【実施例】
【0009】
〔実施例1〕
図1に示す実施例1に係る住戸の間取り構造は、2LDKの間取りとして構成した例である。住戸1の間口は約5mである。専有面積は約60m
2である。建物の桁行方向に連続配置された複数の住戸のうちの一の住戸1を示している。隣接する住戸の個々の間取りは必ずしもすべて同一である必要はない。
住戸1の一側には共用廊下2が配置され、他側にはバルコニー3が配置されている。符号4は柱、符号5,6は戸境壁である。住戸1の奥行き方向に延びる戸境壁5,6は、対向して配置され、それぞれ共用廊下2とバルコニー3との間で直線的に延び、柱4に接続している。柱4はすべて住戸1の外側に配置されており、住戸1内には柱型及び梁型が突出しない。
【0010】
共用廊下2に直に接続するように玄関10が設けられている。玄関10は住戸1の間口方向の中央部に配置されている。玄関10はバルコニー3と住戸の奥行き方向において対向する位置関係にある。
共用廊下2とバルコニー3との間で、玄関10、個室20,21、共用室30が、夫々、共用廊下2からバルコニー3に向けて順に配置されている。
【0011】
玄関10の左右両側に、二つの個室20,21が夫々、直に接続されている。玄関10の玄関ホール10aから各個室20,21へ直接に入室する。出入口には引き戸又はドアが設けられる。玄関ホール10aの正面には下足入兼物入10bが設けられている。
個室20と個室21とは、間口方向において互いに隣接するように配置されており、各個室20,21間を貫くような、バルコニー3側へ帯状に延びる廊下は存在しない。個室20と個室21との境界部にはクローゼット(収納部)Cが設けられている。各個室20,21の広さは6帖程度である。
このように、共用廊下2から玄関10を入るとすぐに個室20,21へ入るようになっているため、各個室20,21の使用者は、他の居住者に気兼ねせずに自室を出入りすることができ、プライバシーが尊重されている。
【0012】
個室20,21のバルコニー3側には、バルコニー3に面する一つの共用室30が直に接続されている。個室20,21に夫々設けられた出入口20a,21aから共用室30へ入る。
玄関10から直に共用室30へと繋がる共用廊下は存在しない。個室20,21を、玄関10と共用室30とを繋ぐ移動空間として兼用し、各個室20,21は廊下としての機能を併有しており、玄関10と共用室30との行き来は専ら個室20,21を経由する。このため、廊下が不要となる分、居室率や収納率を向上させることができる。
【0013】
共用室30は、本実施例ではLDKとして構成されている。
共用室30には、流し台、調理台、コンロ台を含むI型のシステムキッチン(キッチン台)40が、共用室30の個室20,21側寄りに、住戸1の間口方向に延びるように、かつ、該システムキッチン40の背面側と、複数の個室20,21の共用室への出入口20a,21aとの間に間口方向に細長く延びる緩衝空間Sが生成するように、アイラインドキッチン状に配置されている。
緩衝空間Sの領域を散点ハッチングで示している。緩衝空間Sの幅は、例えば0.9〜1.2m程度である。
共用室30の一部には、共用設備として使用される洗面所50、浴室60及びトイレ70が配置されている。符号80は洗濯機置き場である。
【0014】
上記のようにI型のシステムキッチン40を配置することにより、システムキッチン40が一種の腰壁ないしパーティションのように機能し、システムキッチン40の背面側に、個室20,21と共用室30という
本来的に個性が異質な空間
の個性を中和するように作用する緩衝空間(溜まり空間)Sが存在する。このため、個室20,21から共用室30の空間へ進入する前に共用室30の状況を確認してから次の行動をとる(共用室へ進入するか否か)こと等がしやすくなる。
【0015】
〔実施例2〕
図2は、実施例2に係る住戸の間取り構造を示すものであり、3LDKの間取りとして構成した例を示すものである。実施例1と共通する構成要素については、同一の符号を付してある。また、主に実施例1との相違点について以下説明し、基本的な構成及び構成要素において実施例1と共通する点についてはその説明を適宜省略する。
図2に示す実施例2に係る間取り構造において、住戸1の間口は約6mである。専有面積は約72m
2である。建物の桁行方向に連続配置された複数の住戸のうちの一の住戸1を示している。
【0016】
実施例1と同様に住戸1の一側には共用廊下2が配置され、他側にはバルコニー3が配置されている。
共用廊下2とバルコニー3との間で、玄関10、三つの個室20,21,22、共用室30が、夫々、共用廊下2からバルコニー3に向けて順に配置されている。
この実施例2では、玄関10に、三つの個室20,21,22が夫々、直に接続されており、玄関10の玄関ホール10aから各個室20,21,22へ直接に入室する。玄関10からバルコニー3側へ帯状に延びる廊下は存在しない。
個室20と個室21と個室22は、間口方向において順次隣接するように配置されており、各個室の境界部にはクローゼット(収納部)Cが設けられている。
【0017】
LDKとして構成された共用室30には、流し台、調理台、コンロ台を含むI型のシステムキッチン(キッチン台)40が、共用室30の個室20,21,22側寄りに、住戸1の間口方向に延びるように、かつ、該システムキッチン40の背面側と、複数の個室20,21,22の共用室への出入口20a,21a,22aとの間に間口方向に細長く延びる緩衝空間Sが生成するように、アイランドキッチン状に配置されている。
緩衝空間Sは、住戸1の間口方向の全幅にわたって設けられている。個室20の出入口20aと緩衝空間Sを隔てて対向する位置にトイレ70が配置され、個室21の出入口21aと緩衝空間Sを隔てて対向する位置にシステムキッチン40が配置され、個室22の出入口22aと緩衝空間Sを隔てて対向する位置に洗濯機置き場80が配置されており、緩衝空間Sの存在を際立たせている。
【0018】
以上説明した発明を実施するための形態に係る構成によれば、従来の一般的な間取り構造にある廊下がなく、玄関10と共用室30との行き来は、廊下を経由することなく、専ら複数の居室20,21(,22)を経由することとなる。これにより廊下が不要となる分、居室率を向上し、高効率な間取りを実現することができる。
具体的には、廊下を備えた従来の間取りに対して、約10%居室率を向上させることができる。
【0019】
以上、発明を実施するための形態を説明したが、本発明は上記したものに限定されず、本発明の要旨の範囲で適宜、付加、変更等なし得るものである。
本発明に係る住戸の間取り構造における建物は、ラーメン構造、耐震壁構造、制振壁構造、ブレス構造、その他適宜選択して構築し得るものであり、限定されるものではない。また、建物の構造種別は、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨コンクリート造(SC造)が一般的であるが、これらの構造種別に限定されるものではなく、他のものでもよい。また、板状の集合住宅に限定されるものではなく、平面視L字形の建物その他にも適用することができる。ルームシェア用の住戸として特に有用である。事務所等としての使用も可能である。なお、複数の個室の境界部分を将来的に撤去して間取りを変更する等のリフォームも可能である。