特許第6676050号(P6676050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676050
(24)【登録日】2020年3月13日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/16 20060101AFI20200330BHJP
   B43K 21/00 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   B43K21/16 W
   B43K21/00 H
   B43K21/16 H
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-526324(P2017-526324)
(86)(22)【出願日】2016年6月24日
(86)【国際出願番号】JP2016068863
(87)【国際公開番号】WO2017002731
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2019年3月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-130240(P2015-130240)
(32)【優先日】2015年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-252071(P2015-252071)
(32)【優先日】2015年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100199255
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 大幸
(72)【発明者】
【氏名】梶 原 巧
(72)【発明者】
【氏名】瀬 利 伸 一
(72)【発明者】
【氏名】石 川 淳
(72)【発明者】
【氏名】河原崎 勇 二
【審査官】 飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−89393(JP,U)
【文献】 実開昭61−71488(JP,U)
【文献】 実開昭60−78491(JP,U)
【文献】 特開2013−252661(JP,A)
【文献】 特開2000−62383(JP,A)
【文献】 特開2007−223256(JP,A)
【文献】 特開2012−11692(JP,A)
【文献】 特開2015−123689(JP,A)
【文献】 特開平8−192595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/16
B43K 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、
前方領域が前記軸筒内において撓み変形可能あるいは傾動可能であるように後方領域が前記軸筒内に支持された、筆記芯を繰り出すための芯繰出ユニットと、
前記芯繰出ユニットの前方領域の外周面に設けられた張出部と、
前記軸筒の前記張出部よりも軸方向後方の内周面に設けられた突出部と、
前記張出部と前記突出部との間に圧縮状態で配置された伸縮可能な弾性体と、
を備え、
前記芯繰出ユニットは、前方領域の外周面に被押圧部を有しており、
前記軸筒は、前方領域に押圧部を有しており、
前記押圧部と前記被押圧部との少なくとも一方は、軸方向後方に向かって次第に大径となるテーパ面であり、
前記芯繰出ユニットの前方領域が前記軸筒内において撓み変形あるいは傾動する前においては、前記押圧部と前記被押圧部とが互いに当接しており、前記芯繰出ユニットの前方領域が前記軸筒内において撓み変形あるいは傾動する際には、前記押圧部が前記被押圧部を当該軸筒に対して軸方向後方に相対移動させるようになっている
ことを特徴とするシャープペンシル。
【請求項2】
前記芯繰出ユニットの前記被押圧部が前記テーパ面であり、当該テーパ面は、前記軸筒の軸方向に対して20°〜60°の間のいずれかの角度を有しており、
前記弾性体は、コイルバネであり、
前記コイルバネによる付勢力に対抗して前記被押圧部を前記軸筒に対して軸方向後方に相対移動させるために必要な荷重は、0.5N〜8Nの間のいずれかの値である
ことを特徴とする請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項3】
前記芯繰出ユニットの前記被押圧部が前記テーパ面であり、当該テーパ面は、前記軸筒の軸方向に対して20°〜60°の間のいずれかの角度を有しており、
前記弾性体は、第1コイルバネと第2コイルバネとが直列に配置されて構成されており、
前記第1コイルバネによる付勢力に対抗して前記被押圧部を前記軸筒に対して軸方向後方に相対移動させるために必要な荷重は、0.5N〜5Nの間のいずれかの値であり、
前記第2コイルバネによる付勢力に対抗して前記被押圧部を前記軸筒に対して軸方向後方に相対移動させるために必要な荷重は、2N〜10Nの間のいずれかの値である
ことを特徴とする請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項4】
前記芯繰出ユニットは、前記軸筒の内部で当該軸筒の軸方向に延在する芯パイプと、前記芯パイプの前端部に固定され外周面に突部が形成されたコネクタと、前記コネクタの前端部に固定されたチャックと、前記チャックの前方領域に外嵌された締めリングと、前記コネクタを軸方向後方に付勢するリターンスプリングと、前記軸筒と前記芯パイプとの間に形成された空間部において当該芯パイプの外周に遊嵌するように配設された重量体と、を有しており、
前記重量体は、前記軸筒が前後に振られた際に前記空間部の内部を前後動して、前方において前記コネクタの前記突部に当接するようになっている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシャープペンシル。
【請求項5】
前記芯繰出ユニットの先端領域に配置され、当該芯繰出ユニットに対して前記軸筒の軸方向に相対移動可能な口金を更に備え、
前記芯繰出ユニットは、前記口金によって前端部が取り囲まれた芯繰出ユニット本体と、前記口金を当該芯繰出ユニット本体に抜け止め状態で保持するための保持部材と、を有している
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のシャープペンシル。
【請求項6】
前記保持部材は、筒状であり、内面に縮径部を有しており、
前記口金は、前記縮径部よりも前記軸筒の軸方向後方の外面に、当該縮径部の内径よりも大径の拡径部を有している
ことを特徴とする請求項5に記載のシャープペンシル。
【請求項7】
前記被押圧部は、前記保持部材に設けられている
ことを特徴とする請求項5または6に記載のシャープペンシル。
【請求項8】
前記口金は、
前記軸筒の前端から軸方向前方に突出し、前記芯繰出ユニットから繰り出される前記筆記芯を取り囲む、筒状の前方領域と、
前記前方領域の、前記軸筒の軸方向後方に設けられ、当該軸筒の径方向外方に広がる肩部と、
を有し、
前記軸筒は、前記肩部よりも前記軸筒の軸方向前方に当該軸筒の径方向内方に張り出した内鍔を有し、
前記肩部と前記内鍔とは、点接触または線接触する
ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載のシャープペンシル。
【請求項9】
前記肩部は、前記軸筒の軸方向後方に向かって大径となる第2テーパ面であり、
前記第2テーパ面と前記内鍔とが互いに当接する
ことを特徴とする請求項8に記載のシャープペンシル。
【請求項10】
前記第2テーパ面は、前記軸筒の軸方向と直交する平面に対して、5°以上20°以下の角度を有している
ことを特徴とする請求項9に記載のシャープペンシル。
【請求項11】
前記内鍔は、前記軸筒の軸方向後方に向かって突出し前記肩部に当接する突起を有し、
前記突起と前記肩部とが互いに当接する
ことを特徴とする請求項8に記載のシャープペンシル。
【請求項12】
前記内鍔は、前記肩部に面する領域に、前記軸筒の軸方向前方に向かって大径となる第3テーパ面を有し、
前記第3テーパ面と前記肩部とが互いに当接する
ことを特徴とする請求項8または11に記載のシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノック操作等により筆記芯を所定量だけ口金の先端から繰り出すことにより筆記が可能なシャープペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シャープペンシルを用いて筆記を行う際に筆記芯に高い筆圧が加えられると、口金の先端から露出された筆記芯が容易に折損してしまう、という問題があった。筆記芯の折損は、筆圧が一定であれば、シャープペンシルの軸筒の軸方向と紙面とのなす角度が小さくなるほど(軸筒を寝かせるほど)、あるいは、口金の先端から露出される筆記芯の長さが長くなるほど、顕著である。
【0003】
このような問題に対し、特許文献1(特開2015−123689)には、筆記芯に高い筆圧が加えられた際に、筆圧の軸方向の成分と筆圧の当該軸方向に垂直な成分とをそれぞれ異なる機構により吸収して筆記芯の折損を低減させる、というシャープペンシルが記載されている。
【0004】
具体的には、特許文献1のシャープペンシルは、口金が弾性体(コイルバネ)を介して軸筒に支持されており、当該口金は、軸方向後方に向かって次第に小径となるカム斜面を有している。また、軸筒には、カム斜面を軸方向前方に押圧する押圧部が形成されている。このような構成により、筆圧の軸方向に垂直な成分(軸筒径外方向の力)に起因して、口金のカム斜面が軸筒の押圧部によって軸方向前方に押圧されて、軸筒の先端から口金が前方にスライドする(飛び出す)。これにより、口金の先端から露出される筆記芯の長さが減少されるようになっている。
更に、特許文献1のシャープペンシルは、筆記芯を繰り出す芯繰出ユニットが、弾性体(コイルバネ)によって軸方向前方(軸方向における口金の先端方向)に付勢された状態で、軸方向に相対移動可能に軸筒に支持されている。そして、筆記芯を含む芯繰出ユニットが軸筒に対して軸方向後方に相対移動することによって、筆圧の軸方向の成分が吸収される。この結果、口金の先端から露出される筆記芯の長さが一層減少されて、筆記芯の折損が低減されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−123689
【0006】
特許文献1に記載されているシャープペンシルでは、筆記芯に高い筆圧が加えられた際に、軸筒に対して口金が前方にスライドできる最大の長さ(ストローク)に亘って当該口金が一気にスライドする(飛び出す)ようになっている。
【0007】
これに対して、本件発明者は、筆記芯に高い筆圧が加えられた際に、口金に対して筆記芯が後方にスライドする構成を開発し、そのような構成の方が筆記感が滑らかであると感じる使用者が多いことを確認した。
【0008】
本発明は、以上のような知見に基づいており、その目的は、筆記芯に高い筆圧が加えられた際に当該筆記芯の折損を確実に回避することができると共に、筆記感が滑らかなシャープペンシルを提供することである。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、軸筒と、前方領域が前記軸筒内において撓み変形可能あるいは傾動可能であるように後方領域が前記軸筒内に支持された、筆記芯を繰り出すための芯繰出ユニットと、前記芯繰出ユニットの前方領域の外周面に設けられた張出部と、前記軸筒の前記張出部よりも軸方向後方の内周面に設けられた突出部と、前記張出部と前記突出部との間に圧縮状態で配置された伸縮可能な弾性体と、を備え、前記芯繰出ユニットは、前方領域の外周面に被押圧部を有しており、前記軸筒は、前方領域に押圧部を有しており、前記押圧部と前記被押圧部との少なくとも一方は、軸方向後方に向かって次第に大径となるテーパ面であり、前記芯繰出ユニットの前方領域が前記軸筒内において撓み変形あるいは傾動する前においては、前記押圧部と前記被押圧部とが互いに当接しており、前記芯繰出ユニットの前方領域が前記軸筒内において撓み変形あるいは傾動する際には、前記押圧部が前記被押圧部を当該軸筒に対して軸方向後方に相対移動させるようになっていることを特徴とするシャープペンシルである。
【0010】
本発明によれば、筆記芯に高い筆圧が加えられた際に、筆圧の軸方向に垂直な成分によって、芯繰出ユニットの前方領域が軸筒内において撓み変形あるいは傾動される。これにより、筆記芯を含む芯繰出ユニットが弾性体の付勢力に対抗して軸筒に対して軸方向後方に相対移動されるため、口金の先端から露出される筆記芯の長さが減少される。更に、筆圧の軸方向の成分によって、筆記芯を含む芯繰出ユニットが弾性体の付勢力に対抗して軸筒に対して軸方向後方に更に相対移動され、口金の先端から露出される筆記芯の長さが一層減少される。これらのことにより、筆記芯に高い筆圧が加えられた際に当該筆記芯の折損が確実に回避される。また、この時、口金が軸筒に対して軸方向前方に相対移動される(飛び出す)のではなく、筆記芯を含む芯繰出ユニットが口金に対して軸方向後方に相対移動されることによって、当該口金から露出される筆記芯の長さが減少される。このことにより、筆記感が滑らかなシャープペンシルを提供することができる。
【0011】
好ましくは、前記芯繰出ユニットの前記被押圧部が前記テーパ面であり、当該テーパ面は、前記軸筒の軸方向に対して20°〜60°の間のいずれかの角度を有しており、前記弾性体は、コイルバネであり、当該コイルバネによる付勢力に対抗して前記被押圧部を前記軸筒に対して軸方向後方に相対移動させるために必要な荷重は、0.5N〜8Nの間のいずれかの値である。
【0012】
この場合、筆記芯に高い筆圧が加えられた際に、筆記芯を含む芯繰出ユニットが軸筒に対して軸方向後方に確実に相対移動され得るため、筆記芯の折損が確実に回避される。一方、筆記芯に適正な筆圧が加えられている際に、筆記芯を含む芯繰出ユニットが軸筒に対して軸方向後方に実質的に相対移動されないため、書き味を損ねることが無い。
【0013】
あるいは、好ましくは、前記芯繰出ユニットの前記被押圧部が前記テーパ面であり、当該テーパ面は、前記軸筒の軸方向に対して20°〜60°の間のいずれかの角度を有しており、前記弾性体は、第1コイルバネと第2コイルバネとが直列に配置されて構成されており、前記第1コイルバネによる付勢力に対抗して前記被押圧部を前記軸筒に対して軸方向後方に相対移動させるために必要な荷重は、0.5N〜5Nの間のいずれかの値であり、前記第2コイルバネによる付勢力に対抗して前記被押圧部を前記軸筒に対して軸方向後方に相対移動させるために必要な荷重は、2N〜10Nの間のいずれかの値である。
【0014】
この場合、相対的に小さな荷重で圧縮変形が開始する第1コイルバネ及び相対的に大きな荷重で圧縮変形が開始する第2コイルバネによって、この順序で段階的に筆圧が吸収されるため、筆記芯を含む芯繰出ユニットが軸筒に対して軸方向後方に相対移動される際の弾性体の付勢力による抵抗感を、最適化することができる。
【0015】
また、好ましくは、前記芯繰出ユニットは、前記軸筒の内部で当該軸筒の軸方向に延在する芯パイプと、前記芯パイプの前端部に固定され外周面に突部が形成されたコネクタと、前記コネクタの前端部に固定されたチャックと、前記チャックの前方領域に外嵌された締めリングと、前記コネクタを軸方向後方に付勢するリターンスプリングと、前記軸筒と前記芯パイプとの間に形成された空間部において当該芯パイプの外周に遊嵌するように配設された重量体と、を有しており、前記重量体は、前記軸筒が前後に振られた際に前記空間部の内部を前後動して、前方において前記コネクタの前記突部に当接するようになっている。
【0016】
この場合、軸筒を前後に振ることにより重量体の慣性力によってチャックが軸方向に前進させられるため、ノック操作を行うことなく迅速に筆記芯を繰り出すことができる。
【0017】
以上のようなシャープペンシルは、好ましくは、前記芯繰出ユニットの先端領域に配置され、当該芯繰出ユニットに対して前記軸筒の軸方向に相対移動可能な口金を更に備え、前記芯繰出ユニットは、前記口金によって前端部が取り囲まれた芯繰出ユニット本体と、前記口金を当該芯繰出ユニット本体に抜け止め状態で保持するための保持部材と、を有している。
【0018】
この場合、シャープペンシルの組立時や分解時において、口金が不所望に芯繰出ユニットから抜け落ちることがないため、作業性が良好である。
【0019】
好ましくは、前記保持部材は、筒状であり、内面に縮径部を有しており、前記口金は、前記縮径部よりも前記軸筒の軸方向後方の外面に、当該縮径部の内径よりも大径の拡径部を有している。この場合、前記芯繰出ユニットからの前記口金の抜け落ちが確実に防止される。
【0020】
より好ましくは、前記被押圧部は、前記保持部材に設けられている。この場合、被押圧部(テーパ面)を所望の位置に設けることが容易である。
【0021】
また、好ましくは、前記口金は、前記軸筒の前端から外方に突出し、前記芯繰出ユニットから繰り出される前記筆記芯を取り囲む、筒状の前方領域と、前記前方領域の、前記軸筒の軸方向後方に設けられ、当該軸筒の径方向外方に広がる肩部と、を有し、前記軸筒は、前記肩部よりも前記軸筒の軸方向前方に当該軸筒の径方向内方に張り出した内鍔を有し、前記肩部と前記内鍔とは、点接触または線接触している。
【0022】
この場合、軸筒の内鍔と口金の肩部との接触面積を極めて小さくすることができ、口金が軸筒に対してスムーズに移動することができる。このことにより、筆記芯を含む芯繰出ユニットが軸筒に対して軸方向後方に相対移動する際に滑らかな感触を提供することができる。
【0023】
具体的には、前記口金は、前記軸筒の前端から外方に突出し、前記芯繰出ユニットから繰り出される前記筆記芯を取り囲む、筒状の前方領域と、前記前方領域の、前記軸筒の軸方向後方に設けられ、当該軸筒の径方向外方に広がる肩部と、を有し、前記軸筒は、前記肩部よりも前記軸筒の軸方向前方に当該軸筒の径方向内方に張り出した内鍔を有し、前記肩部は、前記軸筒の軸方向後方に向かって大径となる第2テーパ面であり、前記内鍔と前記第2テーパ面とが互いに当接している。
【0024】
この場合、好ましくは、前記第2テーパ面は、前記軸筒の軸方向と直交する平面に対して、5°以上20°以下の角度を有している。この場合、良好な筆記感を提供しつつ、口金が軸筒に対して特にスムーズに移動することができる。すなわち、この角度が5°以上であれば、軸筒の内鍔と口金の肩部との摩擦抵抗が小さく、軸筒の径方向における口金のスムーズな移動が実現される。一方、この角度が20°よりも小さければ、筆記芯を含む芯繰出ユニットが軸筒に対して軸方向後方に相対移動する際に、口金が当該軸方向後方に大きく移動することが無く、筆記感の低下を回避することができる。
【0025】
あるいは、前記内鍔は、前記軸筒の軸方向後方に向かって突出し前記肩部に当接する突起を有し、前記突起と前記肩部とが互いに当接していても良い。
【0026】
この場合も、内鍔と肩部との接触面積を極めて小さくすることができ、口金が軸筒に対してスムーズに移動することができる。このことにより、筆記芯を含む芯繰出ユニットが軸筒に対して軸方向後方に相対移動する際に滑らかな感触を提供することができる。
【0027】
あるいは、前記内鍔は、前記肩部に面する領域に、前記軸筒の軸方向前方に向かって大径となる第3テーパ面を有していても良い。
【0028】
この場合、第3テーパ面の存在によって、軸筒の径方向内方の領域に口金の肩部に向かって突出した突起が形成されている。このため、内鍔と肩部との接触面積を極めて小さくすることができ、口金が軸筒に対してスムーズに移動することができる。このことにより、筆記芯を含む芯繰出ユニットが軸筒に対して軸方向後方に相対移動する際に滑らかな感触を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1の実施の形態のシャープペンシルの概略縦断面図である。
図2】筆記芯に筆圧が加えられていない場合の、図1のシャープペンシルの前方領域の概略縦断面図である。
図3】筆記芯に筆圧が加えられている場合の、図1のシャープペンシルの前方領域の概略縦断面図である。
図4】本発明の第2の実施の形態のシャープペンシルの概略縦断面図である。
図5】筆記芯に筆圧が加えられている場合の、図4のシャープペンシルの前方領域の概略縦断面図である。
図6図4のシャープペンシルにおいて、芯繰出ユニットに設けられた被押圧部としてのテーパ面の角度を変化させた場合の、芯引込量及び筆記芯の引き込みが開始する加重(作動加重)の一例を示す図表である。
図7】本発明の第3の実施の形態のシャープペンシルの概略縦断面図である。
図8】筆記芯に筆圧が加えられている場合の、図7のシャープペンシルの前方領域の概略縦断面図である。
図9図7のシャープペンシルの前方領域を分解図で示す概略縦断面図である。
図10図7のシャープペンシルの変形例を示す部分的な概略縦断面図である。
図11図7のシャープペンシルの他の変形例を示す部分的な概略縦断面図である。
図12図7のシャープペンシルの更なる変形例を示す部分的な概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、添付の図面を参照して本発明の第1の実施の形態を詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の第1の実施の形態のシャープペンシル100の概略縦断面図であり、図2は、筆記芯70に筆圧が加えられていない場合の、図1のシャープペンシル100の前方領域の概略縦断面図であり、図3は、筆記芯70に筆圧が加えられている場合の、図1のシャープペンシル100の前方領域の概略縦断面図である。
【0032】
本実施の形態のシャープペンシル100は、図1乃至図3に示すように、軸筒10と、軸筒10内に支持され、前方領域が当該軸筒10内において傾動可能な、筆記芯70を繰り出すための芯繰出ユニット40と、を備えている。本実施の形態の軸筒10は、ポリカーボネート製であり、後軸20と、後方領域が後軸20の前方領域に固定(螺着)された前軸30と、により構成されている。
【0033】
本実施の形態の芯繰出ユニット40は、軸筒10の内部で当該軸筒10の軸方向に延在するポリプロピレン製の芯パイプ41と、芯パイプ41の前端部にコネクタ49を介して固定された黄銅製のチャック43と、チャック43の前方領域に外嵌された黄銅製の締めリング42と、チャック43を取り囲む外筒45と、外筒45に対して芯パイプ41を軸方向後方に付勢するリターンスプリング44と、を有している。
【0034】
具体的には、図2及び図3に示すように、外筒45は、前方領域の内周面においてチャック43を支持すると共に後方領域の外周面に張出部としてのフランジ部45cを有する後筒45aと、後筒45aの前端領域に外嵌固定されチャック43の前端部を超えて軸方向前方に延在する前筒45bと、を有している。また、フランジ部45cは、後端部に、コネクタ49の外周面との間に隙間をもって軸方向後方に延びる円筒壁45dを有している。この円筒壁45dとコネクタ49との隙間において、フランジ部45cとコネクタ49の突部49aとの間にリターンスプリング44が圧縮状態で配置されており、外筒45に対して芯パイプ41を軸方向後方に付勢している。この状態で、チャック43は、締めリング42によって締められて筆記芯70を後退しないように挟持している。更に、前筒45bは、締めリング42よりも軸方向前方の内周面に当該締めリング42の前進を途中で規制する当接段部45eを有している。
【0035】
また、図1に示すように、軸筒10(後軸20)は、外筒45のフランジ部45cよりも軸方向後方の内周面に突出部21を有しており、この突出部21とフランジ部45cとの間に、伸縮可能なコイルバネ60が圧縮状態で配置されている。このような構成により、筆記芯70を含む芯繰出ユニット40は、コイルバネ60の付勢力に対抗して軸筒10に対して軸方向後方への相対移動が可能となっている。
【0036】
また、前軸30の後方領域の内径は、フランジ部45cの外径よりも大きくなっており、前軸30の内周面とフランジ部45cの外周面との間に隙間が形成されている。このことにより、軸筒10に対する芯繰出ユニット40の傾動が許容されている。
【0037】
また、芯繰出ユニット40の先端領域には、黄銅製の口金52が取り付けられている。本実施の形態の口金52は、芯繰出ユニット40の前端領域に固定された黄銅製の筒状のベース部材51に軸方向に相対移動可能に支持されており、当該ベース部材51と共に口金ユニット50を構成している。
【0038】
ベース部材51は、前端部に被押圧部53を有している。本実施の形態の被押圧部53は、軸筒10の軸方向に対して25°の角度を有するテーパ面として構成されている。また、軸筒10(前軸30)は、前方領域に内周面に張り出した押圧部32を有している。本実施の形態では、図2に示すように、芯繰出ユニット40が傾動する前においては、押圧部32と被押圧部53とが互いに当接している。そして、図3に示すように、芯繰出ユニット40が傾動する際に、押圧部32が被押圧部53を軸筒10に対して軸方向後方に相対移動させるようになっている。本実施の形態では、コイルバネ60のバネ定数は800N/mであり、当該コイルバネ60による付勢力に対抗して被押圧部53(テーパ面)を軸筒10に対して軸方向後方に相対移動させるために必要な荷重は、3.4Nである。
【0039】
また、本実施の形態では、図1乃至図3に示すように、ベース部材51は、前方領域51aの内径よりも後方領域51bの内径の方が小さくなっており、前方領域51aと後方領域51bとの接続部分の内周面に段部54が形成されている。前方領域51aの内周面と芯繰出ユニット40の外周面との間には円筒状の隙間が形成されており、この隙間に、口金52が挿入されている。
【0040】
具体的には、図2及び図3に示すように、口金52は、筆記芯70を案内するパイプ状の前方領域52aと、当該前方領域52aよりも大径のスリーブ状の後方領域52bと、によって構成されており、当該後方領域52bが前記円筒状の隙間に挿入されている。更に、軸筒10(前軸30)は、口金52の後方領域52bの前端部よりも軸方向前方の内周面に内鍔33を有しており、この内鍔33において軸筒10(前軸30)の内径が口金52の後方領域52bの外径よりも小さくなっている。すなわち、この内鍔33と口金52の後方領域52bとが当接して軸筒10に対する口金52の軸方向前方への相対移動が規制され、芯繰出ユニット40の抜けが防止されている。この状態で、口金52の後方領域52bの後端部とベース部材51の段部54との間に、伸縮可能なスプリング55が圧縮状態で配置されている。このような構成により、芯繰出ユニット40が軸筒10に対して軸方向後方に相対移動された際にも、口金52と軸筒10の内鍔33との当接状態が維持されるようになっている。これにより、筆記芯70を含む芯繰出ユニット40が軸筒10に対して軸方向後方に相対移動された際に、口金52の前端部から露出される筆記芯70の長さが減少されるようになっている。
【0041】
また、図1に示すように、芯繰出ユニット40は、芯パイプ41の後端に取り付けられて芯パイプ41を外筒45に対して軸方向前方に押圧するためのノック部48を、更に有している。本実施の形態のノック部48は、軸方向前方に、芯パイプ41の後端領域に外嵌されるスリーブ部48aを有しており、軸方向後方に円柱状の消しゴム80を取外可能に保持するホルダ部48bを有している。スリーブ部48aの内部空間とホルダ部48bの内部空間とは、開口によって連通されている。このことにより、消しゴム80をホルダ部48bから取り外すことによって、当該開口から筆記芯70を芯ホルダ41内に投入できるようになっている。また、ホルダ部48bには、消しゴム80の後方を覆うドーム状のノブ81が取外可能に外嵌されている。
【0042】
更に、本実施の形態では、後軸20の後端領域に頭冠23が固定されている。頭冠23の内周面には軸方向後方に面した段部23aが形成されている。また、ホルダ部48bの外周にフランジ部48cが形成されており、このフランジ部48cと段部23aとの間に、伸縮可能なスプリング48dが圧縮状態で配置されている。
【0043】
次に、本発明の第1の実施の形態のシャープペンシル100の作用について説明する。
【0044】
まず、紙面に対して筆記を行うに先立ち、必要に応じて、ノブ81と消しゴム80とがホルダ部48bから取り外され、スリーブ部48aとホルダ部48bとを連通する開口を介して筆記芯70が芯パイプ41内に投入される。そして、消しゴム80とノブ81とがホルダ部48bに取り付けられ、口金52の前端が下方に向けられた状態でノック部48(ノブ81)が軸方向前方に向かって押圧(ノック)される。これにより、芯パイプ41、コネクタ49、チャック43及び締めリング42がリターンスプリング44の付勢力に対抗して前進させられる。この前進の途中で、締めリング42のみが外筒45の前筒45bに形成された当接段部45eに当接する。これにより、チャック43から締めリング42が後方に外され、当該チャック43が開放されて筆記芯70が繰り出される。押圧(ノック)時には、ノック部48のフランジ部48cと頭冠23の段部23aとの間に配置されたスプリング48dの付勢力によって、適度な抵抗感がもたらされる。
【0045】
そして、ノック部48(ノブ81)の押圧状態が解除されると、芯パイプ41がチャック43と共にリターンスプリング44の付勢力によって後退させられる。これに伴って、締めリング42が再びチャック43の前方領域に外嵌され、チャック43が締められる。これにより、筆記芯70が後退しないように挟持され、筆記芯70が繰り出された状態が維持される。そして、この一連の押圧操作が適宜繰り返されることにより、口金52の先端から筆記芯70が所望の長さ露出される(繰り出される)(図2参照)。そして、使用者によって前軸30が把持され、紙面に対して筆記芯70を当接させつつ軸筒10を所望に移動させることによって、筆記が行われる。
【0046】
筆記の際、軸筒10は、その軸方向が紙面に対して鋭角をなす(図2および図3参照)ように把持されることが一般的である。このため、筆記芯70には、軸筒10の軸方向に垂直な成分と当該軸方向の成分とを含む筆圧が加えられる。本実施の形態のシャープペンシル100は、筆記時に筆記芯70に高い筆圧が加えられると、筆圧の軸方向に垂直な成分と軸方向の成分とをそれぞれ吸収して、口金52の先端から露出された筆記芯70の折損を回避する。
【0047】
具体的には、図3に示すように、筆圧の軸方向に垂直な成分によって芯繰出ユニット40の前方領域が傾動し、前軸30の押圧部32によってベース部材51の被押圧部53(テーパ面)が軸方向後方に押圧される。これにより、コイルバネ60の付勢力に対抗して、筆記芯70及びベース部材51を含む芯繰出ユニット40が軸筒10に対して軸方向後方に相対移動される。一方、口金52は、スプリング55の付勢力によってベース部材51に対して軸方向前方に押圧されているため、軸筒10に対して軸方向後方には相対移動されない。これらのことにより、口金52の先端から露出される筆記芯70の長さが減少される。
【0048】
これと同時に、図3に示すように、筆圧の軸方向の成分によって、筆記芯70が軸筒10に対して軸方向後方に押圧される。これにより、コイルバネ60の付勢力に対抗して、筆記芯70及びベース部材51を含む芯繰出ユニット40が軸方向後方に更に相対移動される。すなわち、口金52の先端から露出される筆記芯70の長さが一層減少され、当該筆記芯70の折損が回避される。
【0049】
そして、筆記芯70に加えられている筆圧が弱められると、コイルバネ60の付勢力によって、筆記芯70及びベース部材51を含む芯繰出ユニット40が軸方向前方に押し戻される。これにより、初期状態(図2参照)が復元される。
【0050】
以上のような本実施の形態によれば、筆記芯70に高い筆圧が加えられた際に、筆圧の軸方向に垂直な成分によって、芯繰出ユニット40の前方領域が軸筒10内において傾動される。これにより、筆記芯70を含む芯繰出ユニット40がコイルバネ60の付勢力に対抗して軸筒10に対して軸方向後方に相対移動されるため、口金52の先端から露出される筆記芯70の長さが減少される。更に、筆圧の軸方向の成分によって、筆記芯70を含む芯繰出ユニット40がコイルバネ60の付勢力に対抗して軸筒10に対して軸方向後方に更に相対移動され、口金52の先端から露出される筆記芯70の長さが一層減少される。これらのことにより、筆記芯70に高い筆圧が加えられた際に当該筆記芯70の折損が確実に回避される。また、この時、口金52が軸筒10に対して軸方向前方に相対移動される(飛び出す)のではなく、筆記芯70を含む芯繰出ユニット40が口金52に対して軸方向後方に相対移動されることによって、口金52から露出される筆記芯70の長さが減少される。このため、口金52の先端と紙面とが当接した際には、筆圧をわずかに弱めるだけでコイルバネ60の付勢力によって口金52から露出される筆記芯70の長さが速やかに増大されるため、口金52の先端と紙面との引っ掛かりを速やかに解消することができる。
【0051】
また、芯繰出ユニット40の被押圧部53がテーパ面であり、当該テーパ面は、軸筒10の軸方向に対して25°の角度を有しており、コイルバネ60のバネ定数は800N/mである。このような被押圧部53とコイルバネ60との組合せにより、当該コイルバネ60による付勢力に対抗して被押圧部53(テーパ面)を軸筒10に対して軸方向後方に相対移動させるために必要な荷重は、3.4Nである。このため、筆記芯70に高い筆圧が加えられた際に、筆記芯70を含む芯繰出ユニット40が軸筒10に対して軸方向後方に確実に相対移動されるため、筆記芯70の折損が確実に回避される。一方、筆記芯70に適正な筆圧が加えられている際に、筆記芯70を含む芯繰出ユニット40が軸筒10に対して軸方向後方に実質的に相対移動されないため、書き味を損ねることが無い。
【0052】
なお、芯繰出ユニット40が傾動するのではなく、当該芯繰出ユニット40が撓み変形するようになっていても良い。この場合も、軸筒10の軸方向に垂直な筆圧に起因して、芯繰出ユニット40を当該軸筒10に対して軸方向後方へ相対移動させることができる。この撓み変形は、例えば芯パイプ41を可撓性の材料で構成することにより、実現することができる。
【0053】
また、本実施の形態では、ベース部材51に、被押圧部53として軸方向後方に向かって次第に大径となるテーパ面が設けられていたが、このようなテーパ面が押圧部32として前軸30の前方領域に設けられていても良い。この場合、ベース部材51の被押圧部53は、軸筒10の径方向外側に張り出した張出部として形成されても良いし、本実施の形態のように軸方向後方に向かって次第に大径となるテーパ面として形成されても良い。
【0054】
また、本実施の形態では、芯繰出ユニット40としてノック式のものが採用されたが、軸筒10を前後に振ることによって筆記芯70が繰り出される振出式の芯繰出ユニットが採用されても良い。
【0055】
この場合、突部49aが芯パイプ41の外径を超えて軸筒10の径方向外側に突出したコネクタ49が採用されると共に、軸筒10と芯パイプ41との間に形成された空間部において芯パイプ41の外周に重量体を遊嵌させればよい。重量体としては、例えば軸筒10の軸線周りにワイヤを巻回して円筒状に形成された重さ2.3gのものが採用され得る。この場合、軸筒10が前後に振られた際に、重量体が前記空間部の内部を前後動して、軸方向前方においてコネクタ49の突部49aに当接する。そして、その当接の際に、コネクタ49が重量体の慣性力によって軸方向に前進させられ、筆記芯70が繰り出される。
【0056】
このような振出式の芯繰出ユニットを採用しても、ノック式の芯繰出ユニット40を採用した場合と同様の効果を得ることができる。更に、ノック操作を行うことなく迅速に筆記芯70を繰り出すことができる。
【0057】
次に、図4及び図5を参照して、本発明の第2の実施の形態のシャープペンシル200について説明する。
【0058】
図4は、本発明の第2の実施の形態のシャープペンシル200の概略縦断面図であり、図5は、筆記芯270に筆圧が加えられている場合の、図4のシャープペンシル200の前方領域の概略縦断面図である。図4及び図5に示すように、本実施の形態のシャープペンシル200は、第1の実施の形態と異なり、フランジ部251aが、外筒45の後方領域の外周面ではなくベース部材251の後方領域の外周面に設けられている。また、コイルバネ260の後端部に当接される突出部234が、フランジ部251aよりも軸方向後方において、後軸220ではなく前軸230の内周面に設けられている。そして、前軸230の突出部234とフランジ部251aとの間に圧縮状態で配置された伸縮可能なコイルバネ260として、弱コイルバネ260aとその軸方向後方に配置された強コイルバネ260bとが直列に接続されたものが採用されている。本実施の形態では、弱コイルバネ260aのバネ定数は、700N/mであり、強コイルバネ260bのバネ定数は、1000N/mである。
【0059】
弱コイルバネ260aと強コイルバネ260bとは、弱コイルバネ260aの圧縮長さを規制する円筒状の規制部材261を介して接続されている。この規制部材261は、弱コイルバネ260aの外側を覆うスリーブ部261aと、スリーブ部261aの後端部に一体的に形成された環状部261bと、を有している。更に、環状部261bは、スリーブ部261aの内壁よりも軸筒210の径方向内側に突出した内側突出部261cと、スリーブ部261aの外壁よりも軸筒210の径方向外側に突出した外側突出部261dと、を有している。本実施の形態では、内側突出部261cの内周面と芯繰出ユニット240の外周面との間に隙間が形成されており、芯繰出ユニット240が傾動した際に当該芯繰出ユニット240と規制部材261との干渉が回避されるようになっている。そして、フランジ部251aと内側突出部261cとの間に弱コイルバネ260aが伸縮可能に圧縮状態で配置されており、内側突出部261cと突出部234との間に強コイルバネ260bが伸縮可能に圧縮状態で配置されている。
【0060】
また、前軸230の突出部234よりも軸方向前方には、軸方向後方に面した段部235が形成されており、この段部235の軸方向後方に規制部材261の環状部261bが軸方向に摺動可能に内嵌されている。また、段部235よりも軸方向前方において、軸筒210(前軸230)の内径は、外側突出部261dの外径よりも小さくなっており、環状部261bが段部235を超えて軸方向前方へ摺動しないようになっている。本実施の形態では、筆記芯270に筆圧が加えられていない場合には、規制部材261の環状部261bは、強コイルバネ260bの付勢力によって、段部235に当接されている。この状態において、規制部材261のスリーブ部261aの前端部とフランジ部251aの後端部との間に、例えば0.8mmの隙間が形成されている。
【0061】
以上のような構成により、本実施の形態では、弱コイルバネ260aによる付勢力に対抗して被押圧部253(テーパ面)を軸筒210に対して軸方向後方に相対移動させるために必要な荷重は、2.5Nであり、強コイルバネに260bよる付勢力に対抗して被押圧部253(テーパ面)を軸筒210に対して軸方向後方に相対移動させるために必要な荷重は、7Nである。
【0062】
また、図1に示すように、本実施の形態の後軸220は、後方領域の内周面に突出部222を有しており、この突出部222とコネクタ249との間に重量体290が配置されている。重量体290としては、軸筒210の軸線周りにワイヤを巻回して円筒状に形成された重さ2.3gのものが採用され得る。後軸220の内径は、この突出部222において重量体290の外径よりも小径となっている。また、コネクタ249は、外周面に突部を有している。
【0063】
その他の構成は、第1の実施の形態のシャープペンシル100と同様である。図4及び図5において、第1の実施の形態と同様の構成部分には略同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0064】
次に、本実施の形態のシャープペンシル200の作用について説明する。
【0065】
本実施の形態のシャープペンシル200は、軸筒210が前後に振られることで、重量体290が軸筒210と芯パイプ241との間に形成された空間部内を軸方向前方においてはコネクタ249の突部に当接するまで、軸方向後方においては突出部222に当接するまで、前後動される。そして、重量体290が前進した際には、重量体290の慣性力でコネクタ249、チャック及び締めリングをリターンスプリング244の付勢力に対抗して前進させる。この前進の途中で、締めリングのみが外筒245の内周面に形成された当接段部に当接する。これにより、チャックから締めリングが軸方向後方に外され、当該チャックが開放されて筆記芯270が繰り出される。
【0066】
そして、コネクタ249に対する重量体290の慣性力の影響が無くなると、コネクタ249がリターンスプリング244の付勢力によって後退させられる。これに伴って、コネクタ249に係合されたチャックも後退し、再び締めリングがチャックの前方領域に外嵌され、チャックが締められる。これにより、筆記芯270が後退しないように挟持され、筆記芯270の繰り出された状態が維持される。そして、以上のような軸筒210の前後動が適宜繰り返されることにより、口金252の先端から筆記芯270が所望の長さ露出される(繰り出される)。
【0067】
本実施の形態のシャープペンシル200は、第1の実施の形態と同様にして、ノック部248が押圧(ノック)されることによっても、筆記芯270が繰り出される。押圧(ノック)時には、ノック部248のフランジ部248cと頭冠223の段部223aとの間に配置されたスプリング248dの付勢力によって、適度な抵抗感がもたらされる。
【0068】
そして、使用者によって前軸230が把持され、紙面に対して筆記芯270を当接させつつ軸筒210を所望に移動させることによって、筆記が行われる。
【0069】
筆記の際、前述の通り、筆記芯270に、軸筒210の軸方向に垂直な成分と当該軸方向の成分とを含む筆圧が加えられることが、一般的である。本実施の形態のシャープペンシル200も、第1の実施の形態と同様に、筆記時に筆記芯270に高い筆圧が加えられると、筆圧の軸方向に垂直な成分と軸方向の成分とをそれぞれ吸収して、口金252の先端から露出された筆記芯270の折損を回避する。
【0070】
具体的には、図5に示すように、筆圧の軸方向に垂直な成分によって芯繰出ユニット240の前方領域が傾動し、前軸230の押圧部232によってベース部材251の被押圧部253(テーパ面)が軸方向後方に押圧される。これにより、弱コイルバネ260a及び強コイルバネ260bの付勢力に対抗して、筆記芯270を含む芯繰出ユニット240が軸筒210に対して軸方向後方に相対移動される。
【0071】
この時、弱コイルバネ260aは、規制部材261のスリーブ部261aの存在により、例えば最大で0.8mmの圧縮変形が許容される。そして、弱コイルバネ260aが0.8mm圧縮変形されると、ベース部材251のフランジ部251aの後端部は、スリーブ部261aの前端部に当接される。この状態から更に芯繰出ユニット240が軸方向後方に相対移動される場合には、ベース部材251と芯繰出ユニット240と移動規制部材261とが一体となって、強コイルバネ260bの付勢力に対抗して軸方向後方に相対移動される。この相対移動の際には、圧縮状態で配置されている各コイルバネ260a、260bに更なる圧縮変形を生じさせるために必要な荷重の相異から、弱コイルバネ260aの付勢力に対抗して芯繰出ユニット240を軸方向後方に相対移動させる場合よりも、より大きな抵抗感がもたらされる。一方、口金52は、スプリング255の付勢力によってベース部材251に対して軸方向前方に押圧されているため、軸筒210に対して軸方向後方には相対移動されない。これらのことにより、口金252の先端から露出される筆記芯270の長さが減少される。
【0072】
これと同時に、筆圧の軸方向の成分によって、筆記芯270が軸筒210に対して軸方向後方に押圧される。これにより、弱コイルバネ260a及び強コイルバネ260bの付勢力に対抗して、筆記芯270及びベース部材251を含む芯繰出ユニット240が軸方向後方に相対移動される。この場合も、前述の通り、弱コイルバネ260a及び強コイルバネ260bの順序で各コイルバネ260a、260bが圧縮される。これにより、口金252の先端から露出される筆記芯270の長さが一層減少され、当該筆記芯270の折損が回避される。
【0073】
以上のような本実施の形態のシャープペンシル200において、ベース部材251の被押圧部253として設けられたテーパ面の軸筒210の軸方向に対する角度θを変化させた場合の、芯引込量(筆記芯270の後退量)、及び、軸筒210の軸方向と紙面とのなす角が55°である場合における筆記芯270の引き込み(後退)が開始する加重の一例が、図6に示されている。なお、図6において、L1は、軸筒210の中心線であり、L2は、芯繰り出しユニット240から繰り出された状態における筆記芯270の中心線である。筆記芯270に筆圧が加えられていない時には、L1とL2は一致する。
【0074】
以上のような本実施の形態によっても、筆記芯270に高い筆圧が加えられた際に、筆圧の軸方向に垂直な成分によって、芯繰出ユニット240の前方領域が軸筒210内において傾動される。これにより、筆記芯270を含む芯繰出ユニット240がコイルバネ260の付勢力に対抗して軸筒210に対して軸方向後方に相対移動されるため、口金252の先端から露出される筆記芯270の長さが減少される。更に、筆圧の軸方向の成分によって、筆記芯270を含む芯繰出ユニット240がコイルバネ260の付勢力に対抗して軸筒210に対して軸方向後方に更に相対移動され、口金252の先端から露出される筆記芯270の長さが一層減少される。これらのことにより、筆記芯270に高い筆圧が加えられた際に当該筆記芯270の折損が確実に回避される。また、この時、口金252が軸筒210に対して軸方向前方に相対移動される(飛び出す)のではなく、筆記芯270を含む芯繰出ユニット240が口金252に対して軸方向後方に相対移動されることによって、口金252から露出される筆記芯270の長さが減少される。このため、口金252の先端と紙面とが当接した際には、筆圧をわずかに弱めるだけでコイルバネ260の付勢力によって口金252から露出される筆記芯270の長さが速やかに増大されるため、口金252の先端と紙面との引っ掛かりを速やかに解消することができる。
【0075】
また、本実施の形態のコイルバネ260は、バネ定数が700N/mの弱コイルバネ260aと、バネ定数が1000N/mの強コイルバネ260bと、が直列に配置されて構成されている。そして、弱コイルバネ260aによる付勢力に対抗して被押圧部253(テーパ面)を軸筒210に対して軸方向後方に相対移動させるために必要な荷重は、2.5Nであり、強コイルバネに260bよる付勢力に対抗して被押圧部253(テーパ面)を軸筒210に対して軸方向後方に相対移動させるために必要な荷重は、7Nである。このことにより、筆圧が、相対的に小さな荷重で圧縮変形が開始する弱コイルバネ260a及び相対的に大きな荷重で圧縮変形が開始する強コイルバネ260bによって、この順序で段階的に吸収されるため、筆記芯270を含む芯繰出ユニット240が軸筒に対して軸方向後方に相対移動される際のコイルバネ260の付勢力による抵抗感を、最適化することができる。
【0076】
また、芯繰出ユニット240は、軸筒210の内部で当該軸筒210の軸方向に延在する芯パイプ240と、芯パイプ240の前端部に固定され外周面に突部が形成されたコネクタ249と、コネクタ249の前端部に固定されたチャックと、チャックの前方領域に外嵌された締めリングと、コネクタ249を軸方向後方に付勢するリターンスプリング244と、軸筒210と芯パイプ241との間に形成された空間部において芯パイプ241の外周に遊嵌するように配設された重量体290と、を有しており、重量体290は、軸筒210が前後に振られた際に前記空間部の内部を前後動して、前方においてコネクタ249の突部に当接するようになっている。このため、軸筒210を前後に振ることにより重量体290の慣性力によってチャックが軸方向に前進させられるため、ノック操作を行うことなく迅速に筆記芯270を繰り出すことができる。
【0077】
なお、芯繰出ユニット240が傾動するのではなく、当該芯繰出ユニット240が撓み変形するようになっていても良い。この場合も、軸筒210の軸方向に垂直な筆圧に起因して、芯繰出ユニット240を当該軸筒210に対して軸方向後方へ相対移動させることができる。この撓み変形は、例えば芯パイプ241を可撓性の材料で構成することにより、実現することができる。
【0078】
また、本実施の形態では、ベース部材251に、被押圧部253として軸方向後方に向かって次第に大径となるテーパ面が設けられていたが、このようなテーパ面が押圧部232として前軸230の前方領域に設けられていても良い。この場合、ベース部材251の被押圧部253は、軸筒210の径方向外側に張り出した張出部として形成されても良いし、本実施の形態のように軸方向後方に向かって次第に大径となるテーパ面として形成されても良い。
【0079】
次に、図7乃至9を参照して、本発明の第3の実施の形態のシャープペンシル300について説明する。図7は、本発明の第3の実施の形態のシャープペンシル300の概略縦断面図であり、図8は、筆記芯370に筆圧が加えられている場合の、図7のシャープペンシル300の前方領域の概略縦断面図であり、図9は、図7のシャープペンシル300の前方領域を分解図で示す概略縦断面図である。
【0080】
図7乃至図9に示すように、本実施の形態のシャープペンシル300は、芯繰出ユニット340の先端領域に配置され、芯繰出ユニット340に対して軸筒310の軸方向に相対移動可能な口金352を備えている。本実施の形態の芯繰出ユニット340は、口金352によって前端部が取り囲まれた芯繰出ユニット本体340aと、口金352を当該芯繰出ユニット本体340aに抜け止め状態で保持するための保持部材340bと、を有している。口金352は、図8に示すように、筆記芯370を案内する筒状の前方領域352aと、当該前方領域352aよりも大径のスリーブ状の後方領域352bと、によって構成されている。この後方領域352bは、前方の小径部352cと後方の拡径部352dとを有しており、小径部352cと拡径部352dとは外面にテーパ面352eを有する肩部352hによって接続されている。
【0081】
このような口金352は、保持部材340bによって抜け止め状態かつ軸筒310の軸方向にスライド可能な状態で、芯繰出ユニット本体340aの先端領域に取り付けられている。具体的には、図7乃至図9に示すように、保持部材340bは、口金352の後方領域352bを取り囲む筒状の本体部340cと、本体部340cの後端領域に内嵌された環状のストッパ340dと、を有している。このような構成により、口金352は、保持部材340bの内部に本体部340cの軸方向にスライド可能に保持され、本体部340cからの不所望な抜け落ちが防止されている。また、本体部340cの前端は開口部となっており、この開口部から口金352の前方領域352aが前方へ突出している。
【0082】
図7乃至図9に示すように、本体部340cの前方領域の外面には、軸筒310の軸方向前方に向かって先細りとなる被押圧部353としてテーパ面が形成されている。更に、本体部340cの内面には、内径が本体部340cの他の領域よりも小さい縮径部340eを有している。この縮径部340eよりも軸方向後方において、外筒345の外面には軸方向前方を向いた平坦面345fが形成されており、小径部352cと平坦面345fとの間に、伸縮可能な圧縮状態のスプリング355が配置されている。その他の構成は、第1の実施の形態と略同様である。図7乃至図9において、第1の実施の形態と同様の構成には同様の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0083】
次に、本実施の形態のシャープペンシル300の作用について説明する。
【0084】
本実施の形態のシャープペンシル300は、第1の実施の形態と同様に、口金352の前端が下方に向けられた状態でノック部348(ノブ381)が軸方向前方に向かって押圧(ノック)されることにより、筆記芯370が繰り出される。
【0085】
そして、使用者によって前軸330が把持され、紙面に対して筆記芯370を当接させつつ軸筒310を所望に移動させることによって、筆記が行われる。
【0086】
筆記の際、前述の通り、筆記芯370に、軸筒310の軸方向に垂直な成分と当該軸方向の成分とを含む筆圧が加えられることが、一般的である。本実施の形態のシャープペンシル300も、第1の実施の形態と同様に、筆記時に筆記芯370に高い筆圧が加えられると、筆圧の軸方向に垂直な成分と軸方向の成分とをそれぞれ吸収して、口金352の先端から露出された筆記芯370の折損を回避する。
【0087】
具体的には、図8に示すように、筆圧の軸方向に垂直な成分によって芯繰出ユニット340の前方領域が傾動し、前軸330の押圧部332によって保持部材340bの被押圧部353が軸筒310の軸方向後方に押圧される。これにより、コイルバネ360の付勢力に対抗して、筆記芯370を含む芯繰出ユニット340が軸筒310に対して軸方向後方に相対移動される。一方、口金352は、スプリング355によって保持部材340bに対して軸方向前方に付勢されているため、軸筒310に対して軸方向後方には相対移動されない。これらのことにより、口金352の先端から露出される筆記芯370の長さが減少される。
【0088】
これと同時に、筆圧の軸方向の成分によって、筆記芯370が軸筒310に対して軸方向後方に押圧され得る。これにより、コイルバネ360の付勢力に対抗して、筆記芯370を含む芯繰出ユニット340が軸方向後方に更に相対移動される。すなわち、口金352の先端から露出される筆記芯370の長さが一層減少され得て、当該筆記芯370の折損が回避される。
【0089】
そして、筆記芯370に加えられている筆圧が弱められると、コイルバネ360の付勢力によって、筆記芯370を含む芯繰出ユニット340が軸筒310に対して軸方向前方に押し戻される。これにより、初期状態(図7参照)が復元される。
【0090】
本実施の形態のシャープペンシル300は、組立時や分解時において、口金352が不所望に芯繰出ユニット340から抜け落ちることがないため、作業性が良好である。具体的には、図9に示すように、本実施の形態の口金352は、前軸330と後軸320とが螺着されるに先立ち、予め、保持部材340bに内嵌され、この状態で、当該保持部材340bの本体部340cの後端にストッパ340dが内嵌固定される。これにより、口金352は、保持部材340b内に軸筒310の軸方向にスライド可能に保持され、且つ、当該保持部材340bから不所望に脱落することが無い。
【0091】
図9に示すように、口金352が内嵌された保持部材340bは、前軸330の後端の開口部から挿入され、当該前軸330の前端の開口部から口金352の前方領域352aが突出するまで前方に移動される。そして、芯繰出ユニット340が組み付けられた後軸320が、前軸330に螺着される。
【0092】
以上のような口金352は、メンテナンス時等にシャープペンシル300を分解する際にも、保持部材340bから不所望に脱落することが無い。
【0093】
以上のような本実施の形態によっても、筆記芯370に高い筆圧が加えられた際に、筆圧の軸方向に垂直な成分によって、芯繰出ユニット340の前方領域が軸筒310内において傾動される。これにより、筆記芯370を含む芯繰出ユニット340がコイルバネ360の付勢力に対抗して軸筒310に対して軸方向後方に相対移動されるため、口金352の先端から露出される筆記芯370の長さが減少される。更に、筆圧の軸方向の成分によって、筆記芯370を含む芯繰出ユニット340がコイルバネ360の付勢力に対抗して軸筒310に対して軸方向後方に更に相対移動され、口金352の先端から露出される筆記芯370の長さが一層減少される。これらのことにより、筆記芯370に高い筆圧が加えられた際に当該筆記芯370の折損が回避される。また、この時、口金352が軸筒310に対して軸方向前方に相対移動される(飛び出す)のではなく、筆記芯370を含む芯繰出ユニット340が口金352に対して軸方向後方に相対移動されることによって、口金352から露出される筆記芯370の長さが減少される。このため、口金352の先端と紙面とが当接した際には、筆圧をわずかに弱めるだけでコイルバネ360の付勢力によって口金352から露出される筆記芯370の長さが速やかに増大されるため、口金352の先端と紙面との引っ掛かりを速やかに解消することができる。
【0094】
また、本実施の形態の口金352は、芯繰出ユニット340の先端領域に配置され当該芯繰出ユニット340に対して軸筒310の軸方向に相対移動可能である。更に、芯繰出ユニット340は、口金352によって前端部が取り囲まれた芯繰出ユニット本体340aと、口金352を当該芯繰出ユニット本体340aに抜け止め状態で保持するための保持部材340bとを有している。このため、シャープペンシル300の組立時や分解時において、口金352が不所望に芯繰出ユニット340から抜け落ちることがなく、作業性が良好である。
【0095】
特には、保持部材340bは筒状であり内面に縮径部340eを有しており、口金352は、縮径部340eよりも軸筒310の軸方向後方の外面に、当該縮径部340eの内径よりも大径の拡径部352dを有している。このような構成により、保持部材340bからの口金352の抜け落ちが確実に防止され得る。
【0096】
また、被押圧部353としてのテーパ面は、保持部材340bに設けられているため、当該被押圧部353を所望の位置に設けることが容易である。
【0097】
なお、以上の第3の実施の形態において、口金352と前軸330の内鍔333との接触部分の摩擦抵抗を低減させることにより、芯繰出ユニット340が軸筒310に対して軸方向後方に相対移動する際に、一層滑らかな感触を提供することができる。前記摩擦抵抗を低減させるためには、例えば、口金352と前軸330の内鍔333との接触部分を点接触または線接触となるように構成すればよい。このようなシャープペンシルの例を、図10乃至図12を参照して説明する。図10乃至図12は、いずれも、図7の第3の実施の形態によるシャープペンシル300の変形例を部分的に示す概略縦断面図である。
【0098】
図10に示す変形例によるシャープペンシル300aは、口金352の前方領域352aと小径部352cとが、外面に第2テーパ面352gを有する肩部352hによって接続されている。この第2テーパ面352gは、軸筒310の軸方向後方に向かって大径となっており、図示されるように、軸筒310の軸方向と直交する平面に対して角度αを成している。角度αは、5°以上20°以下の範囲のいずれかの値であることが好ましく、8°以上15°以下の範囲のいずれかの値であることがより好ましく、10°以上13°以下の範囲のいずれかの値であることが更に好ましい。本実施の形態の角度αは、11.31°である。一方、前軸330は、第2テーパ面352gよりも軸筒310の軸方向前方に、当該軸筒310の径方向内方に張り出した内鍔333を有している。この内鍔333のうち第2テーパ面352gに面する領域は、軸筒310の軸方向に直交する平面を有している。このような構成により、内鍔333は、径方向内方の領域のみにおいて第2テーパ面352gと当接している。その他の構成は第3の実施の形態と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0099】
以上の構成から理解されるように、本変形例によるシャープペンシル300aは、内鍔333と第2テーパ面352gとの接触面積が極めて小さい。このため、肩部352hに第2テーパ面352gが設けられていない場合、すなわち角度αが0°である場合と比較して、内鍔333と第2テーパ面352gとの間に作用する摩擦力が大幅に低減されることになる。したがって、筆圧の軸方向に垂直な成分によって芯繰出ユニット340の前方領域が傾動する際の動作がスムーズになる。このことにより、筆記芯370を含む芯繰出ユニット340が軸筒310に対して軸方向後方に相対移動する際に、滑らかな感触が提供されるのである。更に、角度αが11.31°とそれほど大きな角度ではないため、芯繰出ユニット340が軸筒310に対して軸方向後方に相対移動する際に、口金352が軸方向後方に大きく移動することが無いため、筆記感が大きく低下することもない。
【0100】
以上の変形例においては、口金352に第2テーパ面352gを設けることにより内鍔333と口金352との間に作用する摩擦力が低減されるように構成したが、口金352ではなく内鍔333に突起ないしテーパ面を設けることによって、前記摩擦力が低減されるように構成しても良い。図11及び図12は、このような変形例を示している。
【0101】
図11の変形例によるシャープペンシル300bでは、口金352の肩部352hが、第2テーパ面352gに代えて軸筒310の軸方向と直交する平面を有して構成されている。一方、内鍔333のうち肩部352hに面する領域に、軸方向後方に向かって突出した突起333aが形成されている。この突起333aは、内鍔333の周方向に連続的または断続的に形成された突条であっても良いし、内鍔333の周方向に間隔を空けて設けられた複数の点状の突起であっても良い。このような構成により、内鍔333は、突起333aの先端部のみにおいて口金352の肩部352hと当接している。その他の構成は第3の実施の形態と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0102】
以上の構成によっても、内鍔333と肩部352hとの接触面積を極めて小さくすることができる。このため、図10に示す変形例と同様に、内鍔333と肩部352hとの間に作用する摩擦力が大幅に低減される。したがって、シャープペンシル300bの使用時に、筆圧の軸方向に垂直な成分によって芯繰出ユニット340の前方領域が傾動する際の動作がスムーズになる。このことにより、本変形例においても、筆記芯370を含む芯繰出ユニット340が軸筒310に対して軸方向後方に相対移動する際に、滑らかな感触が提供される。
【0103】
あるいは、図12の変形例によるシャープペンシル300cは、図11の変形例によるシャープペンシル300bと同様に、口金352の肩部352hが、軸筒310の軸方向と直交する平面を有して構成されている。一方、内鍔333は、肩部352hに面する領域に、軸筒310の軸方向前方に向かって大径となる第3テーパ面333bを有している。換言すれば、内鍔333のうち肩部352hに対向する面は、軸筒310の径方向内方の領域が当該軸筒310の軸方向後方に位置するように傾斜している。このような傾斜(第3テーパ面333b)によって、軸筒310の径方向内方の領域に肩部352hに向かって突出した突起が形成されている。このような構成により、内鍔333は、第3テーパ面333bのうち軸筒310の径方向内側の部位のみにおいて、口金352の肩部352hと当接している。その他の構成は第3の実施の形態と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0104】
以上の構成によっても、内鍔333と肩部352hとの接触面積を極めて小さくすることができる。このため、図10に示す変形例と同様に、内鍔333と肩部352hとの間に作用する摩擦力が大幅に低減される。したがって、シャープペンシル300cの使用時に、筆圧の軸方向に垂直な成分によって芯繰出ユニット340の前方領域が傾動する際の動作がスムーズになる。このことにより、本変形例においても、筆記芯370を含む芯繰出ユニット340が軸筒310に対して軸方向後方に相対移動する際に、滑らかな感触が提供される。
【0105】
なお、芯繰出ユニット340は、傾動するのではなく撓み変形するようになっていても良い。この場合も、軸筒310の軸方向に垂直な筆圧に起因して、芯繰出ユニット340を当該軸筒310に対して軸方向後方へ相対移動させることができる。この撓み変形は、例えば芯パイプ341を可撓性の材料で構成することにより、実現することができる。
【0106】
また、本実施の形態においても、振出式の芯繰出ユニットが採用され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12