特許第6676056号(P6676056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6676056胃腸でのナトリウム再吸収及びリン酸塩再吸収の同時減少のためのマグヘマイトをベースとする医薬品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676056
(24)【登録日】2020年3月13日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】胃腸でのナトリウム再吸収及びリン酸塩再吸収の同時減少のためのマグヘマイトをベースとする医薬品
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/26 20060101AFI20200330BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20200330BHJP
   C01G 49/06 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   A61K33/26
   A61P13/12
   A61K47/26
   A61K47/36
   A61K47/44
   C01G49/06 B
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-534978(P2017-534978)
(86)(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公表番号】特表2018-506516(P2018-506516A)
(43)【公表日】2018年3月8日
(86)【国際出願番号】DE2015000608
(87)【国際公開番号】WO2016107619
(87)【国際公開日】20160707
【審査請求日】2018年11月15日
(31)【優先権主張番号】102014019388.8
(32)【優先日】2014年12月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508334199
【氏名又は名称】シャリテ−ウニヴェルジテーツメディツィン・ベルリン
【氏名又は名称原語表記】CHARITE−UNIVERSITAETSMEDIZIN BERLIN
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ワーグナー スザンネ
(72)【発明者】
【氏名】タウピッツ マティアス
(72)【発明者】
【氏名】シュノッル イェルク
(72)【発明者】
【氏名】エーベル モニカ
(72)【発明者】
【氏名】シュトルツェンブルク ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】グレーザー ヤンナ
(72)【発明者】
【氏名】クラッツ ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】ハウプトマン ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ブラインル ヤンニ
(72)【発明者】
【氏名】アリツァ デ シュレンベルガー アンゲラ
(72)【発明者】
【氏名】ゲマインハルト イネス
【審査官】 磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−528929(JP,A)
【文献】 特開2004−123528(JP,A)
【文献】 International Journal of Pharmaceutics, 2015, Vol.482, p.21-26
【文献】 Nephrology Dialysis Transplantation, 2014, Vol.29(Supplement 3), p.iii201-iii208
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 33/26
A61K 47/26
A61K 47/36
A61K 47/44
A61P 13/12
C01G 49/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5〜4nmの結晶サイズを有し、全鉄含有量100質量部に対して5質量部未満の二価鉄イオンの割合によって定義されるマグネタイト割合を有する、マグヘマイト結晶の調製方法であって、以下の工程、
(1)10〜14のpH値を有する水酸化ナトリウムの第1の水溶液を調製する工程であって、前記第1の水溶液が、更に、アルジトール及び1種以上の炭水化物を含み、かつ、0〜10℃の温度を有する工程、
(2)塩化物イオン、鉄-II塩及び鉄-III塩を含む第2の水溶液を調製する工程であって、前記第2の水溶液が、0〜10℃の温度を有する工程、
(3)前記第1の水溶液と、第2の水溶液との混合物を調製する工程であって、前記混合物が、0〜10℃の温度を有する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1の水溶液が、イヌリン、アラビアゴム及びマンニトールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(3)で形成されたマグネタイト結晶を、50℃より高い温度で過酸化水素を添加することによって、マグヘマイトへ酸化する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶径が0.5nmと4nmの間の単結晶酸化鉄ナノ粒子を有するナノ結晶マグヘマイトと、炭水化物及びアルジトールの群からの賦形剤とからなる医薬品であって、腸におけるナトリウム摂取と、リン酸塩(ホスフェート)摂取との同時減少のために、従って腎臓を介しての排出減少のために経口的に投与され、このようにして、腎不全をもつ患者において水と鉱物と電解質とのバランスを改善することを特徴とする、前記医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
腎機能障害をもつ患者は、腎臓が充分な量のナトリウム及びリン酸塩をもはや排出することができないので、好適でないナトリウムバランスになりやすく且つ高リン血症になりやすい。加えて、バランス異常は、鉱物と電解質とのバランスのホルモンによる制御で生じる。腸におけるナトリウム摂取によって、二次的に体組織における水分貯留、より多い血液量及び高血圧がもたらされ、それが腎疾患を悪化させる。極端に高い血清リン酸塩レベルによって、卒中又は心筋梗塞のような心血管事象のリスクが増加したアテローム動脈硬化性血管壁変化がもたらされる。新規な開発は、腸におけるナトリウム摂取又は腸におけるリン酸塩摂取の阻害剤を目的とする。特許出願公開US 2012/0263670号に記載されているように、NHE(Na++/H+交換)輸送機序を阻害する物質によって、健康なラットにおけるナトリウム再吸収が著しく減少されることになり、尿におけるナトリウム排出の減少が実証されている。Labonte et al.の文献によれば、特許出願公開US 2012/0263670号に記載されているように、このグループの物質によって、対照グループと比較して0.3ミリモルだけナトリウム摂取減少によってナトリウム排出が減少し、さらに、健康な動物における活性化合物同時食餌混合試験におけるラットでは最初の臨床前生体内実験においてリン酸塩排出が減少することになる(Labonte et al., 2014, Journal of the American Society of Nephrology 26における図4Aと4Bを比較されたい、オンライン出版doi:10.1681/ASN.2014030317)。Labonte et al., a study of healthy rats, 2014に従うこの医薬品によって、健康なラットでの実験において、腸におけるリン酸塩再吸収の減少が最少になり、従って、尿中の排出が減少することになる。しかしながら、Labonte et al. 2014によるこの物質の効果によって、血清リン酸塩レベルの著しい減少が生じない。Labonteによれば、投与量の増加又はより強い効果を有する物質の使用によって、重篤な下痢が引き起こされる。これは、特許出願公開US 2012/0263670号に記載されている、Labonte et al.に従う物質の狭い治療域を示している。胃腸での再吸収を阻害することによって血清リン酸塩レベルを同時に著しく減少させることができ、ナトリウム再吸収を阻害することができ、便容量増加と下痢と関連していない物質は、本明細書における実施例1及び実施例2に従う本発明の物質のようなこの顕著な効果については知られていない。
【発明の概要】
【0003】
驚くべきことに、実施例1に従う調製によるマグヘマイト及びマンニトール、イヌリン及びアラビアゴムの賦形剤からなる物質が経口投与される場合に、胃腸でのナトリウム再吸収の減少及び実施例2に示されるように健康なラットにおける尿による排出減少がもたらされる。同時に、実施例1に従う物質によって、下痢のような副作用がなく、実施例2に従って試験される投与量で血清リン酸塩レベルの減少がもたらされる。ナトリウム再吸収のこの減少は、驚くべきことに、胃腸でのリン酸塩再吸収の減少と関連があり、実施例2に従う低リン血症がもたらされ、このことは酸化鉄によるリン酸塩の純粋な化学吸着効果によって説明することができない。実施例1に従う物質による実施例2に従って達成される低リン血症の程度は、食餌におけるリン酸塩と比較して、本発明に従う物質におけるマグヘマイトの形態での酸化鉄の純粋な化学吸着作用によって説明される程度をはるかに超えている。リンの飼料含有量は、0.7%(質量)であり、従って、理論的には2.1%のリン酸塩(質量)の量で利用できる。0.25%のマグヘマイトの成分としての鉄の質量に基づき、最適リン酸塩結合の場合でさえ、実施例1に従う物質の添加によって、生物体の胃腸摂取に利用できる充分な遊離リン酸塩にはならない。Labonteらに従う文献と比較して、実施例1によるナトリウム再吸収についてのマグヘマイトをベースとする本発明に従う物質の効果は、特許出願公開US 2012/0263670号に従う特に開発された阻害剤の3倍以上である(1ミリモルだけナトリウム排出の減少)。実施例1に従う本発明の物質では、ナトリウム再吸収及び腎排出のこの減少は、公開US 2012/0263670号及びLabonte et al. 2014に従う物質に記載されているように下痢のような副作用なしで起こる。従って、実施例1に従う物質では、非常に高い治療域が、公開US 2012/0263670号及びLabonte et al. 2014に従う物質とは対照的に得られる。実施例2に従う生体内実験は尿量が著しく減少せず、便の質量もほとんど増加しないことを示している。
【0004】
これは、本明細書に見られる効果が副作用と関連していないことを示している。本発明に従って本明細書に示される物質は、第一及び第二のシースの構成に関する発明DE 102011112898の請求項と異なっている。DE 102011112898における発明に従う物質は、アルジトール又は単量体及び二量体の炭水化物の存在下に一次マグネタイト結晶形成することによってのみ定義されている。実施例1において本発明に従って新たに例示される物質は、アルジトール及びフルクタンの存在下に同時に調製及び結晶形成することによって定義される。それ故、物質は、主にフルクタン、本明細書ではイヌリンによって決定される。特許DE 102011112898において、実施例5におけるこの変形例はリン酸塩結合にはむしろ無効であると記載されており、それ故、実施例1のように製造される物質が生体内試験において予知されることができない効果を有することは明らかでない。
【0005】
しかしながら、実施例1に従う物質は、実施例1のようなポリマーが直接一次結晶形成に存在するという意味で特許DE 102011112898の物質や例と異なっている。
本発明によれば、これは、特許DE 102011112898に示されていなかった。シミュレートされた胃腸管において、実施例1に従う物質は、インキュベーション溶液における無機リン酸塩の過剰については、リン酸塩結合能が比較例1に従う物質より実施例1に従う物質が60%高いという事実によって比較例1と区別される。実施例1に従う物質のこの技術的特徴は、鉄塩と混合する前に11より高いpHでアルジトールと炭水化物の一次インキュベーションによって、これらのアジトールと炭水化物の化学的変化がもたらされ、比較例1に従う物質と異なる物質になることを証明している。さらに、驚くべきことに、実施例1に従う物質はより高い安定性に特徴を有し、それは遊離鉄の割合が比較例1に従う物質より胃腸管において低いという事実によって明白である。実施例1に従う本発明の物質での腎臓でのナトリウム排出に対するこの影響は、血清ナトリウムレベルにおける低下を伴わない。便の総質量は、比較グループと異なっていない。同様に、実施例1に従う本発明の物質は、カリウム排出及びタンパク質排出並びに24時間集合的実験における尿量に対して影響を与えない。活性物質スクロオキシ水酸化鉄によるVelphoro(登録商標)は、実施例1に従って本明細書に示される本発明に従う物質、炭水化物のグループからの賦形剤を有する酸化鉄の特別な形態に匹敵する。Velphoro(登録商標)の活性物質は、WO 97/22266号として公開された特許によれば、オキシ水酸化鉄アカガネイトであり、製造において使用される物質はスクロース及びデンプンである。Velphoro(登録商標)によって、胃腸でのナトリウム再吸収において著しい減少が生じる。しかしながら、血清リン酸塩レベルについての効果は、本明細書で調べた投与量では見られない。これは、胃腸でのリン酸塩再吸収についてのそのような強い効果が炭水化物と組み合わせた任意の酸化鉄型で達成されることができないことを証明している。実際に、実施例1に従う本発明の物質の効果は、リン酸塩再吸収におけるこの組み合わせた減少及びナトリウム再吸収における同時減少ではVelphoro(登録商標)より優れている。従って、驚くべきことに、実施例1に従う物質が腸からナトリウムとリン酸塩の摂取を選択的に減少させるのに適していると単に仮定することができ、腎臓を経たナトリウムの排出における極めて著しい減少及び血清リン酸塩レベルにおける極めて著しい減少が実証される。実施例1に従う物質は、実際に、医薬品Velphoro(登録商標)、Renvela(登録商標)及びFosrenol(登録商標)より優れているだけでなく、特許出願公開US 2012/0263670及び刊行物Labonte et al. 2014並びに特許WO 2012/0006475 A1において記載されている物質としての新規な特別輸送阻害剤よりも優れている。
【0006】
胃腸でのリン酸塩摂取についての実施例1に従う本発明の物質の効果は、健康なラットが低リン血症に陥るほど強く、明らかに、実験終了時のラットの著しく低い体重まで体重変化が生じた。非常に高い望ましい作用によってのみ生じるこの副作用は、更なる投与量減少によって容易に治療することができ、それは従来技術に従う他の物質より本明細書に示される本発明に従う物質の優位性を確認するものである。本明細書でのみ使用される賦形剤の組み合わせが対照グループと比較して腎臓でのナトリウム排出に対して著しい影響を及ぼすことが決定された。本発明に従う物質は、10℃より低い温度の塩化鉄(II)及び塩化鉄(III)の存在下に及びマンニトール及びイヌリンの存在下にマグネタイトの一次沈殿を経て湿潤化学水溶液において調製される。一次結晶化後、結晶性マグネタイトは50℃より高い温度で過酸化水素によってマグヘマイトに活発に酸化され、次に、未反応出発材料及び望ましくない反応生成物が透析、ダイアフィルトレーション又は限外ろ過によってさえも除去される。他のアルジトール、モノマーヘキソース、モノマーペントース及びこれらのポリマーの混合物が考えられる。本発明に従う本明細書に記載されている製造によって、60%を超える鉄の質量による割合及び最終生成物における鉄の割合に基づく化学収率、及びTEMによって定量されるように、結晶の>90のサイズが0.5〜4nmの間にある。本発明によれば、物質によって腸におけるナトリウム摂取の減少が生じ、血清ナトリウムレベルに影響せずに、尿におけるナトリウム排出の著しい減少を伴っている。驚くべきことに、本明細書において試験される投与量での物質によっても血清リン酸塩レベルの減少がもたらされ、特許DE 102011112898号に記載されているように純粋な吸着作用によって説明されることができない。これは、2.1%の食餌リン酸塩含有量については、実施例1に従う物質の同時飼養が0.25%の鉄の添加を意味し、それ故、ラットがなお平衡リン酸塩代謝のために充分な栄養リン酸塩を有するからである。
【0007】
Labonteに従う刊行物に基づき、腸におけるナトリウム再吸収の減少によるナトリウム再吸収に対する影響によってリン酸塩再吸収に対してもこれまで未知の影響がもたらされると仮定される。両方の輸送プロセスのこの相互の影響が、実施例1に従う物質に対して本明細書に見出されることは驚くべきことである。従って、実施例1に従う物質は、また、胃腸でのナトリウム再吸収の著しい減少が未変化の血清ナトリウムレベルと同時に血清リン酸塩レベルの著しい減少による腎臓でのナトリウム排出低下によって示される事実によって識別される。血清リン酸塩レベルについてのこの劇的な効果は、特許出願公開WO 2012/0006475 A1の実施例57、758頁に示されているように、胃腸でのリン酸塩輸送体の選択的阻害剤に対してさえ見出されていない。従って、本明細書に示される本発明に従う物質は、腸壁における電解質輸送プロセス及び鉱物輸送プロセス、この場合にはナトリウム及びリン酸塩の阻害に特徴を有し、それは現在開発中で認可されている物質より優れており、これは、医薬的に既知の剤形で経口投与当たり腎機能障害をもつ患者においてナトリウムと水とリン酸塩のバランスを調節することに適していなければならない。認可されており開発中である物質と比較して、本発明の本発明に従う物質が腎機能障害をもつ患者におけるリン酸塩とナトリウムの含有量を調節する適用においてより少ない副作用でより良好な効果を有することを予想することができる。本明細書に示されるアルジトール及び炭水化物のグループからの賦形剤に加えて、胃腸でのナトリウムとリン酸塩の再吸収の減少のためのマグヘマイトベースのナノ結晶の製造と適用は、慣用の既知の医薬賦形剤、更には有効成分を使用して実施することができる。
【0008】
実施例1に従う本発明の物質に加えて、結晶は、鉄に加えて、他の金属、金属水酸化物及び金属オキシ水酸化物も含有することができる。本明細書における本発明に従う物質の適用は、経口投与による胃腸でのナトリウム再吸収、同時に、リン酸塩再吸収を減少させることを意図し、従って、腎機能障害をもつ患者において水と電解質のバランスの改善をもたらし、第二に血圧と血管壁石灰化の低下をもたらし、従って腎障害をもつ患者において卒中や心筋梗塞のような心血管疾患のリスクを改善させることになる。物質の特性及び生体内適用の有効性は、図面によって例示される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】健康なラットにおける実施例2に従う生体内試験の結果を示す図である。有効成分を飼料に混ぜ、尿を代謝ケージにおいて24時間集め、血液を動物から集めた。図2Aは、ナトリウムの尿排出量マイナス飼料のナトリウム摂取量から算出されるナトリウムバランスを示す図である。図2Bは、血清リン酸塩レベルを示す図である。腎機能の低下した患者における鉱物含有量を調節するための既知の有効成分と比較して、実施例1に従う活性物質によってのみ、ナトリウムバランス及び血清リン酸塩レベルに対して同時に著しい影響がもたらされる。
図2】実施例1に従って製造される物質の本発明に従う典型的なマグヘマイト八面体結晶の高分解能透過型電子顕微鏡イメージを示す図であり、マグヘマイト結晶で最長拡大はわずか3.5nmである。選択的電子回折(SAED)によって、マグネタイト-マグヘマイト結晶に典型的である回折パターンがもたらされる。
図3】比較として、結晶のサイズ分布を、透過型電子顕微鏡イメージに基づく結晶の最長直径のサイズ評価に基づいて示す図である。図3Aは、実施例1に従う物質のサイズ分布を示す図であり、これは非常に大きい結晶の割合のないまさに一様なサイズ分布を示すものである。比較として、図3Bは、比較例2に従う物質のサイズ分布を示すグラフであり、ここでは、結晶の相当な割合が4nmサイズを超えて存在することが分かる。
図4図4Aは、実施例1に従う物質の透過型電子顕微鏡イメージの代表的な断面を示す図であり、実施例1に従う物質が大きい結晶又は凝集体のないまさに一様なマグヘマイト結晶の分散であることを証明している。図4Bは、比較例1に従う物質の透過型電子顕微鏡イメージの代表的な断面を示す図である。ここでは、非常に大きい個々の結晶がかなりの割合で見られる。全体として、結晶化度が実施例1に従う物質より劣っていることを示している。
【0010】
実施例
過剰の無機リン酸塩によるシミュレートされた胃腸管におけるリン酸塩結合能の定量方法 100mMのリン酸二水素ナトリウム(Sigma-Aldrich No.04269)溶液を0.1Mの塩酸において調製した。この溶液を37℃に加熱し、この温度で維持した。40mlのこの溶液を鉄に基づく40mMの溶液、従って、1:0.4の無機リン酸塩対鉄のインキュベーション溶液のモル比を得る量の鉄含有リン酸塩結合剤に移した。滴定器を使用して塩酸によってpH1.2に調整した。1時間の各インキュベーション後に0.5mlのアリコートを取り出し、3kD CentriPrep(登録商標)フィルター(再生セルロース)による遠心分離後の濾液においてモリブデン酸アンモニウム法によって光度分析的に滴定器によって880nmの吸光度で段階pH 2.5、4.5、7.0、7.5においてpH値を求めた。濾液の錯体可能な遊離鉄含有量を、光度分析的にオルトフェナントロリン法によって520nmの吸光度で求めた。
【0011】
比較例1
マグヘマイトベースのリン酸塩吸着剤を、特許国際公開WO 2013/034267 Al号の実施例1に従って調製した。7.55gの塩化鉄(III)六水和物(Sigma-Aldrich、No.31232)を、4℃に冷却した50mlの再蒸留水に溶解した(溶液A)。溶液Aに、3.2gの塩化鉄(II)四水和物(Sigma-Aldrich No.44939)を添加し、溶解した(溶液B)。さらに、25gのD-マンノース(Sigma-Aldrich、No.63582)を、4℃に冷却した再蒸留水に溶解した(溶液C)。溶液BとCを合わせ、2分間撹拌した(溶液D)。100mlの1.5M NaOH(4℃に冷却した)を溶液Dに添加し、得られた混合物を均一なコロイドが形成されるまで(約5分)4℃で5分間撹拌し、次に60℃に加熱し、60℃で15分間再び撹拌した。15分の間に、この溶液を撹拌しながら室温に冷却し、限外ろ過(10kD、スペクトル、中空糸、PES)によって100mlに減少させた。この溶液を鉄と塩化物が濾液中に検出できなくなるまで2リットルの再蒸留水に対して5回透析チューブ(12〜14kD分割再生セルロース、Spectra Por)によって透析した。透析後に全量200mlで存在するコロイド溶液を0.1gのマンノース、3gのアラビアゴム(Acaciabaum試薬用、Sigma G9752)及び3gのイヌリン(Sigmaaldrich 12255、チコリ(Chicory))と混合し、それを25mlの再蒸留水に一緒に溶解した。この分散液を3分間撹拌し、100%エタノールで1リットルまで満たした。このようにして、ナノ粒子を沈殿し、さらに800rcfで遠心分離した。沈降物を60℃で一晩乾燥した。得られた乾燥物質を粉末に微粉砕した。このようにして得られた粉末は、157mg/g乾燥物質の鉄含有量を全鉄に比べて2.04%の二価鉄含有量で有する。500個の結晶の評価によって、10nmより小さい結晶が90%の割合を有するが、5nmと10nmの間の結晶が<20%の割合を有する、3.4 + 1.9nmの平均最長直径がもたらされる。
【0012】

【0013】
【0014】
実施例1
50mlの水を温度平衡状態に氷水浴において冷却する。これに続いて、3.2gの塩化鉄(II)四水和物及び7.55gの塩化鉄(III)六水和物を連続して溶解する=溶液1。別の容器において、25gのD-マンニトール及び5gのイヌリンを、100mlの等しく冷却した1.5Mの水酸化ナトリウム溶液に溶解する=溶液2。溶液1を急速に溶液2に注入し、氷-水冷却して更に15分間撹拌する。次に3mlの30%過酸化水素溶液を添加し、5分間撹拌し、次に撹拌しながら60℃に加熱し、更に15分間撹拌する。試料を自然に室温に冷却し、水に対する透析によって精製し、リテンテートを4500rpm(ローター半径15cm)で10分間遠心分離する。上澄み液を3gのアラビアゴムに移し、得られた溶液を回転蒸発器で濃縮し、次に凍結乾燥する。得られた赤褐色粉末は、190mg/gの鉄含有量及び<1%の二価鉄の割合を有する。TEMによって検出される結晶サイズは、90%を超える結晶が0.5nmと4nmの間である。電子回折パターンは、HKL分類に従ってマグヘマイトに特有の回折パターンが現れる:220平面=0.297nm;311平面=0.254nm;400平面=0.214nm;511平面=0.164nm;440レベル=0.151nm。500個の結晶の評価は、3.0±0.6nmの平均最長直径を示し、90%の割合の結晶が4.5nmより小さい。
【0015】
【0016】
【0017】
実施例2
Charles Riverから品種Sprague Dawleyの雄のラットを実験の開始で使用し、下記で示されるグループ当たり200gの体重を有した(n=8)。実験の第1週に(週1)有効成分を含まないAltromin 1324(粉末形態)を動物に飼料を適宜与えた(体重に対して0.7%のリン及び0.2%のナトリウム)。次にさらに4週間(週2〜5)、活性物質を添加して上記の飼料を適宜与えた。毎週の実験の最終日に、動物を個々に24時間(6日目〜7日目)代謝ケージにて保った。便と尿を集めた。血液は最後の採集日にのみ得た。血液と尿の試料をSynlab GmbHによって調べた。
グループに100gの飼料当たり添加剤を週2〜5に以下の通り与えた
グループA対照 - 添加剤なし
グループB賦形剤 - 0.2gのマンニトール及び各0.9gのイヌリン及びアラビアゴムの添加
グループC実施例1- 飼料への添加剤として鉄に基づき250mgの鉄
グループD Velphoro(登録商標) - 飼料への添加剤として鉄に基づき250mgの鉄
グループE Fosrenol(登録商標) - 飼料への添加剤としてランタンに基づき250mgのランタン
グループF Renvela(登録商標) - セベラマー(Sevelamer)カーボネートに基づき500mg
実験(5週間の全実験及び4週の有効成分飼養)の最終日の24時間採集期間に対する結果は、以下の通りである:
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
対照グループと活性物質グループの分析値の統計的比較は、試験一元配置分散分析(One-Way Anova)及びDunnettの後処理によるPrism 5.0f(登録商標)プログラムを使用して実施した(* p<0.05;** p<0.01;*** p<0.005)。
【0029】
実施例3:実施例1に従う本発明の物質を同時に与えることによる尿毒症ラットの動物モデル対する腎性骨ジストロフィーの減少
アデニン(0.3%の追加質量割合、飼料Altromin C100、1.2%のリン及び1.2%カルシウムを10週間同時に与えることにより尿毒症ラット(Sprague-Dawley、雄、n=6、Charles River)を引き起こした。この10週間後、アデニンを中止し、3匹の動物にさらに有効成分を含まずに4週間上述の食餌を与え(対照グループ)、その他の3匹の動物には、実施例1に従う本発明の0.125質量%の鉄で補充した上述の食餌を与えた(有効成分グループ)。
この第2の4週間後、動物を致死させ、大腿骨を取り出し、長さを求めた(右側と左側による合計n=6の骨)。対照グループで0.42 + 0.08mm及び活性物質グループで0.59 + 0.12mm (定量されるマイクロコンピュータ断層撮影)によって皮質骨の骨幹の厚さに著しい差があった。
【0030】
説明に含まれる引用文献
引用特許文献
US 2012/0263670
DE 102011112898
WO 2012/0006475 Al
WO 97/22266
引用非特許文献
Labonte et al. 2014 Journal of the American Society of Nephrology 26、オンライン出版doi:10.1681/ASN.2014030317
図1
図2
図3
図4A
図4B