特許第6675911号(P6675911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6675911
(24)【登録日】2020年3月13日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】カーテンウォール
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/96 20060101AFI20200330BHJP
   E04B 1/70 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   E04B2/96
   E04B1/70 D
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-72973(P2016-72973)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-180039(P2017-180039A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 久史
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−111833(JP,A)
【文献】 特開2010−196293(JP,A)
【文献】 特開昭49−061949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B2/96
E04B2/88
E04B1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外周部に配置されるカーテンウォールであって、
前記建物の室外側に配置される室外側ガラスパネルと、
前記室外側ガラスパネルと所定の間隔を有して、前記建物の室内側に配置される室内側仕切部材と、
前記室外側ガラスパネルと前記室内側仕切部材の間に形成された中間空気層と、
前記室外側ガラスパネルが取り付けられる、縦方向に延びる方立と、
を備え、
前記方立は、内部が中空に形成された方立本体部と、前記方立本体部に形成された、前記中間空気層内の空気を前記方立本体部内に流入させるための貫通孔と、を備え
前記方立の上端部に、前記方立本体部内を上昇する空気を排出するための開口部が形成され、
前記方立の上端部を覆う笠木をさらに備え、
前記笠木は、前記開口部から排出された空気を前記建物の外部に排気するための排気口を備えることを特徴とするカーテンウォール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンウォールに関し、例えばダブルスキン構造のカーテンウォールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インナースキンと称される室内側ガラスパネルと、アウタースキンと称される室外側ガラスパネルと備え、該室内側ガラスパネルと室外側ガラスパネルの間に中間空気層を設けたダブルスキン構造のカーテンウォールが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ダブルスキン構造のカーテンウォールでは、冬期には中間空気層が断熱層として機能するため、室内側の暖房効率を向上することができる。一方、夏期には直達光がガラスを透過してブラインドや室内建材などに受熱するため、ブラインド等からの放射による中間空気層の温度上昇が想定されるが、中間空気層内の空気を換気することで緩和することができ、これらの熱が室内へ流れることを抑制することが可能となることから、室内側の冷房効率を向上することができる。
【0004】
ダブルスキン構造のカーテンウォールでは、通常、中間空気層内の空気を換気するために、中間空気層の上下に室外に連通した換気口が設けられる。中間空気層内で暖められた空気には浮力が生じるため、上下の換気口間で空気を流通させて中間空気層内の熱を室外に排熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−111833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなダブルスキン構造のカーテンウォールでは、中間空気層の排熱性を向上することが課題となる。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、中間空気層の排熱性を高めることのできるダブルスキン構造のカーテンウォールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のカーテンウォールは、建物の外周部に配置されるカーテンウォールであって、建物の室外側に配置される室外側ガラスパネルと、室外側ガラスパネルと所定の間隔を有して、建物の室内側に配置される室内側仕切部材と、室外側ガラスパネルと室内側仕切部材ガラスパネルの間に形成された中間空気層と、室外側ガラスパネルが取り付けられる、縦方向に延びる方立とを備える。方立は、内部が中空に形成された方立本体部と、方立本体部に形成された、中間空気層内の空気を方立本体部内に流入させるための貫通孔とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、中間空気層の排熱性を高めることのできるダブルスキン構造のカーテンウォールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るカーテンウォールが取り付けられた建物の概略縦断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るカーテンウォールにおける、ビジョン部とスパンドレル部の境界付近を示す縦断面図である。
図3図2に示すカーテンウォールのA−A横断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るカーテンウォールの最上部付近を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るカーテンウォールが取り付けられた建物の概略縦断面図である。
【0013】
建物100は、床スラブ102と、床スラブ102の上方に配置された床材104と、床スラブ102の下方に配置された天井材106と、建物100の外周部に配置されたカーテンウォール10とを有する。この建物100においては、床材104と天井材106との間が建物100の居住空間(室内)108であり、下階の天井7と上階の床材104との間が上下階の境界部分110である。
【0014】
カーテンウォール10は、縦方向に延びる複数の方立30と、各方立30の間に横方向に架け渡される複数の無目24と、方立30および無目24に取り付けられる複数のガラスパネルを備える。方立30は建物100の躯体37に固定される。
【0015】
本実施形態に係るカーテンウォール10は、ダブルスキン構造のカーテンウォールである。カーテンウォール10は、ビジョン部12と、スパンドレル部14とを有する。ビジョン部12は、居住空間108と対向するように配置される。スパンドレル部14は、境界部分110と対向するように配置される。ビジョン部12とスパンドレル部14は、上下方向に交互に配置される。
【0016】
カーテンウォール10のビジョン部12は、建物100の室外側に配置された室外側ガラスパネル16と、建物100の室内側に配置された室内側仕切部材としての室内側ガラスパネル18とを備える。室外側ガラスパネル16および室内側ガラスパネル18は方立30および無目24に取り付けられる。室内側ガラスパネル18は、室外側ガラスパネル16と所定の間隔を有して互いに平行に配置される。室外側ガラスパネル16と室内側ガラスパネル18の間には中間空気層20が形成される。この中間空気層20には、ブラインド(図示せず)が配置されてもよい。ブラインドが配置された場合は、該ブラインドが室内側仕切部材となり、室外側ガラスパネル16とブラインドの間が中間空気層20となる。
【0017】
本実施形態において、ビジョン部12の室外側ガラスパネル16は、二段窓となっており、ビジョン部12の天井付近に配置される上方部分12aと、該上方部分12aの下方に配置される下方部分12bとを有する。室外側ガラスパネル16の下方部分12bの下方に位置する無目24には換気口28が設けられる。換気口28は、中間空気層20と室外とを連通している。
【0018】
カーテンウォール10のスパンドレル部14は、建物100の室外側に配置された室外側ガラスパネル32と、建物100の室内側に配置された耐火ボード34とを備える。室外側ガラスパネル32および耐火ボード34は無目24に取り付けられる。耐火ボード34は、室外側ガラスパネル32と所定の間隔を有して互いに平行に配置される。室外側ガラスパネル16と室内側ガラスパネル18の間には中間空気層36が形成される。室外側ガラスパネル32は、太陽光発電モジュールを備える建材一体型太陽電池パネルである。スパンドレル部14の中間空気層36とビジョン部12の中間空気層20との間は、無目24で仕切られている。
【0019】
本実施形態において、ビジョン部12の室外側ガラスパネル16およびスパンドレル部14の室外側ガラスパネル32は、太陽光発電モジュールを備える建材一体型太陽電池パネルである。太陽光発電モジュールは、太陽光SLを電力に変換する。太陽光発電モジュールで生成された電力は、例えば床スラブ102と床材104の間に配置された電池31に蓄えられる。電池31は例えばリチウムイオン電池であってよい。電池31に蓄えられた電力は、例えばタスク照明装置33を点灯するために利用される。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係るカーテンウォール10における、ビジョン部12とスパンドレル部14の境界付近を示す縦断面図である。図3は、図2に示すカーテンウォール10のA−A横断面図である。
【0021】
上述したように、本実施形態の室外側ガラスパネル16および32は、太陽光発電モジュールを備える建材一体型太陽電池パネルである。太陽光発電モジュールは、複数の太陽電池セル40が縦横に配列されたものであり、太陽光SLを電力に変換する。本実施形態では、室外側ガラスパネル16は、一対のガラスの間に複数の太陽電池セル40が設けられた合わせガラス板41と、ガラス板42の間に空間43を設け、該空間43に乾燥空気を封入した複層ガラスとして構成されている。一方、室外側ガラスパネル32は、一対のガラスの間に複数の太陽電池セル40が設けられた合わせガラス板41から成る単層ガラスとして構成されている。
【0022】
図3に示すように、方立30は、内部が中空に形成された柱状の方立本体部30aと、方立本体部30aの前面に設けられたガラスパネル支持部30bとを備える。無目24は、柱状の無目本体部24aと、無目本体部24aガラスパネルを支持するためのガラスパネル支持部24bとを備える。ガラスパネル支持部30bおよび24bにはSGチャンネル25が取り付けられており、構造シーラント26によってSGチャンネル25にガラスパネルが接着される。
【0023】
図2および図3に示すように、本実施形態に係るカーテンウォール10においては、方立本体部30aの側面に貫通孔30cが形成されている。この貫通孔30cは、中間空気層20内の空気を方立本体部30a内に流入させる役割を有する。
【0024】
夏期等の暑い時期においては、室内側ガラスパネル18の下方に設けられたスリット(図示せず)を通って居住空間108から中間空気層20内に流入した空気は、太陽光SLにより暖められた室外側ガラスパネル16やブラインド(図示せず)から放射された熱によって上昇気流が生じるため、誘引された空気は中間空気層20の温度を下げる働きをする。中間空気層20内を上昇した空気は、建物内外の圧力差によって、貫通孔30cから方立本体部30a内に流入し、方立本体部30a内を上昇する。このようにして、室外側ガラスパネル16やブラインドの熱を室外に排熱することができ、これらの熱が居住空間108へ流れることを抑制することが可能となることから、居住空間108の冷房効率を向上することができる。
【0025】
方立本体部30aの貫通孔30cは、ビジョン部12の天井付近に形成されることが好ましい。この場合、暖められた空気を効率的に方立本体部30a内に逃がすことができる。また、方立本体部30aの貫通孔30cは、方立30の構造強度に影響を与えないような位置および大きさに形成される必要がある。貫通孔30cの大きさを大きくすれば放熱効率は高まるが、大きくしすぎると方立30の構造強度に影響を及ぼす可能性がある。従って、貫通孔30cの大きさおよび位置は、熱シミュレーションおよび構造強度シミュレーションなどによって適切に設計することが望ましい。
【0026】
本発明者の構造強度シミュレーション結果によれば、貫通孔30cの中心が、方立30の中立軸Xを中心に方立本体部30aの見込み面の長さHの1/2程度までに位置していれば、十分な強度を保つことができる(図3参照)。この場合、貫通孔30cの大きさdは、方立本体部30aの見込み面の長さHの1/2までとすることができる。また、本発明者の熱シミュレーション結果によれば、貫通孔30cの面積を、方立本体部30aの横断面における空気層の面積と同程度以上とすることにより、排熱効率を向上できる。なお、本実施形態では、方立本体部30aの1つの側面に1つの貫通孔30cを形成しているが、複数の貫通孔を設けることにより、空気層の面積と同程度の貫通孔の面積を確保してもよい。
【0027】
図4は、本発明の実施形態に係るカーテンウォール10の最上部付近を示す縦断面図である。図4に示すように、カーテンウォール10は、方立30および建物100の躯体37の上端部を覆う雨水侵入防止のための笠木45を備える。
【0028】
本実施形態において、方立本体部30aの上端部には、開口部30dが形成されている。図4に示すように、方立本体部30a内を上昇する空気は、この開口部30dを通って笠木45と方立30の上端部との間の空間46に排出される。開口部30d内に、方立本体部30a内の空気を空間46に排出するための換気ファン(図示せず)が設けられてもよい。また、笠木45の側面には、排気口45aが形成されている。方立30の開口部30dから排出された空気は、笠木45と方立30の上端部との間の空間46を通って排気口45aから建物100の外部に排気される。方立本体部30aの開口部30d付近に、開口部30dから排出された空気を排気口45aに導くための換気ファン(図示せず)が設けられてもよい。なお、排気口45aから笠木45内に侵入した雨水は、排気口45aとは別に設けられた排水口45bから排水される。
【0029】
以上説明したように、本実施形態に係るカーテンウォール10では、中空の方立本体部30aに貫通孔30cを設けて、中間空気層20内の空気が方立本体部30a内に流入するようにした。そして、方立本体部30aの上端部に開口部30dを設けて、方立本体部30a内を上昇した空気が排出されるようにし、さらに笠木45に排気口45aを設けて、空気が建物100の外部に排気されるようにした。これにより、中間空気層20内の熱を効率的に排熱することができる。
【0030】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0031】
以上の記載から、下記の発明が認識される。
【0032】
本発明のある態様のカーテンウォールは、建物の外周部に配置されるカーテンウォールであって、建物の室外側に配置される室外側ガラスパネルと、室外側ガラスパネルと所定の間隔を有して、建物の室内側に配置される室内側仕切部材と、室外側ガラスパネルと室内側仕切部材の間に形成された中間空気層と、室外側ガラスパネルが取り付けられる、縦方向に延びる方立とを備える。方立は、内部が中空に形成された方立本体部と、方立本体部に形成された、中間空気層内の空気を方立本体部内に流入させるための貫通孔とを備える。
【0033】
この態様によると、中間空気層内の暖められた空気を貫通口を通して方立て本体部内に逃がすことができるため、中間空気層の排熱性を高めることができる。
【0034】
方立の上端部に、方立本体部内を上昇する空気を排出するための開口部が形成されてもよい。方立の上端部を覆う笠木をさらに備えてもよい。笠木は、開口部から排出された空気を建物の外部に排気するための排気口を備えてもよい。これらの場合、方立本体部内を流れた空気を好適に建物の外部に排出できる。
【符号の説明】
【0035】
7 天井、 10 カーテンウォール、 12 ビジョン部、 14 スパンドレル部、 16、32 室外側ガラスパネル、 18 室内側ガラスパネル、 20、36 中間空気層、 24 無目、 25 SGチャンネル、 26 構造シーラント、 28 換気口、 30 方立、 30a 方立本体部、 30b ガラスパネル支持部、 30c 貫通孔、 30d 開口部、 31 電池、 33 タスク照明装置、 34 耐火ボード、 37 躯体、 40 太陽電池セル、 45 笠木、 45a 排気口、 100 建物、 102 床スラブ、 104 床材、 106 天井材、 108 居住空間。
図1
図2
図3
図4