特許第6676091号(P6676091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6676091過酸化物促進剤を用いるハロアルキルオルガノシランのヒドロシリル化合成
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  • 特許6676091-過酸化物促進剤を用いるハロアルキルオルガノシランのヒドロシリル化合成 図000029
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676091
(24)【登録日】2020年3月13日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】過酸化物促進剤を用いるハロアルキルオルガノシランのヒドロシリル化合成
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20200330BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20200330BHJP
【FI】
   C07F7/18 E
   !C07B61/00 300
【請求項の数】10
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2018-54145(P2018-54145)
(22)【出願日】2018年3月22日
(62)【分割の表示】特願2015-536824(P2015-536824)の分割
【原出願日】2013年10月8日
(65)【公開番号】特開2018-115186(P2018-115186A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2018年4月20日
(31)【優先権主張番号】13/650,557
(32)【優先日】2012年10月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,ケンリック,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ラソール,ジテンドラ,シン
(72)【発明者】
【氏名】トロット,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ダゴスティノ,ジョゼッペ
【審査官】 水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−538069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)式(I)
(R(RO)3−ySiCHCHRCRX (I)
(式中、RおよびRは、1−6の炭素原子を有するアルキル基であり;Rは、1−6の炭素原子を有するアルキル基、または水素であり;Rは、1−6の炭素原子を有するアルキル基、水素、またはハロゲンであり;Rは、水素、または1−6の炭素原子を有するアルキル基であり;Xは、ハロゲンであり;そしてyは、0、1または2である)の化合物
ii)式R−O−O−HまたはRC(O−O−H)で表されるヒドロペルオキシド、式Z−O−O−Hで表される第14族元素ヒドロペルオキシド、一般式R−O−O−Rで表されるジアルキルペルオキシド、一般式(RC(O)O)で表されるジアシルペルオキシド、一般式RC(O)O−ORで表されるペルオキシエステル、一般式(ROC(O)O)で表されるペルオキシジカーボネート及び一般式RC(O−OR’)で表されるペルオキシケタール(式中、Rは、1−25の炭素原子を有する、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状、芳香族またはアルカリ―ル基;R’は、1−25の炭素原子を有する、直鎖または分岐、環状、芳香族またはアルカリ―ル基;Zは、シリル、ゲルミル、またはスタンニル部分;を表す)から選ばれる少なくとも1つのペルオキシ化合物
(iii)ルテニウム金属含有触媒、
(iv)式(R(RO)3−ySiH(式中、R及びRは1−6の炭素原子を有するアルキル基であり;yは0、1または2である)で表されるアルコキシシラン、及び
(v)電子供与芳香族化合物、
を含むハロオルガノアルコキシシラン組成物。
【請求項2】
前記ヒドロペルオキシドが、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、アリルヒドロペルオキシド、テトラヒドロフリルヒドロペルオキシド、リモネンヒドロペルオキシド、テルペンヒドロペルオキシド、ステロイドのヒドロペルオキシド、および2,5−ジヒドロペルオキシ−2,5−ジメチルへキサンからなる群より選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
前記第14族元素のヒドロペルオキシドおよび過酸化物が、トリメチルシリルヒドロペルオキシド、トリベンジルシリルヒドロペルオキシド、tert−ブチルジメチルシリルヒドロペルオキシド、メチルジフェニルシリルヒドロペルオキシド、およびトリフェニルシリルヒドロペルオキシドからなる群より選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
前記ジアルキルペルオキシドが、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)へキサンからなる群より選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ジアシルペルオキシドが、ジデカノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ハロオルガノアルコキシシランが、(CHO)Si(CHCl、(CO)Si(CHCl、(CO)SiCHCH(CH)CHBr、(CHO)SiCHCH(Cl)CH、CH(CHO)Si(CHCl、および(CO)Si(CHCH(Cl)CHからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ハロオルガノアルコキシシランが、(CHO)Si(CHClである、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
ベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、n−ブチルベンゼン、ジ−t−ブチルベンゼン、ビベンジル、トルエン、t−ブチルトルエン、アニソール、1−フェニルへキサン、1−フェニルドデカン、C〜C20のアルキル基を有するn−アルキルベンゼンの混合物、ジフェニルアルカンおよびビベンジル異性体の混合物、ベンジルトルエンの混合物、ジベンジルトルエンの混合物、m−キシレン、メシチレン、p−シメン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、フェニルエーテル、フェノチアジン、およびビフェニルからなる群から選択される電子供与芳香族化合物を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
ルテニウム金属含有触媒が、微粒子Ru、Fe担持Ru、アルミナ担持Ru、炭素担持Ru、シリカ担持Ru、三塩化ルテニウム、三臭化ルテニウム、HRuCl、HRuCl12、HRuCl12、NaRuCl、NaRuCl12、NaRuCl12、ZnRuCl12、SnRuCl12、RuO、Ru(CO)12、[Ru(CO)Cl、(シクロオクタジエン)(シクロオクタトリエン)ルテニウム、(シクロオクタトリエン)ルテニウムジクロリド、[(シクロオクタジエン)RuCl、ビス(6,6−ジメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(η−2,4−ジメチルペンタジエニル)ルテニウム、ビス(l,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム、(p−シメン)ルテニウム(II)クロライドダイマー、(ベンゼン)ルテニウム(II)クロライドダイマー、[Ru(NH]Cl、[Ru(NH]Cl、[Ru(NH]Br、[Ru(NH]Brから選ばれる請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
アルコキシシランが、トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、ジエチルエトキシシランから選ばれる請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロオルガノシリコン化合物を作製するプロセスに関する。より具体的には、本発明は、ハロアルケンのアルコキシシランでのヒドロシリル化を経由する、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン等のハロオルガノアルコキシシランの調製プロセスに関する。
【発明の背景】
【0002】
クロロプロピルトリメトキシシランは、シランカップリング剤として用いられる(Deschlerら、Angewandte Chemie, Int. Ed., Engl., 25 (1986) 236〜252参照)、様々なアミノ−、メルカプト−およびメタクリロイルオキシオルガノシランの調製における重要中間体である。クロロプロピルトリメトキシシランはまた、ポリスルファン含有オルガノアルコキシシランの調製のための重要な中間体である、クロロプロピルトリエトキシシラン(シリカ充填タイヤの製造において用いられる)に変換されてよい。
【0003】
米国特許第6,191,297号は、塩化アリルのトリクロロシランによる、白金触媒されたヒドロシリル化から得られる生成物のエタノールエステル化を含む2ステップのプロセスを開示する。このプロセスは、低収率および著しい副生成物、すなわちプロピルトリクロロシランの形成のため、原料および設備資源の使用量の点で非常に非効率的である。
【0004】
潜在的により経済的な手段は、トリエトキシシランと塩化アリルとの直接ヒドロシリル化反応である。Pt触媒プロセスについて、生成物の収率の大きなばらつきが先行技術に開示されている。米国特許第3,795,656号および特開平11−199588によると、塩化アリルとトリエトキシシランとのPt触媒ヒドロシリル化反応は、クロロプロピルトリエトキシシランの収率70%を生じる。しかしながら、Belyakovaら(Obshch. Khim.,44 (1974) 2439〜2442)は、14%の収率を報告している。Chernyshevら(Russ. Chem. Bull. 47(1998) 1374〜1378)は、ヘキサクロロ白金酸と合わせたビニルトリエトキシシランの使用により、わずかに改善された収率22.7%を報告している。
【0005】
塩化アリルとシランとのヒドロシリル化反応に伴う第一の制限は、塩化アリルからのプロペンの競合脱離である。白金では、脱離反応は、クロロシランよりもアルコキシシランによる方がより普及している。ロジウムおよびパラジウムは、反応式(1)に示すように、一次の脱離生成物を提供する。
【化1】
【0006】
イリジウム含有触媒は、塩化アリルとトリエトキシシランとのヒドロシリル化反応に非常に有効であると報告されている。米国特許第4,658,050号において、Quirkらは、75%を超える収率の3−クロロプロピルトリエトキシシラン(Cl(CHSi(OC)を得る、等モル量のトリエトキシシランと塩化アリルとの、オレフィン二量体ハロゲン化イリジウム(I)錯体でイリジウム触媒されたヒドロシリル化反応を開示する。米国特許第5,616,762号は、塩化アリルが化学量論的過剰であるイリジウム触媒されたヒドロシリル化プロセスにおける、最小の副生成物と共に80%を超えるこの化合物の収率を説明する。特願平4−225170号は、塩化アリルとトリメトキシシランとのイリジウム触媒ヒドロシリル化反応について、同様の結果を報告している。
【0007】
ルテニウムおよびその化合物は、塩化アリルとトリアルコキシシランとのヒドロシリル化反応に非常に有効な触媒であると報告されている。Tanakaら(J. Mol. Catal.,81 (1993) 207−214)は、トリメトキシシランと塩化アリルとのルテニウムカルボニル触媒ヒドロシリル化反応を報告し、そして特願平8−261232号は、同反応におけるヒドロシリル化触媒として用いられるルテニウムカルボニルの活性化を開示する。日本国特許第2,976,011号は、クロロプロピルトリエトキシシランを約41%の収率で得る、トリエトキシシランと塩化アリルとのRu触媒ヒドロシリル化反応を開示する。米国特許第5,559,264号は、ルテニウム触媒の存在下、そして好ましくは実質的に溶媒無しでの、塩化アリルと化学量論的過剰のヒドリドメトキシシランとの、クロロプロピルトリメトキシシランを提供するヒドロシリル化反応を記載する。米国特許第6,872,845号は、電子供与芳香族化合物が、ルテニウム含有触媒と共に促進剤として用いられる、改良されたヒドロシリル化プロセスを開示する。両米国特許は、課題のヒドロシリル化におけるルテニウムカルボニルおよびルテニウムホスフィン触媒を活性化させるための、N中3%のOの任意の使用を開示する。
【0008】
Marciniecら(J. Organomet. Chem.,253 (1983) 349〜362)は、オレフィンのトリアルコキシシランによるヒドロシリル化の触媒として、Ru(II)およびRu(III)ホスフィン錯体の使用を報告している。重要な教えは、Ru(II)−ホスフィン錯体によって触媒される反応における目的生成物の形成に対する酸素分子の増強効果である。著者は、触媒活性種が、二酸素(−O−O−)官能基に結合するRu(III)−ホスフィン中心を含むことを理論化した。該出版物は、トリエトキシシランの変換は、RuCl[(P(C)]およびRuCl[P(Cを用いる塩化アリルとアリルアミンとのヒドロシリル化において、75%に達することがあること、しかし、副生成物の形成が通常優位であることを述べる(356頁)。ホスフィンを持たないルテニウム触媒を用いる、空気、酸素、またはペルオキシ化合物の存在下でのハロアルケンのヒドロシリル化の情報もデータも示されなかった。
【0009】
ある種のヒドロシリル化反応における、酸素分子、ヒドロペルオキシド、および過酸化物の有益な利用は、雑誌および特許情報開示から知られている。Licchelliら(Tet. Lett.,28 (1987) 3719−3722)は、2−メチル−l−ブテン−3−インのメチルジクロロシランによるPt触媒ヒドロシリル化におけるベンゾイルペルオキシドの必要性を報告した。アルコキシシランは、研究されていなかった。ベンゾイルペルオキシドの使用量は、反応体の総重量の1.64重量%であった。Calhounら(Trans. Met. Chem.,8(1983) 365−368)は、アルキルおよびアルコキシシランによるアルケンのヒドロシリル化におけるRh(I)−ホスフィン錯体の触媒活性が、t−ブチルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、m−クロロ過安息香酸、t−ブチル過安息香酸、および過酸化水素によって増強されることを見出した。最適な生産収率は、金属触媒と有機ペルオキシ化合物との特定の組み合わせに依存した。1−オクテンのトリエトキシシランよるヒドロシリル化について、錯体、RhCl(CO)[P(Cおいて、Rhに対するt−ブチルヒドロペルオキシドの最適なモル比は、7.4であった。収率は、モル比最大15までほぼ一定のままであった。
【0010】
Calhounらはまた、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンのアルキル−およびアルコキシシランによるヒドロシリル化における、第VIA族元素ヘキサカルボニル(M(CO)、M=Cr、Mo、W)の有機過酸化物との併用を研究した。l−シリル−2,3−ジメチル−2−ブテン生成物の形成におけるCr(CO)およびW(CO)両者の活性は、t−ブチルペルオキシドによって増強された。Mo(CO)の活性は、t−ブチルペルオキシドの添加に影響を受けなかった。ベンゾイルペルオキシドは、Cr(CO)のヒドロシリル化活性を減少させた。
【0011】
Dickersら(J. Chem. Soc. Dalton (1980) 308〜313)は、シクロアルケニル、ホスフィン、塩素、およびカルボニル配位子を有するRh(I)およびIr(I)錯体によって触媒される、プロペン、1−ヘキセン、およびl−ヘキシンのトリエチルシランによるヒドロシリル化を研究した。ホスフィン含有錯体によって触媒される反応は、酸素またはt−ブチルヒドロペルオキシド無しで、阻害されるか、または起きなかった。RhCl[P(Cについて、最適の速度および生成物収率は、1〜4の間のt−ブチルヒドロペルオキシド対Rhモル比において生じた。10を超えるモル比では、速度の低減、および触媒の失活が見られた。過酸化物または酸素活性化は、クロロ架橋、シクロオクテニル二量体Rh(I)錯体、[{RhCl(C14]においては不要であった。IrCl(CO)[P(Cは、t−ブチルヒドロペルオキシドを添加してさえも無効のままであった。ジ−t−ブチルペルオキシドは、RhCl[P(Cを活性化する上で全く無効であった。著者は、酸素またはヒドロペルオキシドの有益な効果は、ホスフィン配位子のホスフィンオキシドへの変換により、Rh:Pモル比約1を有する配位的に不飽和な中心を作り出すことによると結論付けた(311頁)。この結論はまた、Faltynekによって出版された(Inorg. Chem.,20 (1981) 1357〜1362)、酸素およびクメンヒドロペルオキシドの存在下でのRhCl[P(Cによる光触媒ヒドロシリル化についてのデータに裏付けられる。
【0012】
米国特許第4,578,497号は、アルキルシランとのヒドロシリル化能力を回復するための、酸素含有ガスによる白金触媒の再活性化を開示する。該白金含有触媒は、使用に先立って、またヒドロシリル化プロセスの中断中に酸素化されてよい。
【0013】
米国特許第5,359,113号は、白金触媒ヒドロシリル化における触媒活性を維持するために、過酸化物およびヒドロペルオキシドを使用することを開示する。Di−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、およびジベンゾイルペルオキシドが、開示されているペルオキシ化合物の例である。アルコキシシランおよび塩化アリルは、本発明において有用な化合物リストに含有される。反応体の総重量の0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜1重量%が、本発明における過酸化物およびヒドロペルオキシドの有効な使用範囲として開示される。
【0014】
米国特許第4,061,609号は、白金触媒ヒドロシリル化によって硬化されるシリコーンゴム組成物における、ヒドロペルオキシドの一時的な触媒阻害剤としての有利な使用を開示する。一方、米国特許第5,986,122号は、過酸化物およびヒドロペルオキシドが、ヒドロシリル化を阻害出来ることを開示し、そしてアスコルビン酸およびその誘導体を、アリルポリエーテル中のペルオキシ化合物をヒドロシリル化の前に破壊するために使用することを主張する。同様に、米国特許第5,103,033号は、銅アミン錯体によって触媒されるβ−シアノアルキルシランのヒドロシリル化合成のための本質的に無酸素状態を開示する。
【0015】
要約すると、先行技術は、酸素およびペルオキシ化合物の、ある種のヒドロシリル化での有益な利用を開示するが、広範囲の遷移金属触媒、不飽和基質、ケイ素ヒドリド化合物、およびペルオキシ化合物を網羅する一般化は、入手可能な情報からは不可能である。実際は、酸素およびペルオキシ化合物が不利益で抑制的であるヒドロシリル化がある。ルテニウム含有化合物は、アルコキシシランによる不飽和基質のヒドロシリル化を触媒することが知られている。しかしながら、速度および収率は、アリル基質(例えば、アリルハライド)とアルコキシシラン(例えば、トリエトキシシランおよびトリメトキシシラン)との特定のケースにおいて一貫性がない。従って、幅広い先行技術情報にも関わらず、高い反応速度、およびアリルハライドとアルコキシシランとの反応から得られるハロアルキルアルコキシシランの高い収率を提供する、確実に一貫したルテニウム触媒ヒドロシリル化プロセスへの需要が未だ存在する。
【発明の概要】
【0016】
一つの態様において、本発明は、(a)式HC=CRCRXを有するオレフィンハライド;(b)式(R(RO)3−ySiHを有するアルコキシシラン;(c)触媒有効量のルテニウム含有触媒;および(d)反応促進有効量のペルオキシ化合物を、任意で電子不足の芳香族化合物の存在下で反応させてハロオルガノアルコキシシラン生成物を得るステップを含む、式(I)
(R(RO)3−ySiCHCHRCRX (I)
(式中、RおよびRは、1−6の炭素原子を有するアルキル基であり;Rは、1−6の炭素原子を有するアルキル基、または水素であり;Rは、1−6の炭素原子を有するアルキル基、水素、またはハロゲンであり;Rは、水素、または1−6の炭素原子を有するアルキル基であり;Xは、ハロゲンであり;そしてyは、0、1または2である)
のハロオルガノアルコキシシラン生成物を製造するプロセスである。
【0017】
他の態様において、本発明は、式(I)
(R(RO)3−ySiCHCHRCRX (I)
(式中、RおよびRは、1−6の炭素原子を有するアルキル基であり;Rは、1−6の炭素原子を有するアルキル基、または水素であり;Rは、1−6の炭素原子を有するアルキル基、水素、またはハロゲンであり;Rは、水素、または1−6の炭素原子を有するアルキル基であり;Xは、ハロゲンであり;そしてyは、0、1または2である)
の化合物、および1〜2000ppmのペルオキシ官能性(−O−O−)を有するペルオキシ化合物を含む、上記のプロセスによって製造される組成物である。
【0018】
本発明は、図面と合わせて、下記の詳細な説明および実施例からよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の過酸化物促進ヒドロシリル化プロセスの概略図である。
【発明の詳細な説明】
【0020】
本発明は、ハロオルガノシリコン化合物を作製するプロセスに関し、そしてより具体的には、ペルオキシ化合物およびルテニウム触媒の存在下での、アルコキシシランによるハロアルケンのヒドロシリル化を経由するハロオルガノアルコキシシランの調製プロセスに関する。
【0021】
ここで「アルキル」は、直鎖、分岐、および環状のアルキル基を含むことを意味する。アルキルの具体的かつ非限定的な例示は、メチル、エチル、プロピル、およびイソブチルを含むが、それらに限定されない。
【0022】
ここで「置換アルキル」は、置換基を含む化合物に課されるプロセス条件下で不活性な一つまたはそれを超える置換基を含むアルキル基を意味する。該置換基はまた、該プロセスを実質的にまたは有害に妨げない。
【0023】
ここで「アリール」は、いずれかの芳香族炭化水素から一つの水素原子が除かれた限定されない基を意味する。アリールは、単結合または他の基によって結び付けられる、一つまたは複数の芳香族環を有してよい。アリールの具体的かつ非限定的な例は、トリル、キシリル、フェニル、およびナフタレニルを含むが、これらに限定されない。
【0024】
ここで「置換アリール」は、上記定義の「置換アルキル」に記載のように置換された芳香族基を意味する。アリールと同様に、置換アリールは、単結合または他の基によって結び付けられる、一つまたは複数の芳香族環を有してよい;しかしながら、該置換アリールが複素芳香族環を有する場合、置換アリール基における自由原子価は、炭素の代わりに複素芳香族環のヘテロ原子(窒素等)へ結び付けられる。特に明記しない限り、ここで置換アリール基が1〜約30の炭素原子を含むことが好ましい。
【0025】
ここで「アルケニル」は、一つまたは複数の炭素−炭素二重結合を含む、あらゆる直鎖、分岐、または環状アルケニル基を意味し、ここで置換の位置は、炭素−炭素二重結合においてか、または基の中の他の場所のいずれかであってよい。具体的かつ限定されないアルケニルの例は、ビニル、プロペニル、アリル、メタリル、およびエチリデニルノルボルナンを含むが、これらに限定されない。
【0026】
「アルキニル」は、一つまたは複数の炭素−炭素三重結合を含む、あらゆる直鎖、分岐、または環状アルキニル基を意味し、ここで置換の位置は、炭素−炭素三重結合においてか、または基の中の他の場所のいずれかであってよい。
【0027】
「不飽和」は、一つまたは複数の二重または三重結合を意味する。好ましい実施態様において、炭素−炭素二重または三重結合をいう。
【0028】
ここで「不活性官能基」は、該基を含む化合物に課されるプロセス条件下で不活性な、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル以外の基を意味する。不活性官能基はまた、それらが存在する化合物が関与し得る、ここに記載するいずれのプロセスをも実質的にまたは有害に妨げない。不活性官能基の例は、ハロ(フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素)、−OR30(式中、R30は、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビルである)等のエーテルを含む。
【0029】
ここで「ヘテロ原子」は、炭素を除く13〜17族元素を意味し、そして例えば、酸素、窒素、ケイ素、硫黄、リン、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を含む。
【0030】
ここで「オレフィン」は、一つまたは複数の脂肪族炭素−炭素不飽和をまた含む、あらゆる脂肪族または芳香族炭化水素を意味する。このようなオレフィンは、直鎖、分岐または環状であってよく、そして上記のヘテロ原子で置換されていてよい。但し、該置換基は、生成物を製造するための目的の反応経過を実質的にまたは有害に妨げない。
【0031】
ここで「ペルオキシ化合物」は、−O−O−部分を含むあらゆる化合物を意味する。
【0032】
ここで「触媒有効量」は、ヒドロシリル化反応を触媒するために有効な量を意味する。
【0033】
ここで「反応促進有効量」は、反応を促進するために十分な量であるが、該反応を阻害するであろう量ではないことを意味する。
【0034】
ここで「実質的にホスフィンを持たない」は、ルテニウムに対するホスフィンのモル比率1×10−3未満、好ましくは1×10−6未満を有することを意味する。
【0035】
ここで「ハロゲン」は、周期表第VIIA族に属するあらゆる原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチン)を意味する。ここで化合物に対して用いられる接頭語「ハロ」は、ハロゲン原子を含む化合物を意味する。
【0036】
上記の通り、本発明の一つの実施態様は、(a)式HC=CRCRXを有するオレフィンハライド;(b)式(R(RO)3−ySiHを有するアルコキシシラン;(c)触媒有効量のルテニウム含有触媒;および(d)反応促進有効量のペルオキシ化合物を、任意で電子不足の芳香族化合物の存在下で反応させてハロオルガノアルコキシシラン生成物を得るステップを含む、式(I)
(R(RO)3−ySiCHCHRCRX (I)
(式中、RおよびRは、1−6の炭素原子を有するアルキル基であり;Rは、1−6の炭素原子を有するアルキル基、または水素であり;Rは、1−6の炭素原子を有するアルキル基、水素、またはハロゲンであり;Rは、水素、または1−6の炭素原子を有するアルキル基であり;Xは、ハロゲンであり;そしてyは、0、1または2である)のハロオルガノアルコキシシラン生成物を製造するプロセスである。
【0037】
本発明のヒドロシリル化プロセスの主要な生成物は、一般式(I)
(R(RO)3−ySiCHCHRCRX (I)
(式中、RおよびRは、1−6の炭素原子を有するアルキル基であり;Rは、1−6の炭素原子を有するアルキル基、または水素であり;Rは、1−6の炭素原子を有するアルキル基、水素、またはハロゲンであり;Rは、水素、または1−6の炭素原子を有するアルキル基であり;Xは、ハロゲンであり;そしてyは、0、1または2である)を有するハロオルガノアルコキシシランである。本発明のプロセスの有用な生成物の具体例は、(CHO)Si(CHCl、(CO)Si(CHCl、(CO)SiCHCH(CH)CHBr、(CHO)SiCHCH(Cl)CH、CH(CHO)Si(CHCl、および(CO)Si(CHCH(Cl)CHを含むが、それらに限定されない。以下の一般式を有する副生成物が、ヒドロシリル化反応中に形成される。
(RO)Si、(R)Si(RO)、(R)SiH(RO)、(RO)SiX、(Rは、水素ではない)
(RO)SiCHCHRCRH、(RX(RO)2−ySiCHCHRCR
CH=CHRCRH、XCHCHRCRH、HX
【0038】
(R)Si(RO)および(R)SiH(RO)において示される上記のRを除き、R、R、R、R、RおよびXは、上記定義と同義である。
【0039】
ルテニウム含有触媒の存在下で、オレフィンハライドとアルコキシシランの間の1ステップヒドロシリル化反応から、高収率のハロオルガノアルコキシシランを得るためにいくつかの要因が重要であることが見出された。ここで6つが重要である。第1、全ての反応体がバッチ反応の開始時に混合される場合、目的のハロオルガノアルコキシシランに対する選択性が、より低い温度およびより低い反応速度で最も高い。第2、反応速度を向上するように温度を上昇させる場合、反応混合物中のオレフィンハライドの濃度を制限することによって、高い選択性が維持され得る。第3、芳香族化合物の存在に関わりなく、ハロオルガノアルコキシシランの合成中、特に連続式プロセスにおいて、望ましい高活性、高選択性および反応安定性を維持するためにペルオキシ化合物が必要である。第4、ルテニウム含有触媒および/またはヒドロシリル化反応混合物へ酸素を供給し続けることは、ペルオキシ化合物に起因する効果はさておき、高い速度、選択性、そして安定性に貢献する。第5、市販の塩化ルテニウム(III)の金属亜鉛による還元は、トリメトキシシランを用いるペルオキシ化合物の存在下での塩化アリルのヒドロシリル化における有効な触媒を提供する。第6、殆どの不活性溶媒、特に芳香族溶媒は、比較的高濃度で用いられる場合(反応溶媒の常であるが)、特にバッチシステムにおいて、速度、選択性、または両者に有害に影響し得る。
【0040】
オレフィンハライド
本発明において使用に好適なオレフィンハライドは、塩化アリル、塩化メタリル、3−クロロ−l−ブテン、3,4−ジクロロ−l−ブテン、2−クロロプロペン等を含有する。これらのうち、塩化アリル、HC=CHCHC1、が好ましい。
【0041】
アルコキシシラン
本発明において使用に好適なアルコキシシランは、トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、ジエチルエトキシシラン等を含有する。これらのアルコキシシランのうち、トリメトキシシランおよびトリエトキシシランが好ましい。
【0042】
ペルオキシ化合物
ペルオキシ化合物は、O−O結合を含む。該化合物は、熱、酸およびある種の金属化合物によって分解される。従って、ヒドロシリル化プロセスは、反応中これらの多様な条件、生成物回収、および未反応の出発原料および触媒の再利用の可能性があるため、過酸化物促進剤は、安定なヒドロシリル化活性をバッチ式または連続式プロセスの間中維持するために選択されなければならない。用語「半減期(T1/2)」は、通例、ペルオキシ化合物の分解パターンを表すのに使用される。半減期は、一定の温度において、ペルオキシ化合物がその元の量の半分まで分解するのに掛かる時間である。それは、溶媒の極性および粘度、そしてペルオキシ化合物の分子構造に依存する。ペルオキシ化合物の分解速度を比較するために有用な、関係パラメーターは、半減期が1時間である温度(T1/2、1h)である。故に、ヒドロシリル化の促進に加えて、好適なペルオキシ化合物は、持続的有効性および反応安定性を可能にする(T1/2、1h)値を持たなければならない。一般的には、(T1/2、1h)値30〜200℃を有するペルオキシ化合物は、本ヒドロシリル化プロセスの有効な促進剤である。好ましくは、本発明のプロセスに用いられるペルオキシ化合物の濃度は、全て反応生成物の総重量に基づいて、約1〜約2000ppm、より好ましくは約3〜約1500ppm、そして最も好ましくは約5〜約1000ppmの範囲である。様々な種類のペルオキシ化合物の好ましい温度および濃度範囲を以下に示す。
【0043】
ペルオキシ化合物は、特定の合成または製造実施の結果として、ある種のハロゲン化不飽和化合物中に存在するかもしれない。例えば、アリルヒドロペルオキシド(HC=CHCHOOH)、3−クロロ−3−ヒドロペルオキシプロペン(HC=CHCHClOOH)、およびジアリルペルオキシド(HC=CHCHO)が、プロペンの塩素化中の酸素の存在の結果として、塩化アリルの製造中に作られ得る。しかしながら、これらのペルオキシ化合物は、塩化アリルの精製、保管、そして運搬中に分解し得る。実施例は、いくつかの塩化アリルサンプルにおいて、ペルオキシ化合物の半減期は、塩化アリルの標準沸点(44〜45℃)において27分と短いことを示す。従って、ヒドロシリル化反応が行われる70〜100℃の温度範囲において、半減期は相当に短いであろう。故に、ペルオキシ化合物の濃度は、完成までヒドロシリル化反応を促進および維持するのに常に十分であるとは限らない。従って、ペルオキシ化合物が有効な反応促進濃度で存在しない場合、変わりやすいそして一貫性のない結果が、室内実験および商業運転において起こり得る。本発明は、効果的なヒドロシリル化を維持するのに十分な濃度でのペルオキシ化合物の使用を開示する。本発明はまた、ヒドロシリル化される不飽和化合物中のペルオキシ化合物の濃度分析は、合成または製造の直後に存在するものより、反応の直前に存在するものを反映しなければならないことを開示する。
【0044】
ペルオキシ化合物は、試薬、ルテニウム含有触媒および芳香族促進剤と共に、ヒドロシリル化反応域に存在しなければならない。それは、反応域に直接注入してもよく、或いは好ましくはオレフィンと混合する。実験は、最低有効および最適有効使用濃度がペルオキシ化合物の選択に伴って変わることを示した。例えば、塩化アリルのトリメトキシシランによるヒドロシリル化において、わずか3ppmのジ−t−ブチルペルオキシド(反応生成物の総重量に基づく)が、3−クロロプロピルトリメトキシシランの収率に相当の向上をもたらす。しかしながら、最大収率は、5〜150ppmの間で見られる。300ppmを超える使用は、生成物収率の無視できない低下を招く。比較すると、400〜750ppmのt−ブチルヒドロぺルオキシドは、最大収率の3−クロロプロピルトリメトキシシランを提供し、そしてt−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエートについては、最大収率は350〜6000ppmの間で最大収率が安定に維持された。
【0045】
ヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、第14族元素ヒドロペルオキシドおよび過酸化物(例えば、シリルヒドロペルオキシド、およびジシリルペルオキシド)、ジアシルペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、およびペルオキシケタールは、本発明の実施に有効なペルオキシ化合物の分類である。ヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、およびペルオキシエステルが好ましい。
【0046】
ヒドロペルオキシドは、−O−O−H官能基の存在によって特徴付けられる。式R−O−O−HおよびRC(O−O−H)において、Rは、1〜25の炭素原子を有する、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状、芳香族またはアルカリール基であってよい。例は、t−ブチルヒドロぺルオキシド、t−アミルヒドロぺルオキシド、クメンヒドロぺルオキシド、アリルヒドロぺルオキシド、テトラヒドロフリルヒドロぺルオキシド、リモネンヒドロペルオキシド、テルペンヒドロペルオキシド、ステロイドヒドロペルオキシド、および2,5−ジヒドロペルオキシ−2,5−ジメチルへキサンを含む。最大200℃の(T1/2、1h)値を有するヒドロペルオキシドが好ましい。アリルヒドロぺルオキシド、t−ブチルヒドロぺルオキシド、テトラヒドロフリルヒドロぺルオキシド、およびクメンヒドロぺルオキシドが、本発明の実施において好ましいヒドロぺルオキシド促進剤である。アリルヒドロぺルオキシドの有効濃度は、10ppmを超えるものである。20〜100ppmの範囲の値が好ましい。t−ブチルヒドロぺルオキシドおよびクメンヒドロぺルオキシドは、50−1000ppmで使用される場合に有効な促進剤である。t−ブチルヒドロぺルオキシドについては、400〜750ppm、そしてクメンヒドロぺルオキシドについては、100〜500ppmの濃度が好ましい。
【0047】
−O−O−H基が、ケイ素、ゲルマニウムおよびスズに結合しているヒドロペルオキシドもまた、本発明のヒドロシリル化の有効な促進剤である。第14族元素ヒドロペルオキシドは、Z−O−O−H(式中、Zは、シリル、ゲルミルまたはスタンニル部分を表す)で表される。例は、トリメチルシリルヒドロぺルオキシド、トリベンジルシリルヒドロぺルオキシド、tert−ブチルジメチルシリルヒドロぺルオキシド、メチルジフェニルシリルヒドロぺルオキシド、およびトリフェニルシリルヒドロぺルオキシドである。有機ケイ素ヒドロペルオキシドおよび過酸化物の化学的性質は、文献(Y. A. Alexandrov,J. Organometallic Chem.,vol. 238 (1982) 1〜78、およびA. G. Davies,Tetrahedron,vol 63 (2007) 10385〜10405参照)において概説されており、そしてこれらの文献は、参照することによってその全体がここに組み込まれる。
【0048】
ジアルキルペルオキシドは、一般式R−O−O−R(式中、Rは、ヒドロペルオキシドにおける上記定義と同義である)で表される。例は、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブトキシペルオキシ)へキサンである。(T1/2、1h)値100〜160℃を有するジアルキルペルオキシドが好ましい。ジ−t−ブチルペルオキシドおよびジクミルペルオキシドが特に好ましい。ジ−t−ブチルペルオキシドの有効な使用濃度は、3〜300ppm、好ましくは5〜150ppm、そしてより好ましくは5〜50ppmに及ぶ。ジクミルペルオキシドについては、有効範囲は、50〜1000ppm、好ましくは200〜400ppmである。
【0049】
ジアシルペルオキシドは、一般式(RC(O)O)(式中、Rは、1〜25の炭素原子を含有する、直鎖または分岐、環状、芳香族またはアルカリール基である)を有する。例は、ジデカノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、およびジベンゾイルペルオキシドである。(T1/2、1h)値40〜100℃を有するジアシルペルオキシドが好ましい。ジベンゾイルペルオキシドは、本発明の好ましい過酸化物促進剤である。反応体の総重量に対して、50〜2500ppm、好ましくは150〜1000ppmで使用される場合に有効である。
【0050】
ペルオキシエステルは、一般式RC(O)O−ORで表される。Rは、1〜25の炭素原子を含有する、直鎖または分岐、環状、芳香族またはアルカリール基である。しかしながら、該式のエステルおよびアルコールフラグメント中のR基は、互いに異なっていてよい。例は、クミルペルオキシネオデカノエート、t−アミルペルオキシピバレート、およびt−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエートである。後者は、本発明の好ましい過酸化物促進剤である。好ましいペルオキシエステルは、(T1/2、1h)値50〜100℃を有する。約100ppmを超えるt−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエートの濃度は、ヒドロシリル化速度および収率に相当の改善をもたらす。350〜6000ppmの範囲の値が好ましい。
【0051】
ペルオキシジカーボネートは、一般式(ROC(O)O)(式中、Rは、1〜25の炭素原子を含有する、直鎖または分岐、環状、芳香族またはアルカリール基である)。例は、ジ(n−プロピル)ペルオキシジカーボネート、およびジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネートであり、両者共の本ヒドロシリル化プロセスの好ましい促進剤である。両者の有効な使用範囲は、50〜3500ppm、好ましくは100〜2000ppmである。好ましいペルオキシジカーボネートは、(T1/2、1h)値50〜75℃を有する。
【0052】
一般式RC(O−O−R’)は、ペルオキシケタールを表す。RおよびR’は、1〜25の炭素原子を含有する、直鎖または分岐、環状、芳香族またはアルカリール基である。エチル−3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート、l,l−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロへキサン、およびl,l−ジ(t−ブチル−ペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロへキサンは、本発明のプロセスにおける有効例である。好ましいペルオキシケタールは、(T1/2、1h)値100〜150℃を有する。
【0053】
芳香族促進剤
米国特許第6,872,845号は、ハロオレフィンのヒドリドアルコキシシランによるルテニウム触媒ヒドロシリル化における促進剤として電子供与芳香族化合物を開示する。これらの添加剤は、本発明のプロセスにおいて任意に用いられる。好適な芳香族化合物は、例えば、ベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、n−ブチルベンゼン、ジ−t−ブチルベンゼン、ビベンジル、トルエン、t−ブチルトルエン、アニソール、1−フェニルへキサン、1−フェニルドデカン、NALKYLENE(登録商標)(C〜C20のアルキル基を有するn−アルキルベンゼンの混合物)、THERMINOL(登録商標)(ジフェニルアルカンおよびビベンジル異性体の混合物)、MARLOTHERM(登録商標)LH(ベンジルトルエンの混合物)、MARLOTHERM(登録商標)S(ジベンジルトルエンの混合物)、m−キシレン、メシチレン、p−シメン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、フェニルエーテル、フェノチアジン、およびビフェニルを含む。これらは、ルテニウム金属1モル当たり約1〜約100モル当量、好ましくはルテニウム金属1モル当たり約5〜約50モル当量、そしてより好ましくはルテニウム金属1モル当たり約20〜約30モル当量の量で存在してよい。ヒドロシリル化反応の温度を超える標準沸点を有する芳香族化合物が好ましい。
【0054】
ルテニウム触媒
好適なルテニウム金属含有触媒は、ルテニウム金属、または均一および不均一ルテニウム金属含有化合物、およびルテニウムが、0〜8のいずれかの酸化状態であってよい錯体より選択されてよい。例は、以下を含む:1ナノメーター〜100ミクロンの微粒子Ru;Fe担持Ru、アルミナ担持Ru、炭素担持Ru、シリカ担持Ru等の固体支持体上のRu;ルテニウムハライド(RuX(式中、Xは、ハロゲン原子であり、そしてnは、2〜4の間のいずれかの値である))、例えば、RuClおよびRuBr;MRuCl、MRuCl12、MRuCl12(M=H、またはアルカリ金属);ルテニウムハライドの亜鉛還元およびスズ還元反応生成物、例えば、ZnRuCl12およびSnRuCl12;[RuCl11、[RuCl12]等の混合原子価アニオン性塩化ルテニウムクラスターを含む化合物;RuO、Ru(CO)12、[Ru(CO)Cl;Ru(COD)(COT)、COD−RuCl、[COD−RuCl(式中、CODは、シクロオクタジエンであり、そしてCOTは、シクロオクタトリエンである)等のルテニウムのシクロオレフィン錯体;ビス(6,6−ジメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(η−2,4−ジメチルペンタジエニル)ルテニウム、ビス(l,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム、Ru(AcAc)(式中、AcAcは、アセチルアセトナート配位子である);(p−シメン)ルテニウム(II)クロライドダイマー、(ベンゼン)ルテニウム(II)クロライドダイマー等の(π−アレーン)ルテニウム錯体;[Ru(NH]X、[Ru(NH]X等のルテニウムのアミン錯体;ならびにそれらの組み合わせ。一つの実施態様において、ルテニウム触媒は、実質的にホスフィンを持たず、すなわち、1×10−3未満、そして好ましくは1×10−6未満のホスフィン対ルテニウムモル比を有する。
【0055】
好ましいルテニウム触媒は、ルテニウムクロライド化合物であり、RuCl水和物およびその亜鉛還元生成物がもっとも好ましい。1つのバッチからの触媒は、活性の顕著な失活なく、次のバッチへ再利用できる。触媒使用濃度は、反応体の仕込み総量に基づく、含まれるRu金属が1〜300ppmの範囲であってよく、5〜50ppmが好ましい。
【0056】
ヒドロシリル化プロセス
本発明のヒドロシリル化プロセスは、ルテニウム含有触媒溶液が、その反応域への注入前に酸素を拡散される場合に有利に進行する。これは、例えば、N中3%のOの混合物のような希釈酸素を触媒供給および/または反応器への供給流へ添加することによって達成される。使用中の有機化合物の爆発しやすい状況を回避するための準備がなされている限り、窒素、アルゴン、またはヘリウム中の、追加の希釈酸素をまた反応域に供給してよい。
【0057】
本プロセスは、アルコキシシランを含む反応媒体にオレフィンハライドおよびペルオキシ化合物をゆっくり添加し、そして酸素拡散されたルテニウム金属含有触媒、および追加促進剤として、任意で電子供与芳香族化合物の存在下で、セミバッチ式または連続式プロセスのいずれかでヒドロシリル化を行うことによって、有利に実施される。この添加順序は、反応媒体中の未反応オレフィンハライドの、アルコキシシランに対する最小濃度を有効に維持し、そしてそれによって、反応媒体中のオレフィンハライドに対するアルコキシシランの非常に大きなモル過剰を有効に確立する。当業者によって理解されるであろう通り、一般的な実施において、オレフィンハライドのアルコキシシランへの最大添加速度は、小さい研究室反応器が使用されても、非常に大きい商業反応器が使用されても、反応温度、触媒濃度、電子供与芳香族化合物促進剤濃度、ペルオキシ化合物の濃度と熱安定性に部分的に依存する反応速度、および反応設備の伝熱制限によって決まる。
【0058】
上記の通り、本発明のプロセスは、ヒドロシリル化反応が連続的に行われる機器配置を含む、現在ヒドロシリル化反応に用いられている様々な市販の機器配置で行うことが出来る。シリコン金属および対応するアルカノールから直接調製されるトリメトキシシランまたはトリエトキシシラン源と一体化させることにより、腐食性かつ有害なヒドリドクロロシランの使用を回避し、そしてヒドリドクロロシランから誘導される生成物の使用に伴う、大量の塩素含有廃棄副生成物の発生を排除できる。
【0059】
図1に示すように、A、BおよびCは、それぞれヒドロシリル化反応器、粗生成物ストリッピングカラム、そして触媒溶液供給である。アルコキシシラン(100)、オレフィン(110)、および触媒(130)は、反応器への流入である。ペルオキシ化合物(120)は、注入され、オレフィン(110)と混ざるが、反応器(A)に直接誘導されてもよい。(C)における触媒溶液は、ルテニウム源、溶媒、および芳香族炭化水素を含む。N中に希釈酸素を拡散される(140)。ヒドロシリル化反応混合物(160)は、反応器(A)を出てストリッピングカラム(B)(ここで、未反応のアルコキシシランを含む流れ(150)、低沸点のオーバーヘッド放出(170)、および粗生成物(180)に分けられる)へ入る。芳香族炭化水素およびペルオキシ化合物をも含むアルコキシシラン流(150)は、反応器(A)へと再循環される。
【0060】
好ましい混合順序がセミバッチ式または連続式操作において達成される。セミバッチ式操作において、反応器にまず、大部分の、好ましくは総量のモル過剰のアルコキシシランを入れる。酸素拡散されたルテニウム触媒はその後、任意で芳香族化合物と混合されて、アルコキシシランに添加される。オレフィンハライドおよびペルオキシ化合物はその後、同時に別々の流れで、或いは一緒に混合されて導入される。ここで、オレフィンハライドのゆっくりとした添加は、一般的に、1時間当たり、アルコキシシラン1モル当たり、約3モルのオレフィンハライドを下回る、そして好ましくは1時間当たり、アルコキシシラン1モル当たり、1モル以下の速度を意味する。例えば、セミバッチプロセスにおいて、2モルのオレフィンハライド/時間/アルコキシシラン1モルの添加速度は、2モルのアルコキシシランを含む反応器に、1モルのオレフィンハライドが15分間で添加される場合に実行される。一度オレフィンハライドが反応器に添加されると、反応はオレフィンハライドの完全な変換が完了するまで継続する。これは、大部分が温度、触媒、および芳香族促進剤濃度に依存するが、完全な変換は、一般的には1〜15時間、そしてより通常は1〜10時間の間で達成される。1〜5時間での反応の完了は珍しくない。ある量のアルコキシシランがまた、オレフィンハライドとの混合物として、またはオレフィンハライドの添加と同時に別の流れとして添加してよい。
【0061】
連続式操作において、反応器には通常、(ペルオキシ化合物促進剤を含む)オレフィンハライドおよびアルコキシシランの別々の流体を、約1.3〜約3.0、そして好ましくは約1.8〜約2.3のアルコキシシラン対オレフィンハライドモル比で入れる。そのような操作は、定常状態操作条件下の反応容器において、確実にアルコキシシランが適度に過剰な状態となるようにする。好ましいアルコキシシランとしては、トリメトキシシラン、そして好ましいオレフィンハライドは、塩化アリル、好ましいモル比率は、約1.6〜約2.3である。連続式操作において、芳香族促進剤およびルテニウム触媒は、オレフィンハライドおよびアルコキシシランに別々に、或いは好ましくは触媒溶液として、上記のオレフィンハライドおよびアルコキシシランの別々の流体が入っている反応器に添加してよい。
【0062】
本発明のプロセスで用いられる芳香族促進剤は、反応媒体において反応を促進する量、すなわち、反応を阻害する量を下回る量(より高い生成物純度および/またはオルガノアルコキシシラン、ハロアルコキシシラン等の副生成物のより低減した生成に見られるように)であるが、反応の収率を向上する量で存在しなければならない。一般的に、芳香族促進剤の有効量は、ルテニウム金属1モル当たり約1〜約100モル当量、そして好ましくはルテニウム金属1モル当たり約5〜約50モル当量、そしてより好ましくはルテニウム金属1モル当たり約20〜約30モル当量の範囲であってよい。
【0063】
温度、反応体のモル比、圧力、時間、触媒濃度等の他のヒドロシリル化反応条件は、狭く重要ではない。製造設備の様々な部分を経済的かつ安全に使用するために、これらの要素を調節する幅広い自由度がある。そのような設備は、概して、加熱、冷却、攪拌、内部圧力の維持、およびろ過または蒸留のように精製の備えを有する。故に、大規模な商業ヒドロシリル化反応に典型的に用いられる設備は、不均一系の支持されたヒドロシリル化触媒および電子供与芳香族促進剤を含む域において、ペルオキシ化合物促進剤を含むオレフィンハライドが、ケイ素ヒドリド化合物の還流、凝縮性流れに添加される設備を含む、大規模な商業ヒドロシリル化反応に典型的に用いられる設備は、本発明のプロセスに用いられてよい。例えば、米国特許第6,015,920号および米国特許第6,872,845号参照。これらは共に、参照することによってその全体がここに組み込まれる。
【0064】
反応条件は、約50℃〜約130℃の反応温度を含み、約60℃〜80℃が好ましい。一般に、該プロセスは、大気圧以上で行われ、大気圧が好ましい。本発明のプロセスは、本当にバッチシステムにおいて、目的のクロロアルキルアルコキシシランの高収率を提供すると認められる。しかしながら、バッチ反応は、概して低い温度、そのために長い反応時間で行われる。故に、ペルオキシ化合物を多く含むオレフィンハライドをモル過剰のアルコキシシランに、ルテニウム金属含有触媒および芳香族促進剤の存在下で添加することによって、高温でヒドロシリル化を行うことが好ましい。一つの具体的な好ましい操作(セミバッチ)様式は、ペルオキシ化合物を多く含むオレフィンハライドの総量を、アルコキシシランの総量、例えば、添加するアリルハライドの全量に対して、約1.6〜約2.3モル当量のトリメトキシシランを含む反応器に、1時間当たり、アルコキシシラン1モル当たり、3モル未満のオレフィンハライドの添加速度を得るために、ある期間に渡ってゆっくりと添加することを含む。好ましくは、反応器は、総反応体の5〜50ppmのルテニウムをRuCl水和物として、および反応促進有効量の芳香族促進剤を含み、そして反応は約50℃〜約130℃、そして好ましくは約60℃〜約80℃で行われる。過剰なアルコキシシラン、ルテニウム触媒、および芳香族促進剤は、次のバッチに有効に再利用され得る。
【0065】
本発明のプロセスは、オレフィンハライドの目的のハロオルガノアルコキシシラン生成物への変換、具体的にはクロロプロピルトリメトキシシランを得るための塩化アリルとトリメトキシシランとの反応について、ほぼ定量的であるため、望ましくない副生成物の生成が大幅に低減される。これが、廃棄物として破壊または廃棄され、蒸留のように別個の流れとして単離され、或いは反応系から放出される材料の量を低減する。本発明のプロセスは、高発熱であるから、継続した外部加熱は通常不要であり、そして反応時間がそれに応じて短い。一般に、反応生成物から除去される必要がある、有意な量の不純物は、少過量の未反応アルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、残留触媒、および芳香族促進剤のみである。これらは、精製無しで次のバッチに再利用され得る。生成物に存在し得る低濃度の残留ハライドは、当技術分野においてよく知られる方法によって中和されてよい。本発明のヒドロシリル化生成物が他の有機官能性ケイ素化合物の製造のための中間体として用いられる場合、初期合成におけるその純度は十分であるから、蒸留によるもの等の更なる精製は必要ないかもしれない。
【0066】
例えば、クロロプロピルトリメトキシシランに調製に適用した場合、本発明のプロセスは、先行技術において述べられるいずれの1ステップまたは2ステッププロセスよりも、この生成物のモル基準で、制限反応物から計算された高い収率を提供する。これは、有効濃度の芳香族促進剤、およびルテニウム触媒との組み合わせで、有効量のペルオキシ化合物促進剤を添加して達成される。該プロセスはまた、当技術分野において述べられるいずれのプロセスよりも顕著に低い濃度のルテニウム金属含有触媒を用いてそのような収率を得る。不活性溶媒の使用は事前に防がれ、そして相当量の廃棄副生成物が生成されないため、該プロセスはまた、使用する設備の単位体積当たりより高い収率を提供する。
【0067】
本発明のプロセスは、大気圧より高い圧力での操作を必要としないものの、アリルハライドの環境への不慮の潜在排出量を閉鎖反応器を用いることによって管理するために、高圧、例えば、最大2気圧までが用いられてよい。アルコキシシランの大気圧沸点より低い反応温度が望まれる場合、大気圧より低い圧力が用いられてよい。
【0068】
本発明のプロセスのハロオルガノアルコキシシラン生成物は、蒸留のような標準的な方法によって精製されてよく、或いはここで、中間精製無しで直接次の調製における中間体として用いられてよい。
【0069】
本発明の具体的な範囲が、添付した特許請求の範囲に記載される一方で、以下の具体的な実施例は、本発明のある種の態様を説明するものであり、そしてより具体的には、その評価方法の様々な態様を指摘するものである。しかしながら、実施例は、説明の目的に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0070】
以下の略語および商品名(それらの説明と共に)が、実施例中で表示される:
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
説明に役立つ実例として、トリメトキシシランが、米国特許第4,727,173号、米国特許第5,728,858号、米国特許第5,783,720号、および関連特許に開示される、メタノールとケイ素との直接反応法によって製造された。
【0074】
特に明記しない限り、市販の三塩化ルテニウム水和物がルテニウム源であった。元素分析は、33.88重量%Clおよび38.33重量%Ruの結果を与え、これはRu(II)/Ru(III)混合組成物、RuCl.RuCl.3HOに相当する。この塩は、25.5重量%のジフェニルメタをも含む、15重量%のメタノール溶液(RUCAT 1)または7.5重量%のメタノール溶液(67重量%)のいずれかとして用いられた。後者は、ここでRUCAT 2という。ルテニウム濃度は、RUCAT 1でリットル当たり48.70グラム、そしてRUCAT 2でリットル当たり22.51グラムであった。
【0075】
RUCAT 1およびRUCAT 2共に、Bruker ER 200機器を用いた電子スピン共鳴(ESR)分光法によって特徴づけられた。77Kにおけるgテンソル値で、DPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)が2.0035であるのに対して、両者は2.72および2.52を示した。調製直後のRUCAT 1のESR強度は、非常に低かった。12〜18時間後には、強度は最大値にまで増加した。RUCAT 1およびRUCAT 2の両者とも、長時間の凍結融解脱気サイクルの前後で、スペクトルの差異は見られなかった。
【0076】
実験で用いられる全ての塩化アリルは、商用業者から入手した標準試薬グレードのものであった。それらは、使用しない場合は、密閉金属缶の中の密閉金属容器または半透明ガラス容器に保管された。表3に塩化アリルと主な不純物の濃度範囲を示す。
【0077】
【表3】
【0078】
過酸化物分析
塩化アリルのヒドロぺルオキシドおよび過酸化物含量分析は、大概ヒドロシリル化実験における材料の使用直前に行われた。ヨード還元滴定、HPLC、および視覚的に表示する試験紙が用いられた。ヨード還元滴定は、ヒドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド等の容易に還元されるペルオキシ化合物の測定に好適である(R. D. MairおよびR. T. Hall in Organic Peroxides、D. Swern (編集者),pp 579〜599,chp. 4,John Wiley & Sons,NY,1971参照)。濃度範囲最大1000ppmをカバーするQUANTOFIXTMおよびEM QUANTTM過酸化物試験紙は、ヒドロぺルオキシド濃度を迅速に測定出来た。水素化ホウ素ナトリウムは、ヒドロペルオキシドのみと反応する一方、トリフェニルホスフィンは、あらゆる種類のペルオキシ化合物と反応する。この違いが、様々なペルオキシ化合物の効果の区別を可能にした。トリフェニルホスフィンとペルオキシ化合物との反応を総過酸化物を測定するためのHPLC法の基礎として用いた(A. W. P. Jarvieら、J. Polymer Science: Part A−l vol 9 (1971) pp 3105〜3114参照)。Jarvieらによる上記の出版物は、参照することによってここに完全に組み込まれる。ガスクロマトグラフィーは、クロロプロピルトリメトキシシラン反応生成物中の比ペルオキシ化合物(例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド)を分析するために用いられた。
【化2】
【0079】
研究室反応
研究室反応器は、マグネチックスターラー上の温度制御された加熱マンテルに支持された4つ口、100ミリリットルの丸底フラスコであった。−25℃まで冷却した還流冷却器をフラスコの中央開口部に取り付けた。冷媒は、10センチストークス(1×10−5/s)のシリコーンオイルであった。塩化アリル注入用シリンジポンプ、熱電対、および赤外線モニタリングプローブを三つの末梢開口部に取り付けた。コンピューター制御の加熱装置に熱電対を取り付けた。温度プロフィールの画像表示は、発熱反応およびその持続を明らかに示した。SiH官能基の消失を監視するために、赤外線分光法が用いられた。空気および窒素共に、還流冷却器の出口をパージ(sweeping)するのに使用可能であった。
【0080】
各実験の開始に先立って、組み立てた、乾燥したガラス器具の完全な窒素パージが周囲温度で行われた。トリメトキシシラン(概して34〜36グラム)を、選定されたマイクロリットル体積の、公知のルテニウム濃度のルテニウム含有触媒溶液と共に、フラスコに添加した。芳香族促進剤は、通常、ルテニウム触媒溶液中に存在した。しかしながら、それ無しに行った実験もあった。フラスコの内容物を攪拌、および75℃まで加熱し、そして赤外線スペクトルのベースラインを記録した。一方、ペルオキシ化合物を添加したまたは添加しない塩化アリル(12〜14グラム)をシリンジに充填した後、シリンジをポンプに装着した。時に、ペルオキシ化合物は、フラスコ中のトリメトキシシラン−ルテニウム触媒混合物に直接添加された。色、温度、および赤外分光の変化は、塩化アリルの添加中および添加後、監視された。反応混合物は、GC、GC/MS、およびH、13C、29SiNMRによって分析された。
【0081】
塩化アリル添加(0.21グラム/分)を75℃のフラスコ内容物へ開始した。塩化アリル数滴の添加後、温度の上昇が見られた。発熱は、塩化アリルの反応性およびルテニウム濃度に依存して、数分間に85〜100℃に上昇した。塩化アリルがまだ供給されている間は、温度は高温で比較的安定に保たれた。塩化アリルの注入終了に続いて、急激に減少した。
【0082】
実施例1〜15
実施例1〜15は、トリメトキシシランとのルテニウム触媒されたヒドロシリル化反応における、標準、商用グレードの塩化アリルの一貫性のない性能を説明する。全ての反応は、上記の実験用ガラス製品内で、触媒源として32.5マイクロリットルのRUCAT 2を用いて行われた。ルテニウム濃度は、用いられたTMSに対して20.9ppmであった。
【0083】
表4は、反応混合物の塩化アリル含量データを示す。0.2重量%を超える残余塩化アリルは、不完全な反応を示す。明らかに、試験した15サンプル中6サンプルでヒドロシリル化が完了しなかった。これらの実験(実施例1、2、6、13、14、15)は、6℃未満の発熱を示し、反応混合物中に68重量%未満のCPTMSを有した。GC検出可能な塩化アリルが存在しなかった実験は全て、8℃を超える発熱を示し、そして反応混合物中に70重量%を超えるCPTMSを有した。
【0084】
【表4】
【0085】
一貫性のない反応性がまた、商業ヒドロシリル化プロセスにおいて認められ、ここで、40中21ロットの塩化アリルが劣悪な反応性を示した。
【0086】
実施例16〜18
実施例16〜18は、ルテニウムの濃度もジフェニルメタンの存在も、実施例6で見られた不完全なヒドロシリル化の要因ではなかったことを説明する。
【0087】
実施例6、7、および10の実験は、触媒としてRUCAT 1を用いて繰り返された。それらは、それぞれ実施例16、17、および18である。三つ全てにおいて、ルテニウム濃度は、用いられたTMSに対して45.2ppmであった。実施例16では発熱は見られず、そして残余の塩化アリルは32.6重量%であった。9℃の発熱が実施例17で見られ、そして7.4℃の発熱が実施例18で見られた。これらの反応混合物のいずれかGC検出可能な塩化アリルはなかった。
【0088】
実施例19〜20
実施例19および20は、塩化アリルのヒドロシリル化反応性は、サンプルが環境室内照明光および/または紫外線を照射された場合に向上することを説明する。実施例2で用いられた塩化アリル(D3721)が実施例19A〜Dで用いられた。実施例20A〜Cは、実施例6で用いられた塩化アリル(DTT1)で行われた。これらの塩化アリルサンプルの一部は、暗所に取っておくか、または表5に記載の時間光に晒した。ヒドロシリル化反応は、上記の標準手順に従って、後にトリメトキシシランおよびRUCAT 2と行われた。実施例19A〜Dの反応は、15グラムのTMS、5.56グラムの塩化アリル、および17マイクロリットルのRUCAT 2を用いて行われた。実施例20A〜Cの反応は、35グラムのTMS、14グラムの塩化アリル、および32マイクロリットルのRUCAT 2を用いた。Ru濃度は、実施例19A〜Dにおいて25.5ppm、そして実施例20A〜Cにおいて20.6ppmであった。反応結果を表5にまとめる。報告されるCPTMSおよび塩化アリルの値は、過剰TMSを含まない反応生成物に対してのものである。
【0089】
【表5】
【0090】
実施例19Aおよび19Bの結果と比較して、実施例19Cおよび19Dの結果は、サンプルが光を照射された場合、塩化アリルの反応性が向上し、そしてCPTMSの収率が増加することを示す。同じ結論が、実施例20Aと関連する実施例20Bおよび20Cに該当する。両セットの結果は、塩化アリルの未処理のサンプルには欠けるが、これらのサンプルを紫外線照射して生成されたペルオキシ化合物が、TMSによる塩化アリルのヒドロシリル化に好ましい影響を与えることを示す。
【0091】
実施例21A〜21C
実施例21A〜21Cは、ペルオキシ化合物が、トリメトキシシランによる塩化アリルのヒドロシリル化に好ましい影響を与えることを説明する。実施例21Aおよび21Cのヒドロシリル化反応は窒素雰囲気下で、実施例21Bのヒドロシリル化反応は空気中で行われた。テトラヒドロフリルヒドロぺルオキシドを含むと見られる120マイクロリットルのテトラヒドロフラン(THF)を、実施例21Cで用いられる塩化アリルに添加した。三つの実験全ては、同じ容器およびロットからの塩化アリルを用いて行われた。実験の詳細、および反応混合物の分析を表6にまとめる。
【0092】
実施例21A、21B、および21Cに示すように、窒素雰囲気の空気との交換は、両試薬(塩化アリルおよびトリメトキシシラン)の更なる消費を生じ、そしてクロロプロピルトリメトキシシラン(CPTMS)の形成を増加した。改善はまた、実施例21Aの窒素雰囲気が維持された実施例21Cでも見られたが、非常に少量のヒドロぺルオキシド含有テトラヒドロフランが塩化アリルに添加された。
【0093】
【表6】
【0094】
実施例22A〜22M
これらの実施例は、塩化アリル中に、ヒドロペルオキシド、および他のペルオキシ化合物が存在すること、そして該ヒドロペルオキシドが選択的に破壊される場合、許容されるヒドロシリル化は尚生じることを示す。背景として、有機ホスファイトはヒドロペルオキシドおよび過酸化物を破壊する一方、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、および水素化ホウ素ナトリウムは、ヒドロペルオキシドのみを破壊(ヒドロペルオキシドのみと反応)し、そして過酸化物はしない。ヨウ素試験(ヨウ化ナトリウム+酢酸)は、全てのヒドロペルオキシドを検出するが、過酸化物検出は、過酸化物の還元され易さに依存する。直鎖のアルキルペルオキシドは、第三級アルキルおよび芳香族ペルオキシドよりも容易に還元される(R. D. MairおよびR. T. Hall,Determination of Organic Peroxides in Treatise on Analytical Chemistry,Volume 14,Part II,Wiley−Interscience,NY,1971. pp 385〜388参照)。
【0095】
両者共に、3−クロロプロピルトリメトキシシラン(CPTMS)を製造するためのトリメトキシシランとの、許容範囲のヒドロシリル化活性および選択性が証明された、二つの塩化アリルのロットが実験において用いられた。両方の塩化アリルのロットのサンプルは、まず、総過酸化物をヨード滴定によって、ヒドロペルオキシドをQUANTOFIX(登録商標)またはEM QUANT(登録商標)試験紙で分析された。次に、以下の表に示すように、各々の100〜200グラムが、ホウ素化水素ナトリウムで(実施例22A、22Bおよび22D)、またはアスコルビン酸で(実施例22C)、またはジイソデシルフェニルホスファイトで(実施例22E〜22G)、またはトリブチルホスファイトで(実施例22H〜22L)、またはジメチルホスファイトで(実施例22M)処理され、暗所に一晩または数日保管された。ヒドロペルオキシドについて、QUANTOFIX(登録商標)またはEM QUANT(登録商標)試験紙を用いる試験、または総過酸化物について、酢酸+ヨウ化ナトリウムを用いる試験は、トリメトキシシランとのヒドロシリル化反応の前に繰り返された。ヒドロシリル化は、上記の一般手順に記載の通り、12〜14グラムの塩化アリル(AC)、および34〜36グラムのトリメトキシシラン(TMS)、および32マイクロリットルのRUCAT 2または15マイクロリットルのRUCAT 1のいずれかを用いて行われた。結果を以下の表にまとめる。
【0096】
【表7】
【0097】
QUANTOFIX(登録商標)試験紙およびヨード還元滴定を用いて得られた分析結果の違いは、ヒドロペルオキシド以外のペルオキシ化合物が二つの塩化アリルのロットに存在したことを示した。ヒドロぺルオキシド濃度は、実施例22Aおよび22Bにおいて、NaBH処理後、0〜1ppmであり、そして実施例23Cにおいて、アスコルビン酸処理後、1〜3ppmであった。ヒドロペルオキシドを破壊するために、NaBHで(実施例22Aおよび22B)、またはアスコルビン酸で(実施例22C)処理後、両ロットは尚許容範囲のヒドロシリル化性能を示した。
【0098】
【表8】
【0099】
【表9】
【0100】
反応混合物中の過剰TMSの存在を斟酌すれば、CPTMS収率は、実施例22Aの対照反応(ステップ3)では94.46%、そしてNaBH処理サンプル(ステップ6)では94.44%であった。同様に、CPTMS収率は、実施例22Bおよび22Cの対照実験(ステップ3)で94.72%、そしてNaBHおよびアスコルビン酸処理サンプルでそれぞれ95.35%および94.62%であった。実施例22Dのステップ6における、ヨウ素試験陽性はまた、ヒドロペルオキシドがNaBHによって破壊された後に、過酸化物が塩化アリル中に存在することを裏付ける。ペルオキシ化合物は、ヒドロシリル化反応を促進した。
【0101】
【表10】
【0102】
【表11】
【0103】
【表12】
【0104】
【表13】
【0105】
【表14】
【0106】
【表15】
【0107】
【表16】
【0108】
【表17】
【0109】
【表18】
【0110】
実施例22E〜22Gにおいて、CPTMS形成は、塩化アリルへのDDPP添加の増加と共に減少した。対照反応(表22E〜22Gのステップ3)およびDDPP処理サンプル(表22E〜22Gのステップ6)の反応のデータの分析は、塩化アリル中のDDPP濃度が500ppmである場合、CPTMS収率が対照において、94.72%から93.55%に下がったことを示す。収率は、DDPPが1000ppmおよび2500に増加されると共に、さらに34.22%および4.76%にそれぞれ減少した。実施例22E〜22Gで見られる減少したCPTMS形成、および実施例22Hおよび22Jでの許容範囲の性能は、塩化アリル中の過酸化物官能基は、0.0723ミリモルのDDPP(実施例22G)、0.053ミリモルのTBP(実施例22K)、そして0.0465ミリモルのDMP(実施例22M)によって大幅に減少されるが、0.0262ミリモルのTBP(実施例22Hおよび22J)または0.0144ミリモルのDDPP(実施例22E)によってはされないことを裏付ける。ペルオキシ化合物がホスファイトを酸化してホスフェートが形成される。対照実験は、35グラムのTMS中トリメチルホスフェート0.7ミリモルまで塩化アリルヒドロシリル化を阻害しないことを証明した。
【0111】
TMS−ルテニウム触媒混合物、およびそこに供給された塩化アリル中にホスファイトが存在する場合、塩化アリル中のペルオキシ官能基に対して、化学量論的過剰のホスファイトが存在してよい。その結果、ヒドロシリル化の阻害が非常に著しい。35グラムのTMSにわずか約1×10−5ミリモルの(CH)POHを有するこのモードにおいて、阻害が認められた。
【0112】
実施例23A〜23B
実施例23A〜23Bは、塩化アリル中に存在するペルオキシ化合物の半減期の測定を説明する。また、該半減期は、塩化アリルの異なるロット間で必ずしも同じではないことを示す。実験のために選択された塩化アリルロットは、トリメトキシシランとのヒドロシリル化におけるCPTMSに対する優れた反応性、および選択性をより早く示した。最初に、各塩化アリルロットの初期試料(約5グラム)を暗色瓶に入れ、そして、後のトリフェニルホスファイトでの処理、および精製される上記のトリフェニルのHPLCによる分析用に氷中に保管した。
【0113】
各実験は、ト字管(distillation head)を付けた還流冷却器、熱電対、およびマグネチックスターラーバーを取り付けた三口丸底フラスコの中で行われた。セラムキャップ(serum cap)をフラスコの第三の開口部に装着した。別の熱電対を、ト字管(distillation head)の出口点にある還流冷却器の頂上に付けた。フラスコに窒素を通気した後、110グラムの塩化アリルを入れ、三つの口全てを閉じた。その後、加熱を開始した。還流(44.4℃)は20分で達成した。サンプル(約5グラム)は、セラムキャップ(serum cap)から暗色ビンへと、加熱開始から30分間隔でシリンジで吸引した。それらは、続く分析用に氷中に保管された。分析は、同じ日のすぐ後に行われた。表19および20に実験結果をまとめる。
【0114】
【表19】
【0115】
Ln(過酸化物)と時間の関係を表す図表は、相関係数R=0.9915、および等式Ln(過酸化物)=−1.5407t+6.3477を有する直線を得た。半減期=(Ln(2)/1.5407)=0.449時間=26.99分。
【0116】
【表20】
【0117】
Ln(過酸化物)と時間の関係を表す図表は、相関係数R=0.9796、および等式Ln(過酸化物)=−0.0013t+4.8932を有する直線を得た。半減期=(Ln(2)/0.0013)=531.54分=8.86時間。
【0118】
比率データは、検討される塩化アリルサンプル中に、異なるペルオキシ化合物が存在することを示す。該ペルオキシ化合物、または実施例23Aに示したサンプルに存在する化合物は、実施例23Bにおけるものの約20倍の速度で分解した。これらのデータは、塩化アリル中に複数のタイプのペルオキシ化合物が存在する実施例23での結論と一致する。全てのサンプルにおいて、異なる化合物は必ずしも同じ比率で存在しない。従って、上記のサンプルにおいては、一定の半減期は得られなかった。
【0119】
実施例24A〜24Eおよび25
実施例24A〜24Eおよび25は、t−ブチルヒドロぺルオキシドおよびクメンヒドロぺルオキシドを、好ましくないヒドロシリル化能を有する塩化アリルサンプルに添加することによってもたらされる、塩化アリル反応性およびCPTMS形成の向上を説明する。QUANTOFIX(登録商標)試験紙によって測定されたそのヒドロぺルオキシド濃度は、1〜3ppmであり、そしてヨード還元滴定によって測定されたものは、4ppm未満であった。
【0120】
各実験は、上記の手順に従って、13.15グラムの塩化アリル、35グラムのトリメトキシシラン、および32マイクロリットルのルテニウム触媒溶液を用いて行われた。RUCAT 1が実施例24A〜24Eにおいて用いられ、そしてRUCAT 2が実施例25において用いられた。Tert−ブチルヒドロぺルオキシド(TBHP)またはクメンヒドロぺルオキシド(CUHP)を表21に示す量で、ヒドロシリル化の直前に、シリンジによって塩化アリルに添加した。Tert−ブチルヒドロぺルオキシドは、6Mのデカン溶液として用いられた。
【0121】
表21は、実施例24B〜24Eの実験におけるtert−ブチルヒドロぺルオキシドの存在が、ヒドロぺルオキシド添加無しの対照(実施例24A)と比較して、完全な塩化アリル消費および増加したクロロプロピルトリメトキシシラン形成に繋がったことを示す。向上したヒドロシリル化効率は、1000〜6000ppmのtert−ブチルヒドロぺルオキシド検討濃度範囲内で生じたが、最大生成物形成は、1000〜2000ppmの間で認められた。ペルオキシ官能基(−O−O−)として表される場合、検討された広範囲は35〜2130ppmであり、そしてTBHP促進剤の最適範囲は、355〜710ppmであった。
【0122】
実施例25の結果は、クメンヒドロぺルオキシドもまた、トリメトキシシランによる塩化アリルヒドロシリル化の有効なペルオキシ化合物促進剤であることを示す。生成物形成は、塩化アリル中238ppmのCUHP(50ppm(−O−O−)と同等)の使用により、対照(実施例24A)よりも、約10重量%多かった。
【0123】
【表21】
【0124】
実施例26〜28
これらの実施例は、ペルオキシ促進剤、ジ−tert−ブチルペルオキシド(DTBP)、ジクミルペルオキシド(DICUP)、およびクミルtert−ブチルペルオキシド(CTBP)の使用に伴う塩化アリルヒドロシリル化における改善を説明する。原料として用いられた塩化アリルは、好ましくないヒドロシリル化性能をより早く示した。QUANTOFIX(登録商標)試験紙によって測定されたそのヒドロぺルオキシド濃度は、1〜3ppmであり、そしてヨード還元滴定によって測定されたものは4ppm未満であった。これらの実施例はまた、最適範囲を超えるペルオキシ化合物濃度は、ヒドロシリル化生成物の低下した形成に繋がることをも示す。
【0125】
表22に記載のペルオキシ化合物濃度範囲を提供するために、DTBP、DICUPおよびCTBPを塩化アリルの別々のサンプルに添加した。各実験は、上記の手順に従って、13.15グラムの塩化アリル、35グラムのトリメトキシシラン、および32マイクロリットルのRUCAT 2を用いて行われた。実験結果を表22にまとめる。表に示されるDTBP、DICUP、およびCTBP濃度は、使用された塩化アリルの重量に基づく。ペルオキシ(−O−O−)濃度は、塩化アリル出発物質中に存在する約3ppmを含む。報告される塩化アリルおよびCPTMS値は、過剰TMSを含まない反応生成物についてである。
【0126】
次のペア、実施例26Aおよび26B、実施例27Aおよび27B、および実施例28Aおよび28Bのデータ比較は、50ppmのDTBP、DICUPまたはCTBPの塩化アリル出発物質への添加によって、CPTMS形成が増加し、そして残余塩化アリルが減少することを示す。実施例26Cおよび26Dは、100〜400ppm(24〜90ppmの過酸化物(−O−O−)と同等)の範囲でのDTBP使用による最大CPTMS形成を説明する。DICUPについて、最大CPTMS形成は、実施例28Eにおいて起き、そこで、ペルオキシ化合物使用は、400ppmであった。最適なDICUP濃度範囲は、200〜500ppmであり、これは、23〜65ppmの過酸化物官能基(−O−O−)と同等である。
【0127】
【表22】
【0128】
実施例29A〜29G
実施例29A〜Gは、トリメトキシシランによる塩化アリルのヒドロシリル化促進における、ペルオキシエステル、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエートの有用性を説明する。エステル源の一つの市販品は、AKZO製のTRIGONOX(登録商標)42Sである。原料として用いられた塩化アリルは、好ましくないヒドロシリル化性能をより早く示した。QUANTOFIX(登録商標)試験紙によって測定されたそのヒドロぺルオキシド濃度は、1〜3ppmであり、そしてヨード還元滴定によって測定されたものは4ppm未満であった。
【0129】
365〜8765ppmの範囲でTRIGONOX(登録商標)42Sを含む6つの塩化アリルサンプルを調製した。各ヒドロシリル化実験において、ペルオキシ促進された塩化アリル(13.8g)は、上記で既に述べた手順に従って、32マイクロリットルのRUCAT 2を含むトリメトキシシラン(35 g)に投入された。表23に要約された結果は、ペルオキシエステル、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(TRIGONOX(登録商標)42S)が、幅広い濃度範囲に渡って向上したCPTMS形成を提供することを示す。CPTMSは、塩化アリル中のTRIGONOX(登録商標)42S濃度350〜6000ppmの94.49±0.16重量%であった。対応するペルオキシ官能基濃度範囲は、45〜786ppmである。
【0130】
【表23】
【0131】
実施例30
実施例30は、塩化アリルとトリメトキシシランとの連続ヒドロシリル化における、ペルオキシ官能基を有する化合物の促進剤としての使用を説明する。使用した装置は、米国特許第6,015,920号の開示に従って組み立てられた。それは、上述し、そして図1に概略的に示した。
【0132】
最初に、反応器に620重量部のトリメトキシシランおよび0.42重量部のルテニウム触媒溶液(RUCAT 2)を入れ、そして75℃まで加熱した。RUCAT 2は、3%O/Nで飽和され、そしてこのガス組成物はまた、反応器に連続的に注入された。塩化アリルは、ヨード還元滴定によって測定されるペルオキシ官能基(−O−O−)濃度が広範囲、10〜100ppm、そして最適には20〜60ppmであるように、ジ−tert−ブチルペルオキシド(DTBP)と共に投与された。その後、塩化アリルは、一時間当たり185重量部の速度で反応器へ投入された。発熱が起こり、そして反応温度は85〜90℃の間に制御された。反応混合物のGC分析は、DTBP濃度が15〜60ppmの範囲であったことを示した。反応器の混合物は、ストリッピングカラムに放出される前に、85〜90℃で1〜2時間攪拌維持された。同時に、新たなトリメトキシシラン、RUCAT 2、およびDTBPを含む塩化アリルが、反応器における定常状態液面および1.5〜2時間の滞留時間の両方を維持する総括速度で反応器に投入された。トリメトキシシランの塩化アリルに対する重量測定比率は、1.7〜3.5の範囲に維持された。
【0133】
ストリッピングカラムにおけるリボイラの温度は、175〜190℃であった。反応混合物は、反応器入り口へ再循環される、主にTMSからなるオーバーヘッド流と、主にCPTMSからなる粗生成物流に分けられた。反応器への新たなおよび再循環TMSの総量は、一時間当たり620重量部に制御された。約6000重量部の粗生成物が、12時間の連続操作の後に集められた。その組成物を表24に記載する。
【0134】
【表24】
【0135】
約50〜90%のDTBPが、ヒドロシリル化反応およびストリッピング操作の間に分解される。残りの殆どは、オーバーヘッドTMS流と共にストリッピングカラムを出て、そして反応器入り口へ再循環される。従って、塩化アリルへの連続または断続的なDTBP添加は、ペルオキシ官能基濃度を有効濃度に維持するために起きなければならない。適切な熱および化学安定性を有する他のペルオキシ化合物もまた、DTBPの代わりに使用出来る。
【0136】
実施例31A〜31C
これらの実施例は、ヒドロシリル化反応の開始時に、ルテニウムが完全にRu(II)酸化状態にある、ホスフィンを持たないルテニウム触媒の調製および使用を説明する。この実施例はまた、Ru(II)触媒組成物がヒドロシリル化に用いられる場合の有効な過酸化物濃度を説明する。
【0137】
上記の通り、市販の三塩化ルテニウムは、実際は、RuClとRuClとの1:1モル混合物である。Ru(III)は、三塩化ルテニウムの10ミリリットルの各メタノール溶液(RUCAT 1およびRUCAT 2と上記した)に3グラムの粉末亜鉛を添加し、そして混合物を窒素雰囲気で亜鉛が完全に反応されるまで攪拌することによってRu(II)に還元された。文献資料(K. M. Frosinら、Inorganica Chimica Acta,vol 167 (1990) 83〜89、およびD. Roseら、J. Chem. Soc. (A) 1970,ppl791〜1795参照)からわかるように、アニオン性クラスター[RuCl122−の存在を示唆する青い溶液が得られた。
【0138】
RUCAT 1に由来する青い溶液の77KでのESR特性評価は、2.0035のDPPHに対して、2.49、2.44および2.00のgテンソル値を示した。主たるピークは、g=2.44;他の共鳴は、ショルダーであった。元のRUCAT 1スペクトルは、二つのピーク:g=2.72およびg=2.49を有した。初期ピーク強度は弱かったが、サンプルを室温で一晩保管した後にスペクトルをやり直した場合、それらは増強した。Ru(II)は、形式4d電子配置を有し、そして反磁性であると考えられているものの、RoseおよびWilkinson(J. Chem. Soc. (A),1970,pp 1792〜1795)はまた、[RuCl122−アニオンが常磁性を示し、そして三つのgテンソルを有するESRスペクトルをもたらすことを開示した。最近になって、Boncheffら(Can J. Chem.,vol. 89 (2011) pp 511〜516)が、二つの一価のアニオン性混合原子価ルテニウムクラスター、[RuCl11および[RuCl12(共にRu(III)およびRu(II)を含む)を記載した。従って、本実施例における亜鉛還元触媒のESR活性は、その4d電子配置によるRu(III)の常磁性に起因する。
【0139】
ヒドロシリル化反応は、32マイクロリットルの還元RUCAT 1(実施例31Aおよび31B)、および15マイクロリットルの還元RUCAT 2(実施例31C)を用いて行われた。実施例31Bに要約された実験のために、ジ−t−ブチルペルオキシド(DTBP 50ppm)が実施例31Cで用いられた塩化アリルに添加された。
【0140】
【表25】
【0141】
実施例31A〜31Cのデータは、アニオン性クラスター、[RuCl122−、[RuCl11、および[RuCl12]のいずれかとして、或いはその全てとして最初に存在する二価のルテニウムが、塩化アリルの過酸化物濃度に関わりなく、ヒドロシリル化を達成したことを示す。過酸化物濃度が4ppm未満である実験(実施例31C)において、ヒドロシリル化は不完全であった。実施例31Aを用いたRu(II)触媒組成物および塩化アリルでの別個の追加実験において、500ppmのトリブチルホスファイトが塩化アリルに添加された場合、完全なヒドロシリル化が認められた。CPTMSの収率は88.96重量%であった。しかしながら、1000ppmのトリブチルホスファイトは顕著な阻害を起こした;CPTMS収率は、わずか55.63重量%であった。
【0142】
実施例32
本実施例は、メチルジメトキシシラン(CHSiH(OCH)による塩化メタリル(HC=C(CH)CHC1)のヒドロシリル化のペルオキシ化合物促進を説明する。ペルオキシ化合物は、t−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)であり、そしてルテニウム源は、RUCAT 1である。
【0143】
該反応は、上記の研究室反応手順に従って行われる。メチルジメトキシシラン(49.3グラム、0.46モル)および32μLのRUCAT 1をフラスコに入れ、58℃まで加熱する。0.024グラムのTBHPを含む塩化メタリル(21.9グラム、0.29モル)を約0.2グラム/分で添加し、その間、温度が70℃まで上昇する。添加後、反応温度を80℃まで上昇させ、そして反応混合物を一晩攪拌放置する。GC/MS分析は、反応生成物が3−クロロ−2−メチルプロピル(メチル−ジメトキシシラン)であり、GC分析により反応混合物の60重量%を占めることを示す。
【0144】
実施例33
本実施例は、トリエトキシシラン(HSi(OC)による塩化アリル(HC=CHCHC1)のヒドロシリル化のペルオキシ化合物促進を説明する。ペルオキシ化合物は、ジ−t−ブチルペルオキシド(DTBP)であり、そしてルテニウム源は、実施例31に記載の通りに調製される亜鉛還元RUCAT 1である。亜鉛還元RUCAT 1は、[RuCl122−陰イオンを含み、ここでRuは、Ru(II)として存在する。トリエトキシシランは、米国特許第7,429,672号に開示された直接反応法を経由して得られる蒸留生成物であり、そして150ppm未満のトルエン含量を有する。
【0145】
該反応は、上記の研究室反応手順に従って行われる。トリエトキシシラン(47.3グラム、0.29モル)および32μLの亜鉛還元RUCAT 1をフラスコに入れ、そのフラスコを80℃まで加熱する。1.4ミリグラムのDTBPを含む塩化アリル(14.0グラム、0.18モル)を約0.3グラム/分で添加し、その間、温度が91℃まで上昇する。反応混合物を85〜90℃で4時間維持する。GC/MS分析は、反応生成物が3−クロロ−プロピルトリエトキシシランであり、GC分析により反応混合物の65重量%を占めることを示す。
【0146】
実施例34
本実施例は、トリメトキシシラン(HSi(OCH)による塩化メタリル(HC=C(CH)CHC1)のヒドロシリル化のペルオキシ化合物促進を説明する。ペルオキシ化合物は、ペルオキシエステル、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(Trigonox(登録商標)4S)であり、そしてルテニウム源は、RUCAT 1である。
【0147】
該反応は、上記の研究室反応手順に従って行われる。トリメトキシシラン(56.1グラム、0.46モル)および32μLのRUCAT 1をフラスコに入れ、そのフラスコを75℃まで加熱する。0.10グラムのTrigonox(登録商標)4Sを含む塩化メタリル(22.0グラム、0.29モル)を約0.2グラム/分で添加し、その間、温度が85℃まで上昇する。反応を95℃で12時間攪拌し続ける。GC/MS分析は、反応生成物が3−クロロ−2−メチルプロピルトリメトキシシランであり、GC分析により反応混合物の64重量%を占めることを示す。
【0148】
上記記載は、多くの詳述を含むが、これらの詳述は本発明の範囲を限定するものではなく、その好ましい実施態様の例示に過ぎないと解釈されるべきである。当業者は、ここに添付される特許請求の範囲に定義される本発明の範囲および精神の範囲で、多くの他の変更を想定できる。
以下に、本発明の特に好ましい態様を示す。
[項1]
(a)式HC=CRCRXを有するオレフィンハライド;(b)式(R(RO)3−ySiHを有するアルコキシシラン;(c)触媒有効量のルテニウム含有触媒;および(d)反応促進有効量のペルオキシ化合物を、任意で電子供与芳香族化合物の存在下で反応させてハロオルガノアルコキシシラン生成物を得るステップを含む、式(I)
(R(RO)3−ySiCHCHRCRX (I)
(式中、
およびRは、1−6の炭素原子を有するアルキル基であり;
は、1−6の炭素原子を有するアルキル基、または水素であり;
は、1−6の炭素原子を有するアルキル基、水素、またはハロゲンであり;
は、水素、または1−6の炭素原子を有するアルキル基であり;
Xは、ハロゲンであり;そして
yは、0、1または2である)のハロオルガノアルコキシシラン生成物を製造するプロセス。
[項2]
前記オレフィンハライドが、塩化アリル、メタリルクロリド、3−クロロ−l−ブテン、3,4−ジクロロ−l−ブテン、2−クロロプロペン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項1に記載のプロセス。
[項3]
前記アルコキシシランが、トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、ジエチルエトキシシラン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項1に記載のプロセス。
[項4]
前記ペルオキシ化合物の前記反応促進有効量が、反応体の総重量に基づいて約1〜約2000ppmの範囲である、項1に記載のプロセス。
[項5]
前記ペルオキシ化合物が、ヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、第14族元素のヒドロペルオキシドおよび過酸化物、ジアシルペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、項1に記載のプロセス。
[項6]
前記ペルオキシ化合物が、30〜200℃の範囲の(T1/2,lh)値を有する、項5に記載のプロセス。
[項7]
前記ヒドロペルオキシドが、式R−O−O−HまたはRC(O−O−H)(式中、Rは、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状、芳香族またはアルカリールである、C1〜C25の基である)を有する、項5に記載のプロセス。
[項8]
前記ヒドロペルオキシドが、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、アリルヒドロペルオキシド、テトラヒドロフリルヒドロペルオキシド、リモネンヒドロペルオキシド、テルペンヒドロペルオキシド、ステロイドのヒドロペルオキシド、2,5−ジヒドロペルオキシ−2,5−ジメチルへキサン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項7に記載のプロセス。
[項9]
前記第14族元素のヒドロペルオキシドおよび過酸化物が、式Z−O−O−H(式中、Zは、シリル、ゲルミル、またはスタンニル部分である)を有する、項5に記載のプロセス。
[項10]
前記第14族元素のヒドロペルオキシドおよび過酸化物が、トリメチルシリルヒドロペルオキシド、トリベンジルシリルヒドロペルオキシド、tert−ブチルジメチルシリルヒドロペルオキシド、メチルジフェニルシリルヒドロペルオキシド、トリフェニルシリルヒドロペルオキシド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項9に記載のプロセス。
[項11]
前記ジアルキルペルオキシドが、一般式R−O−O−R(式中、Rは、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状、芳香族またはアルカリールである、C1〜C25の基である)を有する、項5に記載のプロセス。
[項12]
前記ジアルキルペルオキシドが、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)へキサン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項11に記載のプロセス。
[項13]
前記ジアシルペルオキシドが、一般式(RC(O)O)(式中、Rは、1〜25の炭素原子を有する直鎖または分岐、環状、芳香族またはアルカリール基である)を有する、項5に記載のプロセス。
[項14]
前記ジアシルペルオキシドが、ジデカノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項13に記載のプロセス。
[項15]
前記ペルオキシエステルが、一般式RC(O)O−OR(式中、Rの各々は、1〜25の炭素原子を含有する、直鎖または分岐、環状、芳香族またはアルカリール基である)、項5に記載のプロセス。
[項16]
前記ペルオキシエステルが、クミルペルオキシネオデカノエート、t−アミルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルへキサノエート、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項15に記載のプロセス。
[項17]
前記ペルオキシジカーボネートが、一般式(ROC(O)O)(式中、Rは、1〜25の炭素原子を含有する、直鎖または分岐、環状、芳香族またはアルカリール基である)を有する、項5に記載のプロセス。
[項18]
前記ペルオキシジカーボネートが、ジ(n−プロピル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項17に記載のプロセス。
[項19]
前記ペルオキシケタールが、一般式RC(O−O−R’)(式中、RおよびR’が、各々独立して、1〜25の炭素原子を含有する、直鎖または分岐、環状、芳香族またはアルカリール基である)を有する、項5に記載のプロセス。
[項20]
前記ペルオキシケタールが、エチル−3,3−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブチレート、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロへキサン、1,1−ジ(t−ブチル−ペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロへキサン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項19に記載のプロセス。
[項21]
前記ルテニウム含有触媒が、ルテニウム微粒子、ハロゲン化ルテニウム、ハロゲン化ルテニウムの亜鉛還元またはスズ還元反応生成物、ルテニウムの環状オレフィン錯体、ルテニウムのアミン錯体、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項1に記載のプロセス。
[項22]
前記ルテニウム含有触媒が、RuCl3、RuBr、MRuCl、MRuCl12、MRuCl12(式中、M=H、またはアルカリ金属);ZnRuCl12およびSnRuCl12;[RuCl11、[RuCl12]等の混合原子価アニオン性塩化ルテニウムクラスターを含有する化合物;RuO、Ru(CO)12、[Ru(CO)Cl;Ru(COD)(COT)、COD−RuCl、[COD−RuCl(式中、CODは、シクロオクタジエンであり、そしてCOTは、シクロオクタトリエンである)等のルテニウムの環状オレフィン錯体;ビス(6,6−ジメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(η−2,4−ジメチルペンタジエニル)ルテニウム、ビス(l,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム、Ru(AcAc)(式中、AcAcは、アセチルアセトナート配位子である);(p−シメン)ルテニウム(II)クロライドダイマー、(ベンゼン)ルテニウム(II)クロライドダイマー等の(π−アレーン)ルテニウム錯体;[Ru(NH]Xおよび[Ru(NH]X(式中、Xは、ハロゲンである);ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、項21に記載のプロセス。
[項23]
前記電子供与
芳香族化合物が、ベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、n−ブチルベンゼン、ジ−t−ブチルベンゼン、ビベンジル、トルエン、t−ブチルトルエン、アニソール、1−フェニルへキサン、1−フェニルドデカン、C〜C20のアルキル基を有するn−アルキルベンゼンの混合物、ジフェニルアルカンおよびビベンジル異性体の混合物、ベンジルトルエンおよびジベンジルトルエンの混合物、m−キシレン、メシチレン、p−シメン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、フェニルエーテル、フェノチアジン、ビフェニル、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、項1に記載のプロセス。
[項24]
成分(a)が、前記プロセスにおいて、成分(b)に対してモル過剰である、項1に記載のプロセス。
[項25]
前記ルテニウム含有触媒が、実質的にホスフィンを持たない、項1に記載のプロセス。
[項26]
成分(a)が、塩化アリルであり、成分(b)が、トリメトキシシランであり、成分(c)が、RuClであり、そして成分(d)が、ジ(t−ブチル)ペルオキシドである、項1に記載のプロセス。
[項27]
式(I)
(R(RO)3−ySiCHCHRCRX (I)
(式中、RおよびRは、1−6の炭素原子を有するアルキル基であり;Rは、1−6の炭素原子を有するアルキル基、または水素であり;Rは、1−6の炭素原子を有するアルキル基、水素、またはハロゲンであり;Rは、水素、または1−6の炭素原子を有するアルキル基であり;Xは、ハロゲンであり;そしてyは、0、1または2である)
の化合物、および
1〜2000ppmのペルオキシ官能性(−O−O−)を有するペルオキシ化合物
を含む、項1に記載のプロセスによって製造される組成物。
[項28]
前記ペルオキシ化合物が、ヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、第14族元素のヒドロペルオキシドおよび過酸化物、ジアシルペルオキシド、ケトンペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される、項27に記載の組成物。


図1