特許第6676215号(P6676215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6676215-排気バイパス装置及び過給機 図000002
  • 特許6676215-排気バイパス装置及び過給機 図000003
  • 特許6676215-排気バイパス装置及び過給機 図000004
  • 特許6676215-排気バイパス装置及び過給機 図000005
  • 特許6676215-排気バイパス装置及び過給機 図000006
  • 特許6676215-排気バイパス装置及び過給機 図000007
  • 特許6676215-排気バイパス装置及び過給機 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676215
(24)【登録日】2020年3月13日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】排気バイパス装置及び過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/18 20060101AFI20200330BHJP
【FI】
   F02B37/18 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-508041(P2019-508041)
(86)(22)【出願日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】JP2017013340
(87)【国際公開番号】WO2018179258
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉見 壮司
(72)【発明者】
【氏名】石崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】林 慎之
(72)【発明者】
【氏名】永代 行日出
(72)【発明者】
【氏名】加藤 永護
(72)【発明者】
【氏名】▲恵▼比寿 幹
(72)【発明者】
【氏名】山口 紘
(72)【発明者】
【氏名】重田 亮治
【審査官】 家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−032067(JP,A)
【文献】 特開2003−262221(JP,A)
【文献】 特開昭58−149432(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0097345(US,A1)
【文献】 米国特許第09080504(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ロッドを軸方向に往復移動するアクチュエータと、
ハウジングに回動自在に支持される支持軸と、
一端部が前記駆動ロッドの先端部に回動自在に連結されて他端部が前記支持軸における軸方向の一端部に固定される連結リンクと、
前記支持軸における軸方向の他端部に連結されるウエストゲートバルブと、
前記ハウジングと前記連結リンクとの間に配置されて前記ハウジングに対して前記連結リンクを前記支持軸の軸方向における一方側に付勢する軸方向におけるコイル径が相違する圧縮コイルばねと、
を備え、
前記ハウジングに円筒形状をなす支持筒が固定され、前記圧縮コイルばねは、小径部が前記支持筒の径方向の外側で前記ハウジングと前記連結リンクとの間に配置され、
前記支持筒は、軸方向における一端部が前記ハウジングの端面より前記連結リンク側に突出し、前記圧縮コイルばねは、前記支持筒の外周面の外側に配置される、
ことを特徴とする排気バイパス装置。
【請求項2】
前記圧縮コイルばねは、つつみ形をなす圧縮コイルばねであることを特徴とする請求項1に記載の排気バイパス装置。
【請求項3】
前記圧縮コイルばねは、たる形をなす圧縮コイルばねであることを特徴とする請求項1に記載の排気バイパス装置。
【請求項4】
コンプレッサと、
タービンと、
前記コンプレッサと前記タービンとを同軸上に連結する回転軸と、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の排気バイパス装置と、
を備えることを特徴とする過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出された排気ガスをタービンに流動させずにバイパスさせる排気バイパス装置、並びに、この排気バイパス装置を備える過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
過給機は、コンプレッサとタービンとが回転軸により一体に回転するように連結されて構成されている。この過給機は、排気通路を流れる排ガスによりタービンが回転し、タービンの回転が回転軸により伝達されてコンプレッサが回転し、コンプレッサが空気を圧縮して吸気通路からエンジンに供給する。このような過給機において、タービンより上流側の排気通路から、このタービンをバイパスさせる排気バイパス装置(ウエストゲートバルブ)が設けられている。エンジンの排ガス量が過大のとき、ウエストゲートバルブを開放することで排ガスをタービンに供給せずに排出し、タービンの回転上昇による過給圧の過昇圧を防止することで、低負荷時の排ガス流量の作動点を上昇させ、エンジンの高出力化を図る。
【0003】
このような過給機に適用された排気バイパス装置は、空圧ベローズとばねを内蔵したアクチュエータによりレバープレートを回動し、このレバープレートの回転軸に連結されたウエストゲートバルブを開閉する構成である。そのため、ベローズへの作動流体の供給を停止した状態では、ウエストゲートバルブがばね部材のばね力によりバイパス通路を閉止しており、ベローズへ作動流体を供給すると、ウエストゲートバルブがばね部材のばね力に抗して回動してバイパス通路を開放する。
【0004】
このような排気バイパス装置は、タービンハウジングの内部に配置されることから、各構成部材が高温雰囲気化にさらされ、摺動部分が固着するおそれがある。また、アクチュエータは、吸気圧により作動するものであることから、エンジンの排気脈動により吸気圧が変動すると、ウエストゲートバルブのばたつきによる振動が発生し、摺動部分が摩耗してしまうおそれがある。このような問題を解決するものとして、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−129520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載された内燃機関の排気装置は、スクロール切替弁のバルブの回転軸であるシャフトを円筒状のブッシュにより回転可能に支持し、ブッシュのガスシール面をシャフトの軸受座面に押し付ける側に付勢する付勢力を発生するコイルばねを設けたものである。ところで、エンジンの排気脈動によるウエストゲートバルブのばたつきによる振動の発生を防止するには、コイルばねは、所定の大きさの押付け荷重が必要となる。コイルばねの押付け荷重を上げるためには、線径を大きくしたり、巻数を増やしたりする必要があり、コイルばねの大型化を招いてしまう。コイルばねの大型化は、排気バイパス装置の大型化を招いてしまい、大きな配置スペースが必要となってしまう。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、ウエストゲートバルブの良好な作動を確保すると共に作動部における摩耗の低減を可能として信頼性の向上を図る排気バイパス装置及び過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の排気バイパス装置は、駆動ロッドを軸方向に往復移動するアクチュエータと、ハウジングに回動自在に支持される支持軸と、一端部が前記駆動ロッドの先端部に回動自在に連結されて他端部が前記支持軸における軸方向の一端部に固定される連結リンクと、前記支持軸における軸方向の他端部に連結されるウエストゲートバルブと、前記ハウジングと前記連結リンクとの間に配置されて軸方向におけるコイル径が相違する圧縮コイルばねと、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
従って、アクチュエータの駆動ロッドを駆動すると、その駆動力が連結リンクに伝達され、連結リンクが支持軸を中心に回動し、ウエストゲートバルブを開閉する。このとき、圧縮コイルばねが付勢力によりハウジングに対して連結リンクを軸方向に押圧することから、排気脈動による連結リンクの振動が抑制される。そのため、ウエストゲートバルブの良好な作動を確保すると共にハウジングと支持軸との摺動部における摩耗を低減して信頼性の向上を図ることができる。また、軸方向におけるコイル径が相違する圧縮コイルばねを用いることで、収縮時にコイルが径方向にずれることから、線径を大きくすることが可能となり、連結リンクに対する付勢力を増加して連結リンクの振動を効果的に抑制することができる。更に、圧縮コイルばねの線径を大きくしても、全長が長くなることが抑制され、装置の大型化を抑制することができる。
【0010】
本発明の排気バイパス装置では、前記圧縮コイルばねは、つつみ形をなす圧縮コイルばねであることを特徴としている。
【0011】
従って、ハウジングと連結リンクとの間につつみ形をなす圧縮コイルばねを配置することで、圧縮コイルばねの各座部におけるコイル径が軸方向の中間部におけるコイル径より大きくなる。すると、圧縮コイルばねは、中心位置から各座部とハウジング及び連結リンクとの接触位置までの長さが長くなり、ハウジング及び連結リンクに対する押圧力を増加させることができる。
【0012】
本発明の排気バイパス装置では、前記圧縮コイルばねは、たる形をなす圧縮コイルばねであることを特徴としている。
【0013】
従って、ハウジングと連結リンクとの間にたる形をなす圧縮コイルばねを配置することで、線径を大きくすることで連結リンクに対する付勢力を増加して連結リンクの振動を効果的に抑制することができる一方で、装置の大型化を抑制することができる。
【0014】
本発明の排気バイパス装置では、前記ハウジングに円筒形状をなす支持筒が固定され、前記圧縮コイルばねは、前記支持筒の径方向の外側で前記ハウジングと前記連結リンクとの間に配置されることを特徴としている。
【0015】
従って、圧縮コイルばねを支持筒の径方向の外側に配置することで、支持軸と圧縮コイルばねとの干渉を抑制することができる。
【0016】
本発明の排気バイパス装置では、前記支持筒は、軸方向における一端部が前記ハウジングの端面より前記連結リンク側に突出し、前記圧縮コイルばねは、前記支持筒の外周面の外側に配置されることを特徴としている。
【0017】
従って、圧縮コイルばねを支持筒の外周面の外側に配置することで、支持軸と圧縮コイルばねとの間に支持筒が位置することとなり、支持軸と圧縮コイルばねとの干渉を効果的に抑制することができる。
【0018】
また、本発明の過給機は、コンプレッサと、タービンと、前記コンプレッサと前記タービンとを同軸上に連結する回転軸と、前記排気バイパス装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0019】
従って、過給機の作動時に、ウエストゲートバルブを開閉すると、圧縮コイルばねが付勢力によりハウジングに対して連結リンクを軸方向に押圧することから、排気脈動による連結リンクの振動が抑制される。そのため、ウエストゲートバルブの良好な作動を確保すると共にハウジングと支持軸との摺動部における摩耗を低減して信頼性の向上を図ることができる。また、軸方向におけるコイル径が相違する圧縮コイルばねを用いることで、収縮時にコイルが径方向にずれることから、線径を大きくすることが可能となり、連結リンクに対する付勢力を増加して連結リンクの振動を効果的に抑制することができる。更に、圧縮コイルばねの線径を大きくしても、全長が長くなることが抑制され、装置の大型化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の排気バイパス装置及び過給機によれば、ウエストゲートバルブの良好な作動を確保すると共に作動部における摩耗の低減を可能として信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、第1実施形態の排気バイパス装置が適用されるエンジンを表す概略構成図である。
図2図2は、排気バイパス装置の全体構成を表す斜視図である。
図3図3は、排気バイパス装置における支持軸の位置での縦断面図である。
図4図4は、つつみ形をなす圧縮コイルばねを表す正面図である。
図5図5は、圧縮コイルばねの組付け方法を表す断面図である。
図6図6は、第2実施形態の排気バイパス装置における支持軸の位置での縦断面図である。
図7図7は、たるをなす圧縮コイルばねを表す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る排気バイパス装置及び過給機の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0023】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の排気バイパス装置が適用されるエンジンを表す概略構成図である。
【0024】
第1実施形態において、図1に示すように、エンジン10は、多気筒式の内燃機関である。シリンダブロック上にシリンダヘッドが締結されて構成されるエンジン本体11は、複数のシリンダボア12が設けられ、各シリンダボア12にシリンダライナ(図示略)を介してピストン13がそれぞれ上下移動自在に支持されている。エンジン本体11は、図示しないが、下部にクランクシャフトが回転自在に支持されており、各ピストン13がコネクティングロッド14を介してクランクシャフトにそれぞれ連結されている。
【0025】
燃焼室15は、シリンダボア12の壁面及び下面とピストン13の頂面とにより区画されて構成されている。燃焼室15は、上方、つまり、エンジン本体11に吸気ポート16及び排気ポート17が並んで形成されており、吸気ポート16及び排気ポート17に対して吸気弁18及び排気弁19の下端部がそれぞれ位置している。この吸気弁18及び排気弁19は、エンジン本体11に軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、吸気ポート16及び排気ポート17を閉止する方向(図1にて上方)に付勢支持されている。吸気弁18及び排気弁19は、図示しない吸気カムシャフト及び排気カムシャフトの吸気カム及び排気カムが作用することで、吸気ポート16及び排気ポート17を開閉することができる。また、燃焼室15は、上方、つまり、エンジン本体11に燃料噴射弁20が設けられている。燃料噴射弁20は、燃焼室15に高圧燃料を噴射することができる。
【0026】
従って、エンジン10は、クランクシャフトが2回転する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の4行程を実行することとなり、このとき、吸気カムシャフト及び排気カムシャフトが1回転し、吸気弁18及び排気弁19が吸気ポート16及び排気ポート17を開閉することとなる。
【0027】
エンジン本体11は、吸気ポート16に吸気通路21が連結され、排気ポート17に排気通路22が連結されている。過給機23は、コンプレッサ24とタービン25とが回転軸26により一体に回転するように連結されて構成されている。この過給機23は、エンジン本体11の排気通路22を流れる排ガスによりタービン25が回転し、タービン25の回転が回転軸26により伝達されてコンプレッサ24が回転し、このコンプレッサ24が空気を圧縮して吸気通路21からエンジン本体11に供給する。また、吸気通路21にインタークーラ27が装着されている。
【0028】
排気通路22は、タービン25の装着位置に対応して排気バイパス装置28が設けられている。排気通路22は、タービン25より排ガスの流れ方向の上流側の位置から分岐し、タービン25より排ガスの流れ方向の下流側の位置に接続されるバイパス通路29が設けられている。作動通路30は、一端部が吸気通路21におけるコンプレッサ24とインタークーラ27の間に連結され、他端部が排気バイパス装置28のアクチュエータに連結されている。なお、図示しないが、作動通路30は、三方電磁弁が設けられており、アクチュエータと吸気通路21を連通している時間と、アクチュエータと大気を連通している時間を交互に切り替え、また、その時間の 比率を変えることで、アクチュエータ内部の圧力を吸気圧力と大気圧との間の任意の圧力に設定できる。そのため、排気バイパス装置28は、吸気通路21における吸気圧によりバイパス通路29を開閉することで、タービン25のバイパスする排ガス量、つまり、タービン25に供給する排ガス量を調整することができる。
【0029】
そのため、エンジン本体11は、吸気通路21から燃焼室15に空気が供給されると、ピストン13の上昇によりこの空気が圧縮され、燃料噴射弁20から燃焼室15に高圧燃料が噴射されると、この高圧燃料が着火して燃焼する。そして、発生した燃焼ガスは、排ガスとして排気通路22に排出される。燃焼室15から排出された排ガスは、過給機23におけるタービン25を回転させることで、回転軸26を介してコンプレッサ24を回転し、燃焼室15に対して過給を行う。また、排気バイパス装置28によりバイパス通路29が開放されると、排ガスは、このバイパス通路29を通ることでタービン25を迂回する。
【0030】
ここで、排気バイパス装置28について説明する。図2は、排気バイパス装置の全体構成を表す斜視図である。
【0031】
排気バイパス装置28は、図2に示すように、アクチュエータ31と、連結ロッド32と、連結リンク33と、支持軸34と、支持筒(ブッシュ)35と、ウエストゲートバルブ36とを備えている。
【0032】
アクチュエータ31は、駆動ロッド41が設けられ、吸気圧に応じてこの駆動ロッド41を軸方向に往復移動するものである。アクチュエータ31は、図示しないが、内部に仕切弁により2部屋に区画され、この仕切弁に駆動ロッド41の基端部が連結されている。仕切弁は、一方の部屋に収容されたばねの付勢力により駆動ロッド41が引き込まれる方向(図2にて、右方向)に付勢されている。また、他方の部屋に吸気圧を作用させる作動管42(作動通路30)が連結されている。そのため、アクチュエータ31は、仕切弁に作用するばねの付勢力により駆動ロッド41が引き込まれた位置で停止している。そして、作動管42を通して他方の部屋に吸気圧が作用すると、仕切弁がばねの付勢力に抗して移動し、仕切弁と一体の駆動ロッド41が突出する方向に移動する。
【0033】
駆動ロッド41は、先端部に連結部43を介して連結ロッド32の基端部が連結されている。駆動ロッド41と連結部43と連結ロッド32は、ほぼ一直線上に配置されている。この連結ロッド32は、先端部に連結孔44が形成された連結リング部45が設けられている。
【0034】
支持軸34は、円柱形状をなし、ハウジング46(図3参照)に固定された円筒形状をなす支持筒35に回動自在に支持されている。支持軸34の外周面と支持筒35の内周面との間には、支持筒35に対して支持軸34が回動することができる程度の隙間が確保されている。
【0035】
連結リンク33は、所定厚さの板形状をなし、平面視が長円形状をなしている。連結リンク33は、一端部に連結軸47が一体に形成され、この連結軸47が連結ロッド32の連結リング部45に設けられた連結孔44に嵌合し、互いに回動自在に連結されている。そして、連結軸47は、連結リング部45より軸方向に先端側に係止ピン48が係止することで、連結リング部45の連結孔44に対する連結軸47の抜け止めがなされている。また、連結リンク33は、他端部が支持軸34における軸方向の一端部に固定されている。そして、ウエストゲートバルブ36は、支持軸34における軸方向の他端部に固定されている。そのため、連結リンク33とウエストゲートバルブ36は、支持軸34を中心に回動することができる。
【0036】
この場合、駆動ロッド41と連結部43と連結ロッド32の長手方向(直線方向)と、支持軸34の軸方向は、ほぼ直交する方向に配置されている。また、連結リンク33における連結軸47の軸方向と、支持軸34の軸方向は、ほぼ平行となる方向に配置されている。
【0037】
そのため、アクチュエータ31を作動すると、駆動ロッド41が突出する軸方向に移動し、連結部43を介して連結ロッド32が同方向に移動する。連結ロッド32が長手方向に移動すると、連結ロッド32と連結リンク33が相対回動し、連結リンク33は、支持軸34と共にこの支持軸34を中心に回動する。そして、支持軸34が回動すると、支持軸34に一体に設けられたウエストゲートバルブ36が移動し、閉止位置から開放位置へ変位する。
【0038】
本実施形態の排気バイパス装置28は、ハウジング46と連結リンク33との間に圧縮コイルばねが配置されている。図3は、排気バイパス装置における支持軸の位置での縦断面図、図4は、つつみ形をなす圧縮コイルばねを表す正面図である。
【0039】
図3に示すように、ハウジング46は、取付孔51に支持筒35が固定されている。支持軸34は、この支持筒35に嵌入して回動自在に支持されている。また、支持軸34は、軸方向における一端部に同心状をなして延出する連結ピン52が一体に設けられている。この連結ピン52は、外径が支持軸34の外径より小径となっている。一方、連結リンク33は、取付孔53が形成されている。そして、支持軸34の連結ピン52が連結リンク33の取付孔53に嵌入し、溶接されている。即ち、支持軸34は、連結ピン52が連結リンク33の取付孔53を嵌入したその先端部に溶接部54が形成されることで、支持軸34における軸方向の一端部に連結リンク33の端部が固定されることとなる。
【0040】
図4に示すように、圧縮コイルばね61は、つつみ形をなすことで、軸方向におけるコイル径が相違している。圧縮コイルばね61は、軸方向の一方側に座部62が設けられ、軸方向の他方側に座部63が設けられ、各座部62,63は、コイル径D1,D2が同径となっている。また、圧縮コイルばね61は、軸方向における中間部に小径部64が設けられ、小径部64のコイル径D3が各座部62,63のコイル径D1,D2より小径となっている。また、圧縮コイルばね61は、線径dがコイルの長手方向で同径となっている。
【0041】
図3に示すように、つつみ形をなす圧縮コイルばね61は、ハウジング46と連結リンク33との間に配置されている。圧縮コイルばね61は、座部62がハウジング46端面46aに接触し、座部63が連結リンク33の下面側の平面部33aに接触している。
【0042】
この場合、ハウジング46に支持筒35が固定され、圧縮コイルばね61は、この支持筒35の径方向の外側でハウジング46と連結リンク33との間に配置されている。また、支持筒35は、軸方向における一端部(図3の上端部)35aがハウジング46の端面46aより連結リンク33側に突出し、圧縮コイルばね61は、支持筒35の外周面より外側に配置されている。
【0043】
上述した構成により、連結リンク33は、ハウジング46に対して圧縮コイルばね61の付勢力により支持軸34の軸方向における一方側に付勢支持されることとなる。このとき、圧縮コイルばね61は、座部62がハウジング46の端面46aに押圧し、座部63が連結リンク33の平面部33aに押圧している。そのため、連結リンク33は、圧縮コイルばね61の付勢力によりハウジング46に対してその回動方向における位置が拘束されることとなる。即ち、連結リンク33は、回動するとき、圧縮コイルばね61の各座部62,63とハウジング46の端面46a及び連結リンク33の平面部33aとの摩擦抵抗や圧縮コイルばね61の付勢力に打ち勝って回動することとなる。その結果、排気脈動によりウエストゲートバルブ36(図2参照)が振動しようとしても、連結リンク33は、その位置が圧縮コイルばね61により保持されているために振動することが抑制され、連結ロッド32と連結リンク33との摺動部、また、支持軸34と支持筒35との摺動部における摩耗の発生が抑制される。
【0044】
ここで、圧縮コイルばね61の組付け方法について説明する。図5は、圧縮コイルばねの組付け方法を表す断面図である。
【0045】
図5に示すように、まず、ハウジング46に固定された支持筒35に支持軸34を挿入し、支持筒35の外周側に圧縮コイルばね61を配置する。次に、押え治具71を用いて圧縮コイルばね61を収縮させる。この押え治具71は、治具本体72の先端部に二股形状をなす押え部73が設けられて構成されている。つまり、作業ロボットまたは作業者が押え治具71の治具本体72を保持し、二股形状(U字形状)をなす押え部73により圧縮コイルばね61をハウジング46側に押付けて収縮させる。そして、支持軸34の連結ピン52に連結リンク33の取付孔53を嵌入する。このとき、連結リンク33と圧縮コイルばね61との間に押え治具71が位置することとなる。この状態で、溶接装置(図示略)により連結ピン52の先端部と連結リンク33とを溶接する。すると、図3に示すように、連結ピン52の先端部に溶接部54が形成され、支持軸34と連結リンク33が一体に連結されて固定される。その後、連結リンク33と圧縮コイルばね61との間から押え治具71を抜き取る。
【0046】
この溶接作業時に、押え治具71が連結リンク33と圧縮コイルばね61との間に位置することから、溶接装置が連結ピン52の先端部と連結リンク33とを溶接するとき、溶接による入熱が圧縮コイルばね61に作用することがなく、圧縮コイルばね61の変形が防止される。
【0047】
このように第1実施形態の排気バイパス装置にあっては、駆動ロッド41を軸方向に往復移動するアクチュエータ31と、ハウジング46に回動自在に支持される支持軸34と、一端部が駆動ロッド41の先端部に回動自在に連結されて他端部が支持軸34における軸方向の一端部に固定される連結リンク33と、支持軸34における軸方向の他端部に連結されるウエストゲートバルブ36と、ハウジング46と連結リンク33との間に配置されて軸方向におけるコイル径が相違する圧縮コイルばね61とを設けている。
【0048】
従って、圧縮コイルばね61がその付勢力によりハウジング46に対して連結リンク33を軸方向に押圧することから、排気脈動による連結リンク33の振動を抑制することができる。そのため、ウエストゲートバルブ36の良好な作動を確保することができると共に、ハウジング46と支持軸34との摺動部における摩耗を低減して信頼性の向上を図ることができる。
【0049】
また、軸方向におけるコイル径が相違する圧縮コイルばね61を用いることで、圧縮コイルばね61の収縮時にコイルが径方向にずれることから、収縮時における全長が短くなり、線径を大きくすることが可能となる。圧縮コイルばね61は、線径が大きくなると、バネ定数が大きくなり、付勢力が大きくなることから、連結リンク33に対する押圧力を増加して摩擦抵抗を大きくすることができ、連結リンク33の振動を効果的に抑制することができる。更に、圧縮コイルばね61の線径を大きくしても、全長が長くなることが抑制され、装置の大型化を抑制することができる。
【0050】
第1実施形態の排気バイパス装置では、圧縮コイルばねとして、つつみ形をなす圧縮コイルばね61を適用する。従って、ハウジング46と連結リンク33との間につつみ形をなす圧縮コイルばね61を配置することで、圧縮コイルばね61の各座部62,63におけるコイル径が、軸方向の中間部におけるコイル径より大きくなる。すると、圧縮コイルばね61は、中心位置から各座部62,63とハウジング46及び連結リンク33との接触位置までの長さが長くなり、ハウジング46及び連結リンク33に対する押圧力を増加させることができる。
【0051】
第1実施形態の排気バイパス装置では、ハウジング46に支持筒35が固定し、圧縮コイルばね61を支持筒35の径方向の外側でハウジング46と連結リンク33との間に配置している。従って、支持軸34と圧縮コイルばね61との干渉を抑制することができる。
【0052】
第1実施形態の排気バイパス装置では、支持筒35の軸方向における一端部35aをハウジング46の端面46aより連結リンク33側に突出し、圧縮コイルばね61を支持筒35の外周面の外側に配置している。従って、支持軸34と圧縮コイルばね61との間に支持筒35が位置することとなり、支持軸34と圧縮コイルばね61との干渉を効果的に抑制することができる。
【0053】
また、第1実施形態の過給機にあっては、コンプレッサ24と、タービン25と、コンプレッサ24とタービン25とを同軸上に連結する回転軸26と、排気バイパス装置28とを設けている。従って、過給機23の作動時に、ウエストゲートバルブ36を開閉すると、圧縮コイルばね61が付勢力によりハウジング46に対して連結リンク33を軸方向に押圧することから、排気脈動による連結リンク33の振動を抑制することができる。そのため、ウエストゲートバルブ36の良好な作動を確保することができると共に、ハウジング46と支持軸34との摺動部における摩耗を低減して信頼性の向上を図ることができる。
【0054】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態の排気バイパス装置における支持軸の位置での縦断面図、図7は、たるをなす圧縮コイルばねを表す正面図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0055】
第2実施形態において、図6に示すように、排気バイパス装置は、ハウジング46と連結リンク33との間に圧縮コイルばね81が配置されている。
【0056】
図7に示すように、圧縮コイルばね81は、たる形をなすことで、軸方向におけるコイル径が相違している。圧縮コイルばね81は、軸方向の一方側に座部82が設けられ、軸方向の他方側に座部83が設けられ、各座部82,83は、コイル径D11,D12が同径となっている。また、圧縮コイルばね81は、軸方向における中間部に大径部84が設けられ、大径部84のコイル径D13が各座部82,83のコイル径D11,D12より大径となっている。また、圧縮コイルばね81は、線径dがコイルの長手方向で同径となっている。
【0057】
図6に示すように、たる形をなす圧縮コイルばね81は、ハウジング46と連結リンク33との間に配置されている。圧縮コイルばね81は、座部82がハウジング46の端面46aに接触し、座部83が連結リンク33の下面側の平面部33aに接触している。
【0058】
この場合、ハウジング46に支持筒35が固定され、圧縮コイルばね81は、この支持筒35の径方向の外側でハウジング46と連結リンク33との間に配置されている。また、支持筒35は、軸方向における一端部(図6の上端部)35aがハウジング46の端面46aより連結リンク33側に突出し、圧縮コイルばね81は、支持筒35の外周面より外側に配置されている。
【0059】
上述した構成により、連結リンク33は、ハウジング46に対して圧縮コイルばね81の付勢力により支持軸34の軸方向における一方側に付勢支持されることとなる。このとき、圧縮コイルばね81は、座部82がハウジング46の端面46aに押圧し、座部83が連結リンク33の平面部33aに押圧している。そのため、連結リンク33は、圧縮コイルばね81の付勢力によりハウジング46に対してその回動方向における位置が拘束されることとなる。即ち、連結リンク33は、回動するとき、圧縮コイルばね81の各座部82,83とハウジング46の端面46a及び連結リンク33の平面部33aとの摩擦抵抗や圧縮コイルばね81の付勢力に打ち勝って回動することとなる。その結果、排気脈動によりウエストゲートバルブ36(図2参照)が振動しようとしても、連結リンク33は、その位置が圧縮コイルばね81により保持されているために振動することが抑制され、連結ロッド32と連結リンク33との摺動部、また、支持軸34と支持筒35との摺動部における摩耗の発生が抑制される。
【0060】
このように第2実施形態の排気バイパス装置にあっては、ハウジング46と連結リンク33との間にたる形をなす圧縮コイルばね81が配置されている。
【0061】
従って、圧縮コイルばね81の収縮時にコイルが径方向にずれることから、収縮時における全長が短くなり、線径を大きくすることが可能となり、連結リンク33に対する付勢力を増加して連結リンク33の振動を効果的に抑制することができる。更に、圧縮コイルばね81の線径を大きくしても、全長が長くなることが抑制され、装置の大型化を抑制することができる。
【0062】
なお、上述した実施形態では、軸方向におけるコイル径が相違する圧縮コイルばねとして、つつみ形をなす圧縮コイルばね61とたる形をなす圧縮コイルばね81を適用したが、この構成に限定されるものではない。例えば、円錐台形状や逆円錐台形状をなす圧縮コイルばねを適用してもよい。
【0063】
また、上述した実施形態では、ハウジング46に支持筒35を固定し、支持軸34をこの支持筒35に回動自在に支持したが、ハウジング46に直接支持孔を形成し、支持軸34をこの支持孔に回動自在に支持してもよい。
【0064】
また、上述した実施形態では、駆動ロッド41の先端部に連結ロッド32を連結し、連結ロッド32の先端部と連結リンク33の一端部を回動自在に連結したが、駆動ロッド41の先端部と連結リンク33の一端部を直接回動自在に連結してもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 エンジン
11 エンジン本体
13 ピストン
15 燃焼室
21 吸気通路
22 排気通路
23 過給機
24 コンプレッサ
25 タービン
26 回転軸
28 排気バイパス装置
29 バイパス通路
30 作動通路
31 アクチュエータ
32 連結ロッド
33 連結リンク
34 支持軸
35 支持筒
36 ウエストゲートバルブ
41 駆動ロッド
45 連結リング部
46 ハウジング
47 連結軸
48 係止ピン
54 溶接部
61,81 圧縮コイルばね
62,63,82,83 座部
64 小径部
71 押え治具
84 大径部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7