(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バックミラーを装備するには、一般に、車体部分から車体横外側へ向かって延出する支持アームを設け、支持アームの延出端部にバックミラーを支持するが、車体振動によってバックミラーが振動することがあると、バックミラーの映像が見にくくなる。
【0005】
本発明は、車体振動にかかわらずバックミラーの映像を見やすいトラクターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるトラクターは、
車体部分に形成した支持部と、
前記支持部から車体横外側へ向かって延出した支持アームと、
前記支持アームの延出端部に支持させたバックミラーと、を備え、
前記支持部に、前記車体部分から前記支持アームへの振動伝達を抑制する防振材を備え
、
前記支持アームは、前記エンジンボンネットに形成された貫通孔を通って前記エンジンボンネットの外部に延びている。
また、本発明によるトラクターは、
車体部分に形成した支持部と、
前記支持部から車体横外側へ向かって延出した支持アームと、
前記支持アームの延出端部に支持させたバックミラーと、を備え、
前記支持部に、前記車体部分から前記支持アームへの振動伝達を抑制する防振材を備え、
前記支持部は、エンジンボンネットの内部に位置し、
前記支持アームは、前記エンジンボンネットに形成された貫通孔を通って前記エンジンボンネットの外部に延び、
前記エンジンボンネットは前記防振材の少なくとも上方を覆っている。
【0007】
本構成によると、車体振動が支持アームに伝わることが防振材によって抑制されてバックミラーが振動し難くなる。
【0008】
従って、車体振動にかかわらず、バックミラーの映像が振動し難くて見やすい。
また、構成によれば、支持部に雨水や洗浄水が入ったり、日光が当たったりすることをエンジンボンネットによって防止でき、防振材を劣化し難くできる。
【0009】
【0010】
【0011】
本発明においては、前記エンジンボンネットは、エンジンの横側方を覆う横ボンネット部と、前記エンジンの上方を覆う上ボンネット部とを備え、前記貫通孔は、前記横ボンネット部に形成されていると好適である。
【0012】
本構成によれば、貫通孔が横ボンネット部に位置するので、支持部に雨水や洗浄水をより入り難くでき、防振材をより劣化し難くできる。
【0013】
本発明においては、前記エンジンボンネットは、固定ボンネット部と、開閉ボンネット部とを備え、前記貫通孔は、前記固定ボンネット部に形成されていると好適である。
【0014】
貫通孔を開閉ボンネット部に形成する場合、開閉ボンネット部を開閉する際に開閉ボンネット部と支持アームとが干渉しないようにするために、貫通孔を大きくしがちであるが、本構成によると、貫通孔を固定ボンネット部に形成してあるので、貫通孔を小さく済ませることができる。
【0015】
本発明においては、前記固定ボンネット部は、樹脂製であり、前記開閉ボンネット部は、金属製であると好適である。
【0016】
本構成によれば、貫通孔を樹脂製のボンネット部に形成するので、金属製のボンネット部に形成するのに比べて、形成し易い。
【0017】
本発明においては、前記車体部分は、車体フレームに固定された支柱部材であると好適である。
【0018】
本構成によれば、車体部分である支柱部材を車体フレームにしっかり支持させることができる。
【0019】
本発明においては、前記車体部分は、車体フレームにクッション材を介して支持された支柱部材であると好適である。
【0020】
本構成によれば、車体フレームの振動が車体部分である支柱部材に伝わることがクッション材によって抑制されるので、バックミラーをより振動し難くできる。
【0021】
また、本発明によるトラクターは、
車体部分に形成した支持部と、
前記支持部から車体横外側へ向かって延出した支持アームと、
前記支持アームの延出端部に支持させたバックミラーと、を備え、
前記支持部に、前記車体部分から前記支持アームへの振動伝達を抑制する防振材を備え、
前記支持部は、前記車体部分に固定され、前記支持アームの基部を挟む一対の支持部材を備え、
前記防振材として、第一防振材と、前記第一防振材とは別体の第二防振材とを備え、
一対の前記支持部材のうちの一方の支持部材と前記基部との間に前記第一防振材が備えられ、一対の前記支持部材のうちの他方の支持部材と前記基部との間に前記第二防振材が備えられている。
【0022】
本構成によれば、車体振動が支持アームへ伝わることを基部の両側の防振材によって効果的に抑制できるので、バックミラーをより振動し難くできる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明に係るトラクターの実施の形態を説明する。
図1は、トラクターの全体を示す右側面図である。
図1に示す[F]の方向が車体の前側、[B]の方向が車体の後側、紙面表側の方向が車体の右側、紙面裏側の方向が車体の左側と定義する。
【0025】
トラクターは、左右の前車輪2が駆動可能に、かつ操向操作可能に装備され、左右の後車輪3が駆動可能に装備された車体を備えている。車体フレーム1は、エンジン4、エンジン4の後部に前端部が連結されたミッションケース5、及び、エンジン4の下部から車体前方向きに延出された前部フレーム6によって構成されている。前部フレーム6に前車輪2が支持されている。ミッションケース5の後部に後車輪3が支持されている。車体の前部に、エンジン4及びエンジンボンネット7を備えた原動部8を形成してある。車体の後部側に、運転部9を形成してある。運転部9には、運転座席10、前車輪2を操向操作するステアリングホィール11を備えてある。車体の右横側方にバックミラー12を配備してある。車体の後部に、リンク機構13及び動力取出し軸14を装備してある。リンク機構13は、車体フレーム1の後端部から後方向きに上下揺動可能に延出された左右のロワーリンク13aと、車体フレーム1の後端部に上下揺動操作可能に支持され、リフトロッド13bを介してロワーリンク13aを昇降操作する左右のリフトアーム13cとを備えている。
【0026】
トラクターは、リンク機構13によってロータリ耕耘装置(図示せず)が昇降操作可能に連結され、エンジン4からの駆動力を動力取出し軸14からロータリ耕耘装置に伝達するよう構成されることにより、乗用型耕耘機を構成する。トラクターは、また、車体後部に各種の作業装置が連結されることにより、各種の乗用型作業機を構成する。
【0027】
エンジンボンネット7について説明する。
エンジンボンネット7には、エンジンボンネット7の前部を構成する開閉ボンネット部7aと、エンジンボンネット7の後部を構成する固定ボンネット部7bとを備えてある。
開閉ボンネット部7aは、前端側の下部を車体フレーム1に支持してある支持部20が有する車体横向きの枢支軸芯21を揺動支点にして、上昇揺動させることによって、開き姿勢になってエンジンルームを開放し、下降揺動させることによって、閉じ姿勢になってエンジンルームを閉じる。
【0028】
開閉ボンネット部7aは、左右の横ボンネット部分16f、上ボンネット部分17f及び前ボンネット部分18を備えている。前ボンネット部分18に前照灯19を支持してある。左右の横ボンネット部分16f及び上ボンネット部分17fは、金属板によって構成してある。開閉ボンネット部7aは、金属製となっている。
【0029】
固定ボンネット部7bは、左右の横ボンネット部分16r及び上ボンネット部分17rを備えている。固定ボンネット部7bは、車体前後方向視で門型の形状になっている。左右の横ボンネット部分16r及び上ボンネット部分17rは、樹脂素材の成型によって作製してある。固定ボンネット部7bは、樹脂製となっている。左右の横ボンネット部分16rと上ボンネット部分17rとは、一体に形成してある。
【0030】
開閉ボンネット部7aの左右の横ボンネット部分16fと、固定ボンネット部7bの左右の横ボンネット部分16rとによって、エンジンボンネット7全体のうちの横ボンネット部16を構成してある。左右の横ボンネット部16は、エンジン4の横側方を覆っている。開閉ボンネット部7aの上ボンネット部分17rと、固定ボンネット部7bの上ボンネット部分17rとによって、エンジンボンネット7全体のうちの上ボンネット部17を構成してある。上ボンネット部17は、エンジン4の上方を覆っている。
【0031】
図1に示すように、固定ボンネット部7bは、支柱部材22に支持されている。支柱部材22は、前部フレーム6から上方向きに突出する取付け姿勢で前部フレーム6に支持されている。支柱部材22は、
図1,4に示すように、左右一対の車体上下方向に延びる柱部22aと、左右の柱部22aの上端部にわたって連結され、車体横方向に延びる梁部22bとを備え、車体前後方向視で門型形状になっている。左右の柱部22aの下部が前部フレーム6に連結ボルトによって締め付け連結されており、支柱部材22は、前部フレーム6に固定状態で支持されている。固定ボンネット部7bは、支柱部材22を介して前部フレーム6に固定されている。
【0032】
運転部9について説明する。
運転部9は、
図1に示すように、運転部床31などを有した上部構造体30と、上部構造体30を支持する運転部フレーム35とを備えている。
【0033】
上部構造体30には、運転部床31を備える他、運転パネル部32、ミッションケース5の上方を覆うように、かつ運転座席10を支持するように構成された座席支持部、左右の後輪フェンダー33を備えてある。
【0034】
運転部フレーム35は、角パイプ材などを組み合わせて構成されたメインフレーム36と、メインフレーム36の前端部に立設され、運転パネル部32を支持する支柱部材37とを備えている。支柱部材37は、メインフレーム36の左右端部から運転パネル部32の横側部に沿って立ち上がっている左右一対の柱部37aと、左右の柱部37aの上端部にわたって連結され、車体横方向に延びる梁部37bとを備え、車体前後方向視で門型形状になっている。
【0035】
運転部フレーム35は、
図1に示すように、メインフレーム36の前端側の左右端部、及び、メインフレーム36の後端側の左右端部において、クッション材38を介して車体フレーム1に支持されている。車体フレーム1から運転部9への振動伝達が4箇所のクッション材38によって抑制される。
【0036】
図2,3に示すように、運転部9の支柱部材37における梁部37bと、原動部8の支柱部材22における梁部22bとを、防振部材41を備えた防振連結手段40によって連結してある。原動部8の支柱部材22から運転部9の支柱部材37へ振動が伝達することを防振部材41によって抑制しつつ、運転部9の支柱部材37の上端側を原動部8の支柱部材22に支持してある。
【0037】
防振連結手段40は、
図2,3に示すように、支柱部材37における梁部37bのうちの車体横方向での中央部に固定された運転部側連結部材42と、支柱部材22における梁部22bのうちの車体横方向での中央部に固定された原動部側連結部材43とを備えている。
【0038】
運転部側連結部材42には、
図2,3に示すように、上下両端側が開口した車体上下向きの円筒形状の連結筒部44を形成してある。原動部側連結部材43は、平面視で車体前方向きに開口するU字状に形成され、梁部22bから運転部側に延出されたベース部45と、連結筒部44の内部に同芯状に位置する車体上下向きの円柱形状の連結軸46とを備えている。連結軸46は、連結軸46の下端部と、ベース部45の内壁部とにわたって連結された支持部材47を介してベース部45に支持されている。
【0039】
防振部材41は、
図2,3に示すように、円筒形状のゴム材によって構成されている。
防振部材41は、連結筒部44に内嵌し、連結軸46に外嵌する状態で連結筒部44と連結軸46との間に介装されている。防振部材41は、支持部材47によって下方から受け止め支持されることにより、連結筒部44及び連結軸46から下方へ抜け外れることがないように保持されている。防振部材41は、防振部材41の下端部に形成してあるフランジ部41aが連結筒部44によって上方から支持されることにより、連結筒部44及び連結軸46から上方へ抜け外れることがないように保持されている。
【0040】
図10は、エンジン4の駆動制御などの制御を司る電子制御装置80の支持構造を示す斜視図である。この支持構造では、車体部分に固定された支持部81と、電子制御装置80に備えられた取付け部80aとの間に、防振用の連結部材82を介装してある。連結部材82の車体側の連結部82aは、支持部81に対して2つの第1防振ゴム83を介して連結してある。連結部材82の装置側の連結部82bは、2つの第2防振ゴム84を介して取付け部80aに連結してある。
【0041】
車体に発生するX,Y,Z方向の振動のうち、路面の凹凸に起因するY,Z方向の振動が高い値の振動になるが、Z方向の振動の電子制御装置80への伝達が第1防振ゴム83によって効果的に抑制され、Y方向の振動の電子制御装置80への伝達が第2防振ゴム84によって効果的に抑制される。
【0042】
バックミラー12の支持構造について説明する。
図4は、バックミラー12の第1の支持構造50を示す正面図である。
図5は、
図4のV−V断面矢視図である。
図4,5に示すように、第1の支持構造50では、原動部8の支柱部材22(車体部分)における右の柱部22aのうち、柱部22aの上端側に位置し、かつ、エンジンボンネット7の内側に位置する部位に支持部51を形成してある。支持部51から支持アーム52を車体右横外側へ向けて延出してある。支持アーム52は、エンジンボンネット7のうち、固定ボンネット部7bにおける横ボンネット部分16rに形成された貫通孔53を通ってエンジンボンネット7の内部から外部へ延びている。支持アーム52の延出端部にバックミラー12を支持してある。
【0043】
支持部51には、
図4,5に示すように、柱部22aに固定された一対の支持部材54、及び、一対の支持部材54の間に介装された2つの防振材55を備えている。
【0044】
一対の支持部材54は、車体前後方向に間隔を空けて並び、支持アーム52の基部52aを挟んでいる。2つの防振材55のうちの一方の防振材55は、前の支持部材54と基部52aとの間に介装されている。2つの防振材55のうちの他方の防振材55は、後の支持部材54と基部52aとの間に介装されている。支持部材54の上下2箇所に装着され、かつ基部52aを貫通した連結ボルト56によって一対の支持部材54を締め付け、2つの防振材55及び基部52aを一対の支持部材54によって車体前後方向に挟持させてある。2つの防振材55は、弾性変形した状態で挟持されている。
【0045】
支持部51は、支持アーム52の基部52a及び2つの防振材55を一対の支持部材54によって挟持することにより、支柱部材22から支持アーム52への振動伝達を2つの防振材55によって抑制しつつ、支持アーム52を支持する。
【0046】
本実施例では、支持部材54を平板状に構成しているが、防振材側面が平坦面で、防振部材側と反対側の側面が湾曲面であるなど、具体形状が各種異なる支持部材の採用が可能である。本実施例では、防振材55を板状のゴム材によって構成しているが、ブロック状のゴム材など、形状及び素材が各種異なる防振材の採用が可能である。本実施例では、基部52aを平板状に構成しているが、矩形や円形の棒材や管材によって構成可能である。
【0047】
支持アーム52を車体フレーム1に固定された支柱部材22(車体部分)の支持部51に支持させているが、支柱部材22から支持アーム52への振動伝達が防振材55によって抑制されることにより、バックミラー12を振動し難くできる。
【0048】
図6は、バックミラー12の第2の支持構造60を示す正面図である。
図7は、
図6のVII−VII断面矢視図である。
図6,7に示すように、第2の支持構造60では、支持部61に、支柱部材22(車体部分)の柱部22aに固定された1つの支持部材62を備えてある。
【0049】
支持部61は、挟持部材63を支持部材62に向けて連結ボルト64によって締め付け、支持アーム52の基部52a、基部52aと支持部材62との間に介装した防振材65、及び、基部52aと挟持部材63との間に介装した防振材65を支持部材62と挟持部材63とによって車体横方向に挟持させてある。2つの防振材65は、弾性変形した状態で挟持されている。
【0050】
支持部61は、支持アーム52の基部52a及び2つの防振材65を支持部材62と挟持部材63とによって車体横方向に挟持することにより、支柱部材22から支持アーム52への振動伝達を2つの防振材65によって抑制しつつ、支持アーム52を支持する。
【0051】
図8は、バックミラー12の第3の支持構造70を示す正面図である。
図8に示すように、第3の支持構造70では、運転部9の支柱部材37(車体部分)における柱部37aに支持部71を形成してある。支持部71は、挟持部材72を柱部37aに向けて連結ボルト73によって締め付けることにより、支持アーム52の基部52a、基部52aと柱部37aとの間に介装した防振材74、及び、基部52aと挟持部材72との間に介装した防振材74を柱部37aと挟持部材72とによって車体横方向に挟持させている。2つの防振材74は、弾性変形状態で挟持されている。
【0052】
支持部71は、基部52a及び2つの防振材74を柱部37aと挟持部材72とによって車体横方向に挟持することにより、支柱部材37から支持アーム52へ振動伝達を2つの防振材74によって抑制しつつ、支持アーム52を支持する。
【0053】
柱部37aと挟持部材72との間に筒形のスペーサ75を介装してある。スペーサ75は、防振材74が過剰に弾性変形されないように、柱部37aと挟持部材72との間隔を規制する。
図9に示すように、2つの防振材74のうちの一方の防振材74の側面に、ボルト孔と同芯状に位置する環状の突部74aを形成してある。突部74aを形成してある防振材74は、突部74aがスペーサ75に外嵌し、かつ他方の防振材74に向かう状態で組み付けてある。他方の防振材74は、突部がない扁平板状に形成してある。
【0054】
車体フレーム1にクッション材38を介して支持された支柱部材37(車体部分)の支持部71に支持アーム52を支持させているので、車体フレーム1から支持部71への振動伝達がクッション材38によって抑制され、支柱部材37から支持アーム52への振動伝達が防振材74によって抑制されることにより、バックミラー12を振動し難くできる。
【0055】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施例では、2つの防振材55,65,74を備えた例を示したが、1つ、あるいは3つ以上の防振材を備えて実施してもよい。
【0056】
(2)上記した第1の支持構造50及び第2の支持構造60では、支持アーム52が通る貫通孔53をエンジンボンネット7のうち、固定ボンネット部7bに、かつ横ボンネット部16bに形成した例を示したが、開閉ボンネット部7aに、あるいは、上ボンネット部17に形成してもよい。
【0057】
(3)上記した実施例では、バックミラー12を車体の右横側方だけに配備した例を示したが、車体の左横側方だけに、あるいは、右横側方と左横側方の両方に配備してもよい。