力電流を検出する電流検出器が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−170628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、出力電流の異常を検出するために電流検出器が使用されているが、例えばイグナイタによって
図5(a)に示すように放電灯の絶縁を破壊した後に、放電灯の点灯維持用の出力電流の供給制御に電流検出器を使用することがある。この場合、点灯開始時から放電灯の出力電流が目標電流値になるまで電流を増加し、目標電流値になると、定電流制御に切り換えられる。この切換は、電流検出器の検出値が目標電流値になったときに制御部によって行われる。
【0005】
この制御部の制御は、DSPやマイクロコンピュータを使用したデジタル制御で行われることがある。このデジタル制御は、DSPやマイクロコンピュータの動作クロックの影響を受けるが、電流検出のサンプリング周波数がスイッチング周波数より低いことがあり、放電灯の出力電流の点灯時の過渡的な変化にデジタル変換された検出値が追従することができず、結果的に
図5(b)に示すように過大な出力電流が流れることがある。過大な出力電流が流れると、放電灯の電極消耗が大きくなり、放電灯の寿命が短くなるので、点灯時に過大な出力電流が放電灯に流れることは望ましくない。
【0006】
本発明は、点灯時に放電灯に過大な出力電流が流れることを抑えた放電灯点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の放電灯点灯装置は、直流−直流変換手段を有している。この直流−直流変換手段は、変圧器を備え、その変圧器の1次側にスイッチング手段が設けられている。この放電灯点灯装置の始動時に前記変圧器の2次側に設けられたイグナイタによって放電灯に高電圧が印加されている。この高電圧が印加されている放電灯に、前記直流−直流変換手段が、前記スイッチング手段のオン、オフに応じて、電流を供給する。放電灯としては、例えばキセノンランプや水銀ランプを使用することができる。スイッチング手段としては、例えばIGBT、FET、バイポーラトランジスタ等を使用することができ、スイッチング手段は、例えば直流電源と変圧器の1次側との間に単独で設けることもできるし、2つ設けることもできる。またスイッチング手段を、ハーフブリッジまたはフルブリッジ回路として構成することもできる。前記放電灯の放電開始時から、前記直流−直流変換手段より前記放電灯に供給される電流を増加させるように、制御手段が前記スイッチング手段のオン、オフを制御する。制御手段としては、例えばDSPやマイクロコンピュータのデジタル制御手段を使用することができ、その場合、制御手段は、デジタル制御を行う。前記変圧器の1次側に1次側電流検出手段が設けられている。前記1次側電流検出手段の検出値が、前記放電灯に供給される電流の予め定めた値に対応する値以上になったとき、前記制御手段による前記スイッチング手段への制御を停止手段が停止させる。この停止手段も、DSPやマイクロコンピュータによって構成することもできるし、或いは演算増幅器等を使用したアナログ回路によって構成することもできる。
【0008】
このように構成された放電灯点灯装置では、放電灯を点灯させるために直流−直流変換手段によって放電灯に電流が供給される。点灯始動時に放電灯に過大な突入電流が供給されるが、その電流値が予め定めた値、例えば放電灯を安定して点灯させ続けたり、放電を維持するために放電灯に供給する必要のある電流を流したときに、変圧器の1次側に流れる電流に相当する値を設定しておき、これに対応した電流が変圧器の1次側に流れたとき、放電灯への電流供給が停止されるので、放電灯に過大な電流が供給されることがない。特に、この停止の制御に、変圧器の1次側に設けた1次側電流検出手段を使用しているので、検出時間に遅延が生じず、過大な電流が放電灯に供給されることをより確実に阻止することができる。
【0009】
前記制御手段は、前記スイッチング手段を所定タイミングごとにPWM制御するものにできる。この場合、制御手段は、前記放電灯に供給される電流の予め定めた値に対応する値になるまで、前記PWM制御をフルデューティーで行う。
【0010】
このようにフルデューティーでPWM制御を行うので、例えば点灯を維持するために必要な電流が供給されるまでの時間を短くすることができる。但し、放電灯に過大な電流が供給される可能性があるが、それを停止手段によって阻止している。
【0011】
前記変圧器の2次側に前記放電灯へ供給される電流を検出する放電灯電流検出手段を設けることができる。この場合、放電灯電流検出手段としては、例えばホール素子を使用した電流検出器を使用することができる。更に、前記予め定めた値に対応する値を前記放電灯に供給する目標電流の指令値である目標電流値に設定する。前記制御手段は、前記放電灯電流検出手段の検出値が前記目標電流値以下になったとき、前記放電灯への電流が前記目標電流値を維持するように前記スイッチング手段の制御を再開する。
【0012】
このように構成すると、停止手段によって放電灯への電流供給を停止した後、目標電流値に相当する電流を放電灯に供給することができ、放電灯の点灯を安定して維持できる。例えば、放電灯電流検出手段の検出値を用いて停止手段を停止させた場合、放電灯電流検出手段の検出値は遅延している可能性が高いので、電流供給を停止させた時点では既に過大な電流が放電灯に流れている可能性がある。しかし、1次側電流検出手段の検出値を使用して停止手段を停止させた場合には、その検出値は遅延の影響を受けにくいので、電流供給を停止させた時点で過大な電流が流れることはない。また、放電電流検出手段にホール素子を使用した電流検出器を用いて、停止手段を制御した場合、放電灯の点灯開始時の過渡状態では、放電灯に流れる電流が電流検出器の検出可能範囲を超えることがあり、正確に電流供給を停止させることができない。しかし、1次側電流検出手段を使用すると、放電灯に過大な電流が流れる前に、放電灯に流れる電流に対応する電流値を正確に検出することができ、確実に目標電流値を放電灯に供給している時点で、供給を停止することができる。
【0013】
或いは、上記と同様に放電灯電流検出手段を設けて、前記予め定めた値に対応する値を前記放電灯に供給する目標電流値よりも小さく定めた値に対応する値に設定することもできる。この値は、例えば停止手段で停止した後も、放電灯に流れるであろう電流値を予測して、速めに電流供給を停止するために設定されている。この場合、電流供給を停止した後も、電流供給は徐々に増加し、放電灯に一旦目標電流を若干超える電流が流れる。前記制御手段は、前記放電灯電流検出手段の検出値が前記放電灯に供給する目標電流値以下になったとき、前記放電灯への電流が前記目標電流値を維持するように前記スイッチング手段の制御を再開する。
【0014】
このように構成すると、上述したのと同様に停止手段によって放電灯への電流供給を停止した後、目標電流値に相当する電流を放電灯に供給することができ、放電灯の点灯を維持できる上に、放電灯への電流供給を停止した後に、放電灯に流れるであろう電流を予測して、電流供給を停止しているので、目標電流を超えた放電灯電流が目標電流に戻るまでの時間を短くすることができる。
【0015】
予め定めた値に対応する値を前記放電灯に供給する目標電流値よりも小さく定めた値に対応する値に設定した場合、放電灯への電流供給を停止したとき、放電灯に流れる電流の検出値が低すぎたり、目標電流値を下回るほど低下し、目標電流値に対応する値よりも小さい値以下になると、放電灯が立ち消えしてしまうため、これを防止するために、電流供給停止後に、放電灯への出力電流が再び目標電流値よりも小さく設定した値以下になると、前記制御手段は、1回以上の間欠的なPWMパルスを供給してスイッチング手段を再度オン、オフし、放電灯の出力電流の検出値が目標電流値に到達するようにすることもできる。放電灯への出力電流が再び目標電流値よりも小さく設定した値以下になったことの検出は、放電灯電流自体を放電灯電流検出手段で検出ことによって行うことができるし、或いは目標電流値よりも小さく設定した値に対応する値以下に変圧器の1次側電流がなったことを1次側電流検出手段で検出することによって行うこともできる。なお、予め定めた値を放電灯の放電を維持するための放電維持電流値とすることもできる。
【0016】
前記直流−直流変換手段は、前記変圧器の2次側にインダクタとコンデンサとを有するものとすることができる。この場合、停止手段が電流供給を停止した後も、インダクタやコンデンサから放電電流が流れ、放電灯に流れる電流が増加する。もし、放電電流検出手段の検出値に基づいて停止手段を動作させた場合、その検出値には遅延があるので、電流供給を停止した後も、かなり大きな値の電流がインダクタやコンデンサから放電灯に流れる。しかし、このような状態でも、1次側電流検出手段によって遅延無く検出した検出値に基づいて停止手段が電流供給を停止させた場合、インダクタやコンデンサから放電灯に流れる電流が少なくなり、過大な電流が放電灯に流れることを防止できる。また、フルデューティーで出力電流を供給している過渡状態では、インダクタ及びコンデンサで構成された共振回路の影響を受けて、出力電流に共振電流が加算されて小ピークが生じることがある。もし、変圧器の2次側で電流検出を行い、その検出値に基づいて定電流制御に切り替えている場合、小ピークを誤って目標電流値に出力電流が到達したと、誤検知する可能性がある。しかし、1次側電流検出手段では、このような誤検知をすることがない。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明による放電灯点灯装置によれば、点灯開始時に過大な出力電流が放電灯に流れることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態の放電灯点灯装置のブロック図である。
【
図2】
図1の放電灯点灯装置の放電灯の出力電流と変圧器の1次側電流とを示す図である。
【
図3】
図1の放電灯点灯装置のDSPが実行する処理を示すフローチャートである。
【
図4】第2の実施形態の放電灯点灯装置の放電灯の出力電流と変圧器の1次側電流とを示す図である。
【
図5】従来の放電灯点灯装置の放電灯の電圧、出力電流及び出力電流の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態の放電灯点灯装置は、
図1に示すように、直流−直流変換手段、例えばフォワード型のDC−DCコンバータ2を有している。このコンバータ2は、例えば降圧用の変圧器4を備えている。その変圧器4の1次側巻線4pの一端には、スイッチング手段、例えばIGBT6aのエミッタが接続され、IGBT6aのコレクタは、直流電源8の一方の電極、例えば正極に接続されている。また1次巻線4pの他端には、スイッチング手段、例えばIGBT6bのコレクタが接続され、IGBT6bのエミッタは、直流電源8の他方の電極、例えば負極に接続されている。なお、IGBT6a、6bのコレクタ間及びエミッタ間には、環流用のダイオード14a、14bが接続されている。直流電源8の正負両極間には平滑用のコンデンサ10が接続されている。直流電源8としては、例えば商用交流電源を整流したものを使用することができる。
【0020】
IGBT6a、6bのゲートには、ドライバ手段、例えばドライバ回路12から、PWM制御信号が供給されている。PWM制御信号がオン指示、例えばHレベルのときIGBT6a、6bがオンとされ、PWM制御信号がオフ指示、例えばLレベルのとき、IGBT6a、6bがオフとされる。このPWM制御信号は、周波数が例えば100kHz(周期10μ秒)のものである。一周期に対するオン指示である期間の割合(%)がデューティー比で、その最大デューティー(フルデューティー)は例えば50%である。
【0021】
変圧器4の2次側巻線4sの一端には、整流用ダイオード16aのアノードが接続され、そのカソードは、イグナイタ18を介して放電灯、例えばキセノンランプ20の一方の電極20aに接続されている。キセノンランプ20の他方の電極20bは、イグナイタ18及びインダクタ22を介して2次側巻線4sの他端に接続されている。2次側巻線4sの他端には転流用ダイオード16bのアノードが接続され、そのカソードは、ダイオード16aのカソードに接続されている。また、イグナイタ18の入力側間には、平滑用コンデンサ24が接続されている。
【0022】
このDC−DCコンバータ2を使用して、キセノンランプ20の点灯は、例えば次のように行われる。まず、始動時にイグナイタ18を起動して、キセノンランプ20の両電極20a、20b間に高電圧を印加して、両電極間20a、20b間の絶縁を破壊する。これと同期してドライバ回路12によってフルデューティーでIGBT6a、6bのオン、オフ制御を繰り返して電流を供給することで、キセノンランプ20を点灯する。
【0023】
IGBT6a、6bがオンのとき、変圧器4の1次巻線4pには直流電源8から直流電圧が印加され、2次巻線4sには降圧された電圧が誘起される。これに基づいて2次巻線4sの一端から、整流用ダイオード16a、イグナイタ18、キセノンランプ20の電極20a、20b、インダクタ22を介して2次巻線4sの一端に電流が流れる。
【0024】
IGBT6a、6bがオフのときには、インダクタ22に蓄積されているエネルギーに基づく電流がインダクタの22の一端から、転流用ダイオード16、イグナイタ18、キセノンランプ20の両電極間20a、20b、イグナイタ18を介してインダクタ22の他端に流れる。また、平滑用コンデンサ24の正極側から、イグナイタ18、キセノンランプ20の両電極間20a、20b、イグナイタ18を介して平滑用コンデンサ24の負極側にも電流が流れる。このようにして、IGBT6a、6bがオフのときにも、電流がキセノンランプ20に流れる。
【0025】
IGBT6a、6bのオン、オフ制御が繰り返されて、キセノンランプ20に出力電流が供給され始めた後、即ちキセノンランプ20が点灯開始した後、キセノンランプ20の点灯を維持するためにキセノンランプ20に流す必要のある電流を流すための指令値を、第2の閾値である目標電流値TH2として、制御部、例えばDSP24に記憶させており、キセノンランプ20に流れる電流が、点灯開始時から目標電流に達するまで、ドライバ回路12がフルデューティーのPWM制御信号を生成するように、DSP24からドライバ回路12に目標電流値TH2が与えられている。キセノンランプ20に流れる電流の検出値が目標電流値に達すると、以後その電流値を維持するように、即ち定電流制御するようにDSP24からドライバ回路12に指示が与えられる。ここで、目標電流値としては、放電が維持できる最低電流値である放電維持電流値でもよく、放電維持電流値よりも大きな値、例えば定格電流値であってもよい。
【0026】
そのため、従来放電灯電流検出手段、例えばホール式電流検出器などの出力電流検出器26が用いられていた。出力電流検出器26は、例えばインダクタ22と変圧器4の2次巻線4sの他端との間に設けられている。この出力電流検出器26は、整流用ダイオード16aとイグナイタ18の間に設けることもできる。この出力電流検出器26の検出値は、キセノンランプ20を流れる出力電流を表しており、DSP24内のA/D変換器27によって所定のサンプリングタイミングごとにデジタル変換されて、DSP24内の制御部28に供給される。制御部28は、この出力電流検出値が、予め定めた目標電流値TH2に一致するように、キセノンランプ20に流れるドライバ回路12を制御していた。
【0027】
ところで、キセノンランプ20への電流供給を増加させている状態から、出力電流が目標電流値TH2に一致したことを検出すると、定電流制御に切り換える必要がある。この切換タイミングを、これまでのように出力電流検出器26の検出値に基づいて行おうとすると、問題が生じる。即ち、
図5(c)は、
図5(b)のキセノンランプに流れる出力電流の拡大図であるが、同図(c)から明らかなように出力電流波形には、定電流制御に切り換えた後も過大電流が流れている。これは、IGBT6a、6bのスイッチング周期が10μ秒であるのに対し、A/D変換器27による出力電流検出器26のサンプリング周期が、例えば30μ秒とかなり長く、キセノンランプ20の出力電流の過渡期の変化に充分に制御部28が追従することができないためである。また、同図(c)に示すようにキセノンランプ20の電流の立ち上がりにおいて、インダクタ22やコンデンサ24の共振があって、小ピークが発生するが、出力電流検出器26の検出値によって、この小ピークをキセノンランプ20の出力電流が目標電流値TH2に到達したと誤判断する可能性もある。このような問題を解消するために、例えばDSP24のサンプリング周期を早めて分解能を向上させることが考えられるが、DSP24が高額になってしまい、装置のコストが大幅に上昇してしまう不都合が生じてしまう。
【0028】
そこで、この実施形態では、変圧器4の1次側巻線4p側に1次側電流検出手段、例えば変流器30を設けてある。この変流器30は、キセノンランプ20に電流を流すことによって生じる1次側電流を
図2(b)に示すように検出している。キセノンランプ20の点灯始動時には、フルデューティーでIGBT6a、6bを駆動しているため、この1次側電流は徐々に増加しており、これに伴い同図(a)に示すようにキセノンランプ20を流れる電流も増加している。
【0029】
変流器30の1次側電流検出値は、DSP24内のデジタル変換手段、例えばA/D変換器32によってA/D変換器27と同じサンプリング周期でサンプリングされて、デジタル変換されて、DSP24内に構成された比較部34に供給される。この比較部34には、DSP24内に構成された閾値電源36が発生する第1の閾値TH1が供給されている。第1の閾値TH1は、キセノンランプ20に流す目標電流値TH2に対応するもので、キセノンランプ20に流れる電流の検出値が目標電流値TH2に一致するときに変圧器4の1次側巻線4sに流れる電流に相当する値である。
図2(a)、(b)との比較から明らかなように、1次側電流検出値が第1の閾値TH1を超えてから幾分遅延して、出力電流検出器26が目標電流値TH2を検出する。その遅延は小さいが、従来のように2次側の出力電流検出器26に基づいてドライバ回路12を制御すると、この遅延時間中は、キセノンランプ20に過大な電流が流れてしまい、キセノンランプ20の電極20a、20bが消耗するなどしてランプ寿命が短くなってしまう。キセノンランプ20は高価なものなので、頻繁にランプを交換する必要があると、使用者の負担になり環境にも悪影響を与えてしまう。そこで、
図2(b)に示すように1次側電流検出値がキセノンランプ20の目標電流に相当する第1の閾値TH1以上になると、比較部34が制御部28に停止信号を供給する。これによって、制御部28は、フルデューティーで駆動していたIGBT6a、6bのスイッチングを停止する。この比較部34及び閾値電源36を備えたDSP24が停止手段の一例である。
【0030】
デューティーIGBT6a、6bのスイッチングが停止されると、キセノンランプ20を流れる電流は、
図2(a)に示すようにインダクタ22やコンデンサ24が放電して、一旦目標電流を少し超えた値まで上昇し、その後徐々に低下していく。即ち、出力電流に大きなピークは発生しない。その後、出力電流検出器26の検出値が目標電流値TH2にまで低下すると、制御部28は、キセノンランプ20に定電流が流れるように、ドライバ回路12によるIGBT6a、6bの駆動制御を再開する。このようにDC−DCコンバータ2を制御することにより、キセノンランプ20に過大な電流が流れることが防止される。また、変圧器4の1次側の電流を検出してドライバ回路12を制御しているので、変圧器4の2次側のインダクタ22とコンデンサ24の共振の影響で、キセノンランプ20に流れる電流に複数のピークが生じても、その影響を受けることがない。
【0031】
図3にDSP24が行う処理をフローチャートで示す。この処理は、例えばイグナイタ18がキセノンランプ20への電圧印加を開始したことによって動作を開始する。まず、A/D変換器36から供給された変流器30の1次側電流検出値が第1の閾値TH1以上であるかDSP24が判断する(ステップS2)。この答えがノーの場合、DSP24内の制御部28はドライバ回路12にフルデューティーでIGBT6a、6bをスイッチングするように指示を与え(ステップS4)、ステップS2を繰り返す。ステップS2の判断の答えがイエスになると、ドライバ回路12にデューティー比0を指示する(ステップS6)。即ち、IGBT6a、6bのスイッチングを停止する。ステップS6に続いて、出力電流検出器26の出力電流検出値が目標電流値TH2以下であるかDSP24が判断する(ステップS8)。この判断の答えがノーの場合、ステップS6、S8を繰り返す。ステップ
8の判断の答えがイエスになると、ステップ10で出力電流検出値と目標電流値TH2との偏差が零になるデューティー比をドライバ回路12に指示し、IGBT6a、6bの駆動を再開する。即ち、IGBT6a、6bの制御を再開し、キセノンランプ電流の定電流制御を行い、このステップ10を停止信号が供給されるまで繰り返される。
【0032】
図4に第2の実施形態におけるキセノンランプ20に流れる電流と変圧器4の1次側電流とを示す。第2の実施形態では、閾値電源36の閾値が第3の閾値TH3に設定されている。第3の閾値TH3は、
図4(a)に示すようにキセノンランプ20の出力電流が、目標電流値TH2よりも幾分低い値に一致するときに変圧器4の1次側に流れる電流に対応する値であり、且つキセノンランプ20が放電を維持できる程度の値である放電維持電流値が選択されている。変流器30で検出した1次側電流検出値が第3の閾値TH3 以上になると、比較部34が停止信号を制御部28に供給し、IGBT6a、6bの駆動を停止する。第1の実施形態と同様に、IGBT6a、6bの駆動を停止しても、インダクタ22とコンデンサ24によりキセノンランプ20を流れる電流に相当する値は目標電流値TH2を若干超えるが、目標電流値TH2に対応する値よりも低い第3の閾値TH3に基づいて、IGBT6a、6bの駆動を停止するため、キセノンランプ20の出力電流のピークが第1の実施形態におけるキセノンランプ20を流れる出力電流のピークよりも低くなる。そして、出力電流が低下し、変圧器4の2次側の出力電流検出器26で検出したキセノンランプ20の出力電流検出値が第2の閾値である目標電流値TH2になると、制御部28が定電流制御を行うよう、ドライバ回路12によるIGBT6a、6bの駆動制御を再開する。このようにすると、キセノンランプ20の出力電流の収束に要する時間が短くなる。なお、制御部28は、
図4(a)に破線で示すように、一度停止信号を発生した後に、キセノンランプ20の出力電流が低下し、出力電流に相当する値が放電維持電流値である第3の閾値TH3に対応する第4の閾値TH4以下に低下したことを、変圧器4の2次側の出力電流検出器26が、検出した場合、或いは1次側電流検出値が再び第3の閾値以下に低下したことを変流器30が検出した場合には、同図(b)に破線で示すように停止信号の発生後であっても、IGBT6a、6bに低いデューティー比のPWMパルス信号或いは、ある目標値に応じた間欠的なPWMパルス信号を供給して、キセノンランプ20の出力電流が再度第4の閾値TH4以上になるようにすることもできる。このようにすると、キセノンランプ20の始動時の立ち消えを防止することができる。
【0033】
上記の実施形態では、放電灯としてキセノンランプを使用したが、他に水銀ランプを使用することもできる。上記の実施形態では、変圧器の1次側にスイッチング手段として2つのIGBT6a、6bを設けた、1つのIGBTだけを設けることもできる。また、スイッチング手段として、IGBT等によって構成したハーフブリッジ回路、フルブリッジ回路を設けることもできる。また、IGBTに替えて、MOSFETやバイポーラトランジスタを使用することもできる。また、停止手段を比較部34と閾値電源36を備えたDSP24によって構成したが、例えば変流器30の出力をそのままオペアンプ等で構成したアナログ比較器に供給して、このアナログ比較器においてアナログの閾値電源からの閾値と比較し、その比較結果をDSP24とドライバ回路12に供給するように構成することもできる。また、放電灯電流検出手段として、変流器を使用することもできる。
【符号の説明】
【0034】
2 DC−DCコンバータ(直流−直流変換手段)
4 変圧器
6a、6b IGBT(スイッチング手段)
24 DSP(制御手段、停止手段)
26 出力電流検出器
30 変流器(1次側電流検出手段)