(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円柱状の大径部及び該大径部と中心軸が同じで連続するとともに電極チップが上記大径部との間に隙間を形成した状態で嵌合する円柱状の小径部を有するスポット溶接用の溶接ガンの上記電極チップを上記小径部から取り外す電極チップ取外装置であって、
板厚が上記隙間に対応する厚みであるとともに上記隙間に板厚方向と直交する方向に挿入可能な爪部を有し、該爪部の板厚方向に対称に配置された一対の取外部材と、
該両取外部材を互いに接近・離間させる接近離間手段とを備え、
上記各取外部材には、上記大径部又は電極チップに向かって開口するとともに上記各取外部材を上記大径部又は電極チップに接近させると当該大径部又は電極チップが嵌合する嵌合凹部が設けられ、
該嵌合凹部の開口部分の反対側には、上記大径部又は上記電極チップの外周面に対応して湾曲する湾曲面が形成され、
上記各取外部材の爪部は、上記嵌合凹部において板厚方向と直交する方向に等間隔に複数設けられるとともに、上記湾曲面に対応する部分にそれぞれ複数設けられ、上記一方の取外部材の各爪部と上記他方の取外部材の各爪部とは、同数で、且つ、上記両取外部材を先端側から見て点対称の配置であるとともに、上記両取外部材を上記接近離間手段によって互いに接近させた際、上記一方の取外部材の各爪部の間に上記他方の取外部材の各爪部が交互に入り込んで上記爪部の板厚方向と直交する方向に並ぶように互いにずれた位置になっており、
上記電極チップを上記小径部から取り外す際、上記両取外部材を接近させ、且つ、上記両爪部を上記隙間に挿入した状態で上記両取外部材を上記接近離間手段によって互いに離間させることにより、上記両爪部のいずれか一方が上記大径部から離間する方向に上記電極チップを押圧するとともに上記両爪部のいずれか他方が上記大径部に押し付けられて上記電極チップを上記小径部から取り外すよう構成されていることを特徴とする電極チップ取外装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、各取外部材の爪部は、溶接ガンにおける大径部と電極チップとの間の隙間に挿入する必要があるためにその厚みを薄く形成する必要がある一方、電極チップの取外作業を行う際に大きな負荷が掛かるため、各取外部材の爪部周りの剛性が高くなるよう設計する必要がある。
【0008】
しかし、特許文献1の電極チップ取外装置では、両取外部材を接近させた際、各取外部材の爪部が互いに重なり合うようになっているので、各取外部材の爪部の厚みを上記隙間の半分以下に設定する必要がある。したがって、各取外部材の爪部周りの断面係数が小さくなって剛性が低くなってしまい、取外作業を繰り返すと、各取外部材の爪部周りに変形や破損が生じてしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、爪部周りの変形や破損を防ぐことができる電極チップ取外装置及びこの電極チップ取外装置を備えたハンマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、各取外部材の爪部の板厚が特許文献1の爪部の板厚よりも厚くなるようにしても両取外部材を接近させた状態で両取外部材の爪部を隙間に挿入できるよう工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0011】
具体的には、円柱状の大径部及び該大径部と中心軸が同じで連続するとともに電極チップが上記大径部との間に隙間を形成した状態で嵌合する円柱状の小径部を有するスポット溶接用の溶接ガンの上記電極チップを上記小径部から取り外す電極チップ取外装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0012】
すなわち、第1の発明では、板厚が上記隙間に対応する厚みであるとともに上記隙間に板厚方向と直交する方向に挿入可能な爪部を有し、該爪部の板厚方向に対称に配置された一対の取外部材と、該両取外部材を互いに接近・離間させる接近離間手段とを備え、
上記各取外部材には、上記大径部又は電極チップに向かって開口するとともに上記各取外部材を上記大径部又は電極チップに接近させると当該大径部又は電極チップが嵌合する嵌合凹部が設けられ、該嵌合凹部の開口部分の反対側には、上記大径部又は上記電極チップの外周面に対応して湾曲する湾曲面が形成され、上記各取外部材の爪部は、
上記嵌合凹部において板厚方向と直交する方向に等間隔に複数設けられるとともに、上記湾曲面に対応する部分にそれぞれ複数設けられ、上記
一方の取外部材
の各爪部と上記他方の取外部材の各爪部とは、同数で、且つ、上記両取外部材を先端側から見て点対称の配置であるとともに、上記両取外部材を上記接近離間手段によって互いに接近させた際、
上記一方の取外部材の各爪部の間に上記他方の取外部材の各爪部が交互に入り込んで上記爪部の板厚方向と直交する方向に並ぶように互いにずれた位置に
なっており、上記電極チップを上記小径部から取り外す際、上記両取外部材を接近させ、且つ、上記両爪部を上記隙間に挿入した状態で上記両取外部材を上記接近離間手段によって互いに離間させることにより、上記両爪部のいずれか一方が上記大径部から離間する方向に上記電極チップを押圧するとともに上記両爪部のいずれか他方が上記大径部に押し付けられて上記電極チップを上記小径部から取り外すよう構成されていることを特徴とする。
【0013】
第2の発明では、第1の発明において
、上記嵌合凹部の開口近傍の爪部には、当該嵌合凹部の開口に近づくにつれて次第に板厚が薄くなる尖鋭部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
第
3の発明では、第1
又は第2の電極チップ取外装置を備え、上記接近離間手段には、作業者が操作時に把持する操作棒と、該操作棒の長手方向と交差する方向に突出する打撃用部材とが取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明では、各取外部材の爪部の板厚が電極チップと大径部との間の隙間に挿入することのできる最大の値となる。したがって、各取外部材の爪部周りの断面係数が大きくなって剛性が高まり、取外作業を繰り返し行っても各取外部材の爪部周りの変形や破損を防ぐことができる。
【0016】
また、接近離間手段によって両取外部材を接近させると、互いに板厚が同じである一方の取外部材の各爪部と他方の取外部材の各爪部とが交互に一列に並ぶので、接近状態の各取外部材を大径部又は電極チップに接近させると、各取外部材の各爪部がそれぞれ大径部と電極チップとの間の隙間に一気に挿入される。そして、接近離間手段によって両取外部材を離間させると、各取外部材に等間隔に設けられた爪部が大径部及び電極チップに対してバランス良く力を加えるので、大径部及び電極チップが当該電極チップの中心軸に沿って真っ直ぐ離間するようになり、電極チップを小径部から効率良く取り外すことができる。
【0017】
また、各取外部材を上記大径部又は電極チップに接近させると、大径部と電極チップとの間の隙間に爪部が挿入されるとともに、大径部及び電極チップが各嵌合凹部に嵌合する。したがって、両取外部材を離間させる際、大径部及び電極チップが各嵌合凹部に支えられるので、両取外部材の離間動作が安定して電極チップの取外作業を円滑に行うことができる。
【0018】
第
2の発明では、各爪部を電極チップと大径部との間の隙間に挿入する際、各爪部の尖鋭部が、各爪部を上記隙間に滑らかに案内するようになるので、電極チップの取外作業を効率良く行うことができる。
【0019】
第
3の発明では、各取外部材の爪部を大径部と電極チップとの間の隙間に挿入する操作を作業者が操作棒を把持して行えるようになるので、手動で行う電極チップの取外作業を簡単に行うことができる。また、電極チップの取外作業が終了した後、新しい電極チップを小径部に取り付ける際、打撃用部材で電極チップを小径部に打ち込むことで電極チップを小径部に強固に固定させることができる。さらに、作業者が操作棒を把持したままの状態で電極チップの取外作業と取付作業とを連続で行えるので、電極チップの交換作業を効率良く行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
《発明の実施形態1》
図1及び
図2は、本発明の実施形態1に係るハンマー1を示す。該ハンマー1は、
図5乃至
図7に示すように、スポット溶接用の溶接ガン11の先端から電極チップ12を取り外したり、或は、上記溶接ガン11の先端に上記電極チップ12を取り付ける際に使用するものであり、平面視で略T字状をなすハンマー本体2と、操作時に作業者が把持する操作棒3とを備えている。
【0022】
上記溶接ガン11は、産業用ロボット(図示せず)に把持させて使用する一般的なものであり、上記溶接ガン11の先端には、中心軸11cが同じで連続する円柱状の大径部11a及び小径部11bが設けられている。
【0023】
上記電極チップ12は、当該電極チップ12の中心軸12aが上記大径部11a及び小径部11bの中心軸11cに一致するように、且つ、上記大径部11aとの間に隙間S1が形成されるように上記小径部11bに嵌合によって取り付けられている。
【0024】
上記ハンマー本体2は、
図2に示すように、上記電極チップ12を上記小径部11bから取り外す電極チップ取外装置4を備えている。
【0025】
該電極チップ取外装置4は、
図3乃至
図6に示すように、厚みを有する板状で、且つ、先端に向かって二股に分岐した平面視で略U字状をなす一対の金属製取外部材5を備え、該両取外部材5は、互いの裏面側が対面するように、且つ、先端側が同方向を向くように対称に配置されている。
【0026】
上記各取外部材5の先端側には、上記大径部11a又は上記電極チップ12に向かって開口する嵌合凹部50が設けられ、該嵌合凹部50の開口部分の反対側半分には、上記大径部11a又は上記電極チップ12の外周面に対応して湾曲する湾曲面50aが形成されている。
【0027】
そして、上記各取外部材5を上記大径部11a又は上記電極チップ12に接近させると、上記嵌合凹部50に上記大径部11a又は上記電極チップ12が嵌合するようになっている。
【0028】
上記各取外部材5の裏面には、
図4に示すように、隆起面がそれぞれ平坦な第1隆起面部5a、第2隆起面部5b、及び、第3隆起面部5cが上記嵌合凹部50に沿って所定の間隔をあけて順に設けられている。
【0029】
上記第1隆起面部5a、第2隆起面部5b、及び、第3隆起面部5cは、同じ量だけ隆起しており、その隆起量は、上記隙間S1に対応している。
【0030】
上記第1隆起面部5aは、上記各取外部材5の先端側における分岐部分の一方側に設けられ、上記嵌合凹部50側の直線状の縁部が当該嵌合凹部50の内方に飛び出して第1爪部51となっている。
【0031】
すなわち、上記第1爪部51は、板状で、且つ、上記嵌合凹部50の開口側の直線部分に沿う直線形状をなし、その厚みは、上記隙間S1に対応している。
【0032】
また、上記第1隆起面部5aにおける上記嵌合凹部50の開口側には、当該嵌合凹部50の開口に近づくにつれて次第に板厚が薄くなる尖鋭部51aが形成されている。
【0033】
上記第2隆起面部5bは、上記各取外部材5の基端側における中途部と一方の隅部との間に設けられ、上記嵌合凹部50に近づくにつれて次第に幅が狭くなる略三角形状をなしている。
【0034】
上記第2隆起面部5bの上記嵌合凹部50側における湾曲面50aに対応する縁部は、上記嵌合凹部50の内方に飛び出して第2爪部52となっている。
【0035】
すなわち、上記第2爪部52は、板状で、且つ、上記嵌合凹部50の湾曲面50aに沿う湾曲形状をなし、その厚みは、上記隙間S1に対応している。
【0036】
上記第3隆起面部5cは、上記各取外部材5の基端側における他方の隅部と上記各取外部材5の先端側における分岐部分の他方側の中途部との間に設けられ、上記嵌合凹部50に近づくにつれて次第に幅が狭くなる略三角形状をなしている。
【0037】
上記第3隆起面部5cの上記嵌合凹部50側における湾曲面50aに対応する縁部は、上記嵌合凹部50の内方に飛び出して第3爪部53となっている。
【0038】
すなわち、上記第3爪部53は、板状で、且つ、上記嵌合凹部50の湾曲面50aに沿う湾曲形状をなし、その厚みは、上記隙間S1に対応している。
【0039】
そして、上記各取外部材5における第1爪部51、第2爪部52、及び、第3爪部53は、上記嵌合凹部50の湾曲方向で、且つ、第1爪部51、第2爪部52、及び、第3爪部53の板厚方向と直交する方向に等間隔に設けられている。
【0040】
尚、以下では、便宜上、一方の取外部材5の第1爪部51、第2爪部52、及び、第3爪部53をそれぞれ爪部5Aと、他方の取外部材5の第1爪部51、第2爪部52、及び、第3爪部53をそれぞれ爪部5Bと呼ぶことにする。
【0041】
上記各取外部材5の先端側における分岐部分の他方側裏面には、上記第3隆起面部5cに連続する第1段差面部5dが設けられ、該第1段差面部5dの段差面の形状は、上記第1隆起面部5aの隆起面の形状に対応している。
【0042】
また、上記各取外部材5の第2隆起面部5bと第3隆起面部5cとの間には、当該第2隆起面部5b及び第3隆起面部5cに連続する第2段差面部5eが設けられ、該第2段差面部5eの段差面の形状は、上記第2隆起面部5bの隆起面の形状に対応している。
【0043】
さらに、上記各取外部材5の第1隆起面部5aと第2隆起面部5bとの間には、当該第1隆起面部5a及び第2隆起面部5bに連続する第3段差面部5fが設けられ、該第3段差面部5fの段差面の形状は、上記第3隆起面部5cの隆起面の形状に対応している。
【0044】
そして、上記両取外部材5は、上記爪部5A,5Bの板厚方向に対称に配置されていて、上記両取外部材5を互いに接近させると、一方の取外部材5の第1隆起面部5aが他方の取外部材5の第1段差面部5dに嵌合するとともに他方の取外部材5の第1隆起面部5aが一方の取外部材5の第1段差面部5dに嵌合するようになっている。また、一方の取外部材5の第2隆起面部5bが他方の取外部材5の第2段差面部5eに嵌合するとともに他方の取外部材5の第2隆起面部5bが一方の取外部材5の第2段差面部5eに嵌合するようになっている。さらに、一方の取外部材5の第3隆起面部5cが他方の取外部材5の第3段差面部5fに嵌合するとともに他方の取外部材5の第3隆起面部5cが一方の取外部材5の第3段差面部5fに嵌合するようになっている。
【0045】
すなわち、上記両取外部材5を互いに接近させると、一方の取外部材5の各爪部5Aの間に他方の取外部材5の各爪部5Bが交互に入り込んで一方の取外部材5の各爪部5Aと他方の取外部材5の各爪部5Bとが上記嵌合凹部50に沿って一列に並ぶようになっていて、上記両取外部材5を互いに接近させた状態で上記各嵌合凹部50を上記大径部11a又は上記電極チップ12に接近させた際、上記各取外部材5の各爪部5A,5Bが上記隙間S1に板厚方向と直交する方向に一気に挿入されるようになっている。
【0046】
つまり、各取外部材5の各爪部5A,5Bは、上記両取外部材5を互いに接近させた際、上記各爪部5A,5Bの板厚方向と直交する方向に並ぶように互いにずれた位置に設けられている。
【0047】
上記各取外部材5の各分岐部分における外側面の中途部には、上記各爪部5A,5Bの挿入方向と交差する方向で、且つ、互いに離間する方向に突出する一対の突起54が設けられている。
【0048】
該両突起54は、
図5及び
図6に示すように、上記各嵌合凹部50に上記大径部11a又は上記電極チップ12を嵌合させた状態で上記両突起54の中央に上記大径部11a及び上記小径部11bの中心軸11cが位置するよう上記各取外部材5に形成されている。
【0049】
また、上記各取外部材5の基端側における各隅部は、当該各取外部材5の表面側が窪んで形成された第1薄肉部55と第2薄肉部56とを有している。
【0050】
上記第1薄肉部55には、上記各爪部5A,5Bの挿入方向及び上記各突起54の突出方向の両方と交差する方向に貫通する第1貫通孔55aが形成される一方、上記第2薄肉部56には、上記各爪部5A,5Bの挿入方向及び上記各突起54の突出方向の両方と交差する方向に貫通する第2貫通孔56aが形成されていて、上記一方の取外部材5の第1貫通孔55aと他方の取外部材5の第2貫通孔56aとが互いに対応する位置となり、上記他方の取外部材5の第1貫通孔55aと一方の取外部材5の第2貫通孔56aとが互いに対応する位置となっている。
【0051】
上記電極チップ取外装置4は、軸部6a及び頭部6bからなる一対のガイドピン6を備えている。
【0052】
上記各ガイドピン6の軸部6aは、他方の取外部材5側から互いに対応する第1貫通孔55a及び第2貫通孔56aに嵌挿されていて、各ガイドピン6の軸部6aは、上記両取外部材5の接近・離間動作を案内するようになっている。
【0053】
上記各ガイドピン6の軸部6a先端には、当該各ガイドピン6の軸部6aが第1貫通孔55a及び第2貫通孔56aから外れないようにワッシャー6cが嵌め込まれている。
【0054】
また、上記各ガイドピン6の軸部6aには、それぞれコイルバネ7が巻装されている。
【0055】
該各コイルバネ7の一端は、上記各ガイドピン6の頭部6bに当接する一方、上記各コイルバネ7の他端は、上記他方の取外部材5の表面に当接していて、上記両コイルバネ7の付勢力によって上記両取外部材5が互いに接近するようになっている。
【0056】
上記電極チップ取外装置4は、上記両取外部材5を支持するアーム部材8を備えている。
【0057】
該アーム部材8の一端には、上記各爪部5A,5Bの上記隙間S1への挿入方向に突出し、且つ、上記突起54の突出方向に離間する一対の突出支持部81が設けられ、上記アーム部材8の他端には、上記操作棒3の一端が固定されている。
【0058】
上記各突出支持部81は、上記両取外部材5の各側方に位置しており、上記一方の取外部材5の突起54を軸支する第1支持部81aと、上記他方の取外部材5の突起54を軸支する第2支持部81bとを備えている。
【0059】
すなわち、上記各突出支持部81の第1支持部81aは、上記一方の取外部材5の各突起54を軸支し、上記各突出支持部81の第2支持部81bは、上記他方の取外部材5の各突起54を軸支している。
【0060】
上記各第1支持部81aは、上記アーム部材8の他端側に行くにつれて次第に他方の取外部材5側に位置する形状で、且つ、上記各第2支持部81b周りに略円弧状に湾曲する溝形状をなしており、上記アーム部材8は、上記各第1支持部81aに軸支された各突起54が上記各第1支持部81aに案内されることによって上記各第2支持部81bに軸支された各突起54を回動軸として当該回動軸周りに回動可能になっている。
【0061】
上記各突出支持部81における取外部材5の反対側には、短い円柱形状のゴム製打撃用部材9が上記操作棒3の長手方向と交差する方向に突出するように取り付けられている。
【0062】
そして、本発明の接近離間手段10は、上記第1貫通孔55a、上記第2貫通孔56a、上記各ガイドピン6、及び、上記アーム部材8で構成され、作業者は、上記電極チップ12を上記小径部11bから取り外す際、
図5に示すように、上記両取外部材5を接近させ、且つ、上記各爪部5A,5Bを上記隙間S1に挿入した状態で上記操作棒3を操作して上記アーム部材8の他端側を上記一方の取外部材5側に押圧することにより、
図6に示すように、上記他方の取外部材5の両突起54周りにおける上記アーム部材8の回動動作で上記各第1支持部81aが上記一方の取外部材5の両突起54を案内することで上記一方の取外部材5が上記両コイルバネ7の付勢力に抗して上記他方の取外部材5から離間し、この離間動作で上記一方の取外部材5の各爪部5Aが上記大径部11aから離間する方向に上記電極チップ12を押圧するとともに上記他方の取外部材5の各爪部5Bが上記大径部11aに押し付けられて上記電極チップ12を上記小径部11bから取り外すよう構成されている。
【0063】
また、作業者は、上記電極チップ12を上記小径部11bに取り付ける際、
図7に示すように、上記小径部11bに上記電極チップ12を嵌合させた状態で上記操作棒3を把持して上記打撃用部材9で電極チップ12の先端を叩くことにより、上記小径部11bに上記電極チップ12を強固に固定できるようになっている。
【0064】
次に、上記ハンマー1による電極チップ12の交換作業について説明する。
【0065】
まず作業者は、電極チップ12の取外作業を行う溶接ガン11に近づくとともに、
図5に示すように、上記ハンマー1の操作棒3を把持しながら上記溶接ガン11先端の大径部11aと電極チップ12との間の隙間S1に上記各爪部5A,5Bを挿入する。すると、一方の取外部材5の湾曲面50aが電極チップ12の外周面に、他方の取外部材5の湾曲面50aが大径部11aの外周面に対応する。
【0066】
次に、作業者は、
図6に示すように、操作棒3を一方の取外部材5側に倒す。すると、上記アーム部材8の他端側が一方の取外部材5側に押圧され、操作棒3及びアーム部材8が上記他方の取外部材5の両突起54周りに回動する。
【0067】
上記アーム部材8が回動すると、上記各第1支持部81aが上記一方の取外部材5の各突起54を案内することによって上記一方の取外部材5が上記コイルバネ7の付勢力に抗して上記他方の取外部材5から離間する。すると、一方の取外部材5の各爪部5Aが上記大径部11aから離間する方向に電極チップ12を押圧するとともに、上記他方の取外部材5の各爪部5Bが上記大径部11aに押し付けられ、これにより、上記電極チップ12が上記小径部11bから外れる。
【0068】
その後、作業者は、新しい電極チップ12を持って小径部11bに嵌め込み、
図7に示すように、上記打撃用部材9で新しい電極チップ12の先端を叩く。すると、新しい電極チップ12が小径部11bに強固に固定され、電極チップ12の交換作業が終了する。
【0069】
以上より、本発明の実施形態1によると、各取外部材5の爪部5A,5Bの板厚が電極チップ12と大径部11aとの間の隙間S1に対応しているので、各取外部材5の爪部5A,5Bの板厚が電極チップ12と大径部11aとの間の隙間S1に挿入することのできる最大の値となる。したがって、各取外部材5の爪部5A,5B周りの断面係数が大きくなって剛性が高まり、取外作業を繰り返し行っても各取外部材5の爪部5A,5B周りの変形や破損を防ぐことができる。
【0070】
また、接近離間手段10によって両取外部材5を接近させると、互いに板厚が同じである一方の取外部材5の各爪部5Aと他方の取外部材5の各爪部5Bとが交互に一列に並ぶので、接近状態の各取外部材5を大径部11a又は電極チップ12に接近させると、各取外部材5の各爪部5A,5Bがそれぞれ大径部11aと電極チップ12との間の隙間S1に一気に挿入される。そして、接近離間手段10によって両取外部材5を離間させると、各取外部材5に等間隔に設けられた爪部5A,5Bが大径部11a及び電極チップ12に対してバランス良く力を加えるので、大径部11a及び電極チップ12が当該電極チップ12の中心軸12aに沿って真っ直ぐ離間するようになり、電極チップ12を小径部11bから効率良く取り外すことができる。
【0071】
また、各取外部材5を大径部11a又は電極チップ12に接近させると、大径部11aと電極チップ12との間の隙間S1に各爪部5A,5Bが挿入されるとともに、大径部11a及び電極チップ12が各嵌合凹部50に嵌合する。したがって、両取外部材5を離間させる際、大径部11a及び電極チップ12が各嵌合凹部50に支えられるので、両取外部材5の離間動作が安定して電極チップ12の取外作業を円滑に行うことができる。
【0072】
また、各爪部5A,5Bを電極チップ12と大径部11aとの間の隙間S1に挿入する際、両第1爪部51の尖鋭部51aが、各爪部5A,5Bを上記隙間S1に滑らかに案内するようになるので、電極チップ12の取外作業を効率良く行うことができる。
【0073】
また、各取外部材5の各爪部5A,5Bを大径部11aと電極チップ12との間の隙間S1に挿入する操作を作業者が操作棒3を把持して行えるようになるので、手動で行う電極チップ12の取外作業を簡単に行うことができる。また、電極チップ12の取外作業が終了した後、新しい電極チップ12を小径部11bに取り付ける際、打撃用部材9で電極チップ12を小径部11bに打ち込むことで電極チップ12を小径部11bに強固に固定させることができる。さらに、作業者が操作棒3を把持したままの状態で電極チップ12の取外作業と取付作業とを連続で行えるので、電極チップ12の交換作業を効率良く行うことができる。
【0074】
尚、本発明の実施形態1の第1支持部81aは、溝形状をなしているが、スリット形状であってもよい。
【0075】
また、本発明の実施形態1の第1支持部81aは、湾曲形状をなしているが、直線形状であってもよい。
【0076】
また、本発明の電極チップ取外装置4は、溶接ガン11の電極チップ12が下方を向く姿勢のときに使用しているが、溶接ガン11の電極チップ12が上方を向く姿勢のときであっても使用できる。
《発明の実施形態2》
図8及び
図9は、本発明の実施形態2に係るハンマー1を示す。この実施形態2では、アーム部材8における第2支持部81bの構造と、溶接ガン11の電極チップ12が上方を向く姿勢のときにハンマー1を使用している点とが実施形態1と異なっているだけで、その他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0077】
実施形態2の各突出支持部81における第2支持部81bは、上記アーム部材8の他端側に行くにつれて次第に一方の取外部材5側に位置する溝形状をなしており、各突出支持部81における第1支持部81a及び第2支持部81bは、両取外部材5の並設方向に対称の形状となっている。
【0078】
そして、作業者は、上記電極チップ12を上記小径部11bから取り外す際、
図8に示すように、上記両取外部材5を接近させ、且つ、上記各爪部5A,5Bを上記隙間S1に挿入した状態で上記操作棒3を操作して上記アーム部材8の他端側を上記他方の取外部材5側に押圧することにより、
図9に示すように、上記一方の取外部材5の両突起54周りにおける上記アーム部材8の回動動作で上記各第2支持部81bが上記他方の取外部材5の両突起54を案内することで上記他方の取外部材5が上記両コイルバネ7の付勢力に抗して上記一方の取外部材5から離間し、この離間動作で上記他方の取外部材5の各爪部5Bが上記大径部11aから離間する方向に上記電極チップ12を押圧するとともに上記一方の取外部材5の各爪部5Aが上記大径部11aに押し付けられて上記電極チップ12を上記小径部11bから取り外すよう構成されている。
【0079】
以上より、本発明の実施形態2によると、アーム部材8の回動方向を変更しても電極チップ12の取外作業が行えるようになるので、作業者が操作棒3を把持して手動で電極チップの取外作業を行う場合、作業者の操作の選択枝が増えて扱いやすい。
【0080】
尚、本発明の実施形態2の第2支持部81bは、溝形状をなしているが、スリット形状であってもよい。
【0081】
また、本発明の実施形態2の第2支持部81bは、湾曲形状をなしているが、直線形状であってもよい。
【0082】
また、本発明の実施形態2の電極チップ取外装置4は、溶接ガン11の先端の電極チップ12が上方を向く姿勢のときに使用しているが、溶接ガン11の先端の電極チップ12が下方を向く姿勢のときであっても使用できる。
【0083】
また、本発明の実施形態1,2では、各取外部材5に爪部5A,5Bがそれぞれ3つずつ設けられているが、これに限らず、各取外部材5に爪部5A,5Bがそれぞれ1又は2つずつ設けられていてもよいし、各取外部材5に爪部5A,5Bがそれぞれ4つ以上設けられていてもよい。
【0084】
また、本発明の実施形態1,2では、各取外部材5の爪部5A,5Bが等間隔に設けられているが、等間隔に設けていなくてもよい。
【0085】
また、本発明の実施形態1,2では、電極チップ12の取外作業を行う際、アーム部材8を手動で回動させるようになっているが、これに限らず、アーム部材8を機械によって自動で回動させるようにしてもよい。