(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、3相マイクロ流体またはミリ流体システムにおける反応体と試薬の液滴を融合しまたは接触させるための方法を初めて開示し、本発明において、インジェクターと呼ぶ側面インレットによって一連の流体内に注入される試薬液滴が、反応体液滴と合体する前に試薬リザーバーから離脱する。より具体的には、試薬液滴は、反応体液滴と接触する前に離脱する。本発明の方法は、2つの連続的ではあるが同時には生じない段階を伴う。第1の段階は、一連の流体内に試薬の液滴を発生させる段階であり、試薬の液滴は、合体の第2の段階の前に離脱する。本発明の方法によって、その場で試薬の液滴を形成し、その形成は同期可能であり、必要であれば選択的である。試薬液滴はその場で形成され、得られた液滴は注入点(側面インレット)にとどまっており、反応体液滴が注入点に到達する前に試薬リザーバーから分離する。
【0013】
本発明の方法によって、液滴は、汚染なく、すなわち、液滴内に微生物が存在したとしても、さらには真菌が存在したとしても、リザーバーの汚染がなく、液滴間の相互汚染がなく、融合される。
【0014】
本発明の方法は、能動または受動融合のために使用することができ、すなわち、液滴の融合のための電極の使用は任意選択的であり、さらに有利には、電極を使用しない(受動融合)。さらに、マイクロ流体またはミリ流体デバイスの流路は規則的にすることができる。特に、これは、試薬の液滴が追加される位置において分岐幾何形状を含まず、例えば、流路は、分岐幾何形状を有しない円形流路とすることができる。
【0015】
本発明の方法は、規則的または不規則的な一連の流体について使用可能である。特に、本発明の方法によって、等距離にない試薬を含む一連の流体が操作可能になる。
【0016】
マイクロ/ミリ流体とは、マイクロ流体またはミリ流体を意味する。マイクロ流体は、小さな体積の流体が、マイクロメートル規模の流路/管内で取り扱われるシステムを指す。ミリ流体は、小さな体積の流体が、ミリメートル規模の流路/管内で取り扱われるシステムを指す。
【0017】
本発明は、反応体と試薬の液滴をマイクロ流体またはミリ流体デバイス内で融合させまたは接触させるための方法に関し、
(a)マイクロ流体またはミリ流体システムの流路内で、連続相と、少なくとも2つの反応体液滴と、2つの反応体液滴A
nとA
n+1との間の少なくとも1つのスペーサープラグと、を含み、nが0以上の整数である一連の3相マイクロ/ミリ流体を発生させる段階と、
(b)インジェクターと呼ぶ側面インレットによって、一連の流体内に、非濡れ性の単一の液滴B内に試薬を注入する段階であって、液滴Bが反応体液滴A
n+1に直接先行するスペーサープラグの注入点を通過する間にその場で生成され、反応体液滴A
n+1が注入点に到達する前に、液滴Bが注入点から分離してインジェクター端部において試薬流体のメニスカスが形成され、反応体液滴A
n+1が注入点にあるときに試薬流体メニスカスが側面インレット内に収縮する、試薬を注入する段階と、
(c)液滴Bを注入点から離れた位置で反応体液滴A
n+1と融合または接触させる段階と、を含み、
(d)n>1の場合に、段階(b)及び(c)を反復する。
【0018】
マイクロ流体またはミリ流体システムの流路は、円筒形の幾何形状または平面状の幾何形状を有する。以下の説明において、円筒形の幾何形状を参照し、そのため流路の大きさを直径を参照することによって定義する。これらの参照は、一連の液滴が平面状の幾何形状について循環する場合は、流路の高さ及び幅によって置き換えるべきである。
【0019】
本説明において、「注入点」とは、注入位置に対応する液滴Bの発生点を意味する。以下、液滴Bを試薬液滴とも呼ぶ。
【0020】
本説明において、「試薬液滴」、「試薬流体」という用語は、それぞれ試薬を含む液滴及び流体を定義するものとして使用する。同様に、「反応体液滴」、「反応体流体」という用語は、それぞれ反応体を含む液滴及び流体を定義するものとして使用する。
【0021】
「プラグ」という用語は、体積VがπD^3/6よりも大きな液滴を定義するものとして使用し、Dは、一連の液滴が円筒形の幾何形状について循環する場合には、管の直径であり、または、体積VがπHW^2/4よりも大きな液滴を定義するものとして使用し、H及びWはそれぞれ一連の液滴が平面幾何形状について循環する場合の流路の高さ及び幅を表す。
【0022】
本発明の方法において、マイクロ/ミリ流体システムは、少なくとも3つの相、すなわち連続相(2)、スペーサー相(1)及び反応体液滴相(3)を含む(
図5)。スペーサープラグと試薬液滴との間の連続相内の領域は、毛細管ブリッジ(
図5の網掛け領域)を形成する。本発明の方法において、連続相は流路、スペーサー、試薬液滴及び反応体液滴を濡らし、スペーサーのプラグ並びに試薬及び/または反応体の液滴は、連続相の薄い膜によって取り囲まれ、流路に接触しない。そのため、毛細管ブリッジは他の毛細管ブリッジと連続的に接続される。流路の壁に近接する連続相の存在は、他の2つの構成要素の境界から推定され、これらは共にスペーサープラグ/反応体液滴の界面において流路の壁から接線方向に曲線を描いて離れる。
【0023】
少なくとも3つの相が存在することは、それぞれ連続相/スペーサー、連続相/反応体流体、スペーサー/反応体流体間の界面張力γが測定可能であることを意味する。同様に、それぞれ連続相/試薬流体、スペーサー/試薬流体間の界面張力を測定することもできる。
【0024】
スペーサー液滴及び反応体液滴は、好適には連続相で完全に濡らされている。(i,j,k)=(1,2,3)として、拡散パラメータS_i=γ_jk−(γ_ij+γ_ik)における条件は、Torza及びMason著、1970 (Three-Phase Interactions In Shear and Electrical Fields, S. TORZA AND S. G. MASON, Journal of Colloid and Interface Science, vol. 33, No. 1, May 1970)の
図1に示されている。
【0025】
化学的な観点から、
・連続相は、反応体液滴の流体及び試薬液滴の流体と実質的に混合しない。
・スペーサー流体は、連続相、反応体液滴の流体及び試薬液滴の流体と実質的に混合しない。
【0026】
本方法の重要な特性の1つは、段階b)において、試薬の流体が非濡れ性であることである。これは、試薬の流体が流路の壁及び注入壁を濡らさないことを意味する。
【0027】
本発明の方法の段階b)及びc)は、好適には、以下の実質的に主要な段階を含む。
i)その場にとどまっている、すなわち試薬リザーバーと依然として接続され、制御された体積を有する試薬液滴の発生(段階b)
ii)注入点からの試薬液滴の離脱(段階b)
iii)試薬液滴の反応体液滴との接触及び連続相の排出(段階c)
iv)能動的または受動的な液滴の融合(段階c)
【0028】
その場にとどまっている試薬液滴の体積は、注入圧力によって決定され、これは、一連の流体を移動させるために用いられる圧力よりも大きい。
【0029】
好適な自己同期融合方式の主要な段階の図は、
図6に示されている。
【0030】
本方法は、本段落では、
図6を参照して説明される。この特定の実施形態において、試薬は側面インレットによって追加される。本発明の自己同期という特徴は、
図6aに示されており、試薬液滴は、試薬リザーバーに取り付けられたままであり、そのため、スペーサープラグの先端がその場にとどまっている試薬液滴に到達するまで、側面インレットの位置にとどまる液滴を形成する。次いで、離脱が生じ、最後に形成された試薬液滴が、
図6bに示されるように、スペーサープラグの後端と反応体液滴の前端とを分割する(すなわち可動式の受動融合チャンバーを生成する)体積によって画定された、連続相の毛細管ブリッジ内に入る。本方法の汚染がないという特徴は
図6cに示されており、試薬液滴が、離脱後に完全性を保つ。次いで、液滴融合は、試薬液滴の生成点から離れて生じ(
図6d)、試薬溶液リザーバーを汚染のない状態に保つ。汚染がないという特徴の追加的な証拠は、
図6cに示されており、試薬液滴が側面インレットの下を通過する際に、試薬流体のメニスカスは、側面インレット端から収縮され、確実に、反応体液滴と試薬リザーバーとの間の接触を防ぐ。
【0031】
スペーサープラグと試薬液滴との間の連続相内の領域は、毛細管ブリッジを形成する。好適な実施形態において、試薬液滴は注入点に付着した状態を保ち、反応体液滴A
n+1の前方の毛細管ブリッジが試薬液滴に到達したときに分離する。
【0032】
本発明の方法は、新規な液滴形成メカニズムに関し、界面張力が、その場にとどまる液滴の分離を誘導する。
【0033】
その場にとどまる液滴に働く毛細管力が、その場にとどまる液滴を保持する毛細管力よりも大きいときに、試薬液滴は離脱する。このメカニズムは、生成可能な最小の試薬液滴の大きさを画定する。
【0034】
注入される流体の最小体積は、分離することとなる、その場にとどまる液滴を得るために必要な体積である。有利には、試薬液滴の最小半径r
minは、以下の方程式:r
min〜d×γ
12/γ
23で定義される。
・dは側面インレットの直径(またはインレットが円形でない場合は幅もしくは高さ)である。
・γ
12は、相1(試薬)と相2(連続相)との間の表面張力である。
・γ
23は、相2(連続相)と相3(スペーサー)との間の表面張力である。
【0035】
好適な実施形態において、液滴Bの体積は、有利には5pL超、より有利には10pL超である。好適な実施形態において、液滴Bの体積は2nL超である。
【0036】
最大直径は、状況に応じて当業者によって決定されることとなる。特に、試薬液滴の最大の大きさは、注入された液滴が2つの部分にスペーサーを切断してしまう危険性を回避するための、主要な流路の大きさである。
【0037】
スペーサー流体が気体、特に空気である場合、界面張力により誘導された液滴の形成によって形成された最大直径は、大部分は連続相の流速とは独立であり、一連の流体が移動する管の大きさにほぼ対応する。注入可能である流体の最大体積は、液滴がプラグになる(すなわち、液滴の直径が流路の直径以上になる)体積である。特に、流体がこれ以上液滴を形成せず、プラグになる場合、注入された流体がスペーサープラグを分離させる危険性がある。
【0038】
その一方、鉱物油のような粘性スペーサについて、その場にとどまる液滴は、流体の速度、すなわち連続相の流速の増加関数である粘性力によって離脱可能である。剪断誘導分離が生じるよりも大きな臨界液滴の大きさは、スペーサの速度並びに連続相及びスペーサー相の粘性に反比例する。次いで、液滴はスペーサー位置から排出され、最終的に汚染がない状態で、反応体液滴と接触し、または融合しうる。液滴の形成と排出との間の遅延時間は、例えば、検出モジュールの位置だけでなく、実際の融合が誘導される位置を変更することによって、当業者が容易に決定することができる。
【0039】
段階b)において注入される液滴の体積は、主に流路の大きさに依存する。特定の実施形態において、体積は190nLよりも小さい。
【0040】
好適な実施形態において、rが試薬液滴の半径であり、Rが流路の半径(または流路が円形でない場合には幅の半分もしくは高さの半分)である場合、比r/Rは0.1から1であり、有利には0.1から0.9であり、より有利には0.2から0.7であり、さらにより有利には0.25から0.60である。
【0041】
側面インレットの直径d(または側面インレットが円形でない場合、幅もしくは高さ)は、流路の直径D(または流路が円形でない場合、幅もしくは高さ)よりも小さい。具体的には、d<Dである。好適な実施形態において、d/D<0.5であり、具体的には、d/Dは、0.05から0.5の範囲である。
【0042】
そのため、dは、流路の大きさDに依存する。特定の実施形態において、dは200μm未満であり、有利にはミリ流体条件の場合50μmから200μmの範囲で備えられ、またはマイクロ流体条件の場合、10μmから50μmの範囲で備えられる。
【0043】
試薬液滴の大きさ及び、すなわち試薬液滴の体積は、変更可能である。特に、r_min/d〜1であり(
図12を参照)、従って、r_min/D〜d/Dであり、r_max/D〜0.5である。
【0044】
本発明の方法において、スペーサープラグの存在は、この新しい分離及び合体のメカニズムに必要である。
【0045】
スペーサープラグは、注入点において平坦な界面を示している。スペーサーの長さLは、好適には以下の方程式に従う。
L=D+εd
ここで、D及びdは前述のように定義される(または、流路または側面インレットが円形でない場合は、幅W及びw、高さH及びhに置き換えることができる)。
εは2より大きな数であり、特に2から100の範囲である。この数字は、比d/Dに依存し、当業者によって調整可能である。
【0046】
より好適には、スペーサーの長さLは、Dの少なくとも2倍であり、より好適にはDの少なくとも3倍である。
【0047】
注入は、好適には注入点がスペーサープラグの平坦面の前方にあるときに生じる。注入領域は、概略的には
図7で示され、注入領域IZはスペーサープラグの平坦区画に対応し、ここではa≧D/2及びb≧D/2である。
【0048】
有利には、スペーサーの先端は球形である。
【0049】
注入後、連続的な薄い膜のせん断が、液滴の首部の破壊を生じさせるのに不十分である場合、すなわち、スペーサーの速度が十分遅いか、またはスペーサーの粘度が気体スペーサーの場合のように小さい場合は、発生した試薬液滴は、スペーサー流体が通過する間、インジェクター(
図6aの側面インレット)の端部に付着したままである。取得したビデオの目視検査では、液滴の離脱は、3相間に形成された連続的な毛細管ブリッジが、その場にとどまる試薬液滴に接触する際に生じる(
図6b)。スペーサー相と連続相との間の界面張力が、試薬液滴の離脱を誘導するのに必要な力を提供する。離脱後、連続的な毛細管ブリッジは、可動式の液滴融合チャンバーとして働き(
図6c)、これによって、2つの液滴間の連続相の排除とともに、反応体液滴と試薬液滴との間の接触が可能になり、これは、液滴の融合に必要である(
図6d)。融合後、試薬相と反応体相とが、反応体液滴に運動によって誘導された内部流動のために混合される(
図6d)。
【0050】
段階b)において、反応体液滴が注入点から離脱すると、試薬流体のメニスカスはインジェクターの端部から収縮し、確実に、反応体液滴と試薬リザーバーとの間の接触を防ぐ。試薬流体のメニスカスは、反応体液滴A
n+1が注入点に到達する前にインジェクターから収縮し、反応体液滴A
n+1が注入点にある場合は収縮したままである。
【0051】
メニスカスの収縮を増大させるために、好適には、別の圧縮性流体を含み、及び/または圧縮性材料を含む注入デバイスを使用する。例えば、注入デバイスのチャンバーは、本明細書では注入チャンバーと呼ばれ、試薬リザーバーと注入点との間に配置され、試薬流体及び空気を含みうる。試薬液滴が分離すると、離脱が生じ、メニスカスは、圧力の変化に起因してインジェクターの端部から収縮する。この現象は、注入デバイスをキャパシタまたはキャパシタンスに接続することによって強められ、抵抗/キャパシタンスと共に働いて、圧力変動を発生させ、そのためメニスカスの収縮を強めることができる。
【0052】
好適な実施形態において、試薬液滴は、側面インレットを通して注入され、一連の液滴が循環している流路またはチューブ内に現れる。注入デバイスは、好適にはピコインジェクターまたはナノインジェクターであるが、任意の適切な手段とすることもできる。好適には、側面インレットは、流路内の穴であり、穴の横方向側面の両方において、流路は、油を含む第1の被覆によって取り囲まれ、この第1の被覆は、ポリマーによって被覆される。ポリマーは、試薬流体の性質によって、ポリアクリルなどの親水性ポリマーまたは疎水性ポリマーとすることができる。
【0053】
注入は連続的または不連続的とすることができるが、好適には不連続である。不連続な注入により、状況に応じて試薬液滴の体積の制御が可能になる。さらに、不連続な注入では、要求された場合にのみ、「ターゲット」反応体液滴及び、それに従って注入を選択することができる。そのため、段階b)の前に、本方法は、有利には反応体液滴A
n+1を検出する段階を含む。反応体液滴A
n+1は、任意選択的な手段(レーザービーム、蛍光、ラマン分光分析、画像取得など)、電気的手段(インピーダンスなど)、磁気的手段、放射線測定手段、音響手段からなる群から選択された検出手段によって検出可能である。さらに、この方法は、反応体液滴A
n+1を検出する段階の後であるが、段階c)の前に、検出された液滴A
n+1を選択し、それによって試薬液滴の体積を調整し、その体積はヌル(注入しない)かまたは1pLより多い段階を含むことができる。
【0054】
不連続な注入によって、一連の反応体液滴が不規則である場合に、本方法は実装可能である。不規則な連なりは、液滴の大きさ及び/または連なりを構成する液滴の間の距離の変動によって定義される。本発明の方法において、連なりは、完全な連なりまたは不規則な連なりである。
【0055】
好適な実施形態において、試薬相の注入は、ポリマーマニホールドによって側面インレットに整列されたバルブ、特にソレノイドバルブによって行われ、バルブは試薬リザーバーに接続される。デバイスはさらに、メニスカス収縮を強めるためにキャパシタもしくはキャパシタンスを、及び/または注入された体積を正確に制御するために抵抗を含んでもよい。
【0056】
スペーサーは、試薬、反応体及び連続相とは混合しない気体または液体とすることができる。第1の実施形態において、スペーサーは、圧縮空気、アルゴン、窒素、CO
2、または前述のものの組み合わせからなる群から選択された気体である。
【0057】
この実施形態において、試薬を含む液滴の流体は、試薬液滴と溶解しない流体、例えば鉱物油またはシリコーンオイルとすることができる。そのような場合、注入後に、システムは4相システムとなる。この一連の4相は、反応体相内の特定の試薬の溶解性に困難が存在するような分析を行う際に適切である。
【0058】
第2の実施形態において、スペーサーは、鉱物油など、連続相、反応体相及び試薬相と混合しない液体である。
【0059】
通常、マイクロ/ミリ流体デバイスの流路は、好適には、フッ化物ポリマー、より好適にはテフロン(登録商標)からなる。連続相は好適にはフッ化物オイル及び可能な場合には界面活性剤を含む。当業者は、これらの成分を使用する。
【0060】
当業者であれば、反応体液滴及び、状況に応じて試薬を含む液滴の流体を、予測される反応に応じて、その技術的知識に基づいて選択するであろう。反応体液滴は個別の、小体積の液滴であり、ほぼ同一の小体積の液滴である場合があり、これらは流路を共通の速度で通過する。
【0061】
例えば、以下の試薬−反応体を使用することができる。
胞子産生:ジャガイモのD型グルコース寒天プレート
成長媒体:ペプトン−グルコース−塩、pH4.6
酵素活性:Bodipy FL EnzChekキット(アセテートバッファ4.6内)このキットは、クエンチした蛍光を有するでんぷん基板を含む。この基板は、アミラーゼによって効率的に分解され、消化はクエンチを緩和し、高度に蛍光を有する破片を得る。これに伴う蛍光の増加は、アミラーゼ活性に比例し、蛍光で監視することができる。
【0062】
本方法についての実際の応用の例として、コンビナトリアル化学、化学生物学スクリーン、遺伝子シーケンシングを挙げることができる。生物学スクリーンの例として、代謝産物(酵素、薬品)を産生する微生物のスクリーニングを挙げることができる。そのため、本発明はまた、コンビナトリアル化学、化学生物学スクリーン、遺伝子シーケンシングにおいて使用するための方法にも関する。
【0063】
一連の3相は、当業者に知られている方法によってT接続を用いることによってミリ/マイクロ流体流路管の内部で生成され、液体の流速は、ポンプ及び、圧力制御部による気体圧力によって制御される。
【0064】
好適な実施形態において、デバイスはミリ流体デバイスである。
【0065】
本発明はまた、
連続相、少なくとも2つの反応体液滴、及びnが0以上の整数である2つの反応体液滴A
nとA
n+1との間の少なくとも1つのスペーサープラグを含む一連の3相マイクロ/ミリ流体で満たされたミリ/マイクロ流体流路管と、
流路上に開く、液相内の試薬を含むリザーバーと接続された開口部と、
リザーバーと開口部とを接続するバルブと、
開口部の上流側に配置された検出器と、を含む、
ミリ流体またはマイクロ流体デバイスに関する。
【0066】
検出器は、バルブの開放を、反応体液滴の到達と同期させることを可能にする。特に、バルブはソレノイドバルブである。注入される反応対象物の体積は、バルブの開放時間(脈動時間)によって制御される。
【0067】
ミリ流体またはマイクロ流体デバイスの等価回路は以下の通りでありうる。2つの抵抗R1及びR2が直列に接続されている。この2つの抵抗の間の接続は、抵抗R3と直列に、素子ICに接続されている。
【0068】
素子ICは、並列に配置されたキャパシタC1及び抵抗R4からなる。
【0070】
以下の説明において、デバイスは、例示的ではあるが限定的ではない実施形態として、側面インレットが流路内の穴であるデバイスを参照して説明される。そして、本発明はまた、穴によって穿孔された流路管と、穴の側方の両側において、流路を取り囲む被覆内の空間によって形成された注入チャンバーと、試薬リザーバーと、任意選択的にバルブと、を含むミリ流体またはマイクロ流体デバイスに関する。通常、管はテフロン(登録商標)からなる。穴の大きさは、側面インレットに関して前述したとおりである。
【0071】
好適には、デバイスは、試薬リザーバーと注入チャンバーとの間のバルブを含む。特に、バルブはソレノイドバルブである。注入される反応対象物の体積は、バルブの開放時間(脈動時間)によって制御される。
【0072】
デバイスはさらに、試薬リザーバーと注入チャンバーとの間、より具体的には試薬リザーバーとバルブとの間に抵抗を含む。特に、抵抗は、試薬リザーバーと注入チャンバー、より具体的にはバルブを接続する薄いテフロン(登録商標)の管とすることができる。抵抗は、大きな流動抵抗を提供し、そのため、一定の追加された液滴体積を得るために使用される。ミリ流体システムでは、管は例えば100μmから300μm、より具体的には200μmの内径を有する。
【0073】
穴の側方両側における流路は、ポリマー被覆によって取り囲まれている。被覆は、本明細書ではマニホールドとも呼ぶ。ポリマーは、任意の適切なポリマーとすることができ、試薬の性質に依存して、当業者によって、その技術的知識に基づいて選択される。特定の実施形態において、ポリマーはアクリル系である。ポリマーと流路との間に、被覆は有利にはさらに油の相を含む。油の性質は、好適には連続相の油と同一である。
【0074】
マニホールドは、試薬リザーバー及び/またはバルブ並びに穴を整列させるように使用される。試薬リザーバー及び/またはバルブは、取付けナットアクセサリなどの適切な手段によって、マニホールドに対して整列され、取り付けられる。
【0075】
注入チャンバーは、穿孔した穴と整列され、特にバルブと穿孔した穴との間に整列されたマニホールドの内部の空間である。注入チャンバーの等価回路図は、並列に接続された抵抗及びキャパシタンスである。
【0076】
好適な実施形態において、キャパシタンスは注入デバイスのチャンバー内に存在する圧縮性流体である。
【0077】
他の実施形態において、キャパシタンスは人工気泡として働くこととなる薄い柔軟なメンブレンである。そのようなメンブレンは、チャンバー内に開けられた穴にシールされうる。
【0078】
他の実施形態において、キャパシタンスは、弾性率の低い材料からなる壁を有する管である。
【0079】
デバイスの等価回路は
図11に示されており、R1及びR2は注入点の両側における一連の液滴の流動抵抗に対応し、R3は前述の抵抗であり、R4は試薬流体が注入チャンバーを通過する流動に起因する抵抗であり、C1は注入チャンバー内部のキャパシタンスである。
【0080】
本発明は、対象として、
図11に示された等価回路を有するミリ/マイクロ流体デバイスを有する。
【0081】
デバイスは、例示的であるが制限的でない実施形態として、
図8に示されたデバイスを参照して説明される。
【0082】
そのため、ミリ流体またはマイクロ流体デバイスは、穴(
図8、3)によって穿孔された流路管(
図8、1)と、穴の側面両方において流路を取り囲む(
図8、8)アクリルマニホールド内の空間によって形成された注入チャンバーと、試薬リザーバー(
図8、2)と、バルブ(
図8、9)と、を含む。
【0083】
本発明は、以下の非限定的な例で説明される。
例1:一連の3相ミリ流体の生成
一連の3相は、連続相(フッ化物オイル Novec HFE7500+0.5%v/v パーフルオロオクタノール界面活性剤)と、反応体液滴(ペプトン−グルコース−塩媒体、pH4.6)と、スペーサー流体(空気または鉱物油)と、からなる。一連の流体は、T接続を使用して、750umのID FEPテフロン(登録商標)管内に生成され、液体の流速は、シリンジポンプ及び圧力制御部による気体の圧力で制御される。一連の空気のスペーサーでは、フッ化物オイル及び媒体の流速はそれぞれ6.5及び7.5ml/hであり、空気の圧力は1Barである。一連の鉱物油スペーサーについては、フッ化物オイル、媒体及び鉱物油の流速はそれぞれ、5、5、及び10ml/hである。
【0084】
実験的に測定された表面の値(ペンダント液滴法)は、以下の通りである。
γ(HFE+PFO 0.5%)/空気:12.5mN/m±0.5mN/m
γ(HFE+PFO 0.5%)/鉱物油:3.7mN/m±0.5mN/m
γ(HFE+PFO 0.5%)/水:30.5mN/m±0.5mN/m
【0085】
液滴放出機構の実験的評価に関して、フルオレセインイソチオシアネートFITC 1E−04Mが、反応体液滴流体として使用される。水の液滴は、空気または鉱物油スペーサーとともに、一連のミリ流体内に注入される。注入は、反応体液滴の蛍光検出によって開始され、3つの異なる半径(30、50及び90μm)で穿孔された穴を通してソレノイドバルブによって活性化される。Rminは、提案される離脱メカニズムに従う最小の液滴半径であり、注入プロセスのビデオキャプチャの画像分析によって決定される。
【0086】
報告された値は以下の表のとおりである。
【0088】
最小液滴半径に対する離脱モデルの予測の測定結果に関するグラフ
結果は
図12に示されている。
【0089】
物質及び方法
1. 750μm ID FEPテフロン(登録商標)管上への一連のミリ流体液滴の発生(シリンジポンプ及び/または圧力制御部)
一連の要素:
a.スペーサー流体:圧縮空気または鉱物油(管の内径の少なくとも3倍の長さ)
b.連続相:フッ化物オイル Novec HFE7500+0.5%v/vパーフルオロオクタノール表面活性剤
c.反応体液滴:ペプトン−グルコース−塩媒体+BodipyFL(管の内径の80から85%の高さ)
2. 反応対象物液滴の注入(メチレンブルー水溶液またはアセテートバッファ(pH4.5)溶液+BodipyFL) 本方法の要素は
図8に示されている。
段階:
a.反応体液滴の蛍光信号検出。
b.(管内に穿孔された穴を通した)反応体液滴の前方への反応対象物液滴の注入。注入は、アクリル系マニホールド(Lee社製マニホールド取付けキット)によって、穿孔された穴に整列されたソレノイドバルブ(Lee社製VHS型)によって行われる。画像取得による評価(GuppyProファイアーワイヤーカメラ及びNikon10倍対物レンズ)。
図6a。
c.反応対象物液滴の穿孔された穴への付着。
図6a。
d.同期:穿孔された穴から連続相毛細管ブリッジ(可動受動融合チャンバー)内への試薬液滴の離脱。画像取得による評価。
図6b。
e.可動受動融合チャンバー上における、試薬液滴及び反応体液滴の接触。画像取得による評価。
図6c。
f.可動受動融合チャンバーの連続相の排出。画像取得による評価。
図6c。
g.液滴融合。画像取得及び蛍光信号モニタリングによる評価。
図6d。
【0090】
結果
スペーサー流体として空気(
図6)及び鉱物油を有する一連のミリ流体での試薬液滴注入試験は、自己同期形式の4つの典型的な段階、試薬液滴の発生、試薬液滴のノズルからの離脱、液滴の接触及び連続相の排出、並びに液滴の融合を示した。
【0091】
試薬溶液としてメチレンブルー溶液を使用することによって、液滴融合後の混合流動パターンを観察することができる。
【0092】
BodipyFL 5x溶液の追加後、一連のミリ流体の蛍光ピークプロファイルが観察される。ギャップがないことは、全ての液滴への投与を示しており、その一方、最大レベルが一定であることは、追加された液滴の体積が一定であることを示している。
【0093】
実施例
Aspergillus nigerの変異株の胞子が、0.000375のODを得るための抽出後に、PGS媒体内で希釈される。この濃度により、PGS媒体反応体液滴内への単一の胞子の閉じ込めが可能となる。空気スペーサーを有する、3105個の反応体液滴の一連のミリ流体が、30mの長さのFEPテフロン(登録商標)管(750um ID)内で生成された。一連の流体の生成について、(0.5% v/v パーフルオロオクタノール界面活性剤を有する)Novec7500フッ化物オイル及びPGS媒体の流速は、それぞれ6.5及び7.5ml/hであり、空気の圧力は1Barである。一連の流体は、一定の圧力(250mBar)を印加することによって前後に循環する。一連の流体の全てがレーザー液滴検出器を通過した後、一連の液滴の流動方向は自動的に切り替えられる。30℃における菌の成長の30h後の酵素活性を決定するために、5nLのBodipy FL液滴が、本発明のモジュールを用いて、一連の流体の循環のために250mBarの圧力、試薬液滴追加のために300mBarの圧力を印加し、50μmの半径の穿孔された穴について、ソレノイドバルブ解放のための3msパルスを発生させて、一連のミリ流体の各液滴内に注入される。液滴追加と蛍光検出との間の45秒の遅延は、追加モジュールと蛍光モジュールとが30cmだけ離れて位置することによって得られる。この遅延により、多数の先行試験によって示されるように、酵素活性曲線の線形区間内に各液滴の単一のデータ点を確実に集めることができる。追加された一連の流体の蛍光信号が、
図9b(拡大図)に示されている。この曲線において、ベースラインは、空の液滴の信号に対応し、ピークは菌で占められた558個の液滴のアミラーゼ活性による蛍光に対応する。
【0094】
図9a及び9bは、空の液滴の一定の蛍光強度として表される高品質の追加モジュールを示している。
【0095】
ミリ流体システムで分析されたAspergillus niger変異ライブラリの酵素活性が
図10に示されており、ライブラリの酵素活性における幅広い分布とともに、空の液滴と菌に占められた液滴との間の完全な区別が観察された。
【0096】
例2:可変体積注入の例
蛍光により、追加された液滴の体積を決定するために、蛍光色素濃縮液滴が、スペーサーとして気泡を有する希釈された蛍光色素液滴で形成された一連のミリ流体内に追加される。一連のミリ流体発生条件は、前述の例1で示されたものと同一である。ソレノイドバルブの作動は、蛍光による液滴検出に基づく。FITC蛍光色素 1E−04M液滴が、本発明のモジュール(穿孔された穴の半径:50μm)を用い、ソレノイドバルブ(Lee社製VHS型)の開放の10msパルス、一連の流体の循環のための150mBarの圧力、及び試薬液滴追加のための150から300mBarの可変圧力を印加して、一連のミリ流体(FITC蛍光色素 1E−06M液滴)の各液滴内に注入される。一連のミリ流体への注入の完了後、流動は追加された液滴の蛍光信号を記録するために反転される。注入された一連の流体の蛍光信号は
図13に示されており、各ステップは試薬液滴追加の異なる圧力に対応する。圧力の増加とともに試薬液滴の体積の増加が
図14において見られ、これは取得されたビデオのスナップショットに対応する。質量バランスは、ターゲット液滴体積の試薬液滴体積に対する比(V
T/V
R)の定量化を可能にし、V
T/V
R=(C
F−C
T)/(C
R−C
F)で表され、C
F、C
T及びC
Rは、追加された液滴、ターゲット液滴及び試薬液滴の濃度である。蛍光色素の濃度と蛍光ピークの高さとの間の比が与えられると、C
F及びC
Tは、追加された液滴及びターゲット液滴についての蛍光ピークの高さに対応する。C
R/C
T=100では、各ステップについての平均ピーク高さの値を用いて、(V
T/V
R)についての計算値は、
図15に印加された圧力の試薬液滴追加の関数としてプロットされる。98から16のV
T/V
Rの比が、実験した圧力範囲で観察され、幅広い体積の範囲に渡って、試薬液滴を生成するための開発されたモジュールの柔軟性を明らかにした。この特徴は、マイクロ及びミリ流体システム内の濃度勾配の生成についての潜在的な用途を有している。
【0097】
例3:メニスカス収縮の増加
注入システムにキャパシタを導入することによるメニスカス収縮の増加を行うために、気泡が試薬リザーバー内に導入される。試薬液滴形成の際の離脱後、メニスカスの位置がビデオ取得によって記録された。
図16は、2.5ml/hで流れるフッ化物オイルNovec7500+0.5% v/v パーフルオロオクタノール界面活性剤の流動における、50μmの半径の穴を通過する、連続的な試薬流動下における最大メニスカス収縮(水、印加圧力100mBar)を示している。同一の動作条件を維持して、気泡がない状態で行った平行試験(
図16、左)と比較すると、メニスカス収縮は気泡が存在する場合の方が大きい(
図16、右)。この効果は、試薬液滴が分離した後の気泡の圧縮性によって圧力の変化が大きくなることに起因している。