特許第6676145号(P6676145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676145
(24)【登録日】2020年3月13日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】トルクコンバータ
(51)【国際特許分類】
   F16H 45/00 20060101AFI20200330BHJP
   F16H 25/06 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   F16H45/00 D
   F16H25/06 A
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-505115(P2018-505115)
(86)(22)【出願日】2016年3月15日
(86)【国際出願番号】JP2016058189
(87)【国際公開番号】WO2017158732
(87)【国際公開日】20170921
【審査請求日】2019年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154347
【氏名又は名称】株式会社ユニバンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】加藤忠彦
【審査官】 小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】 特公平01−055352(JP,B2)
【文献】 特開2008−223991(JP,A)
【文献】 特開平03−204418(JP,A)
【文献】 特開平03−260422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 45/00
F16H 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転力が回転体から入力されるインペラと、
そのインペラから流体を介して伝達される回転力を変速機の入力軸へ出力するタービンと、
そのタービンから前記入力軸への回転力の伝達および遮断の切り換えを行なう第1クラッチと、
前記回転体から前記入力軸への回転力の伝達および遮断の切り換えを行なう第2クラッチと
前記入力軸から前記回転体への回転力の伝達および遮断の切り換えを行なう第3クラッチとを備え、
前記第1クラッチ前記第2クラッチ及び前記第3クラッチは、前記回転体の中心軸回りに同心状に配置されると共に前記中心軸に対して所定のテーパ角をもつ円環状の2つの要素と、
その2つの要素の間に介在し前記要素に係合して回転力を伝達する複数のローラと、
その複数のローラを、前記中心軸を含む面から所定の角度だけ傾斜させつつ周方向に互いに間隔をあけて保持する保持器とをそれぞれ備えていることを特徴とするトルクコンバータ。
【請求項2】
前記第1クラッチによる回転力の伝達かつ前記第2クラッチによる回転力の遮断、又は、前記第1クラッチによる回転力の遮断かつ前記第2クラッチによる回転力の伝達を、前記要素を軸方向へ移動して選択的に切り換えるアクチュエータを備えていることを特徴とする請求項1記載のトルクコンバータ。
【請求項3】
前記第3クラッチは、前記第2クラッチにより前記回転体から前記入力軸へ回転力が伝達されるときに前記ローラが係合しないように前記2つの要素を軸方向へ相対的に遠ざける第1ばねと、
前記入力軸から回転力が入力されたときに前記ローラが係合するように前記第1ばねの弾性力に抗して前記2つの要素を軸方向へ相対的に近づけるカム機構とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のトルクコンバータ。
【請求項4】
前記第3クラッチは、前記第2クラッチにより前記回転体から前記入力軸へ回転力が伝達されるときに、前記入力軸から回転力が入力されると前記ローラが係合するように前記要素が配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のトルクコンバータ。
【請求項5】
前記第1クラッチ、前記第2クラッチ及び前記第3クラッチの内の2つのクラッチは、その2つのクラッチの要素が軸方向に並んで配置され、軸方向に並ぶ前記要素に軸方向の同じ向きの弾性力を加える第2ばねを備え、
その第2ばねによって弾性力が加えられる前記要素をもつ2つのクラッチは、一方のクラッチの前記ローラが係合すると他方のクラッチの前記ローラの係合が解除されることを特徴とする請求項からのいずれかに記載のトルクコンバータ。
【請求項6】
回転力が回転体から入力されるインペラと、
そのインペラから流体を介して伝達される回転力を変速機の入力軸へ出力するタービンと、
そのタービンから前記入力軸への回転力の伝達および遮断の切り換えを行なう第1クラッチと、
前記回転体から前記入力軸への回転力の伝達および遮断の切り換えを行なう第2クラッチと、
前記入力軸から前記回転体への回転力の伝達および遮断の切り換えを行なう第3クラッチとを備え、
前記第1クラッチ、前記第2クラッチ及び前記第3クラッチは、前記回転体の中心軸回りに同心状に配置されると共に前記中心軸に対して所定のテーパ角をもつ円環状の2つの要素と、
その2つの要素の間に介在し前記要素に係合して回転力を伝達する複数のローラと、
その複数のローラを、前記中心軸を含む面から所定の角度だけ傾斜させつつ周方向に互いに間隔をあけて保持する保持器とをそれぞれ備え、
前記第1クラッチ、前記第2クラッチ及び前記第3クラッチの内の2つのクラッチは、その2つのクラッチの要素が軸方向に並んで結合されると共に他の1つのクラッチの要素が一体化され、
軸方向に並ぶ前記要素に軸方向の同じ向きの弾性力を加える第2ばねを備え、
その第2ばねによる弾性力によって前記要素が軸方向へ移動すると、前記2つのクラッチは、一方のクラッチの前記ローラが係合すると他方のクラッチの前記ローラの係合が解除され、前記2つのクラッチの内の1つのクラッチ及び前記他の1つのクラッチは、前記ローラの係合と係合の解除とが同じに行われるように前記要素のテーパ角が設定されていることを特徴とするトルクコンバータ。
【請求項7】
前記第2ばねの弾性力に抗して前記要素を軸方向へ移動させるアクチュエータを備えていることを特徴とする請求項記載のトルクコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトルクコンバータに関し、特にロックアップができるトルクコンバータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、トルクを増幅させてエンジンの出力を変速機に伝達することができ、ロックアップクラッチによりエンジンと変速機とを直結できるトルクコンバータが知られている(特許文献1)。ロックアップ時に流体を介さずにエンジンと変速機とを直結するので伝達効率を向上できる。しかし、特許文献1に開示される技術では、ロックアップ時にエンジンと変速機とが直結されると、エンジンのトルク変動などに伴うショックを吸収できないという問題点がある。
【0003】
そこで本出願人は、ロックアップ時のショックを抑制できるトルクコンバータ(未公知の技術)を開発し、特許出願した(PCT/JP2014/75664)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−263896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記未公知の技術に対して、ロックアップ時の伝達効率を向上させることが求められている。
【0006】
本発明は、上述した要求に応えるためになされたものであり、ロックアップ時のショックを抑制し、且つ、ロックアップ時の伝達効率を向上できるトルクコンバータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この目的を達成するために請求項1記載のトルクコンバータによれば、回転力が回転体からインペラに入力されると、インペラから流体を介してタービンに回転力が伝達され、変速機の入力軸へ回転力が出力される。発進時は、第1クラッチによりタービンから入力軸へ回転力を伝達し、第2クラッチにより回転体から入力軸への回転力の伝達を遮断する。これにより発進時のトルク増幅ができる。発進後は、第1クラッチによりタービンから入力軸への回転力の伝達を遮断し、第2クラッチにより回転体から入力軸へ回転力を伝達する。これによりインペラ及びタービンを介さずに回転体の回転力を入力軸へ出力するロックアップを行うことができる。第3クラッチにより、入力軸から回転体への回転力の伝達および遮断が切り換えられる。
【0008】
第1クラッチ第2クラッチ及び第3クラッチは、それぞれ、円環状の2つの要素が回転体の中心軸回りに同心状に配置され、2つの要素の間に介在する複数のローラが、要素に係合して回転力を伝達する。要素は中心軸に対して所定のテーパ角をもつ。保持器は、複数のローラを回転体の中心軸を含む面から所定の角度だけ傾斜させつつ周方向に互いに間隔をあけて保持するので、2つの要素が相対回転すると、ローラは要素間を自転しつつ中心軸の回りを公転する。ローラが係合するときは、ローラは要素間を転動し、そのトラクションで要素間にローラが食い込んで要素と一体に回転するので、ロックアップ時の伝達損失を抑制できる。
【0009】
エンジンのトルク変動などが生じて2つの要素が相対回転したときは、要素間に介在するローラによってショックを吸収できる。よって、ロックアップ時のショックを抑制し、且つ、ロックアップ時の伝達効率を向上できる効果がある。車両の惰性走行時など、入力軸から回転体へ回転力が伝達されたときはローラによって係合時のショックを抑制できる効果がある。
【0010】
請求項2記載のトルクコンバータによれば、アクチュエータにより要素を軸方向へ移動して、第1クラッチによる回転力の伝達かつ第2クラッチによる回転力の遮断、又は、第1クラッチによる回転力の遮断かつ第2クラッチによる回転力の伝達が選択的に切り換えられる。請求項1の効果に加え、アクチュエータによって第1クラッチと第2クラッチとの切り換えを簡易にできると共に、第1クラッチ及び第2クラッチが同時に係合する2重噛み合いを防止できる効果がある。
【0012】
請求項記載のトルクコンバータによれば、第2クラッチにより回転体から入力軸へ回転力が伝達されるときに第3クラッチのローラが係合しないように、第1ばねにより2つの要素が軸方向へ相対的に遠ざけられる。入力軸から回転力が入力されたときに、第1ばねの弾性力に抗してカム機構により2つの要素が軸方向へ相対的に近づけられ、第3クラッチのローラが係合する。これにより請求項1又は2の効果に加え、第1ばね及びカム機構によって第2クラッチと第3クラッチとの切り換えを簡易にできると共に、第2クラッチ及び第3クラッチが同時に係合する2重噛み合いを防止できる効果がある。
【0013】
請求項記載のトルクコンバータによれば、第3クラッチは、第2クラッチにより回転体から入力軸へ回転力が伝達されるときに、入力軸から回転力が入力されるとローラが係合するように要素が配置される。請求項1から3のいずれかの効果に加え、回転力の伝達経路を第2クラッチから第3クラッチへスムーズに切り換えられる効果がある。
【0014】
請求項記載のトルクコンバータによれば、第1クラッチ、第2クラッチ及び第3クラッチの内の2つのクラッチは、2つのクラッチの要素が軸方向に並んで配置され、第2ばねによって、軸方向に並ぶ要素に軸方向の同じ向きの弾性力が加えられる。第2ばねによって弾性力が加えられる要素をもつ2つのクラッチは、一方のクラッチのローラが係合すると他方のクラッチのローラの係合が解除される。よって、請求項からのいずれかの効果に加え、2つのクラッチが同時に係合する2重噛み合いを防止できる効果がある。
【0015】
請求項記載のトルクコンバータによれば、回転力が回転体からインペラに入力されると、インペラから流体を介してタービンに回転力が伝達され、変速機の入力軸へ回転力が出力される。発進時は、第1クラッチによりタービンから入力軸へ回転力を伝達し、第2クラッチにより回転体から入力軸への回転力の伝達を遮断する。第3クラッチにより入力軸から回転体への回転力の伝達および遮断が切り換えられる。これにより発進時のトルク増幅ができる。発進後は、第1クラッチによりタービンから入力軸への回転力の伝達を遮断し、第2クラッチにより回転体から入力軸へ回転力を伝達する。これによりインペラ及びタービンを介さずに回転体の回転力を入力軸へ出力するロックアップを行うことができる。
【0016】
第1クラッチ、第2クラッチ及び第3クラッチは、それぞれ、円環状の2つの要素が回転体の中心軸回りに同心状に配置され、2つの要素の間に介在する複数のローラが、要素に係合して回転力を伝達する。要素は中心軸に対して所定のテーパ角をもつ。保持器は、複数のローラを回転体の中心軸を含む面から所定の角度だけ傾斜させつつ周方向に互いに間隔をあけて保持するので、2つの要素が相対回転すると、ローラは要素間を自転しつつ中心軸の回りを公転する。ローラが係合するときは、ローラは要素間を転動し、そのトラクションで要素間にローラが食い込んで要素と一体に回転するので、ロックアップ時の伝達損失を抑制できる。
【0017】
エンジンのトルク変動などが生じて2つの要素が相対回転したときは、要素間に介在するローラによってショックを吸収できる。よって、ロックアップ時のショックを抑制し、且つ、ロックアップ時の伝達効率を向上できる効果がある。車両の惰性走行時など、入力軸から回転体へ回転力が伝達されたときはローラによって係合時のショックを抑制できる効果がある。
【0018】
第1クラッチ、第2クラッチ及び第3クラッチの内の2つのクラッチは、その要素が軸方向に並んで結合されると共に他の1つのクラッチの要素が一体化される。同じ向きの軸方向の弾性力が第2ばねにより軸方向に並ぶ要素に加えられる。第2ばねによる弾性力によって要素が軸方向へ移動すると、2つのクラッチは、一方のクラッチのローラが係合すると他方のクラッチのローラの係合が解除されるので、2つのクラッチが同時に係合する2重噛み合いを防止できる効果がある。さらに、2つのクラッチの内の1つのクラッチ及び他の1つのクラッチは、ローラの係合と係合の解除とが同じに行われるように要素のテーパ角が設定されているので、動力の伝達経路の切り換えを迅速にできる効果がある。
【0019】
請求項記載のトルクコンバータによれば、第2ばねの弾性力に抗して要素を軸方向へ移動させるアクチュエータにより、請求項の効果に加え、クラッチの切り換えを簡易にできる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は本発明の第1実施の形態におけるトルクコンバータの断面図であり、(b)はカム機構の模式図である。
図2】(a)は発進時のトルクコンバータの断面図であり、(b)はカム機構の模式図である。
図3】(a)はロックアップ時のトルクコンバータの断面図であり、(b)はカム機構の模式図である。
図4】(a)は惰性走行時のトルクコンバータの断面図であり、(b)はカム機構の模式図である。
図5】第2実施の形態におけるトルクコンバータの断面図である。
図6】発進時のトルクコンバータの断面図である。
図7】ロックアップ時のトルクコンバータの断面図である。
図8】惰性走行時のトルクコンバータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず図1を参照して本発明の第1実施の形態におけるトルクコンバータ10について説明する。図1(a)は第1実施の形態におけるトルクコンバータ10の断面図である。トルクコンバータ10は中心軸Oを回転中心とするので、図1(a)は中心軸Oで直交する切断面によって全体の1/4を切断した片側断面図である。
【0022】
図1(a)に示すようにトルクコンバータ10は、自動車の動力伝達系に用いられる装置であり、ポンプ20、タービン30、ステータ40、第1クラッチ50、第2クラッチ60、第3クラッチ70及びアクチュエータ93を備えている。ポンプ20及びタービン30は、ステータ40を挟んで同軸状に配置されており、相対回転可能に設けられる。トルクコンバータ10は、碗状に形成された回転体11と、回転体11に結合するポンプ20のポンプシェル21とによってケース12が形成される。タービン30のタービンシェル31が、ポンプシェル21に対向してケース12内に設けられる。ケース12は、ポンプ20、タービン30、ステータ40、第1クラッチ50、第2クラッチ60及び第3クラッチ70を内蔵すると共に、変速機(図示せず)と隔てて流体を封入する部材である。
【0023】
ケース12の一部を構成する回転体11に、エンジンのクランク軸(図示せず)から回転力が入力される。ケース12は、中心に変速機(図示せず)の入力軸2が挿入され、入力軸2に対して相対回転可能に設けられている。ケース12は、ケース12に封入された流体の一部を蓄えるアキュームレータ13が固定されている。
【0024】
ポンプシェル21は、タービン30との対向面に多数のインペラ22が設けられている。タービンシェル31は、ポンプ20との対向面に多数のタービンブレード32が設けられている。ステータ40は、入力軸2回りの一方向に回転可能なワンウェイクラッチ41を介して入力軸2に支持される。タービン30の内径側の端部に回転盤33が結合されている。回転盤33は、入力軸2と相対回転可能に入力軸2の径方向外側に配置される円環状の部材である。
【0025】
第1クラッチ50はタービン30から入力軸2への回転力の伝達および遮断の切り換えを行なう装置である。第1クラッチ50は、第1要素51と、第2要素52と、第1要素51と第2要素52との間に介在する複数の第1ローラ53と、第1ローラ53を保持する第1保持器54とを備えている。
【0026】
第1要素51は、入力軸2の中心軸Oを回転中心とする円環状の部材であり、軸方向の端部が回転盤33の内縁に結合されている。第1要素51は、伝達部55の外周面に配置されている。伝達部55は、ボールスプラインによって入力軸2に対して軸方向へ移動可能、且つ、入力軸2に対して相対回転不能に固定された円筒状の部材である。伝達部55は、径方向の外側へ向かって拡がる鍔部56が結合されている。伝達部55は、第1要素51に対して軸方向へ移動可能、且つ、第1要素51に対して相対回転可能に配置されている。第1要素51は、中心軸O回りの単葉回転双曲面をなす外周面が形成されており、その外周面の外径は、中心軸Oに沿ってタービン30から離れるにつれて小さくなる。
【0027】
第2要素52は、中心軸Oを回転中心とする円環状の部材であり、第1要素51と間隔をあけて第1要素51の径方向外側に配置されている。第2要素52は、第1要素51に対して相対回転可能、且つ、第1要素51に対して軸方向へ移動可能に配置されている。第2要素52は、中心軸O回りの単葉回転双曲面をなす外周面および内周面が形成されており、その外周面の外径および内周面の内径は、中心軸Oに沿ってタービン30から離れるにつれて小さくなる。
【0028】
第2要素52は、内周面の一部が、第1要素51の外周面と軸方向に対向する。第2要素52は、小径側の端部が、伝達部55の鍔部56と係合する。第2要素52は、鍔部56を介して伝達部55と一体に回転する。伝達部55及び鍔部56は、入力軸2に対して軸方向へ移動できるので、第2要素52の軸方向の変位を妨げない。
【0029】
第1ローラ53は、第1要素51の外周面と第2要素52の内周面との間に係合してトルクを伝達する円柱状の部材であり、第1要素51と第2要素52との間に配置される第1保持器54によって周方向に間隔をあけて複数配置され、各々が自転可能に保持される。第1保持器54は中心軸Oを含む面から第1ローラ53を一定角度(例えば15°)傾斜させて、第1要素51及び第2要素52に外周面が線状に接触できるように第1ローラ53を保持する。第1ローラ53は、自動車の発進時の第2要素52に対する第1要素51の相対回転(第1要素51が駆動側)によって第1要素51及び第2要素52に係合するように、中心軸Oに対する傾斜の向き(スキュー)が設定されている。第1要素51の外周面および第2要素52の内周面は、中心軸Oに対するテーパ角が、第1ローラ53が係合できるような所定の角度に設定されている。
【0030】
第2クラッチ60は回転体11から入力軸2への回転力の伝達および遮断の切り換えを行なう装置である。第2クラッチ60は、第3要素61と、第4要素62と、第3要素61と第4要素62との間に介在する複数の第2ローラ63と、第2ローラ63を保持する第2保持器64とを備えている。
【0031】
第3要素61は、入力軸2の中心軸Oを回転中心とする円環状の部材であり、入力軸2に対して回転不能、且つ、入力軸2に対して軸方向へ移動不能なように入力軸2に結合されている。第3要素61は、中心軸O回りの単葉回転双曲面をなす外周面が形成されており、その外周面の外径は、中心軸Oに沿ってタービン30へ近づくにつれて小さくなる。
【0032】
第4要素62は、中心軸Oを回転中心とする円環状の部材であり、第3要素61と間隔をあけて第3要素61の径方向外側に配置されている。第4要素62は、第3要素61に対して相対回転可能、且つ、第3要素61に対して軸方向へ移動可能に配置されている。第4要素62は、中心軸O回りの単葉回転双曲面をなす内周面が形成されており、その内周面の内径は、中心軸Oに沿ってタービン30へ近づくにつれて小さくなる。第4要素62は、内周面の一部が、第3要素61の外周面と軸方向に対向する。
【0033】
第2ローラ63は、第3要素61の外周面と第4要素62の内周面との間に係合してトルクを伝達する円柱状の部材であり、第3要素61と第4要素62との間に配置される第2保持器64によって周方向に間隔をあけて複数配置され、各々が自転可能に保持される。第2保持器64は中心軸Oを含む面から第2ローラ63を一定角度(例えば15°)傾斜させて、第3要素61及び第4要素62に外周面が線状に接触できるように第2ローラ63を保持する。第2ローラ63は、自動車のロックアップ時の第3要素61に対する第4要素62の相対回転(第4要素62が駆動側)によって第3要素61及び第4要素62に係合するように、中心軸Oに対する傾斜の向き(スキュー)が設定されている。第3要素61の外周面および第4要素62の内周面は、中心軸Oに対するテーパ角が、第2ローラ63が係合できる所定の角度に設定されている。
【0034】
第4要素62は、第2要素52の軸方向に並んで支持体65に支持される。支持体65は、第4要素62の径方向外側に配置される円筒状の部材であり、回転体11に対して回転不能、且つ、回転体11に対して軸方向へ移動不能なように連結部66を介して回転体11に結合されている。支持体65は、ボールスプラインによって支持体65に対して第4要素62を軸方向へ移動可能、且つ、支持体65に対して第4要素62を回転不能に支持する。
【0035】
第3クラッチ70は入力軸2から回転体11への回転力の伝達および遮断の切り換えを行なう装置である。第3クラッチ70は、第2要素52と、第5要素72と、第2要素52と第5要素72との間に介在する複数の第3ローラ73と、第3ローラ73を保持する第3保持器74とを備えている。第2要素52は、第2クラッチ60及び第3クラッチ70の一部を兼ねる。
【0036】
第5要素72は入力軸2の中心軸Oを回転中心とする円環状の部材であり、第2要素52と間隔をあけて第2要素52の径方向外側に配置されている。第5要素72は回転盤33に対して回転不能、且つ、回転盤33に対して軸方向へ移動不能なように回転盤33に結合されている。第5要素72は中心軸O回りの単葉回転双曲面をなす内周面が形成されており、その内周面の内径は、中心軸Oに沿ってタービン30から離れるにつれて小さくなる。第5要素72は、内周面の一部が、第2要素52の外周面と軸方向に対向する。
【0037】
第3ローラ73は、第2要素52の外周面と第5要素72の内周面との間に係合してトルクを伝達する円柱状の部材であり、第2要素52と第5要素72との間に配置される第3保持器74によって周方向に間隔をあけて複数配置され、各々が自転可能に保持される。第3保持器74は中心軸Oを含む面から第3ローラ73を一定角度(例えば15°)傾斜させて、第2要素52及び第5要素72に外周面が線状に接触できるように第3ローラ73を保持する。第3ローラ73は、自動車の惰性走行時の第5要素72に対する第2要素52の相対回転(第2要素52が駆動側)によって第2要素52及び第5要素72に係合するように、中心軸Oに対する傾斜の向き(スキュー)が設定されている。第2要素52の外周面および第5要素72の内周面は、中心軸Oに対するテーパ角が、第3ローラ73が係合できる所定の角度に設定されている。
【0038】
第1ばね81は第2要素52と第4要素62との間に配置される円環状の皿ばねであり、第1ばね81は第4要素62と第2要素52とを軸方向へ引き離す弾性力を加える。第2ばね82は回転盤33と第2要素52との間に配置される円環状の皿ばねであり、第2ばね82は回転盤33と第2要素52とを軸方向へ引き離す弾性力を加える。第1ばね81は、回転盤33と第2要素52との間に設けられたカム機構83(後述する)に軸方向の圧力を発生させる部材である。第1ばね81の軸方向の弾性力は第2ばね82の軸方向の弾性力より大きく設定されている。
【0039】
図1(b)を参照してカム機構83について説明する。図1(b)は径方向の外側から見たカム機構83の模式図である。カム機構83は回転盤33と第2要素52とが軸方向に対向する回転盤33及び第2要素52の端面に設けられている。中心軸Oに対して平行な係合面34,84及び中心軸Oに対して傾斜するカム面35,85が、回転盤33及び第2要素52にそれぞれ形成されている。係合面34,84及びカム面35,85に囲まれた溝状の領域にボール86が配置される。係合面34とカム面35との周方向の距離、係合面84とカム面85との周方向の距離は、ボール86の直径より大きく設定されている。
【0040】
係合面34,84は第2要素52に対して回転盤33が回転するとき(発進時やロックアップ時、回転盤33が駆動側)にボール86が当接する面である。カム面35,85は回転盤33に対して第2要素52が回転するとき(惰性走行時、第2要素52が駆動側)にボール86が当接する面である。カム面35,85は、回転盤33と第2要素52とのトルク差によりボール86に反力を発生させ、回転盤33から第2要素52を引き離す軸方向の推力を発生する。
【0041】
図1(a)に戻って説明する。第4要素62は第1ばね81及び規制板90によって軸方向の位置が規制される。規制板90は円環状の部材であり、第4要素62の軸方向端面が周方向に亘って当接する。第4要素62は、端面が規制板90に当接するように第1ばね81によって軸方向に付勢されている。
【0042】
規制板90は厚さ方向にシャフト91が貫通しており、シャフト91の第1の端部が規制板90に固定される。シャフト91は中心軸Oと平行に配置され、回転体11を貫通する孔部に挿通される。シャフト91は、第2の端部が回転体11の外面に露出する。シャフト91の第2の端部に円環状のストッパ92が固定される。ストッパ92はアクチュエータ93と係合する。規制板90、シャフト91及びストッパ92は回転体11と一体に回転する。アクチュエータ93は、第1ばね81及び第2ばね82の弾性力に抗して、ストッパ92を中心軸Oと平行な直線上に押し込む装置である。アクチュエータ93の作動によりストッパ92、シャフト91、規制板90が軸方向へ押し込まれる。アクチュエータ93の作動を解除すると、第1ばね81及び第2ばね82の弾性力によりストッパ92、シャフト91、規制板90が押し戻される。
【0043】
次に図2から図4を参照して、トルクコンバータ10の使用方法について説明する。図2(a)は発進時のトルクコンバータ10の断面図であり、図2(b)はカム機構83の模式図である。図3(a)はロックアップ時のトルクコンバータ10の断面図であり、(図3(b)はカム機構の模式図である。図4(a)は惰性走行時のトルクコンバータ10の断面図であり、図4(b)はカム機構83の模式図である。図2(a)、図3(a)及び図4(a)に示す破線は回転力の伝達経路を示しており、矢印は回転力の伝達方向を示している。図2(b)、図3(b)及び図4(b)において、回転盤33及び第2要素52に付した矢印は回転盤33及び第2要素52の回転方向を示している。回転盤33及び第2要素52の内、矢印の長い方が駆動側である。
【0044】
図2(a)に示すように、自動車の発進時はアクチュエータ93を作動させてシャフト91を押し込む。規制板90を介して第4要素62が軸方向の第2要素52側へ押され、第3要素61と第4要素62との軸方向の間隔が広がるので、第2ローラ63は第3要素61及び第4要素62に係合できなくなる。第4要素62の第2要素52側への移動に伴い、第1ばね81の弾性力によって、第2ばね82の弾性力に抗して第2要素52がタービン30側へ移動する。第1要素51と第2要素52との軸方向の間隔が狭まるので、第1要素51及び第2要素52に第1ローラ53が線状に接触する。その反面、第2要素52と第5要素72との軸方向の間隔は広がる。
【0045】
エンジンのクランク軸(図示せず)から回転体11に回転力が入力されると、連結部66及び支持体65を介して第4要素62が回転する。しかし、第3要素61と第4要素62との軸方向の距離が大きいので、第2ローラ63は第3要素61及び第4要素62に係合できない。そのため、第2ローラ63及び第3要素61を介して第4要素62から入力軸2へ回転力は伝達されない。
【0046】
一方、回転体11に連れてポンプシェル21及びインペラ22も回転する。インペラ22によって流体が回転することで、流体を介してタービンブレード32及びタービンシェル31(タービン30)が回転する。タービン30の回転力は回転盤33を介して第1要素51へ伝達される。第1要素51及び第2要素52に線状に接触する第1ローラ53が、自転しながら中心軸O回りを公転する。第1ローラ53は第1要素51と第2要素52との間を転動し、そのトラクションで第1要素51と第2要素52との間に食い込んで係合し、第1要素51及び第2要素52と一体に回転する。第1要素51は軸方向の移動が規制されているので、第2要素52は、第2要素52の内周面と第1要素51の外周面との軸方向の距離を小さくするように、回転しながら軸方向(回転盤33に近づく方向)へ移動する。
【0047】
図2(b)に示すように、自動車の発進時は第2要素52に対して回転盤33が回転するので(回転盤33が駆動側)、係合面34,84にボール86が当接する。第1要素51と第2要素52との間に第1ローラ53が食い込み、第2ばね82の弾性力に抗して回転盤33に第2要素52が近づくときは、係合面34,84がボール86に案内される。カム機構83は、第1要素51と第2要素52との間に第1ローラ53が食い込むことによる第2要素52の軸方向の移動を妨げないので、図2(a)に示すように、タービン30の回転力が第2要素52へ伝達される。第2要素52の回転力は、鍔部56及び伝達部55を介して入力軸2へ伝達される。入力軸2へ伝達される回転力は、インペラ22、タービン30及びステータ40の作用によってトルクが増幅される。
【0048】
図3(a)に示すように自動車の発進後、ロックアップ時はアクチュエータ93の作動を解除すると、第1ばね81が復元して第2要素52から離れる方向へ第4要素62が移動する。規制板90及びシャフト91はそれに連れて移動する。第3要素61と第4要素62との軸方向の間隔が狭まり、第2ローラ63は第3要素61及び第4要素62に線状に接触する。第3要素61及び第4要素62に接触する第2ローラ63は、自転しながら中心軸O回りを公転する。第2ローラ63は第3要素61と第4要素62との間を転動し、そのトラクションで第3要素61と第4要素62との間に食い込んで係合し、第3要素61及び第4要素62と一体に回転する。第3要素61は軸方向の移動が規制されているので、第4要素62は、第4要素62の内周面と第3要素61の外周面との軸方向の距離を小さくするように、回転しながら軸方向(第2要素52から離れる方向)へ移動する。
【0049】
一方、第4要素62の移動に伴い、第2要素52に作用する第1ばね81の弾性力が小さくなるので、第2ばね82の弾性力により第2要素52が第4要素62側へ移動する。図3(b)に示すように、ロックアップ時は第2要素52に対して回転盤33が回転するので(回転盤33が駆動側)、係合面34,84にボール86が当接する。第2要素52が第4要素62側へ移動するときは、係合面34,84がボール86に案内される。第2要素52の移動によって第1要素51と第2要素52との軸方向の間隔が広がるので、第1要素51及び第2要素52に第1ローラ53が係合できなくなる。
【0050】
なお、第2要素52が第4要素62側へ移動すると、第2要素52と第5要素72との軸方向の間隔が小さくなる。第3ローラ73は第2要素52及び第5要素72に接触するが、第3ローラ73は第2要素52及び第5要素72に係合できない。第3ローラ73は、第5要素72が駆動側、第2要素52が被動側の場合に係合できないように中心軸Oに対するスキューが設定されているからである。
【0051】
その結果、エンジンのクランク軸(図示せず)から回転体11に入力された回転力は、連結部66、支持体65、第4要素62、第2ローラ63及び第3要素61を経て入力軸2へ伝達される。第2クラッチ60により、流体を介さずに回転体11の回転力を入力軸2へ出力するロックアップを行うことができるので、伝達効率を向上できる。
【0052】
第2ローラ63は第3要素61と第4要素62との間に食い込んで一体に回転するので、ロックアップ時の伝達損失を抑制できる。また、エンジン(図示せず)のトルク変動などが生じて第3要素61と第4要素62とが相対回転したときは、第3要素61と第4要素62との間に介在する第2ローラ63が転動してショックを吸収できる。よって、ロックアップ時のショックを抑制し、且つ、ロックアップ時の伝達効率を向上できる。
【0053】
図4(a)に示すように第2クラッチ60が回転力を伝達した状態で、自動車が、回転体11をエンジン(図示せず)が駆動しない惰性走行をする場合には、入力軸2から回転力が入力される。入力軸2に連れて第3要素61が回転するが、第2ローラ63は第3要素61及び第4要素62に係合できない。第2ローラ63は、第3要素61が駆動側、第4要素62が被動側の場合に係合できないように中心軸Oに対するスキューが設定されているからである。同様に、第1ローラ53も第1要素51及び第2要素52に係合できない。
【0054】
一方、入力軸2から回転力が伝達された伝達部55は、鍔部56を介して第2要素52を回転させる。図4(b)に示すように惰性走行時は回転盤33に対して第2要素52が回転するので(第2要素52が駆動側)、カム面35,85にボール86が当接する。カム面35,85は、ボール86を介して、回転盤33と第2要素52とのトルク差により回転盤33から第2要素52を引き離す軸方向の推力を発生する。その推力によって第2要素52が軸方向の第4要素62側へ移動すると、第5要素72は軸方向の移動が規制されているので、第2要素52の外周面と第5要素72の内周面との軸方向の距離が小さくなる。第1ばね81が、第4要素62に対する第2要素52の接近を吸収する。
【0055】
第3ローラ73は第2要素52及び第5要素72に接触して自転しながら中心軸O回りを公転する。第3ローラ73は第2要素52と第5要素72との間を転動し、そのトラクションで第2要素52と第5要素72との間に食い込んで係合し、第2要素52及び第5要素72と一体に回転する。第5要素72の回転力は、回転盤33、タービン30及びインペラ22を経て回転体11へ伝達される。惰性走行時、第3ローラ73は転動した後に第2要素52と第5要素72との間に食い込むので、係合時の衝撃を緩衝できる。
【0056】
このトルクコンバータ10によれば、発進時のトルク増幅ができるので、マニュアルトランスミッション(以下「MT」と称す)、セミオートマチックトランスミッション(以下「AMT」と称す)、デュアルクラッチトランスミッション(以下「DCT」と称す)等のMTベースの変速機の場合、発進用のローギヤを不要にできる。その結果、シフトアップをスムーズにできると共に、シフト時のイナーシャ変化によるショックを軽減できる。また、変速機にクロスレシオを設定し易くできるので、エンジンのパワーバンドを有効活用し易くできる。さらにMTベースの変速機(特にAMT)では、多段式の自動変速機(以下「AT」と称す)や無段変速機(以下「CVT」と称す)と同様に、メインクラッチが不要な動力伝達系を実現できる。
【0057】
トルクコンバータ10は、ロックアップ時は第2クラッチ60によって伝達効率の低下を抑えつつトルク変動等によるショックを抑制できるので、ロックアップした状態で中低速域の走行を可能にできる。AT(変速機)の場合、従来はロックアップ時に、エンジンのトルク変動によるチップインショックや、エンジンの振動によるブルーミングノイズが吸収されずに伝わり、特に低速域では振動と騒音が増大する。それらを抑制するために、中低速域でロックアップを行わないと燃費が悪化する。トルクコンバータ10によれば、ロックアップ時に生じるショックを抑制できるので、ロックアップできる速度域を中低速域にまで拡大することができ、快適性とロックアップによる伝達効率の向上とを両立できる。その結果、燃費の改善を図ることができる。
【0058】
トルクコンバータ10は、アクチュエータ93を駆動して規制板90を軸方向へ移動させることでロックアップを行う。アクチュエータ93及び第2クラッチ60は、従来の湿式多板クラッチ等の油圧クラッチを使ったロックアップクラッチと異なり、主として機械的な作動によって機能を発揮する機械式の機構なので、油圧ポンプ等の油圧発生装置を不要にできる。よって、油圧を維持するためのエネルギー損失をなくすことができると共に機構を簡素化できる。
【0059】
油圧発生装置を不要にできるので、油圧ポンプ等の油圧発生装置をもたないMTベースの変速機にトルクコンバータ10を取り付けることも容易である。また、トルクコンバータ10はケース12に流体を封入した構造なので、どのような種類の変速機にも取り付けることができ、汎用性を向上できる。さらに、ケース12に封入される流体の一部をアキュームレータ13が蓄えるので、アキュームレータ13によって、温度変化による流体の熱膨張収縮による体積変動を許容できる。
【0060】
なお、ATやCVT等の変速機をもった車両には油圧ポンプ等の油圧発生装置(図示せず)や油圧制御装置(図示せず)が設置されているので、その場合はアクチュエータ93の駆動源として既設の油圧発生装置や油圧制御装置を用いることができる。
【0061】
トルクコンバータ10はロックアップ時に惰性走行を行う場合、入力軸2が駆動されて第2要素52が回転すると、第1ばね81がカム機構83に摩擦力を発生させ、カム機構83によって自動的に第3クラッチ70が係合する。第1ばね81とカム機構83とを設けることで、特別な制御をしなくてもロックアップ走行と惰性走行との切り換えを実現できる。第1ばね81及びカム機構83によって第2クラッチ60と第3クラッチ70との切り換えを簡易にできると共に、第2クラッチ60及び第3クラッチ70が同時に係合する2重噛み合いを防止できる。
【0062】
第3クラッチ70は、第2クラッチ60により回転体11から入力軸2へ回転力が伝達されるときに、入力軸2から回転力が入力されると第3ローラ73が係合するように第2要素52及び第5要素72が配置される。よって、第2クラッチ60によって回転力が伝達される状態から第3クラッチ70によって回転力が伝達される状態へスムーズに切り換えられる。
【0063】
第1クラッチ50及び第2クラッチ60は、第2要素52及び第4要素62が軸方向に並んで配置され、第2ばね82の弾性力が第2要素52に作用し、第1ばね81の弾性力が第2要素52及び第4要素62に作用する。第2ばね82によって第2要素52及び第4要素62に軸方向の同じ向きの弾性力が加えられる。第2要素52及び第4要素62は、一方のクラッチのローラが係合すると他方のクラッチのローラの係合が解除される。よって、第1クラッチ50及び第2クラッチ60が同時に係合する2重噛み合いを防止できる。
【0064】
次に図5から図8を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、第1クラッチ50と第2クラッチ60とが軸方向に並ぶ場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、第1クラッチ110と第3クラッチ130とが軸方向に並ぶトルクコンバータ100について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図5は第2実施の形態におけるトルクコンバータ100の断面図である。
【0065】
図5に示すようにトルクコンバータ100は、タービン30の内径側の端部に第1伝達部101が結合されている。第1伝達部101は、入力軸2と相対回転可能に入力軸2の外周に配置される円筒状の部材である。第1伝達部101はタービン30に結合され、入力軸2に対して軸方向へ移動不能である。
【0066】
第1クラッチ110はタービン30から入力軸2への回転力の伝達および遮断の切り換えを行なう装置である。第1クラッチ110は、第1要素111と、第2要素112と、第1要素111と第2要素112との間に介在する複数の第1ローラ113と、第1ローラ113を保持する第1保持器114とを備えている。
【0067】
第1要素111は、入力軸2の中心軸Oを回転中心とする円環状の部材であり、第1伝達部101の外周面に配置されている。第1要素111は第1伝達部101に対して軸方向へ移動不能、且つ、第1伝達部101に対して相対回転不能に第1伝達部101に結合されている。第1要素111は、中心軸O回りの単葉回転双曲面をなす外周面が形成されており、その外周面の外径は、中心軸Oに沿ってタービン30から離れるにつれて小さくなる。
【0068】
第2要素112は、中心軸Oを回転中心とする円環状の部材であり、第1要素111と間隔をあけて第1要素111の径方向外側に配置されている。第2要素112は、第1要素111に対して相対回転可能、且つ、第1要素111に対して軸方向へ移動可能に配置されている。第2要素112は、中心軸O回りの単葉回転双曲面をなす外周面および内周面が形成されており、その外周面の外径および内周面の内径は、中心軸Oに沿ってタービン30から離れるにつれて小さくなる。第2要素112は、内周面の一部が、第1要素111の外周面と軸方向に対向する。
【0069】
第1ローラ113は、第1要素111の外周面と第2要素112の内周面との間に係合してトルクを伝達する円柱状の部材であり、第1要素111と第2要素112との間に配置される第1保持器114によって周方向に間隔をあけて複数配置され、各々が自転可能に保持される。第1保持器114は中心軸Oを含む面から第1ローラ113を一定角度(例えば15°)傾斜させて、第1要素111及び第2要素112に外周面が線状に接触できるように第1ローラ113を保持する。第1ローラ113は、自動車の発進時の第2要素112に対する第1要素111の相対回転(第1要素111が駆動側)によって第1要素111及び第2要素112に係合するように、中心軸Oに対する傾斜の向き(スキュー)が設定されている。第1要素111の外周面および第2要素112の内周面は、中心軸Oに対するテーパ角が、第1ローラ113が係合できる所定の角度に設定されている。
【0070】
第2クラッチ120は回転体11から入力軸2への回転力の伝達および遮断の切り換えを行なう装置である。第2クラッチ120は、第2要素112と、第2要素112の径方向外側に配置された第3要素122と、第2要素112と第3要素122との間に介在する複数の第2ローラ123と、第2ローラ123を保持する第2保持器124とを備えている。第2要素112は、第1クラッチ110及び第2クラッチ120の一部を兼ねる。
【0071】
第3要素122は、入力軸2の中心軸Oを回転中心とする円環状の部材であり、第2要素112と間隔をあけて第2要素112の径方向外側に配置されている。第3要素122は、連結部125を介して回転体11に対して回転不能、且つ、回転体11に対して軸方向へ移動不能なように回転体11に結合されている。第3要素122は、中心軸O回りの単葉回転双曲面をなす内周面が形成されており、その内周面の内径は、中心軸Oに沿ってタービン30から離れるにつれて小さくなる。第3要素122は、内周面の一部が、第2要素112の外周面と軸方向に対向する。
【0072】
第2ローラ123は、第2要素112の外周面と第3要素122の内周面との間に係合してトルクを伝達する円柱状の部材であり、第2要素112と第3要素122との間に配置される第2保持器124によって周方向に間隔をあけて複数配置され、各々が自転可能に保持される。第2ローラ123は、自動車のロックアップ時の第2要素112に対する第3要素122の相対回転(第3要素122が駆動側)によって第2要素112及び第3要素122に係合するように、中心軸Oに対する傾斜の向き(スキュー)が設定されている。第2要素112の外周面および第3要素122の内周面は、中心軸Oに対するテーパ角が、第2ローラ123が係合できる所定の角度に設定されている。
【0073】
第3クラッチ130は入力軸2から回転体11への回転力の伝達および遮断の切り換えを行なう装置である。第3クラッチ130は、第4要素131と、第5要素132と、第4要素131と第5要素132との間に介在する複数の第3ローラ133と、第3ローラ133を保持する第3保持器134とを備えている。
【0074】
第4要素131は、第1伝達部101の径方向外側に配置される円環状の部材であり、第1要素111の軸方向に並んで第1伝達部101に支持される。第4要素131は、第1伝達部101に対して相対回転不能、且つ、第1伝達部101に対して軸方向へ相対移動不能に第1伝達部101に結合する。第4要素131は、中心軸O回りの単葉回転双曲面をなす外周面が形成されており、その外周面の外径は、中心軸Oに沿ってタービン30へ近づくにつれて小さくなる。
【0075】
第5要素132は入力軸2の中心軸Oを回転中心とする円環状の部材であり、第4要素131と間隔をあけて第4要素131の径方向外側に配置されている。第5要素132は、第4要素131に対して相対回転可能、且つ、第4要素131に対して軸方向へ相対移動可能に配置されている。第5要素132は中心軸O回りの単葉回転双曲面をなす内周面が形成されており、その内周面の内径は、中心軸Oに沿ってタービン30へ近づくにつれて小さくなる。第5要素132は、内周面の一部が、第4要素131の外周面と軸方向に対向する。第5要素132は軸方向に並ぶ第2要素112に結合し一体化されている。
【0076】
第3ローラ133は、第4要素131の外周面と第5要素132の内周面との間に係合してトルクを伝達する円柱状の部材であり、第4要素131と第5要素132との間に配置される第3保持器134によって周方向に間隔をあけて複数配置され、各々が自転可能に保持される。第3ローラ133は、自動車の惰性走行時の第4要素131に対する第5要素132の相対回転(第5要素132が駆動側)によって第4要素131及び第5要素132に係合するように、中心軸Oに対する傾斜の向き(スキュー)が設定されている。第2要素112の外周面および第3要素122の内周面は、中心軸Oに対するテーパ角が、第3ローラ133が係合できる所定の角度に設定されている。
【0077】
第2伝達部135は、ボールスプラインによって入力軸2に対して軸方向へ移動可能、且つ、入力軸2に対して相対回転不能に支持された円筒状の部材である。第2伝達部135は、径方向の外側へ向かって拡がる鍔部136が結合されている。第2伝達部135は、第1伝達部101に対して軸方向へ移動可能、且つ、第1伝達部101に対して相対回転可能に配置されている。鍔部136は第5要素132の軸方向の端部と係合する。第5要素132は、鍔部136を介して第2伝達部135と一体に回転する。第2伝達部135及び鍔部136は、入力軸2に対して軸方向へ移動できるので、第5要素132及び第2要素112の軸方向の変位を妨げない。
【0078】
第2ばね138はタービン30の径方向内側の端部と第2要素112との間に配置される円環状の皿ばねであり、第2ばね138は第2要素112及び第5要素132をタービン30から軸方向へ引き離す弾性力を加える。第3ばね139は鍔部136と第4要素131との間に配置される円環状の皿ばねであり、第3ばね139は鍔部136を第4要素131から軸方向へ引き離す弾性力を加える。第2ばね138の軸方向の弾性力は第3ばね139の軸方向の弾性力より大きく設定されている。
【0079】
第5要素132及び第2要素112は第2ばね138及び規制板137によって軸方向の位置が規制される。規制板137は円環状の部材であり、内周が、第5要素132の外周面に周方向に連続して形成された溝140に挿入される。規制板137は厚さ方向にシャフト91が貫通する。アクチュエータ93の作動により、第2ばね138の弾性力に抗して、ストッパ92、シャフト91、規制板137が軸方向へ押し込まれる。アクチュエータ93の作動を解除すると、第2ばね138の弾性力によりストッパ92、シャフト91、規制板137が押し戻される。
【0080】
次に図6から図8を参照して、トルクコンバータ100の使用方法について説明する。図6は発進時のトルクコンバータ100の断面図であり、図7はロックアップ時のトルクコンバータ100の断面図であり、図8は惰性走行時のトルクコンバータ100の断面図である。図6から図8に示す破線は回転力の伝達経路を示しており、矢印は回転力の伝達方向を示している。
【0081】
図6に示すように、自動車の発進時はアクチュエータ93を作動させてシャフト91を押し込む。規制板137を介して、第2ばね138の弾性力に抗して第2要素112及び第5要素132が軸方向のタービン30側へ押される。第3要素122と第2要素112との軸方向の間隔が広がるので、第2ローラ123は第2要素112及び第3要素122に係合できなくなる。一方、第1要素111と第2要素112との軸方向の間隔が狭まるので、第1要素111及び第2要素112に第1ローラ113が線状に接触する。なお、第4要素131と第5要素132との軸方向の間隔は広がる。
【0082】
エンジンのクランク軸(図示せず)から回転体11に回転力が入力されると、連結部125を介して第3要素122が回転する。しかし、第2要素112と第3要素122との軸方向の距離が大きいので、第2ローラ123は第2要素112及び第3要素122に係合できない。そのため、第2ローラ123及び第2要素112を介して第3要素122から入力軸2へ回転力は伝達されない。
【0083】
一方、回転体11に連れてインペラ22も回転する。インペラ22によって流体が回転することで、流体を介してタービン30が回転する。タービン30の回転力は第1伝達部101を介して第1要素111へ伝達される。第1要素111及び第2要素112に線状に接触する第1ローラ113は、第1要素111と第2要素112との間を転動しながら第1要素111と第2要素112との間に食い込んで係合し、第1要素111及び第2要素112と一体に回転する。第2要素112の回転力は、第5要素132、鍔部136及び第2伝達部135を経て入力軸2へ伝達される。
【0084】
図7に示すように自動車の発進後、ロックアップ時はアクチュエータ93の作動を解除する。第2ばね138の弾性力によって第2要素112及び第5要素132が、タービン30から離れる方向へ移動する。第2要素112及び第5要素132の移動に連れて、規制板137及びシャフト91は押し戻される。第1要素111と第2要素112との軸方向の間隔が広がるので、第1ローラ113は第1要素111及び第2要素112に係合できなくなる。なお、第4要素131と第5要素132との軸方向の間隔が狭まり、第3ローラ133は第4要素131及び第5要素132に線状に接触するが、第3ローラ133は第4要素131及び第5要素132に係合できない。
【0085】
一方、第2要素112と第3要素122との軸方向の間隔が狭まるので、第2ローラ123は第2要素112及び第3要素122に線状に接触する。第2ローラ123は、第2要素112と第3要素122との間を転動しながら第2要素112と第3要素122との間に食い込んで係合し、第2要素112及び第3要素122と一体に回転する。その結果、エンジンのクランク軸(図示せず)から回転体11に入力された回転力は、連結部125、第3要素122、第2ローラ123、第2要素112、第5要素132、鍔部136及び第2伝達部135を経て入力軸2へ伝達される。第2クラッチ120により、流体を介さずに回転体11の回転力を入力軸2へ出力するロックアップを行うことができる。
【0086】
図8に示すように第2クラッチ120が回転力を伝達した状態で、自動車が、回転体11をエンジン(図示せず)が駆動しない惰性走行をする場合には、入力軸2から回転力が入力される。入力軸2、第2伝達部135、鍔部136を経て第5要素132が回転すると、第4要素131及び第5要素132に線状に接触する第3ローラ133が、第4要素131と第5要素132との間を転動する。そのトラクションで第3ローラ133は第4要素131と第5要素132との間に食い込んで係合する。
【0087】
第5要素132に連れて第2要素112も回転するが、第3要素122が被動側、第2要素112が駆動側の関係にあるので、第2ローラ123は第2要素112及び第3要素122に接触していても係合できない。一方、第3ローラ133が係合した第4要素131の回転力は、第1伝達部101、タービン30及びインペラ22を経て回転体11へ伝達される。惰性走行時、第3ローラ133は転動した後に第4要素131と第5要素132との間に食い込むので、係合時の衝撃を緩衝できる。
【0088】
トルクコンバータ100は、第1クラッチ110及び第3クラッチ130の第2要素112及び第5要素132が軸方向に並んで配置される。アクチュエータ93の作動により第2ばね138の弾性力に抗して第2要素112及び第5要素132を一体に軸方向へ移動させ、アクチュエータ93の作動を解除すると、第2ばね138の弾性力(復元力)によって第2要素112及び第5要素132を一括して移動させることができる。アクチュエータ93による軸方向の力を第2ばね138で受けるので、アクチュエータ93によるクラッチの切換機構を簡素化できる。
【0089】
第2要素112及び第5要素132が一体化されているので、第1実施の形態で説明した第1ばね81及びカム機構83を省略することができ、構造を簡素化できる。また、第2要素112及び第5要素132は、一方のクラッチのローラが係合すると他方のクラッチのローラの係合が解除される。よって、第1クラッチ110及び第3クラッチ130が同時に係合する2重噛み合いを防止できる。
【0090】
第2ローラ123は、ロックアップ時に、第2要素112に対して第3要素122が駆動するとき(力行時)に係合し、第3ローラ133は、第4要素131に対して第5要素132が駆動するとき(惰性走行時)に係合する。ロックアップ時は、第2ばね138の弾性力によって、第2要素112及び第3要素122に第2ローラ123が接触し、第4要素131及び第5要素132に第3ローラ133が接触するので、力行と惰性走行との切り換えによって瞬時にクラッチの切り換えができる。
【0091】
第3クラッチ130を入力軸2からタービン30への回転力の伝達が可能な構造とし、係合および解除を同時にできるように第2クラッチ120及び第3クラッチ130に所定のテーパ角を設定する事で、駆動力のドライブとコースト力の繰り返しによる動力の伝達経路の切換えを迅速にでき、且つ、2つのクラッチが同時に係合する2重噛み合いを防止できる。
【0092】
図8に示す惰性走行時にアクチュエータ93を作動させてシャフト91を押し込むと、規制板137により第2要素112及び第5要素132がタービン30側に近づけられる。その結果、第3ローラ133の係合が解除されて第3クラッチ130による回転力の伝達が遮断される一方、第1ローラ113が係合できる状態になり、第1クラッチ110により回転力が伝達できる状態になる。第2クラッチ120による回転力の伝達は遮断される(図6参照)。第1クラッチ110以外は入力軸2に結合されないようにできるので、エンジン(図示しない)からのトルクが入力軸2及び変速機(図示せず)に伝わらないようにできる。このようにすることでMTやAMT、DCT等のMTベースの変速機では、変速機を一旦ニュートラルレンジにして、駆動系の回転数を合せた後にシフトダウンができる。
【0093】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0094】
上記各実施の形態では、第1ローラ53,113、第2ローラ63,123、第3ローラ73,133が係合する面を単葉回転双曲面で形成し、第1ローラ53,113、第2ローラ63,123、第3ローラ73,133を円柱状にする場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。他のローラ、及び、ローラが係合する面を採用することは当然可能である。他の形態としては、例えばローラが係合する面を単葉回転双曲面で形成し、ローラを円錐状とするもの、ローラが係合する面を円錐状面とするもの、ローラが係合する面を円筒状としたり、ローラを鼓状、太鼓状や円筒状としたりするもの等が挙げられる。
【0095】
上記各実施の形態では、ケース12に封入された流体(オイル)の一部を蓄えるアキュームレータ13を設けたトルクコンバータ10,100について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、アキュームレータ13に代えて、トルクコンバータ10,100の流体(オイル)の一部を変速機(図示せず)に排出するドレーン油路を設けることは当然可能である。
【0096】
上記各実施の形態では、第3クラッチ70,130が、中心軸Oに対して傾斜するローラ(第3ローラ73,134)を係合子とするものを説明した。しかし、必ずしもこれに限られるものではなく、他の係合子や、係合子が係合する他の要素をもつ他のクラッチを採用することは当然可能である。他のクラッチとしては、係合子がカム面をもつスプラグ式、係合子が係合する要素がカム面をもつローラ式等が挙げられる。これらのクラッチの場合、係合子が係合するときにショックが発生することがあるが、自動車が惰性走行する場合の入力軸2の回転力をトルクコンバータへ入力できる。
【符号の説明】
【0097】
2 入力軸
10,100 トルクコンバータ
11 回転体
22 インペラ
30 タービン
50,110 第1クラッチ
51,111 第1要素(要素)
52,112 第2要素(要素)
53,113 第1ローラ(ローラ)
54,114 第1保持器(保持器)
60,120 第2クラッチ
61 第3要素(要素)
62 第4要素(要素)
63,123 第2ローラ(ローラ)
64,124 第2保持器(保持器)
70,130 第3クラッチ
72 第5要素(要素)
73,133 第3ローラ(ローラ)
74,134 第3保持器(保持器)
81 第1ばね
82,138 第2ばね
83 カム機構
93 アクチュエータ
122 第3要素(要素)
131 第4要素(要素)
132 第5要素(要素)
O 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8