(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記正極側ツインリレーまたは前記負極側ツインリレーで電源側の固着故障が発生した可能性があると判定した場合に、絶縁抵抗の算出を複数回行ない、算出された絶縁抵抗の値が変動した場合に、固着故障ではなく、地絡が発生したと判定することを特徴とする請求項1に記載の地絡検出装置。
前記制御部は、前記正極側ツインリレーまたは前記負極側ツインリレーで電源側の固着故障が発生した可能性があると判定した場合に、絶縁抵抗の算出を複数回行ない、算出された絶縁抵抗の値が変動しない場合に、前記正極側ツインリレーまたは前記負極側ツインリレーで電源側固着が発生したと判定することを特徴とする請求項1または2に記載の地絡検出装置。
前記制御部は、前記正極側ツインリレーまたは前記負極側ツインリレーで固着が発生したと判定した場合に、さらに氷結可能性を判定することを特徴とする請求項3または4に記載の地絡検出装置。
【背景技術】
【0002】
駆動源としてエンジンと電気モータとを備えるハイブリッド車や、電気自動車のような車両においては、車体上に搭載したバッテリを充電し、バッテリから供給される電気エネルギーを利用して推進力を発生する。一般に、バッテリ関連の電源回路は、200V以上の高電圧を扱う高電圧回路として構成されており、安全性確保ため、バッテリを含む高電圧回路は接地の基準電位点となる車体から電気的に絶縁された非接地構成となっている。
【0003】
非接地の高電圧バッテリを搭載した車両では、高電圧バッテリが設けられた系、具体的には、高電圧バッテリからモータに至るメインの電源系と車体との絶縁状態(地絡)を監視するために地絡検出装置が備えられている。地絡検出装置は、フライングキャパシタと呼ばれるコンデンサを利用した方式が広く用いられている。
【0004】
図8は、フライングキャパシタ方式の従来の地絡検出装置の回路例を示す図である。本図に示すように地絡検出装置400は、非接地の高電圧バッテリ300と接続し、高電圧バッテリ300が設けられた系の地絡を検出する装置である。ここで、高電圧バッテリ300の正極側と接地間の絶縁抵抗をRLpと表し、負極側と接地間の絶縁抵抗をRLnと表すものとする。正極側絶縁抵抗RLpと負極側絶縁抵抗RLnとの合成抵抗が絶縁抵抗RLとなる。
【0005】
本図に示すように、地絡検出装置400は、フライングキャパシタとして動作する検出用コンデンサC1を備えている。また、計測経路を切り換えるとともに、検出用コンデンサC1の充電および放電を制御するために、検出用コンデンサC1の周辺に4つのスイッチング素子S1〜S4を備えている。さらに、検出用コンデンサC1の充電電圧に相当する計測用の電圧をサンプリングするためのスイッチング素子Saを備えている。
【0006】
地絡検出装置400では、絶縁抵抗RLを算出するために、V0計測期間→Vc1n計測期間→V0計測期間→Vc1p計測期間を1サイクルとして計測動作を繰り返す。いずれの計測期間とも、計測対象の電圧で検出用コンデンサC1を充電してから、検出用コンデンサC1の充電電圧の計測を行なう。そして、次の計測のために検出用コンデンサC1の放電を行なう。
【0007】
V0計測期間では、高電圧バッテリ300電圧に相当する電圧を計測する。このため、スイッチング素子S1、S2をオンにし、スイッチング素子S3、S4をオフにして、検出用コンデンサC1を充電する。すなわち、
図9(a)に示すように、高電圧バッテリ300、充電抵抗R1、検出用コンデンサC1が計測経路となる。
【0008】
検出用コンデンサC1の充電電圧の計測時には、
図9(b)に示すように、スイッチング素子S1、S2をオフにし、スイッチング素子S3、S4をオンにするとともに、スイッチング素子Saをオンにして制御装置420でサンプリングを行なう。その後、
図9(c)に示すように、スイッチング素子Saをオフにして次の計測のために検出用コンデンサC1の放電を行なう。検出用コンデンサC1の充電電圧の計測時、検出用コンデンサC1の放電時の動作は他の計測期間においても同様である。
【0009】
Vc1n計測期間では、負極側絶縁抵抗RLnの影響を反映した電圧を計測する。このため、スイッチング素子S1、S4をオンにし、スイッチング素子S2、S3をオフにして、検出用コンデンサC1を充電する。すなわち、
図10(a)に示すように、高電圧バッテリ300、充電抵抗R1、検出用コンデンサC1、負極接地側抵抗R4、接地、負極側絶縁抵抗RLnが計測経路となる。
【0010】
Vc1p計測期間では、正極側絶縁抵抗RLpの影響を反映した電圧を計測する。このため、スイッチング素子S2、S3をオンにし、スイッチング素子S1、S4をオフにして、検出用コンデンサC1を充電する。すなわち、
図10(b)に示すように、高電圧バッテリ300、正極側絶縁抵抗RLp、接地、正極接地側抵抗R3、充電抵抗R1、検出用コンデンサC1が計測経路となる。
【0011】
これらの計測期間で得られたV0、Vc1n、Vc1pから算出される(Vc1p+Vc1n)/V0に基づいて、(RLp×RLn)/(RLp+RLn)を求めることができることが知られている。このため、地絡検出装置400内の制御装置420は、V0、Vc1n、Vc1pを測定することにより、正極側絶縁抵抗RLp、負極側絶縁抵抗RLnの合成抵抗である絶縁抵抗RLを算出することができる。そして、絶縁抵抗RLが所定の判定基準レベル以下となった場合に、地絡が発生しているものとして判定し、警報を出力する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る地絡検出装置100の構成を示すブロック図である。本図に示すように地絡検出装置100は、非接地の高電圧バッテリ300と接続し、高電圧バッテリ300が設けられた系の地絡を検出するフライングキャパシタ方式の装置である。ここで、高電圧バッテリ300の正極側と接地間の絶縁抵抗をRLpと表し、負極側と接地間の絶縁抵抗をRLnと表すものとする。なお、高電圧とは、車両内の各種機器(ランプ、ワイパー等)を駆動させるための低電圧バッテリ(一般的には12V)よりも高い電圧を意味し、高電圧バッテリ300は、車両走行の駆動用に用いられるバッテリである。
【0019】
高電圧バッテリ300は、リチウムイオン電池等のように充電可能なバッテリにより構成されており、図示しない高圧バスバーを経由して放電し、メインリレー、インバータ等を介して接続された電気モータを駆動する。また、回生時や充電設備接続時には、高圧バスバーを介して充電を行なう。
【0020】
高電圧バッテリ300の正極側電源ライン301と接地電極との間および負極側電源ライン302と接地電極との間には、電源の高周波ノイズを除去したり動作を安定化するために、それぞれYコンデンサ(ライン・バイパス・コンデンサ)と呼ばれるコンデンサCYp、CYnが接続されている。ただし、Yコンデンサは省くようにしてもよい。
【0021】
本図に示すように、地絡検出装置100は、フライングキャパシタとして動作する検出用コンデンサC1を備えるとともに、検出用コンデンサC1の充電電圧に相当する計測用の電圧をサンプリングするためのスイッチング素子Saを備えている。ただし、スイッチング素子Saは省くことも可能である。また、マイクロコンピュータ等で構成された制御装置120を備えている。制御装置120は、あらかじめ組み込まれたプログラムを実行することにより、後述するスイッチ切り換え処理等の地絡検出装置100に必要とされる各種制御を実行する。
【0022】
図9、
図10を参照して説明したように、各計測期間の計測経路では、正極側電源ライン301系のスイッチング素子S1とスイッチング素子S3とが同時にオンになることは無く、負極側電源ライン302系のスイッチング素子S2とスイッチング素子S4とが同時にオンになることは無い。すなわち、スイッチング素子S1とスイッチング素子S3とは排他的に切り換えられ、スイッチング素子S2とスイッチング素子S4とは排他的に切り換えられる。
【0023】
このため、地絡検出装置100では、正極側電源ライン301系のスイッチング素子として、正極側C接点スイッチ111を用い、負極側電源ライン302系のスイッチング素子として、負極側C接点スイッチ112を用いている。正極側C接点スイッチ111、負極側C接点スイッチ112は、例えば、高耐圧−小信号のメカニカルリレーやリードリレーで構成することができる。
【0024】
正極側C接点スイッチ111、負極側C接点スイッチ112とも共通接点cが検出用コンデンサC1側に配置される。具体的には、正極側C接点スイッチ111の共通接点cは、ダイオードD1と充電抵抗R1の経路と、放電抵抗R2とダイオードD2との経路との並列回路を経由して検出用コンデンサC1の正側極板に接続し、負極側C接点スイッチ112の共通接点cは、検出用コンデンサC1の負側極板に接続している。充電時の経路となるダイオードD1は、正極側C接点スイッチ111から検出用コンデンサC1が順方向となる向きで接続され、放電時の経路となるダイオードD2は逆方向で接続されている。
【0025】
正極側C接点スイッチ111の接点aは、正極電源側抵抗Raを介して正極側電源ライン301に接続し、負極側C接点スイッチ112の接点aは、負極電源側抵抗Rbを介して正極側電源ライン301に接続している。すなわち、いずれのC接点スイッチとも高電圧バッテリ300側を接点aとしている。
【0026】
正極側C接点スイッチ111の接点bは、スイッチング素子Saに接続するとともに、他端が接地された正極接地側抵抗R3と接続している。負極側C接点スイッチ112の接点bは、他端が接地された負極接地側抵抗R4と接続している。すなわち、いずれのC接点スイッチとも制御装置120側(接地側)を接点bとしている。
【0027】
図1に示すように、正極側C接点スイッチ111、負極側C接点スイッチ112は、制御装置120により独立に切換制御される。制御装置120は、正極側C接点スイッチ111、負極側C接点スイッチ112、スイッチング素子Saを独立に切換制御することにより、計測経路を切り換えるとともに、検出用コンデンサC1の充電および放電、充電電圧の計測を行なう。
【0028】
具体的には、V0計測期間では、正極側C接点スイッチ111、負極側C接点スイッチ112とも接点a側に切り換え、高電圧バッテリ300、正極電源側抵抗Ra、充電抵抗R1、検出用コンデンサC1、負極電源側抵抗Rbという計測経路を形成する。
【0029】
検出用コンデンサC1の充電電圧の計測時には、正極側C接点スイッチ111、負極側C接点スイッチ112とも接点b側に切り換え、スイッチング素子Saをオンにする。その後、スイッチング素子Saをオフにして次の計測のために主として放電抵抗R2を利用して検出用コンデンサC1の放電を行なう。検出用コンデンサC1の充電電圧の計測時、放電時の動作は他の計測期間においても同様である。
【0030】
Vc1n計測期間では、正極側C接点スイッチ111を接点a側、負極側C接点スイッチ112を接点b側に切り換え、高電圧バッテリ300、正極電源側抵抗Ra、充電抵抗R1、検出用コンデンサC1、負極接地側抵抗R4、接地、負極側絶縁抵抗RLnという計測経路を形成する。
【0031】
Vc1p計測期間では、正極側C接点スイッチ111を接点b側、負極側C接点スイッチ112を接点a側に切り換え、高電圧バッテリ300、正極側絶縁抵抗RLp、接地、正極接地側抵抗R3、充電抵抗R1、検出用コンデンサC1、負極電源側抵抗Rbという計測経路を形成する。
【0032】
地絡検出装置100において、正極電源側抵抗Ra、負極電源側抵抗Rb、充電抵抗R1は、例えば、数100kΩ程度の高抵抗とし、放電抵抗R2、正極接地側抵抗R3、負極接地側抵抗R4は、例えば、数kΩ程度の低抵抗とする。
【0033】
充電抵抗R1とは別に正極側に正極電源側抵抗Raを配置し、負極側に負極電源側抵抗Rbを配置するとともに、正極側C接点スイッチ111、負極側C接点スイッチ112をC接点リレーで構成するため、いずれかのC接点スイッチで固着が生じたとしても、高電圧バッテリ300と制御装置120との間には、高抵抗である正極電源側抵抗Raあるいは負極電源側抵抗Rbのいずれかが介在して電流制限がかかる。このため、制御装置120および通電回路を保護することができる。
【0034】
さらに、仮にいずれかのC接点スイッチで接点aと接点bとがショートしたとしても、高電圧バッテリ300と制御装置120との間には、高抵抗である正極電源側抵抗Raあるいは負極電源側抵抗Rbのいずれかが介在して電流制限がかかるため、制御装置120を保護することができる。
【0035】
また、正極側絶縁抵抗RLpおよび負極側絶縁抵抗RLnについて地絡と判定する基準値をRLsとすると、正極側絶縁抵抗RLpおよび負極側絶縁抵抗RLnが基準値RLsのとき、V0計測期間、Vc1n計測期間、Vc1p計測期間で経路上の抵抗値が等しくなるように、
R1+Ra+Rb=R1+R4+Ra+RLn=R1+R3+Rb+RLp
という関係で各抵抗値を定めることにより、検出用コンデンサC1にセラミックコンデンサを用いた場合であっても、DCバイアス特性の影響で地絡検出精度が低下することを防ぐことができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の地絡検出装置100は、地絡検出のための測定経路の切り換えスイッチに、コスト増の起因となる光MOS−FETを用いていないため、スイッチング素子に起因するコスト増を抑制することができる。
【0037】
ところで、C接点スイッチはメカニカルな接点構成のため、開閉耐久回数に制限がある。特に、通電電流や印加電圧が大きいほど、開閉耐久回数に与える影響が大きくなる。そこで、開閉耐久回数を向上させるために、
図2に示すように、正極側C接点スイッチ111を1つの制御で同時に切り換わる正極側ツインリレー111T(111a、111b)で構成し、負極側C接点スイッチ112を1つの制御で同時に切り換わる負極側ツインリレー112T(112a、112b)で構成するとともに、ツインリレーの個々のリレーに並列に電流が分岐する経路を設ける。
【0038】
これにより、それぞれのC接点スイッチの通電電流が分流されるため、C接点スイッチの電流負荷を軽減することができる。ツインリレーは、例えば、1コイル2C接点のリレーを用いることができる。正極側ツインリレー111T、負極側ツインリレー112Tの切換制御は、上述の正極側C接点スイッチ111、負極側C接点スイッチ112と同様である。
【0039】
この場合、並列接続されたリレーの分流比率は、ツインリレーを構成するリレーの微小な接触抵抗に基づくため、個体毎のバラツキ等により一方のリレーに負荷が偏ってしまう場合がある。
【0040】
そこで、
図3に示すように、それぞれのリレーの接点c側経路に小さな分流抵抗を接続してもよい。この場合、分流比率は分流抵抗にほぼ基づくため、分流抵抗値を揃えることでツインリレーを構成する一方のリレーへの負荷の偏りを防止することができる。
【0041】
本図の例では、正極側ツインリレー111Tを構成するリレー111aの経路に分流抵抗Ra21(<<R1)を接続し、リレー111bの経路に分流抵抗Ra22(=Ra21)を接続している。また、負極側ツインリレー112Tを構成するリレー112aの経路に分流抵抗Rb21(<<R1)を接続し、リレー112bの経路に分流抵抗Rb22(=Rb21)を接続している。
【0042】
また、
図4に示すように、分流抵抗を各リレーの接点a側経路および接点b側経路に設けてもよい。本図の例では、抵抗Ra11をリレー111aの接点a側に接続し、抵抗Ra12をリレー111bの接点a側に接続しており、抵抗Rc1をリレー111aの接点b側に接続し、抵抗Rc2をリレー111bの接点b側に接続している。また、抵抗Rb11をリレー112aの接点a側に接続し、抵抗Rb12をリレー112bの接点a側に接続しており、抵抗Rd1をリレー112aの接点b側に接続し、抵抗Rd2をリレー112bの接点b側に接続している。
【0043】
ここで、抵抗Ra11=抵抗Ra12=抵抗Rb11=抵抗Rb12>>抵抗Rc1=抵抗Rc2=抵抗Rd1=抵抗Rd2>>リレーの接触抵抗とする。
【0044】
本図の例では、さらに、抵抗Ra11と抵抗Ra12の並列抵抗で正極電源側抵抗Raの役割も担い、抵抗Rb11と抵抗Rb12の並列抵抗で負極電源側抵抗Rbの役割も担っている。このため、
図1と同じ抵抗とする場合には、抵抗Ra11=抵抗Ra12=抵抗Rb11=抵抗Rb12=2×正極電源側抵抗Ra=2×負極電源側抵抗Rbとする。
【0045】
これにより、いずれかのリレーが固着したり、ショートしても、抵抗Ra11、抵抗Ra12、抵抗Rb11、抵抗Rb12のいずれかで通電電流が制限される。このため、制御装置120を保護することができることに加え、測定経路を流れる電流が増加して絶縁抵抗が小さく検出されることによる地絡誤検出を防ぐことができる。なお、抵抗Rc1、抵抗Rc2、抵抗Rd1、抵抗Rd2は、
図3に示した抵抗Ra21、Ra22、Rb21、Rb22に換えてもよい。
【0046】
次に、ツインリレーを用いた場合のスイッチ故障検出について説明する。ツインリレーの場合には、スイッチ部分で並列回路が形成される。このため、ツインリレーを構成する一方のリレーで固着故障が発生した場合、正常な場合とは異なる閉回路が同時に形成されて、単なる常時オン、常時オフとは異なる状況が発生することがある。以下では、
図2に示した回路を例に説明するが、
図3、
図4に示したツインリレーを用いた回路についても同様である。
【0047】
例えば、
図5(a)に示すように、正極側ツインリレー111Tの一方のリレーで接地側固着(スイッチの黒丸で固着状態を示している)が生じた場合は、正極側ツインリレー111Tを電源側に、負極側ツインリレー112Tを接地側に切換え制御するVc1n測定期間において、太実線で示す正常な回路に加え、太破線で示す回路が形成される。
【0048】
このとき、検出用コンデンサC1を放電する閉回路が接地側に形成されるため、検出用コンデンサC1の充電電圧は0Vとなる。Vc1n測定期間では、図示しない高電圧バッテリ300のメイン経路で昇圧が行なわれ、2次側からの電流の回り込みが生じた場合以外では、検出用コンデンサC1の充電電圧が0Vとなることはない。
【0049】
また、
図5(b)に示すように、負極側ツインリレー112Tの一方のリレーで接地側固着が生じた場合は、正極側ツインリレー111Tを接地側に、負極側ツインリレー112Tを電源側に切換え制御するVc1p測定期間において、太実線で示す正常な回路に加え、太破線で示す回路が形成される。
【0050】
このとき、検出用コンデンサC1を放電する閉回路が接地側に形成されるため、検出用コンデンサC1の充電電圧は0Vとなる。Vc1p測定期間では、通常、検出用コンデンサC1の充電電圧が0Vとなることはない。
【0051】
一方、
図6(a)に示すように、正極側ツインリレー111Tの一方のリレーで電源側固着が生じた場合は、正極側ツインリレー111Tを接地側に、負極側ツインリレー112Tを電源側に切換え制御するVc1p測定期間において、太実線で示す正常な回路に加え、太破線で示す回路が形成される。
【0052】
この場合、検出用コンデンサC1の正側極板は、正極側絶縁抵抗RLpと並列に、正極電源側抵抗Raを介して高電圧バッテリ300の正極と接続される。このため、実際の正極側絶縁抵抗RLpが十分大きい場合には、正極電源側抵抗Raの値が絶縁抵抗RLとして算出されることになる。
【0053】
なお、検出用コンデンサC1の充電電圧の計測時にも、固着リレーを介して高電圧バッテリ300の正極が検出用コンデンサC1の正側極板に接続された状態になるが、正極接地側抵抗R3、負極接地側抵抗R4が正極電源側抵抗Raに比べて十分小さいため、計測値に与える影響は小さい。
【0054】
また、
図6(b)に示すように、負極側ツインリレー112Tの一方のリレーで電源側固着が生じた場合は、正極側ツインリレー111Tを電源側に、負極側ツインリレー112Tを接地側に切換え制御するVc1n測定期間において、太実線で示す正常な回路に加え、太破線で示す回路が形成される。
【0055】
この場合、検出用コンデンサC1の負側極板は、負極側絶縁抵抗RLnと並列に、負極電源側抵抗Rbを介して高電圧バッテリ300の負極と接続される。このため、実際の絶縁抵抗RLnが十分大きい場合には、負極電源側抵抗Rbの値が絶縁抵抗RLとして算出されることになる。
【0056】
以上から、ツインリレーを用いた地絡検出装置100は、
図7に示すようなスイッチ故障検出処理を行なうことができる。スイッチ故障検出処理は、制御装置120の制御により行なわれる。スイッチ故障検出処理は、通常の地絡判定処理の一連のシーケンスとして行なうことができる。もちろん、スイッチ故障検出モードを設け、通常の地絡判定処理とは別に行なうようにしてもよい。また、スイッチ故障検出処理は、専用回路を設けることなく通常の計測回路のみで行なうことができる。
【0057】
スイッチ故障検出処理では、通常の計測サイクルに従って、V0、Vc1n、Vc1pをそれぞれ計測する(S101)。なお、ここでは、高電圧バッテリ300の昇圧は行なっていないものとする。
【0058】
計測で得られたVc1nが0V、あるいはVc1pが0Vであれば(102:Yes)、ツインリレーで接地側固着が発生していると判定する。ここで、Vc1nが0Vのときは、正極側ツインリレー111Tで接地側固着が発生し、Vc1pが0Vのときは、負極側ツインリレー112Tで接地側固着が発生していると判定する。
【0059】
一方で、固着は発生しているが、氷結による固着であり固着故障は発生していない可能性もある。そこで、氷結している可能性がある場合には(S103:Yes)、リレーを加温して(S104)、再度計測を行なう(S101)。ここで、氷結している可能性については、例えば、温度が0℃以下の場合に可能性ありと判定することができる。また、温度変化が大きい場合に氷結が発生しやすいことから、温度が0℃以下であって、所定時間前からの温度変化が所定の基準値以上の場合に可能性ありと判定してもよい。なお、温度が0℃以下であっても既にリレーの加温を行なっている場合は氷結している可能性はないと判定することができる。リレーの加温は、例えば、リレーの通電によるコイルの発熱を利用することができる。
【0060】
氷結している可能性がない場合には(S103:No)、ツインリレーで接地側の固着故障が生じていると判定する(S105)。具体的には、Vc1nが0Vのときは、正極側ツインリレー111Tで接地側固着故障が発生していると判定し、Vc1pが0Vのときは、負極側ツインリレー112Tで接地側固着故障が発生していると判定する。
【0061】
計測で得られたVc1n、Vc1pとも0Vでなければ(102:No)、通常の手順に従って絶縁抵抗RLを算出する(S106)。算出された絶縁抵抗RLが正極電源側抵抗Ra、負極電源側抵抗Rbのいずれとも等しくない場合は(S107:No)、「固着故障無し」と判定する(S108)。
【0062】
このとき、算出された絶縁抵抗RLも正しいものとして扱うことができる。なお、等しいか等しくないかの判定は厳密なものではなく、例えば、オーダーが同じで最上位桁が近似しておれば、等しいとみなすことができる。また、実装上は正極電源側抵抗Ra=負極電源側抵抗Rbとすることが好ましいため、実際にはいずれか一方との比較で足りる。
【0063】
算出された絶縁抵抗RLが正極電源側抵抗Raあるいは負極電源側抵抗Rbのいずれかと等しい場合は(S107:Yes)、ツインリレーで電源側の固着故障が生じている可能性がある。ここで、算出された絶縁抵抗RLが正極電源側抵抗Raに等しいときは、正極側ツインリレー111Tで接地側固着の可能性があり、算出された絶縁抵抗RLが負極電源側抵抗Rbに等しいときは、負極側ツインリレー112Tで接地側固着の可能性がある。
【0064】
ただし、いずれのリレーも固着しておらず、絶縁抵抗RLが実際に正極電源側抵抗Raあるいは負極電源側抵抗Rbの値に低下している可能性もある。このため、この時点で地絡発生の警告を行なってもよいが、本実施形態ではさらに以下のような判別処理を行なっている。
【0065】
すなわち、実際に地絡が発生している場合は、ノイズや電源変動等により絶縁抵抗RLが変動する可能性が高い。このため、V0、Vc1n、Vc1pの計測を繰り返し、絶縁抵抗RLを複数回連続して算出する(S110)。そして、算出された絶縁抵抗RLが変動すれば(S111:Yes)、リレー固着のスイッチ故障は発生しておらず、絶縁抵抗RLが正極電源側抵抗Raあるいは負極電源側抵抗Rbの値に低下した地絡状態であると判定する(S112)。
【0066】
算出された絶縁抵抗RLが変動しなければ(S111:No)、さらに、高電圧バッテリ300系の負荷動作状態を変更してV0、Vc1n、Vc1pを計測し、絶縁抵抗RLを算出する(S113)。ここで、負荷動作状態の変更は、例えば、メインリレーのオンオフ切換え、インバータのオンオフ切換え等である。
【0067】
そして、算出された絶縁抵抗RLが変動すれば(S114:Yes)、リレー固着のスイッチ故障は発生しておらず、絶縁抵抗RLが正極電源側抵抗Raあるいは負極電源側抵抗Rbの値に低下した地絡状態であると判定する(S112)。
【0068】
地絡状態であると判定した場合には、例えば、メインリレーのオンオフ時での計測、A/Cインバータオンオフ時での計測、モータインバータオンオフ時での計測等を行なうことにより、地絡発生箇所の切り分け判定を行なうことができる。
【0069】
算出された絶縁抵抗RLが変動しなければ(S114:No)、リレー固着が生じているものとし、処理(S103)と同様に氷結可能性を判定する(S115)。そして、氷結している可能性がある場合には(S115:Yes)、リレーを加温して(S116)、再度計測を行なう(S101)。
【0070】
氷結している可能性がない場合には(S115:No)、ツインリレーで電源側の固着故障が生じていると判定する(S117)。具体的には、Vc1nが0Vのときは、正極側ツインリレー111Tで接地側固着が発生していると判定し、Vc1pが0Vのときは、負極側ツインリレー112Tで接地側固着が発生していると判定する。
【0071】
算出された絶縁抵抗RLが正極電源側抵抗Raに等しいときは、正極側ツインリレー111Tの接地側固着と判定し、算出された絶縁抵抗RLが負極電源側抵抗Rbに等しいときは、負極側ツインリレー112Tの接地側固着と判定するが、正極電源側抵抗Ra=負極電源側抵抗Rbとしているときは、正極側ツインリレー111T、負極側ツインリレー112Tの切り分けはこの時点では不能である。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の地絡検出装置100によれば、地絡検出のための測定経路の切り換えスイッチに、コスト増の起因となる光MOS−FETを用いていないため、スイッチング素子に起因するコスト増を抑制することができる。また、ツインリレーを用いた場合にも、リレー固着によるスイッチ故障を検出することができる。