(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のブレーキ制御装置の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
【0022】
[第一実施形態]
第一実施形態のブレーキ制御装置1は、
図1に示すように、車両のマスタシリンダ(ブレーキシステム)への出力を制御する制動倍力装置(ブレーキブースター)である。
【0023】
第一実施形態のブレーキ制御装置1は、モータを併用するハイブリッド自動車やモータのみを動力源とする電気自動車・燃料電池自動車等のほか、エンジン(内燃機関)のみを動力源とする自動車にも搭載することができる。
【0024】
ブレーキ制御装置1は、
図6に示すように、基体10と、入力部材2と、伝達部材21と、出力部材7と、電動モータ3(
図1参照)と、電動モータ3の駆動力を出力部材7に伝達する駆動伝達機構4と、電動モータ3を制御する電子制御装置5(
図1参照)と、を備えている。
なお、第一実施形態において、前後方向、左右方向および上下方向とは、ブレーキ制御装置1を車両に搭載したときの方向である。
【0025】
ブレーキ制御装置1は、マスタシリンダ8の後端部に取り付けられる(
図1参照)。ブレーキ制御装置1は、通常のブレーキ操作時に電動モータ3(
図1参照)の駆動力をマスタシリンダ8に出力することで、ブレーキペダルP(特許請求の範囲における「ブレーキ操作子」)に対する操作力(踏力)を軽減する。また、ブレーキ制御装置1は、自動ブレーキ制御時に電動モータ3(
図1参照)の駆動力をマスタシリンダ8に出力することで、ブレーキ装置に制動力を発生させる。
【0026】
マスタシリンダ8は、シリンダ本体8b内に形成されたシリンダ穴内をピストン8aが摺動することで、ブレーキシステムの液圧路にブレーキ液圧を発生させる。
マスタシリンダ8のシリンダ本体8bの上面には、
図3に示すように、リザーバ9が取り付けられている。リザーバ9は、ブレーキ液を貯溜する容器であり、リザーバ9内のブレーキ液はマスタシリンダ8内の圧力室に補給される。
【0027】
基体10は、金属製の箱体であり、
図2に示すように、左右方向よりも前後方向に大きく形成されている。基体10の内部には、
図6に示すように、収容室15が形成されている。収容室15は、入力部材2、出力部材7および駆動伝達機構4が収容される空間である。
【0028】
基体10は、前側基体11と後側基体12とに分割されている。後側基体12の前端部は、前側基体11の後端開口部に挿入されている。後側基体12の前端開口部は、前側基体11内に開口している。前側基体11の内部空間と後側基体12の内部空間とによって、収容室15が形成されている。
【0029】
また、前側基体11の外周面に形成された連結用フランジ部11aと、後側基体12の外周面に形成された連結用フランジ部12aとが前後方向に重ね合わされており、前後の連結用フランジ部11a,12aは複数の取付ボルトB1によって連結されている。
【0030】
図3に示すように、前側基体11の左側部には、平板状の取付部13が形成されている。取付部13の左側面13a(外面)の法線は、左右方向に延びており、前後方向に対して直交している。取付部13の左側面13a(外面)は、基体10の軸方向(前後方向)に平行に配置されている。取付部13の左側面13aは、電動モータ3および電子制御装置5を取り付けるための取付面となる。
取付部13は、前後方向よりも上下方向が大きく形成されている(
図1参照)。取付部13は、基体10の上端部よりも上方に突出するとともに、基体10の下端部よりも下方に突出している。
【0031】
図6に示すように、前側基体11の前後方向の中間部の下端部には、ギヤ収容部16が形成されている。ギヤ収容部16内には、
図4に示すように、電動モータ3の出力軸3aおよび駆動伝達機構4のウォームギヤ43が収容される。
【0032】
ギヤ収容部16の左端部(電動モータ3側の端部)には、取付部13の左側面13aに開口した開口部16aが形成されている。また、
図6に示すように、ギヤ収容部16の上部は収容室15に連通している。
【0033】
図5(a)に示すように、基体10の後面10bの中央部には、円筒状のセンサ取付部140が突出している。センサ取付部140は、
図6に示すように、基体10のブレーキペダルP側に突設されており、収容室15の後端部が形成されている。センサ取付部140の後端面141の中央部から収容室15に通じる連通穴142が形成されている。
【0034】
基体10の後面10bは、
図2に示すように、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュボードDの前面に取り付けられる。
図1に示すように、基体10の後面10bには複数のスタッドボルトB2が立設されている。
図8に示すように、基体10をダッシュボードDの前面に取り付けるときには、センサ取付部140をダッシュボードDの開口部D1に挿入するとともに、各スタッドボルトB2をダッシュボードの取付穴(図示せず)に挿入する。各スタッドボルトB2は車体フレームに固着する。
【0035】
基体10の前面10aは、
図2に示すように、複数のボルトB3によってマスタシリンダ8の後端面に取り付けられている(
図3参照)。
基体10の前面10aの中央部には、
図6に示すように、収容室15に通じる開口部10gが形成されている。この開口部10gは、マスタシリンダ8のシリンダ穴(図示せず)の後端部に連通している。マスタシリンダ8のピストン8aは、基体10の開口部10gを通じて収容室15内に突出している。
【0036】
入力部材2は、ブレーキペダルPに入力された踏力を、伝達部材21を介して出力部材7に伝達するための軸部材である。入力部材2は、基体10の収容室15内に収容されている。
【0037】
入力部材2は、プッシュロッドP1の前端部が接続されている入力ロッド22と、入力ロッド22の後部に外嵌されている磁石ホルダ25と、を備えている。プッシュロッドP1の後端部はブレーキペダルPに接続されている。このように、ブレーキペダルPと入力部材2とは、プッシュロッドP1を介して接続されている。
【0038】
入力ロッド22は、前後方向に延びている軸部材であり、軸方向の略中間部にはフランジ部22aが形成されている。
入力ロッド22の後端部はセンサ取付部140の連通穴142に挿入されている。入力ロッド22の後端面の凹部には、プッシュロッドP1の前端部が内嵌されている。
【0039】
磁石ホルダ25は、入力ロッド22の後部を囲む円筒状の部材である。磁石ホルダ25は、入力ロッド22および磁石ホルダ25を貫いているピン25bによって入力ロッド22に接続されている。
磁石ホルダ25は、センサ取付部140の連通穴142に挿通されており、連通穴142に対して前後方向に摺動自在である。
磁石ホルダ25の外周面の右側の領域には、
図5(b)に示すように、磁石25aが取り付けられている。
【0040】
伝達部材21は、
図6に示すように、ブレーキペダルPに入力された踏力および電動モータ3の駆動力を出力部材7に伝達するための軸部材である。
伝達部材21は、円筒状の部材であり、中心部に挿通穴21aが貫通している。伝達部材21は、入力ロッド22の前部に外嵌されている。
【0041】
伝達部材21の前端面の中央部には、前側凹部21bが形成されている。挿通穴21aの前端部は、前側凹部21bの底面の中央部に開口している。
伝達部材21の後端面の中央部には、後側凹部21cが形成されている。挿通穴21aの後端部は、後側凹部21cの底面の中央部に開口している。
【0042】
伝達部材21の挿通穴21aには、入力ロッド22の前部が挿入されている。入力ロッド22は、伝達部材21の挿通穴21aに対して前後方向に摺動自在である。
伝達部材21の後側凹部21c内には、入力ロッド22のフランジ部22aが収容されている。
後側凹部21cの底面と、入力ロッド22のフランジ部22aの前面との間には、第二コイルばね24bが介設されている。第二コイルばね24bは、伝達部材21に対して前方に移動した入力ロッド22を後方に押し戻すものである。
【0043】
入力ロッド22のフランジ部22aの後方には、入力ロッド22の抜け止めとなるストッパリング22bが設けられている。ストッパリング22bの外周縁部は、後側凹部21cの内周面に形成された溝部に嵌合されている。ストッパリング22bに入力ロッド22が挿通されている。ストッパリング22bの内径は、入力ロッド22のフランジ部22aの外径よりも小さく形成されている。
【0044】
入力ロッド22のフランジ部22aがストッパリング22bに当接した状態では、入力ロッド22の前端部は、前側凹部21bの底面よりも後方に位置する。つまり、入力ロッド22の後退限では、入力ロッド22の前端部は、挿通穴21a内に収容された状態(挿通穴21a内に没入した状態)となる。
【0045】
伝達部材21の前端部には、フランジ部21eが形成されている。伝達部材21のフランジ部21eの前面と、収容室15の前壁部の内面との間には、第一コイルばね24aが介設されている。第一コイルばね24aは、前方に移動した伝達部材21を後方に押し戻すものである。
【0046】
出力部材7は、伝達部材21に入力された踏力および電動モータ3(
図4参照)の駆動力をマスタシリンダ8のピストン8aに伝達するための軸部材である。出力部材7は、前後方向に延びており、後端部は拡径されている。出力部材7の後端部は、伝達部材21の前側凹部21bに内嵌されている。
出力部材7は、伝達部材21の前側凹部21bに保持されており、伝達部材21の前面から前方に向けて突出している。そして、出力部材7の前端部は、マスタシリンダ8のピストン8aに当接している。
出力部材7の後端面と前側凹部21bの底面との間には、ゴム製の弾性部材23が介設されている。
【0047】
基体10のセンサ取付部140の後端面141には、
図5(a)に示すように、ストロークセンサ6が複数のボルトB4によって取り付けられている。
ストロークセンサ6は、半円周形状に湾曲しており、センサ取付部140の後端面141の右半分に取り付けられている。ストロークセンサ6は、センサ取付部140の連通穴142の右半分に沿って配置されている。
図5(b)に示すように、ストロークセンサ6の前面には、前方に向けて突出した突出部6aが形成されている。この突出部6aは、センサ取付部140の後端面141に形成された凹部141aに嵌め込まれている。
ストロークセンサ6の外側面は、センサ取付部140の後端面141の外周縁部よりも内側に配置されている。
【0048】
ストロークセンサ6は、入力部材2の移動量を検出している。つまり、ストロークセンサ6は、ブレーキペダルPの操作量(ストローク量)を検出している。
ストロークセンサ6は、磁石ホルダ25が前後方向に移動したときの磁石25aによる磁力線の変化を検出することで、入力部材2の移動量を検出する。ストロークセンサ6で検出された移動量は、電子制御装置5(
図1参照)に出力される。
【0049】
電動モータ3は、
図4に示すように、基体10の左側部の取付部13に取り付けられている。電動モータ3は、電子制御装置5によって制御される電動アクチュエータ(電動サーボモータ)である。
電動モータ3は、取付部13の左側面13aの上部領域に取り付けられている。また、電動モータ3から突出した出力軸3aは、取付部13の開口部16aを通じてギヤ収容部16に挿入されている。
出力軸3aの軸方向L2は左右方向に延びており、出力部材7および入力部材2の軸方向L1(前後方向)に対して直交している(
図2参照)。
【0050】
駆動伝達機構4は、
図6に示すように、電動モータ3(
図4参照)の出力軸3aの回転力を出力部材7および入力部材2の軸線回りの回転力に変換するウォームギヤ機構47と、出力部材7および入力部材2の軸線回りの回転力を出力部材7の軸方向の力に変換し、出力部材7を軸方向に移動させる変換機構46と、を備えている。
【0051】
ウォームギヤ機構47は、ウォームホイール41と、電動モータ3の出力軸3a(
図4参照)に接続されたウォームギヤ43と、を備えている。
【0052】
ウォームホイール41は、円筒部材42と、円筒部材42に外嵌された円筒状の歯部41aと、を備えている。歯部41aは円筒部材42の外周面に固定されている。歯部41aの外周面には歯面が形成されている(
図4参照)。
円筒部材42は、前側基体11の内面にベアリング42aを介して取り付けられており、ウォームホイール41は前後方向の軸線回りに回転自在である。ウォームホイール41は、出力部材7の外周を囲んでいる。
【0053】
ウォームギヤ43は、
図4に示すように、左右方向に延びており、ギヤ収容部16内に収容されている。
ウォームギヤ43の左右の端部は、それぞれ軸受部材49,49を介してギヤ収容部16の内周面に取り付けられている。ウォームギヤ43は、ギヤ収容部16内で左右方向の軸線回りに回転自在である。
ウォームギヤ43の左端部は、連結部材48を介して、電動モータ3の出力軸3aの先端部に接続されている。これにより、ウォームギヤ43は、出力軸3aの回転に連動して左右方向の軸線回り(出力軸3aの中心軸回り)に回転する。
【0054】
ウォームギヤ43の回転軸方向(左右方向)と、ウォームホイール41の回転軸方向(前後方向)とは直交している。
ウォームホイール41の歯部41aの最上部は、ギヤ収容部16内に入り込んでおり、ウォームギヤ43のねじ部に噛み合っている。
ウォームギヤ機構47では、ウォームギヤ43の左右方向の軸線回りの回転がウォームホイール41の前後方向の軸線回りの回転に変換される。
【0055】
変換機構46は、
図6に示すように、ウォームホイール41に接続された回転筒体44と、伝達部材21に外嵌されている直動筒体45と、回転筒体44と直動筒体45との間に設けられたボールねじ機構46a(回転直動変換機構)と、を備えている。
【0056】
回転筒体44は、後側基体12の内面にベアリング44aを介して取り付けられており、回転筒体44は前後方向の軸線回りに回転自在である。
回転筒体44の中心軸とウォームホイール41の中心軸とは同一軸線上に配置されている。回転筒体44は、伝達部材21の外周を囲んでいる。伝達部材21のフランジ部21eは、回転筒体44よりも前側に配置されている。
【0057】
回転筒体44とウォームホイール41とは、キー部材である接続部材44bによって回転方向に係合されている。したがって、回転筒体44とウォームホイール41とは、前後方向の軸線回りに連動して回転する。なお、回転筒体44とウォームホイール41とを一体に成形してもよい。
【0058】
直動筒体45は、伝達部材21に外嵌されている円筒状の部材である。直動筒体45は、伝達部材21のフランジ部21eよりも後方に配置されている。直動筒体45の前端面は、伝達部材21のフランジ部21eの後面に当接している。
直動筒体45は、基体10(後側基体12)に対して回転不可かつ前後方向に移動自在に取り付けられている。
【0059】
ボールねじ機構46aは、回転筒体44の回転運動を直動筒体45の直線運動に変換するものである。
ボールねじ機構46aは、回転筒体44の内周面に形成された保持溝と、直動筒体45の外周面に形成されたねじ溝と、保持溝およびねじ溝の間に挿入された複数のボールと、を備えている。
【0060】
電子制御装置5は、入力部材2の移動量に応じて電動モータ3の駆動を制御するものであり、
図4に示すように、回路基板51と、回路基板51を収容するハウジング52と、を備えている。
回路基板51は、ストロークセンサから得られた情報や予め記憶させておいたプログラムなどに基づいて電動モータ3の駆動を制御する。
【0061】
ハウジング52は、基体10の取付部13の左側面13aに取り付けられている合成樹脂製の箱体である。ハウジング52は、取付部13の左側面13a全体を覆っている。
ハウジング52内の上部空間には、回路基板51が収容され、ハウジング52内の下部空間には電動モータ3が収容されている。
このように、第一実施形態のハウジング52は、回路基板51を収容するケースであるとともに、電動モータ3を収容するケースも兼ねている。
ハウジング52において、回路基板51の収容空間の右側面には開口部が形成されており、この開口部は平板状のカバー52bによって塞がれている。
【0062】
ハウジング52の右側面(基体10側の側面)の上端部には、筒状のコネクタ52aが左方に向けて突出している。コネクタ52aには、給電ケーブル等の各種ケーブルの端子が接続される。
【0063】
第一実施形態のブレーキ制御装置1では、
図6に示すように、ブレーキペダルPが踏み込まれると、プッシュロッドP1および入力ロッド22が前方に向けて押し出される。
入力ロッド22が前方に移動すると、入力ロッド22によって伝達部材21が前方に向けて押し出される。
【0064】
入力ロッド22に連動して磁石ホルダ25が前方に移動すると、磁石ホルダ25に取り付けられた磁石25a(
図5(b)参照)の磁束線の変化をストロークセンサ6が検出し、入力部材2(入力ロッド22)の前方への移動量が電子制御装置5(
図4参照)に出力される。
電子制御装置5は、
図4に示すように、ストロークセンサ6の検出結果に応じて、電動モータ3を駆動させ、出力軸3aを正回転させる。
【0065】
出力軸3aの左右方向の軸線回りの回転力は、ウォームギヤ機構47によって前後方向の軸線回りの回転力に変換され、回転筒体44が前後方向の軸線回りに回転する。
変換機構46では、
図6に示すように、回転筒体44が前後方向の軸線回りに正回転すると、ボールねじ機構46aによって直動筒体45が前方に押し出されて、直動筒体45が前方に移動する。
これにより、直動筒体45が伝達部材21のフランジ部21eを前方に向けて押圧し、伝達部材21とともに出力部材7が前方に向けて押し出される。
そして、出力部材7によってマスタシリンダ8のピストン8aが前方に向けて押し出され、マスタシリンダ8内にブレーキ液圧が発生する。
【0066】
また、ブレーキペダルPの踏み込みが解除されると、第二コイルばね24bの付勢力によって、入力ロッド22が後方に押し戻される。
そして、入力ロッド22の後方への移動をストロークセンサ6が検出し、その検出結果が電子制御装置5(
図4参照)に入力されると、
図4に示すように、電子制御装置5は、電動モータ3の出力軸3aを逆回転させる。
これにより、
図6に示すように、直動筒体45が後方に移動するとともに、伝達部材21は、第一コイルばね24aの付勢力によって後方に押し戻され、入力部材2が初期状態の位置に復帰する。
【0067】
また、車両の液圧制御装置によって自動ブレーキ制御が作動した場合には、電子制御装置5は、液圧制御装置からの信号に基づいて、電動モータ3の出力軸3a(
図4参照)を正回転させる。
そして、電動モータ3の駆動力のみによって伝達部材21および出力部材7が前方に向けて押し出され、マスタシリンダ8内にブレーキ液圧が発生する。
【0068】
システムが非作動時(OFF状態)にブレーキペダルPを踏み込んだ場合(例えば、電力が得られていない場合など)は、ブレーキペダルPの踏力によって、入力ロッド22が前方に移動する。そして、入力ロッド22によって伝達部材21および出力部材7が前方に向けて押し出され、マスタシリンダ8内にブレーキ液圧が発生する。
【0069】
第一実施形態のブレーキ制御装置1では、
図3に示すように、基体10の左側に電動モータ3および電子制御装置5が配置されている。つまり、マスタシリンダ8の左側の領域に電動モータ3および電子制御装置5が配置されている。また、電動モータ3および電子制御装置5は上下に並設されている。
【0070】
第一実施形態では、基体10とマスタシリンダ8とは、二つのボルトB3,B3によって着脱自在に連結されている。そして、基体10とマスタシリンダ8との二つの連結位置(ボルトB3,B3)は、マスタシリンダ8の中心位置に対して点対称に配置されている。
したがって、ブレーキ制御装置1では、マスタシリンダ8に対して基体10の取り付け向きを前後方向の軸線回りに半周移動させた状態でも、基体10とマスタシリンダ8とは、二つのボルトB3,B3によって連結することができる。
第一実施形態におけるマスタシリンダ8と基体10との連結状態から、マスタシリンダ8に対して基体10の取り付け向きを前後方向の軸線回りに半周移動させると、基体10の右側(マスタシリンダ8の右側の領域)に電動モータ3および電子制御装置5を配置することができる。
【0071】
第一実施形態のブレーキ制御装置1では、
図7(a)に示すように、基体10のセンサ取付部140に保護部材150およびブーツ部材160が取り付けられている。
基体10のセンサ取付部140の外周面には、
図5(a)に示すように、前後方向の略中央を境にして先端側(後側)の第一側面143と、基部側(前側)の第二側面144と、が形成されている。
第一側面143および第二側面144は、後側(先端側)から前側(基部側)に向かうに従って漸次拡径されたテーパ面に形成されている。これにより、基体10を鋳造したときに、センサ取付部140が金型からスムーズに抜くことができる。
【0072】
第一側面143は、第二側面144よりも径方向の内側に形成されている。第二側面144の最大外径は、第一側面143の最小外径よりも小さい。このように、センサ取付部140の外周面は、後側の小径部(第一側面143)と前側の大径部(第二側面144)とが形成された段付き形状である。
【0073】
第一側面143と第二側面144との間には、後記する保護部材150の開口縁部151に対向する対向面145が形成されている。対向面145は、センサ取付部140の軸方向(前後方向)に垂直な面である。対向面145の幅は、
図7(b)に示すように、保護部材150の厚さと略同じである。
【0074】
センサ取付部140の第一側面143には、
図7(a)に示すように、円筒状の保護部材150の前部が外嵌されている。
保護部材150は、磁性体であり、第一実施形態では鋼材を用いている。保護部材150の内径は、第一側面143の最大外径よりも僅かに小さく形成されている。したがって、保護部材150内にセンサ取付部140の第一側面143が圧入されており、保護部材150の内周面と第一側面143とが圧接している。
【0075】
保護部材150には、前側の開口縁部151から後方に向けて延びているスリット153が形成されている。第一実施形態では、保護部材150の周方向に複数のスリット153,153が間隔を空けて形成されている。
【0076】
保護部材150の前側の開口縁部151は、
図7(b)に示すように、対向面145の前側に位置している。保護部材150の前側(マスタシリンダ8側)の開口縁部151は、その全周が対向面145に対向している。第一実施形態では、保護部材150の前側の開口縁部151が対向面145に当接する位置まで、センサ取付部140が保護部材150内に挿入されている。
【0077】
保護部材150の後部は、ストロークセンサ6よりも後方(ブレーキペダルP側)に突出している。つまり、保護部材150の内部空間にストロークセンサ6が収容されており、保護部材150によってストロークセンサ6の外側面が覆われている。
【0078】
保護部材150には、
図1に示すように、複数の開口部155が周方向に間隔を空けて形成されている。開口部155は、保護部材150の壁部を貫通している。第一実施形態では、保護部材150の頂部および左右の下部の三箇所に開口部155が形成されている(
図1参照)。
【0079】
開口部155内には、
図7(a)に示すように、開口部155の前縁部から後方に向けて突出した係合片156が形成されている。係合片156の軸方向の中間部には、
図7(b)に示すように、下側に向けて突出するように屈曲した屈曲部156aが形成されている。
【0080】
センサ取付部140の第一側面143には、
図5(a)および(b)に示すように、複数の係合溝146が周方向に間隔を空けて形成されている。係合溝146は、
図7(b)に示すように、係合片156の屈曲部156aの頂部が挿入される溝部である。第一側面143には、三つの係合片156に対応して三つの係合溝146が形成されている。
保護部材150の各係合片156がセンサ取付部140の各係合溝146に係合されることで、センサ取付部140に対して保護部材150が固定されている。
【0081】
保護部材150の後側(ブレーキペダルP側)の開口縁部152には、有底筒状のブーツ部材160が接続されている。ブーツ部材160は、前後方向に伸縮自在なゴム製のカバーである。
保護部材150の後側の開口縁部152は、ブーツ部材160の前側の開口縁部161にインサート成形されている。このように、保護部材150の後端部とブーツ部材160の前端部とは連続しており、保護部材150とブーツ部材160とが一体に形成されている。
ブーツ部材160の底部162の中央部には、挿通穴162aが形成されている。この挿通穴162aにはプッシュロッドP1が挿通されている。
【0082】
以上のようなブレーキ制御装置1では、
図5(b)に示すように、ストロークセンサ6が基体10のセンサ取付部140の後端面141に取り付けられているため、ストロークセンサ6の組付作業やメンテナンスの作業効率を高めることができる。
【0083】
ブレーキ制御装置1では、
図7(b)に示すように、保護部材150がストロークセンサ6よりも後方に突出するとともに、保護部材150によってストロークセンサ6の外側面が覆われているため、ストロークセンサ6が他の部材に接触するのを防ぐことができる。したがって、
図8に示すように、ブレーキ制御装置1を車体に組み付けるときに、ストロークセンサ6がダッシュボードDに接触するのを防ぐことができる。
【0084】
ブレーキ制御装置1では、保護部材150の後側の開口縁部152が有底筒状のブーツ部材160によって覆われている。したがって、保護部材150によってストロークセンサ6を他の部材との接触から保護するとともに、ブーツ部材160によってストロークセンサ6を防塵することができる。
【0085】
ブレーキ制御装置1では、保護部材150を基体10のセンサ取付部140に外嵌させ、保護部材150の内周面とセンサ取付部140の外周面とを圧接させている。これにより、保護部材150を基体10に対して安定させることができる。
【0086】
ブレーキ制御装置1では、保護部材150の前側の開口縁部151に複数のスリット153が形成されているため、保護部材150をセンサ取付部140に外嵌したときに、スリット153が開いて保護部材150が拡径する。したがって、保護部材150をセンサ取付部140にスムーズに外嵌させることができる。
また、ブレーキ制御装置1では、保護部材150をセンサ取付部140に外嵌するときに、センサ取付部140の対向面145を基準にして位置決めすることができる。
さらに、対向面145によって保護部材150の前方への移動が規制されるため、
図8に示すように、ブレーキ制御装置1をダッシュボードDに組み付けるときに、保護部材150が基体10の前側に押し込まれるのを防ぐことができる。
【0087】
ブレーキ制御装置1では、
図7(b)に示すように、保護部材150の係合片156をセンサ取付部140の係合溝146に係合させることで、保護部材150を基体10に対して容易かつ確実に固定することができる。
【0088】
ブレーキ制御装置1では、センサ取付部140の小径部(第一側面143)に保護部材150が外嵌されているため、保護部材150がセンサ取付部140の外側に突出するのを抑制することができる。
【0089】
ブレーキ制御装置1では、
図7(a)に示すように、保護部材150が磁性体であるため、外部の磁界がストロークセンサ6の検出精度に与える影響を抑制することができる。
【0090】
以上、本発明の第一実施形態について説明したが、本発明は第一実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
【0091】
第一実施形態では、
図7(b)に示すように、保護部材150が鋼製の磁性体であるが、保護部材150の材質は限定されるものではない。
例えば、保護部材150を樹脂製の非磁性体によって形成してもよい。この場合には、保護部材150によってストロークセンサ6の周囲の磁界が変化しないため、ストロークセンサ6の検出精度を安定させることができる。
【0092】
第一実施形態では、
図6に示すように、基体10のブレーキペダルP側の端部に設けられたセンサ取付部140の外面にストロークセンサ6が取り付けられているが、基体10に対してストロークセンサ6を取り付ける位置は限定されるものではない。また、保護部材150の形状や取付位置も限定されるものではなく、ストロークセンサ6よりもブレーキペダルP側に突出していればよい。
【0093】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態のブレーキ制御装置について説明する。
第二実施形態のブレーキ制御装置は、第一実施形態のブレーキ制御装置1(
図1参照)と略同様の構成であり、
図9(a)に示すように、保護部材150の係合片156の形状が異なっている。
第一実施形態では、
図7(b)に示すように、係合片156に屈曲部156aが形成されているが、係合片156の形状は限定されるものではない。
第二実施形態では、
図9(a)に示すように、係合片156の後端部が内側に向けて折り曲げられている。
第二実施形態では、係合片156の後端部を係合溝146に入り込ませることで、センサ取付部140に対する保護部材150の抜け止めを強固にすることができる。
【0094】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態のブレーキ制御装置について説明する。
第三実施形態のブレーキ制御装置は、第一実施形態のブレーキ制御装置1(
図1参照)と略同様の構成であり、
図9(b)に示すように、保護部材150とブーツ部材160との接続部の構成が異なっている。
【0095】
第一実施形態では、
図7(b)に示すように、保護部材150とブーツ部材160とが一体に成形されているが、保護部材150とブーツ部材160との接続部の構成は限定されるものではない。
第三実施形態では、
図9(b)に示すように、保護部材150の後端部の外周面に凹溝157を形成するとともに、ブーツ部材160の前端部の内周面に凸部163が形成されている。そして、保護部材150の凹溝157にブーツ部材160の凸部163を嵌め込むことで、保護部材150とブーツ部材160とを接続している。
第三実施形態では、保護部材150とブーツ部材160とを別々に低コストで製造することができる。
【0096】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態のブレーキ制御装置について説明する。
第四実施形態のブレーキ制御装置は、第一実施形態のブレーキ制御装置1(
図1参照)と略同様の構成であり、
図9(c)に示すように、保護部材150とブーツ部材160との接続部の構成が異なっている。
【0097】
第四実施形態では、
図9(c)に示すように、センサ取付部140の後端部の外周面に凹溝147を形成するとともに、ブーツ部材160の前端部の内周面に凸部163を形成し、センサ取付部140の凹溝147にブーツ部材160の凸部163を嵌め込んでいる。この場合には、ブーツ部材160の外側で保護部材150をセンサ取付部140に外嵌させており、保護部材150の後部とブーツ部材160の前部とが内外に重ね合わされている。
第四実施形態では、保護部材150が簡単な形状になるため、保護部材150を低コストで製造することができる。また、ブーツ部材160の凸部163の外側に保護部材150が重ねられるため、センタ取付部140に対するブーツ部材160の抜け止めを保護部材150によって構成することができる。