【実施例】
【0080】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
先ず、組成(質量%)CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3=30:60:5:5、平均粒子径5μm、比表面積70m
2/gのセリア−ジルコニア系固溶体粉末10gを用意した。次いで、100mlのイオン交換水にオキシ硝酸ジルコニル(和光純薬工業社製)及び硝酸ランタン6水和物(和光純薬工業社製)をそれぞれ0.7×10
−3molずつ溶解させて溶液を用意した(溶液準備工程)。
【0082】
次に、用意した溶液にセリア−ジルコニア系固溶体粉末10gを投入して15分間撹拌し、更に撹拌しながら加熱してセリア−ジルコニア系固溶体粉末に前記溶液を含浸させた(含浸担持)後、これを蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次いで、得られた凝固物を、大気中、900℃の温度条件で5時間焼成した後、乳鉢を用いて30分間以上粉砕し粉末化しコアシェル粉末を得た(第1の被覆工程)。
【0083】
次いで、得られたコアシェル粉末に対し、前記(第1の被覆工程)と同様にして前記用意した溶液を含浸担持させた後蒸発乾固し、その後焼成・粉砕する一連の処理を1回施すことにより、コアシェル担体を得た(第2の被覆工程)。
【0084】
次に、ロジウム(Rh)を金属換算で0.015g含む硝酸ロジウム溶液0.1Lに得られたコアシェル担体を含浸させた後、これを大気中、200℃の温度条件で120分間加熱攪拌して蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次いで、大気中、300℃の温度条件で5時間焼成せしめることにより、粉末状の排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた排ガス浄化用触媒におけるロジウムの担持量は、コアシェル担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0085】
(実施例2)
オキシ硝酸ジルコニル及び硝酸ランタンの溶解量を2.1×10
−3molずつとした以外は、実施例1と同様にしてコアシェル担体を得、さらに、実施例1と同様にして、得られたコアシェル担体に貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた排ガス浄化用触媒におけるロジウムの担持量は、コアシェル担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0086】
(実施例3)
オキシ硝酸ジルコニル及び硝酸ランタンの溶解量を2.1×10
−3molずつとし、得られたコアシェル粉末に対して第2の被覆工程(溶液の含浸担持、蒸発乾固及び焼成・粉砕の一連の処理)を更に1回施した(第2の被覆工程を合計2回行った)以外は、実施例1と同様にしてコアシェル担体を得、さらに、実施例1と同様にして、得られたコアシェル担体に貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた排ガス浄化用触媒におけるロジウムの担持量は、コアシェル担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0087】
(実施例4)
用意した溶液に更に硝酸ネオジム(溶解量:2.1×10
−3mol)を加えた以外は、実施例3と同様にしてコアシェル担体を得、さらに、実施例1と同様にして、得られたコアシェル担体に貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた排ガス浄化用触媒におけるロジウムの担持量は、コアシェル担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0088】
(実施例5)
セリア−ジルコニア系固溶体粉末に替えて組成(質量%)Al
2O
3:CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3:Nd
2O
3=30:20:44:2:2:2、平均粒子径8μm、比表面積70m
2/gのアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体粉末を用い、オキシ硝酸ジルコニル及び硝酸ランタンの溶解量を2.1×10
−3molずつとした以外は、実施例1と同様にしてコアシェル担体を得、さらに、実施例1と同様にして、得られたコアシェル担体に貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた排ガス浄化用触媒におけるロジウムの担持量は、コアシェル担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0089】
(実施例6)
セリア−ジルコニア系固溶体粉末に替えて組成(質量%)Al
2O
3:CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3:Nd
2O
3=30:20:44:2:2:2、平均粒子径8μm、比表面積70m
2/gのアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体粉末を用い、オキシ硝酸ジルコニル及び硝酸ランタンの溶解量を2.1×10
−3molずつとし、さらに、得られたコアシェル粉末に対して第2の被覆工程(溶液の含浸担持、蒸発乾固及び焼成・粉砕の一連の処理)を更に1回施した(第2の被覆工程を合計2回行った)以外は、実施例1と同様にしてコアシェル粉末を得、更に、実施例1と同様にして得られたコアシェル粉末に貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた排ガス浄化用触媒におけるロジウムの担持量は、コアシェル担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0090】
(比較例1)
比較用触媒担体として、セリア−ジルコニア系固溶体粉末(組成(質量%)CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3=30:60:5:5、平均粒子径8μm、比表面積60m
2/g)10gを用いた。次に、この比較用触媒担体粉末10gに対して、実施例1と同様にして貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の比較用触媒を得た。なお、得られた比較用触媒粉末におけるロジウムの担持量は、比較用触媒担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0091】
(比較例2)
比較用触媒担体として、アルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体粉末(組成(質量%)Al
2O
3:CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3:Nd
2O
3=30:20:44:2:2:2、平均粒子径8μm、比表面積70m
2/g)10gを用いた。次に、この比較用触媒担体粉末10gに対して、実施例1と同様にして貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の比較用触媒を得た。なお、得られた比較用触媒粉末におけるロジウムの担持量は、比較用触媒担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0092】
(比較例3)
先ず、セリア−ジルコニア系固溶体粉末(組成(質量%)CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3=30:60:5:5、平均粒子径8μm、比表面積60m
2/g)10gを用意した。次いで、100mlのイオン交換水にオキシ硝酸ジルコニル2水和物(和光純薬工業社製)及び硝酸ランタン6水和物(和光純薬工業社製)をそれぞれ0.7×10
−3molずつ溶解させて溶液を用意した。
【0093】
次に、用意した溶液にセリア−ジルコニア系固溶体粉末10gを投入して15分間撹拌し、更に撹拌しながら加熱してセリア−ジルコニア系固溶体粉末に前記溶液を含浸させた(含浸担持)後、これを蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次いで、得られた凝固物を、大気中、900℃の温度条件で5時間焼成した後、乳鉢を用いて30分間以上粉砕し粉末化して比較用触媒担体を得た。
【0094】
次いで、この比較用触媒担体粉末10gに対して、実施例1と同様にして貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の比較用触媒を得た。なお、得られた比較用触媒におけるロジウムの担持量は、比較用触媒担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0095】
(比較例4)
先ず、セリア−ジルコニア系固溶体粉末(組成(質量%)CeO
2:ZrO
2:La
2O
3:Y
2O
3=30:60:5:5、平均粒子径8μm、比表面積60m
2/g)10gを用意した。次いで、100mlのイオン交換水にオキシ硝酸ジルコニル2水和物(和光純薬工業社社製)及び硝酸ランタン6水和物(和光純薬工業社製)をそれぞれ8.75×10
−3molずつ溶解させて溶液を用意した。
【0096】
次に、用意した溶液にセリア−ジルコニア系固溶体粉末10gを投入して15分間撹拌し、更に撹拌しながら加熱してセリア−ジルコニア系固溶体粉末に前記溶液を含浸させた(含浸担持)後、これを蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次いで、得られた凝固物を、大気中、900℃の温度条件で5時間焼成した後、乳鉢を用いて30分間以上粉砕し粉末化して比較用触媒担体を得た。
【0097】
次いで、この比較用触媒担体粉末10gに対して、実施例1と同様にして貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の比較用触媒を得た。なお、得られた比較用触媒におけるロジウムの担持量は、比較用触媒担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0098】
[X線回折(XRD)測定]
実施例1〜6及び比較例3〜4で得られた各触媒について、各触媒のシェル(希土類−ジルコニア系複合酸化物)の平均結晶子径(平均一次粒子径)を以下のようにして測定した。
【0099】
先ず、実施例1〜6及び比較例3〜4で得られた各触媒を測定試料として、粉末X線回折装置(リガク社製、商品名「試料水平型多目的X線回折装置 Ultima IV」)を用いて、シェル(希土類−ジルコニア系複合酸化物)のX線回折(XRD)パターンを、スキャンステップ0.02、発散及び散乱スリット8deg、受光スリット10mm、CuKα線(λ=0.15418nm)、40kV、40mA、スキャン速度10deg/分の条件で測定した。このようにして得られたXRDパターンのシェルについて、希土類−ジルコニア系複合酸化物に由来するピーク(2θ=10〜80°)の回折線幅に基づいて、シェラーの式:
D=0.89×λ/βcosθ
(式中、Dは結晶子径を示し、λは使用X線波長を示し、βはXRDの測定試料の回折線幅を示し、θは回折角を示す)
を計算して、平均結晶子径(平均一次粒径)を算出した。得られた結果を表1に示す。
【0100】
表1に示した初期の実施例1〜6及び比較例3〜4の希土類−ジルコニア系複合酸化物の平均結晶子径から明らかなように。実施例1〜6の希土類−ジルコニア系複合酸化物の平均結晶子径が3〜9nmの範囲内であることが確認された。
【0101】
【表1】
【0102】
次に、実施例1〜6及び比較例3〜4で得られた各触媒について、各触媒のシェル(希土類−ジルコニア系複合酸化物)の組成(組成式:(Re
1−xCe
x)
2Zr
2O
7+x(式中、Reは希土類元素を示し、xは0.0〜0.8の数を示す。)及び組成式中のxを以下のようにして求めた。すなわち、格子定数が、Re
2Zr
2O
7のピーク位置から算出した格子定数とCe
2Zr
2O
8のピーク位置から算出した格子定数との間で直線的に変化すると仮定したとき、シェル材のピーク位置から算出した格子定数の値からシェル材のCe量、すなわちxの値を定める。得られた結果を表1に示す。
【0103】
また、耐久後の2θ=14.2°(度)付近のピークの有無によりパイロクロア相の有無を確認した。
【0104】
[高温耐久処理]
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた各触媒粉末を、静水圧プレス装置(日機装社製、商品名「CK4−22−60」)を用いて、冷間等方圧プレス(CIP)を1000kgf/cm
2の圧力(成型圧力)で1分間行って圧粉成型し、破砕、整粒して0.5〜1.0mmのペレットとし、評価試験用のペレット触媒試料(ペレット状の排ガス浄化用触媒)を得た。
【0105】
次に、得られたペレット触媒試料(1.5g)を常圧固定床流通型反応装置に設置した。次いで、1100℃の温度条件で、表2に示すガス組成のリーン(L)ガス及びリッチ(R)ガスを、5分間ずつ交互に10L(リットル)/分の流量で合計5時間流通させるモデルガス処理を施し、高温耐久処理(耐久試験)を行った。
【0106】
【表2】
【0107】
[ストイキ三元活性評価試験]
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた各触媒について、高温耐久処理後のペレット触媒試料に対して、流通反応装置及び排ガス分析装置を用い、以下のようにしてストイキ三元活性評価試験を行い、NOxの50%浄化温度(NOx_T50)を測定した。
【0108】
すなわち、先ず、高温耐久処理後のペレット触媒試料を、常圧固定床流通型反応装置の反応管(内容積:直径1.7cm、長さ9.5cm)に設置した。なお、触媒試料の量は、実施例1〜4、比較例1、3及び4では0.5g、実施例5〜6及び比較例2では0.25gとし、実施例5〜6及び比較例2では更に石英砂0.25gを前記触媒試料0.25gに加えて混合したのち、反応管に充填した。
【0109】
次に、表3に示すガス組成の3種の有害ガスを模擬した排気モデルガスを、600℃の温度条件下、10L/分の流量で6分間供給した(前処理)。その後、各試料の温度を100℃になるまで冷却した後、前記排気モデルガスを10L/分の流量で供給しながら6℃/分の昇温速度で100℃から600℃まで加熱していき、供給した排気モデルガス中のNOの浄化率が50%に到達する温度(NOxの50%浄化温度、℃)(「NOx_T50」と表す。)を測定した。
【0110】
【表3】
【0111】
得られた結果を表1に示す。また、実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた触媒のNOxの50%浄化温度(NOx_T50)を示すグラフを
図1に示す。
【0112】
[NOx過渡浄化活性評価試験]
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた各触媒について、高温耐久処理後のペレット触媒試料に対して、流通反応装置及び排ガス分析装置を用い、以下のようにしてNOx過渡浄化活性評価試験を行い、NOx過渡浄化率を測定した。
【0113】
すなわち、先ず、高温耐久処理後のペレット触媒試料を、常圧固定床流通型反応装置の反応管(内容積:直径1.7cm、長さ9.5cm)に設置した。なお、触媒試料の量は、実施例1〜4、比較例1、3及び4では0.5g、実施例5〜6及び比較例2では0.25gとし、実施例5〜6及び比較例2では更に石英砂0.25gを前記触媒試料0.25gに加えて混合したのち、反応管に充填した。
【0114】
次に、500℃の温度条件で、表4に示すガス組成のリーンのモデル排ガスを10L(リットル)/分の流量で180秒間流し、ガス組成を表4に示すガス組成のリッチのモデル排ガスに切り換えてこれを10L(リットル)/分の流量で180秒間流す、というサイクルを数回繰り返した後、ガス組成をリーンからリッチに切り換えた180秒後のNOx浄化率(NOx過渡浄化率、%)を測定した。
【0115】
【表4】
【0116】
得られた結果を表1に示す。また、実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた触媒のNOx過渡浄化率(%)を示すグラフを
図2に示す。
【0117】
[OSC(酸素吸放出)量の測定試験:OSC活性評価試験]
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた高温耐久処理後のペレット触媒試料に対して、流通反応装置及び分析計を用い、以下のようにしてOSC活性評価試験を行い、OSC速度を測定した。
【0118】
すなわち、先ず、高温耐久処理後のペレット触媒試料を、常圧固定床流通型反応装置の反応管(内容積:直径1.7cm、長さ9.5cm)に設置した。なお、触媒試料の量は、実施例1〜4、比較例1、3及び4では0.5g、実施例5〜6及び比較例2では0.25gとし、実施例5〜6及び比較例2では更に石英砂0.25gを前記触媒試料0.25gに加えて混合したのち、反応管に充填した。
【0119】
次に、500℃の温度条件で、固定床流通型反応装置にてリッチガス(CO(2容量%)+N
2(残部))とリーンガス(O
2(1容量%)+N
2(残部))とを3分毎に交互に切り替えて流し、リッチガスに切り換えてからリッチガス雰囲気で生成する酸素(O
2)の量を測定し、リッチガス導入後5秒間で生成した酸素(O
2)生成速度を酸素吸放出(OSC)速度(μmol/g/sec、又は、μmol−O
2/g/s)として求めた。なお、ガス流量は10L/minとし、分析計としてはベスト測器社製の商品名「Bex5900Csp」を用いた。
【0120】
得られた結果を表1に示す。また、実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた触媒のOSC速度(μmol−O
2/g/s)を示すグラフを
図3に示す。
【0121】
以上の実施例1〜6で得られたコアシェル担体及び排ガス浄化用触媒、比較例1〜4で得られた比較用触媒担体及び比較用触媒の構成を表5に示す。
【0122】
【表5】
【0123】
表1及び
図1〜3に示した実施例1〜6の結果と比較例1〜4の結果との比較から明らかなように、実施例1〜6のコアシェル担体及び排ガス浄化用触媒は、NOx浄化率及びOSC(酸素吸放出能)特性がともに優れていることが確認された。したがって、実施例1〜6の触媒では、セリア−ジルコニア系固溶体又はアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなるコアと、組成式:(Re
1−xCe
x)
2Zr
2O
7+x(式中、Reは希土類元素を示し、xは0.0〜0.8の数を示す。)で表される希土類−ジルコニア系複合酸化物からなり、前記コアの外側を被覆しているシェルとを備えており、前記希土類−ジルコニア系複合酸化物がパイロクロア構造を有する結晶粒子を含んでおり、かつ、前記希土類−ジルコニア系複合酸化物の平均結晶子径を3〜9nmに規定していることにより、NOx浄化率及びOSC(酸素吸放出能)特性の双方の性能をともに優れたものとすることができたものと考えられる。
【0124】
(実施例7〜9及び比較例5〜7)
<1.使用原料>
[材料1]
アルミナ(Al
2O
3)として、1質量%のLa
2O
3及び99質量%のAl
2O
3を含有する複合酸化物を使用した(以下、「材料1」とも記載する)。
【0125】
[材料2]
アルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体(ACZL)として、30質量%のAl
2O
3、20質量%のCeO
2、45質量%のZrO
2、5質量%のLa
2O
3を含有する複合酸化物を使用した(以下、「材料2」とも記載する)。
【0126】
[材料3]
本発明のコアシェル担体(LZ−ACZL)として、以下のようにして得られたコアシェル担体を使用した(以下、「材料3」とも記載する)。
【0127】
先ず、材料2の粉末(平均粒子径8μm、比表面積70m
2/g)10gを用意した。次いで、100mlのイオン交換水にオキシ硝酸ジルコニル(和光純薬工業社製)及び硝酸ランタン6水和物(和光純薬工業社製)をそれぞれ2.1×10
−3molずつ溶解させて溶液を用意した(溶液準備工程)。
【0128】
次に、用意した溶液に前記粉末10gを投入して15分間撹拌し、更に撹拌しながら加熱して前記粉末に前記溶液を含浸させた(含浸担持)後、これを蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次いで、得られた凝固物を、大気中、900℃の温度条件で5時間焼成した後、乳鉢を用いて30分間以上粉砕し粉末化しコアシェル粉末を得た(第1の被覆工程)。
【0129】
次いで、得られたコアシェル粉末に対し、前記(第1の被覆工程)と同様にして前記用意した溶液を含浸担持させた後蒸発乾固し、その後焼成・粉砕する一連の処理を1回施すことにより、以下に示すコアシェル担体を得た(第2の被覆工程)。
【0130】
コア:Al
2O
3−CeO
2−ZrO
2−La
2O
3
シェル(組成式中のx=0):La
2Zr
2O
7
シェルの平均結晶子径:6nm
シェルの担持量:12.0質量%。
【0131】
[材料4]
アルミナ添加ジルコニア系固溶体(AZL)として、30質量%のAl
2O
3、65質量%のZrO
2、5質量%のLa
2O
3を含有する複合酸化物を使用した(以下、「材料4」とも記載する)。
【0132】
[材料5]
ロジウム触媒の材料として、2.75質量%の貴金属含有量を有する硝酸ロジウム水溶液(キャタラー社製)を使用した(以下、「材料5」とも記載する)。
【0133】
[材料6]
パラジウム触媒の材料として、8.8質量%の貴金属含有量を有する硝酸パラジウム水溶液(キャタラー社製)を使用した(以下、「材料6」とも記載する)。
【0134】
[基材]
基材として、875cc(600H/3−9R−08)のコージェライトハニカム基材(デンソー社製)を使用した。
【0135】
<2.触媒の調製>
[比較例5]
上層(Rh(0.10)/ACZL(110)+Al
2O
3(28))及び下層(Pd(0.69)/ACZL(45)+Al
2O
3(40))を有する二層触媒
(下層の形成)
先ず、材料2及び6を用いた含浸法により、パラジウム(Pd)がアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体(ACZL)に担持された材料(Pd/ACZL:以下、「材料7」とも記載する)を調製した。次に、材料7、材料1及びアルミナ系バインダー(AS−200;日産化学工業社製)を、撹拌しながら蒸留水中に懸濁して、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを基材に流し入れた。不要なスラリーをブロアーで吹き払った。前記操作により、基材内壁の表面に材料をコーティングした。その際に、下層がコーティングされた基材において、基材容量に対して、パラジウムが0.69g/L、材料1が40g/L、材料2が45g/Lとなるように調製した。その後、スラリーでコーティングされた基材を、120℃に設定された乾燥機内で2時間静置して、スラリーの水分を蒸発させた。さらに、基材を、500℃に設定された電気炉内で2時間静置して、パラジウム含有触媒層を有する基材を得た。
【0136】
(上層の形成)
次に、材料2及び5を用いた含浸法により、ロジウム(Rh)がアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体(ACZL)に担持された材料(Rh/ACZL:以下、「材料8」とも記載する)を調製した。次に、材料8、材料1及びアルミナ系バインダーを、撹拌しながら蒸留水中に懸濁して、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを、パラジウム含有触媒層を有する基材に流し入れた。不要なスラリーをブロアーで吹き払った。前記操作により、基材内壁の表面に材料をコーティングした。その際に、上層がコーティングされた基材において、基材容量に対して、ロジウムが0.10g/L、材料1が28g/L、材料2が110g/Lとなるように調製した。その後、スラリーでコーティングされた基材を、120℃に設定された乾燥機内で2時間静置して、スラリーの水分を蒸発させた。さらに、基材を、500℃に設定された電気炉内で2時間静置して、上層としてロジウム含有触媒層及び下層としてパラジウム含有触媒層を有する二層触媒を得た。
【0137】
[比較例6]
上層(Rh(0.10)/AZL(55)+ACZL(55)+Al
2O
3(28))及び下層(Pd(0.69)/ACZL(45)+Al
2O
3(40))を有する二層触媒
先ず、材料4及び5を用いた含浸法により、ロジウム(Rh)がアルミナ添加ジルコニア系固溶体(AZL)に担持された材料(Rh/AZL:以下、「材料9」とも記載する)を調製した。次に、上層を形成する工程において、材料9、材料2、材料1及びアルミナ系バインダーを含むスラリーを用いるようにしたこと以外は比較例5と同様の手順により、上層としてロジウム含有触媒層及び下層としてパラジウム含有触媒層を有する二層触媒を得た。その際に、上層がコーティングされた基材において、基材容量に対して、ロジウムが0.10g/L、材料1が28g/L、材料2が55g/L、材料4が55g/Lとなるように調製した。
【0138】
[比較例7]
上層(Rh(0.05)/AZL(55)+Rh(0.05)/ACZL(55)+Al
2O
3(28))及び下層(Pd(0.69)/ACZL(45)+Al
2O
3(40))を有する二層触媒
上層を形成する工程において、材料9、材料8、材料1及びアルミナ系バインダーを含むスラリーを用いるようにしたこと以外は比較例5と同様の手順により、上層としてロジウム含有触媒層及び下層としてパラジウム含有触媒層を有する二層触媒を得た。その際に、上層がコーティングされた基材において、基材容量に対して、ロジウムが0.10g/L、材料1が28g/L、材料2が55g/L、材料4が55g/Lとなるように調製した。
【0139】
[実施例7]
上層(Rh(0.10)/LZ−ACZL(110)+Al
2O
3(28))及び下層(Pd(0.69)/ACZL(45)+Al
2O
3(40))を有する二層触媒
先ず、材料3及び5を用いた含浸法により、ロジウム(Rh)が本発明のコアシェル担体(LZ−ACZL)に担持された材料(Rh/LZ−ACZL:以下、「材料10」とも記載する)を調製した。次に、上層を形成する工程において、材料10、材料1及びアルミナ系バインダーを含むスラリーを用いるようにしたこと以外は比較例5と同様の手順により、上層としてロジウム含有触媒層及び下層としてパラジウム含有触媒層を有する二層触媒を得た。その際に、上層がコーティングされた基材において、基材容量に対して、ロジウムが0.10g/L、材料1が28g/L、材料3が110g/Lとなるように調製した。
【0140】
[実施例8]
上層(Rh(0.10)/AZL(55)+LZ−ACZL(55)+Al
2O
3(28))及び下層(Pd(0.69)/ACZL(45)+Al
2O
3(40))を有する二層触媒
上層を形成する工程において、材料9、材料3、材料1及びアルミナ系バインダーを含むスラリーを用いるようにしたこと以外は比較例5と同様の手順により、上層としてロジウム含有触媒層及び下層としてパラジウム含有触媒層を有する二層触媒を得た。その際に、上層がコーティングされた基材において、基材容量に対して、ロジウムが0.10g/L、材料1が28g/L、材料3が55g/L、材料4が55g/Lとなるように調製した。
【0141】
[実施例9]
上層(Rh(0.05)/AZL(55)+Rh(0.05)/LZ−ACZL(55)+Al
2O
3(28))及び下層(Pd(0.69)/ACZL(45)+Al
2O
3(40))を有する二層触媒
上層を形成する工程において、材料9、材料10、材料1及びアルミナ系バインダーを含むスラリーを用いるようにしたこと以外は比較例5と同様の手順により、上層としてロジウム含有触媒層及び下層としてパラジウム含有触媒層を有する二層触媒を得た。その際に、上層がコーティングされた基材において、基材容量に対して、ロジウムが0.10g/L、材料1が28g/L、材料3が55g/L、材料4が55g/Lとなるように調製した。
【0142】
<3.触媒の評価方法>
[耐久処理]
ガソリンエンジン(1UR−FE;トヨタ自動車社製)を用いて、1000℃(触媒床温)で25時間の条件で、実施例7〜9及び比較例5〜7の触媒の劣化促進処理を行った。このとき、スロットル開度及びエンジン負荷を調整することによって、リッチ〜ストイキ〜リーンの条件を一定サイクルで繰り返した。これにより、排気ガス組成を変動させて、触媒の劣化を促進させた。
【0143】
[OSC評価試験]
ガソリンエンジン(2AZ−FE;トヨタ自動車社製)を用いて、実施例7〜9及び比較例5〜7の触媒(劣化促進処理後)の酸素吸蔵特性を評価した。14.1及び15.1の空燃比(A/F)を目標に、A/Fをフィードバック制御した。理論空燃比とストイキ点のA/Fセンサー出力との差分(ΔA/F)より、酸素の過不足を以下の式:
OSC[g]=0.23×ΔA/F×噴射燃料量
から算出した。最大酸素吸蔵量を、OSCとして評価した。
【0144】
[定常NOx浄化性能評価試験]
ガソリンエンジン(2AZ−FE;トヨタ自動車社製)を用いて、実施例7〜9及び比較例5〜7の触媒(劣化促進処理後)の定常NOx浄化性能を評価した。14.1の空燃比(A/F)を目標に、A/Fをフィードバック制御し、600℃の条件下で、触媒通過後の排ガス中のNOx排出量を測定した。
【0145】
<4.触媒の評価結果>
実施例7〜9及び比較例5〜7の触媒(劣化促進処理後)のそれぞれについて、前記の手順により、最大酸素吸蔵量(OSC)及びNOx排出量を評価した。結果を表6及び
図4に示す。なお、
図4中、棒グラフが最大酸素吸蔵量(OSC)を示し、折れ線グラフがNOx排出量を示す。
【0146】
【表6】
【0147】
表6及び
図4に示すように、比較例5の触媒においては、コート層(上層)において貴金属をOSC材に直接担持しているため、OSC性能は高いものの、NOx排出量が非常に高かった。一方、比較例6の触媒においては、コート層(上層)において貴金属を他の材料に担持してOSC材と共存させているが、NOx排出量は改善されるものの、OSC性能が非常に低下していた。また、比較例7の触媒においては、貴金属の半分をOSC材に直接担持し、貴金属の半分を他の材料に担持しているが、性能は比較例5の触媒と比較例6の触媒の間に位置し、両性能を引き上げることはできなかった。
【0148】
本発明のコアシェル担体を用いた実施例7〜9の触媒においては、OSC材の表面を改質したLZ-ACZLを使用している。そのため、実施例7の触媒においては、コート層(上層)において貴金属を本発明のコアシェル担体に直接担持しているものの、NOx浄化性能を向上させた上で、OSC性能も高水準に確保できていることが確認された。また、実施例8の触媒においては、コート層(上層)において貴金属を他の材料に担持して本発明のコアシェル担体と共存させているものの、NOx浄化性能を向上させた上で、OSC性能も高水準に確保できていることが確認された。さらに、実施例9の触媒においては、貴金属の半分を本発明のコアシェル担体に直接担持し、貴金属の半分を他の材料に担持しているものの、NOx浄化性能を低下させることなく、OSC性能を向上させることができることが確認された。