【実施例1】
【0017】
以下、本発明の実施例1に係るダイアフラムダンパについて、
図1〜
図3を参照して説明する。本発明に係るダイアフラムダンパは、燃料タンクから供給される燃料をプランジャの往復動によって加圧してインジェクタへ圧送する高圧ポンプに使用されている。
【0018】
この種の高圧ポンプの燃料入口付近には、燃料チャンバが形成されている。高圧ポンプでは、プランジャが下降するときに燃料チャンバから加圧室へ燃料が吸入される「吸入工程」と、プランジャが上昇するときに加圧室の燃料の一部が燃料チャンバへ戻される「調量工程」と、吸入弁を閉じた後にプランジャがさらに上昇するときに燃料が加圧される「加圧工程」とが繰り返される。これにより、高圧ポンプは、燃料を加圧し、加圧した燃料を吐出する。本発明に係るダイアフラムダンパは、このような高圧ポンプの燃料チャンバにおいて発生する脈動を低減するために使用される。
【0019】
図1に示すように、高圧ポンプのハウジング1は、外部から供給された燃料を収容可能な燃料チャンバ2などを有する。燃料チャンバ2は、ハウジング1の上部3と、ハウジング1の上部に被せられて固定された有底筒状のカバー4の内面とにより形成されている。図示しないが、カバー4の下部は、ハウジング1に対して密に接合されている。
【0020】
燃料チャンバ2内には、2つのダイアフラムダンパ10が設置されている。2つのダイアフラムダンパ10は、上下方向に配列されている。上方のダイアフラムダンパ10の基本構造は、下方のダイアフラムダンパ10のそれと同じである。2つのダイアフラムダンパ10は、クリップ11により互いに固定されている。
【0021】
ダイアフラムダンパ10は、ハウジング1の上部3に載置されている。カバー4の内側には、保持部材13が設けられている。コイルドウェーブスプリング12は、保持部材13を介して、ダイアフラムダンパ10の上方に固定されている。フラムダンパ10は、コイルドウェーブスプリング12により下方に押しつけられることで、ハウジング1に固定されている。
【0022】
ダイアフラムダンパ10は、一対の円盤状のダイアフラム15,15を有している。また、ダイアフラムダンパ10は、一対のダイアフラム15,15から構成されると共に高圧ガスが封入される高圧室16を有している。一対の円盤状のダイアフラム15,15は、円盤状の第1カバー部材17及び第2カバー部材18により、外側からそれぞれ覆われている。高圧室16内には、一対のゴム状弾性部材14,14が上下方向に配列されて、設置されている。
【0023】
一対のダイアフラム15,15は、可撓性の薄い金属板からなり、同一形状に成形されている。ダイアフラム15,15は、中央部15b,15bが可撓性を有するように、それぞれ形成されている。第1カバー部材17及び第2カバー部材18は、金属からなり、ダイアフラム15,15をそれぞれ支持し、ダイアフラム15,15よりも大きい厚さを有している。
【0024】
図1及び
図2に示すように、ダイアフラム15,15の周縁部15a,15aは、相互に重ね合わされている。また、重ね合わされた周縁部15a,15aは、第1カバー部材17の周縁部の挟持部17aと第2カバー部材18の周縁部の挟持部18aとにより、挟持されている。
【0025】
ダイアフラム15,15の周縁部15a,15a、第1カバー部材17の挟持部17a及び第2カバー部材の挟持部18aは、重ね合わされた状態で、ダイアフラムダンパ10の外周端部Aを形成している。外周端部Aは、外周端部Aの全周に亘って、レーザ溶接により連続的に密封及び接合される。
【0026】
レーザ溶接の際、第1カバー部材17は、第1治具19により保持され、第2カバー部材18は、第2治具20に保持される。また、第1治具19及び第2治具20を近接させることにより、ダイアフラム15,15の周縁部15a,15a、第1カバー部材17の挟持部17a及び第2カバー部材18の挟持部18aは、互いに密着した状態に維持される。
【0027】
レーザ溶接として、たとえば、YAGレーザによるシーム溶接が用いられる。溶接時、第1治具19及び第2治具20に保持された一対のダイアフラム15,15、第1カバー部材17及び第2カバー部材18を、
図2(a)の鉛直軸を中心に回転させる。それと共に、レーザ装置の出射ユニット21から、レーザ光Lを、一対のダイアフラム15,15の周縁部15a,15a、第1カバー部材17の挟持部17a及び第2カバー部材18の挟持部18aからなる外周端部Aに対して、回転軸線と直交する方向に照射する。こうして、外周端部Aの全周が溶接される。それにより、溶接ビード22が外周端部Aの全周に亘り形成されて、高圧室16が密封される。
【0028】
本発明において、外周端部Aの先端の厚みtは、外周端部Aの先端におけるレーザ光Lのスポット径dに対応するように設定される。スポット径dとは、レーザ光Lの照射によりレーザ集光系の周りが熱で溶融する領域の径を意味する。スポット径dは、加工点での集光サイズよりも大きい。
【0029】
一般に、第1カバー部材17及び第2カバー部材18には、ダイアフラム15,15を支持する必要があるため、厚さの大きい部材が用いられる。このため、外周端部Aの先端の厚みtは、外周端部Aの先端におけるレーザ光Lのスポット径dよりも大きい。
【0030】
本例では、
図2(a)に示すように、第1カバー部材17の挟持部17a及び第2カバー部材の挟持部18aは、勾配17b,18bを有する外面をそれぞれ有している。勾配17b,18bは、挟持部17a及び挟持部18aの各先端に向かうに従い各挟持部の厚みが小さくなるように、それぞれ設定されている。また、勾配17b,18bは、外周端部Aの先端の厚みtとレーザ光Lのスポット径dとがほぼ同一になるように、それぞれ設定されている。
【0031】
外周端部Aの先端の厚み方向の全域にレーザ光Lが照射されるには、レーザ光Lのスポット径dと外周端部Aの先端の厚みtとが、スポット径d>厚みtの関係式を満たしていればよい。但し、強度上の要請から、外周端部Aの先端の厚みtを、過度に小さくすることはできない。一方、レーザ光Lのスポット径dは、レーザ装置及び被溶接部材の材質などの溶接条件により決定される。
【0032】
また、後述するように、外周端部Aは、製造上の誤差などにより、多少のうねりを有している。このうねりも考慮すると、レーザ光Lのスポット径dは、外周端部Aの先端の厚みtよりわずかに大きく設定されることが好ましい。
【0033】
外周端部Aの先端の厚みtとレーザ光Lのスポット径dとがほぼ同一に設定されると、外周端部Aの先端が溶け始めるときの入熱と、金属伝熱による放熱とのバランスが良好になる。このため、溶け込み深さhが安定し、外周端部Aの全周に亘って溶け込み量が一定に維持される。
【0034】
また、溶接開始時には、外周端部Aの先端の全面が溶け込み領域となる。このため、
図3に示すように、溶接後には、外周端部Aの先端の全域に、溶接ビード22が形成される。このため、溶接後の溶接ビード22の外径D及び幅Bから、溶け込み量を推定することが可能となる。
【0035】
さらに、第1カバー部材17の挟持部17a及び第2カバー部材の挟持部18aは、勾配17b,18bを有する外面をそれぞれ有している。勾配17b,18bは、挟持部17a及び挟持部18aの各先端に向うに従い各挟持部の厚みが小さくなるように、それぞれ設定されている。このため、外周端部Aの先端から奥へと徐々に入熱によるエネルギが拡散し、外周端部Aの溶接領域の厚み方向の全体を溶け込み領域とすることができる。よって、外周端部Aの外面から、溶け込み領域を確認することができる。
【0036】
次に、レーザ光の照射位置が中心からずれた場合の溶接について、
図2(b)を参照して説明する。
例えば、レーザ光の中心が、外周端部Aの先端の厚みtの中心x−xよりも下方にずれた場合を想定する。本発明によれば、外周端部Aの先端の容積が小さいため、レーザ光の中心が中心x−xよりも下方にずれても、溶接ビード22の下端は、外周端部Aの下端が限界である。よって、溶接ビード22は、外周端部Aの下端を越えて大きくはならない。一方、溶接ビードの上端は、外周端部Aの上端まで形成される。このため、結局、溶接ビード22は、外周端部Aの先端の全域に形成される。よって、レーザ光の中心が外周端部Aの先端の厚みtの中心x−xからずれたことによる影響はない。よって、溶け込み量を一定に維持することができる。
【0037】
特に、一対のダイアフラム15,15、第1カバー部材17及び第2カバー部材18を回転させながらレーザ光Lを照射して溶接する場合、外周端部Aに多少のうねりが生じていることがある。このような場合、従来の溶接方法では、溶け込み量が変化することがあるが、本発明であれば、溶け込み量を一定に維持することができる。
【0038】
上記したように、実施例1では、以下のような顕著な効果を奏する。
(1)外周端部Aの先端の厚みtは、レーザ光Lのスポット径dと対応するように設定されている。この構成によれば、溶接後の外周端部Aの先端の全域に溶接ビード22が形成されるため、溶接後の溶接ビードの外径D及び幅Bから、溶け込み量を推定することが可能となる。
【0039】
(2)外周端部Aの先端の厚みtは、レーザ光Lのスポット径dとほぼ同一に設定されている。この構成によれば、外周端部Aの先端が溶け始めるときの入熱と、金属伝熱による放熱とのバランスが良好になる。このため、溶け込み深さhが安定し、外周端部Aの全周に亘って溶け込み量が一定に維持される。
【0040】
(3)第1カバー部材17の挟持部17a及び第2カバー部材の挟持部18aは、勾配17b,18bを有する外面をそれぞれ有している。勾配17b,18bは、挟持部17a及び挟持部18aの各先端に向かうに従い各挟持部の厚みが小さくなるように、それぞれ設定されている。このため、外周端部Aの先端から奥へと徐々に入熱によるエネルギが拡散し、外周端部Aの溶接領域の厚み方向の全体を溶け込み領域とすることができる。よって、外周端部Aの外面から、溶け込み領域を確認することができる。
【0041】
(4)外周端部Aの先端の容積が小さいため、レーザ光の中心が外周端部Aの先端の厚みtの中心x−xからずれても、溶接ビード22は、外周端部Aの先端の全域に形成される。よって、レーザ光の中心が外周端部Aの先端の厚みtの中心x−xからずれたことによる影響はない。よって、溶け込み量を一定に維持することができる。
【0042】
(5)一対のダイアフラム15,15、第1カバー部材17及び第2カバー部材18を回転させながらレーザ光Lを照射して溶接する場合、外周端部Aに多少のうねりが生じていることがある。このような場合でも、溶け込み量を一定に維持することができる。
【0043】
以上、本発明の実施例を図面により説明したが、具体的な構成は実施例に限られない。本発明には、その要旨を逸脱しない範囲での変更や追加が含まれる。
前記実施例では、第1カバー部材17の挟持部17a及び第2カバー部材の挟持部18aの勾配17b,18bは、各挟持部17a,18aの先端に向かうに従い各挟持部17a,18aの厚みが小さくなるように直線的に変化していたが、外側に凸又は内側に凹となるように曲線的に変化してもよい。
【0044】
前記実施例では、外周端部Aの先端の厚みtがレーザ光Lのスポット径dと「ほぼ同一」、あるいは、レーザ光Lのスポット径dが外周端部Aの先端の厚みtより「わずかに大きく」設定されるという表現を用いた。要は、溶接後の外周端部Aの先端の全域に溶接ビード22が形成されるように、外周端部Aの先端の厚みtを、レーザ光Lのスポット径dと対応するように設定すればよい。