(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一端に開口部を有する外側継手部材と、前記外側継手部材との間でトルク伝達部材を介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材とを備え、前記外側継手部材の開口部を閉塞するブーツの端部を、前記外側継手部材の取付部位および前記内側継手部材から延びる軸部材の取付部位に締め付け固定した等速自在継手であって、
前記外側継手部材に対して前記軸部材が作動角をとった時に軸部材の外周面のうちで少なくとも前記ブーツの内周面が接触する部位に、軸部材の外周面とブーツの内周面との相対移動に伴う摩擦による摩耗を低減する中間部材を設け、
前記ブーツの内周面が、前記相対移動に伴う摩擦による摩耗を低減する中間部材の外周面に対して滑ると共に、前記相対移動に伴う摩擦による摩耗を低減する中間部材の内周面が、前記軸部材の外周面に対して滑ることを特徴とする等速自在継手。
前記相対移動に伴う摩擦による摩耗を低減する中間部材は、軸部材の外周面を被覆する筒状部材からなり、前記筒状部材の周方向の少なくとも一箇所に、接合可能な一対の端部を軸方向に沿って形成した請求項1〜3のいずれか一項に記載の等速自在継手。
前記相対移動に伴う摩擦による摩耗を低減する中間部材は、軸部材の外周面を被覆する筒状部材からなり、この筒状部材は、軸部材に対して周方向及び軸方向の移動が可能とされる請求項1〜4に記載の等速自在継手。
前記筒状部材は、軸部材の軸端部部位の最大外径寸法よりも内径寸法が大きくなる拡径が可能で、ブーツの内周面が接触する部位への装着時には、軸部材に対して周方向及び軸方向の移動が可能となる内径寸法に縮径している請求項6に記載の等速自在継手。
前記筒状部材は、軸部材のブーツの内周面が接触する部位の外径寸法よりも軸方向スリットの周方向の幅寸法が大きくなる拡径が可能で、ブーツの内周面が接触する部位への装着時には、軸部材に対して周方向及び軸方向の移動が可能となる内径寸法に縮径している請求項6に記載の等速自在継手。
前記筒状部材は、軸部材のブーツの内周面が接触する部位よりも内径寸法が小さく、軸部材のブーツの内周面が接触する部位への装着時には、軸部材に対して周方向及び軸方向の移動が可能となる内径寸法に拡径している請求項6に記載の等速自在継手。
前記相対移動に伴う摩擦による摩耗を低減する中間部材の内周面と軸部材の外周面との間に継手内部に封入される潤滑剤が介在する請求項1〜9のいずれか一項に記載の等速自在継手。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達する手段として使用される等速自在継手には、固定式等速自在継手と摺動式等速自在継手の二種がある。これら両者の等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し得る構造を備えている。
【0003】
自動車のエンジンから駆動車輪に動力を伝達するドライブシャフトは、エンジンと車輪との相対的位置関係の変化による角度変位と軸方向変位に対応する必要があるため、一般的にエンジン側(インボード側)に角度変位および軸方向変位の両方を許容する摺動式等速自在継手を、駆動車輪側(アウトボード側)に角度変位のみを許容する固定式等速自在継手をそれぞれ装備し、両者の等速自在継手をシャフトで連結した構造を具備する。
【0004】
固定式等速自在継手は、
図15に示すように、内径面121に複数のトラック溝122が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された外側継手部材123と、外径面124に外側継手部材123のトラック溝122と対をなす複数のトラック溝125が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された内側継手部材126と、外側継手部材123のトラック溝122と内側継手部材126のトラック溝125との間に介在してトルクを伝達する複数のボール127と、外側継手部材123の内径面121と内側継手部材126の外径面124との間に介在してボール127を保持するケージ128とを備えている。
【0005】
また、内側継手部材126の軸孔内径面に雌スプライン129が形成され、この内側継手部材126の軸孔に嵌入されるシャフト130の端部には雄スプライン131が形成されている。このため、シャフト130の端部を内側継手部材126の軸孔に嵌入することによって、内側継手部材126の雌スプライン129とシャフト130の雄スプライン131とがトルク伝達可能に嵌合する。シャフト130の端部には、止め輪132が装着され、これによって、シャフト130の抜けを規制している。なお、外側継手部材123は、内径面121に複数のトラック溝122が形成されたマウス部123aと、このマウス部123aの底壁か突設されるステム部(軸部)123bとからなる。
【0006】
また、摺動式等速自在継手は、内周に軸線方向に延びる三本のトラック溝140を設けると共に各トラック溝140の内側壁に互いに対向するローラ案内面140aを設けた外側継手部材141と、三本の脚軸142を有する内側継手部材としてのトリポード部材143と、前記脚軸142に回転自在に支持されると共に前記外側継手部材141のトラック溝140に転動自在に挿入されたトルク伝達手段としてのローラ144とを備える。この場合、ローラ144は脚軸142の外径面に周方向に沿って配設される複数のころ145を介して外嵌されている。
【0007】
外側継手部材141は一体に形成されたマウス部141aとステム部141bとを備える。マウス部141aは一端にて開口したカップ状で、その内径面に、軸方向に延びる3本の前記トラック溝140が形成される。トリポード部材143はボス146と前記脚軸142とを備える。脚軸142はボスの円周方向三等分位置から半径方向に突出している。
【0008】
ボス146の内径面には雌スプライン148が形成され、シャフト150のインボード側の端部がこのボス146に挿入されて、シャフト150の端部に設けられた雄スプライン149がボス146の雌スプライン148に嵌合し、これによって、シャフト150とトリポード部材143とがトルク伝達可能に嵌合する。シャフト150の端部には、止め輪152が装着され、これによって、シャフト150の抜けを規制している。
【0009】
これら固定式等速自在継手あるいは摺動式等速自在継手では、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、等速自在継手の外側継手部材123(141)と内側継手部材126(143)から延びるシャフト130(150)との間にゴム製あるいは樹脂製のブーツ160を装着して、外側継手部材123(141)の開口部をブーツ160で閉塞した構造が一般的である。
【0010】
ブーツ160は、
図15および
図16に示すように、等速自在継手の外側継手部材123(141)の開口部外周面にブーツバンド161により締め付け固定された大径端部160aと、等速自在継手の内側継手部材126(143)から延びるシャフト130(150)の外周面にブーツバンド162により締め付け固定された小径端部160bと、大径端部160aと小径端部160bとを繋ぎ、山部と谷部が交互に連続的に形成されて大径端部160aから小径端部160bへ向けて縮径した伸縮自在な蛇腹部160cとで構成されている。
【0011】
等速自在継手には、作動角を取りながら回転したり、さらには摺動式等速自在継手では、軸方向に摺動しながら回転する機能が備わっている。このため、ブーツの耐摩耗性や耐疲労性などの耐久性を確保するために、従来から種々提案されている。
【0012】
すなわち、ブーツの摩耗を抑制するため、従来の等速自在継手では、ブーツの谷部の内径を大きくしたり、特許文献1のように、ブーツの谷部の内周面を摩耗に強い形状としたり、あるいは、特許文献2のように、シャフトの外周面の表面粗さを小さくする種々の対策が講じられている。
【0013】
さらには、特許文献3のように、ブーツ材料内に摩耗や異音を低減するための成分を添加したもの、特許文献4のように、ジエン系ゴム材料から構成されるブーツの表面に四フッ化エチレン樹脂粉末を配合した合成樹脂を不連続被膜として設けている。この特許文献4では、このように、不連続被膜を設けることによって、表面の低摩擦特性、耐摩耗性が安定して発揮できるものとしている。
【0014】
また、特許文献5では、蛇腹部を、大径装着部寄り部分、小径装着部寄り部分と、中央部分との3つの部分に区分し、これらの部位の剛性を相違させている。すなわち、部位の剛性の関係を、中央部分>大径装着部寄り部分>小径装着部寄り部分としている。さらに特許文献6では、山部の径および谷部の径等を限定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、自動車や各種産業機械では小型軽量化のニーズが高まっており、等速自在継手用ブーツに対してもコンパクトな設計が要望されている。これに対して、ブーツの谷部の内周面に発生する摩耗を抑制する対策として、前述したように、ブーツの谷部の内径を大きくすることは、継手重量の増加を招くと共に、継手の周辺部品と干渉するおそれがあるので、実用的な対策とは言えない。
【0017】
また、等速自在継手が作動角を取ったり、摺動したりすることで、ブーツはその動きに追従するために変形する。作動角を取る方向の位相(以降、圧縮側と称す)では、作動角を大きく取ると、谷部内面がシャフトと接触し易くなる。通常、シャフトの外周面は旋削加工によるリード面が存在することから、この蛇腹部の谷部の内周面とシャフトの外周面との接触により、蛇腹部の谷部の内周面に摩耗が発生し易く、ブーツの耐久性が低下して寿命が短くなる。
【0018】
しかしながら、特許文献1および特許文献2で開示された等速自在継手のいずれも、ブーツの谷部の内周面とシャフトの外周面との接触を避けられない。このブーツの谷部の内周面とシャフトの外周面には、等速自在継手が作動角を取って回転する際に、軸方向及び周方向の相対的な移動を伴うため、ブーツの谷部の内周面とシャフトの外周面との間で摩擦が発生する。この摩擦によりブーツの谷部の内周面に摩耗が発生する。さらに、シャフトの外周面の表面粗さを小さくするためには、シャフトへの表面処理が必要となってコスト低減が困難となる。
【0019】
特許文献3に記載のものでは、耐摩耗性の向上や異音低減に期待できるが、ブーツ蛇腹部の谷部とシャフトとの干渉摩擦には十分な対策となっておらず、かえって耐疲労性や耐老化性を低下させたり、大径端部及び小径端部におけるシール性を低下させたりする要因にもなっていた。
【0020】
また、特許文献4に記載のものにおいて、このような不連続被膜をブーツ内面に施した場合でも、十分な谷部内面の耐摩耗性を得ることは困難である。特許文献5及び特許文献6では、ブーツ形状に工夫を凝らした提案であるが、いずれの場合も谷部内面の耐摩耗性の向上の手段としても十分ではなく、しかも、ブーツ全体のコンパクトさに欠くものである。
【0021】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、ブーツの内周面とシャフトの外周面との接触によるブーツの内周面の摩耗を確実に抑制し得る等速自在継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、一端に開口部を有する外側継手部材と、その外側継手部材との間でトルク伝達部材を介して角度変位を許容しながらトルクを伝達する内側継手部材とを備え、外側継手部材の開口部を閉塞するブーツの端部を、外側継手部材の取付部位および内側継手部材から延びる軸部材の取付部位に締め付け固定した等速自在継手であって、外側継手部材に対して軸部材が作動角をとった時に軸部材の外周面のうちで少なくともブーツの内周面が接触する部位に、軸部材の外周面とブーツの内周面との相対移動に伴う摩擦による摩耗を低減する中間部材を設けたことを特徴とする。ここで、相対移動とは、軸方向及び周方向の相対移動である。
【0023】
本発明では、軸部材の外周面とブーツの内周面との相対移動に伴う摩擦による摩耗を低減する中間部材を、外側継手部材に対して軸部材が作動角をとった時に軸部材の外周面のうちで少なくともブーツの内周面が接触する部位に設けたことにより、軸部材の外周面とブーツの内周面との相対移動に伴う摩擦を分散させることで、ブーツの内周面の摩擦を少なくるすことができ、その摩擦によるブーツの内周面の摩耗を抑制することができる。
【0024】
本発明における相対移動に伴う摩擦を低減する中間部材をすべり軸受とすることが望ましい。このようにすれば、簡便な手段で摩擦を低減する中間部材を構成することができる。この場合、ブーツの内周面と軸部材の外周面との間にすべり軸受が介在することで、ブーツの内周面がすべり軸受の外周面に対して滑ると共に、すべり軸受の内周面が軸部材の外周面に対して滑ることになる。そのため、ブーツの内周面とすべり軸受の外周面との相対移動量を、ブーツの内周面と軸部材の外周面との相対移動量よりも小さくすることができる。つまり、すべり軸受に対するブーツの摩擦を軸部材に対するブーツの摩擦よりも少なくすることができるので、その摩擦によるブーツの内周面の摩耗を確実に抑制することができる。
【0025】
本発明における相対移動に伴う摩擦を低減する中間部材は、複数個のすべり軸受が軸方向に沿って独立して並設された構成とすることが望ましい。このようにすれば、すべり軸受1個当たりの軸部材の外周面との接触面積を減らすことで、すべり軸受が軸部材の外周面を滑り易くなる。そのため、ブーツの内周面とすべり軸受の外周面との相対移動量をより一層小さくすることができる。また、ブーツの内周面が複数箇所で接触しても、それぞれのすべり軸受が独立して軸部材の外周面を滑るので、ブーツの内周面のすべり軸受との相対移動量をより一層抑制することができる。
【0026】
本発明における相対移動に伴う摩擦を低減する中間部材は、軸部材の外周面を被覆する筒状部材からなり、その筒状部材の周方向の少なくとも一箇所に、接合可能な一対の端部を軸方向に沿って形成した構成とすることが望ましい。このようにすれば、相対移動に伴う摩擦を低減する中間部材を軸部材に容易に組み付けることが可能となる。つまり、一対の端部が切り離された状態にある筒状部材に軸部材を収容した上で、一対の端部を接合することにより、筒状部材の軸部材への組み付けを完了することができる。
【0027】
前記相対移動に伴う摩擦を低減する中間部材は、軸部材の外周面を被覆する筒状部材からなり、この筒状部材は、軸部材に対して周方向及び軸方向の移動が可能とされるものであってもよい。
【0028】
前記筒状部材は、軸方向両端縁にわたって軸方向スリットが形成されているのが好ましい。
【0029】
前記筒状部材は、軸部材の軸端部部位の最大外径寸法よりも内径寸法が大きくなる拡径更には、軸部材のブーツの内周面が接触する部位の外径寸法よりも軸方向スリットの周方向の幅寸法が大きくなる拡径が可能で、ブーツの内周面が接触する部位への装着時には、軸部材に対して周方向及び軸方向の移動が可能となる内径寸法に縮径しているものであっても、ブーツの内周面が接触する部位よりも内径寸法が小さく、ブーツの内周面が接触する部位への装着時には、軸部材に対して周方向及び軸方向の移動が可能となる内径寸法に拡径しているものであってもよい。
【0030】
前記筒状部材の内周面と軸部材の外周面との間に継手内部に封入される潤滑剤が介在するのが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、軸部材の外周面とブーツの内周面との(軸方向及び周方向の)相対移動に伴う摩擦による摩耗を低減する中間部材を、外側継手部材に対して軸部材が作動角をとった時に軸部材の外周面のうちで少なくともブーツの内周面が接触する部位に設けたことにより、軸部材の外周面とブーツの内周面との相対移動に伴う摩擦を分散させることで、ブーツの内周面の摩擦を少なくすることができ、その摩擦によるブーツの内周面の摩耗を抑制することができる。その結果、耐久性に優れた長寿命の等速自在継手を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明に係る等速自在継手の実施形態を以下に詳述する。以下の実施形態では、角度変位のみを許容する固定式等速自在継手としてのツェッパ型等速自在継手を例示するが、本発明は、ツェッパ型等速自在継手以外に、アンダーカットフリー型等速自在継手など他の固定式等速自在継手にも適用可能である。さらに、本発明は、角度変位および軸方向変位の両方を許容するトリポード型、クロスグルーブ型およびダブルオフセット型等速自在継手のような摺動式等速自在継手にも適用可能である。なお、本発明は、自動車のドライブシャフトやプロペラシャフトに組み込まれた等速自在継手に適用可能である。
【0034】
図1は、作動角が0°の状態にある第1の実施形態の等速自在継手を示す。この等速自在継手は、軸方向に延びる円弧状のトラック溝11が球面状内周面12の円周方向複数箇所に形成されたカップ状の外側継手部材10と、その外側継手部材10のトラック溝11と対をなして軸方向に延びる円弧状のトラック溝21が球面状外周面22の円周方向複数箇所に形成された内側継手部材20と、外側継手部材10のトラック溝11と内側継手部材20のトラック溝21との間に介在するトルク伝達部材としての複数個のボール30と、外側継手部材10の球面状内周面12と内側継手部材20の球面状外周面22との間に配され、円周方向等間隔に形成されたポケットでボール30を保持するケージ40とを主要な構成要素としている。
【0035】
この等速自在継手では、内側継手部材20の軸孔に軸部材としてのシャフト50の軸端部位51がスプライン嵌合によりトルク伝達可能に連結されている。この種の等速自在継手は、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、外側継手部材10とシャフト50との間に、例えば樹脂製あるいはゴム製の蛇腹状ブーツ60を装着した構造を具備する。シャフト50の端部には、止め輪55が装着され、これによって、シャフト50の抜けを規制している。なお、外側継手部材10は、内径面に複数のトラック溝11が形成されたマウス部10aと、このマウス部10aの底壁か突設されるステム部(軸部)10bとからなる。
【0036】
このように、外側継手部材10およびブーツ60の内部空間に潤滑剤(図示せず)を封入することにより、外側継手部材10に対してシャフト50が作動角をとりながら回転する動作時において、継手内部の摺動部位、つまり、外側継手部材10、内側継手部材20、ボール30およびケージ40からなる構成部品間における摺動部位での潤滑性を確保するようにしている。
【0037】
前述のブーツ60は、外側継手部材10の取付部位である開口部の外周面にブーツバンド71により締め付け固定された大径端部61と、内側継手部材20から延びるシャフト50の取付部位52の外周面にブーツバンド72により締め付け固定された小径端部62と、大径端部61と小径端部62とを繋ぎ、山部63と谷部64が交互に連続的に形成されて大径端部61から小径端部62へ向けて縮径した伸縮自在な蛇腹部65とで構成されている。
【0038】
また、前述のシャフト50は、内側継手部材20の軸孔に圧入された軸端部位51と、ブーツ60の小径端部62が締め付け固定された取付部位52と、軸端部位51と取付部位52との間に位置する中間部位53とを備えている。このシャフト50の中間部位53は、軸端部位51および取付部位52よりも小さい外径を有し、軸方向に沿って平滑な外周面を持つ。このシャフト50の中間部位53の外側に、ブーツ60の蛇腹部65が配置されている。
【0039】
図2は、等速自在継手が作動角をとった状態を示す。このように、等速自在継手が作動角をとった場合、ブーツ60の片側(図示上側)が圧縮されることにより、その片側で蛇腹部65の谷部64の内周面がシャフト50の外周面に接触し易くなる。特に、蛇腹部65の谷部64の内周面とシャフト50の外周面とでは相対移動(
図1参照)があるため、蛇腹部65の谷部64の内周面とシャフト50の外周面との間で摩擦が発生することになる。
【0040】
そこで、この実施形態では、この摩擦によりブーツ60の蛇腹部65の谷部64の内周面に発生する摩耗を抑制するため、等速自在継手が作動角をとった時にシャフト50の外周面のうちで少なくとも蛇腹部65の谷部64の内周面が接触する部位、つまり、シャフト50の中間部位53の外周面に、蛇腹部65の谷部64の内周面とシャフト50の中間部位53の外周面との相対移動に伴う摩擦による摩耗を低減する中間部材を設けている。
【0041】
この相対移動に伴う摩擦を低減する中間部材としては、すべり軸受80が、簡便な手段で相対移動に伴う摩擦を低減する中間部材を構成できる点で有効である。すべり軸受80は、シャフト50の中間部位53の略全長に亘ってその中間部位53を覆うように装着されている。また、このすべり軸受80は、シャフト50の中間部位53に対してすきまを設けた状態で装着されているので、シャフト50との共回りを回避することができる。すべり軸受80は、自己潤滑性を有する樹脂などで製作することで、蛇腹部65の谷部64の内周面の摩耗を軽減することが容易となる。さらに、このすべり軸受80の外周面に塗装膜を形成するようにしてもよい。この塗装膜の形成は、すべり軸受80の外周面と蛇腹部65の谷部64の内周面の接触による摩耗を抑制する点で有効である。
【0042】
すべり軸受80を構成する素材、例えば、自己潤滑性を有する樹脂としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フッ素樹脂(四フッ化エチレン)、フッ素樹脂系エラストマー(フッ素ゴム)、ポリフェニレンサルファイド、ポリオキシメチレン、ポリアミドおよびポリエチレンなどが挙げられる。なお、すべり軸受80の素材としては、自己潤滑性を有する樹脂以外のものであってもよい。但し、樹脂より硬度が高い金属などを用いる場合は、摩耗抑制のため、すべり軸受80の外周面に塗装膜を形成することが望ましい。
【0043】
以上の構成からなるすべり軸受80をシャフト50の中間部位53に装着したことにより、等速自在継手が作動角をとった時、ブーツ60の蛇腹部65の谷部64の内周面が、焼入れ硬化処理されたシャフト50の中間部位53の外周面に直接的に接触することはない。つまり、蛇腹部65の谷部64の内周面とシャフト50の中間部位53の外周面との間にすべり軸受80が介在する。これにより、ブーツ60の片側でその蛇腹部65の谷部64の内周面がすべり軸受80の外周面に接触するが、蛇腹部65の谷部64の内周面がすべり軸受80の外周面に対して滑ると共に、すべり軸受80の内周面がシャフト50の中間部位53の外周面に対して滑る。
【0044】
そのため、蛇腹部65の谷部64の内周面とすべり軸受80の外周面との相対移動量を、蛇腹部65の谷部64の内周面とシャフト50の中間部位53の外周面との相対移動量よりも小さくすることができる。つまり、すべり軸受80に対するブーツ60の摩擦をシャフト50に対するブーツ60の摩擦よりも少なくすることができるので、その摩擦による蛇腹部65の谷部64の内周面の摩耗を確実に抑制することができる。このように、すべり軸受80を使用することにより、蛇腹部65の谷部64の摩耗は、シャフト50の中間部位53の外周面の面粗さに影響されることがなく、また、シャフト50への表面処理も不要となる。
【0045】
ここで、ブーツ60の蛇腹部65の谷部64の内周面とすべり軸受80の外周面との最大接触面圧をP[MPa]とし、すべり軸受80に対するブーツ60の滑り速度をV[mm/s]とした場合、その最大接触面圧Pと滑り速度Vとの積であるPV値が3000[MPa・mm/s]以下とすることが好ましい。このPV値を3000以下とすることにより、蛇腹部65の谷部64の内周面の摩耗を抑制することができる(摩耗量0.05mm未満)。なお、このPV値が3000よりも大きいと、所望の摩耗抑制効果を得ることが困難となる。
【0046】
図1および
図2の等速自在継手では、一つのすべり軸受80をシャフト50の中間部位53の外周面に設けた構造を具備するが、第2の実施形態を示す
図3および
図4に示す等速自在継手のように、複数個のすべり軸受81をシャフト50の中間部位53の外周面に設けた構造とすることも可能である。これらのすべり軸受81は、シャフト50の中間部位53の外周面に軸方向に沿って独立して並設されている。なお、すべり軸受81の素材、機能および作用効果については、
図1および
図2の等速自在継手で使用した一つのすべり軸受80と同様であるため、重複説明は省略する。
【0047】
以上のように、複数個のすべり軸受81を使用することにより、すべり軸受1個当たりのシャフト50の中間部位53の外周面との接触面積を減らすことで、すべり軸受81がシャフト50の中間部位53の外周面を滑り易くなる。そのため、ブーツ60の蛇腹部65の谷部64の内周面とすべり軸受81の外周面との相対移動に伴う摩擦をより一層小さくすることができる。また、蛇腹部65の谷部64の内周面が複数箇所で接触しても、それぞれのすべり軸受81が独立してシャフト50の中間部位53の外周面を滑るので、蛇腹部65の谷部64の内周面のすべり軸受との相対移動に伴う摩擦をより一層抑制することができる。
【0048】
図1〜
図4に示す等速自在継手で使用するすべり軸受80,81は、その周方向の少なくとも一箇所に、
図5および
図7に示すように、接合可能な一対の端部(後述の係合部84,85)を軸方向に沿って形成した構造とすればよい。このような構造とすることにより、すべり軸受80,81をシャフト50の中間部位53に容易に組み付けることが可能となる。
【0049】
図5のすべり軸受80,81は、接合可能な端部を一箇所に設けた例示であり、連結部82により連結された二つの半割部83を開閉自在とし、それぞれの半割部83の端部に接合可能な係合部84,85を形成した構造を具備する。連結部82は、内周に切り込みを形成することにより二つの半割部83を開閉自在としている。一方の係合部84は、内径側を周方向に突出させ、基端から先端に向けて厚肉となる形状をなし、他方の係合部85は、外径側を周方向に突出させ、基端から先端に向けて厚肉となる形状をなす。
【0050】
このすべり軸受80,81は、前述のような構造とすることにより、二つの半割部83を開いた状態でその内部にシャフト50の中間部位53を収容し、
図6に示すように、一方の係合部84と他方の係合部85とを接合することにより、シャフト50の中間部位53への組み付けが完了する。一方の係合部84と他方の係合部85は、相互に基端から先端に向けて厚肉となる形状をなすことから、組み付け後に外れることなく、強固な接合状態を維持することができる。
【0051】
図7のすべり軸受80,81は、接合可能な端部を二箇所に設けた例示であり、独立分離した二つの半割部86の両端部に、接合可能な係合部87,88を形成した構造を具備する。それぞれの半割部86の一方の係合部87は、内径側を周方向に突出させ、基端から先端に向けて厚肉となる形状をなし、他方の係合部88は、外径側を周方向に突出させ、基端から先端に向けて厚肉となる形状をなす。
【0052】
このすべり軸受80,81は、前述のような構造とすることにより、二つの半割部86の間にシャフト50の中間部位53を配置し、
図8に示すように、一方の半割部86の両端部に位置する係合部87,88と、他方の半割部86の両端部に位置する係合部87,88とを接合することにより、シャフト50の中間部位53への組み付けが完了する。一方の係合部87と他方の係合部88は、相互に基端から先端に向けて厚肉となる形状をなすことから、組み付け後に外れることなく、強固な接合状態を維持することができる。
【0053】
なお、以上の実施形態では、相対移動に伴う摩擦を低減する中間部材としてすべり軸受80,81を使用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、他の相対移動に伴う摩擦を低減する中間部材として、転がり軸受を使用することも可能である。
【0054】
次に
図9は第3の実施形態を示し、この場合、相対移動に伴う摩擦を低減する中間部材は、軸部材としてのシャフト50の外周面を被覆する筒状部材100で構成され、筒状部材100はこのシャフト50に対して周方向(矢印A方向)および軸方向(矢印B方向)の移動が可能となっている。
【0055】
この筒状部材100は、
図10に示すように、軸方向両端に達する軸方向に沿った直線状のスリット101が設けられたものである。すなわち、筒状部材100は、横断面形状において、その一部に切欠部が形成された円形形状を成す。このため、スリット101の幅寸法を拡大させて、この筒状部材100を拡径させることによって、シャフト50の中間部位53に嵌着することになる。
【0056】
すなわち、スリット101を
図10の矢印A1、A2のように押し広げた状態として、筒状部材100の内径寸法を、シャフト50の軸端部位51の外径寸法よりも大きくする。この状態で、矢印Cのように、シャフト50の軸端部位51を介してシャフト50の中間部位53に嵌入状態とする。あるいは、更にスリット101を押し広げた状態として、スリット101の周方向幅をシャフト50の中間部位53の径よりも大きくすることで、シャフト50の中間部位53に嵌入状態とする。この嵌入状態で、この筒状部材100に付与している拡径力を解除する。これによって、この筒状部材100の復元力によって、縮径して自由状態の径に戻る。また、筒状部材100はシャフト50の軸端部位51の外径寸法よりも大きくした状態で拡径力を解除しても元の径に戻らなくても良く、中間部位53へ嵌入した状態で縮径力を与えることでシャフト50の中間部位53に沿った自由状態に戻れば良い。
【0057】
この自由状態での筒状部材100の内径寸法は、シャフト50の中間部位53の外径寸法よりも0.1mm〜1mm程度大きく設定される。また、筒状部材100の軸方向長さとしては、中間部位53よりも短く、この等速自在継手が任意の作動角を取って回転した際に、ブーツ60の蛇腹部65の谷部64が接触して、その谷部64が軸心方向に沿って移動するスライド量を許容できるだけの寸法とする。
【0058】
筒状部材100の材質は、金属製であっても、樹脂製であっても、ゴム製であってもよい。しかしながら、シャフト50への装着時に筒状部材100の内径を広げるため、その変形を許容し、かつ、装着後には上述のシャフト50との装着条件を満たす寸法に戻る特性を必要とする。金属製としては鉄やアルミニウムを用いることができるが、金属製の筒状部材100では肉厚が厚過ぎると拡径させにくく、元の自由状態に戻す作業性も低下したり、筒状部材100に不要な局部的変形を伴う恐れもあるため、望ましくない。そこで、鉄製やアルミニウム製の場合、0.01mm〜0.5mmの厚みに設定される。
【0059】
樹脂製やゴム製の場合は、金属製よりも肉厚寸法の自由度が大きいが、肉厚寸法が大きくなるとブーツ60における谷部64と接触し始める作動角が小さくなる。このため、ブーツ60の変形状態や疲労性への影響が懸念される。従って、樹脂製やゴム製の場合は、肉厚寸法として1mm以下が望ましい。樹脂の材質は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー等を適用できるが、シャフト50への装着性を考慮すると、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーが望ましい。熱可塑性樹脂の場合、硬い材料を選択しても、加熱して軟化させた状態でシャフト50に装着することが可能である。熱可塑性エラストマーであれば、常温にて容易にシャフト50に装着できる。また、ゴムとしては、ジエン系ゴムや非ジエン系ゴムなど、一般的に知られている素材が使用できる。
【0060】
また、等速自在継手には、潤滑のための潤滑剤(グリース)が封入される。この場合、前記したように、筒状部材100の内径寸法が中間部位53の外径寸法よりも0.1mm〜1mm程度大きく設定されているので、シャフト50と筒状部材100の間には僅かな隙間が形成され、この隙間にグリースが介在することになる。
【0061】
次に
図11は、
図9に示す等速自在継手と相違して、シャフト50の中間部位53の軸方向長さを短く設定している。この場合は、装着されるブーツ60の軸方向長さが短く設定されている。すなわち、
図9では、ブーツ60の蛇腹部65の山部63が6個で谷部64が5個であったが、
図11のブーツ60では、蛇腹部65の山部63が4個で谷部64が3個である。
【0062】
このため、シャフト50の中間部位53の軸方向長さに対応させて筒状部材100を短寸の筒状体から構成している。この場合も、スリット101(
図10参照)の幅寸法を拡大させて、この筒状部材100を拡径させることによって、シャフト50の中間部位53に嵌着することになる。そして、この自由状態での筒状部材100の内径寸法を、筒状部材100の中間部位53の外径寸法よりも0.1mm〜1mm程度大きく設定している。したがって、筒状部材100はこのシャフトに対して周方向(矢印A方向)および軸方向(矢印B方向)への移動が可能となっている。
【0063】
次に、
図12は、等速自在継手としてトリポードタイプの摺動式等速自在継手としている。この摺動式等速自在継手は、内周に軸線方向に延びる三本のトラック溝105を設けると共に各トラック溝105の内側壁に互いに対向するローラ案内面105aを設けた外側継手部材106と、三本の脚軸107を有する内側継手部材としてのトリポード部材108と、前記脚軸107に回転自在に支持されると共に前記外側継手部材106のトラック溝105に転動自在に挿入されたトルク伝達手段としてのローラ109とを備える。この場合、ローラ109は脚軸107の外径面に周方向に沿って配設される複数のころ110を介して外嵌されている。
【0064】
外側継手部材106は一体に形成されたマウス部106aとステム部106bとを備える。マウス部106aは一端にて開口したカップ状で、その内径面に、軸方向に延びる3本の前記トラック溝105が形成される。トリポード部材108はボス111と前記脚軸107とを備える。脚軸107はボス111の円周方向三等分位置から半径方向に突出している。
【0065】
ボス111の内径面には雌スプライン112が形成され、シャフト50の端部がこのボス111に挿入されて、シャフト50の端部に設けられた雄スプライン113がボス111の雌スプライン112に嵌合し、これによって、シャフト50とトリポード部材108とがトルク伝達可能に結合する。シャフト50の端部には、止め輪56が装着され、これによって、シャフト50の抜けを規制している。
【0066】
この場合も、ブーツ60は、その蛇腹部65の山部63が8個であり、その蛇腹部65の谷部64が7個である。また、小径端部62側の4つの谷部64をシャフト50の中間部位53に近接させたものである。このため、シャフト50の中間部位53に外嵌される筒状部材100をこれら4つの谷部64に対応する軸方向長さとしている。
【0067】
この場合も、自由状態での筒状部材100の内径寸法を、シャフト50の中間部位53の外径寸法よりも0.1mm〜1mm程度大きく設定している。したがって、筒状部材100はこのシャフトに対して周方向(矢印A方向)および軸方向(矢印B方向)への移動が可能となっている。
【0068】
次に、
図13に示すものでは、筒状部材100の装着状態で、所定幅寸Tのスリット101が形成されている。この場合、筒状部材100をシャフト50の中間部位53に装着する前の状態において、その内径寸法はシャフト50の中間部位53の外径寸法よりも小さく設定されても、0.1mm〜1mm程度大きく設定されても良い。
【0069】
シャフト50の中間部位53に装着する際には、筒状部材100を拡径させて、シャフト50の中間部位53に嵌着させることになる。この場合も、筒状部材100はこのシャフト50に対して周方向(矢印A方向)および軸方向(矢印B方向)に移動が可能である。また、シャフト50の中間部位53と筒状部材100との間には、スリット101からグリースが侵入して介在する。そして、装着状態での筒状部材100の内径寸法は、シャフト50の中間部位53の外径寸法と同じ、または0.1mm〜1mm程度大きく設定する。但し、シャフト50の中間部位53の外径寸法と同じになる場合も、筒状部材100と中間部位53の間にグリースが介在するため、実質的には若干大きくなると言える。
【0070】
スリット101の幅寸法(隙間寸法)Tが大き過ぎると、このスリット101を介して、ブーツ60の谷部64がシャフト50に接触するおそれがある。このため、スリット101の幅寸法(隙間寸法)Tとしては、2mm以下と設定するのが好ましい。
【0071】
ところで、筒状部材100としては、
図14に示す種々のものを提案できる。
図14Aは前記
図9に示すものと同様、スリット101が、軸方向沿って直線状に形成されたものであり、
図14Bはスリット101が凹凸嵌合歯状に形成されたものであり、
図14Cはスリット101が三角歯状に形成されたものであり、
図14Dはスリット101が軸心方向に対して傾斜状にかつ曲線状に形成されたものであり、
図14Eはスリット101が波形歯状に形成されたものであり、
図14Fは帯板状体を螺旋状に巻設したものである。なお、
図14Fでは、スリット101が螺旋状に形成されることになる。
【0072】
図9、
図11、
図12、及び
図13に示すように、筒状部材100が、軸部材に対して周方向及び軸方向の移動が可能とされるものであれば、作動角を取ってブーツ60の谷部64が筒状部材100に接触しても、筒状部材100がこの谷部64の移動に伴ってシャフト50上を移動することになる。このため、ブーツ60の谷部64は摩耗しない。なお、筒状部材100を有さないものであれば、ブーツ60の谷部64はシャフト50と接触して相対的な移動を伴うため、摩耗する。
【0073】
すなわち、ブーツ60の谷部64がシャフト50と接触する際、耐摩耗性を向上させ、ブーツ材料が持つ本来の耐疲労性,耐老化性などの各特性を効果的に活かしてブーツ耐久性を確保した上で、ブーツ60の外径を飛躍的に小さくした形状設計を採用できる。この効果により、ブーツ耐久性を保持した上で、ブーツ60のコンパクト化が達成でき、ブーツ60の内容積を小さくできることで、ブーツ60内に封入するグリース量を少なくした等速自在継手を得ることが可能となる。
【0074】
また、
図9、
図11、
図12、及び
図13に示す筒状部材100では、軸方向両端縁にわたって軸方向スリット101が形成されているものであり、筒状部材100の拡縮が容易に行うことができ、着脱作業を迅速かつ確実に行うことができる。
【0075】
筒状部材100は、軸部材(シャフト50)の最大外径寸法よりも内径寸法が大きくなる拡径が可能で、ブーツ60の内周面(谷部64)が接触する部位(シャフト50の中間部位53)への装着時には、軸部材(シャフト50)に対して周方向及び軸方向の移動が可能となる内径寸法に縮径しているものであっても、ブーツ60の内周面(谷部64)が接触する部位(シャフト50の中間部位53)よりも内径寸法が小さく、ブーツ60の内周面(谷部64)が接触する部位(シャフト50の中間部位53)への装着時には、軸部材(シャフト50)に対して周方向及び軸方向の移動が可能となる内径寸法に拡径しているものであってもよい。このため、筒状部材100としては極めて簡単な構造のものとなって、生産性の向上及びコスト低減に寄与する。しかも、スリット101として、軸方向に沿った直線状のものに限らず、
図14B〜
図14Fに示す種々の形状のものであってもよく、設計の自由度が大きく、生産性に優れる。
【0076】
前記筒状部材100の内周面と軸部材(シャフト50)の外周面との間に継手内部に封入される潤滑剤(グリース)が介在することになる。このため、筒状部材100がシャフト50上を円滑に移動することができ、作動角を取った状態において、ブーツ60の谷部64が筒状部材100と接触して筒状部材100に力が掛かることになり、筒状部材100に接触しているブーツ60の谷部64の移動とともに筒状部材100を移動することになる。このため、谷部64と筒状部材100との間に相対的な移動が生じず、谷部64の摩耗を生じさせない。
【0077】
ブーツ60としては、等速自在継手に従来から用いられている既存(公知公用)のものを用いることができる。この場合、本発明では、ブーツ60の谷部64が筒状部材100に接触しても、ブーツ60の谷部64の摩耗を生じさせないものであり、谷部の耐摩耗性を考慮する必要がなく、谷部64の谷径を小さくすることができる。このため、ブーツ外径を小さくするコンパクト設計が可能となる。このように、ブーツ60の材質は、特に制限されることなく種々のものが適用できることになる。このため、従来材よりも耐摩耗性が低下しても耐疲労性や耐熱老化性に優れる材料など、本願の特性を活かした材料が適用できる様になり、選択肢が広がる。
【0078】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【0079】
本発明は、固定式等速自在継手であっても、摺動式等速自在継手であってもよい。固定式等速自在継手が高作動角を取る際のブーツ60の谷部64の摩耗防止に効果的なため、ブーツ60をコンパクトにできる。摺動式等速自在継手においても、ブーツ60の山谷径を極限まで小さく設計することが可能なため、ブーツ60をコンパクトに設計できる。いずれの仕様においても本願の適用が、とても有効である。