特許第6676295号(P6676295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676295
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】自動ドア制御システム及び測距装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/74 20150101AFI20200330BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   E05F15/74
   G01C3/06 120Q
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-132365(P2015-132365)
(22)【出願日】2015年7月1日
(65)【公開番号】特開2017-14801(P2017-14801A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000242600
【氏名又は名称】北陽電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501013156
【氏名又は名称】フルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】百鳥 達裕
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−112060(JP,A)
【文献】 特開2014−142288(JP,A)
【文献】 特開2009−265017(JP,A)
【文献】 特開2013−061273(JP,A)
【文献】 米国特許第04967083(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定光を走査して当該測定光が照射された物体からの反射光を検出することにより当該物体の方向及び距離を算出する測距装置が組み込まれドアの内側監視領域の移動体を検知する屋内センサと、前記ドアの外側監視領域の物体を検知する屋外センサと、前記ドアを開閉する開閉制御部と、を備えている自動ドア制御システムであって、
前記ドアの内側監視領域は予め設定された複数の異なる領域を含み、
前記開閉制御部による前記ドアの制御状態及び前記屋外センサによる物体の有無情報に基づいて、前記複数の異なる領域に対して個別に有効または無効に切り替えるとともに、前記複数の異なる領域の有効または無効状態、前記屋内センサにより検出される前記ドアの内側監視領域における移動体の動きを表す挙動情報及び前記屋外センサにより検出される物体の有無情報と前記開閉制御部による前記ドアの制御状態に基づいて前記ドアの開放または閉鎖を判断する開閉判断部を前記屋内センサに備え、
前記開閉制御部は前記開閉判断部から送信された開閉制御信号に基づいて前記ドアを開閉制御するように構成されている自動ドア制御システム。
【請求項2】
前記ドアの内側監視領域を構成する前記複数の異なる領域は、少なくとも一部の領域の重複が許容される請求項1記載の自動ドア制御システム。
【請求項3】
前記ドアの内側監視領域には、少なくとも、移動体を検知したときに前記ドアを開放するドア内側近接領域と、移動体を検知しても前記ドアの開放を禁止するドア内側悪戯検知領域と、前記ドア内側悪戯検知領域を囲み移動体を検知したときに前記ドアを開放する帯状領域と、が設定され、
前記開閉判断部は、前記ドア内側近接領域を有効に設定するとともに前記ドア内側悪戯検知領域及び前記帯状領域を無効に設定するか、前記ドア内側近接領域を無効に設定するとともに前記ドア内側悪戯検知領域及び前記帯状領域を有効にするかを切り替えるように構成されている請求項2記載の自動ドア制御システム。
【請求項4】
前記開閉判断部は前記測距装置で算出された物体の方向及び距離に基づいて求まる物体の移動方向及び/または物体の移動速度を含む物体の挙動に基づいて前記開閉制御信号を出力する請求項1から3の何れかに記載の自動ドア制御システム。
【請求項5】
前記開閉制御信号は前記ドアの開放速度及び開放幅が含まれる請求項1から4の何れかに記載の自動ドア制御システム。
【請求項6】
各センサ及び前記開閉制御部と通信可能に接続された通信制御部を備え、
監視領域及び前記開閉制御信号の初期値を設定する外部機器と接続可能なインタフェースを前記通信制御部に備えている請求項1から5の何れかに記載の自動ドア制御システム。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の自動ドア制御システムの屋内センサまたは屋外センサに用いられる測距装置であって、
測定光を監視領域に三次元的に走査して当該測定光が照射された物体からの反射光を検出することにより当該監視領域に存在する物体の方向及び距離を算出する測距部と、
前記測距部による移動体の検出結果と前記開閉制御部の制御状態に基づいて前記ドアの開放または閉鎖を判断して前記開閉制御部に前記開閉制御信号を出力する開閉判断部とを備えている測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアの内側監視領域の移動体を検知する屋内センサと、ドアの外側監視領域の物体を検知する屋外センサと、ドアを開閉する開閉制御部と、を備えている自動ドア制御システム及び当該ドア制御システムに用いられる測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入室管理機能を備えたドア開閉システムにおいて、入室許可を受けていない部外者が、外部側からドアの周辺のすきまを通して長尺物等を内部に挿入し、内部検知センサをオンさせてドアを開き、内部へ不正入室するという不正行為を排除することを目的とした自動ドアの開閉装置が提案されている。
【0003】
当該自動ドアの開閉装置は、ドアの外部から内部へと入室する人が入室許可者であるか否かを判定する入室許可判定手段と、ドアの内部から外部へと退室する人を検知する内部検知センサと、入室許可判定手段が人の入室を許可したとき、あるいは内部検知センサが人を検知したときにドアを開く入室管理機能を備え、内部検知センサの検知エリアがドアに沿って形成され、ドア近傍の人を検知する存在検知エリアと、その存在検知エリアよりも前記ドアから離れた内部側に形成されドアに接近する人を検知する接近検知エリアとからなり、ドアが閉じ位置にあるときドアにより近い存在検知エリアを無効とするように構成されている。
【0004】
内部検知センサは、内部に投光素子と受光素子とからなる一対の素子のセットを区分けされた複数の監視エリアの数に対応する数だけ備えた床面反射タイプの光反射センサで構成され、区分けされた各監視エリアの床面からの反射光量が低下すると対応する監視エリアに人が進入したと検知される。
【0005】
また、特許文献2には、ドアの屋内と屋外に配置されて物体からの検知波を検知する屋内外のセンサと、センサの検知に基づいてドアの開閉を制御する開閉制御部とを備え、屋内センサはドアに近いドア近傍検知エリアとドアから離れたドア遠方検知エリアとを有し、開閉制御部は、ドア閉時に屋外センサが検知状態のときに屋内センサがそのドア近傍検知エリアで物体を検知したとき、ドア閉を維持する閉維持手段と、ドア閉時に屋外センサが検知状態のときに屋内センサがそのドア遠方検知エリアで物体を検知したとき、ドアを開作動させる開作動手段と、を備えている自動ドア開閉装置が提案されている。
【0006】
屋内外のセンサは、近赤外線を投光して物体から反射した近赤外線を受光して物体を検出するAIR方式のセンサであり、特許文献1と同様に内部に投光素子と受光素子とからなる一対の素子のセットを区分けされた複数の監視エリアの数に対応する数だけ備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3682743号公報
【特許文献2】特許第3811724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述したような投光素子及び受光素子の対を分割された監視領域に対応する数だけ備える場合に、検出精度を上げるために監視領域を増やすと素子対の数が増えてセンサが大型になるという問題や、一つのセンサに組み込むことが可能な投光素子及び受光素子の対の数が物理的に制限されるため、分割された監視領域の大きさにも制限が生じ、あまり細かい領域に設定できないという問題があった。検出精度の向上とは、真にドアを開放する必要がある場合にのみドアを開放するように移動体の移動方向や移動速度等を判断基準に含めるような概念である。
【0009】
また、センサの大型化を許容して投光素子及び受光素子の対の数を増やした場合でも、そのような数多くの受光素子から出力される多数の信号を受信して、その結果に基づいて自動ドアを開閉制御する開閉制御部を備える必要があり、信号線の数が増加するばかりでなく、各受光素子から出力される信号を夫々判断してドアの開閉判断を行なう必要があり高価で複雑な開閉制御部となるという問題があった。
【0010】
さらに、建物毎に異なるドアの機械的サイズに対応して監視領域を設定するとともに、各監視領域に対応するように投光素子及び受光素子の対の光学的配置を個別に設計したセンサを製造する必要があり、煩雑な設計作業が必要となるばかりか部品の共用化が図れないという問題もあった。
【0011】
そこで、センサの小型化と監視領域の細分化を図るために、測定光を監視領域に二次元的に走査して当該測定光が照射された物体からの反射光を検出することにより当該監視領域に存在する物体の方向及び距離を算出する測距装置を用いることが考えられる。
【0012】
しかし、細分化された各監視領域に対応する信号つまり距離情報を測距装置から入力し、その距離情報に基づいてドアを開放するか否かを判断するように開閉制御部を構成する必要があり、大量のデータに対する演算負荷の増大に備えて高価な演算処理回路を採用する必要があるという問題もあった。
【0013】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、監視領域を細分化して移動体の検出精度を高めながらもセンサ及び開閉制御部の汎用化を図り安価に構成できる自動ドア制御システム及び測距装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明による自動ドア制御システムの第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、測定光を走査して当該測定光が照射された物体からの反射光を検出することにより当該物体の方向及び距離を算出する測距装置が組み込まれドアの内側監視領域の移動体を検知する屋内センサと、前記ドアの外側監視領域の物体を検知する屋外センサと、前記ドアを開閉する開閉制御部と、を備えている自動ドア制御システムであって、前記ドアの内側監視領域は予め設定された複数の異なる領域を含み、前記開閉制御部による前記ドアの制御状態及び前記屋外センサによる物体の有無情報に基づいて、前記複数の異なる領域に対して個別に有効または無効に切り替えるとともに、前記複数の異なる領域の有効または無効状態、前記屋内センサにより検出される前記ドアの内側監視領域における移動体の動きを表す挙動情報及び前記屋外センサにより検出される物体の有無情報と前記開閉制御部による前記ドアの制御状態に基づいて前記ドアの開放または閉鎖を判断する開閉判断部を前記屋内センサに備え、前記開閉制御部は前記開閉判断部から送信された開閉制御信号に基づいて前記ドアを開閉制御するように構成されている点にある。
【0015】
屋内センサに備えた開閉判断部によりドアの開放または閉鎖の必要性の判断が行なわれて、その結果である開閉制御信号が屋内センサから開閉制御部に送信され、開閉制御部によってドアが単純に開閉制御される。本来的に演算処理能力の高い演算部を含む測距装置を備えた屋内センサ側で開閉判断されるので、屋内センサで得られた移動体の動きを表す挙動情報を含む大量のデータを開閉制御部で処理する場合に必要となる高価な信号線や高速で高価な演算処理回路が不要になる。また、ドアが閉じた状態であるか開いた状態であるかといったドアの制御状態と、屋外センサにより検知された物体の有無情報に基づいて、ドアが不正に開放される虞があるか否かが判断され、それに対応して屋内センサに備えた開閉判断部によってドアの内側監視領域に設定された異なる領域がそれぞれ有効または無効に切り替えられるので、ドアの不正開放などの行為が生じても各領域に対応して予め設定されたアルゴリズムにより適切に対処できる開閉判断部を実現できる。
【0016】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記ドアの内側監視領域を構成する前記複数の異なる領域は、少なくとも一部の領域の重複が許容される点にある。
【0017】
ドアの内側監視領域に一部を重複して複数の異なる領域に区画することにより、同じ領域であっても、例えばドアを開放するのかドアの開放を禁止するのかといったような機能を切り替えることができ、自動ドアが設置される環境に応じて柔軟に対応できるようになる。
【0018】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記ドアの内側監視領域には、少なくとも、移動体を検知したときに前記ドアを開放するドア内側近接領域と、移動体を検知しても前記ドアの開放を禁止するドア内側悪戯検知領域と、前記ドア内側悪戯検知領域を囲み移動体を検知したときに前記ドアを開放する帯状領域と、が設定され、前記開閉判断部は、前記ドア内側近接領域を有効に設定するとともに前記ドア内側悪戯検知領域及び前記帯状領域を無効に設定するか、前記ドア内側近接領域を無効に設定するとともに前記ドア内側悪戯検知領域及び前記帯状領域を有効にするかを切り替えるように構成されている点にある。
【0019】
ドア内側悪戯検知領域及び前記帯状領域が有効に設定されると、ドア内側悪戯検知領域で移動体が検知されても帯状領域で移動体が検知されなければドアが開放されることなく、ドア内側悪戯検知領域で移動体が検知されても帯状領域で移動体が検知されるとドアが開放される。つまり、ドア外側で不審者が不正行為を行なっているような場合でも、帯状領域に移動体が検知されるとドアが開放されるので、当該移動体が速やかにドアから外出できるようになる。ドア内側近接領域が有効に設定され、ドア内側近接領域に移動体が検知されると、ドア内側悪戯検知領域の状態にかかわらずドアが開放される。このような有効領域の切替がドアの制御状態と屋外センサにより検知された物体の有無情報に基づいて切り替えられる。
【0020】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記開閉判断部は前記測距装置で算出された物体の方向及び距離に基づいて求まる物体の移動方向及び/または物体の移動速度を含む物体の挙動に基づいて前記開閉制御信号を出力する点にある。
【0021】
距離が予め想定された床面までの距離より短ければ移動体が存在すると判断でき、その移動体に対する距離が時系列的に変化すればその距離情報から移動速度が求まる。測定光に対する反射光の検出時間間隔を規定すればその検出時間間隔に対応する分解能で物体の挙動を把握することができ、複数の物体の挙動を精度よく検出することができるようになる。
【0022】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記開閉制御信号は前記ドアの開放速度及び開放幅が含まれる点にある。
【0023】
開閉制御信号によりドアの開放速度や開放幅が制御されると、例えばドアの開放速度を増して開放幅を狭めることで空調の効いた屋内の環境の大きな変動を抑制したり、屋外からの土埃等の吹込みを抑制したりすることができ、空調や清掃のためのエネルギーロスも低減できるようになる。
【0024】
同第六の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一から第五の何れかの特徴構成に加えて、各センサ及び前記開閉制御部と通信可能に接続された通信制御部を備え、監視領域及び前記開閉制御信号の初期値を設定する外部機器と接続可能なインタフェースを前記通信制御部に備えている点にある。
【0025】
各センサ及び開閉制御部間で行われる通信が通信制御部を介した通信仕様に統一されるので、各センサ及び開閉制御部の汎用化によるコスト低減を実現でき、しかも通信制御部に備えたインタフェースを介して各センサの監視領域や開閉制御信号の初期値が設定できるので、それらを設置現場に応じた固有の値に自在に設定することができるようになる。
【0026】
本発明による測距装置の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述した第一から第六の何れかの特徴構成を備えた自動ドア制御システムの屋内センサまたは屋外センサに用いられる測距装置であって、測定光を監視領域に三次元的に走査して当該測定光が照射された物体からの反射光を検出することにより当該監視領域に存在する物体の方向及び距離を算出する測距部と、前記測距部による移動体の検出結果と前記開閉制御部の制御状態に基づいて前記ドアの開放または閉鎖を判断して前記開閉制御部に前記開閉制御信号を出力する開閉判断部とを備えている点にある。
【発明の効果】
【0027】
以上説明した通り、本発明によれば、監視領域を細分化して移動体の検出精度を高めながらもセンサ及び開閉制御部の汎用化を図り安価に構成できる自動ドア制御システム及び測距装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】(a)は側方から視た自動ドア装置1の説明図、(b)は屋内正面から視た自動ドア装置説明図、(c)は屋内から俯瞰した自動ドア装置1の説明図
図2】外部から悪戯操作する不審者の様子を示す自動ドア装置1の説明図
図3】屋内センサ及び屋外センサを構成する測距装置の説明図
図4】信号処理装置の機能ブロック構成図
図5】(a)は位置ベクトルを示す側面図、(b)は位置ベクトルを示す正面図、(c)は移動体を示す位置ベクトルを説明する鳥瞰図
図6】(a)は移動ベクトルの説明図、(b)は投影ベクトルの説明図
図7】第1境界面F1と第2境界面F2との間で仕切られる検出空間の説明図
図8】(a)は検出空間の分割領域の説明図、(b)は同平面視の説明図
図9】(a)は通常モードで動的検知領域R4及びドア内側近接領域R1が有効に設定されドア内側悪戯検知領域R2及び帯状領域R3が無効に設定されたドアの内側監視領域Riの説明図、(b)は悪戯検知モードで動的検知領域R4、ドア内側悪戯検知領域R2及び帯状領域R3が有効に設定されドア内側近接領域R1が無効に設定されたドアの内側監視領域Riの説明図
図10】自動ドア制御システムの機能ブロック構成図
図11】(a)から(f)は自動ドア制御システムで遣り取りされる制御情報の説明図
図12】(a)は通常検知モードでの移動体の検知状態の説明図、(b)は悪戯検知モードでの移動体の検知状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明が適用された自動ドア制御システム及び自動ドア制御システムに組み込まれる測距装置を説明する。
【0030】
図1(a)には、側方から視た自動ドア装置1の要部が示され、図1(b)には、屋内正面から視た自動ドア装置1の要部が示され、図1(c)には、屋内から俯瞰した自動ドア装置1の要部が示されている。
【0031】
自動ドア装置1は、床面Fに垂直な姿勢で開閉可能に支持された一対の扉体2a,2bと、扉体2a,2bを開閉駆動可能に吊下げ支持する支持機構3と、支持機構3を介して扉体2a,2bを開閉駆動する電磁モータを含む駆動機構4を備えている。以下の説明では「扉体2a,2b」を単に「ドア2」とも記す。
【0032】
当該自動ドア装置1のドア2を開閉制御するために自動ドア制御システム10が構築されている。
図10には自動ドア制御システム10の機能ブロック構成が示されている。自動ドア制御システム10は、ドア2の内側に設定された監視領域(ドアの内側監視領域(以下、「ドア内側監視領域」と記す。))Riに存在する移動体を検知する屋内センサ5と、ドア2の外側に設定された監視領域(ドアの外側監視領域(以下、「ドア外側監視領域」と記す。))Roに存在する不審者等の物体を検知する屋外センサ6と、ドア2を開閉する開閉制御部7を備えている。
【0033】
開閉制御部7にはセキュリティ装置8及び電磁ロック機構9が接続されている。入館希望者が建物に入館する際にセキュリティ装置8に認証カードを挿入する等の操作を行ない、セキュリティ装置8で認証されると電磁ロック機構9で施錠されたドア2が開錠された後にモータが駆動されて開放されるように構成されている。屋外センサ6で物体が検知されなくなると入館者の入館完了と確認されてドア2が閉鎖された後に電磁ロック機構9で施錠される。
【0034】
尚、セキュリティ装置8による認証方法は、認証カードに記録された認証コードを読み取り、予め登録されている認証コードと照合する方法、セキュリティ装置8に備えた数値キーを操作して入力された認証コードと予め登録されている認証コードと照合する方法、指紋入力部を備えて指紋照合する方法、瞳孔撮影部を備えて瞳孔照合する方法等の公知の認証方法を用いることができる。
【0035】
また、電磁ロック機構9は電磁力を利用してドア2自体を機械的に施錠する機構で構成してもよいし、ドア2を開閉する電磁モータMの回転を機械的に阻止するブレーキ機構等で構成してもよく、遠隔操作可能で電磁力を利用して機械的にドア2をロックし、人力による強制的なドア2の開放を阻止する機構であればどのような構成でもよい。
【0036】
建物からの退館者のドア2への接近が屋内センサ5により検知されると、開閉制御部7によって電磁ロック機構9が開錠制御された後に電磁モータMが駆動されてドア2が開放され、その後閉鎖されて再度施錠される。
【0037】
このような自動ドア装置1及び自動ドア制御システム10は、例えばオフィスビル或いはマンション等の集合住宅に構築され、ドア2の入口で認証された人のみが入館でき、入館した任意の人が自由に退出できるように構成されている。
【0038】
しかし、図2に示すように、例えば建物の外部で閉鎖ドア2の隙間から棒切れ等が差し込まれると、屋内センサ5により棒切れ等が検知されて退館者がドア2に接近しているとの誤検知を招き、セキュリティ装置を設けているにもかかわらず不正侵入者に対してドア2が開放される虞がある。
【0039】
また、棒切れ等による不正行為(悪戯)であるのか真に退出しようとしている人であるのかを正確に検知するために、屋内センサ5の分解能を上げるとそれに伴ってデータ量が増大して開閉制御部7の信号処理負荷の増大等、コストの上昇を来すことになる。
【0040】
当該自動ドア制御システム10では、建物毎に大きさ等が異なるドア2であっても、センサ及び開閉制御部の汎用化を図り安価に構成できるとともに、各ドア2に対応してカスタマイズでき、そのような不正侵入者の偽装行為を効果的に排除できるように構成されている。
【0041】
屋内センサ5は、ケーシングとケーシング内に配置された測距装置を備えて構成されている。
図3に示すように、測距装置は、半導体レーザを備えた発光部51と、発光部51から出力された測定光を偏向走査する複数の偏向面54(本実施形態では5つの偏向面54)を備え、軸心P周りに回転する柱状体でなる回転多面鏡53と、測定光が物体で反射された反射光を受光するアバランシェフォトダイオードでなる受光部52と、信号処理部60と、それらが収容された筐体50で構成されている。
【0042】
ケーシングには、測定光の走査面(図1(a)の符号S1〜Sn)が軸心S周りに回動するように筐体50に取り付けられた揺動軸55を揺動させる揺動機構が設けられ、監視領域Ri内で走査面がドア2と略平行な姿勢と、所定の傾斜角度をもった姿勢との間で往復揺動されるように構成されている。尚、屋外センサ6も同じ構造である。
【0043】
図4には、測距装置に備えた信号処理部60の機能ブロックが示されている。信号処理部60は、モータ制御部61と、位相検知部62と、発光制御部63と、測距演算部64と、物体判定部65と、移動体追跡部66と、開閉判断部67と、通信インタフェースである信号出力部68と、メモリ69等を備えている。各機能ブロックはマイクロコンピュータ及びその制御プログラム並びに周辺回路で実現されている。
【0044】
モータ制御部61は軸心P周りに回転多面鏡53を所定速度で回転するとともに筐体50を軸心S周りに揺動するようにそれぞれに備えたモータを駆動制御し、位相検知部62はモータ制御部61により回転駆動される回転多面鏡53の回転位相つまり基準位置に対する回転角度と揺動機構による揺動角度を検知する。位相検知部62は、例えばモータまたは回転多面鏡22の回転軸及び揺動機構の回転軸に設置されるエンコーダ等で構成することができる。
【0045】
発光制御部63は所定周期で発光部51をパルス状に点滅駆動し、測距演算部64は発光部51の発光タイミングと受光部52で検知された反射光の受光タイミングとの時間差に基づいて、測距装置から測定光を反射した物体までの距離を算出する。
【0046】
即ち、測距演算部64は、以下の数式に示すように、測定光と反射光との検出時間差Δtに基づいて、測距装置から物体までの距離Dsを算出する。尚、数式中、Cは光速である。
Ds=Δt・C/2
【0047】
さらに、測距演算部64は位相検知部62で検知された回転多面鏡53の回転位相と筐体50の揺動角度に基づいて、このとき検出された物体までの方向Drを算出する。当該距離Dsと方向Drによって測距装置を基準点とした位置ベクトルが得られる。
【0048】
図5(a)に示すように、床面FがZ=0とするXY基準面になり、扉体2a,2bが配置される平面が参照面となるXYZ3次元直交空間に対して、屋内センサ5は、XY基準面と所定角度(ここでは直角である例を示すが、直角に限らない)で交差する参照面または当該参照面の近傍で、XY基準面からZ方向に離隔した位置に設置されている。
【0049】
そして、屋内センサ5は測定光の照射方向とXY基準面とが交差するように測定光を走査し、当該測定光が照射された物体からの反射光を検出するように構成されている。
【0050】
図5(a)には、測距演算部64で算出された物体の位置ベクトルVijが示されている。図5(a)に示すように、屋内センサ5から物体に向けて出射される測定光の走査面と参照面との角度をθiとし、図5(b)に示すように、走査面上で中央に位置する走査光と任意の走査光との角度をφjとし、物体までの距離をDsijとし、屋内センサ5を始点(基準点)とする位置ベクトルVijの終点のX,Y,Z座標(図5(a),(b),(c)中、○印で示された点)を(xij,yij,zij)とすると、その値が以下の数式で求められる。尚、測距装置2の設置高さは、Z=Hに設定されている。即ち、測距演算部64は、測定光及び物体からの反射光に基づいて物体の位置ベクトルを算出する演算部となる。
xij=Dsij・sinφj
yij=Dsij・sinθi・cosφj
zij=H−Dsij・cosθi・cosφj
【0051】
以下に屋内センサ5により検出される物体の検出アルゴリズムの基本を説明する。ここでは、図4に示した物体判定部65は特に機能せず、測距演算部64からの入力が移動体追跡部66にそのまま出力されるものとして説明する。
【0052】
図6(a)に示すように、時刻tで算出された位置ベクトルをVij(t)、時刻(t+Δt)で算出された位置ベクトルをVij(t+Δt)とする。移動体追跡部66は、時刻tから時刻(t+Δt)の間の物体の移動ベクトルMijを以下の数式で算出する。本実施形態ではΔt=50msec.であるが、この値に限られるものではない。
Mij=Vij(t+Δt)−Vij(t)
【0053】
移動体追跡部66で算出された移動ベクトルMijによって移動体の移動方向及び移動距離が示され、移動距離を時間Δtで除することによって移動体の移動速度が求まる。
【0054】
即ち、移動体追跡部66は、時系列的に測距演算部64で算出された二つの位置ベクトルVij(t+Δt),Vij(t)に基づいて物体の移動ベクトルMijを算出する演算部となる。
【0055】
移動体追跡部66によって算出された物体の移動ベクトルMij、具体的に、扉体2に対する移動体の移動方向と移動速度が開閉判断部67に入力される。
【0056】
図6(b)に示すように、移動体追跡部66は、上式に基づいて算出した移動ベクトルMijを当該移動ベクトルの始点または終点の何れかを含むXY基準面に平行な平面へ投影して得られる投影ベクトルを当該物体の移動ベクトルとして生成するように構成されていてもよい。投影ベクトルによって、移動体のXY基準面からの高さと、水平方向の移動方向と移動距離または移動速度が把握でき、参照面に到達する時間と到達位置が二次元の簡易な演算処理で精度よく捕捉できるようになる。
【0057】
また、移動体追跡部66は、移動体を時間Δtで追跡しながら、時間Δtよりも長い時間の移動ベクトルを算出してもよい。例えば、同じ物体の時刻t、t+Δt、t+2Δt、t+3Δt(直近)の4回の位置ベクトルに対して、時刻tと時刻(t+3Δt)の間の移動ベクトルを算出すれば、移動方向及び移動速度の平均値が求まり、瞬時的なノイズの影響が排除される結果、精度が良くなる。
【0058】
以上が屋内センサ5により検出される物体の検出アルゴリズムの基本であるが、実際には、検知された物体が自動ドアの開閉を制御するのに必要な人等の真の検出対象ではなく、犬や猫等の小動物や鳥類である可能性もある。そのような場合に扉体2を開閉するのは好ましくない。
【0059】
そこで、距離演算部64には、このようなノイズ源となる検出対象を除去するためのフィルタ処理部が設けられている。以下に説明する。
【0060】
図7に示すように、測距演算部64は、XY基準面からZ方向に第1距離h1離隔した第1境界面F1と、屋内センサ5からXY基準面に向けて第2距離h2離隔した第2境界面F2との間の検出空間に存在する物体に対して位置ベクトルを算出するように構成されている。
【0061】
このように構成されると、第1距離h1より低い位置での移動体の接近によってドア2が開閉されることが回避される。例えば、第1距離h1を350mmに設定することにより、小動物等を検出対象から排除することができる。例えば建物の外部で閉鎖ドア2の床面近傍の隙間から棒切れ等が差し込まれてもそのような棒切れを検出対象から排除することができる。また、第2距離h2を300mmに設定することにより、通常存在することが無い測距装置2の近傍の移動体を排除することができる。第1距離h1及び第2距離h2の具体的数値は例示に過ぎずこの値に限らない。除去すべき対象に応じて適宜設定すればよい。
【0062】
測距演算部64で算出された位置ベクトルが蜂やハエ等の昆虫であったり、鳥類であったり、雪や雨等の自然現象であったりする場合の誤検出を防止するための処理手順を説明する。
【0063】
図8(a),(b)に示すように、XYZ3次元空間を少なくともX方向及びY方向に沿って複数領域に分割する(図中の格子は分割された各領域が示されている)。物体判定部65は、50msec.の走査周期で測距演算部64によって算出された各位置ベクトルについて、その終点が少なくとも2回連続して同じ分割領域に位置するか否かを判断し、連続して同じ分割領域に終点が位置する位置ベクトルであれば、飛来する昆虫や雪等の自然降下物ではないと判別する。つまり、物体判定部65は、時系列的に連続して位置ベクトルの終点が含まれる分割領域に検出対象となる物体が存在する確率が高いと判別する。
【0064】
次に、物体判定部65は、当該物体が存在すると判別した分割領域がXY方向に所定数近接する場合に当該物体が検出対象となる所定の大きさの同一の物体であると判別してそれらの位置ベクトルをグループ化する。
【0065】
所定数とは、人であることの確からしさを示す値で、断面が10cm角の分割領域では少なくとも2領域が近接していれば、人の腕程度の幅であると判定できるので、この例では2に設定している。この値は、分割領域のサイズと検出対象物のサイズに基づいて決定される値で、少なくとも検出対象物のサイズを分割領域のサイズで除した値より小さな値に設定される。
【0066】
また、近接とは、物体が存在すると判別した分割領域がXY平面視で縦、横、斜めに隣接して存在する態様や、数領域だけ隔てて存在する態様を含む。数領域とは、分割領域のサイズと検出対象物のサイズや測距装置の走査密度により適宜設定される領域数であり、測距装置の走査密度を高めることによりゼロにできることが望ましい。
【0067】
図9(a),(b)には、屋内センサ5により監視されるドア内側監視領域Riと屋外センサ6によって監視されるドア外側監視領域Roが示されている。屋内センサ5及び屋外センサ6により監視可能な範囲が図中、升目で示されている。これらの範囲の内部にドア内側監視領域Ri及びドア外側監視領域Roが設定される。一つの升目のサイズは100mm×100mmであり、物体判定部65(図4参照)によって判定された移動体の有無が当該升目単位で表される。ドア外側監視領域Roは、ドア2の外側近傍に沿った矩形領域に設定されている。
【0068】
ドア内側監視領域Riには、移動体を検知したときに直ちにドア2を開放するドア内側近接領域R1と、移動体を検知してもドア2の開放を禁止するドア内側悪戯検知領域R2と、ドア内側悪戯検知領域R2を囲み移動体を検知したときに直ちにドア2を開放する帯状領域R3と、移動体の移動方向や移動速度に基づいてドア2を開放する必要があるか否かを判断するための動的検知領域R4が設定されている。
【0069】
ドア内側近接領域R1はドア2の内側近傍に沿ってドア2の幅と同等の幅を有する矩形領域であり、ドア内側悪戯検知領域R2はドア2の内側近傍に沿ってドア内側近接領域R1の幅よりも狭くかつ奥行きが長い領域であり、帯状領域R3はドア内側悪戯検知領域R2を囲む帯状の領域であり、動的検知領域R4は上述した3領域よりも幅広で奥行きも長い矩形領域である。
【0070】
図9(a)には、動的検知領域R4及びドア内側近接領域R1が有効(実線で表示)に設定されるとともにドア内側悪戯検知領域R2及び帯状領域R3が無効(破線で表示)に設定された状態が示され、図9(b)には、動的検知領域R4、ドア内側悪戯検知領域R2及び帯状領域R3が有効(実線で表示)に設定されるとともにドア内側近接領域R1が無効(破線で表示)に設定された状態が示されている。「領域が有効に設定される」と当該領域に割り当てられた機能が有効になり、「領域が無効に設定される」と当該領域に割り当てられた機能が無効になる。ドア内側近接領域R1とドア内側悪戯検知領域R2とは目的が異なるため、ドア2の近傍であるが、夫々独立して任意の領域を設定することができる。
【0071】
図10には、既に説明したように、自動ドア制御システム10の機能ブロック構成が示されている。自動ドア制御システム10は、屋内センサ5と、屋外センサ6と、開閉制御部7と、各センサ5,6及び開閉制御部7と通信可能に接続された通信制御部CUを備え、夫々が2線式半二重シリアル通信線(RS485)で接続されている。
【0072】
通信制御部CUは、主に各センサ5,6と開閉制御部7との間のデータの送受信を制御するように構成され、さらにデータ設定用端末TMと接続可能なUSBインタフェース及びBluetooth(登録商標)インタフェースを備えている。
【0073】
データ設定用端末TMとしてタブレットPCやスマートフォンが用いられ、外部機器から上述した監視領域Ri,Ro及び後述する開閉制御信号の初期値が通信制御部CUを介して各センサ5,6や開閉制御部7に送信されるように構成されている。
【0074】
通信制御部CUは、各センサ5,6及び開閉制御部7に対して所定のインタバル、例えば50m秒間隔で順番にデータ送信要求を出力し、データ送信要求に応答して各センサ5,6及び開閉制御部7から返信されたデータをメモリに格納する。
【0075】
そして、通信制御部CUは、メモリに格納したデータのうち各センサ5,6及び開閉制御部7が必要とするデータを、各センサ5,6及び開閉制御部7に対するデータ送信要求時に送信するように構成されている。
【0076】
図11(a)から(f)には、通信制御部CUを介して送受信される具体的なデータが示されている。
屋外センサ6から通信制御部CUにドア外側監視領域Roに不審者等の物体が存在するか否かを示す「屋外移動体存否情報」が送信され、通信制御部CUから屋外センサ6に「ドア外側監視領域Ro情報」が送信される。
【0077】
開閉制御部7から通信制御部CUに、ドアロックの状態を示す「ロック状態情報」と、ドア2の制御状態を示す「モータ状態情報」(具体的に、「ドア駆動方向情報」、「ドア停止情報」、「ドア開限情報」、「ドア閉限情報」の4種類の情報)が送信され、通信制御部CUから開閉制御部7に、ドア2に対する「起動情報」として「起動指令」、「開速度情報(高、中、低、閉)」、「開幅情報(開度)」が送信される。尚、括弧内は、パラメータが示されている。
【0078】
「ドア駆動方向情報」でドアの駆動方向が示され、「ドア停止情報」でドアが停止しているか動いているかが示され、「ドア開限情報」でドアが開放された状態か否かが示され、「ドア閉限情報」でドアが閉塞された状態か否かが示される。
【0079】
「起動指令」でドアの開閉が起動されることが示され、「開速度情報(高、中、低、閉)」でドア開放か閉鎖かの方向、開放時にはその速度(ドア閉鎖時は一定速度)が示され、「開幅情報(全開、全閉)」でドアを開くときの最大開放幅が示される。
【0080】
屋内センサ5から通信制御部CUに、「センサ検出状態情報」として、「開速度情報(高、中、低、閉)」、「開幅情報(開度)」、「検出波形」、「ドア内側近接領域R1移動体存否情報」が送信され、通信制御部CUから屋内センサ5に、「ロック状態情報」、「モータ状態情報」(具体的に、「ドア駆動方向情報」、「ドア停止情報」、「ドア開限情報」、「ドア閉限情報」の4種類の情報)が送信される。
【0081】
屋内センサ5に備えた開閉判断部67は、通信制御部CUから送信された「ロック状態情報」でドアがロックされた状態であり、「ドア閉限情報」でドアが全閉された状態であり、「屋外移動体存否情報」でドア外側近傍に物体(この場合、静止体)が存在すると判断すると悪戯検知モードに移行して、図9(b)に示したように動的検知領域R4、ドア内側悪戯検知領域R2及び帯状領域R3を有効に設定するとともにドア内側近接領域R1を無効に設定し、上述の条件の何れかが満たされない場合には通常検知モードに移行して図9(a)に示したように動的検知領域R4及びドア内側近接領域R1を有効に設定するとともにドア内側悪戯検知領域R2及び帯状領域R3を無効に設定する。
【0082】
図12(a)は通常検知モード、図12(b)は悪戯検知モードの動作を説明する図である。図12(b)に示すように、開閉判断部67は、悪戯検知モードになるとドア内側悪戯検知領域R2で移動体が検知されても、ドア2の外部の不審者による悪戯と判断してドアの開放を阻止する。尚、ドア内側悪戯検知領域R2を監視対象領域から実質的に除外して、移動体自体の検出を行なわないように動作することによっても同様の結果となる。
【0083】
仮にドア内側悪戯検知領域R2で移動体が検知されていても、物体判定部65または移動体追跡部66によって帯状領域R3に移動体が存在することが検知されると、開閉判断部67は悪戯検知モードであってもドア2を開放すると判断して、通信制御部CUに「開速度情報」、「開幅情報」、「ドア内側移動体存否情報」を送信し、通信制御部CUを介して当該情報を受信した開閉制御部7によってドア2が開放される。
【0084】
悪戯検知モードと通常検知モードの何れのモードであっても、移動体追跡部66によって動的検知領域R4で検知された移動体がドア2に向かって移動していると判断されると、開閉判断部67は移動体がドア2近傍に接近するまでにドア2を開放するように通信制御部CUに「開速度情報」、「開幅情報」、「ドア内側移動体存否情報」を送信し、通信制御部CUを介して当該情報を受信した開閉制御部7によってドア2が開放される。つまり、移動体がドア2に到着した時点でドアから退出可能なように、移動体の速度及び移動方向に応じて「開速度情報(高、中、低、閉)」及び「開幅情報(開度)」を調整する。
【0085】
開閉判断部67は、動的検知領域R4で検知された移動体がドア2に向かう場合を除いてドアを開放することがないが、通常検知モードに移行した後、物体判定部65または移動体追跡部66によってドア内側近接領域R1に移動体が検知されると、当該移動体が静止しているか移動しているかに関わらずドア2を開放するように、通信制御部CUに「開速度情報」、「開幅情報」、「ドア内側移動体存否情報」を送信し、通信制御部CUを介して当該情報を受信した開閉制御部7によってドア2が開放される。
【0086】
開閉判断部67は、ドア2を開放した後にドア内側近接領域R1に移動体が検知されず、動的検知領域R4でもドア2に向かう移動体が検知されず、しかもドア外側監視領域Roに移動体が検知されない場合に、ドア2を閉鎖するように、通信制御部CUに「開速度情報(閉)」を送信し、通信制御部CUを介して当該情報を受信した開閉制御部7によってドア2が閉鎖される。
【0087】
開閉制御部7はドア2を閉鎖した後、所定時間起動情報が発生しない場合には、電磁ロック機構9を制御してドア2をロックする。
【0088】
尚、自動ドア制御システム10が設置された建物へ入館する場合には、セキュリティ装置8を介して認証情報を入力する必要があり、セキュリティ装置8で認証されると、ドア開要求が開閉制御部7に入力され、ドア2が開放される。その後は、上述したように開閉判断部67から通信制御部CUへの「開速度情報(閉)」に基づいて開閉制御部7によってドア2が閉鎖される。
【0089】
以上説明したように、当該自動ドア制御システム10は、屋内センサ5による移動体の挙動情報及び屋外センサ6による物体の有無情報と開閉制御部7によるドアの制御状態に基づいてドア2の開放または閉鎖を判断する開閉判断部67を屋内センサ5に備え、開閉制御部7は開閉判断部から送信された開閉制御信号に基づいてドア2を開閉制御するように構成されている。
【0090】
そして、開閉判断部67は開閉制御部7によるドア2の制御状態及び屋外センサ6による物体の有無情報に基づいてドア内側監視領域Riを切り替えるように構成されている。
【0091】
従って、本来的に演算処理能力の高い屋内センサ5側で開閉判断されるので、屋内センサ5で得られた移動体に関する大量のデータを開閉制御部7で処理する場合に必要となる高価な信号線や高速で高価な演算処理回路が不要になる。
【0092】
上述の自動ドア制御システム10は、設置環境によってドア内側監視領域Ri及びドア外側監視領域Roが異なり、また「モータ状態情報」のパラメータも適正な値に設定する必要がある。
【0093】
そのため、通信制御部CUに備えたUSBインタフェースまたはBluetooth(登録商標)インタフェースを介して接続されたタブレットPC等によって、監視領域Ri,Ro及び開閉制御信号となる「モータ状態情報」の各パラメータの初期値が入力されて通信制御部CUを介して各センサ5,6や開閉制御部7に送信されるように構成されている。
【0094】
以下、本発明の別実施形態を説明する
上述の実施形態では、TOF方式の測距装置を例示したが、測定光の強度をAM変調するAM方式の測距装置を採用することも可能である。また、光源としてレーザダイオードに替えてLEDを用いることも可能である。
【0095】
AM方式とは、測定光の強度が振幅変調され、監視対象領域に向けて出力した測定光と、測定光に対する物体からの反射光との位相差Δφに基づいて、測距装置から物体までの距離Dsを、以下の数式に基づいて算出する方式である。数式中、Cは光速、fは変調周波数である。
D=Δφ・C/(4π・f)
【0096】
さらに、AM方式とTOF方式を組み合わせて、振幅変調された測定光をパルス状に発光させて、測定光に対する反射光の遅延時間及び位相差に基づいて測距する方式であってもよい。尚、この場合、変調波の波長より短い距離が位相差に基づいて算出され、変調波の波長より長い距離が遅延時間に基づいて算出される。
【0097】
測距装置は図3に示した構成に限るものではなく、監視領域に対して測定光を三次元的に走査可能な任意の公知の構成を採用することができる。
【0098】
以上、屋内センサ5及び屋外センサ6の双方が測距装置で構成される例を説明したが、屋外センサ6はドア2の外側に設定された監視領域(ドア外側監視領域)Roに存在する不審者の有無、つまり静止体(物体)を検知できればよいので測距装置で構成される必要はない.しかし、屋内センサ5及び屋外センサ6の双方を同一の測距装置で構成し、屋内センサ5として機能させるか屋外センサ6として機能させるかを通信制御部CUを介した初期設定で切り替えるように構成すれば部品の共用化によるコストの低減を図ることができる。
【0099】
上述した様々な実施形態は何れも本発明の一例であり、屋内/屋外センサを含めて自動ドア制御システムを構成する各制御ブロックのサイズや形状等の具体的構造、信号処理部の具体的な回路構成、信号処理手順を遂行するソフトウェアの具体的な構成等は、本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計できることはいうまでもなく、本発明の技術的範囲が上述の例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0100】
1:自動ドア装置
2:ドア
2a,2b:扉体
3:支持機構
4:駆動機構
5:屋内センサ
6:屋外センサ
7:開閉制御部
8:セキュリティ装置
9:電磁ロック機構
10:自動ドア制御システム
60:信号処理部
67:開閉判断部
Ri:ドア内側監視領域
Ro:ドア外側監視領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12