特許第6676394号(P6676394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6676394コアシェル担体及びその製造方法、そのコアシェル担体を用いた排ガス浄化用触媒及びその製造方法、並びに、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法
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  • 6676394-コアシェル担体及びその製造方法、そのコアシェル担体を用いた排ガス浄化用触媒及びその製造方法、並びに、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676394
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】コアシェル担体及びその製造方法、そのコアシェル担体を用いた排ガス浄化用触媒及びその製造方法、並びに、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20200330BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20200330BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20200330BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20200330BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20200330BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   B01J23/63 AZAB
   B01J37/02 101E
   B01D53/94 222
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   F01N3/08 A
   F01N3/10 A
   F01N3/28 301P
【請求項の数】13
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-19455(P2016-19455)
(22)【出願日】2016年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-168586(P2016-168586A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年10月17日
(31)【優先権主張番号】特願2015-49275(P2015-49275)
(32)【優先日】2015年3月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田辺 稔貴
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真秀
【審査官】 中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/087822(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0336864(US,A1)
【文献】 国際公開第2005/102524(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0061903(US,A1)
【文献】 特開2007−144290(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/101219(WO,A1)
【文献】 特開2014−189433(JP,A)
【文献】 特表2007−504091(JP,A)
【文献】 特開2008−289985(JP,A)
【文献】 特開2012−187518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/94
B01J 21/00− 38/74
C01G 25/00
F01N 3/08
F01N 3/10
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス浄化用触媒の担体に用いるコアシェル担体であって、
セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材からなるコアと、
組成式:(Re1−xCeZr7+x(式中、Reは希土類元素を示し、xは0.0〜0.8の数を示す。)で表される希土類−ジルコニア系複合酸化物からなり、前記コアの外側を被覆しているシェルと、
を備えており、
前記酸素吸放出材がCeO−ZrO固溶体、CeO−ZrO−La固溶体、CeO−ZrO−La−Y固溶体、Al添加−CeO−ZrO固溶体、Al添加−CeO−ZrO−La固溶体及びAl添加−CeO−ZrO−La−Y−Nd固溶体からなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記組成式中のReがLa、Nd及びYからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、
前記希土類−ジルコニア系複合酸化物がパイロクロア構造を有する結晶粒子を含んでおり、かつ、
前記希土類−ジルコニア系複合酸化物の平均結晶子径が3〜9nmである、
ことを特徴とするコアシェル担体。
【請求項2】
前記組成式中のxが0.5〜0.7の数であることを特徴とする請求項1に記載のコアシェル担体。
【請求項3】
前記組成式中のReがLaであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコアシェル担体。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のコアシェル担体と、該コアシェル担体に担持されている貴金属とを備えるものであることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記貴金属がRhであることを特徴とする請求項4に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
基材と、該基材上に配置された触媒層とを備え、該触媒層が、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のコアシェル担体と、アルミナと、貴金属とを含有していることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記貴金属の少なくとも一部が前記コアシェル担体に担持されていることを特徴とする請求項6に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
前記触媒層がジルコニア系担体を更に含有しており、前記貴金属の少なくとも一部が前記ジルコニア系担体に担持されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項9】
前記貴金属がRhであることを特徴とする請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項10】
前記触媒層が、前記貴金属としてRhを含有するロジウム含有触媒層であり、かつ、
セリア−ジルコニア系固溶体及び/又はアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体とアルミナとPdとを含有しているパラジウム含有触媒層が、前記基材と前記ロジウム含有触媒層との間に配置されていることを特徴とする請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項11】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のコアシェル担体の製造方法であって、
希土類元素の塩とジルコニウムの塩とを含有する溶液を準備する溶液準備工程と、
セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材からなる粉末に前記溶液を接触せしめて、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が1〜8質量部となる量を担持せしめた後、600〜1100℃の範囲内の温度で3〜50時間焼成せしめ、その後粉砕することによりコアシェル粉末を得る第1の被覆工程と、
得られたコアシェル粉末に前記溶液を接触せしめて、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が1〜8質量部となる量を更に担持せしめた後、600〜1100℃の範囲内の温度で3〜50時間焼成せしめ、その後粉砕することによりコアシェル粉末を得る第2の被覆工程と、
を含んでおり、
前記酸素吸放出材がCeO−ZrO固溶体、CeO−ZrO−La固溶体、CeO−ZrO−La−Y固溶体、Al添加−CeO−ZrO固溶体、Al添加−CeO−ZrO−La固溶体及びAl添加−CeO−ZrO−La−Y−Nd固溶体からなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記希土類元素の塩がLa、Nd及びYからなる群から選択される少なくとも一種の元素の塩であり、
前記希土類元素の塩とジルコニウムの塩とを含有する溶液は、前記希土類元素の塩の濃度が希土類元素イオンとして0.001〜0.1mol/Lでありかつ前記ジルコニウムの塩の濃度がジルコニウムイオンとして0.001〜0.1mol/Lである溶液であり、かつ、
焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルを構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が4〜24質量部となるまで前記第2の被覆工程を1回又は2回実施して前記コアシェル担体を得ることを特徴とするコアシェル担体の製造方法。
【請求項12】
請求項4又は5に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法であって、
希土類元素の塩とジルコニウムの塩とを含有する溶液を準備する溶液準備工程と、
セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材からなる粉末に前記溶液を接触せしめて、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が1〜8質量部となる量を担持せしめた後、600〜1100℃の範囲内の温度で3〜50時間焼成せしめ、その後粉砕することによりコアシェル粉末を得る第1の被覆工程と、
得られたコアシェル粉末に前記溶液を接触せしめて、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が1〜8質量部となる量を更に担持せしめた後、600〜1100℃の範囲内の温度で3〜50時間焼成せしめ、その後粉砕することによりコアシェル粉末を得る第2の被覆工程と、
を含んでおり、
前記酸素吸放出材がCeO−ZrO固溶体、CeO−ZrO−La固溶体、CeO−ZrO−La−Y固溶体、Al添加−CeO−ZrO固溶体、Al添加−CeO−ZrO−La固溶体及びAl添加−CeO−ZrO−La−Y−Nd固溶体からなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記希土類元素の塩がLa、Nd及びYからなる群から選択される少なくとも一種の元素の塩であり、
前記希土類元素の塩とジルコニウムの塩とを含有する溶液は、前記希土類元素の塩の濃度が希土類元素イオンとして0.001〜0.1mol/Lでありかつ前記ジルコニウムの塩の濃度がジルコニウムイオンとして0.001〜0.1mol/Lである溶液であり、かつ、
焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルを構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が4〜24質量部となるまで前記第2の被覆工程を1回又は2回実施して前記コアシェル担体を得た後、該コアシェル担体に貴金属塩の溶液を接触せしめて前記排ガス浄化用触媒を得ることを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項13】
請求項4〜10のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒に内燃機関から排出された排ガスを接触せしめて排ガスを浄化することを特徴とする排ガス浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル担体及びその製造方法、そのコアシェル担体を用いた排ガス浄化用触媒及びその製造方法、並びに、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等に搭載される排ガス浄化触媒として、排気ガス中に含まれる有害ガス(炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx))等の有害成分を浄化するために、三元触媒や酸化触媒、NOx吸蔵還元触媒等が開発されている。そして、近年の環境意識の高まりから、自動車等から排出される排気ガス規制がより一層強化されており、それに伴いこれら触媒の改良が進められている。
【0003】
このような排ガス浄化触媒として、特開2007−144290号公報(特許文献1)には、少なくともロジウム粒子を含む貴金属粒子と、酸素吸蔵放出材粒子と、前記貴金属粒子と前記酸素吸蔵放出材粒子との間に介在し、前記酸素吸蔵放出材粒子とは離隔した表面で前記貴金属粒子を担持するZrOやTiO等の担体酸化物とを有することを特徴とする排ガス浄化触媒であって、前記酸素吸蔵放出材粒子が芯部、前記担体酸化物が前記酸素吸蔵放出材粒子を覆う殻部であるコア−シェル構造の担体を有し、前記貴金属粒子がこの担体の担体酸化物の外表面に接している排ガス浄化触媒が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示されている排ガス浄化触媒は、ZrOやTiO等の担体酸化物をCeO等の酸素吸蔵放出材(OSC材)からなるコア材に対して完全に被覆した触媒であるため、コア材に由来する酸素吸放出性能が大幅に低下してしまい、酸素吸放出性能(OSC)が必ずしも十分なものではなかった。
【0004】
さらに、近年は、排ガス浄化用触媒に対する要求特性が益々高まっており、酸素吸放出性能(OSC)及びNOx浄化活性がともに十分に発揮できる高度に優れた触媒性能を有する排ガス浄化用触媒担体及び排ガス浄化用触媒が求められるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−144290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分に優れた酸素吸放出性能(OSC)及び十分に優れたNOx浄化活性をともに発揮させることが可能なコアシェル担体及びその製造方法、そのコアシェル担体を用いた排ガス浄化用触媒及びその製造方法、並びに、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材からなるコアと、特定組成の希土類−ジルコニア系複合酸化物からなり、前記コアの外側を被覆しているシェルとを備えており、前記希土類−ジルコニア系複合酸化物がパイロクロア構造を有する結晶粒子を含んでおり、かつ、希土類−ジルコニア系複合酸化物の平均結晶子径を特定範囲のものとしたコアシェル担体とすることによって、酸素吸放出性能(OSC)及びNOx浄化活性をともに十分に発揮させることが可能なコアシェル担体及びその製造方法、そのコアシェル担体を用いた排ガス浄化用触媒及びその製造方法、並びに、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のコアシェル担体は、排ガス浄化用触媒の担体に用いるコアシェル担体であって、
セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材からなるコアと、
組成式:(Re1−xCeZr7+x(式中、Reは希土類元素を示し、xは0.0〜0.8の数を示す。)で表される希土類−ジルコニア系複合酸化物からなり、前記コアの外側を被覆しているシェルと、を備えており、
前記酸素吸放出材がCeO−ZrO固溶体、CeO−ZrO−La固溶体、CeO−ZrO−La−Y固溶体、Al添加−CeO−ZrO固溶体、Al添加−CeO−ZrO−La固溶体及びAl添加−CeO−ZrO−La−Y−Nd固溶体からなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記組成式中のReがLa、Nd及びYからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、
前記希土類−ジルコニア系複合酸化物がパイロクロア構造を有する結晶粒子を含んでおり、かつ、前記希土類−ジルコニア系複合酸化物の平均結晶子径が3〜9nmであることを特徴とするものである。
【0009】
本発明のコアシェル担体においては、前記組成式中のxが0.5〜0.7の数であることが好ましい。
【0010】
また、本発明のコアシェル担体においては、前記組成式中のReがLaであることが好ましい。
【0011】
本発明の第1の排ガス浄化用触媒は、上記本発明のコアシェル担体と、該コアシェル担体に担持されている貴金属とを備えるものであることを特徴とする触媒である。本発明の第1の排ガス浄化用触媒においては、前記貴金属がRhであることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の排ガス浄化用触媒は、基材と、該基材上に配置された触媒層とを備え、該触媒層が、前記本発明のコアシェル担体と、アルミナと、貴金属とを含有していることを特徴とする触媒である。本発明の第2の排ガス浄化用触媒においても、前記貴金属がRhであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の第2の排ガス浄化用触媒においては、
(1)前記貴金属の少なくとも一部が前記コアシェル担体に担持されていること、及び/又は、
(2)前記触媒層がジルコニア系担体を更に含有しており、前記貴金属の少なくとも一部が前記ジルコニア系担体に担持されていること、
が好ましい。
【0014】
さらに、本発明の第2の排ガス浄化用触媒においては、前記触媒層が、前記貴金属としてRhを含有するロジウム含有触媒層であり、かつ、セリア−ジルコニア系固溶体及び/又はアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体とアルミナとPdとを含有しているパラジウム含有触媒層が、前記基材と前記ロジウム含有触媒層との間に配置されていることが好ましい。
【0015】
本発明のコアシェル担体の製造方法は、上記本発明のコアシェル担体の製造方法であって、希土類元素の塩とジルコニウムの塩とを含有する溶液を準備する溶液準備工程と、
セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材からなる粉末に前記溶液を接触せしめて、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が1〜8質量部となる量を担持せしめた後、600〜1100℃の範囲内の温度で3〜50時間焼成せしめ、その後粉砕することによりコアシェル粉末を得る第1の被覆工程と、
得られたコアシェル粉末に前記溶液を接触せしめて、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が1〜8質量部となる量を更に担持せしめた後、600〜1100℃の範囲内の温度で3〜50時間焼成せしめ、その後粉砕することによりコアシェル粉末を得る第2の被覆工程と、
を含んでおり、
前記酸素吸放出材がCeO−ZrO固溶体、CeO−ZrO−La固溶体、CeO−ZrO−La−Y固溶体、Al添加−CeO−ZrO固溶体、Al添加−CeO−ZrO−La固溶体及びAl添加−CeO−ZrO−La−Y−Nd固溶体からなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記希土類元素の塩がLa、Nd及びYからなる群から選択される少なくとも一種の元素の塩であり、
前記希土類元素の塩とジルコニウムの塩とを含有する溶液は、前記希土類元素の塩の濃度が希土類元素イオンとして0.001〜0.1mol/Lでありかつ前記ジルコニウムの塩の濃度がジルコニウムイオンとして0.001〜0.1mol/Lである溶液であり、かつ、
焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルを構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が4〜24質量部となるまで前記第2の被覆工程を1回又は2回実施して前記コアシェル担体を得ることを特徴とする方法である。
【0016】
本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、上記本発明の第1の排ガス浄化用触媒の製造方法であって、希土類元素の塩とジルコニウムの塩とを含有する溶液を準備する溶液準備工程と、
セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材からなる粉末に前記溶液を接触せしめて、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が1〜8質量部となる量を担持せしめた後、600〜1100℃の範囲内の温度で3〜50時間焼成せしめ、その後粉砕することによりコアシェル粉末を得る第1の被覆工程と、
得られたコアシェル粉末に前記溶液を接触せしめて、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が1〜8質量部となる量を更に担持せしめた後、600〜1100℃の範囲内の温度で3〜50時間焼成せしめ、その後粉砕することによりコアシェル粉末を得る第2の被覆工程と、
を含んでおり、
前記酸素吸放出材がCeO−ZrO固溶体、CeO−ZrO−La固溶体、CeO−ZrO−La−Y固溶体、Al添加−CeO−ZrO固溶体、Al添加−CeO−ZrO−La固溶体及びAl添加−CeO−ZrO−La−Y−Nd固溶体からなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記希土類元素の塩がLa、Nd及びYからなる群から選択される少なくとも一種の元素の塩であり、
前記希土類元素の塩とジルコニウムの塩とを含有する溶液は、前記希土類元素の塩の濃度が希土類元素イオンとして0.001〜0.1mol/Lでありかつ前記ジルコニウムの塩の濃度がジルコニウムイオンとして0.001〜0.1mol/Lである溶液であり、かつ、
焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルを構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が4〜24質量部となるまで前記第2の被覆工程を1回又は2回実施して前記コアシェル担体を得た後、該コアシェル担体に貴金属塩の溶液を接触せしめて前記排ガス浄化用触媒を得ることを特徴とする方法である。
【0017】
本発明の排ガス浄化方法は、上記本発明の排排ガス浄化用触媒に内燃機関から排出された排ガスを接触せしめて排ガスを浄化することを特徴とする方法である。
【0018】
なお、本発明の触媒によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、従前の触媒においては、CeO等の酸素吸放出材上に担持されたRh等の貴金属は、メタル化が阻害されて排ガス浄化活性、その中でも特にNOxの浄化活性が低下する。しかしながら、三元触媒においては、CeO等を主成分とする酸素吸放出(OSC)材が必要不可欠である。すなわち、Rh触媒のNOxの浄化活性向上とOSCの担保が背反する性能とされてきた。
【0019】
本発明においては、セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材からなるコアと、組成式:(Re1−xCeZr7+x(式中、Reは希土類元素を示し、xは0.0〜0.8の数を示す。)で表される希土類−ジルコニア系複合酸化物からなり、前記コアの外側を被覆しているシェルとを備えており、前記希土類−ジルコニア系複合酸化物がパイロクロア構造を有する結晶粒子を含んでおり、かつ、前記希土類−ジルコニア系複合酸化物の平均結晶子径を3〜9nmに規定しているため、コアであるCeリッチなOSC材(セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材)に対して、シェルとしてパイロクロア構造で安定化したReZrを含むCeプアの(Re1−xCeZr7+xを形成したコアシェル担体とすることにより、このようなコアシェル担体の上に貴金属を担持することにより、貴金属の易還元性が向上し、NOx浄化活性が貴金属担持OSC材よりも向上させることができるものと推察される。また、従来NOx浄化活性と背反であった酸素吸放出性能を高いレベルで両立することが可能になり、十分に優れた酸素吸放出性能(OSC)及び十分に優れたNOx浄化活性をともに発揮させることが可能なコアシェル担体及びその製造方法、そのコアシェル担体を用いた排ガス浄化用触媒及びその製造方法、並びに、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法を提供することが可能になるものと推察される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、十分に優れた酸素吸放出性能(OSC)及び十分に優れたNOx浄化活性をともに発揮させることが可能なコアシェル担体及びその製造方法、そのコアシェル担体を用いた排ガス浄化用触媒及びその製造方法、並びに、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた触媒のNOxの50%浄化温度(NOx_T50)を示すグラフである。
図2】実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた触媒のNOx過渡浄化率を示すグラフである。
図3】実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた触媒のOSC速度を示すグラフである。
図4】実施例7〜9及び比較例5〜7の触媒(劣化促進処理後)の最大酸素吸蔵量(OSC)及びNOx排出量を示すグラフである。なお、棒グラフが最大酸素吸蔵量(OSC)を示し、折れ線グラフがNOx排出量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0023】
[コアシェル担体]
本発明のコアシェル担体について説明する。本発明のコアシェル担体は、セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材からなるコアと、組成式:(Re1−xCeZr7+x(式中、Reは希土類元素を示し、xは0.0〜0.8の数を示す。)で表される希土類−ジルコニア系複合酸化物からなり、前記コアの外側を被覆しているシェルと、を備えており、
前記希土類−ジルコニア系複合酸化物がパイロクロア構造を有する結晶粒子を含んでおり、かつ、前記希土類−ジルコニア系複合酸化物の平均結晶子径が3〜9nmである、ことを特徴とするコアシェル担体である。
【0024】
(コア)
本発明のコアシェル担体におけるコアとしては、セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材からなることが必要である。このような本発明のコアシェル担体のコアは、酸素吸放出能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有している。
【0025】
このような本発明のコアシェル担体のコアにおけるセリア−ジルコニア系固溶体としては、特に制限されないが、具体的には、CeO−ZrO固溶体、CeO−ZrO−La固溶体、CeO−ZrO−La−Y固溶体、CeO−PrO−ZrO−La−Y固溶体、CeO−ZrO−PrO固溶体、CeO−ZrO−La−Y−Nd固溶体が挙げられ、中でも、OSC性能及び耐熱性という観点から、CeO−ZrO固溶体、CeO−ZrO−La固溶体、CeO−ZrO−La−Y固溶体及びCeO−ZrO−PrO固溶体からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0026】
セリア−ジルコニア系固溶体は、該固溶体の総質量に対して、10〜70質量%のCeOと、30〜90質量%のZrOとを含有することが好ましい。また、セリア−ジルコニア系固溶体がCeO及びZrO以外の金属酸化物を含有する場合は、該固溶体の総質量に対して、互いに独立して、0.5〜10質量%の前記金属酸化物を含有することが好ましい。
【0027】
このようなセリア−ジルコニア系固溶体としては、規則相を十分に形成させるという観点から、セリアとジルコニアとが原子レベルで混合された固溶体を用いることが好ましい。また、このようなセリア−ジルコニア系固溶体としては、平均一次粒子径が10nm以下であることが好ましい。セリア−ジルコニア系固溶体の平均一次粒子径が前記上限を超えると、OSC性能、特に、OSC反応の速度が不十分になる傾向にある。
【0028】
また、このような本発明のコアシェル担体のコアにおけるアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体としては、特に制限されないが、具体的には、Al添加−CeO−ZrO固溶体、Al添加−CeO−ZrO−La固溶体、Al添加−CeO−ZrO−La−Y−Nd固溶体、Al添加−CeO−ZrO−PrO−La−Y固溶体が挙げられ、中でも、OSC性能及び耐熱性という観点から、Al添加−CeO−ZrO固溶体、Al添加−CeO−ZrO−La固溶体及びAl添加−CeO−ZrO−La−Y−Nd固溶体からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0029】
アルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体は、該固溶体の総質量に対して、10〜70質量%のAlと、10〜70質量%のCeOと、30〜80質量%のZrOとを含有することが好ましい。また、アルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体がAl、CeO及びZrO以外の金属酸化物を含有する場合は、該固溶体の総質量に対して、互いに独立して、0.5〜10質量%の前記金属酸化物を含有することが好ましい。
【0030】
このようなアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体としては、規則相を十分に形成させるという観点から、セリアとジルコニアとが原子レベルで混合された固溶体にアルミナがアモルファス状、γ−アルミナ又はθ−アルミナの形態で添加されているものを用いることが好ましい。また、このようなアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体としては、平均一次粒子径が10nm以下であることが好ましい。アルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体のCeO−ZrO平均一次粒子径が前記上限を超えると、OSC性能、特に、OSC反応の速度が不十分になる傾向にある。
【0031】
また、本発明のコアシェル担体にかかるコアとして、アルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体を用いた場合には、更に、アルミナの表面に対して一部ReZr表面濃化層が形成されることにより、例えば、酸化雰囲気でのRh等の貴金属のアルミナへの埋没による失活を抑制することが可能となるので好ましい。
【0032】
さらに、本発明のコアシェル担体にかかるコア(セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材)においては、担体の熱安定性や貴金属の触媒活性向上の観点から、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、ランタン(La)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、バナジウム(V)等の希土類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等の金属の酸化物、これらの金属の酸化物の混合物、これらの金属の酸化物の固溶体、これらの金属の複合酸化物を適宜用いることができる。
【0033】
また、本発明のコアシェル担体におけるコアとしては、セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材の二次粒子径(凝集粒子径)は、特に制限されないが、具体的には、100nm〜100μm程度であり、排ガス浄化用触媒のコート層に用いるという観点から、100nm〜10μmの範囲であることが好ましい。
【0034】
さらに、このようなコアの形状としては、特に制限されないが、粉末状のものが好ましい。また、このようなコアとしては、セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される一種を単独で或いは二種を組み合わせて用いることができる。
【0035】
さらに、このようなセリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体の製造方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このようなセリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体としては、市販のものを用いてもよい。
【0036】
(シェル)
次に、本発明のコアシェル担体におけるシェルとしては、組成式:(Re1−xCeZr7+x(式中、Reは希土類元素を示し、xは0.0〜0.8の数を示す。)で表される希土類−ジルコニア系複合酸化物からなることが必要である。このような希土類−ジルコニア系複合酸化物の組成式におけるxが、前記上限を超えると、Ceリッチになり、Rh等の貴金属のメタル化が阻害され、これにより触媒活性が低下して十分なNOx浄化活性が得られない。このようなxは、十分に高い酸素吸放出性能(OSC)と十分に高いNOx浄化活性を併せもち、高温に長時間晒された後においても十分に優れた酸素吸放出性能(OSC)を発揮するコアシェル担体を得るという観点から、0.1〜0.8の数であることが好ましく、0.5〜0.7の数であることが特に好ましい。
【0037】
なお、このような希土類−ジルコニア系複合酸化物の組成は、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分析装置を用いたICP発光分析(プラズマ発光分析)による組成分析、蛍光X線分析装置(XRF:X−ray Fluorescence Analysis)、EDX(エネルギー分散型X線検出装置)、XPS(光電子分光分析装置)、SIMS(二次イオン質量分析装置)、HR−TEM(高分解能透過型電子顕微鏡)、FE−STEM(フィールドエミッション−走査透過電子顕微鏡)等、又はそれらを適宜組み合わせた組成分析により確認することができる。具体的には、例えば、酸による粉末の溶解を行った後、得られた溶液のICP発光分析によりカチオンの重量比を測定することにより組成分析を実施し、希土類−ジルコニア系複合酸化物の組成分析を行う。
【0038】
また、このような希土類−ジルコニア系複合酸化物の組成式中のReは、希土類元素であることが必要である。このようなReとしては、具体的には、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、スカンジウム(Sc)及びイットリウム(Y)が挙げられ、これらの元素は1種のみを含んでいてもよいし、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。この中でも、材料価格及びNOx浄化活性という観点から、上記希土類−ジルコニア系複合酸化物の組成式中のReがランタン(La)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)及びイットリウム(Y)からなる群から選択される少なくとも一種の元素であることが好ましく、La、Nd及びYからなる群から選択される少なくとも一種の元素であることがより好ましい。
【0039】
また、本発明のコアシェル担体にかかるシェルにおける希土類−ジルコニア系複合酸化物としては、希土類−ジルコニア系複合酸化物がパイロクロア構造を有する結晶粒子を含んでいることが必要である。このような希土類−ジルコニア系複合酸化物において、パイロクロア構造を有するとは、上記組成式におけるReイオンとセリウムイオンとジルコニウムイオンとによるパイロクロア型の規則配列構造を有する結晶相(パイロクロア相)が構成されていることを意味する。パイロクロアReCZは酸素欠陥サイトを有し、そのサイトに酸素原子が入り込むことでパイロクロア相はκ相(カッパー相)に相変化する。一方、κ相は酸素原子を放出することによりパイロクロア相に相変化することができる。パイロクロア構造を有する希土類−ジルコニア系複合酸化物は、上記の格子内酸素原子数の変化により、酸素吸放出(OSC)の機能を有するものである。なお、このような希土類−ジルコニア系複合酸化物の結晶相は、CuKαを用いたX線回折(XRD)測定により判別することができる。XRDパターンにおいて、2θ=14.2°(度)付近の特徴的なピークを確認することによりパイロクロア相を確認することができる。
【0040】
また、本発明のコアシェル担体にかかるシェルにおける希土類−ジルコニア系複合酸化物としては、希土類−ジルコニア系複合酸化物の平均結晶子径が3〜9nmの範囲であることが必要である。希土類−ジルコニア系複合酸化物の平均結晶子径が前記下限未満になると、貴金属を担持した触媒としたときに、CeO−貴金属(Rh等)の相互作用による貴金属(Rh等)の難還元化が起こり、NOx浄化活性が低下してNOx浄化性能が十分に得られず、他方、前記上限を超えると、OSC性能が著しく低下するという問題が生じる。また、このような希土類−ジルコニア系複合酸化物の平均結晶子径としては、十分に高い酸素吸放出性能(OSC)と十分に高いNOx浄化活性を併せもち、高温に長時間晒された後においても十分に優れた酸素吸放出性能(OSC)を発揮するコアシェル担体を得るという観点から、1〜20nmであることが好ましい。なお、このような結晶子径は、例えば、粉末X線回折法による解析により求める方法、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)等による観察により求める方法を挙げられる。例えば、粉末X線回折法では、希土類−ジルコニア系複合酸化物を粉末X線回折法により分析し、得られた回折パターンから所定の結晶面(hkl)回折線の半値幅Bhkl(ラジアン)を求める。そして、シェラーの式:Dhkl=Kλ/Bhklcosθhklにより、希土類−ジルコニア系複合酸化物の粒子の(hKl)結晶面に垂直な方向の結晶子径の平均値Dhkl(nm)を算出することができる。前記シェラーの式中、定数Kは0.9であり、λはX線の波長(nm)であり、θhklは回折角(度、°)である。また、「平均結晶子径」とは、上記粉末X線回折法により求められる値であってかつ(440)面に垂直な方向の結晶子径の平均値D440(nm)をいう。
【0041】
さらに、本発明のコアシェル担体において、前記コアに担持される希土類−ジルコニア系複合酸化物の担持量としては、特に制限されないが、前記コア(セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材)100質量部に対して4〜24質量部であることが好ましく、8〜18質量部であることがより好ましい。このような活性成分の担持量が前記下限未満では、十分な触媒活性が得られなくなり、NOxの浄化率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒のコストが高くなるとともに触媒(OSC)の活性が低下する傾向にある。また、このような希土類−ジルコニア系複合酸化物を前記コアに担持させる方法としては、特に制限されず、前記コアに希土類−ジルコニア系複合酸化物の成分を担持することが可能な公知の方法を適宜採用でき、例えば、希土類−ジルコニア系複合酸化物の成分の金属の塩を含有する水溶液を前記コアに含浸させた後に乾燥し、焼成する方法を採用してもよい。
【0042】
[排ガス浄化用触媒]
次に、本発明の排ガス浄化用触媒について説明する。
【0043】
(本発明の第1の排ガス浄化用触媒)
本発明の第1の排ガス浄化用触媒は、上記本発明のコアシェル担体と、該コアシェル担体に担持されている貴金属とを備えるものである。
【0044】
このような本発明の排ガス浄化用触媒における貴金属としては、特に制限されないが、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、金(Au)等が挙げられる。これらの貴金属は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、十分に高い酸素吸放出性能(OSC)と十分に高いNOx浄化活性を併せもつ排ガス浄化用触媒を得るという観点から、白金、ロジウム、パラジウムであることが好ましく、ロジウムであることが特に好ましい。貴金属の担持量としては、特に制限はなく、得られる触媒の用途等に応じて適宜調整されるが、コアシェル担体100質量部に対して0.05〜10質量部であることが好ましい。
【0045】
また、本発明の排ガス浄化用触媒においては、その形態は特に制限されず、例えば、粒子の形態のまま用いてもよく、或いは、前記触媒を基材に担持したハニカム形状のモノリス触媒や、前記触媒をペレット形状に成形したペレット触媒の形態等として用いてもよい。このような形態の触媒を製造する方法としては、特に制限されないが、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、触媒をペレット状に成形してペレット形状の触媒を得る方法や、触媒を触媒基材にコートすることにより、触媒基材にコート(固定)した形態の触媒を得る方法等を適宜採用してもよい。また、このような触媒基材としては、特に制限されないが、例えば、得られる触媒の用途等に応じて適宜選択されるが、ハニカムモノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用される。また、このような触媒基材の材質も、特に制限されないが、例えば、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。さらに、本発明の排ガス浄化用触媒においては、その効果を損なわない範囲で各種触媒に用いることが可能な他の成分(例えば、NOx吸蔵材等)が適宜担持されていてもよい。
【0046】
(本発明の第2の排ガス浄化用触媒)
本発明の第2の排ガス浄化用触媒は、基材と、該基材上に配置された触媒層とを備え、該触媒層が、前記本発明のコアシェル担体と、アルミナと、貴金属とを含有していることを特徴とする触媒である。
【0047】
また、本発明の第2の排ガス浄化用触媒においては、
(1)前記貴金属の少なくとも一部が前記コアシェル担体に担持されていること、及び/又は、
(2)前記触媒層がジルコニア系担体を更に含有しており、前記貴金属の少なくとも一部が前記ジルコニア系担体に担持されていること、
が好ましい。
【0048】
本発明の第2の排ガス浄化用触媒における基材としては、特に制限されないが、例えば、得られる触媒の用途等に応じて適宜選択されるが、ハニカムモノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用される。また、このような触媒基材の材質も、特に制限されないが、例えば、コーディエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。
【0049】
本発明の第2の排ガス浄化用触媒における貴金属としては、特に制限されないが、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、金(Au)等が挙げられる。これらの貴金属は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、十分に高い酸素吸放出性能(OSC)と十分に高いNOx浄化活性を併せもつ排ガス浄化用触媒を得るという観点から、白金、ロジウム、パラジウムであることが好ましく、ロジウムであることが特に好ましい。貴金属の担持量としては、特に制限はなく、得られる触媒の用途等に応じて適宜調整されるが、担体100質量部に対して0.05〜10質量部であることが好ましい。
【0050】
本発明の第2の排ガス浄化用触媒においては、基材容量に対して、貴金属が0.01〜2.0g/L、前記本発明のコアシェル担体が50〜180g/L、アルミナが20〜150g/Lであることが好ましい。
【0051】
また、本発明の第2の排ガス浄化用触媒がジルコニア系担体を更に含有している場合、ジルコニア系担体としては、特に制限されないが、具体的には、ZrO、Al添加−ZrO、ZrO−La固溶体、Al添加−ZrO−La固溶体、ZrO−La−Y固溶体、Al添加−ZrO−La−Y固溶体、ZrO−PrO固溶体、Al添加−ZrO−PrO固溶体からなる担体が挙げられる。この場合、基材容量に対して、ジルコニア系担体が30〜80g/Lであることが好ましい。
【0052】
また、本発明の第2の排ガス浄化用触媒においては、前記触媒層が、前記貴金属としてRhを含有するロジウム含有触媒層であり、かつ、セリア−ジルコニア系固溶体及び/又はアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体とアルミナとPdとを含有しているパラジウム含有触媒層が、前記基材と前記ロジウム含有触媒層との間に配置されていることが好ましい。このようなパラジウム含有触媒層においては、基材容量に対して、パラジウムが0.01〜2.0g/L、セリア−ジルコニア系固溶体及び/又はアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体が10〜60g/L、アルミナが20〜70g/Lであることが好ましい。
【0053】
[コアシェル担体の製造方法]
次に、本発明のコアシェル担体の製造方法について説明する。本発明のコアシェル担体の製造方法は、上記本発明のコアシェル担体の製造方法であって、
希土類元素の塩とジルコニウムの塩とを含有する溶液を準備する溶液準備工程と、
セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材からなる粉末に前記溶液を接触せしめて、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が1〜8質量部となる量を担持せしめた後、600〜1100℃の範囲内の温度で焼成せしめ、その後粉砕することによりコアシェル粉末を得る第1の被覆工程と、
得られたコアシェル粉末に前記溶液を接触せしめて、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が1〜8質量部となる量を更に担持せしめた後、600〜1100℃の範囲内の温度で焼成せしめ、その後粉砕することによりコアシェル粉末を得る第2の被覆工程と、を含んでおり、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルを構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が4〜24質量部となるまで前記第2の被覆工程を実施して前記コアシェル担体を得ることを特徴とする方法である。
【0054】
(溶液準備工程)
本発明のコアシェル担体の製造方法においては、先ず、希土類元素の塩とジルコニウムの塩とを含有する溶液を準備する(溶液準備工程)。
【0055】
このような溶液における希土類元素の塩としては、特に制限されないが、例えば、希土類元素の硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物(弗化物、塩化物等)、酢酸塩、炭酸塩、有機酸塩(例えば、クエン酸塩)、等の希土類元素の塩又はその錯体が挙げられる。中でも、このような希土類元素の塩としては、コアへの均一な担持、コスト面や調製時にシェル中に残留する成分を比較的除去し易いという観点から、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩及びクエン酸塩からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。このような溶液における希土類元素としては、上記本発明のコアシェル担体において説明したものと同様のものを用いることができる。
【0056】
また、このような溶液におけるジルコニウム(Zr)の塩としては、例えば、ジルコニウムの硝酸塩(例えば、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニル)、硫酸塩、ハロゲン化物(弗化物、塩化物等)、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、等のジルコニウム塩又はその錯体が挙げられる。中でも、このようなZrの塩としては、コアへの均一な担持、コスト面や調製時にシェル中に残留する成分を比較的除去し易いという観点から、硝酸塩及び酢酸塩からなる群から選択される少なくとも一種を用いることがより好ましい。
【0057】
さらに、溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水(好ましくはイオン交換水及び蒸留水等の純水)等の溶媒が挙げられる。
【0058】
なお、このような希土類元素の塩とジルコニウムの塩とを含有する溶液の濃度としては、特に制限されないが、希土類元素イオンとして0.001〜0.1mol/L、ジルコニウム(Zr)イオンとして0.001〜0.1mol/Lの範囲であることが好ましい。
【0059】
(第1の被覆工程)
次に、セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材からなる粉末に前記溶液を接触せしめて、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が1〜8質量部となる量を担持せしめた後、600〜1100℃の範囲内の温度で焼成せしめ、その後粉砕することによりコアシェル粉末を得る(第1の被覆工程)。
【0060】
前記セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材からなる粉末に前記溶液を接触せしめる方法としては、特に制限されず、前記粉末に前記溶液を含浸せしめる方法、前記粉末に前記溶液を吸着担持させる方法、前記溶液に前記粉末を含浸せしめる方法等、前記溶液を前記粉末に吸着担持させることが可能な公知の方法を適宜採用できる。
【0061】
また、このように前記酸素吸放出材からなる粉末に前記溶液を接触せしめる際においては、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が1〜8質量部となる量を担持せしめることが必要である。このような前記溶液の担持量が前記下限未満である場合には、十分な触媒活性を発揮することが困難となり、他方、前記上限を超える場合には、担持ムラや組成ムラが生じて触媒活性低下が惹起される。なお、このような前記溶液の担持量としては、均一な担持密度で担持させるという観点から、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が2〜6質量部となる量であることが好ましく、4〜6質量部となる量であることが更に好ましい。
【0062】
さらに、前記焼成の加熱条件としては、600〜1100℃の温度範囲内であることが必要である。このような焼成の加熱温度が、前記下限未満である場合には、所望の構造の安定したパイロクロア相が形成されず、他方、前記上限を超える場合には、比表面積の低下を招いて触媒性能が著しく低下する。このような加熱温度としては、シェル材の結晶相安定化という観点から、800〜1000℃の温度範囲内であることが好ましい。また、前記焼成における加熱時間としては、前記加熱温度に依存するものであるため一概には言えないが、3〜50時間であることが好ましい。さらに、焼成の雰囲気としては、特に制限されないが、大気中、酸化雰囲気中であることが好ましい。
【0063】
また、前記粉砕としては、特に制限されないが、粉砕方法としては、具体的には、乾式粉砕法又は湿式粉砕法のいずれの方法も使用でき、粉砕装置としては、乳鉢、ボールミル、ミキサー等が挙げられる。乾式粉砕の場合は、乳鉢を用いて行ってもよく、ボールミルやアトライター、遊星ミル等の粉砕混合機を用いてもよい。湿式粉砕の場合は、粉砕の助剤として使用される溶媒の種類は水、アルコール類等が挙げられる。なお、このような粉砕としては、乳鉢、ミキサー等を用いて行うことが好ましく、粉砕条件としては、粉末が所定の粉末径のふるいを通るように(100nm〜100μm程度)粉砕することが好ましい。
【0064】
(第2の被覆工程)
次いで、得られたコアシェル粉末に前記溶液を接触せしめて、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が1〜8質量部となる量を更に担持せしめた後、600〜1100℃の範囲内の温度で焼成せしめ、その後粉砕することによりコアシェル粉末を得る(第2の被覆工程)。
【0065】
得られたコアシェル粉末に前記溶液を接触せしめる方法としては、特に制限されず、前記粉末に前記溶液を含浸せしめる方法、前記粉末に前記溶液を吸着担持させる方法、前記溶液に前記粉末を含浸せしめる方法等、前記溶液を前記粉末に吸着担持させることが可能な公知の方法を適宜採用できる。前記第1の被覆工程において説明した接触方法と同様の方法を用いることができる。
【0066】
また、前記セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の前記酸素吸放出材からなる粉末に前記溶液を接触せしめる方法としては、特に制限されず、前記粉末に前記溶液を含浸せしめる方法、前記粉末に前記溶液を吸着担持させる方法等、公知の方法を適宜採用できる。
【0067】
また、前記コアシェル粉末に前記溶液を接触せしめる際においては、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が1〜8質量部となる量を更に担持せしめることが必要である。このような前記溶液の担持量が前記下限未満である場合には、十分な触媒活性を発揮することが困難となり、他方、前記上限を超える場合には、担持ムラや組成ムラが生じて触媒活性低下が惹起される。なお、このような前記溶液の担持量としては、均一な担持密度で担持するという観点から、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が2〜6質量部となる量であることが好ましく、4〜6質量部となる量であることが更に好ましい。
【0068】
さらに、前記焼成の加熱条件としては、600〜1100℃の温度範囲内であることが必要である。このような焼成の加熱温度が、前記下限未満である場合には、所望の構造の安定したパイロクロア相が形成されず、他方、前記上限を超える場合には、比表面積の低下を招いて触媒性能が著しく低下する。このような加熱温度としては、シェルの結晶相安定化という観点から、800〜1000℃の温度範囲内であることが好ましい。また、前記焼成における加熱時間としては、前記加熱温度に依存するものであるため一概には言えないが、3〜50時間であることが好ましい。さらに、焼成の雰囲気としては、特に制限されないが、大気中、少なくとも酸化雰囲気であることが好ましい。
【0069】
また、前記粉砕としては、特に制限されず、前記第1の被覆工程で説明した方法及び条件等と同様である。
【0070】
さらに、本発明のコアシェルの製造方法にかかる第2の被覆工程においては、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルを構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が4〜24質量部となるまでこの第2の被覆工程を実施して前記コアシェル担体を得る。なお、このような第2の被覆工程は、1〜2回実施することが好ましい。このようにすることにより、コア表面に希土類元素とジルコニウムの表面濃化層をより均一に堆積させ、シェルを構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物に形成されるパイロクロア構造(Re1−xCeZr7+xをより安定化させることができる。
【0071】
このような本発明のコアシェル担体の製造方法においては、前記第1の被覆工程と前記第2の被覆工程とを含んでいることにより、シェルの形成方法として希土類元素の塩とジルコニウムの塩とを含有する溶液を複数回に分けて、セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の前記酸素吸放出材からなる粉末及び前記コアシェル粉末に薄く含浸又は吸着担持せしめ、その都度(含浸又は吸着担持毎に)高温焼成及び粉砕を施すことにより、OSC材としてのコア表面に希土類元素とジルコニウムの表面濃化層を均一に堆積させ、高温焼成によりOSC材としてのコアのCeの一部がシェル側に固溶したCeプアのパイロクロア構造(Re1−xCeZr7+xをシェルとしての希土類−ジルコニア系複合酸化物に形成させ安定化させることができる。
【0072】
[排ガス浄化用触媒の製造方法]
次に、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法は、上記本発明の第1の排ガス浄化用触媒の製造方法であって、希土類元素の塩とジルコニウムの塩とを含有する溶液を準備する溶液準備工程と、
セリア−ジルコニア系固溶体及びアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなる群から選択される少なくとも一種の酸素吸放出材からなる粉末に前記溶液を接触せしめて、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が1〜8質量部となる量を担持せしめた後、600〜1100℃の範囲内の温度で焼成せしめ、その後粉砕することによりコアシェル粉末を得る第1の被覆工程と、
得られたコアシェル粉末に前記溶液を接触せしめて、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルの一部を構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が1〜8質量部となる量を更に担持せしめた後、600〜1100℃の範囲内の温度で焼成せしめ、その後粉砕することによりコアシェル粉末を得る第2の被覆工程と、を含んでおり、焼成後の酸化物換算で前記コアを構成する前記酸素吸放出材100質量部に対して前記シェルを構成する前記希土類−ジルコニア系複合酸化物が4〜24質量部となるまで前記第2の被覆工程を実施して前記コアシェル担体を得た後、該コアシェル担体に貴金属塩の溶液を接触せしめて前記排ガス浄化用触媒を得ることを特徴とする方法である。
【0073】
このような本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法においては、溶液準備工程、第1の被覆工程及び第2の被覆工程については、前記コアシェル担体の製造方法において説明した溶液準備工程、第1の被覆工程及び第2の被覆工程と同様である。
【0074】
次に、前記コアシェル担体に貴金属塩の溶液を接触せしめて排ガス浄化用触媒を得る(触媒調製工程)。このような触媒調製工程において、貴金属塩の溶液を接触せしめる具体的な方法は特に制限されないが、例えば、貴金属の塩(硝酸塩、塩化物、酢酸塩等)又は貴金属の錯体を水、アルコール等の溶媒に溶解した溶液に前記コアシェル担体を浸漬し、溶媒を除去した後に焼成及び粉砕するといった方法が好適に用いられる。
【0075】
なお、前記触媒調製工程において、溶媒を除去する際における乾燥条件としては150〜200℃で180分以内程度が好ましく、また、焼成条件としては、酸化雰囲気(例えば、空気)中において300〜400℃で3〜5時間程度が好ましい。また、所望の担持量になるまでこのような貴金属の担持工程を繰り返してもよい。
【0076】
また、このような本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法において、担持せしめる貴金属としては、十分に高い酸素吸放出性能(OSC)と十分に高いNOx浄化活性を併せもつ排ガス浄化用触媒を得るという観点から、白金、ロジウム、パラジウムであることが好ましく、Rhであることが特に好ましい。
【0077】
[排ガス浄化方法]
次に、本発明の排ガス浄化方法について説明する。本発明の排ガス浄化方法は、上記本発明の排ガス浄化用触媒に内燃機関から排出された排ガスを接触せしめて排ガスを浄化することを特徴とする方法である。
【0078】
このよう本発明の排ガス浄化方法において、上記本発明の排ガス浄化用触媒に排ガスを接触させる方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、内燃機関から排出されるガスが流通する排ガス管内に上記本発明にかかる排ガス浄化用触媒を配置することにより、排ガス浄化用触媒に対して内燃機関からの排ガスを接触させる方法を採用してもよい。
【0079】
なお、本発明の排ガス浄化方法において用いる上記本発明の排ガス浄化用触媒は、十分に優れた酸素吸放出性能(OSC)及び十分に優れたNOx浄化活性をともに有するものであるため、十分に優れた酸素吸放出性能(OSC)及び十分に優れたNOx浄化活性をともに発揮させることが可能であり、このような前記本発明の排ガス浄化触媒に、例えば、内燃機関からの排ガスを接触させることで、十分に高い酸素吸放出性能(OSC)と十分に高いNOx浄化活性の双方を発揮することができ、排ガス中に含まれるNOx等の有害ガスを十分に浄化することが可能となる。このような観点から、本発明の排ガス浄化方法は、例えば、自動車等の内燃機関から排出されるような排ガス中に含まれる有害ガス(炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx))等の有害成分を浄化するための方法等として好適に採用することができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
先ず、組成(質量%)CeO:ZrO:La:Y=30:60:5:5、平均粒子径5μm、比表面積70m/gのセリア−ジルコニア系固溶体粉末10gを用意した。次いで、100mlのイオン交換水にオキシ硝酸ジルコニル(和光純薬工業社製)及び硝酸ランタン6水和物(和光純薬工業社製)をそれぞれ0.7×10−3molずつ溶解させて溶液を用意した(溶液準備工程)。
【0082】
次に、用意した溶液にセリア−ジルコニア系固溶体粉末10gを投入して15分間撹拌し、更に撹拌しながら加熱してセリア−ジルコニア系固溶体粉末に前記溶液を含浸させた(含浸担持)後、これを蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次いで、得られた凝固物を、大気中、900℃の温度条件で5時間焼成した後、乳鉢を用いて30分間以上粉砕し粉末化しコアシェル粉末を得た(第1の被覆工程)。
【0083】
次いで、得られたコアシェル粉末に対し、前記(第1の被覆工程)と同様にして前記用意した溶液を含浸担持させた後蒸発乾固し、その後焼成・粉砕する一連の処理を1回施すことにより、コアシェル担体を得た(第2の被覆工程)。
【0084】
次に、ロジウム(Rh)を金属換算で0.015g含む硝酸ロジウム溶液0.1Lに得られたコアシェル担体を含浸させた後、これを大気中、200℃の温度条件で120分間加熱攪拌して蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次いで、大気中、300℃の温度条件で5時間焼成せしめることにより、粉末状の排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた排ガス浄化用触媒におけるロジウムの担持量は、コアシェル担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0085】
(実施例2)
オキシ硝酸ジルコニル及び硝酸ランタンの溶解量を2.1×10−3molずつとした以外は、実施例1と同様にしてコアシェル担体を得、さらに、実施例1と同様にして、得られたコアシェル担体に貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた排ガス浄化用触媒におけるロジウムの担持量は、コアシェル担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0086】
(実施例3)
オキシ硝酸ジルコニル及び硝酸ランタンの溶解量を2.1×10−3molずつとし、得られたコアシェル粉末に対して第2の被覆工程(溶液の含浸担持、蒸発乾固及び焼成・粉砕の一連の処理)を更に1回施した(第2の被覆工程を合計2回行った)以外は、実施例1と同様にしてコアシェル担体を得、さらに、実施例1と同様にして、得られたコアシェル担体に貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた排ガス浄化用触媒におけるロジウムの担持量は、コアシェル担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0087】
(実施例4)
用意した溶液に更に硝酸ネオジム(溶解量:2.1×10−3mol)を加えた以外は、実施例3と同様にしてコアシェル担体を得、さらに、実施例1と同様にして、得られたコアシェル担体に貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた排ガス浄化用触媒におけるロジウムの担持量は、コアシェル担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0088】
(実施例5)
セリア−ジルコニア系固溶体粉末に替えて組成(質量%)Al:CeO:ZrO:La:Y:Nd=30:20:44:2:2:2、平均粒子径8μm、比表面積70m/gのアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体粉末を用い、オキシ硝酸ジルコニル及び硝酸ランタンの溶解量を2.1×10−3molずつとした以外は、実施例1と同様にしてコアシェル担体を得、さらに、実施例1と同様にして、得られたコアシェル担体に貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた排ガス浄化用触媒におけるロジウムの担持量は、コアシェル担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0089】
(実施例6)
セリア−ジルコニア系固溶体粉末に替えて組成(質量%)Al:CeO:ZrO:La:Y:Nd=30:20:44:2:2:2、平均粒子径8μm、比表面積70m/gのアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体粉末を用い、オキシ硝酸ジルコニル及び硝酸ランタンの溶解量を2.1×10−3molずつとし、さらに、得られたコアシェル粉末に対して第2の被覆工程(溶液の含浸担持、蒸発乾固及び焼成・粉砕の一連の処理)を更に1回施した(第2の被覆工程を合計2回行った)以外は、実施例1と同様にしてコアシェル粉末を得、更に、実施例1と同様にして得られたコアシェル粉末に貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の排ガス浄化用触媒を得た。なお、得られた排ガス浄化用触媒におけるロジウムの担持量は、コアシェル担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0090】
(比較例1)
比較用触媒担体として、セリア−ジルコニア系固溶体粉末(組成(質量%)CeO:ZrO:La:Y=30:60:5:5、平均粒子径8μm、比表面積60m/g)10gを用いた。次に、この比較用触媒担体粉末10gに対して、実施例1と同様にして貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の比較用触媒を得た。なお、得られた比較用触媒粉末におけるロジウムの担持量は、比較用触媒担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0091】
(比較例2)
比較用触媒担体として、アルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体粉末(組成(質量%)Al:CeO:ZrO:La:Y:Nd=30:20:44:2:2:2、平均粒子径8μm、比表面積70m/g)10gを用いた。次に、この比較用触媒担体粉末10gに対して、実施例1と同様にして貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の比較用触媒を得た。なお、得られた比較用触媒粉末におけるロジウムの担持量は、比較用触媒担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0092】
(比較例3)
先ず、セリア−ジルコニア系固溶体粉末(組成(質量%)CeO:ZrO:La:Y=30:60:5:5、平均粒子径8μm、比表面積60m/g)10gを用意した。次いで、100mlのイオン交換水にオキシ硝酸ジルコニル2水和物(和光純薬工業社製)及び硝酸ランタン6水和物(和光純薬工業社製)をそれぞれ0.7×10−3molずつ溶解させて溶液を用意した。
【0093】
次に、用意した溶液にセリア−ジルコニア系固溶体粉末10gを投入して15分間撹拌し、更に撹拌しながら加熱してセリア−ジルコニア系固溶体粉末に前記溶液を含浸させた(含浸担持)後、これを蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次いで、得られた凝固物を、大気中、900℃の温度条件で5時間焼成した後、乳鉢を用いて30分間以上粉砕し粉末化して比較用触媒担体を得た。
【0094】
次いで、この比較用触媒担体粉末10gに対して、実施例1と同様にして貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の比較用触媒を得た。なお、得られた比較用触媒におけるロジウムの担持量は、比較用触媒担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0095】
(比較例4)
先ず、セリア−ジルコニア系固溶体粉末(組成(質量%)CeO:ZrO:La:Y=30:60:5:5、平均粒子径8μm、比表面積60m/g)10gを用意した。次いで、100mlのイオン交換水にオキシ硝酸ジルコニル2水和物(和光純薬工業社社製)及び硝酸ランタン6水和物(和光純薬工業社製)をそれぞれ8.75×10−3molずつ溶解させて溶液を用意した。
【0096】
次に、用意した溶液にセリア−ジルコニア系固溶体粉末10gを投入して15分間撹拌し、更に撹拌しながら加熱してセリア−ジルコニア系固溶体粉末に前記溶液を含浸させた(含浸担持)後、これを蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次いで、得られた凝固物を、大気中、900℃の温度条件で5時間焼成した後、乳鉢を用いて30分間以上粉砕し粉末化して比較用触媒担体を得た。
【0097】
次いで、この比較用触媒担体粉末10gに対して、実施例1と同様にして貴金属としてのRhを担持せしめて粉末状の比較用触媒を得た。なお、得られた比較用触媒におけるロジウムの担持量は、比較用触媒担体100質量%に対して0.15質量%であった。
【0098】
[X線回折(XRD)測定]
実施例1〜6及び比較例3〜4で得られた各触媒について、各触媒のシェル(希土類−ジルコニア系複合酸化物)の平均結晶子径(平均一次粒子径)を以下のようにして測定した。
【0099】
先ず、実施例1〜6及び比較例3〜4で得られた各触媒を測定試料として、粉末X線回折装置(リガク社製、商品名「試料水平型多目的X線回折装置 Ultima IV」)を用いて、シェル(希土類−ジルコニア系複合酸化物)のX線回折(XRD)パターンを、スキャンステップ0.02、発散及び散乱スリット8deg、受光スリット10mm、CuKα線(λ=0.15418nm)、40kV、40mA、スキャン速度10deg/分の条件で測定した。このようにして得られたXRDパターンのシェルについて、希土類−ジルコニア系複合酸化物に由来するピーク(2θ=10〜80°)の回折線幅に基づいて、シェラーの式:
D=0.89×λ/βcosθ
(式中、Dは結晶子径を示し、λは使用X線波長を示し、βはXRDの測定試料の回折線幅を示し、θは回折角を示す)
を計算して、平均結晶子径(平均一次粒径)を算出した。得られた結果を表1に示す。
【0100】
表1に示した初期の実施例1〜6及び比較例3〜4の希土類−ジルコニア系複合酸化物の平均結晶子径から明らかなように。実施例1〜6の希土類−ジルコニア系複合酸化物の平均結晶子径が3〜9nmの範囲内であることが確認された。
【0101】
【表1】
【0102】
次に、実施例1〜6及び比較例3〜4で得られた各触媒について、各触媒のシェル(希土類−ジルコニア系複合酸化物)の組成(組成式:(Re1−xCeZr7+x(式中、Reは希土類元素を示し、xは0.0〜0.8の数を示す。)及び組成式中のxを以下のようにして求めた。すなわち、格子定数が、ReZrのピーク位置から算出した格子定数とCeZrのピーク位置から算出した格子定数との間で直線的に変化すると仮定したとき、シェル材のピーク位置から算出した格子定数の値からシェル材のCe量、すなわちxの値を定める。得られた結果を表1に示す。
【0103】
また、耐久後の2θ=14.2°(度)付近のピークの有無によりパイロクロア相の有無を確認した。
【0104】
[高温耐久処理]
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた各触媒粉末を、静水圧プレス装置(日機装社製、商品名「CK4−22−60」)を用いて、冷間等方圧プレス(CIP)を1000kgf/cmの圧力(成型圧力)で1分間行って圧粉成型し、破砕、整粒して0.5〜1.0mmのペレットとし、評価試験用のペレット触媒試料(ペレット状の排ガス浄化用触媒)を得た。
【0105】
次に、得られたペレット触媒試料(1.5g)を常圧固定床流通型反応装置に設置した。次いで、1100℃の温度条件で、表2に示すガス組成のリーン(L)ガス及びリッチ(R)ガスを、5分間ずつ交互に10L(リットル)/分の流量で合計5時間流通させるモデルガス処理を施し、高温耐久処理(耐久試験)を行った。
【0106】
【表2】
【0107】
[ストイキ三元活性評価試験]
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた各触媒について、高温耐久処理後のペレット触媒試料に対して、流通反応装置及び排ガス分析装置を用い、以下のようにしてストイキ三元活性評価試験を行い、NOxの50%浄化温度(NOx_T50)を測定した。
【0108】
すなわち、先ず、高温耐久処理後のペレット触媒試料を、常圧固定床流通型反応装置の反応管(内容積:直径1.7cm、長さ9.5cm)に設置した。なお、触媒試料の量は、実施例1〜4、比較例1、3及び4では0.5g、実施例5〜6及び比較例2では0.25gとし、実施例5〜6及び比較例2では更に石英砂0.25gを前記触媒試料0.25gに加えて混合したのち、反応管に充填した。
【0109】
次に、表3に示すガス組成の3種の有害ガスを模擬した排気モデルガスを、600℃の温度条件下、10L/分の流量で6分間供給した(前処理)。その後、各試料の温度を100℃になるまで冷却した後、前記排気モデルガスを10L/分の流量で供給しながら6℃/分の昇温速度で100℃から600℃まで加熱していき、供給した排気モデルガス中のNOの浄化率が50%に到達する温度(NOxの50%浄化温度、℃)(「NOx_T50」と表す。)を測定した。
【0110】
【表3】
【0111】
得られた結果を表1に示す。また、実施例1〜6及び比較例1〜2で得られた触媒のNOxの50%浄化温度(NOx_T50)を示すグラフを図1に示す。
【0112】
[NOx過渡浄化活性評価試験]
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた各触媒について、高温耐久処理後のペレット触媒試料に対して、流通反応装置及び排ガス分析装置を用い、以下のようにしてNOx過渡浄化活性評価試験を行い、NOx過渡浄化率を測定した。
【0113】
すなわち、先ず、高温耐久処理後のペレット触媒試料を、常圧固定床流通型反応装置の反応管(内容積:直径1.7cm、長さ9.5cm)に設置した。なお、触媒試料の量は、実施例1〜4、比較例1、3及び4では0.5g、実施例5〜6及び比較例2では0.25gとし、実施例5〜6及び比較例2では更に石英砂0.25gを前記触媒試料0.25gに加えて混合したのち、反応管に充填した。
【0114】
次に、500℃の温度条件で、表4に示すガス組成のリーンのモデル排ガスを10L(リットル)/分の流量で180秒間流し、ガス組成を表4に示すガス組成のリッチのモデル排ガスに切り換えてこれを10L(リットル)/分の流量で180秒間流す、というサイクルを数回繰り返した後、ガス組成をリーンからリッチに切り換えた180秒後のNOx浄化率(NOx過渡浄化率、%)を測定した。
【0115】
【表4】
【0116】
得られた結果を表1に示す。また、実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた触媒のNOx過渡浄化率(%)を示すグラフを図2に示す。
【0117】
[OSC(酸素吸放出)量の測定試験:OSC活性評価試験]
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた高温耐久処理後のペレット触媒試料に対して、流通反応装置及び分析計を用い、以下のようにしてOSC活性評価試験を行い、OSC速度を測定した。
【0118】
すなわち、先ず、高温耐久処理後のペレット触媒試料を、常圧固定床流通型反応装置の反応管(内容積:直径1.7cm、長さ9.5cm)に設置した。なお、触媒試料の量は、実施例1〜4、比較例1、3及び4では0.5g、実施例5〜6及び比較例2では0.25gとし、実施例5〜6及び比較例2では更に石英砂0.25gを前記触媒試料0.25gに加えて混合したのち、反応管に充填した。
【0119】
次に、500℃の温度条件で、固定床流通型反応装置にてリッチガス(CO(2容量%)+N(残部))とリーンガス(O(1容量%)+N(残部))とを3分毎に交互に切り替えて流し、リッチガスに切り換えてからリッチガス雰囲気で生成する酸素(O)の量を測定し、リッチガス導入後5秒間で生成した酸素(O)生成速度を酸素吸放出(OSC)速度(μmol/g/sec、又は、μmol−O/g/s)として求めた。なお、ガス流量は10L/minとし、分析計としてはベスト測器社製の商品名「Bex5900Csp」を用いた。
【0120】
得られた結果を表1に示す。また、実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた触媒のOSC速度(μmol−O/g/s)を示すグラフを図3に示す。
【0121】
以上の実施例1〜6で得られたコアシェル担体及び排ガス浄化用触媒、比較例1〜4で得られた比較用触媒担体及び比較用触媒の構成を表5に示す。
【0122】
【表5】
【0123】
表1及び図1〜3に示した実施例1〜6の結果と比較例1〜4の結果との比較から明らかなように、実施例1〜6のコアシェル担体及び排ガス浄化用触媒は、NOx浄化率及びOSC(酸素吸放出能)特性がともに優れていることが確認された。したがって、実施例1〜6の触媒では、セリア−ジルコニア系固溶体又はアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体からなるコアと、組成式:(Re1−xCeZr7+x(式中、Reは希土類元素を示し、xは0.0〜0.8の数を示す。)で表される希土類−ジルコニア系複合酸化物からなり、前記コアの外側を被覆しているシェルとを備えており、前記希土類−ジルコニア系複合酸化物がパイロクロア構造を有する結晶粒子を含んでおり、かつ、前記希土類−ジルコニア系複合酸化物の平均結晶子径を3〜9nmに規定していることにより、NOx浄化率及びOSC(酸素吸放出能)特性の双方の性能をともに優れたものとすることができたものと考えられる。
【0124】
(実施例7〜9及び比較例5〜7)
<1.使用原料>
[材料1]
アルミナ(Al)として、1質量%のLa及び99質量%のAlを含有する複合酸化物を使用した(以下、「材料1」とも記載する)。
【0125】
[材料2]
アルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体(ACZL)として、30質量%のAl、20質量%のCeO、45質量%のZrO、5質量%のLaを含有する複合酸化物を使用した(以下、「材料2」とも記載する)。
【0126】
[材料3]
本発明のコアシェル担体(LZ−ACZL)として、以下のようにして得られたコアシェル担体を使用した(以下、「材料3」とも記載する)。
【0127】
先ず、材料2の粉末(平均粒子径8μm、比表面積70m/g)10gを用意した。次いで、100mlのイオン交換水にオキシ硝酸ジルコニル(和光純薬工業社製)及び硝酸ランタン6水和物(和光純薬工業社製)をそれぞれ2.1×10−3molずつ溶解させて溶液を用意した(溶液準備工程)。
【0128】
次に、用意した溶液に前記粉末10gを投入して15分間撹拌し、更に撹拌しながら加熱して前記粉末に前記溶液を含浸させた(含浸担持)後、これを蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次いで、得られた凝固物を、大気中、900℃の温度条件で5時間焼成した後、乳鉢を用いて30分間以上粉砕し粉末化しコアシェル粉末を得た(第1の被覆工程)。
【0129】
次いで、得られたコアシェル粉末に対し、前記(第1の被覆工程)と同様にして前記用意した溶液を含浸担持させた後蒸発乾固し、その後焼成・粉砕する一連の処理を1回施すことにより、以下に示すコアシェル担体を得た(第2の被覆工程)。
【0130】
コア:Al−CeO−ZrO−La
シェル(組成式中のx=0):LaZr
シェルの平均結晶子径:6nm
シェルの担持量:12.0質量%。
【0131】
[材料4]
アルミナ添加ジルコニア系固溶体(AZL)として、30質量%のAl、65質量%のZrO、5質量%のLaを含有する複合酸化物を使用した(以下、「材料4」とも記載する)。
【0132】
[材料5]
ロジウム触媒の材料として、2.75質量%の貴金属含有量を有する硝酸ロジウム水溶液(キャタラー社製)を使用した(以下、「材料5」とも記載する)。
【0133】
[材料6]
パラジウム触媒の材料として、8.8質量%の貴金属含有量を有する硝酸パラジウム水溶液(キャタラー社製)を使用した(以下、「材料6」とも記載する)。
【0134】
[基材]
基材として、875cc(600H/3−9R−08)のコージェライトハニカム基材(デンソー社製)を使用した。
【0135】
<2.触媒の調製>
[比較例5]
上層(Rh(0.10)/ACZL(110)+Al(28))及び下層(Pd(0.69)/ACZL(45)+Al(40))を有する二層触媒
(下層の形成)
先ず、材料2及び6を用いた含浸法により、パラジウム(Pd)がアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体(ACZL)に担持された材料(Pd/ACZL:以下、「材料7」とも記載する)を調製した。次に、材料7、材料1及びアルミナ系バインダー(AS−200;日産化学工業社製)を、撹拌しながら蒸留水中に懸濁して、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを基材に流し入れた。不要なスラリーをブロアーで吹き払った。前記操作により、基材内壁の表面に材料をコーティングした。その際に、下層がコーティングされた基材において、基材容量に対して、パラジウムが0.69g/L、材料1が40g/L、材料2が45g/Lとなるように調製した。その後、スラリーでコーティングされた基材を、120℃に設定された乾燥機内で2時間静置して、スラリーの水分を蒸発させた。さらに、基材を、500℃に設定された電気炉内で2時間静置して、パラジウム含有触媒層を有する基材を得た。
【0136】
(上層の形成)
次に、材料2及び5を用いた含浸法により、ロジウム(Rh)がアルミナ添加セリア−ジルコニア系固溶体(ACZL)に担持された材料(Rh/ACZL:以下、「材料8」とも記載する)を調製した。次に、材料8、材料1及びアルミナ系バインダーを、撹拌しながら蒸留水中に懸濁して、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを、パラジウム含有触媒層を有する基材に流し入れた。不要なスラリーをブロアーで吹き払った。前記操作により、基材内壁の表面に材料をコーティングした。その際に、上層がコーティングされた基材において、基材容量に対して、ロジウムが0.10g/L、材料1が28g/L、材料2が110g/Lとなるように調製した。その後、スラリーでコーティングされた基材を、120℃に設定された乾燥機内で2時間静置して、スラリーの水分を蒸発させた。さらに、基材を、500℃に設定された電気炉内で2時間静置して、上層としてロジウム含有触媒層及び下層としてパラジウム含有触媒層を有する二層触媒を得た。
【0137】
[比較例6]
上層(Rh(0.10)/AZL(55)+ACZL(55)+Al(28))及び下層(Pd(0.69)/ACZL(45)+Al(40))を有する二層触媒
先ず、材料4及び5を用いた含浸法により、ロジウム(Rh)がアルミナ添加ジルコニア系固溶体(AZL)に担持された材料(Rh/AZL:以下、「材料9」とも記載する)を調製した。次に、上層を形成する工程において、材料9、材料2、材料1及びアルミナ系バインダーを含むスラリーを用いるようにしたこと以外は比較例5と同様の手順により、上層としてロジウム含有触媒層及び下層としてパラジウム含有触媒層を有する二層触媒を得た。その際に、上層がコーティングされた基材において、基材容量に対して、ロジウムが0.10g/L、材料1が28g/L、材料2が55g/L、材料4が55g/Lとなるように調製した。
【0138】
[比較例7]
上層(Rh(0.05)/AZL(55)+Rh(0.05)/ACZL(55)+Al(28))及び下層(Pd(0.69)/ACZL(45)+Al(40))を有する二層触媒
上層を形成する工程において、材料9、材料8、材料1及びアルミナ系バインダーを含むスラリーを用いるようにしたこと以外は比較例5と同様の手順により、上層としてロジウム含有触媒層及び下層としてパラジウム含有触媒層を有する二層触媒を得た。その際に、上層がコーティングされた基材において、基材容量に対して、ロジウムが0.10g/L、材料1が28g/L、材料2が55g/L、材料4が55g/Lとなるように調製した。
【0139】
[実施例7]
上層(Rh(0.10)/LZ−ACZL(110)+Al(28))及び下層(Pd(0.69)/ACZL(45)+Al(40))を有する二層触媒
先ず、材料3及び5を用いた含浸法により、ロジウム(Rh)が本発明のコアシェル担体(LZ−ACZL)に担持された材料(Rh/LZ−ACZL:以下、「材料10」とも記載する)を調製した。次に、上層を形成する工程において、材料10、材料1及びアルミナ系バインダーを含むスラリーを用いるようにしたこと以外は比較例5と同様の手順により、上層としてロジウム含有触媒層及び下層としてパラジウム含有触媒層を有する二層触媒を得た。その際に、上層がコーティングされた基材において、基材容量に対して、ロジウムが0.10g/L、材料1が28g/L、材料3が110g/Lとなるように調製した。
【0140】
[実施例8]
上層(Rh(0.10)/AZL(55)+LZ−ACZL(55)+Al(28))及び下層(Pd(0.69)/ACZL(45)+Al(40))を有する二層触媒
上層を形成する工程において、材料9、材料3、材料1及びアルミナ系バインダーを含むスラリーを用いるようにしたこと以外は比較例5と同様の手順により、上層としてロジウム含有触媒層及び下層としてパラジウム含有触媒層を有する二層触媒を得た。その際に、上層がコーティングされた基材において、基材容量に対して、ロジウムが0.10g/L、材料1が28g/L、材料3が55g/L、材料4が55g/Lとなるように調製した。
【0141】
[実施例9]
上層(Rh(0.05)/AZL(55)+Rh(0.05)/LZ−ACZL(55)+Al(28))及び下層(Pd(0.69)/ACZL(45)+Al(40))を有する二層触媒
上層を形成する工程において、材料9、材料10、材料1及びアルミナ系バインダーを含むスラリーを用いるようにしたこと以外は比較例5と同様の手順により、上層としてロジウム含有触媒層及び下層としてパラジウム含有触媒層を有する二層触媒を得た。その際に、上層がコーティングされた基材において、基材容量に対して、ロジウムが0.10g/L、材料1が28g/L、材料3が55g/L、材料4が55g/Lとなるように調製した。
【0142】
<3.触媒の評価方法>
[耐久処理]
ガソリンエンジン(1UR−FE;トヨタ自動車社製)を用いて、1000℃(触媒床温)で25時間の条件で、実施例7〜9及び比較例5〜7の触媒の劣化促進処理を行った。このとき、スロットル開度及びエンジン負荷を調整することによって、リッチ〜ストイキ〜リーンの条件を一定サイクルで繰り返した。これにより、排気ガス組成を変動させて、触媒の劣化を促進させた。
【0143】
[OSC評価試験]
ガソリンエンジン(2AZ−FE;トヨタ自動車社製)を用いて、実施例7〜9及び比較例5〜7の触媒(劣化促進処理後)の酸素吸蔵特性を評価した。14.1及び15.1の空燃比(A/F)を目標に、A/Fをフィードバック制御した。理論空燃比とストイキ点のA/Fセンサー出力との差分(ΔA/F)より、酸素の過不足を以下の式:

OSC[g]=0.23×ΔA/F×噴射燃料量
から算出した。最大酸素吸蔵量を、OSCとして評価した。
【0144】
[定常NOx浄化性能評価試験]
ガソリンエンジン(2AZ−FE;トヨタ自動車社製)を用いて、実施例7〜9及び比較例5〜7の触媒(劣化促進処理後)の定常NOx浄化性能を評価した。14.1の空燃比(A/F)を目標に、A/Fをフィードバック制御し、600℃の条件下で、触媒通過後の排ガス中のNOx排出量を測定した。
【0145】
<4.触媒の評価結果>
実施例7〜9及び比較例5〜7の触媒(劣化促進処理後)のそれぞれについて、前記の手順により、最大酸素吸蔵量(OSC)及びNOx排出量を評価した。結果を表6及び図4に示す。なお、図4中、棒グラフが最大酸素吸蔵量(OSC)を示し、折れ線グラフがNOx排出量を示す。
【0146】
【表6】
【0147】
表6及び図4に示すように、比較例5の触媒においては、コート層(上層)において貴金属をOSC材に直接担持しているため、OSC性能は高いものの、NOx排出量が非常に高かった。一方、比較例6の触媒においては、コート層(上層)において貴金属を他の材料に担持してOSC材と共存させているが、NOx排出量は改善されるものの、OSC性能が非常に低下していた。また、比較例7の触媒においては、貴金属の半分をOSC材に直接担持し、貴金属の半分を他の材料に担持しているが、性能は比較例5の触媒と比較例6の触媒の間に位置し、両性能を引き上げることはできなかった。
【0148】
本発明のコアシェル担体を用いた実施例7〜9の触媒においては、OSC材の表面を改質したLZ-ACZLを使用している。そのため、実施例7の触媒においては、コート層(上層)において貴金属を本発明のコアシェル担体に直接担持しているものの、NOx浄化性能を向上させた上で、OSC性能も高水準に確保できていることが確認された。また、実施例8の触媒においては、コート層(上層)において貴金属を他の材料に担持して本発明のコアシェル担体と共存させているものの、NOx浄化性能を向上させた上で、OSC性能も高水準に確保できていることが確認された。さらに、実施例9の触媒においては、貴金属の半分を本発明のコアシェル担体に直接担持し、貴金属の半分を他の材料に担持しているものの、NOx浄化性能を低下させることなく、OSC性能を向上させることができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0149】
以上説明したように、本発明によれば、十分に優れた酸素吸放出性能(OSC)及び十分に優れたNOx浄化活性をともに発揮させることが可能なコアシェル担体及びその製造方法、そのコアシェル担体を用いた排ガス浄化用触媒及びその製造方法、並びに、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法を提供することが可能となる。このように、本発明のコアシェル担体及びこれを用いた排ガス浄化用触媒は、十分に優れた酸素吸放出性能(OSC)及び十分に優れたNOx浄化活性をともに提供するものであるため、十分に優れた酸素吸放出性能(OSC)及び十分に優れたNOx浄化活性をともに発揮させることが可能であり、このような前記本発明の排ガス浄化触媒に、例えば、内燃機関からの排ガスを接触させることで、十分に高い酸素吸放出性能(OSC)と十分に高いNOx浄化活性の双方を酸素吸放出性能(OSC)及びNOx浄化活性をともに十分に発揮することができ、排ガス中な排ガス中に含まれるNOx等の有害ガスを十分に浄化することが可能となる。
【0150】
したがって、本発明のコアシェル担体及びその製造方法、そのコアシェル担体を用いた排ガス浄化用触媒及びその製造方法、並びに、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法は、例えば、自動車等の内燃機関から排出されるような排ガス中に含まれる有害ガス(炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx))等の有害成分を浄化するためのコアシェル担体及びその製造方法、そのコアシェル担体を用いた排ガス浄化用触媒及びその製造方法、並びに、その排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化方法等として好適に採用することができる。
図1
図2
図3
図4