特許第6675995号(P6675995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6675995
(24)【登録日】2020年3月13日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20200330BHJP
【FI】
   E02F3/43 D
【請求項の数】2
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-18994(P2017-18994)
(22)【出願日】2017年2月3日
(62)【分割の表示】特願2014-520018(P2014-520018)の分割
【原出願日】2013年6月4日
(65)【公開番号】特開2017-75529(P2017-75529A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2017年3月2日
(31)【優先権主張番号】特願2012-131013(P2012-131013)
(32)【優先日】2012年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】呉 春男
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−176553(JP,A)
【文献】 特開平11−336129(JP,A)
【文献】 特開2002−250047(JP,A)
【文献】 実開平06−030254(JP,U)
【文献】 特開2012−017626(JP,A)
【文献】 特開平10−037230(JP,A)
【文献】 特開平10−001968(JP,A)
【文献】 特開2003−027527(JP,A)
【文献】 特開2004−132194(JP,A)
【文献】 特開2008−189297(JP,A)
【文献】 特開平11−036361(JP,A)
【文献】 特開平10−204915(JP,A)
【文献】 特開平10−183667(JP,A)
【文献】 特開平10−088609(JP,A)
【文献】 特開平08−165678(JP,A)
【文献】 特開平09−287165(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0097672(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/42
E02F 3/43
E02F 3/84
E02F 3/85
E02F 9/20
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、
前記走行体上で旋回可能に保持される旋回体と、
前記旋回体に搭載され、ブーム、前記ブームに接続されるアーム、及び、前記アームに接続されるバケットを含むアタッチメントと、
棒状の形状をなし、グリップ部が立設した状態で運転席の左側前方及び運転席の右側前方の少なくとも一方に配置される前後方向及び左右方向を含む複数の方向に傾倒可能なレバーと、を有し、
前記バケットは、前記レバーが第1方向に倒されたときに、前記レバーに基づき算出される前記アームに対する第1の指令値を用いて所定の直線に沿って移動し、且つ、前記レバーが前記第1方向とは異なる第2方向に倒されたときに前記所定の直線と交差する方向に移動し、
前記レバーの2つが同時に倒されたときに、前記バケットを前記所定の直線に沿って移動させる動作、前記バケットを前記所定の直線と交差する直線に沿って移動させる動作、前記旋回体の旋回動作、及び、前記バケットの開閉動作のうちの少なくとも2つが同時に実行される
ョベル。
【請求項2】
走行体と、
前記走行体上で旋回可能に保持される旋回体と、
前記旋回体に搭載され、ブーム、前記ブームに接続されるアーム、及び、前記アームに接続されるバケットを含むアタッチメントと、
棒状の形状をなし、グリップ部が立設した状態で運転席の左側前方及び運転席の右側前方の少なくとも一方に配置される前後方向及び左右方向を含む複数の方向に傾倒可能なレバーと、を有し、
前記バケットは、前記レバーが第1方向に倒されたときに、前記レバーに基づき算出される前記アームに対する第1の指令値を用いて所定の直線に沿って移動し、且つ、前記レバーが前記第1方向とは異なる第2方向に倒されたときに前記所定の直線と交差する方向に移動し、
前記バケットを前記所定の直線に沿って移動させることができる第1操作状態と、前記第1操作状態とは異なる第2操作状態とを切り替える手段を備え、
前記第2操作状態では、前記レバーが前記第1方向に倒されたときに前記ブームのみが動作し、前記レバーが前記第2方向に倒されたときに前記アームのみが動作する
ョベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はショベルに関し、より詳細には、均し整地作業、法面整形作業等を行うショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、均し整地作業を容易に行えるようにする油圧ショベルの掘削軌跡制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この掘削軌跡制御装置は、油圧ショベルのフロントアタッチメントの延在方向に水平に延びる作業許可領域を設定し、アーム先端ピンの軸心位置が作業許可領域内にある場合、アーム及びブームの動作を許可する。一方、この掘削軌跡制御装置は、作業許可領域の周りに作業抑制領域を設定し、アーム先端ピンの軸心位置が作業抑制領域内に侵入した場合、アーム引き、ブーム上げ、及びブーム下げの何れかの動作を禁止する。
【0004】
このようにして、この掘削軌跡制御装置は、フロントアタッチメントの延在方向に沿った直線引き作業や均し整地作業を操作者が容易に行えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−277543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の掘削軌跡制御装置を搭載する油圧ショベルでは、操作者は、アーム及びブームを動かすときにそれぞれに対応する個別の操作レバーを用いる。そのため、操作者は、直線引き作業や均し整地作業においてバケットを移動させる際に2つの操作レバーを同時に操作する必要がある。そのため、油圧ショベルの操作に不慣れな操作者にとっては直線引き作業や均し整地作業は依然として困難な作業であり、そのような操作者に対する支援が十分であるとはいえない。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、フロントアタッチメントをより容易に操作できるようにするショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係るショベルは、走行体と、前記走行体上で旋回可能に保持される旋回体と、前記旋回体に搭載され、ブーム、前記ブームに接続されるアーム、及び、前記アームに接続されるバケットを含むアタッチメントと、棒状の形状をなし、グリップ部が立設した状態で運転席の左側前方及び運転席の右側前方の少なくとも一方に配置される前後方向及び左右方向を含む複数の方向に傾倒可能なレバーと、を有し、前記バケットは、前記レバーが第1方向に倒されたときに、前記レバーに基づき算出される前記アームに対する第1の指令値を用いて所定の直線に沿って移動し、且つ、前記レバーが前記第1方向とは異なる第2方向に倒されたときに前記所定の直線と交差する方向に移動し、前記レバーの2つが同時に倒されたときに、前記バケットを前記所定の直線に沿って移動させる動作、前記バケットを前記所定の直線と交差する直線に沿って移動させる動作、前記旋回体の旋回動作、及び、前記バケットの開閉動作のうちの少なくとも2つが同時に実行される。
同様に、上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係るショベルは、走行体と、前記走行体上で旋回可能に保持される旋回体と、前記旋回体に搭載され、ブーム、前記ブームに接続されるアーム、及び、前記アームに接続されるバケットを含むアタッチメントと、棒状の形状をなし、グリップ部が立設した状態で運転席の左側前方及び運転席の右側前方の少なくとも一方に配置される前後方向及び左右方向を含む複数の方向に傾倒可能なレバーと、を有し、前記バケットは、前記レバーが第1方向に倒されたときに、前記レバーに基づき算出される前記アームに対する第1の指令値を用いて所定の直線に沿って移動し、且つ、前記レバーが前記第1方向とは異なる第2方向に倒されたときに前記所定の直線と交差する方向に移動し、前記バケットを前記所定の直線に沿って移動させることができる第1操作状態と、前記第1操作状態とは異なる第2操作状態とを切り替える手段を備え、前記第2操作状態では、前記レバーが前記第1方向に倒されたときに前記ブームのみが動作し、前記レバーが前記第2方向に倒されたときに前記アームのみが動作する。


【発明の効果】
【0010】
上述の手段により、本発明は、フロントアタッチメントをより容易に操作できるようにするショベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係る制御方法を実行する油圧式ショベルを示す側面図である。
図2】油圧式ショベルの駆動系の構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施例に係る制御方法で用いられる三次元直交座標系の説明図である。
図4】XZ平面におけるフロントアタッチメントの動きを説明する図である。
図5】キャビン内の運転席の上面斜視図である。
図6】自動均しモードにおいてレバー操作が行われた場合の処理の流れを示すフローチャートである。
図7】X方向移動制御の流れを示すブロック図(その1)である。
図8】X方向移動制御の流れを示すブロック図(その2)である。
図9】Z方向移動制御の流れを示すブロック図(その1)である。
図10】Z方向移動制御の流れを示すブロック図(その2)である。
図11】本発明の実施例に係る制御方法を実行するハイブリッド式ショベルの駆動系の構成例を示すブロック図である。
図12】ハイブリッド式ショベルの蓄電系の構成例を示すブロック図である。
図13】本発明の実施例に係る制御方法を実行するハイブリッド式ショベルの駆動系の別の構成例を示すブロック図である。
図14】法面整形モードで用いられる座標系の説明図(その1)である。
図15】法面整形モードで用いられる座標系の説明図(その2)である。
図16】法面整形モードでのフロントアタッチメントの動きを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施例に係る制御方法を実行する油圧式ショベルを示す側面図である。
【0013】
油圧式ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、操作体としてのブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には、操作体としてのアーム5が取り付けられ、アーム5の先端には操作体としてのエンドアタッチメントであるバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5及びバケット6は、フロントアタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
【0014】
図2は、図1の油圧式ショベルの駆動系の構成例を示すブロック図である。図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細実線でそれぞれ示されている。
【0015】
機械式駆動部としてのエンジン11の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。また、メインポンプ14は、ポンプ1回転当たりの吐出流量がレギュレータ14Aによって制御される可変容量型油圧ポンプである。
【0016】
コントロールバルブ17は、油圧式ショベルにおける油圧系の制御を行う油圧制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。
【0017】
操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続されている。
【0018】
なお、本実施例では、各操作体の姿勢を検知するための姿勢センサが各操作体に取り付けられている。具体的には、ブーム4の傾斜角度を検出するためのブーム角度センサ4Sがブーム4の支持軸に取り付けられている。また、アーム5の開閉角度を検出するためのアーム角度センサ5Sがアーム5の支持軸に取り付けられ、バケット6の開閉角度を検出するためのバケット角度センサ6Sがバケット6の支持軸に取り付けられている。ブーム角度センサ4Sは、検出したブーム角度をコントローラ30に供給する。また、アーム角度センサ5Sは、検出したアーム角度をコントローラ30に供給し、バケット角度センサ6Sは、検出したバケット角度をコントローラ30に供給する。
【0019】
コントローラ30は、油圧式ショベルの駆動制御を行う主制御部としてのショベル制御装置である。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
【0020】
次に、図3を参照しながら、本発明の実施例に係る制御方法で用いられる三次元直交座標系について説明する。なお、図3のF3Aは、油圧式ショベルの側面図であり、図3のF3Bは、油圧式ショベルの上面図である。
【0021】
F3A及びF3Bに示すように、三次元直交座標系のZ軸は、油圧式ショベルの旋回軸PCに相当し、三次元直交座標系の原点Oは、旋回軸PCと油圧式ショベルの設置面との交点に相当する。
【0022】
また、Z軸と直交するX軸は、フロントアタッチメントの延在方向に伸び、同じくZ軸と直交するY軸は、フロントアタッチメントの延在方向に垂直な方向に伸びる。すなわち、X軸及びY軸は、油圧式ショベルの旋回とともにZ軸回りを回転する。なお、油圧式ショベルの旋回角度θは、F3Bに示すような上面視で、X軸に関し反時計回り方向をプラス方向とする。
【0023】
また、F3Aに示すように、上部旋回体3に対するブーム4の取り付け位置は、ブーム回転軸としてのブームピンの位置であるブームピン位置P1で表される。同様に、ブーム4に対するアーム5の取り付け位置は、アーム回転軸としてのアームピンの位置であるアームピン位置P2で表される。また、アーム5に対するバケット6の取り付け位置は、バケット回転軸としてのバケットピンの位置であるバケットピン位置P3で表される。さらに、バケット6の先端位置はバケット先端位置P4で表される。
【0024】
また、ブームピン位置P1とアームピン位置P2とを結ぶ線分SG1の長さはブーム長さとして所定値Lで表され、アームピン位置P2とバケットピン位置P3とを結ぶ線分SG2の長さはアーム長さとして所定値Lで表され、バケットピン位置P3とバケット先端位置P4とを結ぶ線分SG3の長さはバケット長さとして所定値Lで表される。
【0025】
また、線分SG1と水平面との間に形成される角度は対地角βで表され、線分SG2と水平面との間に形成される角度は対地角βで表され、線分SG3と水平面との間に形成される角度は対地角βで表される。なお、以下では、対地角β、β、βをそれぞれブーム回転角度、アーム回転角度、バケット回転角度とも称する。
【0026】
ここで、ブームピン位置P1の三次元座標を(X、Y、Z)=(H0X、0、H0Z)とし、バケット先端位置P4の三次元座標を(X、Y、Z)=(Xe、Ye、Ze)とすると、Xe、Zeはそれぞれ式(1)及び式(2)で表される。なお、Xe及びYeはエンドアタッチメントの平面位置を表し、Zeはエンドアタッチメントの高さを表す。
【0027】
Xe=H0X+Lcosβ+Lcosβ+Lcosβ・・・(1)
Ze=H0z+Lsinβ+Lsinβ+Lsinβ・・・(2)
なお、Yeは0となる。バケット先端位置P4は、XZ平面上に存在するためである。
【0028】
また、ブームピン位置P1の座標値が固定値であるため、対地角β、β、及びβが決まれば、バケット先端位置P4の座標値が一意に決定される。同様に、対地角βが決まれば、アームピン位置P2の座標値が一意に決定され、対地角β及びβが決まれば、バケットピン位置P3の座標値が一意に決定される。
【0029】
次に、図4を参照しながら、ブーム角度センサ4S、アーム角度センサ5S、及びバケット角度センサ6Sのそれぞれの出力とブーム回転角度β、アーム回転角度β、及びバケット回転角度βとの関係について説明する。なお、図4は、XZ平面におけるフロントアタッチメントの動きを説明する図である。
【0030】
図4に示すように、ブーム角度センサ4Sはブームピン位置P1に設置され、アーム角度センサ5Sはアームピン位置P2に設置され、バケット角度センサ6Sはバケットピン位置P3に設置される。
【0031】
また、ブーム角度センサ4Sは、線分SG1と鉛直線との間に形成される角度αを検出して出力する。アーム角度センサ5Sは、線分SG1の延長線と線分SG2との間に形成される角度αを検出して出力する。バケット角度センサ6Sは、線分SG2の延長線と線分SG3との間に形成される角度αを検出して出力する。なお、図4において、角度αは、線分SG1に関し反時計回り方向をプラス方向とする。同様に、角度αは、線分SG2に関し反時計回り方向をプラス方向とし、角度αは、線分SG3に関し反時計回り方向をプラス方向とする。また、図4において、ブーム回転角度β、アーム回転角度β、バケット回転角度βは、X軸に平行な線に関し反時計回り方向をプラス方向とする。
【0032】
以上の関係から、ブーム回転角度β、アーム回転角度β、バケット回転角度βは、角度α、α、αを用いてそれぞれ式(3)、式(4)、式(5)で表される。
【0033】
β=90−α・・・(3)
β=β−α=90−α−α・・・(4)
β=β−α=90−α−α−α・・・(5)
なお、上述の通り、β、β、βは、水平面に対するブーム4、アーム5、バケット6の傾きとして表される。
【0034】
したがって、式(1)〜式(5)を用いると、角度α、α、αが決まれば、ブーム回転角度β、アーム回転角度β、バケット回転角度βが一意に決定され、且つ、バケット先端位置P4の座標値が一意に決定される。同様に、角度αが決まれば、ブーム回転角度β及びアームピン位置P2の座標値が一意に決定され、角度α、αが決まれば、アーム回転角度β及びバケットピン位置P3の座標値が一意に決定される。
【0035】
なお、ブーム角度センサ4S、アーム角度センサ5S、バケット角度センサ6Sは、ブーム回転角度β、アーム回転角度β、バケット回転角度βを直接的に検出してもよい。この場合、式(3)〜式(5)の演算を省略できる。
【0036】
次に、図5を参照しながら、本発明の実施例に係るショベルの制御方法で用いられる操作装置26について説明する。なお、図5は、キャビン10内の運転席の上面斜視図であり、運転席の左側前方にレバー26Aが配置され、運転席の右側前方にレバー26Bが配置された状態を示す。また、図5のF5Aは、通常モードの際のレバー設定を示し、図5のF5Bは、自動均しモードの際のレバー設定を示す。
【0037】
具体的には、F5Aの通常モードでは、レバー26Aを前方に倒すとアーム5が開き、レバー26Aを後方に倒すとアーム5が閉じる。また、レバー26Aを左方に倒すと上部旋回体3が上面視で反時計回りに左旋回し、レバー26Aを右方に倒すと上部旋回体3が上面視で時計回りに右旋回する。また、レバー26Bを前方に倒すとブーム4が下降し、レバー26Bを後方に倒すとブーム4が上昇する。また、レバー26Bを左方に倒すとバケット6が閉じ、レバー26Bを右方に倒すとバケット6が開く。
【0038】
一方、F5Bの自動均しモードでは、レバー26Aを前方に倒すとバケット先端位置P4のX座標及びY座標の値を不変としながらZ座標の値が減少するようブーム4及びアーム5の少なくとも一方が動く。なお、バケット6が動いてもよい。また、レバー26Aを後方に倒すとバケット先端位置P4のX座標及びY座標の値を不変としながらZ座標の値が増大するようブーム4及びアーム5の少なくとも一方が動く。なお、バケット6が動いてもよい。以下では、レバー26Aの前後方向への操作、すなわち、エンドアタッチメントとしてのバケット6のZ方向操作に応じて実行される制御を「Z方向移動制御」又は「高さ制御」とする。なお、レバー26Aの左右方向への操作は通常モードの場合と同じである。
【0039】
また、F5Bの自動均しモードでは、レバー26Bを前方に倒すとバケット先端位置P4のY座標及びZ座標の値を不変としながらX座標の値が増大するようブーム4及びアーム5の少なくとも一方が動く。なお、バケット6が動いてもよい。また、レバー26Bを後方に倒すとバケット先端位置P4のY座標及びZ座標の値を不変としながらX座標の値が減少するようブーム4及びアーム5の少なくとも一方が動く。なお、バケット6が動いてもよい。以下では、レバー26Bの前後方向への操作、すなわち、エンドアタッチメントとしてのバケット6のX方向操作に応じて実行される制御を「X方向移動制御」又は「平面位置制御」とする。
【0040】
また、F5Bの自動均しモードでは、レバー26Bを左方に倒すとバケット回転角度βが増大し、レバー26Bを右方に倒すとバケット回転角度βが減少する。すなわち、レバー26Bを左方に倒すとバケット6が閉じ、レバー26Bを右方に倒すとバケット6が開く。このように、レバー26Bの左右方向への操作によってもたらされるバケット6の動きは、通常モードの場合と同じである。しかしながら、通常モードではレバー操作量に対応する流量の作動油をバケットシリンダ9に供給することによってバケット6を動かすのに対し、自動均しモードではレバー操作量に対応するバケット回転角度βの目標値を決定することによってバケット6を動かす点で相違する。なお、自動均しモードでの制御の詳細は後述される。
【0041】
図6は、自動均しモードにおいてレバー操作が行われた場合の処理の流れを示すフローチャートである。
【0042】
最初に、コントローラ30は、キャビン10内の運転席付近に設置されるモード切り替えスイッチにおいて自動均しモードが選択されたか否かを判断する(ステップS1)。
【0043】
自動均しモードが選択されたと判断した場合(ステップS1のYES)、コントローラ30は、レバー操作量を検出する(ステップS2)。
【0044】
具体的には、コントローラ30は、例えば、圧力センサ29の出力に基づいてレバー26A、26Bの操作量を検出する。
【0045】
その後、コントローラ30は、X方向操作が行われたか否かを判断する(ステップS3)。具体的には、コントローラ30は、レバー26Bの前後方向への操作が行われたか否かを判断する。
【0046】
X方向操作が行われたと判断した場合(ステップS3のYES)、コントローラ30は、X方向移動制御(平面位置制御)を実行する(ステップS4)。
【0047】
X方向操作が行われていないと判断した場合(ステップS3のNO)、コントローラ30は、Z方向操作が行われたか否かを判断する(ステップS5)。具体的には、コントローラ30は、レバー26Aの前後方向への操作が行われたか否かを判断する。
【0048】
Z方向操作が行われたと判断した場合(ステップS5のYES)、コントローラ30は、Z方向移動制御(高さ制御)を実行する(ステップS6)。
【0049】
Z方向操作が行われていないと判断した場合(ステップS5のNO)、コントローラ30は、θ方向操作が行われたか否かを判断する(ステップS7)。具体的には、コントローラ30は、レバー26Aの左右方向への操作が行われたか否かを判断する。
【0050】
θ方向操作が行われたと判断した場合(ステップS7のYES)、コントローラ30は、旋回動作を実行する(ステップS8)。
【0051】
θ方向操作が行われていないと判断した場合(ステップS7のNO)、コントローラ30は、β方向操作が行われたか否かを判断する(ステップS9)。具体的には、コントローラ30は、レバー26Bの左右方向への操作が行われたか否かを判断する。
【0052】
β方向操作が行われたと判断した場合(ステップS9のYES)、コントローラ30は、バケット開閉動作を実行する(ステップS10)。
【0053】
なお、図6に示す制御の流れは、X方向操作、Z方向操作、θ方向操作、及びβ方向操作のうちの1つが実行される単独操作の場合のものであるが、4つの操作のうちの複数の操作が同時に実行される複合操作の場合にも同様に適用され得る。例えば、X方向移動制御、Z方向移動制御、旋回動作、及びバケット開閉動作のうちの複数の制御が同時に実行されてもよい。
【0054】
次に、図7及び図8を参照しながら、X方向移動制御(平面位置制御)の詳細について説明する。なお、図7及び図8は、X方向移動制御の流れを示すブロック図である。
【0055】
レバー26BでX方向操作が行われると、コントローラ30は、図7に示すように、レバー26BのX方向操作に応じてバケット先端位置P4のX軸方向における変位をオープン制御する。具体的には、コントローラ30は、例えば、バケット先端位置P4の移動後のX座標の値として指令値Xerを生成する。より具体的には、コントローラ30は、X方向指令値生成部CXを用いて、レバー26Bのレバー操作量Lxに応じたX方向指令値Xerを生成する。X方向指令値生成部CXは、例えば、予め登録されたテーブル等を用いてレバー操作量LxからX方向指令値Xerを導出する。また、X方向指令値生成部CXは、例えば、レバー26Bの操作量が大きい程、バケット先端位置P4の移動前のX座標の値Xeと移動後のX座標の値Xerとの差ΔXeが大きくなるように値Xerを生成する。なお、コントローラ30は、レバー26Bの操作量にかかわらずΔXeが一定となるように値Xerを生成してもよい。また、バケット先端位置P4のY座標及びZ座標の値は移動の前後で不変である。
【0056】
その後、コントローラ30は、生成した指令値Xerに基づいて、ブーム回転角度β、アーム回転角度β、及びバケット回転角度βのそれぞれの指令値βr、βr、βrを生成する。
【0057】
具体的には、コントローラ30は、上述の式(1)及び式(2)を用いて指令値βr、βr、βrを生成する。バケット先端位置P4のX座標及びZ座標の値Xe、Zeは、式(1)及び式(2)に示すように、ブーム回転角度β、アーム回転角度β、及びバケット回転角度βの関数である。また、バケット先端位置P4の移動後のZ座標の値Zerには現在値がそのまま用いられる。そのため、バケット回転角度βの指令値βrを現在値のままとすると、式(1)のXeには生成された指令値Xerが代入され、βには現在値がそのまま代入される。また、式(2)のZeには現在値がそのまま代入され、βにも現在値がそのまま代入される。その結果、2つの未知数β、βを含む式(1)及び式(2)の連立方程式を解くことによって、ブーム回転角度β及びアーム回転角度βの値が導出される。コントローラ30は、これらの導出された値を指令値βr、βrとする。
【0058】
その後、コントローラ30は、図8に示すように、ブーム回転角度β、アーム回転角度β、及びバケット回転角度βのそれぞれの値が、生成された指令値βr、βr、βrとなるようにブーム4、アーム5、及びバケット6を動作させる。なお、コントローラ30は、式(3)〜式(5)を用いて、指令値βr、βr、βrに対応する指令値αr、αr、αrを導き出してもよい。そして、コントローラ30は、ブーム角度センサ4S、アーム角度センサ5S、バケット角度センサ6Sの出力である角度α、α、αが、導出された指令値αr、αr、αrとなるようにブーム4、アーム5、及びバケット6を動作させてもよい。
【0059】
具体的には、コントローラ30は、ブーム回転角度βの現在値と指令値βrとの差Δβに対応するブームシリンダパイロット圧指令を生成する。そして、ブームシリンダパイロット圧指令に対応する制御電流をブーム電磁比例弁に対して出力する。ブーム電磁比例弁は、自動均しモードでは、ブームシリンダパイロット圧指令に対応する制御電流に応じたパイロット圧をブーム制御弁に対して出力する。なお、ブーム電磁比例弁は、通常モードでは、レバー26Bの前後方向への操作量に応じたパイロット圧をブーム制御弁に対して出力する。
【0060】
その後、ブーム電磁比例弁からのパイロット圧を受けたブーム制御弁は、メインポンプ14が吐出する作動油を、パイロット圧に対応する流れ方向及び流量でブームシリンダ7に供給する。ブームシリンダ7は、ブーム制御弁を介して供給される作動油により伸縮する。ブーム角度センサ4Sは、伸縮するブームシリンダ7によって動かされるブーム4の角度αを検出する。
【0061】
その後、コントローラ30は、ブーム角度センサ4Sが検出した角度αを式(3)に代入してブーム回転角度βを算出する。そして、ブームシリンダパイロット圧指令を生成する際に用いるブーム回転角度βの現在値として、算出した値をフィードバックする。
【0062】
なお、上述の説明は、指令値βrに基づくブーム4の動作に関するものであるが、指令値βrに基づくアーム5の動作、及び、指令値βrに基づくバケット6の動作にも同様に適用可能である。そのため、指令値βrに基づくアーム5の動作、及び、指令値βrに基づくバケット6の動作の流れについてはその説明を省略する。
【0063】
また、コントローラ30は、図7に示すように、ポンプ吐出量導出部CP1、CP2、CP3を用いて、指令値βr、βr、βrからポンプ吐出量を導出する。本実施例では、ポンプ吐出量導出部CP1、CP2、CP3は、予め登録されたテーブル等を用いて指令値βr、βr、βrからポンプ吐出量を導出する。ポンプ吐出量導出部CP1、CP2、CP3が導出したポンプ吐出量は合計され、合計ポンプ吐出量としてポンプ流量演算部に入力される。ポンプ流量演算部は、入力された合計ポンプ吐出量に基づいてメインポンプ14の吐出量を制御する。本実施例では、ポンプ流量演算部は、合計ポンプ吐出量に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を変更することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0064】
その結果、コントローラ30は、ブーム制御弁、アーム制御弁、バケット制御弁の開口制御とメインポンプ14の吐出量の制御とを実行することによって、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9に適切な量の作動油を分配できる。
【0065】
このように、コントローラ30は、指令値Xerの生成、指令値βr、βr、及びβrの生成、メインポンプ14の吐出量の制御、並びに、角度センサ4S、5S、6Sの出力に基づく操作体4、5、6のフィードバック制御を1制御サイクルとし、この制御サイクルを繰り返すことによって、バケット先端位置P4のX方向移動制御を行う。
【0066】
また、上述の説明では、バケット回転角度βの指令値βrとしてバケット回転角度βの現在値がそのまま用いられている。しかしながら、アーム回転角度βの値に応じて一意に決まる値、例えば、アーム回転角度βの値に固定値を加えた値がバケット回転角度βの指令値βrとして用いられてもよい。
【0067】
また、X方向移動制御ではバケット先端位置P4のY座標及びZ座標を固定としながらバケット先端位置P4のX座標の変位がオープン制御される。しかしながら、バケットピン位置P3のY座標及びZ座標を固定としながらバケットピン位置P3のX座標の変位がオープン制御されてもよい。この場合、指令値βrの生成、及び、バケット6の制御は省略される。
【0068】
次に、図9及び図10を参照しながら、Z方向移動制御(高さ制御)の詳細について説明する。なお、図9及び図10は、Z方向移動制御の流れを示すブロック図である。
【0069】
レバー26AでZ方向操作が行われると、コントローラ30は、図9に示すように、レバー26AのZ方向操作に応じてバケット先端位置P4のZ軸方向における変位をオープン制御する。具体的には、コントローラ30は、例えば、バケット先端位置P4の移動後のZ座標の値として指令値Zerを生成する。より具体的には、コントローラ30は、Z方向指令値生成部CZを用いて、レバー26Aの操作量Lzに応じたZ方向指令値Zerを生成する。Z方向指令値生成部CZは、例えば、予め登録されたテーブル等を用いてレバー操作量LzからZ方向指令値Zerを導出する。また、Z方向指令値生成部CZは、例えば、レバー26Aの操作量が大きい程、バケット先端位置P4の移動前のZ座標の値Zeと移動後のZ座標の値Zerとの差ΔZeが大きくなるように値Zerを生成する。なお、コントローラ30は、レバー26Aの操作量にかかわらずΔZeが一定となるように値Zerを生成してもよい。また、バケット先端位置P4のX座標及びY座標の値は移動の前後で不変である。
【0070】
その後、コントローラ30は、生成した指令値Zerに基づいて、ブーム回転角度β、アーム回転角度β、及びバケット回転角度βのそれぞれの指令値βr、βr、βrを生成する。
【0071】
具体的には、コントローラ30は、上述の式(1)及び式(2)を用いて指令値βr、βr、βrを生成する。バケット先端位置P4のX座標及びZ座標の値Xe、Zeは、式(1)及び式(2)に示すように、ブーム回転角度β、アーム回転角度β、及びバケット回転角度βの関数である。また、バケット先端位置P4の移動後のX座標の値Xerには現在値がそのまま用いられる。そのため、バケット回転角度βの指令値βrを現在値のままとすると、式(1)のXeには現在値がそのまま代入され、βにも現在値がそのまま代入される。また、式(2)のZeには生成された指令値Zerが代入され、βには現在値がそのまま代入される。その結果、2つの未知数β、βを含む式(1)及び式(2)の連立方程式を解くことによって、ブーム回転角度β及びアーム回転角度βの値が導出される。コントローラ30は、これらの導出された値を指令値βr、βrとする。
【0072】
その後、コントローラ30は、図10に示すように、ブーム回転角度β、アーム回転角度β、及びバケット回転角度βのそれぞれの値が、生成された指令値βr、βr、βrとなるようにブーム4、アーム5、及びバケット6を動作させる。なお、ブーム4、アーム5、及びバケット6の動作、及びメインポンプ14の吐出量の制御については、X方向移動制御で説明した内容がそのまま適用可能であるため、ここではその説明を省略する。
【0073】
このように、コントローラ30は、指令値Zerの生成、指令値βr、βr、及びβrの生成、メインポンプ14の吐出量の制御、並びに、角度センサ4S、5S、6Sの出力に基づく操作体4、5、6のフィードバック制御を1制御サイクルとし、この制御サイクルを繰り返すことによって、バケット先端位置P4のZ方向移動制御を行う。
【0074】
また、上述の説明では、バケット回転角度βの指令値βrとしてバケット回転角度βの現在値がそのまま用いられている。しかしながら、アーム回転角度βの値に応じて一意に決まる値、例えば、アーム回転角度βの値に固定値を加えた値がバケット回転角度βの指令値βrとして用いられてもよい。
【0075】
また、Z方向移動制御ではバケット先端位置P4のX座標及びY座標を固定としながらバケット先端位置P4のZ座標の変位がオープン制御される。しかしながら、バケットピン位置P3のX座標及びY座標を固定としながらバケットピン位置P3のZ座標の変位がオープン制御されてもよい。この場合、指令値βrの生成、及び、バケット6の制御は省略される。
【0076】
以上に説明した通り、本発明の実施例に係るショベルの制御方法は、レバーの操作量を、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9のそれぞれの伸縮制御ではなく、バケット先端位置P4の位置制御に用いる。そのため、本制御方法は、バケット回転角度β、並びに、バケット先端位置P4のX座標及びY座標の値を維持しながら、Z座標の値を増減させる動作を1つのレバーの操作で実現させることができる。また、バケット回転角度β、並びに、バケット先端位置P4のY座標及びZ座標の値を維持しながら、X座標の値を増減させる動作を1つのレバーの操作で実現させることができる。
【0077】
また、本制御方法は、エンドアタッチメントの平面位置とエンドアタッチメントの高さをバケットピン位置P3とし、レバー操作量をバケットピン位置P3の位置制御に用いることもできる。この場合、本制御方法は、バケットピン位置P3のX座標及びY座標の値を維持しながら、Z座標の値を増減させる動作を1つのレバーの操作で実現させることができる。また、バケットピン位置P3のY座標及びZ座標の値を維持しながら、X座標の値を増減させる動作を1つのレバーの操作で実現させることができる。この場合、バケットピン位置P3の三次元座標を(X、Y、Z)=(XP3、YP3、ZP3)とすると、XP3、ZP3はそれぞれ式(6)及び式(7)で表される。
【0078】
P3=H0X+Lcosβ+Lcosβ・・・(6)
P3=H0z+Lsinβ+Lsinβ・・・(7)
なお、YP3は0となる。バケットピン位置P3は、XZ平面上に存在するためである。
【0079】
また、この場合、X方向移動制御で指令値Xerから指令値βrが生成されることはなく、Z方向移動制御で指令値Zerから指令値βrが生成されることはない。
【0080】
次に、図11を参照しながら、本発明の実施例に係る制御方法を実行するハイブリッドショベルについて説明する。なお、図11は、ハイブリッドショベルの駆動系の構成例を示すブロック図である。図11において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細実線でそれぞれ示されている。また、図11の駆動系は、電動発電機12、変速機13、インバータ18、及び蓄電系120を備える点、旋回用油圧モータ21Bの代わりに、インバータ20、旋回用電動機21、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24で構成される負荷駆動系を備える点で図2の駆動系と相違する。但し、その他の点において図2の駆動系と共通する。そのため、共通点の説明を省略しながら相違点を詳細に説明する。
【0081】
図11において、機械式駆動部としてのエンジン11と、発電も行うアシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてのメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。
【0082】
電動発電機12には、インバータ18を介して、蓄電器としてのキャパシタを含む蓄電系(蓄電装置)120が接続されている。
【0083】
蓄電系120は、インバータ18とインバータ20との間に配置されている。これにより、電動発電機12及び旋回用電動機21の少なくとも一方が力行運転を行っている際には、蓄電系120は力行運転に必要な電力を供給するとともに、少なくとも一方が発電運転を行っている際には、蓄電系120は発電運転によって発生した電力を電気エネルギとして蓄積する。
【0084】
図12は蓄電系120の構成例を示すブロック図である。蓄電系120は、蓄電器としてのキャパシタ19と昇降圧コンバータ100とDCバス110とを含む。第2の蓄電器としてのDCバス110は、第1の蓄電器としてのキャパシタ19と電動発電機12と旋回用電動機21との間での電力の授受を制御する。キャパシタ19には、キャパシタ電圧値を検出するためのキャパシタ電圧検出部112と、キャパシタ電流値を検出するためのキャパシタ電流検出部113が設けられている。キャパシタ電圧検出部112及びキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電圧値及びキャパシタ電流値は、コントローラ30に供給される。また、上述では、蓄電器の例としてキャパシタ19を示したが、キャパシタ19の代わりにリチウムイオン電池等の充電可能な二次電池、リチウムイオンキャパシタ、又は、電力の授受が可能なその他の形態の電源を蓄電器として用いてもよい。
【0085】
昇降圧コンバータ100は、電動発電機12及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り換える制御を行う。DCバス110は、インバータ18、20と昇降圧コンバータ100との間に配設されており、キャパシタ19、電動発電機12、旋回用電動機21の間での電力の授受を行う。
【0086】
図11に戻り、インバータ20は、旋回用電動機21と蓄電系120との間に設けられ、コントローラ30からの指令に基づき、旋回用電動機21に対して運転制御を行う。これにより、インバータ20は、旋回用電動機21が力行運転をしている際には、必要な電力を蓄電系120から旋回用電動機21に供給する。また、旋回用電動機21が発電運転をしている際には、旋回用電動機21により発電された電力を蓄電系120のキャパシタ19に蓄電する。
【0087】
旋回用電動機21は、力行運転及び発電運転の双方が可能な電動機であればよく、上部旋回体3の旋回機構2を駆動するために設けられている。力行運転の際には、旋回用電動機21の回転駆動力が減速機24にて増幅され、上部旋回体3が加減速制御され回転運動を行う。また、発電運転の際には、上部旋回体3の慣性回転は、減速機24にて回転数が増加されて旋回用電動機21に伝達され、回生電力を発生させることができる。ここでは、旋回用電動機21は、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号によりインバータ20によって交流駆動される電動機である。旋回用電動機21は、例えば、磁石埋込型のIPMモータで構成することができる。これにより、より大きな誘導起電力を発生させることができるので、回生時に旋回用電動機21にて発電される電力を増大させることができる。
【0088】
なお、蓄電系120のキャパシタ19の充放電制御は、キャパシタ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(力行運転又は発電運転)、旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づき、コントローラ30によって行われる。
【0089】
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転位置及び回転角度を検出するセンサである。具体的には、レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転前の回転軸21Aの回転位置と、左回転又は右回転した後の回転位置との差を検出することにより、回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出する。旋回用電動機21の回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出することにより、旋回機構2の回転角度及び回転方向が導出される。
【0090】
メカニカルブレーキ23は、機械的な制動力を発生させる制動装置であり、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させる。このメカニカルブレーキ23は、電磁式スイッチにより制動/解除が切り替えられる。この切り替えは、コントローラ30によって行われる。
【0091】
旋回変速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転を減速して旋回機構2に機械的に伝達する変速機である。これにより、力行運転の際には、旋回用電動機21の回転力を増力させ、より大きな回転力を上部旋回体3へ伝達することができる。これとは逆に、回生運転の際には、上部旋回体3で発生した回転を増速して旋回用電動機21に機械的に伝達することができる。
【0092】
旋回機構2は、旋回用電動機21のメカニカルブレーキ23が解除された状態で旋回可能となり、これにより、上部旋回体3が左方向又は右方向に旋回される。
【0093】
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動アシスト運転又は発電運転の切り換え)を行うとともに、昇降圧制御部としての昇降圧コンバータ100を駆動制御することによるキャパシタ19の充放電制御を行う。コントローラ30は、キャパシタ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動アシスト運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切り換え制御を行い、これによりキャパシタ19の充放電制御を行う。また、コントローラ30は、キャパシタ19に充電する量(充電電流又は充電電力)の制御も行う。
【0094】
この昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切り換え制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、キャパシタ電圧検出部112によって検出されるキャパシタ電圧値、及びキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電流値に基づいて行われる。
【0095】
アシストモータである電動発電機12が発電した電力は、インバータ18を介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。また、旋回用電動機21が回生運転して生成した回生電力は、インバータ20を介して蓄電系120のDCバス110に供給され、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給される。
【0096】
次に、図13を参照しながら、本発明の実施例に係る制御方法を実行するハイブリッドショベルの別の例について説明する。なお、図13は、ハイブリッドショベルの駆動系の構成例を示すブロック図である。図13において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細実線でそれぞれ示されている。また、図13の駆動系は、エンジン11及び電動発電機12の2つの出力軸が変速機13を介してメインポンプ14に接続される構成(パラレル方式)の代わりに、インバータ18Aを介して電気的に駆動されるポンプ用電動機400の出力軸がメインポンプ14に接続される構成(シリアル方式)を採用する点で図11の駆動系と相違する。但し、その他の点において図11の駆動系と共通する。
【0097】
本発明の実施例に係る制御方法は、以上のような構成を有するハイブリッド式ショベルにも適用可能である。
【0098】
次に、図14を参照して、自動均しモードの一例である法面整形モードについて説明する。なお、図14は、法面整形モードで用いられる座標系の説明図であり、図3のF3Aに対応する。また、法面整形モードの際のレバー設定は、図5のF5Bに示す自動均しモードの際のレバー設定と同じである。また、図14は、法面に平行なU軸、法面に垂直なW軸を含むUVW三次元直交座標系を用いた点で、水平面に平行なX軸、水平面に垂直なZ軸を含むXYZ三次元直交座標系を用いる図3のF3Aと相違するがその他の点で共通する。なお、法面角度γは、法面整形モードを実行する前に操作者によって法面角度入力部を介して設定され得る。また、図14では、W軸方向における負の方向へ、すなわち、ショベルから見て下り勾配となるように、法面が形成される場合を示す。
【0099】
ここで、ブームピン位置P1の三次元座標を(U、V、W)=(H0U、0、H0W)とし、バケット先端位置P4の三次元座標を(U、V、W)=(Ue、Ve、We)とすると、Ue、Weは、上述の(1)式及び(2)式と同様に、それぞれ式(1)'及び式(2)'で表される。なお、Ue及びVeはエンドアタッチメントのUV平面における位置を表し、WeはエンドアタッチメントのUV平面からの距離を表す。
【0100】
Ue=H0U+Lcosβ'+Lcosβ'+Lcosβ'・・・(1)'
We=H0W+Lsinβ'+Lsinβ'+Lsinβ'・・・(2)'
なお、Veは0となる。バケット先端位置P4は、UW平面上に存在するためである。また、角度β'は、対地角βに法面角度γを加算した角度である。同様に、角度β'は、対地角βに法面角度γを加算した角度であり、角度β'は、対地角βに法面角度γを加算した角度である。
【0101】
また、バケットピン位置P3の三次元座標を(U、V、W)=(UP3、VP3、WP3)とすると、UP3、WP3は、上述の(6)式及び(7)式と同様に、それぞれ式(6)'及び式(7)'で表される。
【0102】
P3=H0U+Lcosβ'+Lcosβ'・・・(6)'
P3=H0W+Lsinβ'+Lsinβ'・・・(7)'
法面整形モードでは、レバー26Bを前方に倒すと、バケット先端位置P4のV座標の値Ve及びW座標の値Weを不変としながら、U座標の値Ueが増大するよう、ブーム4、アーム5、及びバケット6の少なくとも1つが動く。
【0103】
また、法面整形モードでは、レバー26Bを後方に倒すと、バケット先端位置P4のV座標の値Ve及びW座標の値Weを不変としながら、U座標の値Ueが減少するよう、ブーム4、アーム5、及びバケット6の少なくとも1つが動く。
【0104】
つまり、レバー26Bの前後方向への操作(図5のF5BのX方向操作に相当し、以下、「U方向操作」とする。)に応じて、バケット先端位置P4はU軸方向へ動かされる。また、レバー26Aの前後方向への操作(図5のF5BのZ方向操作に相当し、以下、「W方向操作」とする。)に応じてバケット先端位置P4はW軸方向へ動かされる。なお、UVW三次元直交座標系とXYZ三次元直交座標系とを組み合わせて、コントローラ30が、操作者のレバー26Bの前後方向への操作に応じてバケット先端位置P4をU軸方向へ動かし、操作者のレバー26Aの前後方向への操作に応じてバケット先端位置P4をZ軸方向へ動かすように設定することもできる。
【0105】
なお、法面整形モードにおけるこのようなレバー26A、26Bの前後方向への操作、すなわち、エンドアタッチメントとしてのバケット6のW方向操作、U方向操作に応じて実行される制御を「法面位置制御」と称する。また、法面整形モードにおけるレバー26Aの左右方向への操作、及び、レバー26Bの左右方向への操作に応じて実行される制御は、自動均しモードの場合と同じである。
【0106】
このようにして、操作者は、自動均しモードにおけるX方向移動制御(平面位置制御)の一例としての、法面整形モードにおける法面位置制御を利用して、所望の法面に沿ったバケット6の移動を容易に実現することができる。
【0107】
次に、図15及び図16を参照して、法面整形モードの別の一例について説明する。なお、図15は、法面整形モードで用いられる座標系の説明図であり、図3のF3Aに対応する。また、図16は、XZ平面におけるフロントアタッチメントの動きを説明する図であり、図4に対応する。また、法面整形モードの際のレバー設定は、図5のF5Bに示す自動均しモードの際のレバー設定と同じである。また、図15図16は、法面角度γとバケット先端位置P4の推移とを図示した点で、図3のF3A、図4と相違するがその他の点で共通する。なお、法面角度γは、法面整形モードを実行する前に操作者によって設定され得る。また、図15図16では、Z軸方向における負の方向へ、すなわち、ショベルから見て下り勾配となるように、法面が形成される場合を示す。
【0108】
法面整形モードでは、レバー26Bを前方に倒すと、バケット先端位置P4のY座標の値Yeを不変とし、且つ、角度γの法面SF1とバケット先端位置P4との間の距離を不変としながら、X座標の値Xeが増大するよう、ブーム4、アーム5、及びバケット6の少なくとも1つが動く。すなわち、バケット先端位置P4が法面SF1に平行な平面SF2上をY軸に垂直な方向で且つショベルから遠ざかる方向に移動する。このとき、Z座標の値Zeは、ショベルから見て上り勾配の法面の場合に増大し、ショベルから見て下り勾配の法面の場合に減少する。なお、図15は、ショベルから見て下り勾配の法面SF1を示す。
【0109】
また、法面整形モードでは、レバー26Bを後方に倒すと、バケット先端位置P4のY座標の値Yeを不変とし、且つ、法面SF1とバケット先端位置P4との間の距離を不変としながら、X座標の値Xeが減少するよう、ブーム4、アーム5、及びバケット6の少なくとも1つが動く。すなわち、バケット先端位置P4が法面SF1に平行な平面SF2上をY軸に垂直な方向で且つショベルに近づく方向に移動する。このとき、Z座標の値Zeは、ショベルから見て上り勾配の法面の場合に減少し、ショベルから見て下り勾配の法面の場合に増大する。
【0110】
ここで、現時点のバケット先端位置P4の三次元座標を(X、Y、Z)=(Xe、Ye、Ze)とし、移動後のバケット先端位置P4'の三次元座標を(X、Y、Z)=(Xe'、Ye'、Ze')とし、X軸方向の移動量をΔXe(=Xe'−Xe)とすると、Z軸方向の移動量ΔZe(=Ze'−Ze)は、式(8)で表される。
【0111】
ΔZe=ΔXe×tanγ・・・(8)
また、法面整形モードでは、バケット先端位置P4の位置制御の代わりに、バケットピン位置P3の位置制御が実行されてもよい。この場合、バケットピン位置P3のY座標の値YP3を不変とし、且つ、角度γの法面SF1とバケットピン位置P3との間の距離を不変としながら、X座標の値Xp3が変化するよう、ブーム4、アーム5、及びバケット6の少なくとも1つが動く。すなわち、バケットピン位置P3が法面SF1に平行な平面上をY軸に垂直な方向に移動する。
【0112】
ここで、現時点のバケットピン位置P3の三次元座標を(X、Y、Z)=(XP3、YP3、ZP3)とし、移動後のバケットピン位置P3'の三次元座標を(X、Y、Z)=(Xp3、Yp3'、Zp3')とし、X軸方向の移動量をΔXp3(=Xp3'−Xp3)とすると、Z軸方向の移動量ΔZp3(=Zp3'−Zp3)は、式(9)で表される。
【0113】
ΔZp3=ΔXp3×tanγ・・・(9)
なお、本実施例では、法面整形モードにおけるこのようなレバー26Bの前後方向への操作、すなわち、エンドアタッチメントとしてのバケット6のX方向操作に応じて実行される制御を「法面位置制御」と称する。また、法面整形モードにおけるレバー26Aの操作、及び、レバー26Bの左右方向への操作に応じて実行される制御は、自動均しモードの場合と同じである。
【0114】
このようにして、操作者は、自動均しモードにおけるX方向移動制御(平面位置制御)の一例としての、法面整形モードにおける法面位置制御を利用して、所望の法面に沿ったバケット6の移動を容易に実現することができる。
【0115】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0116】
例えば、上述の実施例では、エンドアタッチメントとしてバケット6を用いるが、リフティングマグネット、ブレーカ等が用いられてもよい。
【0117】
また、本願は、2012年6月8日に出願した日本国特許出願2012−131013号に基づく優先権を主張するものでありその日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0118】
1・・・下部走行体 1A、1B・・・走行用油圧モータ 2・・・旋回機構 3・・・上部旋回体 4・・・ブーム 4S・・・ブーム角度センサ 5・・・アーム 5S・・・アーム角度センサ 6・・・バケット 6S・・・バケット角度センサ 7・・・ブームシリンダ 8・・・アームシリンダ 9・・・バケットシリンダ 10・・・キャビン 11・・・エンジン 12・・・電動発電機 13・・・変速機 14・・・メインポンプ 14A・・・レギュレータ 15・・・パイロットポンプ 16・・・高圧油圧ライン 17・・・コントロールバルブ 18・・・インバータ 19・・・キャパシタ 20・・・インバータ 21・・・旋回用電動機 21A・・・回転軸 22・・・レゾルバ 23・・・メカニカルブレーキ 24・・・旋回変速機 25・・・パイロットライン 26・・・操作装置 26A、26B・・・レバー 26C・・・ペダル 27、28・・・油圧ライン 29・・・パイロット圧センサ 30・・・コントローラ 100・・・昇降圧コンバータ 110・・・DCバス 111・・・DCバス電圧検出部 112・・・キャパシタ電圧検出部 113・・・キャパシタ電流検出部 120・・・蓄電系 CP1、CP2、CP3・・・ポンプ吐出量導出部 CX・・・X方向指令値生成部 CZ・・・Z方向指令値生成部
図1
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