(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ホモポリプロピレンは、溶融指数が1g/10分(2.16kg、230℃)〜60g/10分(2.16kg、230℃)である、請求項1に記載のポリプロピレン複合樹脂組成物。
前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、ムーニー粘度(Mooney viscosity)が5 ML1+4(121℃)〜50 ML1+4(121℃)であり、ガラス転移温度が−60℃〜−40℃である、請求項1に記載のポリプロピレン複合樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、繊維質感の表現の程度が優れたポリプロピレン複合樹脂組成物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、エンボスパターンに対する影響を少なく受ける繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、耐久性、耐衝撃性、耐スクラッチ性及び耐汚染性に優れた繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、環境に優しい繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物を提供することである。
【0011】
本発明の目的は、以上で言及した目的に制限されない。本発明の目的は、以下の説明によってさらに明らかになり、特許請求の範囲に記載された手段及びその組み合わせによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施例に係る繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、ホモポリプロピレン、第1エチレン−プロピレン共重合体、第2エチレン−プロピレン共重合体、またはこれらのうちの2以上の組み合わせを含むポリプロピレン樹脂、及びエチレン/α−オレフィン共重合体を含む。
【0013】
前記繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、前記ポリプロピレン樹脂50重量%〜70重量%、及び前記エチレン/α−オレフィン共重合体5重量%〜25重量%を含むものであってもよい。
【0014】
前記ホモポリプロピレンは、溶融指数が1g/10分(2.16kg、230℃)〜60g/10分(2.16kg、230℃)であるものであってもよい。
【0015】
前記第1エチレン−プロピレン共重合体は、溶融指数が1g/10分(2.16kg、230℃)〜60g/10分(2.16kg、230℃)であり、プロピレンモノマー50重量%〜
89重量%とエチレンモノマー
11重量%〜50重量%を重合させたものであってもよい。
【0016】
前記第2エチレン−プロピレン共重合体は、溶融指数が1g/10分(2.16kg、230℃)〜100g/10分(2.16kg、230℃)であり、プロピレンモノマー90重量%〜99.9重量%とエチレンモノマー0.1重量%〜10重量%を重合させたものであり、アイソタクチック指数が97%以上であるものであってもよい。
【0017】
前記ポリプロピレン樹脂は、前記第1エチレン−プロピレン共重合体と前記第2エチレン−プロピレン共重合体とを1:1〜3:1の質量比で含むものであってもよい。
【0018】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレンとC4−C8アルキレンの共重合体であってもよい。
【0019】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、ムーニー粘度(Mooney viscosity)が5 ML1+4(121℃)〜50 ML1+4(121℃)であり、ガラス転移温度が−60℃〜−40℃であるものであってもよい。
【0020】
前記繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、板状形態であり、粒子サイズが0.5μm〜10μmであるタルク(talc);針状形態であり、長さが10μm〜35μmであり、直径が0.3μm〜1.5μmであるウィスカ(whisker);ウォラストナイト;硫酸バリウム;炭酸カルシウム;シリカ;マイカ;ケイ酸カルシウム;ガラス繊維;及びこれらの組み合わせからなる群から選択された無機質補強材をさらに含むことができる。
【0021】
前記繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、前記無機質補強材を1重量%〜15重量%含むことができる。
【0022】
前記繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate、PBT)、セルロース、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され;直径が3μm〜40μmであり;長さが0.3mm〜4mmである、繊維状高分子をさらに含むことができる。
【0023】
前記繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、前記繊維状高分子を1.5重量%〜5重量%含むことができる。
【0024】
前記繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、針葉樹系木粉、広葉樹系木粉、木材チップ、軟質木材パルプ、硬質木材パルプ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、粒子サイズが210μm〜300μmである、木材成分をさらに含むことができる。
【0025】
前記繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、前記木材成分を2重量%〜10重量%含むことができる。
【0026】
前記繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、スコリア、玄武岩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、粒子サイズが10μm〜150μmである、石材成分をさらに含むことができる。
【0027】
前記繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、前記石材成分を1重量%〜10重量%含むことができる。
【0028】
前記繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、消臭剤、潤滑剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、光安定剤、離型剤、顔料、帯電防止剤、抗菌剤、加工助剤、煙抑制剤(Smoke Suppressant)、滴下防止剤(Anti−dripping Agent)、耐摩耗剤、カップリング剤(Coupling agent)、相溶化剤(Compatibilizing agent)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤をさらに含むことができる。
【0029】
本発明の一実施例に係る成形体は、前記繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物を用いて製造したものであってもよい。
【0030】
前記成形体は運送手段の内装材であってもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一実施例に係るポリプロピレン複合樹脂組成物を使用すると、繊維質感の表現の程度が優れた製品を提供することができる。
【0032】
本発明の一実施例に係る繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、製品を生産する過程でエンボスパターンに対する影響を少なく受けるため、製品の外観を様々な方式で表現することができる。
【0033】
本発明の一実施例に係る繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物で製造した製品は、耐久性に優れるため、極暑地、極寒地などの苛酷な環境でも長期間使用することができる。
【0034】
本発明の一実施例に係る繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物で製造した製品は、耐衝撃性に優れるため、外部衝撃から使用者を保護することができる。
【0035】
本発明の一実施例に係る繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、繊維質感の表現のために、天然素材、特にリサイクルされた天然素材を使用するので、環境が汚染することを防止することができる。
【0036】
本発明の効果は、以上で言及した効果に限定されない。本発明の効果は、以下の説明で推論可能な全ての効果を含むものと理解しなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以上の本発明の目的、他の目的、特徴及び利点は、添付の図面と関連する以下の好ましい実施例を通じて容易に理解されるであろう。しかし、本発明は、ここで説明する実施例に限定されず、他の形態に具体化されてもよい。むしろ、ここで紹介される実施例は、開示された内容が徹底且つ完全になるように、そして、通常の技術者に本発明の思想が十分に伝達されるようにするために提供されるものである。
【0038】
各図面を説明する際、類似の参照符号を類似の構成要素に対して使用した。添付の図面において、構造物の寸法は、本発明の明確性のために実際より拡大して示したものである。「第1」、「第2」などの用語は、様々な構成要素を説明するために使用できるが、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱せずに、第1構成要素は第2構成要素と命名されてもよく、同様に、第2構成要素も第1構成要素と命名されてもよい。単数の表現は、文脈上明らかに別の意味を示すものでない限り、複数の表現を含む。
【0039】
本出願において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除しないものと理解しなければならない。
【0040】
本発明の一実施例に係る繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、ホモポリプロピレン、第1エチレン−プロピレン共重合体、第2エチレン−プロピレン共重合体、またはこれらのうちの2以上の組み合わせを含むポリプロピレン樹脂、及びエチレン/α−オレフィン共重合体を含む。
【0041】
また、本発明の一実施例に係る繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、無機質補強材、繊維状高分子、木材成分及び石材成分をさらに含むことができる。
【0042】
具体的に、本発明の一実施例に係る繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、50重量%〜70重量%のポリプロピレン樹脂、5重量%〜25重量%のエチレン/α−オレフィン共重合体、1重量%〜15重量%の無機質補強材、1.5重量%〜5重量%の繊維状高分子、2重量%〜10重量%の木材成分、及び1重量%〜10重量%の石材成分を含むことができる。
【0043】
また、本発明の一実施例に係る繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、消臭剤、潤滑剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、光安定剤、離型剤、顔料、帯電防止剤、抗菌剤、加工助剤、煙抑制剤(Smoke Suppressant)、滴下防止剤(Anti−dripping Agent)、ガラス繊維、耐摩耗剤、カップリング剤(Coupling agent)、相溶化剤(Compatibilizing agent)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤をさらに含むことができる。
【0044】
以下、本発明の各成分について具体的に説明する。
【0046】
前記ポリプロピレン樹脂は、ホモポリプロピレン、第1エチレン−プロピレン共重合体、第2エチレン−プロピレン共重合体、またはこれらのうちの2以上の組み合わせを含む。ホモポリプロピレン、第1エチレン−プロピレン共重合体、第2エチレン−プロピレン共重合体のいずれか1つのみを使用する場合、成形体の耐衝撃性、耐熱性などが悪くなり得るところ、2種以上を組み合わせて使用することがよく、好ましくは、第1エチレン−プロピレン共重合体と第2エチレン−プロピレン共重合体を特定の質量比で組み合わせて使用することがよい。
【0047】
前記ポリプロピレン樹脂の含量は50重量%〜70重量%であることがよい。50重量%未満であると、成形体の引張強度、屈曲強度、衝撃強度などの全体的な物性が低下することがあり、70重量%を超えると、他の成分の含量が過度に少なくなるため、繊維の質感が表現されないことがある。
【0049】
前記ホモポリプロピレンは、溶融指数が1g/10分(2.16kg、230℃)〜60g/10分(2.16kg、230℃)であり、アイソタクチック指数(isotactic index、C13−NMRで測定)が94%〜97%であるものであってもよい。前記アイソタクチック指数及び溶融指数が前記の範囲を満足してこそ、成形体に要求される剛性(rigidity)を満足させることができ、成形性及び機械的物性を向上させることができる。
【0050】
b)第1エチレン−プロピレン共重合体
【0051】
前記第1エチレン−プロピレン共重合体は、溶融指数が1g/10分(2.16kg、230℃)〜60g/10分(2.16kg、230℃)であり、プロピレンモノマー50重量%〜
89重量%とエチレンモノマー
11重量%〜50重量%を重合させたものであってもよい。前記プロピレンモノマーの含量が前記の範囲を満足してこそ、成形体の耐衝撃性及び寸法安定性を向上させることができる。
【0052】
c)第2エチレン−プロピレン共重合体
【0053】
前記第2エチレン−プロピレン共重合体は、溶融指数が1g/10分(2.16kg、230℃)〜100g/10分(2.16kg、230℃)であり、プロピレンモノマー90重量%〜99.9重量%とエチレンモノマー0.1重量%〜10重量%を重合させたものであり、アイソタクチック指数が97%以上、詳細には97.5%〜99.5%であるものであってもよい。
【0054】
前記アイソタクチック指数が97%未満であると、成形体の引張強度、屈曲強度、衝撃強度、表面硬度が低下することがある。
【0055】
また、前記溶融指数が1g/10分(2.16kg、230℃)未満であると、流動性が低下してしまい、成形体を形成できないという問題が発生することがあり、100g/10分(2.16kg、230℃)を超えると、成形体の耐衝撃性が著しく低下することがある。
【0056】
また、前記エチレンモノマーの含量が0.1重量%未満であると、成形体の耐衝撃性が低下し、10重量%を超えると、剛性が低下することがある。
【0057】
前記第2エチレン−プロピレン共重合体は、溶融指数、プロピレンモノマーの含量及びアイソタクチック指数が前記の範囲を満足する高結晶性エチレン−プロピレン共重合体(High Crystalline Polypropylene、HCPP)であって、前記第1エチレン−プロピレン共重合体とは区別される構成として見なすべきである。
【0058】
前記ポリプロピレン樹脂は、前記第1エチレン−プロピレン共重合体と前記第2エチレン−プロピレン共重合体を1:1〜3:1の質量比で含むものであってもよい。前記質量比が3:1を超えると、部品成形性が低下し、常温での衝撃強度が低下することがある。
【0059】
2)エチレン/α−オレフィン共重合体
【0060】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレン(ethylene)とα−オレフィン(α−olefin)の共重合体である。具体的に、エチレンとC4−C8アルキレンが共重合されたものであってもよく、好ましくは、エチレン/α−ブチレン共重合体、エチレン/α−オクチレン共重合体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものであってもよい。
【0061】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、ムーニー粘度(Mooney viscosity)が5 ML1+4(121℃)〜50 ML1+4(121℃)であり、ガラス転移温度が−60℃〜−40℃であるものであってもよい。
【0062】
前記ムーニー粘度が前記の範囲を満足してこそ、成形体の機械的物性を維持又は向上させるのに有利である。一方、前記ガラス転移温度が−60℃未満であると、成形体の剛性及び耐熱性が低下することがあり、−40℃を超えると、低温での衝撃強度が低下することがある。
【0063】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体の含量は5重量%〜25重量%であることがよい。5重量%未満であると、成形体の衝撃強度が低下することがあり、25重量%を超えると、成形体の耐熱性が低下することがある。
【0065】
前記無機質補強材は、成形体の剛性を補完する構成であって、タルク(talc)、ウィスカ(whisker)、ウォラストナイト(wollastonite)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、マイカ、ケイ酸カルシウム、ガラス繊維、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものであってもよい。
【0066】
具体的に、前記無機質補強材は、板状形態であり、粒子サイズが0.5μm〜10μmであるタルクであることがよい。前記タルクの粒子サイズが0.5μm未満であると、成形体の生産性が低下することがあり、10μmを超えると、成形体の全体的な機械的物性が低下することがある。
【0067】
また、前記無機質補強材は、針状形態であり、長さが10μm〜35μmであり、直径が0.3μm〜1.5μmであるウィスカであることもよい。前記ウィスカの長さが10μm未満であると、剛性及び耐熱性が低下することがあり、35μmを超えると、射出成形時に樹脂組成物の流れにおいて配向が生じてしまい、成形体の変形が発生することがある。
【0068】
前記無機質補強材の含量は、1重量%〜15重量%、詳細には5重量%〜10重量%であることがよい。1重量%未満であると、成形体の剛性が低下することがあり、15重量%を超えると、他の成分の含量が過度に少なくなり、成形性、耐スクラッチ性、耐汚染性が低下することがある。
【0070】
前記繊維状高分子は、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate、PBT)、セルロース、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものであってもよい。
【0071】
前記繊維状高分子は、互いに異なる色相を帯びる素材を組み合わせたものであってもよく、成形体及びその周辺の他の製品の色相など、目的とするところによって多様に組み合わせることができる。
【0072】
前記繊維状高分子は、直径が3μm〜40μmであり、長さが0.3mm〜4mmであるものであってもよい。前記繊維状高分子の直径が3μm未満であると、繊維の質感が表現されないことがあり、40μmを超えると、成形体の衝撃強度が低下することがある。また、前記繊維状高分子の長さが0.3mm未満であると、繊維の質感が表現されないことがあり、4mmを超えると、成形体の製造時に繊維状高分子の絡み合い現象が発生してしまい、分散性が著しく低下することがある。
【0073】
前記繊維状高分子の含量は、1.5重量%〜5重量%、詳細には2重量%〜4重量%、より詳細には2.5重量%〜3重量%であることがよい。1重量%未満であると、繊維の質感が表現されないことがあり、5重量%を超えると、過剰な含量によって繊維状高分子の絡み合い現象が発生することがある。
【0075】
前記木材成分は、針葉樹木粉(Coniferous wood flour)、広葉樹木粉(Broadleaved wood flour)、木材チップ、軟質木材パルプ(Softwood pulp、SWP)、硬質木材パルプ(Hardwood Pulp、HWP)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものであってもよい。
【0076】
前記針葉樹木粉は、針葉樹系木材の加工時に発生する副産物(おがくず)を意味し、前記広葉樹木粉は、広葉樹系木材の加工時に発生する副産物(おがくず)を意味する。前記針葉樹木粉及び広葉樹木粉は、他の製品の生産過程で発生した木粉をリサイクルしたものであってもよい。
【0077】
本発明の一実施例に係る繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、前記繊維状高分子に加え、前記木材成分をさらに添加することによって、繊維質感の表現の程度を極大化したことを一つの技術的特徴とする。
【0078】
前記木材成分は、粒子サイズが210μm〜300μmであるものであってもよい。前記木材成分の粒子サイズが210μm未満であると、繊維質感の表現の程度が十分でないことがあり、300μmを超えると、成形体の製造過程で炭化などの問題が発生してしまい、引張強度及び衝撃強度が低下することがある。
【0079】
前記木材成分の含量は、2重量%〜10重量%、詳細には2重量%〜5重量%、より詳細には3重量%〜5重量%であることがよい。2重量%未満であると、繊維質感の表現の程度が十分でないことがあり、10重量%を超えると、過剰な含量によって炭化、臭いの発生、耐光性低下の問題が発生することがある。
【0081】
前記石材成分は、成形体をエンボスパターンで形成する際に、樹脂組成物に及ぼす影響を最小化するための構成である。
【0082】
前記石材成分は、スコリア、玄武岩、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものであってもよい。前記石材成分としてスコリア、玄武岩などの火山石を使用する場合、揮発性有機化合物(VOC)が吸着されるので、使用者の健康に悪い影響を及ぼすことを防止することができる。
【0083】
一例として、前記スコリアは、酸化ケイ素40重量%〜50重量%、酸化アルミニウム10〜20重量%、酸化鉄12重量%〜17重量%、酸化チタン2重量%〜8重量%及び一定量の酸化ナトリウム、酸化カリウムを主成分とするものであってもよい。また、前記スコリアは、耐熱温度が1,200℃以上であるので、成形体の種類及び加工温度に関係なく使用することができる。
【0084】
前記スコリアと玄武岩を組み合わせて使用する場合、その使用比率は、成形体の色相に応じて変わり得るが、1:0.2〜1:0.5の質量比で混合して使用することができる。前記質量比が1:0.5を超えると、黒色の玄武岩の含量が多すぎるため、樹脂組成物の調色が難しいことがある。
【0085】
また、前記石材成分は、これに限定されるものではないが、球状の粒子形状のものを使用することが好ましい。線状、針状型ではなく、球状のものを使用すると、樹脂組成物に含まれた各構成の分散性を向上させることができるためである。
【0086】
前記石材成分は、粒子サイズが10μm〜150μm、詳細には40μm〜100μmであるものであってもよい。前記石材成分の粒子サイズが10μm未満であると、分散性の向上の程度がわずかであり、150μmを超えると、成形体の強度、剛性、スクラッチ性などの物性が不均衡になることがある。
【0087】
前記石材成分の含量は1重量%〜10重量%であることがよい。1重量%未満であると、使用量が過度に少なく、10重量%を超えると、成形体の強度、剛性、スクラッチ性などの物性が不均衡になることがある。
【0089】
本発明の一実施例に係る繊維の質感を有するポリプロピレン複合樹脂組成物は、消臭剤、潤滑剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、光安定剤、離型剤、顔料、帯電防止剤、抗菌剤、加工助剤、煙抑制剤(Smoke Suppressant)、滴下防止剤(Anti−dripping Agent)、耐摩耗剤、カップリング剤(Coupling agent)、相溶化剤(Compatibilizing agent)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤をさらに含むことができる。
【0090】
以下、本発明を具体的な実施例を通じてさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれらによって限定されるものではない。
【0092】
下記の表1のような組成及び組成比で各成分を準備した後、ポリプロピレン複合樹脂組成物を製造した。その後、射出成形機(モデル:LGE110、LS電線)を用いて、シリンダー温度220℃及び金型温度50℃で射出成形して、試験片(成形体)を製造した。
【0094】
表1の注a)ポリプロピレン樹脂:高結晶性エチレン−プロピレン共重合体、溶融指数30g/10分(2.16kg、230℃)、重量平均分子量221,000g/mol、アイソタクチック指数98.5%〜99%(SK社)
【0095】
b)ポリプロピレン樹脂:エチレン−プロピレン共重合体、溶融指数30g/10分(2.16kg、230℃)、重量平均分子量210,000g/mol
【0096】
c)エチレン/α−オレフィン共重合体:エチレン/α−オクテン共重合体、ムーニー粘度5 ML1+4(121℃)〜25 ML1+4(121℃)、ガラス転移温度−55℃〜−62℃
【0097】
d)無機質補強材:タルク、板状形態、粒子サイズ8μm〜10μm(KOCH社)
【0098】
e)無機質補強材:マグネシウム−ウィスカ、長さ10μm〜35μm(UBE社)
【0099】
f)繊維状高分子:ポリエチレンテレフタレート(PET)、直径7μm、長さ3mm、赤色
【0100】
g)木材成分:広葉樹木粉、粒子サイズ40μm〜100μm(WOORI社)
【0101】
h)木材成分:針葉樹木粉、粒子サイズ40μm〜100μm(WOORI社)
【0102】
i)石材成分:スコリア、粒子サイズ100μm、赤褐色
【0104】
下記の表2のような組成及び組成比で各成分を準備した後、ポリプロピレン複合樹脂組成物を製造した。その後、射出成形機(モデル:LGE110、LS電線)を用いて、シリンダー温度220℃及び金型温度50℃で射出成形して、試験片(成形体)を製造した。
【0106】
表2の注a)〜i)は、前記表1と同一である。
【0107】
比較例1及び比較例2は、繊維状高分子の含量が1.5重量%未満である試験片である。
【0108】
比較例3及び比較例4は、第1エチレン−プロピレン共重合体(表2のポリプロピレン樹脂b)と第2エチレン−プロピレン共重合体(表2のポリプロピレン樹脂a)の質量比が1:3を超え、木材成分の含量が10重量%を超える試験片である。
【0109】
比較例5及び比較例6は、木材成分の含量が2重量%未満である試験片である。
【0111】
前記実施例及び比較例で製造した試験片の物性を、以下の方法で測定した。その結果は、表3の通りである。
【0112】
1)溶融指数(Melting Index、MI):ASTM D−1238法に準拠して測定した(試験条件:230℃、荷重21.2N)。
【0113】
2)比重:ASTM D792法に準拠して屈曲強度測定試片の中央部を取って測定した。
【0114】
3)引張強度:ASTM D−638法に準拠して測定した(試験条件:50mm/分)。
【0115】
4)屈曲強度及び屈曲弾性率:ASTM D−790法に準拠して測定し、荷重印加速度は30mm/minで測定した。
【0116】
5)アイゾット(IZOD)衝撃強度:ASTM D−256法に準拠して、常温(23℃)及び−10℃でNotched試験片を用いて測定した。
【0117】
6)臭い:MS300−34基準に従って、臭い判定3等級以下であると、合格(試験条件:80℃、2時間放置及び1時間室温放置した後、臭い判定)
【0118】
7)スクラッチ性:MS213−05(4.9項)法に準拠して測定した。スクラッチ性の数値が高いほど、外力によるスクラッチが多いことを意味するので、成形体として使用するのに適していない。
【0119】
8)汚染性:MS210−05(4.13項)法に準拠して測定した。汚染性の数値が高いほど、外力による汚染が多く発生するということであるので、成形体として使用するのに適していない。
【0120】
9)繊維の質感:目視評価方法で測定した。繊維の質感が出ない場合、不十分(△)、繊維の質感が出るが、部品とのカラーマッチングが不十分な場合、良好(○)、繊維の質感の実現及び部品とのカラーマッチングが良好な場合、優秀(◎)と評価した。
【0122】
前記表3を参照すると、繊維状高分子の含量が1.5重量%未満である比較例1及び比較例2の試験片は、繊維の質感が正しく表現されていないことがわかる。
【0123】
また、第1エチレン−プロピレン共重合体と第2エチレン−プロピレン共重合体との質量比が1:3を超える比較例3及び比較例4の試験片は、比重が高いため、成形体の軽量化に不利であることがわかり、常温での衝撃強度が低下したことを確認できる。また、比較例3及び比較例4は、木材成分の含量が10重量%を超えるため、繊維の質感の表現に優れてはいるが、耐スクラッチ性及び耐汚染性の低下、炭化による臭い発生の問題があることがわかる。
【0124】
反面、木材成分の含量が2重量%未満である比較例5及び比較例6の試験片は、繊維の質感の表現が不十分であることがわかる。
【0125】
本発明の一実施例に係るポリプロピレン複合樹脂組成物の条件をいずれも満足する実施例1〜実施例5は、比重が低く、引張強度、屈曲強度、屈曲弾性率、常温又は低温での衝撃強度がバランスが取れており、木材成分の炭化による臭いが少なく発生し、スクラッチ性及び汚染性が低く、繊維の質感の表現に優れることがわかる。
【0126】
以上、本発明の実験例及び実施例について詳細に説明したところ、本発明の権利範囲は、上述した実験例及び実施例に限定されず、以下の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形及び改良形態もまた、本発明の権利範囲に含まれる。