特許第6676400号(P6676400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6676400情報処理装置の制御装置、情報処理装置の制御方法、および、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676400
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】情報処理装置の制御装置、情報処理装置の制御方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/50 20060101AFI20200330BHJP
【FI】
   G06F9/50 120Z
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-28226(P2016-28226)
(22)【出願日】2016年2月17日
(65)【公開番号】特開2017-146795(P2017-146795A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2019年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 暁
(72)【発明者】
【氏名】武田 隆
(72)【発明者】
【氏名】三野 正人
(72)【発明者】
【氏名】石川 英昭
【審査官】 漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−232968(JP,A)
【文献】 特開2009−129159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 9/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末装置とネットワークを介して接続された複数の情報処理装置の稼働台数を制御する情報処理装置の制御装置であって、
前記情報処理装置から時系列で変化する対象データを取得して所定の記憶部に格納する取得部と、
前記記憶部から取り出した過去の所定時間内の前記対象データに基づき、第1の予測手法を用いて前記対象データの第1の予測値を算出する第1予測部と、
前記過去の所定時間内の前記対象データに基づき、前記第1の予測手法とは異なる第2の予測手法を用いて前記対象データの第2の予測値を算出する第2予測部と、
所定の閾値と比較することにより、前記第1の予測値および前記第2の予測値のいずれか一方を用いるか判定し、判定された前記第1の予測値および前記第2の予測値の一方、および、演算時における前記対象データの値を用いて、前記情報処理装置の一定時間後における必要な稼働台数を算出、若しくは、起動又は停止する台数を算出する推定部と、
が設けられており、
前記第1の予測値は、第1の所定時間後における前記対象データの予測値であり、
前記第2の予測値は、前記第1の所定時間とは異なる第2の所定時間後における前記対象データの予測値であり、
前記所定の閾値は、前記情報処理装置の起動に要する時間(以下「起動時間」と表記する。)であり、
前記推定部は、前記起動時間と前記第1の所定時間との差、前記起動時間と前記第2の所定時間との差を比較し、前記第1の予測値および前記第2の予測値のうち前記起動時間との差が小さな予測値を用いると判定する
ことを特徴とする情報処理装置の制御装置。
【請求項2】
前記起動時間は、前記情報処理装置の種類に対応して前記起動に要する時間が異なっていることを特徴とする請求項記載の情報処理装置の制御装置。
【請求項3】
前記起動時間は、前記情報処理装置に搭載されているオペレーティングシステムおよびアプリケーションの少なくとも一方に対応して前記起動に要する時間が異なっていることを特徴とする請求項記載の情報処理装置の制御装置。
【請求項4】
前記起動時間は、前記情報処理装置に接続された前記ネットワークにおける通信速度に対応して前記起動に要する時間が異なっていることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置の制御装置。
【請求項5】
前記起動時間は、前記推定部における判定が行われる時間帯、および、前記判定時における前記情報処理装置を利用する可能性がある人数の少なくとも一方に対応して前記起動に要する時間が異なっていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の情報処理装置の制御装置。
【請求項6】
複数の端末装置とネットワークを介して接続された複数の情報処理装置の稼働台数を制御する情報処理装置の制御方法であって、
前記情報処理装置から時系列で変化する対象データを取得して所定の記憶部に格納する取得ステップと、
前記記憶部から取り出した過去の所定時間内の前記対象データに基づき、第1の予測手法を用いて前記対象データの第1の予測値を算出する第1予測ステップと、
前記過去の所定時間内の前記対象データに基づき、前記第1の予測手法とは異なる第2の予測手法を用いて前記対象データの第2の予測値を算出する第2予測ステップと、
所定の閾値と比較することにより、前記第1の予測値および前記第2の予測値のいずれか一方を用いるか判定し、判定された前記第1の予測値および前記第2の予測値の一方、および、演算時における前記対象データの値を用いて、前記情報処理装置の一定時間後における必要な稼働台数を算出、若しくは、起動又は停止する台数を算出する推定ステップと、
を有し、
前記第1の予測値は、第1の所定時間後における前記対象データの予測値であり、
前記第2の予測値は、前記第1の所定時間とは異なる第2の所定時間後における前記対象データの予測値であり、
前記所定の閾値は、前記情報処理装置の起動に要する時間(以下「起動時間」と表記する。)であり、
前記推定ステップでは、前記起動時間と前記第1の所定時間との差、前記起動時間と前記第2の所定時間との差を比較し、前記第1の予測値および前記第2の予測値のうち前記起動時間との差が小さな予測値を用いると判定することを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項7】
前記起動時間は、前記情報処理装置の種類に対応して前記起動に要する時間が異なっていることを特徴とする請求項記載の情報処理装置の制御方法。
【請求項8】
前記起動時間は、前記情報処理装置に搭載されているオペレーティングシステムおよびアプリケーションの少なくとも一方に対応して前記起動に要する時間が異なっていることを特徴とする請求項記載の情報処理装置の制御方法。
【請求項9】
前記起動時間は、前記情報処理装置に接続された前記ネットワークにおける通信速度に対応して前記起動に要する時間が異なっていることを特徴とする請求項記載の情報処理装置の制御方法。
【請求項10】
前記起動時間は、前記推定ステップにおける判定が行われる時間帯、および、前記判定時における前記情報処理装置を利用する可能性がある人数の少なくとも一方に対応して前記起動に要する時間が異なっていることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の情報処理装置の制御方法。
【請求項11】
コンピュータを、複数の端末装置とネットワークを介して接続された複数の情報処理装置の稼働台数を制御する情報処理装置の制御装置として機能させるプログラムであって、
前記コンピュータに
前記情報処理装置から時系列で変化する対象データを取得して所定の記憶部に格納する取得機能と、
前記記憶部から取り出した過去の所定時間内の前記対象データに基づき、第1の予測手法を用いて前記対象データの第1の予測値を算出する第1予測機能と、
前記過去の所定時間内の前記対象データに基づき、前記第1の予測手法とは異なる第2の予測手法を用いて前記対象データの第2の予測値を算出する第2予測機能と、
所定の閾値と比較することにより、前記第1の予測値および前記第2の予測値のいずれか一方を用いるか判定し、判定された前記第1の予測値および前記第2の予測値の一方、および、演算時における前記対象データの値を用いて、前記情報処理装置の一定時間後における必要な稼働台数を算出、若しくは、起動又は停止する台数を算出する推定機能と、を実現させ
前記第1の予測値は、第1の所定時間後における前記対象データの予測値であり、
前記第2の予測値は、前記第1の所定時間とは異なる第2の所定時間後における前記対象データの予測値であり、
前記所定の閾値は、前記情報処理装置の起動に要する時間(以下「起動時間」と表記する。)であり、
前記推定機能では、前記起動時間と前記第1の所定時間との差、前記起動時間と前記第2の所定時間との差を比較し、前記第1の予測値および前記第2の予測値のうち前記起動時間との差が小さな予測値を用いると判定することを特徴とする、プログラム。
【請求項12】
前記起動時間は、前記情報処理装置の種類に対応して前記起動に要する時間が異なっていることを特徴とする請求項11記載のプログラム。
【請求項13】
前記起動時間は、前記情報処理装置に搭載されているオペレーティングシステムおよびアプリケーションの少なくとも一方に対応して前記起動に要する時間が異なっていることを特徴とする請求項11記載のプログラム。
【請求項14】
前記起動時間は、前記情報処理装置に接続された前記ネットワークにおける通信速度に対応して前記起動に要する時間が異なっていることを特徴とする請求項11記載のプログラム。
【請求項15】
前記起動時間は、前記推定機能における判定が行われる時間帯、および、前記判定時における前記情報処理装置を利用する可能性がある人数の少なくとも一方に対応して前記起動に要する時間が異なっていることを特徴とする請求項11から14のいずれか1項に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置の制御装置、情報処理装置の制御方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
演算処理量の増加に対応するために複数のサーバで演算処理を行う方法が一般的に知られている。この場合、例えばあるサーバにおける演算処理量、言い換えると、CPU(中央演算ユニット)負荷の値が所定値を超えると、他のサーバを起動し、起動したサーバに演算処理を分配する制御が行われている。
【0003】
しかしながら、サーバの起動は、サーバのハードウエアの立ち上げや、オペレーティングシステム(以下「OS」とも表記する。)の立ち上げや、アプリケーション(以下「APP」とも表記する。)の立ち上げ等のステップを経て行われるため、サーバの起動を判断してから、実際にサーバが演算可能になるまでにある程度の時間が必要になる。言い換えると、タイムラグが発生するため、演算処理を行っていたサーバに対するCPU負荷が過剰になる期間が発生し、演算処理が遅延するおそれがある。
【0004】
この問題を解決するために、CPU負荷の現在値と、相対的に短期の予測値および相対的に長期の予測値を対比させることにより、アプリケーションサーバの起動台数を求めることにより、上述のタイムラグ等の発生を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−232968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の特許文献1に記載された技術においては、予測の精度が不十分であり、求めたサーバの起動台数に過不足が生じるおそれがあった。例えば、求めた起動台数が過剰であった場合、起動されたサーバ台数に対する演算処理量が少ないため、効率が悪い状態で運転を継続したり、起動したサーバを再び停止させたりする必要があった。
【0007】
このようにサーバを頻繁に起動、停止させると、サーバに搭載された電子部品に熱応力が繰り返し加えられることとなり、亀裂の発生等による不具合が発生するおそれがあった。つまり、サーバが起動され演算処理が行われている場合には、電子部品等が発生する熱により電子部品等は温度の上昇に伴い膨張する。その一方で、サーバが停止されると電子部品等での熱の発生も停止し、膨張していた電子部品は温度の低下に伴い収縮する。この膨張および収縮の程度は材料の性質によって異なるため、電子部品には、引っ張り力や圧縮力が働き応力(熱応力)が集中する箇所が発生する。この熱応力が繰り返し加えられることにより、上述の箇所に亀裂等が発生するおそれがあった。
【0008】
また、求めた起動台数が不足していた場合、起動されたサーバ台数に対する演算処理量が多いため、上述のように、サーバのCPU負荷が過剰になり演算処理が遅延する恐れがあるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、予測精度の向上を図ることにより不具合の発生を抑制することができる情報処理装置の制御装置、情報処理装置の制御方法、および、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の第1の態様に係る情報処理装置の制御装置は、複数の端末装置とネットワークを介して接続された複数の情報処理装置の稼働台数を制御する情報処理装置の制御装置であって、前記情報処理装置から時系列で変化する対象データを取得して所定の記憶部に格納する取得部と、前記記憶部から取り出した過去の所定時間内の前記対象データに基づき、第1の予測手法を用いて前記対象データの第1の予測値を算出する第1予測部と、前記過去の所定時間内の前記対象データに基づき、前記第1の予測手法とは異なる第2の予測手法を用いて前記対象データの第2の予測値を算出する第2予測部と、所定の閾値と比較することにより、前記第1の予測値および前記第2の予測値のいずれか一方を用いるか判定し、判定された前記第1の予測値および前記第2の予測値の一方、および、演算時における前記対象データの値を用いて、前記情報処理装置の一定時間後における必要な稼働台数を算出、若しくは、起動又は停止する台数を算出する推定部と、が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の態様に係る情報処理装置の制御方法は、複数の端末装置とネットワークを介して接続された複数の情報処理装置の稼働台数を制御する情報処理装置の制御方法であって、前記情報処理装置から時系列で変化する対象データを取得して所定の記憶部に格納する取得ステップと、前記記憶部から取り出した過去の所定時間内の前記対象データに基づき、第1の予測手法を用いて前記対象データの第1の予測値を算出する第1予測ステップと、前記過去の所定時間内の前記対象データに基づき、前記第1の予測手法とは異なる第2の予測手法を用いて前記対象データの第2の予測値を算出する第2予測ステップと、所定の閾値と比較することにより、前記第1の予測値および前記第2の予測値のいずれか一方を用いるか判定し、判定された前記第1の予測値および前記第2の予測値の一方、および、演算時における前記対象データの値を用いて、前記情報処理装置の一定時間後における必要な稼働台数を算出、若しくは、起動又は停止する台数を算出する推定ステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の態様に係るプログラムは、コンピュータを、複数の端末装置とネットワークを介して接続された複数の情報処理装置の稼働台数を制御する情報処理装置の制御装置として機能させるプログラムであって、前記コンピュータに前記情報処理装置から時系列で変化する対象データを取得して所定の記憶部に格納する取得機能と、前記記憶部から取り出した過去の所定時間内の前記対象データに基づき、第1の予測手法を用いて前記対象データの第1の予測値を算出する第1予測機能と、前記過去の所定時間内の前記対象データに基づき、前記第1の予測手法とは異なる第2の予測手法を用いて前記対象データの第2の予測値を算出する第2予測機能と、所定の閾値と比較することにより、前記第1の予測値および前記第2の予測値のいずれか一方を用いるか判定し、判定された前記第1の予測値および前記第2の予測値の一方、および、演算時における前記対象データの値を用いて、前記情報処理装置の一定時間後における必要な稼働台数を算出、若しくは、起動又は停止する台数を算出する推定機能と、を実現させることを特徴とする。
【0013】
本発明の第1の態様、第2の態様、および、第3の態様によれば、情報処理装置の一定時間後における必要な稼働台数を算出、若しくは、起動又は停止する台数を算出する際に、所定の閾値と比較して判定した第1の予測値および第2の予測値の一方、および、演算時における対象データの値が用いられる。このようにすることで、所定の閾値と比較した判定により、第1の予測値および第2の予測値のうち予測精度を向上しやすい予測値が選択できる。そのため、CPU負荷の現在値と、相対的に短期の予測値および相対的に長期の予測値を対比させる特許文献1に記載の算出方法と比較して、予測精度の向上を図りやすくなる。
【0014】
上記発明の第1の態様、第2の態様、および、第3の態様において前記第1の予測値は、第1の所定時間後における前記対象データの予測値であり、前記第2の予測値は、前記第1の所定時間とは異なる第2の所定時間後における前記対象データの予測値であり、前記所定の閾値は、前記情報処理装置の起動に要する時間(以下「起動時間」と表記する。)であり、前記推定部は、前記起動時間と前記第1の所定時間との差、前記起動時間と前記第2の所定時間との差を比較し、前記第1の予測値および前記第2の予測値のうち前記起動時間との差が小さな予測値を用いると判定することが好ましい。
【0015】
このように所定の閾値と比較した判定において、起動時間と第1の所定時間との差、起動時間と第2の所定時間との差を比較し、差が小さな予測値を用いるとの判定を行うことで、第1の予測値および第2の予測値から予測精度を向上しやすい予測値を選択しやすくなる。
【0016】
上記発明の第1の態様、第2の態様、および、第3の態様において前記起動時間は、前記情報処理装置の種類に対応して前記起動に要する時間が異なっていることが好ましい。
このように起動時間の長さを情報処理装置の種類に対応して異ならせることにより、第1の予測値および第2の予測値の選択の際に情報処理装置の種類に応じた選択を行うことができ、予測精度を向上しやすい予測値を更に選択しやすくなる。
【0017】
上記発明の第1の態様、第2の態様、および、第3の態様において前記起動時間は、前記情報処理装置に搭載されているOSおよびAPPの少なくとも一方に対応して前記起動に要する時間が異なっていることが好ましい。
【0018】
このように起動時間の長さを情報処理装置に搭載されているOSおよびAPPの少なくとも一方に対応して異ならせることにより、第1の予測値および第2の予測値の選択の際に、OSやAPPに応じた選択を行うことができ、予測精度を向上しやすい予測値を更に選択しやすくなる。
【0019】
上記発明の第1の態様、第2の態様、および、第3の態様においては、前記起動時間は、前記情報処理装置に接続された前記ネットワークにおける通信速度に対応して前記起動に要する時間が異なっていることが好ましい。
【0020】
このように起動時間の長さを情報処理装置に接続されたネットワークにおける通信速度に対応して異ならせることにより、第1の予測値および第2の予測値の選択の際にネットワークにおける通信速度に応じた選択を行うことができ、予測精度を向上しやすい予測値を更に選択しやすくなる。
【0021】
上記発明の第1の態様、第2の態様、および、第3の態様において前記起動時間は、前記推定部における判定が行われる時間帯、および、前記判定時における前記情報処理装置を利用する可能性がある人数の少なくとも一方に対応して前記起動に要する時間が異なっていることが好ましい。
【0022】
このように起動時間の長さを判定が行われる時間帯、および、判定時における情報処理装置を利用する可能性がある人数の少なくとも一方に対応異ならせることにより、第1の予測値および第2の予測値の選択の際に判定が行われる時間帯、および、判定時における情報処理装置を利用する可能性がある人数に応じた選択を行うことができ、予測精度を向上しやすい予測値を更に選択しやすくなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1の態様の情報処理装置の制御装置、第2の態様の情報処理装置の制御方法、および、第3の態様のプログラムによれば、所定の閾値と比較して判定した第1の予測値および第2の予測値の一方、および、演算時における対象データの値を用いて、情報処理装置の一定時間後における必要な稼働台数を算出、若しくは、起動又は停止する台数を算出することにより、予測精度の向上を図ることにより不具合の発生を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態に係る給電システムの概略構成を説明する図である。
図2図1の給電システムにおいて分散運転されている状態を説明する模式図である。
図3】縮退運転を実行する際の制御を説明するフローチャートである。
図4】縮退運転を実行する際の制御を説明するフローチャートである。
図5図1の給電システムにおいて縮退運転されている状態を説明する模式図である。
図6】縮退運転から分散運転へ移行する際の制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る情報処理装置の制御装置、制御方法、および、プログラムについて、図1から図6を参照しながら説明する。本実施形態では、本発明の情報処理装置の制御装置を、情報処理や情報通信などの処理を行うICT装置(情報処理装置)25、および、給電装置10や空調装置35や照明機器45などのICT装置25に付随する関連装置を含めた情報処理システム1における統合制御装置(制御装置)60である例に適用して説明する。
【0026】
情報処理システム1は、図1に示すように、給電装置10と、電流分配装置15と、給電制御装置20と、ICT装置25と、ICT制御装置30と、空調装置35と、空調制御装置40と、照明機器45と、照明制御装置50と、統合制御装置60と、監視制御装置70と、から主に構成されている。
【0027】
給電装置10は、ICT装置25に電力を供給するものであり、商用電力の供給を受けて直流電流を出力する複数の電源ユニット11が設けられたものである。電源ユニット11は、給電制御装置20から入力される指令に基づき、直流電流の出力/停止が制御されるように構成されている。また、給電装置10は、複数の電源ユニット11の運転情報を取得し、後述する給電制御装置20へ取得した情報を出力する機能を有している。
【0028】
なお、電源ユニット11における商用電力を直流電流に変換する方式や、電源ユニット11における直流電流の出力/停止の具体的な制御方法や、給電装置10における複数の電源ユニット11の接続方法などについては、公知の方法を用いることができ特に限定するものではない。また、本実施形態では、電源ユニット11が交流電流である商用電力から、ICT装置25の動作に用いられる所望電圧の直流電流に変換する例に適用して説明するが、電力の供給先である負荷装置の特性に応じて直流電流の代わりに所望電圧の交流電流を供給してもよく、特に電流の態様を限定するものではない。
【0029】
電流分配装置15は、給電装置10から供給された直流電流を、ICT装置25が格納される複数のICTラック26へ分配するものである。電流分配装置15には、給電制御装置20からの指令に従い、ポスト毎に直流電流の供給/非供給制御(以下、「ON/OFF制御」とも表記する。)を行うスイッチ16が搭載されている。スイッチ16は、それぞれのポストに接続されたICTラック26に格納されたICT装置25における消費電力を測定する機能も設けられている。スイッチ16で測定された消費電力は、給電制御装置20に出力される。なお、スイッチ16の形式としては、公知の形式のものを用いることができ、特に限定するものではない。
【0030】
さらに、電流分配装置15には、短絡事故などによる過電流を防止するためにポスト毎にヒューズやブレーカなどの保護素子(図示せず。)が搭載されている。この保護素子を搭載することにより、短絡事故が発生したICT装置25を含む系統(以下、「事故系」とも表記する。)の影響が、それ以外の通常の運転を継続するICT装置25を含む系統(以下、「健全系」とも表記する。)へ波及することを防止できる。
【0031】
給電制御装置20は、統合制御装置60からの指令に基づき、電流分配装置15の1ポスト毎の給電ON/OFFを制御する指令、コンセントバー27のコンセント口毎の給電ON/OFFを制御する指令、給電装置10の電源ユニット11の運転/停止を制御する指令、給電装置10の運転/停止を制御する指令を出力するものである。
【0032】
給電制御装置20は、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェース等を有するコンピュータシステムである。ROM等に記憶されている制御プログラムは、CPUを少なくとも演算処理部21として機能させるものであり、入出力インタフェース等を少なくとも取得部22として機能させるものである。
【0033】
演算処理部21は、給電装置10、並びに、電流分配装置15のスイッチ16およびコンセントバー27内部に設けられたスイッチ27Aの動作を制御する演算処理を行うと共に、当該動作を制御する指令を生成するものでもある。演算処理部21における演算処理等の詳細については後述する。
【0034】
取得部22は、給電装置10から出力される複数の電源ユニット11の運転情報、および、電流分配装置15から出力される1ポスト毎の消費電力情報、および、コンセントバー27の1口毎の消費電力情報が入力されるインタフェースである。また、取得部22は、演算処理部21において生成された各種の指令を出力するインタフェースでもある。
【0035】
ICT装置25は、演算等の情報処理や、情報の受信/送信などの通信処理等を行うものである。ICT装置25における処理などの動作は、ICT制御装置30から入力される指令に基づいて制御される。ICT装置25は、ICTラック26に1台以上が搭載され、ICTラック26に設けられたコンセントバー27から直流電流が給電されている。なお、上述の情報処理や通信処理などが特許請求の範囲における作業負荷に相当するものである。
【0036】
コンセントバー27は、電流分配装置15にて分配された配線が接続されたものである。コンセントバー27内部のスイッチ27Aには、給電制御装置20から入力される指令に基づいて、コンセント口毎にICT装置25への給電のON/OFFを制御する機能が搭載されている。さらに、コンセント口毎に消費電流・電力を計測する機能が搭載され、計測された消費電流・電力の情報は、給電制御装置20へ出力されている。このように、コンセントバー27は、いわゆるインテリジェントコンセントとして機能するものを用いている。
【0037】
図2に示すように、複数のICTラック26は、一列に配置されることにより架列28A,28B,28C,28D,28E,28Fのそれぞれを構成する。さらに、これら架列28A,28B,28C,28D,28E,28Fは並列に並んで配置される。
【0038】
ICT制御装置30は、統合制御装置60からの指令に基づき、ICT装置25へ集約運転を指示する縮退指令、分散運転を指示する復元指令、ICT装置25の停止を指示する停止指令、ICT装置25の起動を指示する起動指令を出力するものである。
【0039】
ICT制御装置30は、図1に示すように、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェース等を有するコンピュータシステムである。ROM等に記憶されている制御プログラムは、CPUを少なくとも演算処理部31として機能させるものであり、入出力インタフェース等を少なくとも取得部32として機能させるものである。
【0040】
演算処理部31は、ICT装置25の動作を制御する演算処理を行うと共に、当該動作を制御する指令を生成するものでもある。演算処理部31における演算処理等の詳細については後述する。
【0041】
取得部32は、コンセントバー27から出力されるコンセント口毎の消費電流・電力情報、ICT装置25から出力される業務処理量や、装置内部温度や、消費電力などの運転情報が入力されるインタフェースである。また、取得部32は、演算処理部31において生成された各種の指令を出力するインタフェースでもある。
【0042】
空調装置35は、図2に示すように、ICT装置25が配置されたサーバルームSRの室内空気を介してICT装置25を冷却するものである。つまり、ICT装置25において発生した熱は、ICT装置25の内部を通過するサーバルームSRの室内空気に放出され、サーバルームSRの室内空気の温度が上昇する。空調装置935は、この温度が上昇した室内空気を吸入して熱を奪い、所望の温度に冷却した後にサーバルームSR内に送り出すものである。室内空気から奪った熱は、サーバルームSRの外側に配置された室外機(図示せず。)において、外部へ放出される。この空調装置35における動作は、空調制御装置40から出力される指令に基づいて制御されている。
【0043】
本実施形態では、中央に架列28A,28B,28C,28D,28E,28Fが並列に並んで配置されているサーバルームSRにおいて、架列28A,28B,28C,28D,28E,28Fの端部近傍に、空調装置35が並んで配置されている例に適用して説明する。また、空調装置35における室内空気を冷却する形式や、冷却した空気をサーバルームSR内へ送り出す形式としては、公知の形式を用いることができ、特に限定するものではない。
【0044】
さらに、本実施形態では、サーバルームSR内に配置される複数の空調装置35に対して、屋外に配置され熱を外気に放出する手段である室外機等が一対一に対応して設けられる個別方式空調である例に適用して説明するが、複数の空調装置35に対して、熱を外気に放出する手段である冷却塔等が一つ設けられた中央熱源方式空調であってもよく、特に限定するものではない。
【0045】
空調制御装置40は、統合制御装置60からの指令に基づき、空調装置35の起動を制御する指令、空調装置35の停止を制御する指令、空調装置35の運転条件を制御する指令を出力するものである。
【0046】
空調制御装置40は、図1に示すように、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェース等を有するコンピュータシステムである。ROM等に記憶されている制御プログラムは、CPUを少なくとも演算処理部41として機能させるものであり、入出力インタフェース等を少なくとも取得部42として機能させるものである。
【0047】
演算処理部41は、空調装置35の動作を制御する演算処理を行うと共に、当該動作を制御する指令を生成するものでもある。演算処理部41における演算処理等の詳細については後述する。取得部42は、空調装置35から出力される運転状況を示す運転情報が入力されるインタフェースである。
【0048】
照明機器45は、ICT装置25などが配置されたサーバルームSR等における照明を行うものである。照明機器45には、人の存在を感知する人感センサ(図示せず。)が設けられている。サーバルームSRに人が立ち入った場合のように、人感センサが人を感知した際に照明機器45は照明を行う。また、空調装置35における照明/非照明の制御は、空調制御装置40から出力される指令(動作信号)に基づいても行われる。なお、照明機器45としては、公知の機器を用いることができ、特に限定するものではない。
【0049】
照明制御装置50は、統合制御装置60からの指令に基づき、照明機器45における点灯・消灯を制御する指令、照明機器45の運転条件を制御する指令を出力するものである。
【0050】
照明制御装置50は、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェース等を有するコンピュータシステムである。ROM等に記憶されている制御プログラムは、CPUを少なくとも演算処理部51として機能させるものであり、入出力インタフェース等を少なくとも取得部52として機能させるものである。
【0051】
演算処理部51は、照明機器45の動作を制御する演算処理を行うと共に、当該動作を制御する指令を生成するものでもある。演算処理部51における演算処理等の詳細については後述する。取得部52は、照明機器45から出力される動作状況を示す運転情報が入力されるインタフェースであり、さらに、照明機器45に付随する人感センサの測定情報などが入力されるインタフェースでもある。
【0052】
上述の給電制御装置20、ICT制御装置30、空調制御装置40、および照明制御装置50は、統合制御装置60との間の通信が途絶えて指令が入力されない場合や、統合制御装置60から出力された指令が異常値である場合には、統合制御装置60が故障したと判断し、それぞれの制御装置が自立した運転状態に遷移する。
【0053】
統合制御装置60は、監視制御装置70から入力される故障情報や運転異常情報、BEMSやBASなどの外部EMS(エネルギ・マネジメント・システム)、DCIM(データセンタ・インフラストラクチャ・マネジメント)などから入力される情報や指令に基づいて、給電制御装置20、ICT制御装置30、空調制御装置40、および照明制御装置50に対する制御内容を判断する処理や、出力する指令を生成する処理を行うものである。
【0054】
統合制御装置60は、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェース等を有するコンピュータシステムである。ROM等に記憶されている制御プログラムは、CPUを少なくとも演算処理部(推定部)61、および、予測処理部(第1予測部、第2予測部)63として機能させるものであり、入出力インタフェース等を少なくとも取得部64として機能させるものである。
【0055】
取得部64は、ICT装置25の起動に要する時間である起動時間(所定の閾値)が記憶された起動時間データベース(記憶部)66(以下「起動時間DB66」とも表記する。)や、ICT装置25におけるCPU負荷(対象データ)の情報が記憶されたCPU負荷データベース67(以下「CPU負荷DB67」とも表記する。)などから情報を取得するインタフェースである。
【0056】
また取得部64は、給電制御装置20、ICT制御装置30、空調制御装置40、照明制御装置50、および、統合制御装置60から出力される情報、ICTラック26の配置位置およびICTラック26におけるICT装置の搭載位置の情報、並びに、外部から入力される指令情報を取得するインタフェースである。取得部64は、さらに、外部EMSシステム、DCIMなどへ情報や指令を出すことができる外部とのインタフェースでもある。
【0057】
起動時間DB66は、ICT装置25の起動に要する時間である起動時間を記憶するものである。起動時間は、ICT装置25の種類や、ICT装置25に搭載されているOSおよびAPPや、ICT装置25に接続されたネットワークにおける通信速度や、ICT装置25の起動が行われる時間帯および起動が行われる際にICT装置25を利用する可能性がある人数に応じて異なる。そのため、起動時間DB66には、これらと紐付けされた複数の起動時間が記憶されている。
【0058】
CPU負荷DB67は、ICT装置25におけるCPU負荷の情報を記憶するものである。CPU負荷の情報は、取得された時間と紐付けされて記憶され、統合制御装置60から指定された時間帯のCPU負荷の情報を出力可能に記憶されている。
【0059】
演算処理部61および予測処理部63は、ともにICT装置25の一定時間後における必要な稼働台数を算出、若しくは、起動又は停止する台数を算出するものである。演算処理部61および予測処理部63における具体的な演算処理の内容は後述する。
【0060】
監視制御装置70は、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、ハードディスク、入出力インタフェース等を有するコンピュータシステムである。ROM等に記憶されている制御プログラムは、CPUを少なくとも演算処理部71として機能させるものであり、入出力インタフェース等を少なくとも取得部72として機能させるものである。
【0061】
取得部72は、給電装置10、電流分配装置15、ICT装置25、および、空調制御装置40などの情報処理システム1を構成する機器から出力される故障状態や、運転異常に関する情報を取得するインタフェースである。演算処理部71は、取得部72により取得された故障状態や運転異常に関する情報に基づいて、情報処理システム1を構成する装置の故障状態・運転異常を監視するものである。
【0062】
次に、上記の構成からなる情報処理システム1における制御について説明する。まず、スケジュールに基づく情報処理システム1の運用について説明する。
まず、ICT装置25が分散運転されている通常の運用状態について、図2を参照しながら説明する。分散運転とは、情報処理システム1における全てのICT装置25、または、大半のICT装置25において情報処理などの演算処理が行われる状態のことである。
【0063】
図2においてICT装置25(ICTラック26)に記載されたパーセントは、該当するICT装置の負荷率を示している。また、サーバルームSRにおけるハッチングは、サーバルームSRの室内空気の温度を示すものであり、ハッチングが濃くなるに伴い温度が高くなっていることを示している。
【0064】
サーバルームSR内には、給電装置10、空調装置35およびICT装置25が配置されている。また、消費電力ベースに基づくICT装置25における構成の内訳は、サーバ系の機器が8割、スイッチ、ルータなどのネットワーク系機器が2割となる。本実施形態では、ICT装置25の最大消費電力の合計が300kWである例に適用して説明する。
【0065】
図2では、ICT装置25の平均稼働率は20%程度である例が示されている。この場合の電力消費量の解析結果はICT装置25の消費電力が163kW、空調電力が62kW、給電損失が21kW、総計246kWとなる。
【0066】
次に、上記の構成からなる情報処理システム1に対して本発明に関する統合連係制御を実施した場合の説明を行う。本説明において統合制御装置60は、平日の夜間や、土曜や、日曜や、休日などのようにICT装置25における負荷が低下する時間帯に、ICT装置25における負荷を集約する縮退運転を行う指令を出力する。縮退運転を行っている最中にICT装置25の負荷が増加すると、統合制御装置60は事前に縮退運転を解放する指令を出力し、その後に通常の分散運転に戻す指令を出力する。
【0067】
ここで、縮退運転を実行する際の制御処理について図3および図4のフローチャートを参照しながら説明する。はじめに統合制御装置60は、図3に示すように、縮退運転により情報処理システム1おいて稼働させるICT装置25の台数を推定する処理(S10)を行う。
【0068】
具体的には、図4に示すように、統合制御装置60の取得部64は、ICT装置25に搭載されたCPU負荷の情報Pを取得する処理を行う(S11:取得ステップ)。CPU負荷の情報Pは時系列で変化する情報であり、例えば、1分ごとに取得する処理を行う。統合制御装置60は、取得したCPU負荷の情報PをCPU負荷DB67に格納する処理を行う。なお、CPU負荷の情報Pを取得する時間間隔は、上述のように1分でもよいし、1分よりも長くても短くてもよい。
【0069】
次いで、統合制御装置60は演算処理を行う現時点から所定時間(n分)だけ過去に遡った範囲に属するCPU負荷の情報Pを整列する処理を行う(S12)。具体的には、CPU負荷DB67から現時点から所定時間(n分)だけ過去に遡った範囲に属するCPU負荷の情報Pを取得し、時系列に連結したデータ列(Pt−1〜P)を作成する処理を行う。
【0070】
その後、統合制御装置60の予測処理部63は、時系列に連結したデータ列(Pt−1〜P)に基づき、第1の所定時間後におけるICT装置25の起動時間である第1の予測値Pt+5を算出する処理を行う(S13:第1予測ステップ)。本実施形態では第1の所定時間が5分である例に適用して説明するが、5分よりも長くても短くてもよく、特に限定するものではない。
【0071】
次いで、統合制御装置60の予測処理部63は、時系列に連結したデータ列(Pt−1〜P)に基づき、第2の所定時間後におけるICT装置25の起動時間である第2の予測値Pt+10を算出する処理を行う(S14:第2予測ステップ)。本実施形態では第2の所定時間が10分である例に適用して説明するが、第1の所定時間よりも長ければよく具体的な値を限定するものではない。また、第1の予測値Pt+5および第2の予測値Pt+10の算出に、特開平7−270200に開示されているカオス予測処理(第1の予測手法、第2の予測手法)を用いる例に適用して説明するが、その他の公知の手法を用いてもよい。
【0072】
第1の予測値Pt+5および第2の予測値Pt+10を算出すると、統合制御装置60の演算処理部61は、ICT装置25の起動時間と、第1の予測値Pt+5および第2の予測値Pt+10とに基づいて以下の推定処理に用いる予測値を判定する処理を行う(S15:推定ステップ)。まず、取得部64により起動時間DB66から起動時間を取得する処理が行われる。この際、ICT装置25の種類や、ICT装置25に搭載されているOSおよびAPPや、ICT装置25に接続されたネットワークにおける通信速度や、ICT装置25の起動が行われる時間帯および起動が行われる際にICT装置25を利用する可能性がある人数の情報に基づいて、これら情報に対応した起動時間が取得される。なお、起動が行われる際にICT装置25を利用する可能性がある人数の情報は、統合制御装置60の演算処理部61などにより演算処理により求められた値が用いられている。
【0073】
次いで、演算処理部61は、起動時間DB66から取得した起動時間と第1の予測値Pt+5を求める際に用いられた第1の所定時間との時間差である第1時間差、および、起動時間DB66から取得した起動時間と第2の予測値Pt+10を求める際に用いられた第2の所定時間との時間差である第2時間差を求める演算処理を行う。その後、第1時間差の絶対値と、第2時間差の絶対値とを対比して推定処理に用いる予測値を判定する処理を行う。
【0074】
具体的には、(第1時間差の絶対値)<(第2時間差の絶対値)と判定された場合、演算処理部61は、第1の予測値Pt+5を推定処理に用いる予測値として判定する(YESの場合)。その一方で、(第1時間差の絶対値)>(第2時間差の絶対値)と判定された場合、演算処理部61は、第2の予測値Pt+10を推定処理に用いる予測値として判定する(NOの場合)。
【0075】
また、(第1時間差の絶対値)=(第2時間差の絶対値)の場合には、S11に戻り、上述の処理を繰り返し行ってもよいし、第1の予測値Pt+5を推定処理に用いる予測値として判定してもよいし、第2の予測値Pt+10を推定処理に用いる予測値として判定してもよい。
【0076】
S15においてYESと判定された場合、演算処理部61は、演算処理時点におけるCPU負荷の情報Pと、第1の予測値Pt+5とを対比して一定時間後における必要なICT装置25の稼働台数を算出する演算処理を行う(S16:推定ステップ)。演算処理部61は、算出した必要な稼働台数、および、演算処理時点において実際に稼働しているICT装置25の稼働台数に基づいて、起動させるICT装置25の台数、または、停止させるICT装置25の台数を算出する。
【0077】
S15においてNOと判定された場合、演算処理部61は、演算処理時点におけるCPU負荷の情報Pと、第2の予測値Pt+10とを対比して一定時間後における必要なICT装置25の稼働台数を算出する演算処理を行う(S17:推定ステップ)。なお、S16およびS17で用いられる必要なICT装置25の稼働台数を算出する手法としては公知の手法を用いることができ、特に限定するものではない。
【0078】
統合制御装置60は、図4に戻り、対象となるICT装置25へ縮退運転に移行するための集約処理を実行する指令を出力する(S21)。集約処理が仮想化による場合には、縮退元ICT装置25は、縮退先ICT装置25へのライブマイグレーションを実行する。移行が完了した後、縮退元ICT装置25は休止状態へ移行する。集約処理が余剰ICT装置25の運転休止である場合には対象装置を休止状態へ移行する。
【0079】
なお、休止状態へ移行する縮退元ICT装置25、負荷の増加する縮退先ICT装置25の選定にあたっては、予め記憶されている稼働させるICT装置25の組み合わせである縮退パターンが用いられる。
【0080】
本実施形態では、図5に示すように、架列28A,28B,28E,28Fに搭載されたICT装置25を縮退元ICT装置25とし、架列28C,28Dに搭載されたICT装置25を縮退先ICT装置25とした例に適用して説明する。
【0081】
次いで、図3のフローチャートに戻り、ICTリソースの移動(Guestマシンの移動)が成功したか否かを判定する処理を行う(S22)。具体的には、次の5条件が満たされるか否かに基づいて判定が行われる。1つ目が、縮退先ICT装置25でハードウエア障害(以下「H/W障害」と表記する。)が発生していないこと。2つ目が、縮退元ICT装置でH/W障害が発生していないこと。3つ目が、仮想化管理ソフト上で、縮退元の仮想Guestマシンが正常であること。4つ目が縮退元の仮想化ソフト上で、移動対象となる仮想Guestマシンが正常であること。5つ目が、縮退先のICTリソースに余裕があること。より具体的には、縮退元ICT装置25の演算処理を縮退先ICT装置25に移行させても、縮退先ICT装置25におけるCPU使用率が所定値(例えば80%)未満であること、メモリの使用率が所定値(例えば最大容量の80%)未満であること、ハードディスク(HDD)の使用率が所定値(例えば最大容量の80%)未満であることを満たすこと。
【0082】
ICTリソースの移動が失敗したと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。ICTリソースの移動が成功したと判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、ICT制御装置へ縮退元のICT装置25へ対して休止指示を出し、当該ICT装置25への休止処理が成功したか否かを判定する処理を行う(S23)。具体的には、次の4条件が満たされるか否かに基づいて判定が行われる。1つ目が、休止対象ICT装置25においてCPU使用率が所定値(例えば5%)以下であり、かつ、メモリ使用率が所定値(例えば5%)以下であること。2つ目が、仮想化管理ソフト上で、休止対象ICT装置25上に仮想Guestマシンが存在しないこと。3つ目が、休止対象ICT装置25の仮想化ソフト上で、仮想Guestマシンが存在しないこと。4つ目が、休止対象ICT装置25と接続しているスイッチ16およびスイッチ27Aのアウトレット(Outlet)の消費電流が所定値(例えば定格電流の3割)以下であること。
【0083】
ICT装置25の休止が失敗したと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。ICT装置25の休止が成功したと判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、ICT制御装置30から出力されるICT装置25の休止状態情報を確認する。確認後に、ICT制御装置30に対して、休止済みのICT装置25に対して停止(シャットダウン)指令を出す。統合制御装置はICT装置の停止を確認した後、給電制御装置に対し給電ルート上にあるコンセントバー27、または電流分配装置15のスイッチ16またはスイッチ27Aに対して給電OFFとする指令を出力する(S31)。
【0084】
次いで、停止済みのICT装置25に対応するスイッチ16またはスイッチ27Aにおいて給電OFFされているか否かを判定する処理を行う(S32)。具体的には、次の2条件が満たされているか否かを判定する処理を行う。1つ目は、接続しているICT装置25が停止していること。より具体的に説明すると次の3つの内容が満たされていること。対象のICT装置25にピン(Ping)接続しても応答がないこと、対象のICT装置25の仮想化ソフトに接続できないこと、対象のICT装置25に管理用ネットワーク(NW)で接続し、電源がオフ(OFF)となっていること。2つ目は、対象のICT装置25に接続しているスイッチ16またはスイッチ27Aのアウトレット(Outlet)の消費電流値が所定値(例えば定格電流の1割)以下であること。
【0085】
給電OFFされていないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。
次いで、給電OFFされていると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、停止済みのICT装置25に対応する電源ユニット11を停止させる指令を出力する(S41)。言い換えると、ICT装置25の停止に伴い給電装置10の運転負荷率が低下するため、余剰となった電源ユニット11を停止させる指令を給電制御装置20に出力する。
【0086】
具体的には、給電装置10に搭載されている電源ユニット11の台数と、出力電流値とを比較し、以下の式で求められる台数の電源ユニット11を停止する指令を出力する。なお、停止する電源ユニット11の台数は、電源ユニット11の故障や負荷急増時の対応等を考慮して、必要な電源ユニット11の台数に冗長分を考慮した台数としてもよい。
【0087】
[(給電装置10に搭載された電源ユニット11の台数)×(電源ユニット11単体の容量)−{(出力電流)+(電源ユニット11単体の容量)}]÷(電源ユニット11単体の容量)≧停止可能な電源ユニット11の台数
次いで、停止済みのICT装置25に対応する電源ユニット11が停止しているか否かを判定する処理を行う(S42)。電源ユニット11が停止していないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。
【0088】
次いで、電源ユニット11が停止していると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、停止済みのICT装置25の温度が低下する余裕をもって、停止済みのICT装置25に対応する空調装置35を停止させる指令を空調制御装置40に出力する(S51)。空調制御装置40は停止済みのICT装置25に対応する空調装置35を停止させる指令を当該空調装置35に出力する。
【0089】
本実施形態では、図5に示すように、架列28A,28B,28E,28Fに対応する空調装置35が停止されている例に適用して説明する。図5では、対応する空調装置35に斜線を入れることにより、給電OFFを表している。
【0090】
なお、停止済みのICT装置25に対応する空調装置35を停止したことにより、縮退先のICT装置25が属する空調ゾーンの温度が上昇した場合、空調制御装置40は、必要に応じて停止した空調装置35の運転を再開する指令を出力してもよい。
【0091】
次いで、図3のフローチャートに戻り、休止済みのICT装置25に対応する空調装置35が停止しているか否かを判定する処理を行う(S52)。具体的には、次の4条件が満たされているか否かを判定する処理を行う。1つ目は、停止対象以外のICT装置25に対応する空調装置35が正常であること(言い換えると、障害が発生していないこと。)。2つ目は、停止対象以外のICT装置25に対応する空調装置35において冷房能力に余裕があり、定格能力の所定値(90%)未満であること。3つ目は、停止対象以外の空調装置35が管轄するICT装置25の吸込み部付近(または、架列の間の一部であるコールドアイル(Cold Aisle))の温度が所定温度以下であること。4つ目は、停止対象となる空調装置35が管轄するICT装置25は稼働していないこと。より具体的には、ICT装置25が停止していること、かつ、ICT装置25と接続しているスイッチ16またはスイッチ27AのアウトレットがOFFとなっていること。
【0092】
空調装置35が停止していないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。空調装置35が停止していると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、照明機器45を消灯する指令を出力する処理を行う(S61)。言い換えると、不要となった照明機器45を消灯するため、照明制御装置50へ消灯指令を出力する。照明制御装置50は、必要に応じて作業者の不在を確認した後、該当部分の消灯を実行する。
【0093】
次いで、照明機器45が消灯されたか否かを判定する処理を行う(S62)。具体的には、次の3条件を満たすか否かを判定する処理を行う。1つ目は、ICT装置25が正常に停止したこと。2つ目は、対応するスイッチ16またはスイッチ27Aが全てOFFになっていること。3つ目は、対応する空調装置35が停止していること。
【0094】
照明機器45が消灯されていないと判定された場合(NOの場合)には、縮退運転の可否を判断する処理を中止する。また、照明機器45が消灯されていると判定された場合(YESの場合)、縮退運転の可否を判断する処理を終了する。
【0095】
なお、上述のように縮退運転への移行処理を実行するにあたり、必要に応じてSDN(software defined network)技術、NFV(Network Function Virtualization)技術やロードバランサーなどのネットワーク制御、負荷制御を行う場合もある。
【0096】
次いで、縮退運転から分散運転への復元を実行する際の制御処理について図6のフローチャートを参照しながら説明する。
はじめに、統合制御装置60は分散運転への移行判断のタイミングを定めたスケジュールを起動する処理を行い、当該スケジュールが起動したか否かを判定する処理を行う(S111)。ここで、移行判断のタイミングとしては、例えば、平日の夜間や、土曜や、日曜や、休日などのように情報処理や通信処理などの低下が予想される時間帯の終わりを挙げることができる。スケジュールの起動が失敗と判定された場合(NOの場合)には、移行の可否を判断する処理を中止する。
【0097】
スケジュールの起動が成功した判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、ICT装置25等に障害が発生していないか否か、または運用に支障が出るか否かを判定する処理を行う(S112)。具体的には、監視制御装置70が、分散元ICT装置25および分散先ICT装置25や、空調装置35や、給電装置10において異常が発生したことを示す情報を受け取っているか否かに基づいて、上述の判定処理を行う。障害が発生している、あるいは運用に支障がでる判定された場合(NOの場合)には、移行の可否を判断する処理を中止する。
【0098】
なお、分散元ICT装置25は上述の縮退先ICT装置25であり、分散先ICT装置25は上述の縮退元ICT装置25である。
障害が発生していないと判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、給電装置10の容量に余裕があるか否かを判定する処理を行う(S113)。つまり、統合制御装置60は、現在の消費電流、起動対象のICT装置25の定格電流が、給電装置10の出力可能電流値を超えていないか否かを判定する。容量に余裕がないと判定された場合(NOの場合)には、移行の可否を判断する処理を中止する。
【0099】
容量に余裕があると判定された場合(YESの場合)、起動対象に関する空調装置35を起動させる指令を出力する処理を行う(S121)。言い換えると、運転を再開するICT装置25の空調ゾーンの空調装置35を制御する空調制御装置40に対して、予冷のための運転を開始する指令を出力する。空調制御装置40は、該当する空調装置35に対して起動指令を出力する。
【0100】
次いで、起動対象に関する空調装置35が起動したか否かを判定する処理を行う(S122)。起動対象に関する空調装置35が起動していないと判定された場合(NOの場合)には、移行の可否を判断する処理を中止する。
【0101】
起動対象に関する空調装置35が起動したと判定された場合(YESの場合)には、統合制御装置60は、ICT装置25の周辺の温度が所定温度以下であるか否かを判定する処理を行う(S123)。ICT装置25の周辺の温度としては、例えば、ICT装置25の周辺の空気温度、または、空調装置35における吸込み空気温度を例示することができる。この判定では、具体的には次の2条件が満たされているか否かが判定される。1つ目は、起動した空調装置35に異常が発生していないこと。2つ目は、起動した空調装置35が管轄するICT装置25の吸込み部付近(または、架列の間の一部であるコールドアイル(Cold Aisle))の温度が、所定温度以下となっていること。
【0102】
ICT装置25の周辺の温度が所定温度以下になっていないと判定された場合(NOの場合)には、再びS123の判定が行われる。ICT装置25の周辺の温度が所定温度以下になっていると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、運転を再開するICT装置25へ電力を供給する電源ユニット11を起動する指令を出力する処理を行う(S131)。具体的には、給電制御装置20へ電源ユニット11を起動する指令を出力する。給電制御装置20は、当該電源ユニット11を起動させる。
【0103】
次いで、統合制御装置60は、電源ユニット11が起動したか否かを判定する処理を行う(S132)。判定は次の3条件を満たすか否かにより行われる。1つ目は、給電装置10に異常が発生していないこと。2つ目は、電源ユニット11が正常に起動していること。3つ目は、起動後も電源ユニット11に異常が発生していないこと。電源ユニット11が起動していないと判定された場合(NOの場合)には、アラートを出力する処理が行われる。
【0104】
電源ユニット11が起動していると判定された場合(YESの場合)には、スイッチ16およびスイッチ27AをON状態にする指令を出力する処理が行われる(S141)。具体的には、給電制御装置20へ運転を再開するICT装置25への給電経路上に位置するスイッチ16およびスイッチ27Aに対して、OFF状態からON状態へ移行させる指令を出力する。
【0105】
次いで、統合制御装置60は、スイッチ16およびスイッチ27AがON状態へ移行したか否かを判定する処理を行う(S142)。判定は次の3条件を満たしているか否かにより行われる。1つ目は、スイッチ16およびスイッチ27Aに異常が発生していないこと。2つ目は、スイッチ16およびスイッチ27Aのアウトレットが正常に電源ONになっていること。アウトレットがONになった後も異常が発生していないこと。スイッチ16またはスイッチ27AがOFF状態のままと判定された場合(NOの場合)には、アラートを出力する処理が行われる。
【0106】
スイッチ16およびスイッチ27AがON状態へ移行したと判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、ICT装置25への起動指令を出力する処理を行う(S151)。指令が入力されたICT制御装置30は、ICT装置25の仕様に合わせた起動手順を踏んでICT装置25を起動させる処理を行う。統合制御装置60は、引き続き、縮退運転から分散運転へ移行させるためにICT制御装置30に対して復元処理の開始指示を出力する。ICT制御装置30は、縮退運転から分散運転に必要な手順を踏んで分散運転状態へ移行させる処理を行う。
【0107】
次いで、統合制御装置60は、ICT装置25(Hostマシン)が起動したか否かを判定する処理を行う(S152)。判定は次の3条件が満たされているか否かにより行われる。1つ目は、対象のICT装置25に管理用NWで接続でき、異常が発生していないこと。2つ目は、対象ICT装置25に管理用NWで接続でき、電源投入が行えること。3つ目は、電源がONされた後も異常が発生することなく起動すること。ICT装置25が起動していないと判定された場合(NOの場合)には、アラートを出力する処理が行われる。
【0108】
ICT装置25が起動していると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、ICTリソースの移動(Guestマシンの移動)が行われたか否かを判定する処理を行う(S153)。判定は次の5条件を満たすか否かにより行われる。1つ目は、切替(移動)先のICT装置25である分散先ICT装置25でH/W障害が発生していないこと。2つ目は、切替(移動)元のICT装置25である分散元ICT装置25でH/W障害が発生していないこと。3つ目は、仮想化管理ソフト上で、分散元の仮想Guestマシンが正常であること。4つ目は、分散元の仮想化ソフト上で、移動対象となる仮想Guestマシンが正常であること。5つ目は、分散先のICTリソースに余裕があること。具体的には、CPU使用率が所定値(例えば80%)未満であること、メモリ使用率が所定値(例えば80%)未満であること、および、ハードディスク(HDD)の使用率が所定値(例えば80%)未満であること。
【0109】
ICTリソースの移動が行われていないと判定された場合(NOの場合)には、アラートを出力する処理が行われる。ICTリソースの移動が行われていると判定された場合(YESの場合)、統合制御装置60は、照明機器45を点灯させる指令を出力する処理を行う(S161)。
【0110】
次いで、統合制御装置60は、照明機器45が点灯されたか否かを判定する処理を行う(S162)。判定は、給電装置10、ICT装置25、および空調装置35が正常に起動し、異常が発生していないか否かにより行われる。
【0111】
照明機器45が点灯されていないと判定された場合(NOの場合)には、アラートを出力する処理が行われる。照明機器45が点灯されていると判定された場合(YESの場合)、縮退運転から分散運転への復元を実行する処理は終了される。上述のように、情報処理システム1が分散運転状態へ移行した際の消費電力は、図2に示した縮退運転前の消費電力に戻った状態になる。
【0112】
なお、縮退運転から分散運転へ移行する復元処理においては、必要に応じてSDN(software defined network)技術、NFV(Network Function Virtualization)技術やロードバランサーなどのネットワーク制御、負荷制御を行う場合もある。また、移行プロセス途中において、不要な警報が発生する場合には、警報を一時的にマスクする措置を講ずることも可能である。
【0113】
上記の構成によれば、ICT装置25の一定時間後における必要な稼働台数を算出、若しくは、起動又は停止する台数を算出する際に、起動時間と比較して判定した第1の予測値Pt+5および第2の予測値Pt+10の一方、および、演算処理時点におけるCPU負荷の情報Pが用いられる。このようにすることで、起動時間と比較した判定により、第1の予測値Pt+5および第2の予測値Pt+10のうち予測精度を向上しやすい予測値が選択できる。そのため、CPU負荷の現在値と、相対的に短期の予測値および相対的に長期の予測値を対比させる特許文献1に記載の算出方法と比較して、予測精度の向上を図りやすくなる。
【0114】
起動時間と比較したS15の判定処理において、起動時間と第1の所定時間との第1時間差、起動時間と第2の所定時間との第2時間差を比較し、時間差が小さな予測値を用いるとの判定を行うことで、第1の予測値Pt+5および第2の予測値Pt+10から予測精度を向上しやすい予測値を選択しやすくなる。
【0115】
起動時間の長さをICT装置25の種類に対応して異ならせることにより、第1の予測値Pt+5および第2の予測値Pt+10の選択の際にICT装置25の種類に応じた選択を行うことができ、予測精度を向上しやすい予測値を更に選択しやすくなる。
【0116】
起動時間の長さをICT装置25に搭載されているOSおよびAPPの少なくとも一方に対応して異ならせることにより、第1の予測値Pt+5および第2の予測値Pt+10の選択の際に、OSやAPPに応じた選択を行うことができ、予測精度を向上しやすい予測値を更に選択しやすくなる。
【0117】
起動時間の長さをICT装置25に接続されたネットワークにおける通信速度に対応して異ならせることにより、第1の予測値Pt+5および第2の予測値Pt+10の選択の際にネットワークにおける通信速度に応じた選択を行うことができ、予測精度を向上しやすい予測値を更に選択しやすくなる。
【0118】
起動時間の長さを判定が行われる時間帯、および、判定時における情報処理装置を利用する可能性がある人数の少なくとも一方に対応異ならせることにより、第1の予測値Pt+5および第2の予測値Pt+10の選択の際に判定が行われる時間帯、および、判定時におけるICT装置25を利用する可能性がある人数に応じた選択を行うことができ、予測精度を向上しやすい予測値を更に選択しやすくなる。
【0119】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記の実施の形態においては、第1の予測値Pt+5を算出する処理(S13)を行った後に、第2の予測値Pt+10を算出する処理(S14)を行う例に適用して説明したが、S14の処理を先に行い、S13の処理を後に行ってもよいし、S13の処理およびS14の処理を同時に行ってもよい。
【0120】
また、上記の実施の形態においては、S13の処理およびS14の処理を行った後、推定処理に用いる予測値を判定する処理(S15)を行う例に適用して説明したが、S15の処理を先に行い、判定された予測値を求める処理(S13またはS14)のみを行ってもよい。
【符号の説明】
【0121】
25…ICT装置(情報処理装置)、60…統合制御装置(制御装置)、61…演算処理部(推定部)、63…予測処理部(第1予測部、第2予測部)、64…取得部、66…起動時間データベース(記憶部)、S11…取得ステップ、S13…第1予測ステップ、S14…第2予測ステップ、S15…推定ステップ、S16…推定ステップ、S17…推定ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6