【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タンデム型質量分析を含む質量分析によってサンプル中のエストロンの量を検出するための方法を提供する。
【0007】
一局面では、体液サンプル中のエストロンの量を決定するための方法が提供される。この方法は以下をを含み:(a)体液サンプル中のエストロンを液体クロマトグラフィーによって精製する工程と;(b)この体液サンプル中のエストロンをイオン化する工程と;(c)このエストロンイオン(単数または複数)の量を質量分析によって検出する工程およびこの体液サンプル中のエストロンの量に対してこの検出されたエストロンイオン(単数または複数)の量を関連付ける工程。この局面の特定の好ましい実施形態では、この方法の定量の限界は、500pg/mL以下である。他の好ましい実施形態では、エストロンは、質量分析前には誘導体化されない。特定の好ましい実施形態では、エストロンイオンは、269.07±0.5、145.03±0.5および143.02±0.5の質量/電荷比を有するイオンの群から選択される。いくつかの好ましい実施形態では、この方法は、エストロンの1つ以上の前駆イオンを作製する工程を含み、ここではこの前駆イオンの少なくとも1つが269.07±0.5の質量/電荷比を有する。関連の好ましい実施形態では、この方法は、断片イオンのうち少なくとも1つが145.03±0.5または143.02±0.5の質量/電荷比を有する、エストロン前駆イオンの1つ以上の断片イオンを作製する工程を含み得る。いくつかの好ましい実施形態では、この方法は、体液サンプル中に存在し得るタンパク質由来の遊離のエストロンに対して十分な量の試薬をこの体液サンプルに添加する工程を含み得る。関連の好ましい実施形態では、この方法は、体液サンプルを酸性化する工程;好ましくはイオン化の前に酸性化する工程;さらに好ましくは、精製の前に酸性化する工程;好ましくはギ酸を用いて酸性化する工程を含みうる。特に好ましい実施形態では、この体液サンプルは、血清、血漿または尿である。
【0008】
本明細書において用いる場合、別段言及しない限り、単数形「1つの、ある(不定冠詞:a、an)」および「この、その(定冠詞:the)」は複数の言及を包含する。従って、例えば、「あるタンパク質(a protein)」という言及は、複数のタンパク質分子を包含する。
【0009】
本明細書において用いる場合、「精製」または「精製すること」という用語は、目的の分析物(単数または複数)以外のサンプル由来の全ての物質を除去することを言うのではない。そうではなく、精製とは、目的の分析物の検出を妨害し得るサンプル中の他の成分に対して目的の1つ以上の分析物の量を富化する手順を指す。サンプルは本明細書では、1つ以上の妨害物質、例えば、選択されたエストロンの親イオンまたは娘イオンを質量分析によって検出することを妨げるであろう1つ以上の物質の除去を可能にする種々の手段によって精製される。
【0010】
本明細書において用いる場合、「試験サンプル」という用語は、エストロンを含み得る任意のサンプルを指す。本明細書において用いる場合、「体液」という用語は、個体の身体から単離され得る任意の液体を意味する。例えば、「体液」は、血液、血漿、血清、胆汁、唾液、尿、涙、汗などを包含し得る。
【0011】
本明細書において用いる場合、「誘導体化」という用語は、2つの分子を反応させて新規な分子を形成することを意味する。誘導体化剤としては、イソチオシアナート基、ジニトロ−フルオロフェニル基、ニトロフェノキシカルボニル基、および/またはフタルアルデヒド基などを挙げることができる。
【0012】
本明細書において用いる場合、「クロマトグラフィー」という用語は、液体または気体によって担持される化学的な混合物が、静止的な液相または固相の周囲または上を流れるにつれて、その化学物質の示差的な分布の結果として成分に分けられるプロセスを指す。
【0013】
本明細書において用いる場合、「液体クロマトグラフィー」または「LC」という用語は、微細に分けられた物質のカラムを通じて、または毛細管の通路を通じて液体が均一に浸透するような液体溶液の1つ以上の成分の選択的な遅延のプロセスを意味する。この遅延の結果、固定相(単数または複数)に対してこの液体が動くにつれて、1つ以上の固定相とバルクの液体(すなわち、移動相)との間で混合物の成分の分布が生じる。「液体クロマトグラフィー」としては、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)が挙げられる。
【0014】
本明細書において用いる場合、「高速液体クロマトグラフィー」または「HPLC」という用語は、液体クロマトグラフィーであって、分離の程度が固定相、典型的には濃密に充填されたカラムを通じて圧力下で移動相を強制することによって増大される液体クロマトグラフィーを指す。
【0015】
本明細書において用いる場合、「高乱流液体クロマトグラフィー」または「HTLC」という用語は、分離を行うための基礎としてカラム充填を通じてアッセイされている物質の乱流を利用するクロマトグラフィーの形態を指す。HTLCは質量分析による分析の前に2つの特定されていない薬物を含んでいるサンプルの調製に適用されている。例えば、Zimmer et al.,J.Chromatogr.A 854:23〜35(1999)を参照のこと;また、さらにHTLCを説明している、米国特許第5,968,367号、同第5,919,368号、同第5,795,469号、および同第5,772,874号も参照のこと。当業者は、「乱流」を理解する。液体がゆっくりかつスムーズに流れる場合、その流れは「層流」と呼ばれる。例えば、HPLCカラムを通じて移動する低い流速の流れは層流である。層流では、液体の粒子の動きは、粒子が一般には直線で動くにつれて規則正しい。速い流速では、水の慣性は、液体の摩擦力および乱流の結果を上回る。不規則な境界と接触していない液体は、摩擦によって遅くなるかまたは不均一な表面によって偏向される液体を「追い越す(outruns)」。液体が乱れて流される場合、その液体は渦巻き(eddies)および渦(whirls)(または渦形(vortices))で流れ、ここではその流れが層流である場合よりも「のろのろ進む(drag)」。液体の流れが層流または乱流であるときを決定するのに役立つ多くの参考文献が利用可能である(例えば、
Turbulent Flow Analysis:Measurement and Prediction,P.S. Bernard &
J.M. Wallace,John Wiley & Sons,Inc.,(2000);
An Introduction to Turbulent Flow,Jean Mathieu & Julian Scott,Cambridge University Press(2001))。
【0016】
本明細書において用いる場合、「ガスクロマトグラフィー」または「GC」という用語は、クロマトグラフィーであって、サンプル混合物が気化されて、液体または粒子状固体からなる固定相を含んでいるカラムを通じて移動する搬送ガス(窒素またはヘリウムとして)の流れに注入され、その固定相の化合物の親和性に従ってその成分の化合物に分けられるクロマトグラフィーを指す。
【0017】
本明細書において用いる場合、「大粒子カラム(large particle column)」または「抽出カラム(extraction column)」という用語は、約35μmより大きい平均粒子直径を含んでいるクロマトグラフィーカラムを指す。この文脈において用いる場合、「約」という用語は±10%を意味する。好ましい実施形態では、このカラムは、約60μmの直径の粒子を含む。
【0018】
本明細書において用いる場合、「分析カラム(analytical column)」という用語は、分析物の存在または量の決定を可能にするのに十分な、そのカラムから溶出するサンプル中の物質の分離を果たすために十分なクロマトグラフィープレートを有しているクロマトグラフィーカラムを指す。このようなカラムは、さらなる分析のために精製されたサンプルを得るために、保持されていない物質から保持された物質を分離または抽出するという一般的な目的を有する「抽出カラム」とは識別される場合が多い。この文脈で用いる場合、「約」という用語は±10%を意味する。好ましい実施形態では、この分析的カラムは、約4μmの直径の粒子を含む。
【0019】
本明細書において用いる場合、「オンライン」または「インライン」という用語は、例えば、「オンラインの自動的方式(on−line automated fashion)」または「オンライン抽出(on−line extraction)」で用いる場合、操作者の介入が必要なしで行われる手順を指す。対照的に、「オフライン」という用語は、本明細書において用いる場合、操作者の手動による介入を要する手順を指す。従って、サンプルを沈殿させ、次に上清を手動でオートサンプラーにロードする場合、その沈殿およびローディングの工程は、その後の工程からオフラインである。この方法の種々の実施形態では、1つ以上の工程をオンラインの自動的な方式で行ってもよい。
【0020】
本明細書において用いる場合、「質量分析」または「MS」という用語は、その質量によって化合物を特定するための分析技術を指す。MSとは、イオンの質量対電荷比、すなわち「m/z」に基づいてイオンをフィルタリング、検出および測定する方法を指す。MS技術は一般には(1)化合物をイオン化して荷電された化合物を形成する工程;および(2)荷電された化合物の分子量を検出して質量対電荷比(m/z)を算出する工程を含む。この化合物は、任意の適切な手段によってイオン化および検出され得る。「質量分析計」は一般には、イオン化装置およびイオン検出器を備える。一般には、目的の1つ以上の分子をイオン化し、そのイオンを引き続き、質量分析法の装置に導入し、ここで、磁場および電場の組み合わせに起因して、イオンは質量(「m」)および荷電(「z」)に依存する空間中の経路をたどる。例えば、「Mass Spectrometry From Surfaces」と題された米国特許第6,204,500号、「Methods
and Apparatus for Tandem Mass Spectrometry」と題された同第6,107,623号、「DNA Diagnostics Based On Mass Spectrometry」と題された同第6,268,144号、「Surface−Enhanced Photolabile Attachment And Release For Desorption And Detection Of Analytes」と題された同第6,124,137号、Wright et al.,Prostate Cancer and Prostatic Diseases 2:264〜76(1999);ならびにMerchantおよびWeinberger,Electrophoresis 21:1164〜67(2000)を参照のこと。
【0021】
本明細書において用いる場合、「負のイオンモードで作動する」という用語は、負のイオンが作製され検出される質量分析法を指す。同様に、「正のイオンモードで作動する」という用語は、本明細書において用いる場合、正のイオンが作製され検出される質量分析法を指す。
【0022】
本明細書において用いる場合、「イオン化」または「イオン化する、イオン化工程(ionizing)」という用語は1つ以上の電子単位に等しい正味の電荷を有している分析物イオンを作製するプロセスを指す。負のイオンとは、1つ以上の電子単位の正味の負の電荷を有しているイオンであるが、正のイオンとは、1つ以上の電子単位の正味の正の電荷を有しているイオンである。
【0023】
本明細書において用いる場合、「電子イオン化」または「EI」という用語は、気相または蒸気相中の目的の分析物が電子の流れと相互作用する方法を指す。分析物との電子の衝突は分析物イオンを生じ、これが次に質量分析技術に供され得る。
【0024】
本明細書において用いる場合、「化学的イオン化」または「CI」という用語は、試薬ガス(例えば、アンモニア)が電子衝突に供され、分析物イオンが試薬ガスイオンおよび分析物分子の相互作用によって形成される方法を指す。
【0025】
本明細書において用いる場合、「高速原子衝撃」または「FAB」という用語は、高エネルギー原子のビーム(しばしばXeまたはAr)が不揮発性サンプルに衝突し、サンプル中に含まれる分子を脱着およびイオン化する方法を指す。試験サンプルを、グリセロール、チオグリセロール、m−ニトロベンジルアルコール、18−クラウン−6クラウンエーテル、2−ニトロフェニルオクチルエーテル、スルホラン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンなどの粘性の液体基質に溶解する。化合物またはサンプルについて適切な基質の選択は経験的なプロセスである。
【0026】
本明細書において用いる場合、「マトリックス支援レーザー脱離イオン化」または「MALDI」という用語は、不揮発性のサンプルがレーザー照射に曝され、このレーザー照射がサンプル中の分析物を、光イオン化、プロトン化、脱プロトンおよびクラスター崩壊を含む種々のイオン化経路によって脱着およびイオン化する方法を指す。MALDIについては、サンプルをエネルギー吸着基質と混合して、これによって分析物分子の脱着を容易にする。
【0027】
本明細書において用いる場合、「表面増強レーザー脱離イオン化」または「SELDI」という用語は、不揮発性サンプルがレーザー照射に曝され、レーザー照射がサンプル中の分析物を、光イオン化、プロトン化、脱プロトンおよびクラスター崩壊を含む種々のイオン化経路によって脱着およびイオン化するという別の方法を指す。SELDIについては、サンプルは典型的には目的の1つ以上の分析物を優先的に保持する表面に結合される。MALDIにおいては、このプロセスはエネルギー吸着物質を使用してイオン化を容易にし得る。
【0028】
本明細書において用いる場合、「エレクトロスプレーイオン化」または「ESI」という用語は、溶液が短い長さの毛細管にそって通され、その終わりに高い正または負の電圧が印加される方法を指す。この管の終わりに達する溶液は、溶媒蒸気中の溶液の極めて小さい液滴のジェットまたはスプレー中に気化(噴霧)される。この液滴のミストは蒸発室(エバポレーション・チャンバ)を通って流れ、この蒸発室は縮合を妨げかつ溶媒を蒸発させるためにわずかに加熱される。この液滴は小さくなるので、電気的表面電荷密度は、同様の電荷の間の自然な反発がイオンおよび放出されるべき中性の分子を生じる時点まで増大する。
【0029】
本明細書において用いる場合、「大気圧化学イオン化」または「APCI」という用語は、ESIと同様の質量分析方法を指す;しかし、APCIは、大気圧でプラズマ内に生じるイオン−分子反応によって、イオンを生じる。このプラズマはスプレーの毛細管と対極との間の電荷によって維持される。次いで、イオンは典型的には、1セットの示差的にポンピングされたスキマー・ステージの使用によって質量分析器の中に抽出される。乾燥および予備加熱されたN
2ガスの逆流を用いて、溶媒の除去を改善してもよい。APCI
中の気相イオン化は、極性の低い種を分析するためにはESIよりも有効であり得る。
【0030】
本明細書において用いる場合、「大気圧光イオン化」または「APPI」という用語は
、質量分析の形態であって、分子Mの光イオン化の機構が、光吸収および電子入射であって分子イオンM+を形成する形態を指す。光エネルギーは典型的にはイオン化電位のすぐ上なので、分子イオンは解離を受けにくい。多くの場合、クロマトグラフィーの必要なしにサンプルを分析することが可能であり得、従って時間および費用がかなり節約される。水蒸気またはプロトン性溶媒の存在下では、分子イオンは、Hを抽出してMH+を形成し得る。これは、Mが高いプロトン親和力を有する場合に生じる傾向である。これは、定量の精度には影響しない。なぜならM+およびMH+の合計は、一定であるからである。プロトン性溶媒における薬物化合物は、通常MH+として観察されるが、非極性化合物、例えば、ナフタレンまたはテストステロンは通常は、M+を形成する。Robb,D.B.,Covey,T.R.およびBruins,A.P.(2000):例えば、Robb
et al.,Atmospheric pressure photoionization:An ionization method for liquid chromatography−mass spectrometry.Anal.Chem.72(15):3653〜3659を参照のこと。
【0031】
本明細書において用いる場合、「誘導結合プラズマ(inductively coupled plasma)」または「ICP」という用語は、サンプルが、ほとんどの元素が微粒化およびイオン化されるような十分に高い温度で部分的にイオン化されたガスと相互作用する方法を指す。
【0032】
本明細書において用いる場合、「電界脱離」という用語は、不揮発性の体液サンプルをイオン化表面に置き、強電界を用いて分析物イオンを作製する方法を指す。
【0033】
本明細書において用いる場合、「脱離」という用語は、表面からの分析物の除去、および/または気相への分析物の進入を指す。
【0034】
本明細書において用いる場合、「数量化の限界」、「定量化の限界」または「LOQ」という用語は、測定が定量的に意味をなすポイントを指す。このLOQでの分析物の反応は、識別可能、別個、かつ再現性であって、20%の正確性および80%〜120%の精度を有する。
【0035】
本明細書において用いる場合、「検出限界」または「LOD」という用語は、測定された値の方がその値に伴う不確実性よりも大きいポイントである。LODは、ゼロ濃度から2標準偏差(SD)として適宜規定される。
【0036】
本明細書において用いる場合、体液サンプル中のエストロンの「量」とは一般には、体液の容積中で検出可能なエストロンの量を反映している絶対値を指す。しかし、ある量はまた、別のエストロン量に比較した相対量を意図する。例えば、体液中のエストロンの量は、正常に存在するエストロンのコントロールまたは正常なレベルよりも大きい量であってもよい。
【0037】
第二の局面では、体液サンプル中のエストロンの量をタンデム質量分析によって決定するための方法が提供され、この方法は以下を含む:(a)体液サンプル中のエストロンを液体クロマトグラフィーによって精製する工程と;(b)269.07±0.5の質量/電荷比を有しているエストロンの前駆イオンを作製する工程と;(c)前駆イオンの1つ以上の断片イオンを作製する工程であって、その断片イオンの少なくとも1つが143.02±0.5の質量/電荷比を有する工程と;(d)工程(b)もしくは(c)またはその両方で作製された1つ以上のイオンの量を検出し、この検出されたイオンを体液サンプル中のエストロンの量に対して関連付ける工程。いくつかの好ましい実施形態では、この方法の定量限界は、500pg/mL以下である。他の好ましい実施形態では、エストロ
ンは、質量分析の前に誘導体化されない。特定の好ましい実施形態では、この方法は、エストロン前駆イオンの1つ以上の断片イオンを作製する工程をさらに含んでいてもよく、ここでこの断片イオンの少なくとも1つが145.03±0.5の質量/電荷比を有する。いくつかの好ましい実施形態では、この方法は、体液サンプル中に存在し得るタンパク質由来の遊離エストロンに対して十分な量で体液サンプルに対して試薬を添加する工程を含み得る。関連の好ましい実施形態では、この方法は、体液サンプルを酸性化する工程;好ましくはイオン化の前に酸性化する工程;さらに好ましくは精製の前に酸性化する工程;好ましくはギ酸を用いて酸性化する工程を含み得る。特に好ましい実施形態では、この体液サンプルは血清、血漿または尿である。
【0038】
第三の局面では、体液サンプル中のエストロンの量を決定するための方法が提供され、この方法は以下を含む:(a)体液サンプル中に存在し得るタンパク質由来の遊離のエストロンに対して十分な量で試薬を用いて体液サンプルを酸性化する工程と;(b)この体液サンプル中のエストロンを液体クロマトグラフィーによって精製する工程と;(c)この体液サンプル中のエストロンをイオン化して、タンデム型質量分析によって検出可能な1つ以上のイオンを作製する工程と;(d)このエストロンイオン(単数または複数)の量をタンデム型質量分析によって負のイオンモードで検出して、この検出されたエストロンイオン(単数または複数)の量を体液サンプル中のエストロンの量に対して関連付ける工程。いくつかの好ましい実施形態では、この方法の定量限界は500pg/mL以下である。他の好ましい実施形態では、エストロンは、質量分析前に誘導体化されない。特定の好ましい実施形態では、エストロンイオンは、269.07±0.5、145.03±0.5および143.02±0.5の質量/電荷比を有するイオンの群から選択される。いくつかの好ましい実施形態では、この方法は、前駆イオンの少なくとも1つが269.07±0.5の質量/電荷比を有するエストロンの1つ以上の前駆イオンを作製する工程を含む。関連の好ましい実施形態では、この方法は、断片イオンの少なくとも1つが145.03±0.5または143.02±0.5の質量/電荷比を有しているエストロン前駆イオンの1つ以上の断片イオンを作製する工程を含み得る。いくつかの好ましい実施形態では、この方法は、イオン化の前に体液サンプルを酸性化する工程;より好ましくは精製の前に酸性化する工程;好ましくはギ酸を用いて酸性化する工程を含んでいてもよい。特に好ましい実施形態では、この体液サンプルは血清、血漿または尿である。
【0039】
いくつかの好ましい実施形態では、エストロンは、質量分析の前に誘導体化されてもよい、しかし、特定の好ましい実施形態では;サンプルの調製は、誘導体化の使用を排除する。
【0040】
上記の局面の特定の好ましい実施形態では、液体クロマトグラフィーは、HTLCおよびHPLCを用いて行われ、好ましくは、HTLCはHPLCと組み合わせて用いられるが、他の方法が用いられてもよく、これには、例えば、HPLCと組み合わせたタンパク質の沈殿および精製が挙げられる。
【0041】
好ましい実施形態は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を、単独で、または1つ以上の精製方法、例えば、HTLCまたはタンパク質沈殿と組み合わせて利用して、サンプル中のエストロンを精製する。
【0042】
本明細書に開示される方法の特定の好ましい実施形態では、質量分析は負のイオンモードで行われる。特定の好ましい実施形態では、エストロンは、APCIまたはESIを用いて負のイオン化モードで測定される。
【0043】
上記の局面の好ましい実施形態では、体液サンプル中に存在するグルクロン酸化エストロンおよび非グルクロン酸化エストロンの両方が検出および測定される。
【0044】
好ましい実施形態では、質量分析計で検出可能なエストロンイオンは、269.07±0.5、145.03±0.5および143.02±0.5の質量/電荷比(m/z)を有するイオンからなる群より選択され;この後者2つは、前駆イオンの断片イオンである。特定の好ましい実施形態では、この前駆イオンは、269.07±0.5の質量/電荷比を有し、この断片イオンは143.02±0.5の質量/電荷比を有する。
【0045】
好ましい実施形態では、別々に検出可能な内部エストロン標準がサンプル中に提供され、この量もサンプル中で決定される。これらの実施形態では、サンプルに存在する内因性のエストロンおよび内部標準の両方の全てまたは一部をイオン化して、質量分析で検出可能な複数のイオンを作製し、各々から作製される1つ以上のイオンを質量分析によって検出する。
【0046】
好ましい内部エストロン標準は、2,4,16,16−d
4エストロンである。好まし
い実施形態では、質量分析計で検出可能な内部エストロン標準イオンは、273.06±0.5、147.07±0.5および145.04±0.5の質量/電荷比を有するイオンからなる群より選択される。特に好ましい実施形態では、内部エストロン標準の前駆イオンは、273.06±0.5の質量/電荷比を有し;かつ1つ以上の断片イオンは、147.07±0.5および145.04±0.5の質量/電荷比を有しているイオンからなる群より選択される。
【0047】
好ましい実施形態では、このエストロンイオンの存在または量を、2,4,16,16−d
4エストロンなどの参照に対して比較することによって試験サンプル中のエストロン
の存在または量に関連付ける。
【0048】
一実施形態では、この方法は、液体クロマトグラフィーと質量分析との組み合わせに関与する。好ましい実施形態では、この液体クロマトグラフィーはHPLCである。好ましい実施形態は、HPLCを単独で、または例えば、HTLCもしくはタンパク質精製などの1つ以上の精製方法と組み合わせて利用して、サンプル中のエストロンを精製する。別の好ましい実施形態では、この質量分析はタンデム型質量分析(MS/MS)である。
【0049】
本明細書に開示される局面の特定の好ましい実施形態では、試験サンプル中のエストロンの定量の限界(LOQ)は、500pg/mL以下;好ましくは400pg/mL以下;好ましくは300pg/mL以下;好ましくは200pg/mL以下;好ましくは175g/mL以下;好ましくは150pg/mL以下;好ましくは125pg/mL以下;好ましくは100pg/mL以下;好ましくは75pg/mL以下;好ましくは50pg/mL以下;好ましくは25pg/mL以下;好ましくは20pg/mL以下;好ましくは15pg/mL以下;好ましくは14pg/mL以下;好ましくは13pg/mL以下;好ましくは12pg/mL以下;好ましくは11pg/mL以下;好ましくは10pg/mLである。
【0050】
「約、およそ、ほぼ(about)」という用語は、イオンの質量の測定を含んでいない定量的な測定に関して本明細書で用いられる場合、示される値プラスマイナス10%を指す。質量分析装置は、所定の分析物の量を決定するのにわずかに変化し得る。「約」という用語は、イオンの量またはイオンの質量/電荷比の文脈では+/−0.5の原子量単位を指す。
【0051】
上記の本発明の要約は、限定されるものではなく、本発明の他の特徴および利点は本発明の以下の詳細な説明から、および特許請求の範囲から明らかであろう。