(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記共通電極は、各々が主走査方向において隣り合う2つの前記個別電極に挟まれ且つ主走査方向において隣り合う2つの前記発熱部に繋がる2つの枝部を含む複数の分岐部を有している、請求項7に記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記した事情のもとで考え出されたものであって、印刷品質を向上させることが可能なサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、主面を有する主基板と、前記主基板の前記主面に支持され、且つ主走査方向に配列された複数の発熱部と、前記複数の発熱部を覆う保護層と、を備えたサーマルプリントヘッドであって、前記主基板の前記主面と前記複数の発熱部との間に介在し、前記主基板の厚さ方向視において主走査方向に延びる帯状であり且つ前記主面が向く側に膨出する形状とされた発熱部グレーズ層を備えており、前記保護層の表面形状は、前記厚さ方向視において前記発熱部グレーズ層を含む部分の最大膨出高さの1/4の高さと、前記保護層表面の最大膨出部から前記最大膨出高さの1/4の位置での副走査方向幅と、に基づいて算出された相当曲率半径が、6,200μm以上15,000μm以下であることを特徴としている。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数の発熱部を構成する抵抗体層を備える。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数の発熱部に電力供給するための電極層を備える。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗体層は、前記主基板の前記主面と前記電極層との間に介在する。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記主基板は、セラミックスからなる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗体層は、TaSiO
2またはTaNからなる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記電極層は、Alからなる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記電極層は、各々が前記複数の発熱部へと延びる複数の個別電極を有する。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記電極層は、前記複数の発熱部に対して前記複数の個別電極と異なる極性に設定される共通電極を有する。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記共通電極は、各々が主走査方向において隣り合う2つの前記個別電極に挟まれ且つ主走査方向において隣り合う2つの前記発熱部に繋がる2つの枝部を含む複数の分岐部を有している。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記電極層は、各々が隣り合う前記個別電極と前記枝部とに繋がる2つの前記発熱部に副走査方向において前記枝部とは反対側から繋がる複数の中間電極を有する。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数の中間電極は、前記厚さ方向視において前記発熱部グレーズ層に内包されている。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記主基板に対して副走査方向に隣接して配置された副基板と、前記副基板に搭載され、かつ前記複数の発熱部での発熱を制御するドライバICと、を備える。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記副基板は、ガラスエポキシ樹脂からなる。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記電極層と前記ドライバICとを接続する複数のワイヤを備える。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数のワイヤは、前記厚さ方向視において前記主基板の端縁と前記副基板の端縁とを跨いでいる。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記複数のワイヤを覆う封止部材を備える。
【0023】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記封止部材は、前記ドライバICを覆う。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記副基板に接続された外部接続部を備える。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記外部接続部は、フレキシブル配線基板である。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記主基板および前記副基板を、前記主面とは反対側から支持する支持部材を備える。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記支持部材は、金属からなる
【0028】
本発明の第2の側面によって提供されるサーマルプリンタは、本発明の第1の側面によって提供される前記サーマルプリントヘッドと、前記サーマルプリントヘッドの前記複数の発熱部に向けて押し付けられ且つ印刷対象材を搬送するためのプラテンローラと、を備えることを特徴としている。
【0029】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記プラテンローラの半径は、前記相当曲率半径の27%以上65%以下である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、前記相当曲率半径が6,200μm以上15,000μm以下であることにより、印刷品質を向上させることができる。
【0031】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0034】
図1〜
図5は、本発明の第1実施形態に基づくサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタを示している。本実施形態のサーマルプリンタB1は、サーマルプリントヘッドA1およびプラテンローラ91を備えている。サーマルプリントヘッドA1は、主基板1、発熱部グレーズ層2、抵抗体層3、電極層4、保護層5、副基板6、ドライバIC61、ワイヤ62、外部接続部63、封止部材7および支持部材8を備えている。
【0035】
図1は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部平面図である。
図2は、サーマルプリントヘッドA1およびサーマルプリンタB1を示す
図1のII−II線に沿う要部断面図である。
図3は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大断面図である。
図4は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部平面図である。
図5は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。
【0036】
主基板1は、サーマルプリントヘッドA1の土台となるものであり、好ましくは表面が絶縁性を示す。主基板1の材質は特に限定されないが、本実施形態においてはアルミナなどのセラミックスからなる場合を例に説明する。主基板1は、主走査方向xに長く延びる長矩形状である。主基板1は、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く主面11および裏面12を有する。
【0037】
発熱部グレーズ層2は、主基板1の主面11に形成されており、厚さ方向z視において主走査方向xに長く延びる帯状である。発熱部グレーズ層2は、主面11が向く側(厚さ方向zにおける図中上側)に膨出する形状とされている。発熱部グレーズ層2は、たとえばガラスからなる。
【0038】
また、本実施形態においては、主面11上にボンディング部グレーズ層21および補助ガラス層22が形成されている。ボンディング部グレーズ層21は、発熱部グレーズ層2に対して副走査方向yに離間した位置に形成されており、たとえば主走査方向xに長く延びる帯状である。ボンディング部グレーズ層21は、たとえばガラスからなる。補助ガラス層22は、主面11のうち発熱部グレーズ層2とボンディング部グレーズ層21とに挟まれた領域を覆っている。補助ガラス層22の厚さは、発熱部グレーズ層2の最大厚さよりも薄い。補助ガラス層22は、たとえば発熱部グレーズ層2およびボンディング部グレーズ層21を構成するガラスよりも焼成温度が低いガラスからなる。
【0039】
抵抗体層3は、主基板1の主面11に支持されている。本実施形態においては、抵抗体層3は、発熱部グレーズ層2、ボンディング部グレーズ層21および補助ガラス層22上に形成されている。抵抗体層3は、複数の発熱部31を有する。複数の発熱部31は、主走査方向xに配列されており、サーマルプリントヘッドA1(サーマルプリンタB1)を用いた印刷において、印刷媒体92へと伝える熱を発する部位である。抵抗体層3の材質としては、たとえば、TaSiO
2またはTaNが挙げられる。また、抵抗体層3の厚さは特に限定されないが、その一例を挙げると、たとえば0.05μm〜0.2μm程度である。
【0040】
電極層4は、抵抗体層3上に積層されており、抵抗体層3よりも抵抗値が小さい材質からなる。このような電極層4の材質としては、たとえばAlが挙げられるがこれに限定されず、たとえばCuやAu等が用いられてもよい。電極層4の厚さは特に限定されないが、その一例を挙げると、たとえば0.5μm〜2.0μm程度である。
【0041】
本実施形態においては、電極層4が形成された領域すべてに抵抗体層3が存在している。一方、電極層4は、抵抗体層3を部分的に露出させている。電極層4のうち抵抗体層3から露出した部分が、複数の発熱部31とされている。
【0042】
図4および
図5に示すように、本実施形態においては、電極層4は、複数の個別電極41、共通電極42および複数の中間電極43を有する。
【0043】
複数の個別電極41は、各々が概ね副走査方向yに沿って延びる帯状であり、主走査方向xに配列されている。個別電極41の副走査方向y図中上端から発熱部31が露出している。これにより、個別電極41は、発熱部31に繋がる構成となっている。
【0044】
共通電極42は、複数の個別電極41と異なる極性に設定される電極である。共通電極42は、複数の分岐部421を有する。各分岐部421は、隣り合う2つの個別電極41に挟まれている。分岐部421は、2つの枝部422を有する。2つの枝部422は、隣り合う2つの発熱部31に繋がっている。
【0045】
複数の中間電極43は、各々が隣り合う41と枝部422とに繋がる2つの発熱部31に副走査方向yにおいて枝部422とは反対側から繋がる。中間電極43は、たとえば厚さ方向z視においてコの字状である。本実施形態においては、複数の中間電極43は、そのすべてが厚さ方向z視において発熱部グレーズ層2に内包されている。
【0046】
このような構成により、いずれかの個別電極41が選択的に導通状態に置かれると、当該個別電極41、発熱部31、中間電極43、隣り合う発熱部31および枝部422から構成される導通経路に通電される。この結果、この導通経路に含まれる2つの発熱部31が発熱する。
【0047】
複数の個別電極41は、各々がワイヤボンディング部48を有する。ワイヤボンディング部48は、個別電極41のうち副走査方向yにおいて発熱部31とは反対側の部分である。本実施形態においては、複数のワイヤボンディング部48は、ボンディング部グレーズ層21上に形成されている。ワイヤボンディング部48は、主走査方向x寸法が相対的に大である。
【0048】
図4に示すように、共通電極42は、帯状部423を有している。帯状部423は、複数のワイヤボンディング部48よりも副走査方向y図中下方に位置し、且つ主走査方向xに長く延びる帯状である。複数の分岐部421は、帯状部423に繋がっており、互いに導通している。
【0049】
保護層5は、複数の発熱部31を覆っており、複数の発熱部31を保護するためのものである。本実施形態においては、保護層5は、抵抗体層3および電極層4のほぼ全体を覆っている。たとえば、複数のワイヤボンディング部48は、保護層5から露出している。保護層5は、たとえばガラス等からなる絶縁層を含む。この絶縁層は、抵抗体層3および電極層4に直接当接する。この絶縁層の材質としては、たとえばSiO
2が挙げられる。この絶縁層の厚さは特に限定されないが、一例を挙げると0.6μm〜2.0μm程度である。また、保護層5は、前記絶縁層上に積層された導電層を含む構成であってもよい。この導電層の材質としては、たとえばC/SiC、SiNまたはSiALONが挙げられる。この導電層の厚さは、特に限定されないが、一例を挙げると4.0〜6.0μm程度である。
【0050】
上述した構成の保護層5の形状は、主基板1、ボンディング部グレーズ層21、抵抗体層3および電極層4の影響を受ける。特に保護層5の形状は、ボンディング部グレーズ層21によって概略が決定される。このため、保護層5の保護層表面51のうち厚さ方向z視においてボンディング部グレーズ層21と重なる部分の形状は、主面11が向く側に膨出した形状となっている。保護層表面51のうち主面11から厚さ方向zに最も離間した部位が、最大膨出部511とされている。
【0051】
副基板6は、主基板1に対して副走査方向yに隣接して設けられている。副基板6は、主走査方向xに長く延びる長矩形状である。副基板6は、たとえばガラスエポキシ樹脂からなる基材を有しており、この基材上に配線層が形成されている。
【0052】
ドライバIC61は、複数の発熱部31に対して選択的に通電することにより、複数の発熱部31における発熱分布や発熱タイミングなどを制御するものである。本実施形態においては、複数のドライバIC61が、副基板6上に配置されている。ドライバIC61には、複数のワイヤ62がボンディングされている。これらのワイヤ62は、厚さ方向z視において主基板1の端縁と副基板6の端縁とに跨っており、電極層4の複数の個別電極41のワイヤボンディング部48にボンディングされている。また、ドライバIC61と副基板6の前記配線層の適所とは、他の複数のワイヤによって接続されていてもよい。
【0053】
外部接続部63は、副基板6に接続されており、たとえばサーマルプリントヘッドA1をサーマルプリンタB1に組み込む際に、サーマルプリンタB1の制御部(図示略)や電源部(図示略)と電気的に接続するために用いられる。外部接続部63の具体的構成は特に限定されず、図示された例においては、たとえばフレキシブル配線基板である。
【0054】
封止部材7は、複数のワイヤ62を覆っており、本実施形態においては、ドライバIC61をさらに覆っている。封止部材7は、たとえば黒色の樹脂からなる。
【0055】
支持部材8は、主基板1および副基板6を支持している。支持部材8の材質は特に限定されず、本実施形態においては、FeやAl等の金属からなる。
図1に示された支持部材8の厚さ方向z視形状は一例であり、支持部材8の形状や大きさは特に限定されない。
【0056】
プラテンローラ91は、サーマルプリンタB1において、印刷媒体92を搬送するための部品である。プラテンローラ91は、たとえば表層がゴムや樹脂等の材質からなり、主走査方向xに延びる軸を有する円柱形状である。本実施形態のプラテンローラ91は、その半径Rpが4mmとされている。
【0057】
図6〜
図8や、サーマルプリントヘッドA1の保護層表面51の形状の計測結果例を示している。当該計測においては、接触式の表面形状計測器を用いた。なお、これらの図においては、副走査方向y方向における向きは、
図3と同様であり、理解の便宜上、厚さ方向zの大きさを副走査方向yに対して20倍程度に拡大して示している。
【0058】
図6に示す例においては、保護層表面51は、発熱部グレーズ層2の膨出形状によって図中上方(厚さ方向z上方)に膨出した部分と、発熱部グレーズ層2に対して副走査方向yにおいて隣接する主面11の部位によって形作られた比較的平坦な部分と、を有している。最大膨出部511は、保護層表面51のうち主面11から厚さ方向zに最も離間した部位である。最大高さHmは、保護層表面51の前記平坦な部分から最大膨出部511までの高さである。1/4高さHqは、最大高さHmの1/4の高さである。1/4値幅Wqは、最大膨出部511から1/4高さHqだけ厚さ方向z下方の位置における保護層表面51の副走査方向yにおける幅である。
【0059】
発熱部グレーズ層2によって概ね形作られる保護層表面51の形状は、緩やかに膨出した形状である。保護層表面51のうち最大膨出部511を含む領域を、円弧形状であると仮定した場合に、その仮想的な曲率半径である相当曲率半径Reは、以下の数式1で定義される。
【0061】
図6に示す例においては、最大高さHmが54.8μm、1/4高さHqが13.7μm、1/4値幅Wqが970μmであり、相当曲率半径Reは、8,592μmであった。
図7に示す例においては、最大高さHmが54.1μm、1/4高さHqが13.5μm、1/4値幅Wqが959μmであり、相当曲率半径Reは、8,522μmであった。
図8に示す例においては、最大高さHmが54.1μm、1/4高さHqが13.5μm、1/4値幅Wqが955μmであり、相当曲率半径Reは、8,451μmであった。
【0062】
図9は、相当曲率半径Reと、印刷品質指標Saおよび許容シフト量Sbの関係を示している。図中の黒四角のマークが印刷品質指標Saを示しており、黒丸のマークが許容シフト量Sbを示している。
【0063】
印刷品質指標Saは、印刷媒体92に印刷した際の印刷品質を所定の基準によって数値化した指標である。
図10は、印刷品質指標Saが、1,800以上である場合の印刷例を示している。
図11は、印刷品質指標Saが、1,800未満である場合の印刷例を示している。それぞれの印刷例における複数の点状部分は、複数の発熱部31に対応する印刷ドットである。
図10に示す印刷例においては、複数の印刷ドットが適切な大きさおよび濃さで印刷されている。複数の印刷ドットの大きさにばらつきが少なく、隣り合う印刷ドットの隙間が少ない。一方、
図11に示す印刷例においては、複数の印刷ドットの大きさが
図10の印刷ドットよりも小であり、ばらつきもが大きい。また、隣り合う印刷ドットの間に隙間が散見される。
【0064】
図10の印刷例は、サーマルプリントヘッドA1の複数の発熱部31がプラテンローラ91に対して適切な圧力で押し付けられている場合である。一方、
図11の印刷例は、複数の発熱部31に対するプラテンローラ91の押し付け圧力が不足している場合である。プラテンローラ91の押し付け圧力は、保護層表面51の相当曲率半径Reが小さいほど高めやすく、相当曲率半径Reが大であるほど低くなる傾向にある。このため、
図9においては、相当曲率半径Reが大きくなるにしたがって、印刷品質指標Saが低下している。印刷品質指標Saを許容範囲である1,800以上に維持するためには、相当曲率半径Reは、15,000μm以下であることが必要である。なお、この場合、プラテンローラ91の半径Rp(4mm)は、相当曲率半径Reの27%以上である。
【0065】
許容シフト量Sbは、良好な印刷結果を維持するのに許容される、プラテンローラ91の中心軸と最大膨出部511との副走査方向yにおけるシフト量である。プラテンローラ91の中心軸と最大膨出部511との副走査方向y位置が一致する場合、
図13に示す印刷例が得られている。一方、プラテンローラ91の中心軸に対して最大膨出部511を副走査方向y一方側に0.3mmシフトさせた場合、
図12に示す印刷例が得られた。また、プラテンローラ91の中心軸に対して最大膨出部511を副走査方向y他方側に0.3mmシフトさせた場合、
図14に示す印刷例が得られた。
図13に示す印刷例が良好な印刷ドットが得られているのに対し、
図12および
図14に示す印刷例においては、プラテンローラ91と複数の発熱部31との押し付け状態が不適切な状態となったため、印刷ドットが不鮮明である。
【0066】
図10においては、
図13に示す良好な印刷例を維持し得る許容シフト量Sbを、相当曲率半径Reごとに試験した結果を示している。同図から理解されるように、相当曲率半径Reが大きくなるにしたがって、許容シフト量Sbは大きくなる傾向がみられる。プラテンローラ91の中心軸と最大膨出部511とが副走査方向yにずれる要因としては、サーマルプリンタB1に対するサーマルプリントヘッドA1の取り付け精度が挙げられる。サーマルプリントヘッドA1の取り付け精度として実用的である0.5mmを許容シフト量Sbの基準とした場合、相当曲率半径Reは、6,200μm以上であることが必要である。なお、この場合、プラテンローラ91の半径Rp(4mm)は、相当曲率半径Reの65%以下である。
【0067】
次に、サーマルプリントヘッドA1およびサーマルプリンタB1の作用について説明する。
【0068】
本実施形態によれば、相当曲率半径Reが6,200μm以上であることにより、サーマルプリントヘッドA1の取り付け精度が0.5mm以下であれば、プラテンローラ91を複数の発熱部31に対して適切に押し付けることが可能であり、
図13に示す良好な印刷結果が得られる。また、相当曲率半径Reが15,000μm以下であることにより、プラテンローラ91と複数の発熱部31との押し付け圧力を適切に高めることが可能であり、
図10に示す良好な印刷結果が得られる。したがって、サーマルプリントヘッドA1およびサーマルプリンタB1によれば、印刷品質を向上させることができる。
【0069】
また、プラテンローラ91の半径Rpが、相当曲率半径Reの27%以上65%以下であることは、印刷品質の向上に好ましい。
【0070】
発熱部グレーズ層2上に抵抗体層3および電極層4を積層させた構成は、保護層5の保護層表面51に過大な凹凸が生じることを抑制するのに好ましい。
【0071】
複数の発熱部31を挟んで、複数の個別電極41および複数の分岐部421と複数の中間電極43とが離間配置されている。これにより、主走査方向x視において複数の発熱部31と電極層4とは重ならない。このため、保護層表面51のうち厚さ方向z視において複数の発熱部31と重なる主走査方向xに長く延びる帯状部分は、比較的平坦な形状となる。これは、プラテンローラ91に対して保護層5(保護層表面51)ひいては複数の発熱部31を均一に押し付けるのに適している。
【0072】
補助ガラス層22を設けることにより、発熱部グレーズ層2と主面11との境界に抵抗体層3および電極層4を形成することを回避することができる。補助ガラス層22と発熱部グレーズ層2との境界部分は、発熱部グレーズ層2と主面11との境界部分よりも滑らかな形状に仕上げやすい。これは、抵抗体層3および電極層4に亀裂等が生じることを抑制するのに好ましい。
【0073】
図15および
図16は、本発明の変形例および他の実施形態を示している。なお、同図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0074】
図15は、サーマルプリントヘッドA1の変形例を示す要部拡大平面図である。本変形例においては、複数の個別電極41が互いの間に共通電極42を介在させることなく主走査方向xに配列されている。共通電極42は、複数の櫛歯部424および帯状部425を有する。
【0075】
複数の櫛歯部424は、副走査方向yにおいて複数の発熱部31を挟んで複数の個別電極41とは反対側に配置されている。各櫛歯部424は、副走査方向yに延びる形状であり、発熱部31に繋がっている。帯状部425は、副走査方向yにおいて複数の発熱部31に対して複数の櫛歯部424と同じ側に配置されており、主走査方向xに長く延びる帯状である。複数の櫛歯部424は、帯状部425に繋がっている。
【0076】
帯状部425は、厚さ方向z視において発熱部グレーズ層2と重なる位置に形成されてもよいし、発熱部グレーズ層2を避けた位置に形成されてもよい。また、帯状部425に、たとえばAgからなる金属層を積層させてもよい。この金属層を設けることにより、導通経路の低抵抗化を図ることが可能であり、通電による発熱損失を抑制することができる。
【0077】
このような変形例によっても、サーマルプリントヘッドA1およびサーマルプリンタB1による印刷品質を向上することができる。
【0078】
図16は、本発明の第2実施形態に基づくサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA2は、上述した補助ガラス層22を備えていない。抵抗体層3および電極層4は、主面11のうち発熱部グレーズ層2とボンディング部グレーズ層21とに挟まれた領域上にも形成されている。
【0079】
本実施形態によっても、サーマルプリントヘッドA2およびサーマルプリントヘッドA2を用いたサーマルプリンタによる印刷品質を向上することができる。
【0080】
本発明に係るサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0081】
抵抗体層および電極層の形状等の構成は、上述した構成に限定されず、複数の発熱部に通電可能な構成であればよい。また、抵抗体層と主基板の主面との間に、電極層が介在する構成であってもよい。